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特許7394785ジアステレオマー酒石酸エステルによるラセミ体分割による(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製する方法
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  • 特許-ジアステレオマー酒石酸エステルによるラセミ体分割による(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ジアステレオマー酒石酸エステルによるラセミ体分割による(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20231201BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20231201BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
C07D471/04 113
A61K31/4375
A61P9/00
A61P13/12
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020558978
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060368
(87)【国際公開番号】W WO2019206909
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】18169052.0
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(73)【特許権者】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・プラツェク
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ロヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート・ヨエントゲン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032673(WO,A1)
【文献】特開平02-275879(JP,A)
【文献】特表2008-521887(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101648903(CN,A)
【文献】Ludwik Synoradzki et al.,TARTARIC ACID AND ITS O-ACYLDERIVATIVES. PART 2. APPLICATION OF TARTARIC ACID AND OF O-ACYL TARTARIC ACIDSAND ANHYDRIDES. RESOLUTION OF RACEMATES,Organic Preparations and ProceduresInternational,2008年,40(2),pp. 163-200,DOI:10.1080/00304940809458084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IIIa)または(IIIb)
【化1】
(式中、Arは、
【化2】
(式中、*は結合点を表す)
を表す)
のキラル置換酒石酸エステルを使用する、(II)
【化3】
の(Ia)および/または(I)
【化4】
へのラセミ体分割。
【請求項2】
前記式(II)
【化5】
による化合物の、
前記式(I)
【化6】
の(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドへのラセミ体分割は、前記式(IIIa)
【化7】
のキラル置換酒石酸エステルを使用することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラセミ体分割がエタノール/水混合物中で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラセミ体分割が、60~80℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Arがフェニルを表すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジベンゾイル酒石酸(III)
【化8】
が前記ラセミ体分割に使用されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ラセミ体
【化9】
を前記一般式(IIIa)または(IIIb)
【化10】
のキラル置換酒石酸エステルと反応させて、ジアステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)および/または(IVd)
【化11】
(式中、Arは、
【化12】
(式中、*は結合点を表す)
を表す
少なくとも一つを与えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)および/または(IVd)
【化13】
(式中、Arは、
【化14】
(式中、*は結合点を表す)
を表す)
が沈殿することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
沈殿したジアステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)および/または(IVd)
【化15】
(式中、Arは、
【化16】
(式中、*は結合点を表す)
を表す)
が単離されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アステレオマー塩の形成が、水および水混和性有機溶媒から成る溶媒混合物中で起こることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アステレオマー塩が塩基で処理され、溶媒が除去されることを特徴とする、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用される塩基が水酸化カリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
