(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】プロテクタ、ボイラ装置、及びプロテクタの取付方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/10 20060101AFI20231201BHJP
F22B 37/48 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F22B37/10 602D
F22B37/48 A
(21)【出願番号】P 2020210470
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2021-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 亮甫
(72)【発明者】
【氏名】東川 謙示
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】白土 博之
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-156204(JP,U)
【文献】特開2020-169742(JP,A)
【文献】特表平10-505152(JP,A)
【文献】実開昭58-189892(JP,U)
【文献】実開昭63-142504(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/10
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ装置の伝熱管を保護するプロテクタであって、
前記伝熱管に外挿される
円筒形状の下管体と、
前記下管体より上方において前記伝熱管に外挿される円筒形状の上管体と
を備え、
前記下管体は、
前記伝熱管の外面の一部から突出した係止片に係止される被係止部と、
前記下管体に上方から外挿された前記上管体を支持する支持部と
を有
し、
前記下管体は、前記係止片を受け入れる溝が内周面に形成された下本体部を有し、
前記下本体部の軸方向に沿って延設された前記溝は、下端が開放されて前記係止片の進入を許容し、上端が閉塞されて前記被係止部として機能し、
前記下本体部は、
前記下管体の下端に位置し、内径寸法が前記上管体の上端の外径寸法より大きい下外挿部と、
前記下外挿部より上方に位置し、前記溝が形成された中間部と
を有することを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタにおいて、
前記支持部は、前記下管体の上端に位置し、
前記上管体は、
前記上管体の下端に位置し、内径寸法が前記支持部の外径寸法より大きい上外挿部と、
前記上外挿部より上方に位置し、内径寸法が前記支持部の外径寸法より小さい上本体部と
を有し、
前記上外挿部が前記支持部に外挿されたときに、前記上外挿部及び前記上本体部の間の段差が前記支持部の先端に支持されることを特徴とするプロテクタ。
【請求項3】
石炭を含む燃料を燃焼させる火炉と、
前記火炉内で発生した燃焼ガスの流路上に吊り下げられた伝熱管と、
前記伝熱管に向けて蒸気を噴射するスートブロワ装置と、
前記伝熱管に外挿された請求項1
または2に記載のプロテクタと
を備えることを特徴とするボイラ装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のボイラ装置において、
前記伝熱管の外面には、周方向に離間した複数の位置に前記係止片が形成されていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載のボイラ装置において、
前記係止片は、上端、下端、左端、及び右端のうち、左端及び右端のみが前記伝熱管の外面に溶接接合されていることを特徴とするボイラ装置。
【請求項6】
請求項1
または2に記載のプロテクタを、前記伝熱管の軸方向に複数並べて取り付けるプロテクタの取付方法であって、
前記伝熱管の外面に前記係止片を取り付ける工程と、
前記伝熱管の上方から前記下管体を外挿して、前記係止片に前記被係止部を係止させる工程と、
前記伝熱管の上方から前記上管体を外挿して、前記下管体に外挿された前記上管体を前記支持部に支持させる工程と
