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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】受信回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20231201BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20231201BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20231201BHJP
   H04B 3/02 20060101ALI20231201BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H03F3/45
H03F3/34 210
H03K19/0175 280
H04B3/02
H04L25/02 R
H04L25/02 V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020530748
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2019055857
(87)【国際公開番号】W WO2020016705
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2018136993
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 丈也
(72)【発明者】
【氏名】福留 貴浩
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2011/052141(JP,A1)
【文献】特開2001-103098(JP,A)
【文献】特開2001-077640(JP,A)
【文献】特開2018-038038(JP,A)
【文献】特開2002-111749(JP,A)
【文献】特開平02-019020(JP,A)
【文献】特開2000-196680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H03K 19/0175
H04B 3/02
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディファレンシャル方式で与えられる第1の信号及び第2の信号をシングルエンド方式の第3の信号に変換して出力する受信回路であって、
オペアンプと、第1の素子と、第2の素子と、第3の素子と、第1のトランジスタと、第1の回路と、抵抗素子と、を有し、
前記オペアンプは、第1の入力端子と、第2の入力端子と、第1の出力端子とを有し、
前記オペアンプの前記第1の出力端子は、前記第1の素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第1の素子の第2の電極は、第1のノードを介して前記第1の回路と電気的に接続され、
前記オペアンプの前記第1の入力端子は、第2のノードを介して前記第2の素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記オペアンプの前記第2の入力端子は、第3のノードを介して前記第3の素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記第2の素子の第2の電極は、前記受信回路の第1の入力端子を介して第1の伝送路と電気的に接続され、
前記第3の素子の第2の電極は、前記受信回路の第2の入力端子を介して第2の伝送路と電気的に接続され、
前記第1の伝送路は、前記抵抗素子を介して前記第2の伝送路と電気的に接続され、
前記第1のノードには、前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続され、
前記受信回路の前記第1の入力端子には、前記第1の信号が与えられ、
前記受信回路の前記第2の入力端子には、前記第1の信号が反転した前記第2の信号が与えられ、
前記オペアンプは、前記第1の出力端子が出力する信号を前記第1の素子に与え、
前記第1のノードには、前記第1のトランジスタを介して第1のプリセット電位が与えられ、
前記第1の素子には、前記第1のプリセット電位によって前記オペアンプのばらつきを含む信号が記憶され、
前記第1の回路は、前記第1のプリセット電位が与えられることで前記オペアンプのばらつきを含む信号に影響されずに前記第3の信号の初期値を決定し、
前記第1の回路は、第2のトランジスタ乃至第10のトランジスタと、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を有し、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第7のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の電源線と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1の回路の第1の入力端子と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第6の電源線と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第7のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1の回路の第2の入力端子と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第6のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第2の電源線と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記第2の電源線と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第6の電源線と電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第6のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのゲートは、前記第7のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第10のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の電源線と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第6の電源線と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第10のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第8のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第9のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第8のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第4の電源線と電気的に接続され、
前記第8のトランジスタのゲートは、前記第4の電源線と電気的に接続され、
前記第9のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の回路の出力端子と電気的に接続され、
前記第9のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第5の電源線と電気的に接続され、
前記第10のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第6の電源線と電気的に接続され、
前記第10のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第1の回路の前記出力端子と電気的に接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第6のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第10のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第1の回路の前記出力端子と電気的に接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第9のトランジスタのゲートと電気的に接続される受信回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の素子は、第の容量素子であり、
前記第2の素子は、第の容量素子であり、
前記第3の素子は、第の容量素子である受信回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記受信回路は、さらに第11のトランジスタを有し、
前記第2のノードには、前記第11のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続され、
前記第2の素子には、前記第1の信号が与えられ、
前記第2のノードには、前記第11のトランジスタを介して第1のプログラム電位が与えられ、
前記第2の素子には、前記第1のプログラム電位によって前記第1の信号が含むばらつきが記憶され、
前記オペアンプは、前記第1のプログラム電位が与えられることで前記第1の信号が含むばらつきに影響されずに前記第1の出力端子に前記オペアンプのばらつきを含む信号を出力する受信回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記受信回路は、さらに第12のトランジスタを有し、
前記オペアンプは、さらに第2の出力端子を有し、
前記第3のノードには、前記第12のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続され、
前記第3の素子には、前記第2の信号が与えられ、
前記第3のノードには、前記第12のトランジスタを介して第2のプログラム電位が与えられ、
前記第3の素子には、前記第2のプログラム電位によって前記第2の信号が含むばらつきが記憶され、
前記オペアンプは、前記第2のプログラム電位が与えられることで前記第2の信号が含むばらつきに影響されずに前記第2の出力端子に前記オペアンプのばらつきを含む信号を出力する受信回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記オペアンプは、第13のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタ、及び前記第13のトランジスタは、それぞれ半導体層が、同じ材料を含む受信回路。
【請求項6】
請求項1又は請求項5のいずれか一において、
前記第1のトランジスタは、半導体層に金属酸化物を有する受信回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、受信回路、表示装置、又は電子機器に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、又は、製造方法に関する。又は、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる素子、回路、又は装置等を指す。一例としては、トランジスタ、ダイオード等の半導体素子は半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路は、半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路を備えた装置は、半導体装置である。
【背景技術】
【0004】
近年表示装置の高精細化が進んでいる。表示装置の高精細化は、表示装置へ画像信号を伝達するための配線数の増加、さらに消費電力の増加などを生じやすい。また、画像信号を高速に伝送する場合、電磁気妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)が発生し、他の周辺回路、又は他の電子機器にノイズの影響を与える場合がある。さらに、表示装置内の信号、もしくは周囲にある他の電子機器が発するノイズの影響を受けずに正しく伝送する電磁気妨害感受性(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)を備えることが求められている。
【0005】
表示装置への信号伝達手段は、表示装置の高精細化が進むに従い、2本の信号線を利用し、どちらの信号の電位が高いかによって信号の“H”又は“L”を表現するディファレンシャル方式が主流になっている。ディファレンシャル方式の一つとしてTIA/EIA644規格(TIA:米国電気通信工業会、EIA:米国電子工業会)に標準化されているLVDS(Low voltage differential signaling)が用いられることが多い。LVDSは、ディファレンシャル方式で動作する差動回路を有し、小振幅な差動信号を用いることで低消費電力化とノイズの影響を軽減することが可能な通信技術の一つである。
【0006】
例えば特許文献1では、LVDSに用いられるドライバ回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平09-214314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表示装置が高精細になることで画素数が増大し、画素数が増大するに従い伝達する画像信号の量が増大している。したがって画像信号を高速に伝達することが求められている。LVDSは、オペアンプを用いた差動入力信号によってノイズを除去し、伝達する画像信号の劣化を抑え、表示品位の低下を抑えることができる。
【0009】
ただし、差動入力信号の差動振幅がLVDSのレシーバ回路を構成するトランジスタのばらつきにより、画像信号が正しく受信されない問題があった。また、差動入力信号が与えられるオペアンプでは、差動入力信号の差動振幅が一定の電位差以下になると、伝達する画像信号が劣化し、誤った画像信号に変換されてしまうといった問題があった。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、新規な構成の受信回路を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、受信回路の電気特性のばらつきを抑えることで伝達する信号の劣化を抑制することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、新規な構成の表示装置を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、表示装置の電気特性のばらつきを抑えることで伝達する画像信号の劣化を抑制することを課題の一とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【0012】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び/又は他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、ディファレンシャル方式で与えられる第1の信号及び第2の信号をシングルエンド方式の第3の信号に変換して出力する受信回路である。受信回路は、オペアンプと、第1の素子と、第1のトランジスタと、第1の回路とを有する。オペアンプは、第1の入力端子と、第2の入力端子と、第1の出力端子とを有する。オペアンプは、第1の素子と電気的に接続される。第1の素子は、第1のノードを介して第1の回路と電気的に接続される。第1のノードには、第1のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続される。第1の入力端子には、第1の信号が与えられる。第2の入力端子には、第1の信号が反転した第2の信号が与えられる。オペアンプは、第1の出力端子が出力する信号を第1の素子に与える。第1のノードには、第1のトランジスタを介して第1のプリセット電位が与えられる。第1の素子には、第1のプリセット電位によってオペアンプのばらつきを含む信号が記憶される。第1の回路は、第1のプリセット電位が与えられることでオペアンプのばらつきを含む信号に影響されずに第3の信号の初期値を決定する受信回路である。
【0014】
上記構成において、受信回路は、さらに第2の素子と、第2のトランジスタとを有することが好ましい。第2の素子は、第2のノードを介してオペアンプの第1の入力端子に電気的に接続される。第2のノードには、第2のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続される。第2の素子には、第1の信号が与えられる。第2のノードには、第2のトランジスタを介して第1のプログラム電位が与えられる。第2の素子には、第1のプログラム電位によって第1の信号が含むばらつきが記憶される。オペアンプは、第1のプログラム電位が与えられることで第1の信号が含むばらつきに影響されずに第1の出力端子にオペアンプのばらつきを含む信号を出力する。
【0015】