混和性有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、1,2-エタンジオール、メトキシエタノール、メタノール、アセトン、スピリットおよびその混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ラセミ体
【化17】
をスピリット/水混合物中で式(III)
【化18】
のジベンゾイル酒石酸と反応させてジアステレオマー塩(VI)
【化19】
を与え、続いて同じくスピリット/水混合物中でリン酸ナトリウムを使用して前記式(I)による化合物
【化20】
を遊離させる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(IIIa)
【化21】
(式中、Arは、
【化22】
(式中、*は結合点を表す)
を表す)
のキラル置換酒石酸エステルを使用して、
前記式(II)
【化23】
のラセミ体分割により、
前記式(I)
【化24】
の(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製するための方法における、請求項2から14のいずれか一項に記載のラセミ体分割の使用。
【請求項16】

【化25】

【化26】

【化27】
または
【化28】
(式中、Arは、
【化29】
(式中、*は結合点を表す)
を表す)
のジアステレオマー塩。
【請求項17】
Arがフェニルであることを特徴とする、請求項16に記載のジアステレオマー塩。
【請求項18】
Arがフェニルを表すことを特徴とする、請求項16または17に記載のジアステレオマー塩。
【請求項19】
≦0.15%のジベンゾイル酒石酸含有量を有する式(I)による化合物を調製するための方法であって、以下:
セミ体(II)
【化30】
をスピリット/水混合物中で式(III)
【化31】
のジベンゾイル酒石酸と反応させてジアステレオマー塩(VI)
【化32】
を与える工程
じくスピリット/水混合物中でリン酸ナトリウムを使用してフィネレノン(I)
【化33】
を遊離させる工程
びスピリット/水混合物中でリン酸ナトリウムと反応させる工程及び
0.15%のジベンゾイル酒石酸含有量を有する純粋なフィネレノンを結晶化する工程
を含む、≦0.15%のジベンゾイル酒石酸含有量を有する式(I)による化合物を調製するための方法
【請求項20】
前記ジベンゾイル酒石酸含有量が≦0.1%であることを特徴とする、請求項19に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】
の(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製する新規かつ改善された方法に関し、また、一般式(IIIa)および(IIIb)
【化2】
(式中、Arは、置換もしくは非置換芳香族基または置換もしくは非置換ヘテロ芳香族基を表す)
のキラル置換酒石酸エステルを使用するラセミ体分割によるエナンチオマー(Ia)の調製にも関する。
【背景技術】
【0002】
フィネレノン(I)はミネラルコルチコイド受容体の非ステロイド性アンタゴニストとして作用し、例えば心不全および糖尿病性腎症などの心血管障害および腎障害の予防法および/または治療のための薬剤として使用されることがある。
【0003】
式(I)の化合物およびその調製方法は、国際公開第2008/104306号パンフレットおよびChemMedChem 2012,7,1385、ならびに国際公開第2016/016287(A1)号パンフレットに記載されている。式(I)の化合物を得るためには、アミド(II)
【化3】
のラセミ混合物がエナンチオマーに分離されなければならず、その理由は式(I)のエナンチオマーのみ活性があるからである。
【0004】
公開された研究規模の合成(国際公開第2008/104306号パンフレット)において、特異的に合成されたキラル相がこの目的のために使用(自社で調製)され、これはキラルセレクターとしてポリ(N-メタクリロイル-D-ロイシン-ジシクロプロピルメチルアミドを含んでいた。分離は商業的に容易に入手できる相上でも実施できることが明らかになっている。これは、相Chiralpak(登録商標)AS-V、20μmの形態を取る。使用された溶出液はメタノール/アセトニトリル60:40の混合物であった。この場合、クロマトグラフィーは従来のクロマトグラフィーカラムで行われてよいが、好ましくはSMB(擬似移動床;G.Paredes、M.Mazotti著、Journal of Chromatography A,1142(2007):56-68)またはVaricol(登録商標)(Computers and Chemical Engineering 27(2003)1883-1901)などの当業者に既知の技術が使用される。
【化4】
【0005】
SMB分離は比較的良好な収率および光学純度を与えるが、取得コストおよびGMP条件下のこのような設備の運転は大きな課題をもたらし、高いコストが伴う。使用されるそれぞれのキラル相も非常に高価であり、限られた寿命しか持たず、連続生産中に頻繁に交換しなければならない。生産工学の理由で、連続運転を確保するために存在する第2のプラントがない限りこれは最適ではなく、第2のプラントには追加コストが伴う。さらに、特にトン規模で生産される製品の場合、溶媒回収が時間制限的ステップであり、巨大な流下膜式蒸発器の取得を必要とし、膨大な量のエネルギーの消費を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/104306号パンフレット
【文献】国際公開第2016/016287(A1)号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【文献】ChemMedChem 2012,7,1385