を繰り返すことを特徴とするプロテクタの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管を保護するプロテクタ、プロテクタを備えたボイラ装置、及び伝熱管へのプロテクタの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を燃料とするボイラ装置では、燃焼時に発生する灰が伝熱管に付着して、熱交換効率が低下すると言う課題がある。このような課題を解決するために、伝熱管に蒸気を噴射して灰を除去するスートブロワ装置を備えたボイラ装置が知られている。
【0003】
但し、スートブロワ装置から噴射された蒸気によって、伝熱管がエロージョンを起こす可能性がある。そこで、特許文献1には、スートブロワ装置に対面する面にプロテクタを取り付けることによって、エロージョンを回避する技術が開示されている。より詳細には、特許文献1に記載のプロテクタは、伝熱管に係止されたエンド部材に管体を螺合することによって着脱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のプロテクタは、スートブロワ装置から噴射された蒸気を受け続けて劣化するので、定期的に交換が必要な消耗品である。そして、特許文献1に記載のプロテクタを交換するには、既設の管体及びエンド部材の螺合を解除し、新たな管体及びエンド部材を螺合する必要がある。しかしながら、伝熱管に装着されるプロテクタは非常に大型なので、前述の交換作業には長い時間と熟練技術が必要になる。その結果、ボイラ装置のダウンタイムが長くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、交換時におけるボイラ装置のダウンタイムを短縮することが可能なプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、ボイラ装置の伝熱管を保護するプロテクタであって、前記伝熱管に外挿される円筒形状の下管体と、前記下管体より上方において前記伝熱管に外挿される円筒形状の上管体とを備え、前記下管体は、前記伝熱管の外面の一部から突出した係止片に係止される被係止部と、前記下管体に上方から外挿された前記上管体を支持する支持部とを有し、前記下管体は、前記係止片を受け入れる溝が内周面に形成された下本体部を有し、前記下本体部の軸方向に沿って延設された前記溝は、下端が開放されて前記係止片の進入を許容し、上端が閉塞されて前記被係止部として機能し、前記下本体部は、前記下管体の下端に位置し、内径寸法が前記上管体の上端の外径寸法より大きい下外挿部と、前記下外挿部より上方に位置し、前記溝が形成された中間部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プロテクタの交換時におけるボイラ装置のダウンタイムを短縮することができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】2セットのプロテクタを伝熱管に取り付けた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るボイラ装置1の全体構成図である。
図1に示すように、ボイラ装置1は、燃料を燃焼させる火炉2と、火炉2内で発生した燃焼ガスの流路である燃焼ガス通路3と、スートブロワ装置4とを主に備える。火炉2及び燃焼ガス通路3は、ボイラ鉄骨の吊下げロッド及び吊下げビーム(図示省略)から吊り下げられている。なお、以下の説明においては、ボイラ装置1の火炉2側を缶前、燃焼ガス通路3の出口側を缶後という。
【0011】
火炉2は、バーナ(図示省略)で燃料を燃焼させることによって、燃焼ガスを発生させる。火炉2で発生した燃焼ガスは、燃焼ガス通路3を通って缶前から缶後に移動し、ボイラ装置1の外部に排出される。火炉2で燃焼させる燃料は、少なくとも石炭を含む。但し、石炭に加えて、石油、ガス、バイオマス燃料などを含んでもよい。そして、石炭を含む燃料を燃焼させると、灰が発生する。
【0012】
燃焼ガス通路3には、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8が設けられている。一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8は、蒸気を通過させる配管群(複数の伝熱管の集合体)である。一次過熱器6、二次過熱器7、三次過熱器8を蒸気が通過する過程で燃焼ガスとの間で熱交換が行われ、所定の温度まで過熱された過熱蒸気がタービンに供給される。
【0013】
本実施形態では、一次過熱器6が所謂「横置き型」であり、二次過熱器7及び三次過熱器8が所謂「吊下げ型」である。そして、二次過熱器7及び三次過熱器8は、燃焼ガスとの接触面積を増加させるために、上下方向に延設された複数の伝熱管を左右方向(