上記各構成において、受信回路は、さらに第3の素子と、第3のトランジスタとを有することが好ましい。オペアンプは、さらに第2の出力端子を有する。第3の素子は、第3のノードを介してオペアンプの第2の入力端子に電気的に接続される。第3のノードには、第3のトランジスタのソース又はドレインの一方が電気的に接続される。第3の素子には、第2の信号が与えられる。第3のノードには、第3のトランジスタを介して第2のプログラム電位が与えられる。第3の素子には、第2のプログラム電位によって第2の信号が含むばらつきが記憶される。オペアンプは、第2のプログラム電位が与えられることで第2の信号が含むばらつきに影響されずに第2の出力端子にオペアンプのばらつきを含む信号を出力する。
【0016】
上記構成において、第1の素子乃至第3の素子は、容量素子であることが好ましい。
【0017】
上記構成において、オペアンプは、第4のトランジスタを有する。第1のトランジスタ、及び第4のトランジスタは、それぞれ半導体層が、同じ材料を含むことが好ましい。
【0018】
上記構成において、第1のトランジスタは、半導体層に金属酸化物を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様は、新規な構成の受信回路を提供することができる。又は、本発明の一態様は、受信回路の電気特性のばらつきを抑えることで伝達する信号の劣化を抑制することができる。又は、本発明の一態様は、新規な構成の表示装置を提供することができる。又は、本発明の一態様は、表示装置の電気特性のばらつきを抑えることで伝達する画像信号の劣化を抑制することができる。
【0020】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び/又は他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。したがって本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】送受信回路を説明する図。
図2】(A)(B)受信回路を説明する図。
図3】(A)(B)受信回路を説明する図。
図4】受信回路を説明する図。
図5】(A)(B)受信回路を説明する図。
図6】受信回路の動作を説明するタイミングチャート。
図7】電子機器を説明する図。
図8】(A)(B)画素を説明する図。
図9】(A)(B)(C)表示装置を説明する図。
図10】(A)(B)タッチパネルを説明する図。
図11】(A)(B)表示装置を説明する図。
図12】表示装置を説明する図。
図13】(A)(B)表示装置を説明する図。
図14】(A)(B)表示装置を説明する図。
図15】(A)乃至(E)表示装置を説明する図。
図16】(A1)(A2)(B1)(B2)(C1)(C2)トランジスタを説明する図。
図17】(A1)(A2)(B1)(B2)(C1)(C2)トランジスタを説明する図。
図18】(A1)(A2)(B1)(B2)(C1)(C2)トランジスタを説明する図。
図19】(A1)(A2)(B1)(B2)(C1)(C2)トランジスタを説明する図。
図20】(A)乃至(F)電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0024】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0025】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0026】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域又はドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域又はソース電極)の間にチャネル形成領域を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0027】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0028】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0029】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0030】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0032】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。したがって、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、又は、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0033】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-13Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vgsが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トランジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて、又は、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下であるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合がある。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するため、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0034】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あたりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0035】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、又は125℃におけるオフ電流を表す場合がある。又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証される温度、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0036】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、又は20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保証されるVds、又は、当該トランジスタが含まれる半導体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。
【0037】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0038】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0039】
なお、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。ただし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、ディファレンシャル方式で与えられる第1の信号をシングルエンド方式の第2の信号に変換して出力する受信回路について、図1乃至図8を用いて説明する。
【0041】
本発明の一態様は、ディファレンシャル方式のデータ信号が入力する受信回路のオフセット成分を低減することができる。ここでは、一例としてTIA/EIA644規格に標準化されているLVDSを用いて送信されるデータ信号を受信する受信回路について説明する。ただし、ディファレンシャル方式でデータ信号を送信する方法はLVDSに限定されない。他にも、ECL(Emitter Coupled Logic)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、LVPECL(Low-Voltage Positive Emitter Coupled Logic)、RS422(TIA/EIA422規格)、RS485(TIA/EIA485規格)などのディファレンシャル方式の規格に適用することができる。
【0042】
ディファレンシャル方式でデータ信号を送信することが好ましい電子機器の一つに表示装置がある。データ信号は、画素に与える画像信号と言い換えることができる。表示装置は、高精細になることで画素数が増大し、画素数が増大するに従い表示に必要な画像信号のデータ量が増大している。したがって画像信号を高速に送信することが求められている。
【0043】
ディファレンシャル方式(ディファレンシャル方式の一例としてLVDSを用いて説明する)では、差動信号を用いて画像信号を送信することで画像信号に重畳してしまうEMI、EMSなどのノイズ成分を低減することができる。よって、LVDSは、送信する画像信号の劣化を抑えることで表示品質の低下を抑えることができる。なお、LVDSは、差動回路を有し、小振幅な差動信号を用いることでEMI又はEMCの影響を抑え、消費電力を低減することができる。
【0044】
ここでは、本発明の一態様である受信回路を備える電子機器について説明する。例えば電子機器は、制御部と、表示装置とを有することが好ましい。一例として表示装置は、ディスプレイコントローラと、表示パネルとを有する。ディスプレイコントローラは、表示装置に対してディファレンシャル方式の画像信号である第1の信号を送信する送信回路(トランスミッタ)を有する。表示装置は、受信回路(レシーバ)と、ドライバ回路と、表示部とを有する。表示部は、複数の画素を有する。
【0045】
送信回路は、第1の伝送路、及び第2の伝送路を介して受信回路と接続される。第1の伝送路は、受信回路の第1の入力端子と電気的に接続され、第2の伝送路は、受信回路の第2の入力端子と電気的に接続される。第1の伝送路には、第1の信号が与えられ、第2の伝送路には、第2の信号が与えられる。第2の信号は、第1の信号が反転した信号である。さらに具体的に説明すると、第1の伝送路に信号“H”が与えられる場合、第2の伝送路には、信号“L”が与えられる。もしくは、第1の伝送路に信号“L”が与えられる場合、第2の伝送路には、信号“H”が与えられる。
【0046】
つまり、送信回路は、ディファレンシャル方式で第1の信号及び第2の信号を送信し、受信回路は、第1の信号を受信するための第1の入力端子と、第2の信号を受信するための第2の入力端子とを有する。受信回路は、ディファレンシャル方式の画像信号である第1の信号及び第2の信号を、シングルエンド方式の画像信号である第3の信号に変換することができる。画素には、第3の信号が与えられ、画素は、第3の信号によって表示を行う。
【0047】
受信回路は、抵抗素子、第1の回路、第2の回路、第1の入力端子、第2の入力端子、及び第1の出力端子を有する。第1の回路は、オペアンプ、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、第1の素子、及び第2の素子を有する。第2の回路は、第3のトランジスタ、第4のトランジスタ、第3の素子、第4の素子、及び第3の回路を有する。オペアンプは、第3の入力端子、第4の入力端子、第2の出力端子、及び第3の出力端子を有する。第3の回路は、第5の入力端子、第6の入力端子、及び第4の出力端子を有する。
【0048】
第3の入力端子は、第1のノードを介して第1の素子の電極の一方と、第1のトランジスタのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。第4の入力端子は、第2のノードを介して第2の素子の電極の一方と、第2のトランジスタのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。第2の出力端子は、第3の素子の電極の一方と電気的に接続される。第3の出力端子は、第4の素子の電極の一方と電気的に接続される。第5の入力端子は、第3のノードを介して第3の素子の電極の他方と、第3のトランジスタのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。第6の入力端子は、第4のノードを介して第4の素子の電極の他方と、第4のトランジスタのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。
【0049】
第1の伝送路は、第1の入力端子を介して第1の素子と電気的に接続され、第2の伝送路は、第2の入力端子を介して第2の素子と電気的に接続される。第1の伝送路は、抵抗素子を介して第2の伝送路と電気的に接続される。なお、抵抗素子は、受信回路の近傍に配置されることが好ましい。つまり、抵抗素子は、伝送路を終端する機能を有する。さらに、第1の素子と抵抗素子を接続するノードの長さは短いほど好ましく、且つ第2の素子と抵抗素子を接続するノードの長さは短いほど好ましい。また、第1の素子と抵抗素子を接続するノードの長さは、第2の素子と抵抗素子を接続するノードの長さと等しいことが好ましい。第1の素子と抵抗素子を接続するノードの長さが、第2の素子と抵抗素子を接続するノードの長さと等しいことで、伝送路のインピーダンスを同じにすることができる。相補的に動作する差動信号は、第1の伝送路と第2の伝送路のインピーダンスを同じにすることで信号の不要反射を低減することができる。
【0050】
しかしながら、第1の入力端子に与えられる信号“H”、もしくは第2の入力端子に与えられる信号“L”には、送信回路、伝送路等のオフセット成分が含まれている場合がある。したがって、伝送路等のオフセット成分は、低減させることが好ましい。例えば、伝送路等のオフセット成分を低減する方法として、第1のノードを第1の伝送路から絶縁状態にすることが好ましい。より詳細に説明すると、第1の伝送路は、第1の素子を用いることで第1のノードを絶縁状態にすることができる。第1の素子は、例えば容量素子を用いることが好ましい。異なる第1の素子として、オフ電流の小さなトランジスタを用いてもよい。例えば、チャネル形成領域の半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタはオフ電流が小さいことが知られている。
【0051】
次に、第1の回路について説明する。第1のノードには、第1のトランジスタを介して第1のプログラム電位が与えられる。第2のノードには、第2のトランジスタを介して第2のプログラム電位が与えられる。第1のプログラム電位は、第1の素子に与えられる第1の信号のオフセット成分を記憶する電位である。第2のプログラム電位は、第2の素子に与えられる第2の信号のオフセット成分を記憶する電位である。
【0052】
なお、第1のプログラム電位又は第2のプログラム電位が与えられる期間、表示装置は、画像信号の送受信を停止していることが好ましい。例えば、画像信号の受信が停止している期間において、第1の入力端子には、固定電位の信号“H”が与えられ、第2の入力端子には、固定電位の信号“L”が与えられる。もしくは、第1の入力端子には、固定電位の信号“L”が与えられ、第2の入力端子には、固定電位の信号“H”が与えられてもよい。
【0053】
第1のトランジスタ、及び第2のトランジスタは、オフ電流の小さなトランジスタを用いることが好ましい。オフ電流の小さなトランジスタを用いた場合、トランジスタをオフ状態にすることで、第1のノード、又は第2のノードが浮遊状態になる。したがって第1のノードに与えられた第1のプログラム電位、又は第2のノードに与えられた第2のプログラム電位の変動を抑えることができる。つまり、第1のプログラム電位又は第2のプログラム電位をリフレッシュする頻度を低減することができる。
【0054】
第3の入力端子には、第1のトランジスタを介して第1のプログラム電位が与えられる。第1の素子には、第1のプログラム電位によって第1の信号が含むばらつきが記憶される。第4の入力端子には、第2のトランジスタを介して第2のプログラム電位が与えられる。第2の素子には、第2のプログラム電位によって第2の信号が含むばらつきが記憶される。
【0055】
したがって、第1の回路が有するオペアンプは、第1のプログラム電位が与えられることで第1の信号が含むばらつきに影響されずに第2の出力端子にオペアンプのばらつきを含む第4の信号を出力することができる。第1の回路が有するオペアンプは、第2のプログラム電位が与えられることで第2の信号が含むばらつきに影響されずに第3の出力端子にオペアンプのばらつきを含む第5の信号を出力することができる。なお、オペアンプのばらつきとは、オペアンプを構成するトランジスタのばらつきと言い換えてもよい。
【0056】
本実施の形態では、第1のプログラム電位として、第2のプログラム電位と同じ電位が与えられることが好ましい。第1のノードと、第2のノードに同じ電位が与えられることで、オペアンプが有するばらつきが第2の出力端子、又は第3の出力端子に出力される。なお、オペアンプが、シングルエンド方式の出力信号を出力する場合は、第2の出力端子に第4の信号が出力される構成でもよい。
【0057】
なお、第1のプログラム電位は、第2のプログラム電位と異なる電位が与えられてもよい。例えば、第1のプログラム電位、又は第2のプログラム電位に異なる電位が与えられることで、第1の信号が含むオフセット成分の影響を第1の素子が記憶し、又は第2の信号が含むオフセット成分の影響を第2の素子が記憶することで、オペアンプの出力が第1のプログラム電位、又は第2のプログラム電位により決定されてもよい。
【0058】