【文献】G.Paredes、M.Mazotti著、Journal of Chromatography A,1142(2007):56-68
【文献】Computers and Chemical Engineering 27(2003)1883-1901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、はるかに費用効果が高く、従来のパイロットプラント設備(撹拌容器/単離装置)を使用して行うことができる、エナンチオマー混合物を分離するための代替を探索することが目的であった。このような設備は従来から医薬品生産プラントの標準設備であり、追加投資を必要としない。さらに、バッチプロセスの認定および検証はクロマトグラフィープロセスのものよりも著しく容易であり、これは追加の利点である。
【0009】
分離を開発するために、表1に示す通りラセミ体分割の古典的方法(キラル有機酸および溶媒の変更)を使用して、多数の試みが行われた:
【0010】
【表1A】
【表1B】
【0011】
とりわけ、本発明者らはまた、古典的な分割剤(+)-酒石酸を用いて実験を行った。
【0012】
しかし、いずれの場合も塩生成が観察されず、その代わり、それぞれの場合において塩を生成することなくラセミ体のみが溶液から沈殿する。これは、分子(II)のpKから導くことができる当業者の予想、すなわち(塩基の)測定されたpKは塩生成がほぼ排除される4.3であり、したがって塩生成は好ましくはキラルなスルホン酸またはホスホン酸などの非常に強い無機鉱酸または有機鉱酸を使用することによってのみ可能であろうから、有機酸を用いるジアステレオマー塩生成による古典的なラセミ体分割は可能ではないはずであるという予想と基本的に一致する。文献、例えば“Handbook of Pharmaceutical Salts-Properties,Selection and Use;P.Heinrich Stahl著、Camille G.Wermuth(編);Wiley-VCH,p.166”によれば、pK差は、安定な塩生成を可能にするために少なくとも3pK単位であるべきである。実際、これは、例えば以下の環状リン酸エステルであるクロシホスを使用して見出される:
【化5】
【0013】
3当量のこの環状リン酸エステルをラセミ体(II)と反応させると、(I)がわずか44%e.e.のエナンチオマー過剰率で存在するジアステレオマー塩が得られる。
【0014】
エナンチオマー過剰率を>99%e.e.に向かって推し進めるあらゆる努力は不成功であった。加えて、クロシホスは大量には商業的に入手できなかった。したがって、本発明者らは他の代替を調査した。
【0015】
塩生成は、(-)-O,O’-ジピバロイル-L-酒石酸または(-)-O,O’-ジアセチル-L-酒石酸などのアルキル置換酒石酸誘導体との反応では観察されなかった。
【0016】
主題をさらに調査すると、本発明者らは、驚くべきことに、芳香族またはヘテロ芳香族で置換された酒石酸誘導体がラセミ体(II)からの「ジアステレオマー塩」の生成に非常に適していることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本出願は、一般式(IIIa)または(IIIb)
【化6】
(式中、Arは、非置換もしくは置換芳香族基または非置換もしくは置換ヘテロ芳香族基を表す)
のキラル置換酒石酸エステルを使用する(II)
【化7】
の(Ia)および/または(I)
【化8】
へのラセミ体分割を提供する。
【0018】
本発明はさらに、式(IIIa)
【化9】
(式中、Arは、非置換もしくは置換芳香族基または非置換もしくは置換ヘテロ芳香族基を表す)
のキラル置換酒石酸エステルを使用する(II)
【化10】
のラセミ体分割により
式(I)
【化11】
の(4S)-4-(4-シアノ-2-メトキシフェニル)-5-エトキシ-2,8-ジメチル-1,4-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-3-カルボキサミドを調製する方法を提供する。
【0019】
「置換」という用語は、指定された基から選択されたもので当該原子上または基上の1個もしくは複数の水素原子が置き換えられていることを意味する。ただし、現状では当該原子の通常の結合価を超えないものとする。置換基および/または変数の組合せは許容される。
【0020】
「非置換」という用語は、いずれの水素原子も置き換えられていないことを意味する。
【0021】
ヘテロアリール基またはヘテロ芳香族基は、5員ヘテロアリール基、例えばチエニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリルまたはテトラゾリル;または6員ヘテロアリール基、例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルまたはトリアジニル;または三環式ヘテロアリール基、例えばカルバゾリル、アクリジニルまたはフェナジニル;または9員ヘテロアリール基、例えばベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニルまたはプリニル;または10員ヘテロアリール基、例えばキノリニル、キナゾリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キノキサリニルまたはプテリジニルであってよい。
【0022】
ヘテロアリール基は、特にピリジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、ピラゾリル基またはピリミジニル基である。
【0023】
本出願において、アリール基は特にフェニル基である。
【0024】
本発明において適した置換基は、ハロゲン、C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ、ニトリル、ニトロ基、シアノ基、CF3基、またはアミド基、例えば、NHCOR(式中、Rは、メチル、エチルまたはフェニルを表す)、もしくは-NRCOR基(式中、Rは上述の意味を有する)、もしくはCONHR基(式中、Rは上述の意味を有する)、もしくはCONRR’基(式中、R’は、上記で定義したRと同じ意味を有する)、あるいは-CO-モルホリン基または-CO-ピペリジン基などの環状アミドなどである。