図1の奥行方向)に配列した構成となっている。
【0014】
ここで、燃焼ガスに含まれる灰が伝熱管の表面に付着すると、熱交換効率が低下する。そこで、本実施形態に係るボイラ装置1では、スートブロワ装置4を用いて、伝熱管の表面に付着した灰を除去する。スートブロワ装置4は、伝熱管に向けて蒸気を噴射する装置であって、例えば、スートブロワチューブと、ノズルと、蒸気供給源とを備える。
【0015】
スートブロワチューブは、伝熱管の延設方向と交差する方向(例えば、左右方向)に延びる蒸気の通路である。スートブロワチューブは、回転(自転)しながら延設方向に進退可能に構成されている。ノズルは、スートブロワチューブの先端に設けられて蒸気を噴射する。蒸気供給源は、スートブロワチューブを通じて所定圧力の蒸気をノズルに供給するものである。なお、スートブロワ装置4の具体的な構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0016】
本実施形態に係るボイラ装置1には、上記構成のスートブロワ装置4が所定の間隔で複数箇所に設けられている。そのため、スートブロワチューブの移動軌跡の近傍に位置する伝熱管は、ノズルから噴射された高圧の蒸気に晒されるので、エロージョンが発生する可能性がある。
【0017】
そこで、本実施形態では、伝熱管9にプロテクタ20を外挿することによって、伝熱管9を保護する。
図2は、伝熱管9に取り付けられる係止片10、11を示す図である。
図3は、プロテクタ20を分解した状態の断面斜視図である。
【0018】
図2に示すように、伝熱管9の外面には、係止片10、11が取り付けられる。係止片10、11は、伝熱管9の外面の一部から径方向外向きに突出している。また、係止片10、11は、同一の高さ位置に配置されている。さらに、係止片10、11は、伝熱管9の周方向に離間した位置に配置されている。本実施形態に係る係止片10、11は、伝熱管9の外周面の二箇所に180°間隔で設けられている。
【0019】
すなわち、
図2(A)に破線で示すように、係止片10、11の突出端を通る仮想円の直径φ
1は、伝熱管9の外径寸法φ
0より大きい。なお、係止片の数は、前述の例に限定されず、1つでもよいし、複数でもよい。また、伝熱管9の周方向における係止片の取付間隔は、前述の例に限定されない。但し、係止片は、伝熱管9の周方向において、等間隔に設けられるのが望ましい。
【0020】
係止片10、11は、伝熱管9の径方向から平面視すると、上辺(上端)、下辺(下端)、左辺(左端)、右辺(右端)を有する矩形の外形を呈する。また、係止片10、11の伝熱管9に対面する内面は、伝熱管9の外面に沿う円弧形状となっている。但し、係止片10、11の具体的な形状は、
図2の例に限定されない。
【0021】
そして、係止片10、11は、その内面を伝熱管9に沿わせた状態で、伝熱管9に溶接接合される。より詳細には、係止片10、11は、上辺、下辺、左辺、及び右辺のうち、左辺及び右辺のみが溶接材料10l、10r、11l、11rによって溶接され、上辺及び下辺は溶接されない。但し、伝熱管9に対する係止片10、11の取付方法は、前述の例に限定されない。
【0022】
図3に示すように、本実施形態に係るプロテクタ20は、筒形状(より詳細には、円筒形状)の下管体30及び上管体40で構成される。下管体30及び上管体40は、例えば、SUS309、SUS310STP等の配管用ステンレス鋼で形成される。また、下管体30及び上管体40は、例えば、管材または棒材を機械加工して形成される。
【0023】
このように、下管体30及び上管体40をシームレスに構成することによって、プロテクタ20の健全性が向上する。また、シンプルな構成でプロテクタ20を実現できるので、製造コストを低減することができる。
【0024】
下管体30は、下本体部31と、支持部32とで構成される。下本体部31は、プロテクタ20が伝熱管9に装着されたときに、外部に露出する部分である。支持部32は、プロテクタ20が伝熱管9に装着されたときに、上管体40(より詳細には、後述する上外挿部42)によって覆われると共に、上管体40を支持する部分である。
【0025】
下本体部31及び支持部32は、下管体30の軸方向に隣接している。支持部32の外径寸法φ2は、下本体部31の外径寸法φ3より小さく設定される。すなわち、下管体30の外周面において、下本体部31と支持部32との間には、周方向に連続する段差が形成される。
【0026】