次に、第2の回路について説明する。第3の素子と、第3の回路の第5の入力端子とを接続する第3のノードには、第3のトランジスタを介して第1のプリセット電位が与えられる。第3の素子には、第1のプリセット電位によってオペアンプの出力信号が含むばらつきが記憶される。第4の素子と、第3の回路の第6の入力端子とが接続する第4のノードには、第4のトランジスタを介して第2のプリセット電位が与えられる。第4の素子には、第2のプリセット電位によってオペアンプの出力信号が含むばらつきが記憶される。したがって、第3の信号に含まれるオフセット成分の影響を低減させることができる。
【0059】
なお、第1のプリセット電位又は第2のプリセット電位が与えられる期間において、表示装置は、画像信号の送受信を停止していることが好ましい。例えば、画像信号の受信が停止している期間、第1の入力端子には、固定電位の信号“H”が与えられ、第2の入力端子には、固定電位の信号“L”が与えられることが好ましい。
【0060】
また、第3のトランジスタと、第4のトランジスタは、オフ電流の小さなトランジスタを用いることが好ましい。オフで電流の小さなトランジスタを用いた場合、トランジスタをオフ状態にすることで、第3のノード、又は第4のノードが浮遊状態になる。したがって第3のノードに与えられた第1のプリセット電位、又は第4のノードに与えられた第2のプリセット電位の変動を抑えることができる。つまり、第1のプリセット電位又は第2のプリセット電位をリフレッシュする頻度を低減することができる。
【0061】
次に、第3の回路について説明する。第3の回路は、第1の回路が生成するディファレンシャル方式の第4の信号及び第5の信号をシングルエンド方式の第3の信号に変換し、第3の信号を第2の出力端子から出力することができる。つまり、第3のノードに第1のプリセット電位が与えられ、かつ第4のノードに第2のプリセット電位が与えられる場合、第3の信号の初期値は、第1のプリセット電位又は第2のプリセット電位によって決定される。
【0062】
つまり、第3の回路では、第4の信号及び第5の信号が有するオフセット成分が第3の素子、第4の素子により低減される。したがって、第3の回路は、第4の信号及び第5の信号が有するオフセット成分の影響を受けない。なお、第3の回路の第4の出力端子は、初期値が信号“H”、又は信号“L”のいずれかであることが好ましい。
【0063】
本実施の形態では、第1の回路に与えられる第1のプログラム電位、第2のプログラム電位、第2の回路に与えられる第1のプリセット電位、及び第2のプリセット電位によって、第3の信号の初期値が決定される。ディファレンシャル方式で受信する第1の信号及び第2の信号が、第1のプログラム電位、第2のプログラム電位、第1のプリセット電位、及び第2のプリセット電位によって初期化された受信回路によって第3の信号に変換される。したがって、本実施の形態で示す受信回路は、伝送路に起因するばらつき、又は受信回路が有するオペアンプの出力ばらつきを低減することができる。
【0064】
続いて、ディファレンシャル方式で与えられる第1の信号をシングルエンド方式の第2の信号に変換して出力する送受信回路について、図1に示すブロック図を用いて詳細に説明をする。なお、図1では、制御部51が送受信回路50を介して制御部52へデータ信号を送信する場合について説明する。なお、制御部52は、表示パネル、記憶装置、又はデータサーバなどの受動デバイスでもよい。
【0065】
送受信回路50は、送信回路53、受信回路54、伝送路55、伝送路56、及び抵抗素子57を有する。なお、抵抗素子57は、受信回路54に含まれる構成でもよい。制御部51は、送信回路53と電気的に接続される。送信回路53は、伝送路55、伝送路56を介して受信回路54と電気的に接続される。受信回路54は、制御部52と電気的に接続される。伝送路55は、抵抗素子57を介して伝送路56と電気的に接続される。
【0066】
送信回路53は、第1の信号をディファレンシャル方式で受信回路54に送信することができる。受信回路54は、第1の信号をシングルエンド方式の第2の信号に変換し、制御部52に与えることができる。
【0067】
受信回路10について、図2(A)に示す回路図を用いて詳細に説明する。受信回路10は、図1の受信回路54に相当する。受信回路10は、抵抗素子18、回路20A、回路20B、入力端子INP、入力端子INM、及び出力端子OUTを有する。回路20Aは、オペアンプ11、トランジスタ15A、トランジスタ15B、素子12A、及び素子13Aを有する。回路20Bは、トランジスタ17A、トランジスタ17B、素子12C、素子13C、及び回路14を有する。オペアンプ11は、入力端子19a、入力端子19b、出力端子19c、及び出力端子19dを有する。回路14は、入力端子19e、入力端子19f、及び出力端子19gを有する。
【0068】
入力端子19aは、ノードN1を介して素子12Aの電極の一方と、トランジスタ15Aのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。入力端子19bは、ノードN2を介して素子13Aの電極の一方と、トランジスタ15Bのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。出力端子19cは、素子12Cの電極の一方と電気的に接続される。出力端子19dは、素子13Cの電極の一方と電気的に接続される。入力端子19eは、ノードN5を介して素子12Cの電極の他方と、トランジスタ17Aのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。入力端子19fは、ノードN6を介して素子13Cの電極の他方と、トランジスタ17Bのソース又はドレインの一方とに、電気的に接続される。信号線G1は、トランジスタ15A及びトランジスタ15Bのそれぞれのゲートと電気的に接続される。信号線G3は、トランジスタ17Aのゲートと電気的に接続される。信号線G4は、トランジスタ17Bのゲートと電気的に接続される。
【0069】
伝送路55は、入力端子INPを介して素子12Aと電気的に接続され、伝送路56は、入力端子INMを介して素子13Aと電気的に接続される。伝送路55は、抵抗素子18を介して伝送路56と電気的に接続される。なお、抵抗素子18は、オペアンプ11の近傍に配置されることが好ましい。
【0070】
入力端子INPに与えられる信号“H”、もしくは入力端子INMに与えられる信号“L”には、送信回路53、伝送路55、伝送路56(伝送路55、伝送路56をまとめて伝送路と説明する場合がある)等のオフセット成分が含まれている場合がある。したがって、伝送路等のオフセット成分は、低減されることが好ましい。例えば、伝送路等のオフセット成分を低減する方法として、ノードN1を伝送路55から絶縁状態にすることが好ましい。より詳細に説明すると、伝送路55は、素子12Aを用いることでノードN1を絶縁状態にすることができる。素子12Aは、例えば容量素子を用いることができる。異なる素子12Aとして、オフ電流の小さなトランジスタを用いてもよい。例えば、チャネル形成領域の半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタはオフ電流が小さいことが知られている。
【0071】
次に、回路20Aについて説明する。ノードN1には、トランジスタ15Aを介してプログラム電位Vref1が与えられる。ノードN2には、トランジスタ15Bを介してプログラム電位Vref2が与えられる。プログラム電位Vref1は、素子12Aに与えられる第1の信号のオフセット成分を含む電位である。プログラム電位Vref2は、素子13Aに与えられる第2の信号のオフセット成分を含む電位である。
【0072】
なお、プログラム電位Vref1又はプログラム電位Vref2が与えられる期間、第1の信号の送受信を停止していることが好ましい。例えば、第1の信号の受信が停止している期間、入力端子INPには、固定電位の信号“H”が与えられ、入力端子INMには、固定電位の信号“L”が与えられている。もしくは、入力端子INPには、固定電位の信号“L”が与えられ、入力端子INMには、固定電位の信号“H”が与えられてもよい。
【0073】
また、トランジスタ15A及びトランジスタ15Bは、オフ電流の小さなトランジスタを用いることが好ましい。オフで電流の小さなトランジスタを用いた場合、トランジスタ15A及びトランジスタ15Bをオフ状態にすることでノードN1、又はノードN2が浮遊状態になる。したがってノードN1に与えられたプログラム電位Vref1、又はノードN2に与えられたプログラム電位Vref2の変動を抑えることができる。つまり、プログラム電位Vref1又はプログラム電位Vref2をリフレッシュする頻度を低減することができる。
【0074】
入力端子19aには、トランジスタ15Aを介してプログラム電位Vref1が与えられる。素子12Aには、プログラム電位Vref1によって第1の信号が含むばらつきが記憶される。また、入力端子19bには、トランジスタ15Bを介してプログラム電位Vref2が与えられる。素子13Aには、プログラム電位Vref2によって第2の信号が含むばらつきが記憶される。
【0075】
したがって、オペアンプ11は、プログラム電位Vref1が与えられることで第1の信号が含むばらつきに影響されずに出力端子19cにオペアンプのばらつきを含む第4の信号を出力することができる。また、オペアンプ11は、プログラム電位Vref2が与えられることで第2の信号が含むばらつきに影響されずに出力端子19dにオペアンプのばらつきを含む第5の信号を出力することができる。
【0076】
本実施の形態では、プログラム電位Vref1として、プログラム電位Vref2と同じ電位が与えられることが好ましい。ノードN1と、ノードN2に同じ電位が与えられることで、オペアンプ11が有するばらつきが出力端子19c、又は出力端子19dに出力される。なお、オペアンプ11が、シングルエンド方式の出力信号を出力する場合は、出力端子19dに第4の信号が出力される構成でもよい。
【0077】
なお、プログラム電位Vref1として、プログラム電位Vref2と異なる電位が与えられてもよい。例えば、プログラム電位Vref1、及びプログラム電位Vref2に異なる電位が与えられることで、第1の信号が含むオフセット成分の影響を素子12Aが記憶する、さらに、第2の信号が含むオフセット成分の影響を素子13Aが記憶する。このように、オペアンプ11の出力は、プログラム電位Vref1、又はプログラム電位Vref2により決定されてもよい。
【0078】
次に、回路20Bについて説明する。素子12Cと、回路14の入力端子19eとを接続するノードN5には、トランジスタ17Aを介してプリセット電位Vref3が与えられる。素子12Cには、プリセット電位Vref3によってオペアンプ11の出力信号が含むばらつきが記憶される。また、素子13Cと、回路14の入力端子19fとを接続するノードN6には、トランジスタ17Bを介してプリセット電位Vref4が与えられる。素子13Cには、プリセット電位Vref4によってオペアンプ11の出力信号が含むばらつきが記憶される。したがって、第3の信号に含まれるオフセット成分の影響を低減させることができる。
【0079】
なお、プリセット電位Vref3又はプリセット電位Vref4が与えられる期間、第1の信号の送受信を停止していることが好ましい。例えば、第1の信号の受信が停止している期間、入力端子INPには、固定電位の信号“H”が与えられ、入力端子INMには、固定電位の信号“L”が与えられる。
【0080】
また、トランジスタ17Aと、トランジスタ17Bには、オフ電流の小さなトランジスタを用いることが好ましい。オフで電流の小さなトランジスタを用いた場合、トランジスタ17A又はトランジスタ17Bをオフ状態にすることでノードN5又はノードN6が浮遊状態になる。したがってノードN5に与えられたプリセット電位Vref3、又はノードN6に与えられたプリセット電位Vref4の変動を抑えることができる。つまり、プリセット電位Vref3又はプリセット電位Vref4をリフレッシュする頻度を低減することができる。
【0081】
次に、回路14について説明する。回路14は、回路20Aが生成するディファレンシャル方式の第4の信号及び第5の信号をシングルエンド方式の第3の信号に変換し、第3の信号を出力端子OUTに出力することができる。つまり、ノードN5にはプリセット電位Vref3が与えられ、さらに、ノードN6にはプリセット電位Vref4が与えられる場合、第3の信号の初期値は、プリセット電位Vref3又はプリセット電位Vref4によって決定される。
【0082】
つまり、回路20Bでは、第4の信号及び第5の信号が有するオフセット成分が素子12C、素子13Cにより低減される。したがって、回路20Bは、第4の信号及び第5の信号が有するオフセット成分には影響を受けない。なお、回路20Bの出力端子19gは、初期値が信号“H”、又は信号“L”のいずれかであることが好ましい。
【0083】
本実施の形態では、回路20Aに与えられるプログラム電位Vref1、プログラム電位Vref2、回路20Bに与えられるプリセット電位Vref3、及びプリセット電位Vref4によって、第3の信号の初期値が決定される。ディファレンシャル方式で受信する第1の信号及び第2の信号が、プログラム電位Vref1、プログラム電位Vref2、プリセット電位Vref3、及びプリセット電位Vref4によって初期化された受信回路10によって、第3の信号に変換される。つまり、本実施の形態で示す受信回路10は、伝送路に起因するばらつき、又はオペアンプ11の出力ばらつきを低減することができる。
【0084】
続いて、受信回路10が有するオペアンプ11の詳細について、図2(B)に示す回路図を用いて説明する。オペアンプ11は、オペアンプ11A、オペアンプ11B、素子12B、素子13B、トランジスタ16A、及びトランジスタ16Bを有する。
【0085】
入力端子19aは、オペアンプ11Aの入力端子IP1(図では表示せず)と電気的に接続される。入力端子19bは、オペアンプ11Aの入力端子IM1(図では表示せず)と電気的に接続される。オペアンプ11Aの出力端子OP1(図では表示せず)は、素子12Bと電気的に接続される。オペアンプ11Aの出力端子OM1(図では表示せず)は、素子13Bと電気的に接続される。素子12Bは、ノードN3を介してオペアンプ11Bの入力端子IP2(図では表示せず)と、トランジスタ16Aのソース又はドレインの一方と電気的に接続される。素子13Bは、ノードN4を介してオペアンプ11Bの入力端子IM2(図では表示せず)と、トランジスタ16Bのソース又はドレインの一方と電気的に接続される。オペアンプ11Bの出力端子OP2(図では表示せず)は、出力端子19cと電気的に接続される。オペアンプ11Aの出力端子OM2(図では表示せず)は、出力端子19dと電気的に接続される。トランジスタ16A及びトランジスタ16Bのゲートには、信号線G2が電気的に接続される。
【0086】
ノードN3には、トランジスタ16Aを介してプログラム電位Vref1Aが与えられる。ノードN4には、トランジスタ16Bを介してプログラム電位Vref2Aが与えられる。なお、素子12B、素子13B、トランジスタ16A、及びトランジスタ16Bの機能については、素子12C、素子13C、トランジスタ17A、トランジスタ17Bの説明を参酌することができる。
【0087】
オペアンプ11Aは、第1の信号又は第2の信号の振幅の増幅を行うことが好ましい。または、オペアンプ11Aはコンパレータとして機能すると言い換えてもよい。オペアンプ11Bは、オペアンプ11Aで振幅が増幅された第1の信号又は第2の信号の周波数成分を劣化させずに駆動できるだけの周波数特性を有することが好ましい。
【0088】
なお、オペアンプ11A、又はオペアンプ11Bは、それぞれのオペアンプを構成するトランジスタのばらつきによるオフセット成分を有する場合がある。したがって、オペアンプ11A、又はオペアンプ11Bのオフセット成分をキャンセルすることが好ましい。なお、プログラム電位Vref1A、及びプログラム電位Vref2Aとして、プログラム電位Vref1と同じ電位が与えられることが好ましい。プログラム電位Vref1A、及びプログラム電位Vref2Aとしてプログラム電位Vref1と同じ電位が与えられることで、オペアンプ11Bのばらつきによるオフセット成分が素子12C、素子13Cに与えられる。なお、オペアンプ11A及びオペアンプ11Bが一つのオペアンプで構成されてもよい。
【0089】
図3(A)に示す、受信回路10の回路図を用いて、素子12A乃至素子12C、及び素子13A乃至素子13Cの詳細な説明をする。図3(A)で示す例では、素子12A乃至素子12C、及び素子13A乃至素子13Cは、容量素子で構成されている。容量素子を用いることで、ノードN1乃至ノードN6を容易に浮遊状態にすることができる。なお、素子12A乃至素子12C、及び素子13A乃至素子13Cは、オフ電流の小さなトランジスタを用いてもよい。オフ電流の小さなトランジスタを用いた例は、図5(A)にて詳細に説明する。
【0090】
続いて、受信回路10が有する回路14について、図3(B)に示す回路図を用いて詳細に説明する。回路14は、入力端子19e、入力端子19f、出力端子19g、回路14A、回路14B、及び回路14Cを有する。回路14Aは、トランジスタ21Aと、トランジスタ21Bとを有する。回路14Bは、トランジスタ22A、トランジスタ22B、トランジスタ23A、トランジスタ23B、及び容量素子23Cを有する。回路14Cは、トランジスタ24A、トランジスタ24B、トランジスタ24C、及び容量素子24Dを有する。入力端子19eは、トランジスタ21Aのゲートと電気的に接続する。入力端子19fは、トランジスタ21Bのゲートと電気的に接続する。