【0025】
「ハロゲン原子」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子を指す。
【0026】
「C1-C6-アルキル」という用語は、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の一価の飽和炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基もしくは1,3-ジメチルブチル基またはその異性体を表す。この基は、特に1個、2個、3個または4個の炭素原子を有し(「C1-C4-アルキル」、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基またはtert-ブチル基)、特に1個、2個または3個の炭素原子を有する(「C1-C3-アルキル」、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基またはイソプロピル基)。
【0027】
「C1-C6-アルコキシ」という用語は、「C1-C6-アルキル」という用語が上記で定義した通りである式(C1-C6-アルキル)-O-の直鎖または分岐鎖の一価の飽和基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基もしくはn-ヘキシルオキシ基またはその異性体を表す。
【0028】
好ましくは、Arは
【化12】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ、水素原子、またはアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルなど、またはハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素など、またはエーテル基、例えば、O-メチル、O-エチル、O-フェニルなど、またはニトロ基、シアノ基、CF3基、またはアミド基、例えば、NHCOR(式中、Rは、メチル、エチルまたはフェニルを表してよい)、もしくは-NRCOR基(式中、Rは上述の意味を有する)、もしくはCONHR基(式中、Rは上述の意味を有する)、もしくはCONRR’基(式中、R’は、上記で定義したRと同じ意味を有する)などを表し、あるいは-CO-モルホリン基または-CO-ピペリジン基などの環状アミドを表す)
を表す。置換パターンは大幅に異なってよく、したがって最大5個の異なる置換基が理論的には可能であるが、一置換Ar基が一般に好ましい。しかし、Arは、置換ヘテロ芳香族基、例えば、好ましくはピリジンまたはピラジンであってもよい。Arは、多環式芳香族炭化水素、例えば、置換ナフタレン、アントラセンまたはキノリンであってもよい。
【0029】
特に好ましいArは
【化13】
(式中、は結合点を表す)
である。
【0030】
特に好ましくは、Arは
【化14】
(式中、は結合点を表す)
を表す。
【0031】
特に非常に好ましいAr基は
【化15】
(式中、は結合点を表す)
である。
【0032】
これらのうち、非置換環(フェニル)が特に好ましい。
【0033】
酒石酸エステルの調製は、例えば、Organic Synthesis,Coll.Vol.9,p.722(1998);Vol.72,p.86(1995)およびChirality 2011(23),3,p.228に記載の通り、文献により既知である。
【0034】
本発明はさらに、式
【化16】

【化17】

【化18】
または
【化19】
(式中、Arは、非置換もしくは置換芳香族基または非置換もしくは置換ヘテロ芳香族基を表し、かつ上述の意味を有する)
のジアステレオマー塩に関する。
【0035】
Arがフェニルを表すジアステレオマー塩が特に好ましい。
【0036】
これが実際には古典的なジアステレオマー塩であるか、水素結合により安定化された分子1:1複合体であるかを確信を持って予測することはできない。明らかなことは、これらの分子1:1集合体は安定性が高く、古典的なジアステレオマー塩のように振る舞い、単離することができるということである。したがって、以下で本発明者らは引き続きジアステレオマー塩という用語を使用する。ジアステレオマー塩の調製のために、一般式(IIIa)および(IIIb)の酒石酸誘導体が使用される:
【化20】
(式中、Arは、置換もしくは非置換芳香族基または置換もしくは非置換ヘテロ芳香族基を表す)。
【0037】
ジアステレオマー塩の調製は以下の通り行われる:
【化21】
【化22】
【0038】
ラセミ混合物(II)を一般式(IIIa)または(IIIb)の酒石酸誘導体と反応させると、ジアステレオマー塩生成の4つの可能性(IV a~d)が生じる。驚くべきことに、例えば、rac-(II)を一般式(IIIa)の酒石酸誘導体と反応させると、ほとんどの場合、一般式(IVa)のジアステレオマー塩が得られるようなある一定の優先性が観察され、S配置を有するエナンチオマーが塩を好ましく生成する。ほぼ定量的に、ジアステレオマー塩(IVa)は溶液から沈殿し、次いで溶液から、例えば濾過により単離することができ、R配置を有するエナンチオマーは溶液中に残る。非常に似たように、一般式(IVb)の鏡像塩は、ラセミ体(II)を一般式(IIIb)の酒石酸誘導体と反応させることにより調製され、R配置を有するエナンチオマーが塩を好ましく生成する。沈殿したジアステレオマー塩はほぼ定量的に分離することができ、ここでS-エナンチオマーは溶液中に残る。
【0039】
(IIIa)および(IIIb)それぞれに対する(II)の化学量論比、ならびに溶媒の選択により、収率およびエナンチオマー純度を最適化することができる。
【0040】
フィネレノン(I)はS配置を有するので、S,S配置の酒石酸誘導体がラセミ体分割に好ましく使用され、その理由は、この場合S-エナンチオマーのジアステレオマー塩が好ましく生成されるからである。
【0041】
ラセミ体分割のために、0.4~1.2当量の酒石酸エステル(IIIa)または(IIIb)が使用され、好ましくは0.4~0.7当量、特に好ましくは0.45~0.6当量、特に非常に好ましくは0.50~0.55当量使用される。