下本体部31は、軸方向に隣接する中間部33及び下外挿部34で構成される。中間部33は、支持部32及び下外挿部34を接続する部分である。下外挿部34は、プロテクタ20が伝熱管9に装着されたときに、別セットのプロテクタ20の上管体40に外挿される部分である。
【0027】
中間部33の内径寸法φ5は、支持部32の内径寸法φ4より大きく、下外挿部34の内径寸法φ6より小さい。すなわち、下管体30の内周面において、支持部32と中間部33との間、中間部33と下外挿部34との間には、周方向に連続する段差が形成される。また、下管体30の内径寸法φ4、φ5、φ6は、伝熱管9の外径寸法φ0より大きい。すなわち、下管体30は、伝熱管9に外挿可能である。
【0028】
より詳細には、
図4に示すように、下管体30は、支持部32を上にして(換言すれば、下外挿部34を下にして)、伝熱管9に外挿される。すなわち、下管体30が伝熱管9に装着されたとき、支持部32は下管体30の上端に位置し、下外挿部34は下管体30の下端に位置する。
【0029】
また、中間部33の内周面には、溝35が形成されている。溝35は、係止片10を受け入れ可能な形状及び大きさで、中間部33の内周面から径方向外側に凹んでいる。また、溝35は、下管体30の軸方向に延設されている。そして、溝35の下端(すなわち、下外挿部34側)は、開放されて係止片10、11の進入を許容する。さらに、溝35の上端(すなわち、支持部32側)は、閉塞されて被係止部36として機能する。
【0030】
被係止部36は、下管体30が伝熱管9に外挿されたときに、係止片10に係止されて、下管体30を伝熱管9に固定する部分である。溝35及び被係止部36は、係止片10、11それぞれに対応付けて設けられる。すなわち、本実施形態に係る溝35及び被係止部36は、下管体30の内周面の二箇所に180°間隔で設けられる。
【0031】
ここで、係止片10、11の突出端を通る仮想円の直径φ1は、支持部32及び中間部33の内径寸法φ4、φ5より大きく、下外挿部34の内径寸法φ6より小さい。すなわち、伝熱管9の上方から下管体30を外挿したときに、係止片10、11は、下外挿部34を通過し、溝35に沿って被係止部36の位置まで到達する。これにより、下管体30が伝熱管9に装着される。
【0032】
上管体40は、下管体30より上方において、伝熱管9に外挿される。上管体40は、軸方向に隣接する上本体部41及び上外挿部42で構成される。上本体部41は、プロテクタ20が伝熱管9に装着されたときに、上端の一部が別セットのプロテクタ20の下管体30(より詳細には、下外挿部34)によって覆われ、他の部分が外部に露出する部分である。上外挿部42は、プロテクタ20が伝熱管9に装着されたときに、支持部32に外挿されると共に、支持部32の先端に支持される部分である。
【0033】
上管体40の外径寸法φ7、上本体部41の内径寸法φ8、及び上外挿部42の内径寸法φ9は、それぞれ上管体40の軸方向において一定である。また、上管体40の外径寸法φ7は、支持部32の外径寸法φ2より大きく、下本体部31の外径寸法φ3より小さい。また、上外挿部42の内径寸法φ9は、上本体部41の内径寸法φ8より大きい。すなわち、上管体40の内周面において、上本体部41と上外挿部42との間には、周方向に連続する段差43が形成される。
【0034】
さらに、支持部32の外径寸法φ
2は、上本体部41の内径寸法φ
8より大きく、上外挿部42の内径寸法φ
9より小さい。これにより、上管体40は、既に下管体30が取り付けられた伝熱管9に上方から挿入されると、上外挿部42が支持部32に外挿され、段差43が支持部32の先端に支持される。一方、上外挿部42の軸方向の長さは、支持部32の軸方向の長さより短い。そのため、
図4に示すように、上管体40が支持部32に支持されたとき、上外挿部42の先端(下端)と、下本体部31及び支持部32の間の段差との間には、隙間が形成される。
【0035】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係るプロテクタ20を伝熱管9の軸方向に複数並べて取り付ける方法を説明する。
図4は、2セットのプロテクタ20a、20bを伝熱管9に取り付けた状態を示す断面図である。
図5は、プロテクタの取付方法のフローチャートである。なお、係止片10a、10bの構造は
図2に示す係止片10と同一であり、プロテクタ20a、20bの構造は
図3に示すプロテクタ20と同一である。
【0036】
まず、作業者は、係止片10a、11a(