【0091】
トランジスタ21Aのソース又はドレインの一方は、トランジスタ21Bのソース又はドレインの一方、トランジスタ22Bのゲート、及びトランジスタ23Bのゲートと電気的に接続する。トランジスタ21Aのソース又はドレインの他方は、電源線V1と電気的に接続する。トランジスタ21Bのソース又はドレインの他方は、電源線V6と電気的に接続する。
【0092】
トランジスタ22Aのソース又はドレインの一方は、トランジスタ22Bのソース又はドレインの一方、トランジスタ23Aのゲート、及び容量素子23Cの電極の一方と電気的に接続する。トランジスタ22Aのゲートは、トランジスタ22Aのソース又はドレインの他方と、電源線V2と電気的に接続する。容量素子23Cの電極の他方は、トランジスタ23Aのソース又はドレインの一方、トランジスタ23Bのソース又はドレインの一方、及びトランジスタ24Bのゲートと電気的に接続する。トランジスタ23Aのソース又はドレインの他方は、電源線V3と電気的に接続する。トランジスタ22Bのソース又はドレインの他方は、電源線V6と電気的に接続する。トランジスタ23Bのソース又はドレインの他方は、電源線V6と電気的に接続する。
【0093】
トランジスタ24Bのソース又はドレインの一方は、トランジスタ24Aのソース又はドレインの一方、容量素子24Dの電極の一方、及び出力端子19gと電気的に接続する。
トランジスタ24Aのゲートは、容量素子24Dの電極の他方と、トランジスタ24Cのソース又はドレインの一方と電気的に接続する。トランジスタ24Aのソース又はドレインの他方は、電源線V5と電気的に接続する。トランジスタ24Cのソース又はドレインの他方は、トランジスタ24Cのゲート及び電源線V4と電気的に接続する。トランジスタ24Bのソース又はドレインの他方は、電源線V6と電気的に接続する。
【0094】
回路14には、第4の信号又は第5の信号が有するオフセット成分が除去された後の信号が与えられる。なお、回路14に与えられる第4の信号又は第5の信号は、ディファレンシャル方式の信号である。回路14Aは、ディファレンシャル方式の第4の信号又は第5の信号をシングルエンドの第6の信号に変換するためのスイッチ回路として機能する。電源線V1に与えられる電位は、オペアンプ11の出力電位の電位幅より大きくすることが好ましい。電源線V6に与えられる電位は、回路14の基準電位であることが好ましい。例えば、電源線V6に与えられる電位は、グランド電位とすることができる。
【0095】
回路14Bは、レベルシフタ回路として機能する。電源線V2に与えられる電位は、回路14に与えられる電位の中で最も高い電位であることが好ましい。したがって、第6の信号の振幅を大きくすることができる。トランジスタ22Aは、ダイオード接続されたトランジスタであり、トランジスタ22Aの電流供給能力が、トランジスタ23Aのスイッチング速度を決定する。電源線V3に与えられる電位は、後述する電源線V5に与えられる電位と等しいことが好ましい。なお、トランジスタ23Aのゲートに与える電位は、容量素子23Cを用いたブートストラップによりを持ち上げられる。したがって、トランジスタ23Aは、電流供給能力が増大する。
【0096】
回路14Cは、バッファ回路として機能する。電源線V5は、回路14Cが出力端子19gに信号“H”を出力する場合の電位の大きさを決定する。トランジスタ24Cは、ダイオード接続されたトランジスタであり、トランジスタ24Cの電流供給能力が、トランジスタ24Aのスイッチング速度を決定する。トランジスタ24Aのゲートに与える電位は、容量素子24Dを用いたブートストラップによりを持ち上げられる。したがって、トランジスタ24Aは、電流供給能力が増大する。なお、電源線V4に与えられる電位は、電源線V5に与えられる電位よりも大きいことが好ましい。もしくは、電源線V4に与えられる電位が、電源線V3、及び電源線V5に与えられる電位と同じでもよい。同じ電位にすることで、使用する電源の種類を減らすことができる。回路14に接続された電源線に与えられる電位の大きさは、電源線V1に与えられる電位が最も小さく、電源線V5に与えられる電位が最も大きいことが好ましい。
【0097】
一例としてオペアンプ11Aについて、図4に示す回路図を用いて詳細に説明する。オペアンプ11Aは、入力端子11A1、入力端子11A2、出力端子11A3、出力端子11A4を有する。
【0098】
オペアンプ11Aは、トランジスタ31乃至トランジスタ37、容量素子38、及び容量素子39を有する。トランジスタ31のソース又はドレインの一方は、電源線V7と、トランジスタ32のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ31のソース又はドレインの他方は、トランジスタ33のソース又はドレインの一方、容量素子38の電極の一方、及び出力端子11A4と電気的に接続される。トランジスタ32のソース又はドレインの他方は、トランジスタ34のソース又はドレインの一方、容量素子39の電極の一方、及び出力端子11A3と電気的に接続される。
【0099】
トランジスタ33のソース又はドレインの他方は、トランジスタ35のソース又はドレインの一方と、トランジスタ34のソース又はドレインの他方と電気的に接続される。トランジスタ35のソース又はドレインの他方は、電源線V8と電気的に接続される。トランジスタ33のゲートは、入力端子11A1と電気的に接続される。トランジスタ34のゲートは、入力端子11A2と電気的に接続される。
【0100】
トランジスタ36のソース又はドレインの一方は、トランジスタ31のゲートと、容量素子38の電極の他方と電気的に接続する。トランジスタ36のソース又はドレインの他方は、電源線V3と電気的に接続される。トランジスタ37のソース又はドレインの一方は、トランジスタ32のゲートと、容量素子39の電極の他方と電気的に接続する。トランジスタ37のソース又はドレインの他方は、電源線V3と電気的に接続される。トランジスタ35のゲートは、電源線VBIASと電気的に接続される。トランジスタ36及びトランジスタ37のゲートは、信号線G5と電気的に接続される。
【0101】
信号線G5に与えられる信号によってトランジスタ36がオン状態になり、トランジスタ31のゲートには、トランジスタ36を介して電源線V3の電位が与えられる。また、信号線G5に与えられる信号によってトランジスタ37がオン状態になり、トランジスタ32のゲートには、トランジスタ37を介して電源線V3の電位が与えられる。トランジスタ31のゲート、及びトランジスタ32のゲートは、信号線G5に与えられる信号によってトランジスタ36とトランジスタ37がオフ状態になることで浮遊状態になる。なお、電源線V8に与えられる電位は図3(B)の電源線V6に与えられる電位よりも小さな電位であることが好ましい。
【0102】
容量素子38、及び容量素子39はブートストラップの機能を有し、トランジスタ31、及びトランジスタ32のゲートに係る電位を持ち上げることで、トランジスタ31又はトランジスタ32の電流供給能力を増大させる効果を有する。よってトランジスタ31、又はトランジスタ32は、それぞれ出力端子11A3、又は出力端子11A4に出力する信号の電流源として機能する。
【0103】
受信回路10Aについて、図5(A)に示す回路図を用いて詳細に説明する。受信回路10Aは、トランジスタ19A、トランジスタ19B、オペアンプ11B1、及び回路14Dを有する点が図3(A)と異なっている。ここでは、図3(A)で説明した受信回路10と異なる点について説明する。
【0104】
図5(A)では、トランジスタ19A、トランジスタ19Bを用いてノードN1、又はノードN2を浮遊状態にすることができる。この場合、トランジスタはオフ電流の小さなトランジスタを用いることが好ましい。トランジスタは、チャネル形成領域の半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタを用いることができる。なお、トランジスタ19A及びトランジスタ19Bのゲートは、信号線G6に与えられる信号によってオン状態、又はオフ状態が制御されることが好ましい。
【0105】
次に、オペアンプ11B1について説明する。オペアンプ11B1は、シングエンド方式の信号を出力する点が異なっている。ディファレンシャル方式の出力に比べ、トランジスタ17A、素子12C、及び配線等を削減できる効果を有する。
【0106】
次に、回路14Dについて図5(B)の回路図を用いて詳細に説明する。回路14Dは、回路14C1を有する点が図3(B)と異なっている。回路14C1は、入力端子19h、トランジスタ24E、トランジスタ24F、トランジスタ24G、及び容量素子24Hを有する。
【0107】
トランジスタ24Fのゲートには、入力端子19hが電気的に接続される。トランジスタ24Fのソース又はドレインの一方は、トランジスタ24Eのソース又はドレインの一方、容量素子24Hの電極の一方、トランジスタ22Bのゲート、及びトランジスタ23Bのゲートと電気的に接続する。トランジスタ24Eのゲートは、トランジスタ24Gのソース又はドレインの一方と、容量素子24Hの電極の他方と、電気的に接続する。トランジスタ24Eのソース又はドレインの他方は、電源線V5Aと電気的に接続する。トランジスタ24Gのソース又はドレインの他方は、電源線V4Aと電気的に接続する。トランジスタ24Fのソース又はドレインの他方は、電源線V6と電気的に接続する。
【0108】
回路14C1は、回路14Cと同じバッファ回路として機能する。電源線V5Aは、トランジスタ22Bのゲート、及びトランジスタ23Bのゲートに与える信号“H”の電位を決定する。トランジスタ24Gは、ダイオード接続されたトランジスタであり、トランジスタ24Gの電流供給能力が、トランジスタ24Eのスイッチング速度を決定する。なお、容量素子24Hは、ブートストラップの機能を有し、トランジスタ24Eのゲートに与える電位を持ち上げることで、トランジスタ24Eの電流供給能力を増大させる効果を有する。トランジスタ22Bのゲート、及びトランジスタ23Bのゲートに対し充放電を早くすることができる。なお、電源線V4Aに与えられる電位は、電源線V5Aに与えられる電位よりも大きいことが好ましい。もしくは電源線V4A、及び電源線V5Aに与えられる電位が同じでもよい。同じ電位にすることで、使用する電源の種類を減らすことができる。
【0109】
なお、受信回路10Aを構成するオペアンプ11B1、又は回路14Aを構成する複数のトランジスタは、チャネル形成領域の半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタを用いることが好ましい。
【0110】
図3(A)で説明した受信回路10の動作について、図6に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0111】
時刻T0では、入力端子INPに信号“H”、入力端子INMに信号“L”、信号線G1に信号“H”、信号線G2に信号“H”、信号線G3に信号“H”、信号線G4に信号“H”、及び信号線G5に信号“L”が与えられる。例えば、信号線G1に与えられる信号“H”の電位は、電源線V2の電位以上であることが好ましい。信号線G2に与えられる信号“H”の電位は、電源線V3の電位以上であることが好ましい。信号線G3に与えられる信号“H”の電位は、電源線V4の電位以上であることが好ましい。信号線G4に与えられる信号“H”の電位は、電源線V3の電位以上であることが好ましい。信号線G5に与えられる信号“H”の電位は、電源線V6の電位であることが好ましい。
【0112】
入力端子INP、入力端子INMに与えられる信号は、ディファレンシャル方式の規格に準拠する電位が与えられることが好ましい。例えば、LVDSの場合、入力端子INPに1.4Vの電位が与えられる期間、入力端子INMには1.05Vが与えられる。又は、入力端子INPに1.05Vの電位が与えられる期間、入力端子INMには1.4Vが与えられる。
【0113】
例えば、信号線G1、又は信号線G2に与えられる信号によって、ノードN1に与えられるプログラム電位Vref1は、電源線V6を基準として与えられ、ノードN2に与えられるプログラム電位Vref2は、電源線V6を基準として与えられ、ノードN3に与えられるプログラム電位Vref1Aは、電源線V6を基準として与えられ、ノードN4に与えられるプログラム電位Vref2Aは、電源線V6を基準として与えられることが好ましい。なお、図6では、プログラム電位Vref1と同じ電位が、プログラム電位Vref2、Vref1A、及びVref2Aとして与えられる例を示している。
【0114】
時刻T1では、信号線G5に信号“H”が与えられる。信号線G5に与えられる信号の大きさは、電源線V3よりも大きいことが好ましい。信号線G5に信号“H”が与えられることでトランジスタ36、及びトランジスタ37がオン状態になり、トランジスタ31のゲート、トランジスタ32のゲートは、電源線V3の電位が与えられる。
【0115】
時刻T2では、信号線G1に信号“L”が与えられ、信号線G2に信号“L”が与えられ、信号線G3に信号“L”が与えられ、信号線G4に信号“L”が与えられ、信号線G5に信号“L”が与えられる。信号線G1乃至信号線G5に与えられる信号の大きさは、電源線V6に与えられる電位と同じ電位であることが好ましい。信号線G5に信号“L”が与えられることでトランジスタ36、及びトランジスタ37がオフ状態になり、トランジスタ31のゲート、トランジスタ32のゲートは、浮遊状態になり電源線V3に与えられる電位を保持する。したがって、トランジスタ31、又はトランジスタ32は、出力端子11A3、又は出力端子11A4に出力する出力信号の電流源として機能する。なお、トランジスタ31のゲート、又はトランジスタ32のゲートに与えられる電位は、容量素子38、又は容量素子39を用いたブートストラップによって持ち上げられる。したがって、トランジスタ31又はトランジスタ32は、電流供給能力が増大する。
【0116】
時刻T3では、入力端子INPに信号“L”が与えられ、さらに、入力端子INMに信号“H”が与えられる。出力端子OUTには、信号“L”が出力される。
【0117】
時刻T4では、入力端子INPに信号“H”が与えられ、さらに、入力端子INMに信号“L”が与えられる。出力端子OUTには、信号“H”が出力される。
【0118】
時刻T5以降は、入力端子INP、又は入力端子INMに与える信号により出力端子OUTが決定される。
【0119】
受信回路10は、受信回路10が有するばらつき、又はオフセット成分をキャンセルすることができる。したがって、ディファレンシャル方式で受信した第1の信号又は第2の信号は、シングルエンド方式の第3の信号に正しく変換される。
【0120】
図7では、本実施の形態の受信回路を有する電子機器について詳細に説明する。電子機器100は、制御部101と、表示装置110とを有することが好ましい。制御部101は、プロセッサ102、通信回路103、入出力回路104、ストレージ105、及びメモリ106等を有する。通信回路103は、有線通信、無線通信の機能を備えることが好ましい。また、入出回路104は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、イメージセンサ、キーボードなどを有することができる。
【0121】
表示装置110は、ディスプレイコントローラ111と、表示パネル121とを有する。ディスプレイコントローラ111は、制御部112、フレームメモリ113、及びドライバ回路114を有する。制御部112は、演算部112A、及びタイミング生成回路112Bを有する。ドライバ回路114は、複数の送信回路53を有する。
【0122】
表示パネル121は、ソースドライバ回路122、ゲートドライバ回路123、及び表示部124を有する。ソースドライバ回路122は、複数の受信回路54を有する。なお、受信回路54が本実施の形態で説明した受信回路10に相当する。表示部124は、複数の画素124Aを有する。
【0123】
フレームメモリ113に記憶される画像信号は、ディスプレイコントローラ111によって送信回路53を用いて受信回路54に送信される。なお、画像信号は、送信回路53によってディファレンシャル方式の第1の信号に変換されて送信される。
【0124】
受信回路54は、ディファレンシャル方式で受信した第1の信号又は第2の信号をシングルエンド方式の第3の信号に変換することができる。ソースドライバ回路122は、第3の信号をアナログ信号に変換することができる。ゲートドライバ回路123によって選択される画素は第3の信号が与えられ、画素は第3の信号によって表示を行うことができる。
【0125】
表示パネル121の表示部124が有する画素124Aについて、図8(A)に示す回路図を用いて詳細に説明する。画素124Aは、信号線G1、信号線G2、信号線G3、配線S1、配線MN1、配線Ano、及び配線Cathが接続される。画素124Aは、トランジスタ41、トランジスタ42、トランジスタ43、トランジスタ44、容量素子45、容量素子46、発光素子47を有する。なお、画素124Aは、トランジスタ44、容量素子46を有さない構成でもよい。
【0126】
トランジスタ41のゲートは、信号線G1と電気的に接続される。トランジスタ41のソース又はドレインの一方は、配線S1と電気的に接続される。トランジスタ41のソース又はドレインの他方は、トランジスタ42のゲート、容量素子45の電極の一方、及び容量素子46の電極の一方と電気的に接続される。
【0127】
トランジスタ42のソース又はドレインの一方は、発光素子47の電極の一方、トランジスタ43のソース又はドレインの一方、及び容量素子45の電極の他方が電気的に接続される。トランジスタ42のソース又はドレインの他方は、配線Anoと電気的に接続される。発光素子47の電極の他方は、配線Cathと電気的に接続される。トランジスタ43のソース又はドレインの他方は、配線MN1と電気的に接続される。