【0042】
ジアステレオマー塩の生成は、水と水混和性有機溶媒とからなる溶媒混合物中で起こる。
【0043】
本出願において、適した有機溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、酢酸エチル、イソブタノール、ジクロロメタン、1-ペンタノールまたはアセトンであるが、エタノールを使用することが好ましい。エタノールに通常使用される変性剤などの商業的に入手できる変性形態の溶媒、例えばトルエン、メチルエチルケトン、チオフェン、ヘキサンを使用することもでき、これは大きな経済的利点を有する。したがって、特に工業的規模の使用には、本出願において、トルエンまたはメチルエチルケトンで任意選択で変性させたエタノールからなるスピリットが使用されてよい。したがって、本出願において、以下でエタノールが溶媒として言及される場合、これは、純粋なエタノールに加えて、特に工業的規模の使用には、上述の定義の意味でスピリットも意味すると理解されるべきである。加えて、以下の溶媒も使用された:酢酸エチル/メタノール90:10;メタノール/水80:20;エタノール/水90:10;エタノール/水85:15;エタノール/水80:20;エタノール/水75:25;エタノール/水70:30;ジクロロメタン;1-プロパノール/水80:20;1-ペンタノール;1-ペンタノール/水90:10;イソプロパノール;イソプロパノール/水80:20;イソブタノール/水90:10;イソブタノール/水80:20;シクロヘキサノール/水90:10;ベンジルアルコール/水90:10;エチレングリコール;エチレングリコール/水80:20。
【0044】
好ましくは、ラセミ体分割は、エタノール:水=1:1~6:1の範囲内のエタノール/水混合物(v/v)中で行われる。しかし、エタノール:水=4:1~3:1の混合物が好ましい。エタノール:水=3:1の混合物が特に好ましい。混合物は、事前に調製したり、あるいはすべての成分をポットに入れたらin situで生成したりすることができる。溶媒混合物は、ラセミ体(II)に基づいて10~40倍過剰に使用することができ、例えば、1kgのラセミ体につき10l~40lの溶媒混合物が使用される。10~20倍過剰、特に13~16倍過剰が好ましく、14~15倍過剰が特に好ましい。
【0045】
通常、ラセミ体分割は、初めに室温ですべての成分を溶媒混合物に入れ、次いで、60~80℃まで、しかし好ましくは75℃まで加熱し、75℃で2~10時間、好ましくは3~4時間撹拌し、次いで、3~10時間、好ましくは4~5時間にわたって(温度勾配を用いて)室温(約20~23℃)まで冷却することにより行われる。次いで、混合物を室温でさらに2~24時間、好ましくは5~18時間、特に好ましくは12~16時間撹拌させる。ラセミ体分割は、好ましくは75℃の温度で行われる。
【0046】
続いて、沈殿したジアステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)および/または(IVd)が単離される。
【0047】
単離は、当業者に既知の方法により、例えば濾過により、または遠心分離機を使用して行われる。このように得られた濾過ケークは、溶媒または溶媒混合物で1回または数回洗浄することができる。この後、減圧下、好ましくは<100mbar、高温(50~80℃、好ましくは50℃)での乾燥が続く。場合によっては、キャリアガスの使用が有利であることが明らかになった。
【0048】
上述の手順を用いて、化学純度が非常に高いジアステレオマー塩を調製することが可能である。ジアステレオマー塩のエナンチオマー過剰率は一般に>97%e.e.(実施例参照)である。
【0049】
ジアステレオマー塩は必ずしも乾燥される必要はないが、次のプロセス段階において湿気を帯びて使用されてもよい。
【0050】
上述の通例の手順に加えて、以下の表2に示す通り、プロセスステップが組み合わせられてもよく、またはその順序が変更されてよい:
【0051】
【表2A】
【表2B】
【0052】
パイロットプラントまたは生産におけるプラントのタイプに応じて、1つの変種またはその他が有利な場合がある。
【0053】
次のステップにおいて、ジアステレオマー塩が塩基で処理され、溶媒が除去される。溶媒の除去は、当業者に既知の方法、例えば蒸留による除去を用いて行われる。キラル化合物(I)および(Ia)を生成するためには、一般式(IVa)、(IVb)、(IVc)または(IVd)のジアステレオマー塩が塩基で、続いて有機溶媒の蒸留除去で処理されなければならず、次いで、目標分子(I)または(Ia)が溶液から沈殿し、(例えば濾過および洗浄により)単離され、そのとき、式(IIIa)または(IIIb)によるそれぞれの酒石酸エステルは溶液中に塩の形態で残る。
【化23】
【0054】
本発明において、適した塩基は無機塩基および有機塩基である。アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムが無機塩基として使用されてよい。しかし、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを使用することが好ましい。リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを使用することが特に好ましい。無機塩基を無水形態とその水和物の形態の両方で使用することができ、したがって、例えば、リン酸ナトリウム(無水)およびリン酸ナトリウム水和物をうまく使用することができることを強調することが重要である。脂肪族塩基または芳香族塩基、例えばトリエチルアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、ヒューニッヒ塩基、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)が有機塩基として使用されてよい。
【0055】