図4では、係止片11aの図示を省略)の左辺及び右辺を、伝熱管9の外面に溶接接合する(S1)。次に、作業者は、係止片10a、11aと溝35a(
図4では図示省略)とを対面させた状態で、伝熱管9の上方から下管体30aを外挿する(S2)。これにより、係止片10a、11aによって被係止部36aが係止される。次に、作業者は、伝熱管9の上方から上管体40aを外挿する(S3)。これにより、上外挿部42aが支持部32aに外挿され、段差43aが支持部32aの先端で支持される。すなわち、下管体30aと上管体40aとは、所謂インロー構造で結合される。
【0037】
次に、作業者は、全てのプロテクタ20a、20bを伝熱管9に取り付けたか否かを判断する(S4)。そして、未だプロテクタ20bを取り付けていない場合に(S4:No)、作業者は、係止片10b、11b(
図4では係止片11bの図示を省略)及びプロテクタ20bを、前述の手順で伝熱管9に取り付ける(S1~S3)。
【0038】
このとき、作業者は、
図4に示すように、下外挿部34bの下端が上本体部41aの上端より下方で、且つ中間部33b及び下外挿部34bの間の段差が上本体部41aの上端より上方に位置するように、係止片10a、11aと係止片10b、11bとの上下方向の距離を調整する。これにより、下外挿部34bによって上本体部41aの上端の一部が覆われる。すなわち、上管体40aと下管体30bとは、所謂インロー構造で結合される。また、中間部33b及び下外挿部34bの間の段差と、上本体部41aの上端との間に隙間が形成される。
【0039】
上記の実施形態によれば、下管体30及び上管体40を伝熱管9に対して順番に外挿するだけで、プロテクタ20を伝熱管9に取り付けることができる。これにより、複数の管体を螺合して着脱する従来のプロテクタと比較して、短い時間で且つ簡単にプロテクタ20の交換を行うことができる。その結果、プロテクタ20の交換時におけるボイラ装置1のダウンタイムを短くすることができる。
【0040】
また、上記の実施形態によれば、上管体40を下管体30に外挿することによって、上方から降ってくる石炭灰が下管体30及び上管体40の間に進入するのを防止できる。これにより、インロー構造で連結される下管体30及び上管体40の間の隙間をある程度大きくすることができるので、プロテクタ20の交換作業がさらに簡単になる。また、複数のプロテクタ20a、20bを伝熱管9に取り付けたときに、上管体40aと下管体30bとの間にも同様のことが言える。
【0041】
また、上記の実施形態によれば、支持部32で段差43を支持したときに、上管体40の下端と、下本体部31及び支持部32の間の段差との間に隙間が形成される。これにより、温度上昇による下管体30及び上管体40の伸びを許容することができる。また、複数のプロテクタ20a、20bを伝熱管9に取り付けたときに、上管体40aと下管体30bとの間にも同様のことが言える。
【0042】
また、上記の実施形態によれば、複数の係止片10、11を伝熱管9の周方向に等間隔に取り付けるので、下管体30(プロテクタ20)の傾きを防止することができる。また、上記の実施形態によれば、係止片10、11の左辺及び右辺のみを伝熱管9に溶接するので、係止片10、11の上辺で下管体30をガタなく係止できる。但し、係止片10、11の左辺及び右辺に加えて、下辺を伝熱管9に溶接してもよい。
【0043】
さらに、
図5の手順を採用することによって、複数のプロテクタ20a、20bを伝熱管9に取り付けることができる。なお、
図5の手順でプロテクタ20a、20bを交換する場合には、係止片10b、11bを一旦取り外す必要がある。ここで、伝熱管9に対する係止片10b、11bの溶接個所を削減することによって、係止片10b、11bの取り外しが容易になる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 ボイラ装置
2 火炉
3 燃焼ガス通路
4 スートブロワ装置
6 一次過熱器
7 二次過熱器
8 三次過熱器
9 伝熱管
9a,9b ストッパ
10,10a,10b,11,11a,11b 係止片
10l,10r,11l,11r 溶接材料
20,20a,20b プロテクタ
30,30a,30b 下管体
31,31a,31b 下本体部
32,32a,32b 支持部
33,33a,33b 中間部
34,34a,34b 下外挿部
35 溝
36 被係止部
40,40a,40b 上管体
41,41a,41b 上本体部
42,42a,42b 上外挿部
43,43a,43b 段差