【0128】
トランジスタ44のゲートは、信号線G3と電気的に接続される。トランジスタ44のソース又はドレインの一方は、配線S1と電気的に接続される。トランジスタ44のソース又はドレインの他方は、容量素子46の電極の他方と電気的に接続される。
【0129】
ノードFN1は、トランジスタ42のゲート、容量素子45の電極の一方、及び容量素子46の電極の一方が接続される配線を示す。ノードFN2は、トランジスタ44のソース又はドレインの他方、容量素子46の電極の他方が接続される配線を示す。
【0130】
画素124Aは、信号線G1、信号線G2、及び信号線G3を介してゲートドライバ回路123から異なる走査信号が与えられる。また、画素124Aは、配線S1を介して画像信号が与えられる。また、画素124Aは、配線MN1を介して画素124Aに流れる電流を観測信号としてモニタすることができる。なお、観測信号は、トランジスタ43を流れる電流、又は、発光素子47に流れる電流のいずれかである。
【0131】
画素124Bについて、図8(B)に示す回路図を用いて詳細に説明する。ここでは、図8(A)で説明した画素124Aと異なる点について説明する。画素124Bは、トランジスタ41、トランジスタ42、トランジスタ43、又はトランジスタ44のいずれか一、もしくは複数が、バックゲートを有している点が異なっている。なお図8(B)では、全てのトランジスタがバックゲートを有する例を示している。トランジスタが、バックゲートを有することで、オン電流を増大させることができる。また、トランジスタの閾値を制御することができる。
【0132】
なお、表示パネル121は、ゲートドライバ回路123、表示部124、及びソースドライバ回路に含まれる受信回路10を構成するオペアンプ11、又は回路14を構成する複数のトランジスタが同じ基板上に形成されていることが好ましい。
【0133】
なお、トランジスタは、チャネル形成領域の半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタが好ましい。当該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、プログラム電位、プリセット電位、又は画像信号等の保持時間を長くできる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を有する。半導体層に酸化物半導体を有するトランジスタについては、実施の形態5で詳細な説明をする。
【0134】
又は、トランジスタのチャネル形成領域の半導体層にシリコンを用いてもよい。シリコンとしてアモルファスシリコンを用いてもよいが、特に結晶性を有するシリコンを用いることが好ましい。例えば、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用いることが好ましい。特に、多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べて低温で形成でき、且つアモルファスシリコンに比べて高い電界効果移動度と高い信頼性を備える。
【0135】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合わせて用いることができる。
【0136】
(実施の形態2)
本実施の形態では、液晶素子を用いた表示装置の構成例と、発光素子を用いた表示装置の構成例について説明する。なお、本実施の形態においては、実施の形態1で説明した表示装置の要素、動作及び機能の説明は省略する。
【0137】
本実施の形態で説明する表示装置には、実施の形態1で説明した受信回路を用いることができる。なお、以下に説明する走査線駆動回路はゲートドライバ回路、信号線駆動回路はソースドライバ回路に相当する。図9(A)、(B)、及び(C)は、表示装置を説明する図である。
【0138】
図9(A)において、第1の基板4001上に設けられた表示部215を囲むようにして、シール材4005が設けられ、表示部215がシール材4005及び第2の基板4006によって封止されている。
【0139】
図9(A)では、走査線駆動回路221a、信号線駆動回路231a、信号線駆動回路232a、及び共通線駆動回路241aは、それぞれがプリント基板4041上に設けられた集積回路4042を複数有する。集積回路4042は、単結晶半導体又は多結晶半導体で形成されている。共通線駆動回路241aは、実施の形態1に示した配線Ano、Cathなどに規定の電位を供給する機能を有する。
【0140】
走査線駆動回路221a、共通線駆動回路241a、信号線駆動回路231a、及び信号線駆動回路232aに与えられる各種信号及び電位は、FPC(FPC:Flexible printed circuit)4018を介して供給される。
【0141】
走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aが有する集積回路4042は、表示部215に選択信号を供給する機能を有する。信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aが有する集積回路4042は、表示部215に画像データを供給する機能を有する。集積回路4042は、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に実装されている。
【0142】
なお、集積回路4042の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング法、COG(Chip On Glass)法、TCP(Tape Carrier Package)法、COF(Chip On Film)法などを用いることができる。
【0143】
図9(B)は、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aに含まれる集積回路4042をCOG法により実装する例を示している。また、駆動回路の一部又は全体を表示部215と同じ基板上に一体形成して、システムオンパネルを形成することができる。
【0144】
図9(B)では、走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aを、表示部215と同じ基板上に形成する例を示している。駆動回路を表示部215内の画素回路と同時に形成することで、部品点数を削減することができる。よって、生産性を高めることができる。
【0145】
また、図9(B)では、第1の基板4001上に設けられた表示部215と、走査線駆動回路221a及び共通線駆動回路241aと、を囲むようにして、シール材4005が設けられている。また表示部215、走査線駆動回路221a、及び共通線駆動回路241aの上に第2の基板4006が設けられている。よって、表示部215、走査線駆動回路221a、及び共通線駆動回路241aは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。
【0146】
また、図9(B)では、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aを別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部を別途形成して実装しても良い。また、図9(C)に示すように、信号線駆動回路231a及び信号線駆動回路232aを表示部215と同じ基板上に形成してもよい。
【0147】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にある表示パネルと、該表示パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む場合がある。
【0148】
また第1の基板上に設けられた表示部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有している。当該トランジスタとして、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
【0149】
周辺駆動回路が有するトランジスタと、表示部の画素回路が有するトランジスタの構造は同じであってもよく、異なっていてもよい。周辺駆動回路が有するトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造が組み合わせて用いられていてもよい。同様に、画素回路が有するトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造が組み合わせて用いられていてもよい。
【0150】
また、第2の基板4006上には入力装置4200を設けることができる。図9(A)乃至(C)に示す表示装置に入力装置4200を設けた構成はタッチパネルとして機能させることができる。
【0151】
本発明の一態様のタッチパネルが有する検知素子(センサ素子ともいう)に限定は無い。指やスタイラスなどの被検知体の近接又は接触を検知することのできる様々なセンサを、検知素子として適用することができる。
【0152】
センサの方式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。
【0153】
本実施の形態では、静電容量方式の検知素子を有するタッチパネルを例に挙げて説明する。
【0154】
静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。また、投影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用いると、同時多点検知が可能となるため好ましい。
【0155】
本発明の一態様のタッチパネルは、別々に作製された表示装置と検知素子とを貼り合わせる構成、表示素子を支持する基板及び対向基板の一方又は双方に検知素子を構成する電極等を設ける構成等、様々な構成を適用することができる。
【0156】
図10(A)及び(B)は、タッチパネルの一例を説明する図である。図10(A)は、タッチパネル4210の斜視図である。図10(B)は、入力装置4200の斜視概略図である。なお、明瞭化のため、代表的な構成要素のみを示している。
【0157】
タッチパネル4210は、別々に作製された表示装置と検知素子とを貼り合わせた構成である。
【0158】
タッチパネル4210は、入力装置4200と、表示装置とを有し、これらが重ねて設けられている。
【0159】
入力装置4200は、基板4263、電極4227、電極4228、複数の配線4237、複数の配線4238及び複数の配線4239を有する。例えば、電極4227は配線4237又は配線4239と電気的に接続することができる。また、電極4228は配線4239と電気的に接続することができる。FPC4272bは、複数の配線4237及び複数の配線4238の各々と電気的に接続する。FPC4272bにはIC4273bを設けることができる。
【0160】
又は、表示装置の第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設けてもよい。第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設ける場合は、静電容量方式のタッチセンサのほか、光電変換素子を用いた光学式のタッチセンサを適用してもよい。
【0161】
図11(A)及び(B)は、表示装置の断面図を説明する図である。図11(A)及び(B)は、図9(B)中でN1-N2の一点鎖線で示した部位の断面図である。図11(A)及び(B)に示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC4018が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。また、図11(A)及び(B)では、電極4015は、絶縁層4112、絶縁層4111、及び絶縁層4110に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。
【0162】
電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電層から形成され、配線4014は、トランジスタ4010、及びトランジスタ4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電層で形成されている。
【0163】
また、第1の基板4001上に設けられた表示部215と走査線駆動回路221aは、トランジスタを複数有しており、図11(A)及び(B)では、表示部215に含まれるトランジスタ4010、及び走査線駆動回路221aに含まれるトランジスタ4011を例示している。なお、図11(A)及び(B)では、トランジスタ4010及びトランジスタ4011としてボトムゲート型のトランジスタを例示しているが、トップゲート型のトランジスタであってもよい。
【0164】
図11(A)及び(B)では、トランジスタ4010及びトランジスタ4011上に絶縁層4112が設けられている。また、図11(B)では、絶縁層4112上に隔壁4510が形成されている。
【0165】
また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、絶縁層4102上に設けられている。また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、絶縁層4111上に形成された電極4017を有する。電極4017はバックゲート電極として機能することができる。
【0166】
また、図11(A)及び(B)に示す表示装置は、容量素子4020を有する。容量素子4020は、トランジスタ4010のゲート電極と同じ工程で形成された電極4021と、ソース電極及びドレイン電極と同じ工程で形成された電極と、を有する。それぞれの電極は、絶縁層4103を介して重なっている。
【0167】
一般に、表示装置の画素部に設けられる容量素子の容量は、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間、電荷を保持できるように設定される。容量素子の容量は、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
【0168】
表示部215に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続する。図11(A)は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の一例である。図11(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031は液晶層4008を介して重畳する。
【0169】
液晶素子4013として、様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、VA-IPSモード、ゲストホストモード等が適用された液晶素子を用いることができる。
【0170】
また、本実施の形態に示す液晶表示装置にノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置を適用してもよい。垂直配向モードとしては、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0171】
なお、液晶素子は、液晶の光学変調作用によって光の透過又は非透過を制御する素子である。液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。液晶素子に用いる液晶としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0172】
図11(A)及び(B)では、縦電界方式の液晶素子を有する液晶表示装置の例を示したが、本発明の一態様には、横電界方式の液晶素子を有する液晶表示装置を適用することができる。横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層4008に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性を示す。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良又は破損を軽減することができる。
【0173】
また、スペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極層4030と第2の電極層4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いてもよい。
【0174】
また、必要に応じて、ブラックマトリクス(遮光層)、着色層(カラーフィルタ)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。また、上記バックライト、及びサイドライトとして、マイクロLEDなどを用いてもよい。
【0175】
図11(A)に示す表示装置では、基板4006と第2の電極層4031の間に、遮光層4132、着色層4131、絶縁層4133が設けられている。
【0176】
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0177】
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料又は染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。遮光層及び着色層の形成は、前述した各層の形成方法と同様に行なえばよい。例えば、インクジェット法などで行なってもよい。