目標化合物(I)または(Ia)の遊離は、水、水混和性有機溶媒、例えばエタノール、イソプロパノール、1,2-エタンジオール、メトキシエタノール、メタノールまたはアセトンの混合物中で起こるが、エタノールを使用することが好ましい。エタノールに使用される変性剤などの商業的に入手できる変性形態の溶媒、例えばトルエン、メチルエチルケトン、チオフェン、ヘキサンが使用されてもよく、好ましくは、本出願において、トルエンまたはメチルエチルケトンで任意選択で変性させたエタノールからなるスピリットが使用されてよく、これは大きな経済的利点を有する。エタノール:水=1:6~1:3の範囲内の水とエタノールの混合物(v/v)を使用することが有利であることが明らかになった。しかし、エタノール:水=1:4の混合物が好ましい。混合物は、事前に調製したり、あるいはすべての成分をポットに入れたらin situで生成したりすることができる。これらの混合物は、使用されるジアステレオマー塩(IVaまたはIVbまたはIVcまたはIVd)の量の7~20倍の量で使用されてよい(すなわち、例えば、7l~20lのこの混合物中1kg)。好ましくは、使用される混合物の量は、塩の量の8~12倍、特に好ましくは9~11倍、特に非常に好ましくは10倍である。
【0056】
目標化合物(I)または(Ia)は、初めに0~80℃、好ましくは20~50℃でジアステレオマー塩(IVaまたはIVbまたはIVcまたはIVd)を溶媒混合物に入れ、続いて(固形状のまたは溶液としての、好ましくは水中の)有機塩基または無機塩基を加えて、pHを6.9~9.5、好ましくは7.0~8.0に、特に好ましくはpH7.5に調整することにより遊離される。任意選択で、塩基は、非常に速く(数分にわたって)、あるいは非常にゆっくり(数時間にわたって)、例えば5分~3時間にわたって加えてよい。どのような場合でも、より遅い添加が好ましく、好ましくは、計量添加が5分~1時間にわたって行われる。この目的のために、反応器内に設置されたpH計が使用されてよく、これにより設定が確認され、塩基がゆっくり加えられる。しかし、初めに、経験に基づいて確実に所望のpH範囲に達する一定量の塩基(固体、または溶媒に溶解)を加えることも可能である。生産上、このような手順が特に好ましい。pHを設定した後、撹拌を10~80℃、好ましくは20~60℃、好ましくは40~60℃で続けることが有利であることが明らかになった。追加の撹拌時間は、1~10時間、好ましくは2~5時間、特に好ましくは3~4時間であってよい。次いで、混合物を例えば勾配を用いて15~25℃まで徐冷し、次いで、再び1~64時間撹拌してよい(64時間でプロセスの頑健性を実証することができる。実施例3b参照)が、追加の撹拌時間は、好ましくは3~24時間の間であり、10~20時間で一般に十分である。
【0057】
単離は、当業者に既知の方法により、例えば濾過により、または遠心分離機を使用して行われる。このように得られた濾過ケークは、溶媒または溶媒混合物で1回または数回洗浄することができる。この後、減圧下、好ましくは<100mbar、高温(50~80℃、好ましくは50℃)での乾燥が続く。場合によっては、キャリアガスの使用が有利であることが明らかになった。
【0058】
しかし、フィルターから得られた材料をエタノールまたは水とエタノールの混合物を使用して溶解し、次いで、溶出液中の水/エタノールの量を調整後、すぐに次のプロセスステップに進むことも可能である(下記参照)。この手順は、乾燥ステップを省くことができるので、特に工業的規模で作業するとき好ましい。
【0059】
上述の手順を用いて、化学純度が非常に高い粗生成物を調製することが可能である。粗生成物(I)および(Ia)のエナンチオマー過剰率は一般に>96.5%e.e.である。
【0060】
スケールアップの間、粗生成物(I)および(Ia)からの酒石酸エステル(IIIa)および(IIIb)の完全な除去が技術的に必ずしも単純であるとは限らないこと、およびこれらの成分の含有量が仕様限界に近いことが明らかになった。最終活性化合物に関する仕様要件が非常に高い(最終活性化合物中の(IIIa)<0.1%)ので、確実に酒石酸エステル(IIIa)の含有量を0.15%未満、好ましくは0.1%未満、特に0.05%未満まで減少させ、最終活性化合物が仕様に適合する品質で再現性よく得られるさらなるプロセスステップを場合によっては追加することが有利であることが明らかになった。純粋な生成物を与える最終結晶化では、酒石酸エステル(IIIa)が減少することはほとんどなく、または実質的に全くなく、したがって、このようなその後のプロセスステップは、プロセス全体の頑健な運転が確保され、さらに、運転が実質的に損失を伴わないことを保証する。確実に化合物(IIIa)を活性化合物中0.15%未満まで、好ましくは0.1%未満まで、特に0.05%未満まで減少させるこのプロセスステップも本発明の主題の一部を形成する。(IIIa)の量を減少させるプロセスは以下の通り行われる。プロセスに使用される出発材料は、乾燥された、または有利に、まだ湿気のある(I)もしくは(Ia)の粗生成物である。やはり、塩基が使用される。無機塩基または有機塩基が式(IIIa)または(IIIb)の酒石酸エステルを除去するために使用されてよい。アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムが無機塩基として使用されてよい。しかし、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを使用することが好ましい。リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを使用することが特に好ましい。無機塩基を無水形態とその水和物の形態の両方で使用することができ、したがって、例えば、リン酸ナトリウム(無水)およびリン酸ナトリウム水和物をうまく使用することができることを強調することが重要である。脂肪族塩基または芳香族塩基、例えばトリエチルアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、
ヒューニッヒ塩基、ピリジン、DBUが有機塩基として使用されてよい。
【0061】