【0178】
また、図11(A)及び(B)に示す表示装置は、絶縁層4111と絶縁層4104を有する。絶縁層4111と絶縁層4104として、不純物元素を透過しにくい絶縁層を用いる。絶縁層4111と絶縁層4104でトランジスタの半導体層を挟むことで、外部からの不純物の浸入を防ぐことができる。
【0179】
また、表示装置に含まれる表示素子として発光素子を用いることができる。発光素子としては、例えば、エレクトロルミネッセンスを利用するEL素子を適用することがでぎる。EL素子は、一対の電極の間に発光性の化合物を含む層(「EL層」ともいう。)を有する。一対の電極間に、EL素子の閾値電圧よりも大きい電位差を生じさせると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0180】
また、EL素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0181】
有機EL素子は、電圧を印加することにより、一方の電極から電子、他方の電極から正孔がそれぞれEL層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0182】
なお、EL層は、発光性の化合物以外に、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、又はバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)などを有していてもよい。
【0183】
EL層は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法などの方法で形成することができる。
【0184】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0185】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、当該基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出(トップエミッション)構造や、基板側の面から発光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)構造や、両面から発光を取り出す両面射出(デュアルエミッション)構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0186】
図11(B)は、表示素子として発光素子を用いた発光表示装置(「EL表示装置」ともいう。)の一例である。表示素子である発光素子4513は、表示部215に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、この構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0187】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0188】
発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0189】
発光素子4513の発光色は、発光層4511を構成する材料によって、白、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、又は黄などとすることができる。
【0190】
カラー表示を実現する方法としては、発光色が白色の発光素子4513と着色層を組み合わせて行う方法と、画素毎に発光色の異なる発光素子4513を設ける方法がある。前者の方法は後者の方法よりも生産性が高い。一方、後者の方法では画素毎に発光層4511を作り分ける必要があるため、前者の方法よりも生産性が劣る。ただし、後者の方法では、前者の方法よりも色純度の高い発光色を得ることができる。後者の方法に加えて、発光素子4513にマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度をさらに高めることができる。
【0191】
なお、発光層4511は、量子ドットなどの無機化合物を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0192】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC(Diamond Like Carbon)などを形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように、外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0193】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル系樹脂、ポリイミド、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、充填材4514に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0194】
シール材4005には、ガラスフリットなどのガラス材料や、二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、シール材4005に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0195】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0196】
また、発光素子をマイクロキャビティ構造とすることで、色純度の高い光を取り出すことができる。また、マイクロキャビティ構造とカラーフィルタを組み合わせることで、映り込みが低減し、表示画像の視認性を高めることができる。
【0197】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0198】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0199】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、又はその合金、もしくはその金属窒化物から一種以上を用いて形成することができる。
【0200】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、又は、アニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上からなる共重合体もしくはその誘導体などがあげられる。
【0201】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0202】
なお、図12に示すように、トランジスタや容量素子が高さ方向に重なる領域を有するようなスタック構造としてもよい。例えば、駆動回路を構成するトランジスタ4011及びトランジスタ4022を重ねて配置すれば、狭額縁の表示装置とすることができる。また、画素回路を構成するトランジスタ4010、トランジスタ4023、容量素子4020などが一部でも重なる領域を有するように配置すれば開口率や解像度を向上させることができる。なお、図12では図11(A)に示す液晶表示装置にスタック構造を応用した例を示しているが、図11(B)に示すEL表示装置に応用してもよい。
【0203】
また、画素回路において、電極や配線に可視光に対して透光性の高い透光性導電膜を用いることで、画素内の光の透過率を高めることができ、実質的に開口率を向上させることができる。なお、OSトランジスタを用いる場合は半導体層も透光性を有するため、さらに開口率を高めることができる。これらは、トランジスタ等をスタック構造としない場合においても有効である。
【0204】
また、液晶表示装置と発光装置を組み合わせて表示装置を構成してもよい。
【0205】
発光装置は表示面の逆側、又は表示面の端部に配置される。発光装置は表示素子に光を供給する機能を有する。発光装置は、バックライトとも呼ぶことができる。
【0206】
ここで、発光装置は、板状又はシート状の導光部(導光板ともいう)と、異なる色の光を呈する複数の発光素子を有することができる。当該発光素子を導光部の側面近傍に配置すると、導光部側面から内部へ光を発することができる。導光部は光路を変更する機構(光取り出し機構ともいう)を有しており、これにより、発光装置は表示パネルの画素部に光を均一に照射することができる。又は、導光部を設けず、画素の直下に発光装置を配置する構成としてもよい。
【0207】
発光装置は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の発光素子を有することが好ましい。さらに白色(W)の発光素子を有していてもよい。これら発光素子として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いることが好ましい。
【0208】
さらに、発光素子は、その発光スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である、極めて色純度の高い発光素子であることが好ましい。なお、発光スペクトルの半値全幅は、小さければ小さいほどよいが、例えば1nm以上とすることができる。これにより、カラー表示を行う際に、色再現性が高い鮮やかな表示を行うことができる。
【0209】
また、赤色の発光素子は、発光スペクトルのピーク波長が、625nm以上650nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。また、緑色の発光素子は、発光スペクトルのピーク波長が、515nm以上540nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。青色の発光素子は、発光スペクトルのピーク波長が、445nm以上470nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。
【0210】
表示装置は、3色の発光素子を順次点滅させるとともに、これと同期させて画素を駆動し、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行うことができる。当該駆動方法は、フィールドシーケンシャル駆動とも呼ぶことができる。
【0211】
フィールドシーケンシャル駆動では、鮮やかなカラー画像を表示することができる。また、滑らかな動画像を表示することができる。また上記駆動方法を用いることで、1つの画素を複数の異なる色の副画素で構成する必要がなく、1つの画素の有効反射面積(有効表示面積、開口率ともいう)を大きくできるため、明るい表示を行うことができる。さらに、画素にカラーフィルタを設ける必要がないため、画素の透過率も向上させることもでき、さらに明るい表示を行うことができる。また、作製工程を簡略化でき、作製コストを低減することができる。
【0212】
図13(A)、(B)は、フィールドシーケンシャル駆動が可能な表示装置の断面概略図の一例である。当該表示装置の基板4001側にはRGB各色の発光が可能なバックライトユニットが設けられる。なお、フィールドシーケンシャル駆動では、RGB各色の時分割発光で色を表現するため、カラーフィルタは不要となる。
【0213】
図13(A)に示すバックライトユニット4340aは、画素の直下に拡散板4352を介して発光素子4342が複数設けられた構成である。拡散板4352は、発光素子4342から基板4001側に射出された光を拡散し、表示部面内の輝度を均一化する機能を有する。発光素子4342と拡散板4352との間には、必要に応じて偏光板を設けてもよい。また、拡散板4352は不要であれば設けなくてもよい。また、遮光層4132を省いた構成としてもよい。
【0214】
バックライトユニット4340aは、発光素子4342を多く搭載することができるため、明るい表示が可能となる。また、導光板は不要であり、発光素子4342の光の効率を損ないにくい利点がある。なお、必要に応じて発光素子4342に光拡散用のレンズ4344を設けてもよい。
【0215】
図13(B)に示すバックライトユニット4340bは、画素の直下に拡散板4352を介して導光板4341が設けられた構成である。導光板4341の端部には発光素子4342が複数設けられる。導光板4341は、拡散板4352とは逆側に凹凸形状を有し、導波した光を当該凹凸形状で散乱して拡散板4352の方向に射出することができる。
【0216】
発光素子4342は、プリント基板4347に固定することができる。なお、図13(B)では、RGB各色の発光素子4342が重なるように図示しているが、奥行方向にRGB各色の発光素子4342が並ぶように配置することもできる。また、導光板4341において、発光素子4342とは反対側の側面には、可視光を反射する反射層4348を設けてもよい。
【0217】
バックライトユニット4340bは、発光素子4342を少なくすることができるため、低コストかつ薄型とすることができる。
【0218】
また、液晶素子には、光散乱型液晶素子を用いてもよい。光散乱型液晶素子としては、液晶と高分子の複合材料を有する素子を用いることが好ましい。例えば、高分子分散型液晶素子を用いることができる。又は、高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal))素子を用いてもよい。
【0219】
光散乱型液晶素子は、一対の電極で挟まれる樹脂部の3次元ネットワーク構造中に液晶部が設けられた構造である。液晶部に用いる材料としては、例えばネマティック液晶を用いることができる。また、樹脂部としては光硬化樹脂を用いることができる。光硬化樹脂としては、例えば、アクリレート、メタクリレートなどの単官能モノマー、ジアクリレート、トリアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレートなどの多官能モノマー、又は、これらを混合させた重合性化合物を用いることができる。
【0220】
光散乱型液晶素子は液晶材料の屈折率の異方性を利用し、光を透過又は散乱させることにより表示を行う。また、樹脂部も屈折率の異方性を有していてもよい。光散乱型液晶素子に印加される電圧に従って液晶分子が一定方向に配列するとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差が小さくなり、当該方向に沿って入射する光は液晶部で散乱されることなく透過する。したがって、光散乱型液晶素子は当該方向からは透明な状態に視認される。一方で、印加される電圧に従って液晶分子の配列がランダムとなるとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差に大きな変化が生じないため、入射する光は液晶部で散乱される。したがって、光散乱型液晶素子は視認の方向を問わず不透明の状態となる。
【0221】
図14(A)は、図13(A)の表示装置の液晶素子4013を光散乱型液晶素子4016に置き換えた構成である。光散乱型液晶素子4016は、液晶部及び樹脂部を有する複合層4009、ならびに電極層4030、4031を有する。フィールドシーケンシャル駆動に関する要素は、図13(A)と同じであるが、光散乱型液晶素子4016を用いる場合は、配向膜及び偏光板が不要となる。なお、スペーサ4035は球状の形態で図示しているが、柱状であってもよい。
【0222】
図14(B)は、図13(B)の表示装置の液晶素子4013を光散乱型液晶素子4016に置き換えた構成である。図13(B)の構成では、光散乱型液晶素子4016に電圧を印加しないときに光を透過し、電圧を印加したときに光を散乱させるモードで動作する構成とすることが好ましい。当該構成とすることで、ノーマル状態(表示をさせない状態)で透明な表示装置とすることができる。この場合は、光を散乱させる動作を行ったときにカラー表示を行うことができる。
【0223】
図14(B)に示す表示装置の変形例を図15(A)乃至(E)に示す。なお、図15(A)乃至(E)においては、明瞭化のため、図14(B)の一部要素を用い、他の要素を省いて図示している。
【0224】
図15(A)は、基板4001が導光板としての機能を有する構成である。基板4001の外側の面には、凹凸形状を設けてもよい。当該構成では、導光板を別途設ける必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。また、当該導光板による光の減衰もなくなるため、発光素子4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0225】
図15(B)は、複合層4009の端部近傍から光を入射する構成である。複合層4009と基板4006との界面、及び複合層4009と基板4001との界面での全反射を利用し、光散乱型液晶素子から外部に光を射出することができる。複合層4009の樹脂部には、基板4001及び基板4006よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0226】
なお、発光素子4342は表示装置の一辺に設けるだけでなく、図15(C)に示すように対向する二辺に設けてもよい。さらに、三辺又は四辺に設けてもよい。発光素子4342を複数の辺に設けることで、光の減衰を補うことができ、大面積の表示素子にも対応することができる。
【0227】
図15(D)は、発光素子4342から射出される光がミラー4345を介して表示装置に導光される構成である。当該構成により表示装置に一定の角度からの導光を行いやすくなるため、効率良く全反射光を得ることができる。
【0228】
図15(E)は、複合層4009上に層4003及び層4004の積層を有する構成である。層4003及び層4004の一方はガラス基板などの支持体であり、他方は無機膜、有機樹脂のコーティング膜又はフィルムなどで形成することができる。複合層4009の樹脂部には、層4004よりも屈折率が大きい材料を用いる。また、層4004には層4003よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0229】
複合層4009と層4004との間には一つ目の界面が形成され、層4004と層4003との間には二つ目の界面が形成される。当該構成により、一つ目の界面で全反射されず通り抜けた光を二つ目の界面で全反射させ、複合層4009に戻すことができる。したがって、発光素子4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0230】
なお、図14(B)及び図15(A)乃至(E)における構成は、互いに組み合すことができる。
【0231】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0232】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した各トランジスタに置き換えて用いることのできるトランジスタの一例について、図面を用いて説明する。
【0233】
本発明の一態様の表示装置は、ボトムゲート型のトランジスタや、トップゲート型トランジスタなどの様々な形態のトランジスタを用いて作製することができる。よって、既存の製造ラインに合わせて、使用する半導体層の材料やトランジスタ構造を容易に置き換えることができる。
【0234】
〔ボトムゲート型トランジスタ〕
図16(A1)は、ボトムゲート型のトランジスタの一種であるチャネル保護型のトランジスタ810のチャネル長方向の断面図である。図16(A1)において、トランジスタ810は基板771上に形成されている。また、トランジスタ810は、基板771上に絶縁層772を介して電極746を有する。また、電極746上に絶縁層726を介して半導体層742を有する。電極746はゲート電極として機能できる。絶縁層726はゲート絶縁層として機能できる。
【0235】
また、半導体層742のチャネル形成領域上に絶縁層741を有する。また、半導体層742の一部と接して、絶縁層726上に電極744a及び電極744bを有する。電極744aは、ソース電極又はドレイン電極の一方として機能できる。電極744bは、ソース電極又はドレイン電極の他方として機能できる。電極744aの一部、及び電極744bの一部は、絶縁層741上に形成される。
【0236】
絶縁層741は、チャネル保護層として機能できる。チャネル形成領域上に絶縁層741を設けることで、電極744a及び電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744a及び電極744bの形成時に、半導体層742のチャネル形成領域がエッチングされることを防ぐことができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。
【0237】
また、トランジスタ810は、電極744a、電極744b及び絶縁層741上に絶縁層728を有し、絶縁層728の上に絶縁層729を有する。
【0238】
半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、電極744a及び電極744bの、少なくとも半導体層742と接する部分に、半導体層742の一部から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料を用いることが好ましい。半導体層742中の酸素欠損が生じた領域はキャリア濃度が増加し、当該領域はn型化し、n型領域(n層)となる。したがって、当該領域はソース領域又はドレイン領域として機能することができる。半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、半導体層742から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料の一例として、タングステン、チタン等を挙げることができる。
【0239】
半導体層742にソース領域及びドレイン領域が形成されることにより、電極744a及び電極744bと半導体層742の接触抵抗を低減することができる。よって、電界効果移動度や、しきい値電圧などの、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができる。
【0240】
半導体層742にシリコンなどの半導体を用いる場合は、半導体層742と電極744aの間、及び半導体層742と電極744bの間に、n型半導体又はp型半導体として機能する層を設けることが好ましい。n型半導体又はp型半導体として機能する層は、トランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能することができる。
【0241】
絶縁層729は、外部からのトランジスタへの不純物の拡散を防ぐ、又は低減する機能を有する材料を用いて形成することが好ましい。なお、必要に応じて絶縁層729を省略することもできる。
【0242】
図16(A2)に示すトランジスタ811は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ810と異なる。電極723は、電極746と同様の材料及び方法で形成することができる。
【0243】
一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位(GND電位)や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0244】
また、電極746及び電極723は、どちらもゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層726、絶縁層728、及び絶縁層729は、それぞれがゲート絶縁層として機能することができる。なお、電極723は、絶縁層728と絶縁層729の間に設けてもよい。
【0245】
なお、電極746又は電極723の一方を、「ゲート電極」という場合、他方を「バックゲート電極」という。例えば、トランジスタ811において、電極723を「ゲート電極」と言う場合、電極746を「バックゲート電極」と言う。また、電極723を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ811をトップゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極746及び電極723のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
【0246】
半導体層742を挟んで電極746及び電極723を設けることで、更には、電極746及び電極723を同電位とすることで、半導体層742においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ811のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0247】
したがって、トランジスタ811は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ811の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0248】
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気などに対する電界遮蔽機能)を有する。なお、バックゲート電極を半導体層よりも大きく形成し、バックゲート電極で半導体層を覆うことで、電界遮蔽機能を高めることができる。
【0249】
また、バックゲート電極を、遮光性を有する導電膜で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧がシフトするなどの電気特性の劣化を防ぐことができる。
【0250】
本発明の一態様によれば、信頼性の良好なトランジスタを実現することができる。また、信頼性の良好な半導体装置を実現することができる。
【0251】
図16(B1)は、図16(A1)とは異なる構成のチャネル保護型のトランジスタ820のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ820は、トランジスタ810とほぼ同様の構造を有しているが、絶縁層741が半導体層742の端部を覆っている点が異なる。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層742と電極744aが電気的に接続している。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した他の開口部において、半導体層742と電極744bが電気的に接続している。絶縁層729の、チャネル形成領域と重なる領域は、チャネル保護層として機能できる。
【0252】
図16(B2)に示すトランジスタ821は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ820と異なる。
【0253】
絶縁層741を設けることで、電極744a及び電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744a及び電極744bの形成時に半導体層742の薄膜化を防ぐことができる。
【0254】
また、トランジスタ820及びトランジスタ821は、トランジスタ810及びトランジスタ811よりも、電極744aと電極746の間の距離と、電極744bと電極746の間の距離が長くなる。よって、電極744aと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極744bと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現できる。
【0255】
図16(C1)に示すトランジスタ825は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタ825のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ825は、絶縁層741を用いずに電極744a及び電極744bを形成する。このため、電極744a及び電極744bの形成時に露出する半導体層742の一部がエッチングされる場合がある。一方、絶縁層741を設けないため、トランジスタの生産性を高めることができる。
【0256】
図16(C2)に示すトランジスタ826は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ825と異なる。
【0257】
図17(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、及び(C2)にトランジスタ810、811、820、821、825、及び826のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0258】
図17(B2)、(C2)に示す構造では、ゲート電極とバックゲート電極とが接続され、ゲート電極とバックゲート電極との電位が同電位となる。また、半導体層742は、ゲート電極とバックゲート電極と挟まれている。
【0259】
ゲート電極及びバックゲート電極のそれぞれのチャネル幅方向の長さは、半導体層742のチャネル幅方向の長さよりも長く、半導体層742のチャネル幅方向全体は、絶縁層726、741、728、729を間に挟んでゲート電極又はバックゲート電極に覆われた構成である。
【0260】
当該構成とすることで、トランジスタに含まれる半導体層742を、ゲート電極及びバックゲート電極の電界によって電気的に取り囲むことができる。
【0261】
トランジスタ821又はトランジスタ826のように、ゲート電極及びバックゲート電極の電界によって、チャネル形成領域が形成される半導体層742を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded channel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0262】
S-channel構造とすることで、ゲート電極及びバックゲート電極の一方又は双方によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に半導体層742に印加することができるため、トランジスタの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタを微細化することが可能となる。また、S-channel構造とすることで、トランジスタの機械的強度を高めることができる。
【0263】
〔トップゲート型トランジスタ〕
図18(A1)に例示するトランジスタ842は、トップゲート型のトランジスタの1つである。トランジスタ842は、絶縁層729を形成した後に電極744a及び電極744bを形成する点がトランジスタ810やトランジスタ820と異なる。電極744a及び電極744bは、絶縁層728及び絶縁層729に形成した開口部において半導体層742と電気的に接続する。
【0264】
また、電極746と重ならない絶縁層726の一部を除去し、電極746と残りの絶縁層726をマスクとして用いて不純物755を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる。トランジスタ842は、絶縁層726が電極746の端部を越えて延伸する領域を有する。半導体層742の絶縁層726を介して不純物755が導入された領域の不純物濃度は、絶縁層726を介さずに不純物755が導入された領域よりも小さくなる。半導体層742は、電極746と重ならない領域にLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成される。
【0265】
図18(A2)に示すトランジスタ843は、電極723を有する点がトランジスタ842と異なる。トランジスタ843は、基板771の上に形成された電極723を有する。電極723は、絶縁層772を介して半導体層742と重なる領域を有する。電極723は、バックゲート電極として機能することができる。
【0266】
また、図18(B1)に示すトランジスタ844及び図18(B2)に示すトランジスタ845のように、電極746と重ならない領域の絶縁層726を全て除去してもよい。また、図18(C1)に示すトランジスタ846及び図18(C2)に示すトランジスタ847のように、絶縁層726を残してもよい。
【0267】
トランジスタ842乃至トランジスタ847も、電極746を形成した後に、電極746をマスクとして用いて不純物755を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合的に不純物領域を形成することができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。また、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0268】
図19(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、及び(C2)にトランジスタ842、843、844、845、846、847のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0269】
トランジスタ843、トランジスタ845、及びトランジスタ847は、それぞれ先に説明したS-channel構造である。ただし、これに限定されず、トランジスタ843、トランジスタ845、及びトランジスタ847をS-channel構造としなくてもよい。
【0270】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0271】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る表示装置を用いることができる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像記憶装置又は画像再生装置、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図20(A)乃至(F)に示す。
【0272】
図20(A)はデジタルカメラであり、筐体961、シャッターボタン962、マイク963、スピーカ967、表示部965、操作キー966、ズームレバー968、レンズ969等を有する。表示部965に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0273】
図20(B)はデジタルサイネージであり、柱921の側面に大型の表示部922が取り付けられた構成を有する。表示部922に本発明の一態様の表示装置を用いることで、表示品位の高い表示を行うことができる。
【0274】