(IIIa)または(IIIb)の低減の実施は、水と、水混和性有機溶媒、例えばエタノールまたはイソプロパノール、1,2-エタンジオール、メトキシエタノール、メタノール、イソプロパノールまたはアセトンの混合物中で行われるが、エタノールを使用することが好ましい。エタノールに使用される変性剤などの商業的に入手できる変性形態の溶媒、例えばトルエン、メチルエチルケトン、チオフェン、ヘキサンが使用されてもよく、これは大きな経済的利点を有する。エタノール:水=30:10~10:10の範囲内の水とエタノールの混合物(v/v)を使用することが有利であることが明らかになった。しかし、エタノール:水=20:10の混合物が好ましい。混合物は、事前に調製したり、あるいはすべての成分をポットに入れたらin situで生成したりすることができる。使用されるジアステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)または(IVd)に基づいて10~20倍の量の溶媒混合物を使用することが可能である(すなわち、例えば、10l~20lのこの混合物中1kg)。好ましくは、使用される混合物の量は、この混合物の量の10~14倍、特に好ましくは11~12倍である。
【0062】
(IIIa)または(IIIb)の低減の実施は、混合物を初めに40~80℃、好ましくは50~70℃で上述の通り溶媒混合物に入れ、続いて(固形状のまたは溶液としての、好ましくは水中の)有機塩基または無機塩基を加えて、pHを6.9~9.5、好ましくは7.5~9.0に、特に好ましくはpH8.5に調整するように行われる。任意選択で、塩基は、非常に速く(数分にわたって)、あるいは非常にゆっくり(数時間にわたって)、例えば1分~3時間にわたって加えてよい。どのような場合でも、より遅い添加が好ましく、好ましくは、計量添加が1分~1時間にわたって行われる。この目的のために、反応器内に設置されたpH計が使用されてよく、これにより設定が確認され、塩基がゆっくり加えられる。しかし、初めに、経験に基づいて確実に所望のpH範囲に達する一定量の塩基(固体、または溶媒に溶解)を加えることも可能である。生産上、このような手順が最も好ましい。pHを設定した後、撹拌を40~80℃、好ましくは50~75℃、好ましくは60~70℃で続けることが有利であることが明らかになった。追加の撹拌時間は、1~24時間、好ましくは2~10時間、特に好ましくは2~4時間であってよい。次いで、有機溶媒がほとんど留去され、これは、大気圧で、または減圧下でより穏やかに行われてよい。有機溶媒がほとんど留去されたら、混合物を例えば勾配を用いて15~25℃まで徐冷し、次いで、再び1~64時間撹拌してよい(64時間でプロセスの頑健性を実証することができる。実施例3b参照)が、追加の撹拌時間は、好ましくは1~24時間の間であり、1~5時間で一般に十分である。
【0063】
単離は、当業者に既知の方法により、例えば濾過により、または遠心分離機を使用して行われる。このように得られた濾過ケークは、溶媒または溶媒混合物で1回または数回洗浄することができる。この後、減圧下、好ましくは<100mbar、高温(50~80℃、好ましくは50℃)での乾燥が続く。場合によっては、キャリアガスの使用が有利であることが明らかになった。
【0064】
溶媒の蒸留除去の前に、有機酸、例えばギ酸、クエン酸、酢酸、または無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、または酸性塩、例えばリン酸二水素ナトリウム、重硫酸カリウムもしくは重硫酸ナトリウムを使用してpHをpH5~7に再調整し、次いで、上述の通り続けることも可能である。
【0065】
上述の手順を用いて、化学純度が非常に高い粗生成物を調製することが可能である。粗生成物(I)および(Ia)のエナンチオマー過剰率は一般に>97%e.e.である。(IIIa)または(IIIb)の含有量は0.15%未満、好ましくは0.1%未満、特に0.05%未満まで減少した。
【0066】
このように得られた式(I)または(Ia)の粗生成物のエナンチオマー過剰率は一般に>97%e.e.であるので、粗生成物に追加の結晶化を行い、化学純度と特に光学純度の両方を改善することが有利であることが明らかになった。この目的のために、最終結晶化プロセスを開発した。GMPの理由で、粗生成物(I)または(Ia)をエタノールに(必要な場合、加熱しながら)溶解し、次いで、好ましくはスピリット、またはトルエンで変性させたエタノールを使用して、粒子濾過を行う。場合によっては、技術的設備に応じて、結晶化を加圧下、高温で行うこともできる(利点:より少ない溶媒)が、エタノール水溶液からの再結晶化(高圧下または大気圧)も可能である。次いで、大気圧下または減圧下、混合物は、元の体積の約1/3~1/6、好ましくは1/4~1/5まで濃縮され、この結果、生成物が結晶化される。場合によっては、例えば長期間にわたって大量に留去しなければならないとき、分解および副生成物生成を回避するために内部温度を低く保ちながら減圧下で蒸留除去を行うことが有利であることが明らかになった。蒸留が終わった後、混合物は0℃まで冷却され、次いで、結晶が単離され、減圧下40~50℃で乾燥される。収率は一般に理論値の>88%である。達成される化学純度および含有量は、ICHガイドラインによる商品の基準に対応する。パイロットプラントバッチでは、残留溶媒含有量、この場合エタノール含有量は一般に<0.05%である。光学純度は>>99%e.e.である。
【0067】
特に工業的規模の運転のための特に好ましいプロセスにおいて、(+)-ジベンゾイル酒石酸(III)が使用され、無水形態と水和物の両方が使用されてよい:
【化24】
【0068】
ラセミ体分割は、好ましくはスピリット/水混合物中で行われる。その後の粗製フィネレノンの遊離
【化25】
は、好ましくは、リン酸ナトリウムを塩基として使用してスピリット/水混合物中で行われる。再処理を必要とする場合、(+)-ジベンゾイル酒石酸(III)の割合が>0.15%であれば、
【化26】
再処理は、好ましくは、リン酸ナトリウムを塩基として使用してスピリット/水混合物中で行われる。純粋なフィネレノンを与える最終結晶化は、好ましくは、スピリットを溶媒として使用して行われる。この場合、不純物0.15%、好ましくは0.1%、特に好ましくは0.05%未満が達成される。
【0069】