図20(C)は携帯電話機の一例であり、筐体951、表示部952、操作ボタン953、外部接続ポート954、スピーカ955、マイク956、カメラ957等を有する。当該携帯電話機は、表示部952にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部952に触れることで行うことができる。また、筐体951及び表示部952は可撓性を有し、図示するように折り曲げて使用することができる。表示部952に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0275】
図20(D)はビデオカメラであり、第1筐体901、第2筐体902、表示部903、操作キー904、レンズ905、接続部906、スピーカ907等を有する。操作キー904及びレンズ905は第1筐体901に設けられており、表示部903は第2筐体902に設けられている。表示部903に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0276】
図20(E)はテレビであり、筐体971、表示部973、操作キー974、スピーカ975、通信用接続端子976、光センサ977等を有する。表示部973にはタッチセンサが設けられ、入力操作を行うこともできる。表示部973に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0277】
図20(F)は携帯データ端末であり、筐体911、表示部912、スピーカ913、カメラ919等を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができる。表示部912に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0278】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0279】
(実施の形態5)
本実施の形態では、トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物について説明する。
【0280】
トランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む金属酸化物などであり、例えば、後述するCAC-OSなどを用いることができる。
【0281】
シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい金属酸化物を用いたトランジスタは、その低いオフ電流により、トランジスタと直列に接続された容量素子に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。
【0282】
半導体層は、例えばインジウム、亜鉛及びM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジム又はハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。
【0283】
半導体層を構成する金属酸化物がIn-M-Zn系酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0284】
半導体層としては、キャリア密度の低い金属酸化物膜を用いる。例えば、半導体層は、キャリア密度が1×1017/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下、さらに好ましくは1×1013/cm以下、より好ましくは1×1011/cm以下、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上のキャリア密度の金属酸化物を用いることができる。そのような金属酸化物を、高純度真性又は実質的に高純度真性な金属酸化物と呼ぶ。当該金属酸化物は欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する金属酸化物であるといえる。
【0285】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成の酸化物半導体を用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0286】
半導体層を構成する金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、半導体層において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0287】
また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、金属酸化物と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0288】
また、半導体層を構成する金属酸化物に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0289】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(c-axis-aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0290】
また、本発明の一態様で開示されるトランジスタの半導体層には、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite oxide semiconductor)を用いてもよい。
【0291】
なお、本発明の一態様で開示されるトランジスタの半導体層は、上述した非単結晶酸化物半導体又はCAC-OSを好適に用いることができる。また、非単結晶酸化物半導体としては、nc-OS又はCAAC-OSを好適に用いることができる。
【0292】
なお、本発明の一態様では、トランジスタの半導体層として、CAC-OSを用いると好ましい。CAC-OSを用いることで、トランジスタに高い電気特性又は高い信頼性を付与することができる。
【0293】
なお、半導体層がCAAC-OSの領域、多結晶酸化物半導体の領域、nc-OSの領域、擬似非晶質酸化物半導体の領域、及び非晶質酸化物半導体の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、又は積層構造を有する場合がある。
【0294】
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0295】
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、又はその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、又はパッチ状ともいう。
【0296】
なお、金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種が含まれていてもよい。
【0297】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-Ga-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、又はインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2Z2(X2、Y2、及びZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、又はガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4Z4(X4、Y4、及びZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、又はInX2ZnY2Z2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0298】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0299】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、及びOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO(ZnO)m1(m1は自然数)、又はIn(1+x0)Ga(1-x0)(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0300】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、又はCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0301】
一方、CAC-OSは、金属酸化物の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、Ga、Zn、及びOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC-OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0302】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0303】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0304】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0305】
CAC-OSは、例えば基板を加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、及び窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つ又は複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0306】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひとつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折測定から、測定領域のa-b面方向、及びc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0307】
またCAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、輝度の高いリング状の領域と、該リング状の領域内に複数の輝点が観測される。従って、電子線回折パターンから、CAC-OSの結晶構造が、平面方向、及び断面方向において、配向性を有さないnc(nano-crystal)構造を有することがわかる。
【0308】
また例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0309】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0310】
ここで、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域は、GaOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、金属酸化物としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0311】
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2Z2、又はInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが主成分である領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0312】
従って、CAC-OSを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2Z2、又はInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、及び高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0313】
また、CAC-OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC-OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0314】
また、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタは電界効果移動度が高く、且つ駆動能力が高いため、該トランジスタを、駆動回路、代表的にはゲート信号を生成する走査線駆動回路に用いることで、額縁幅の狭い表示装置を提供することができる。また、該トランジスタを、表示装置が有する信号線駆動回路(とくに、信号線駆動回路が有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0315】
また、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタは低温ポリシリコンを用いたトランジスタのように、レーザ結晶化工程が不要である。これのため、大面積基板を用いた表示装置であっても、製造コストを低減することが可能である。さらに、ウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」)、スーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」)のよう高解像度であり、且つ大型の表示装置において、半導体層にCAC-OSを有するトランジスタを駆動回路及び表示部に用いることで、短時間での書き込みが可能であり、表示不良を低減することが可能であり好ましい。
【0316】
又は、トランジスタのチャネルが形成される半導体にシリコンを用いてもよい。シリコンとしてアモルファスシリコンを用いてもよいが、特に結晶性を有するシリコンを用いることが好ましい。例えば、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用いることが好ましい。特に、多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べて低温で形成でき、且つアモルファスシリコンに比べて高い電界効果移動度と高い信頼性を備える。
【0317】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0318】
FN1:ノード、FN2:ノード、G1:信号線、G2:信号線、G3:信号線、G4:信号線、G5:信号線、IM1:入力端子、IM2:入力端子、IP1:入力端子、IP2:入力端子、MN1:配線、N1:ノード、N2:ノード、N3:ノード、N4:ノード、N5:ノード、N6:ノード、OM1:出力端子、OM2:出力端子、OP1:出力端子、OP2:出力端子、V1:電源線、V2:電源線、V3:電源線、V4:電源線、V4A:電源線、V5:電源線、V5A:電源線、V6:電源線、V7:電源線、V8:電源線、Vre1:プログラム電位、Vref1:プログラム電位、Vref1A:プログラム電位、Vref2:プログラム電位、Vref2A:プログラム電位、Vref3:プリセット電位、Vref4:プリセット電位、10:受信回路、10A:受信回路、11:オペアンプ、11A:オペアンプ、11A1:入力端子、11A2:入力端子、11A3:出力端子、11A4:出力端子、11B:オペアンプ、11B1:オペアンプ、12:トランジスタ、12A:素子、12B:素子、12C:素子、13A:素子、13B:素子、13C:素子、14:回路、14A:回路、14B:回路、14C:回路、14C1:回路、15:発光素子、15A:トランジスタ、15B:トランジスタ、16A:トランジスタ、16B:トランジスタ、17a:トランジスタ、17A:トランジスタ、17B:トランジスタ、18:抵抗素子、19a:入力端子、19A:トランジスタ、19b:入力端子、19B:トランジスタ、19c:出力端子、19d:出力端子、19e:入力端子、19f:入力端子、19g:出力端子、19h:入力端子、20A:回路、20B:回路、21A:トランジスタ、21B:トランジスタ、22A:トランジスタ、22B:トランジスタ、23A:トランジスタ、23B:トランジスタ、23C:容量素子、24A:トランジスタ、24B:トランジスタ、24C:トランジスタ、24D:容量素子、24E:トランジスタ、24F:トランジスタ、24G:トランジスタ、24H:容量素子、31:トランジスタ、32:トランジスタ、33:トランジスタ、34:トランジスタ、35:トランジスタ、36:トランジスタ、37:トランジスタ、38:容量素子、39:容量素子、41:トランジスタ、42:トランジスタ、43:トランジスタ、44:トランジスタ、45:容量素子、46:容量素子、47:発光素子、50:受信回路、51:制御部、52:制御部、53:送信回路、54:受信回路、55:伝送路、56:伝送路、57:抵抗素子、100:電子機器、101:制御部、102:プロセッサ、103:通信回路、104:入出力回路、105:ストレージ、106:メモリ、110:表示装置、111:ディスプレイコントローラ、112:制御部、112A:演算部、112B:タイミング生成回路、113:フレームメモリ、114:ドライバ回路、121:表示パネル、122:ソースドライバ回路、123:ゲートドライバ回路、124:表示部、124A:画素、124B:画素
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