母液から目標エナンチオマーを単離することも可能である。この場合、初めに、適切なジアステレオマー塩(IVa)、(IVb)、(IVc)または(IVd)が(I)または(Ia)のいずれかから調製され、次いで、濾過により単離され、次いで、それぞれの他のジアステレオマーを含む母液が、塩基、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、好ましくは水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、特に好ましくはリン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムなどを加えることによりpH>7、好ましくはpH7.5のpHに調整される。次いで、有機溶媒、好ましくはエタノールが大気圧で、または減圧下でより穏やかに留去され、この結果、対応する他のエナンチオマーが沈殿する。生成物が濾別され、水または水/溶媒混合物で洗浄され、乾燥される。例えば実施例1cに記載のスピリットからの適切な最終結晶化は、適切な純粋な形態の化合物(I)および(Ia)を与える。
【化27】
【0070】
したがって、本出願はさらに、ラセミ体(II)
【化28】
をスピリット/水混合物中で式(III)
【化29】
のジベンゾイル酒石酸と反応させてジアステレオマー塩(VI)
【化30】
を与え、続いて同じくスピリット/水混合物中でリン酸ナトリウムを使用してフィネレノン(I)
【化31】
を遊離させ、次いで、再びスピリット/水混合物中でリン酸ナトリウムと反応させ、次いで、≦0.15%のジベンゾイル酒石酸含有量を有する純粋なフィネレノンを結晶化することにより得られる、≦0.15%のジベンゾイル酒石酸含有量を有するフィネレノン(I)を提供し、特に好ましい実施形態において、≦0.1%、特に0.05%未満のジベンゾイル酒石酸含有量を有するフィネレノンが得られる。
【0071】
実験の部
略記および頭字語:
EtOH エタノール
DB酒石酸 ジベンゾイル酒石酸
DMSO ジメチルスルホキシド
HPLC 高圧、高性能液体クロマトグラフィー
1H-NMR 1H核磁気共鳴分析法
IT 内部温度
MS 質量分析法
RT 保持時間
RRT 相対保持時間
TFA トリフルオロ酢酸
TM マントル温度
XRPD X線粉末回折
スピリット 2%トルエンで変性させたエタノール
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】実施例1aにより無色の結晶性粉末として得られた化合物(VI)のXRPDを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
実施例
以下の表3は、HPLCにおいて回収された化合物の構造を示す。HPLCにおける保持時間の帰属を以下に示す。
【0074】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【0075】
1)ジベンゾイル酒石酸の段階で不純物の含有量およびエナンチオマー純度を確認するための分析法
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
2)ジアステレオマー塩の段階で不純物の含有量およびエナンチオマー純度を確認するための分析法
【0079】
【表6】
【0080】
3)粗製フィネレノン(I)の段階で不純物の含有量およびエナンチオマー純度を確認するための分析法。
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
測定器/検出器:温度制御カラムオーブン、UV検出器およびデータ評価システムを備える高性能液体クロマトグラフ。
測定波長:252nm
オーブン温度:40℃
カラム:Chiralpak(登録商標)IC
長さ:150mm、内径:4.6mm、粒径:3μm
移動相:A:50%緩衝液20mM酢酸アンモニウムpH9
B:50%アセトニトリル
流量:1ml/分
溶出時間:8分
平衡:不要、アイソクラティック
サンプル溶媒:移動相
試験溶液:サンプル溶媒に溶解した約0.5mg/mlのラセミ体物質
比較溶液:サンプル溶液と類似の比較溶液が調製される
注入量:10μl
【0084】
エナンチオマーを決定するための以下の実施例に記載の測定値はすべて、方法Bにしたがって決定した。いくつかの値、特にパイロットプラントにおいて調製されたバッチの値は、比較のために方法Aを使用して再び測定され、同等の結果を与えた。
【0085】
最終生成物である純粋なフィネレノン(I)の純度および含有量に関する、以下の実施例に記載のHPLC分析データでは、生成物中に存在する>0.05%の量の不純物についてのみ言及する。これは基本的に不純物Eである。上に挙げた表に示したすべての他の不純物は一般に<0.05%である。このような不純物の構造は、濃縮母液から単離することにより決定した。
【0086】
実施例1
無水(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を使用する実験室バッチ
実施例1a
酒石酸塩(IV)調製
初めに、250g(660.616mmol)のフィネレノン(II)ラセミ体を室温(約23℃)でエタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる3500mlの混合物に入れた。130.2g(363.339mmol)の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を固体用漏斗を使用して加え、続いてエタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる250mlの混合物ですすいだ。得られた懸濁物を0.75時間にわたって75℃の内部温度まで加熱し、次いで、この温度で3.0時間撹拌した。続いて、冷却勾配を用いて、混合物を5.0時間にわたって23℃まで冷却し、次いで、この温度で一晩(約16時間)撹拌した。フリットに通して懸濁物を濾別し、エタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる250mlの混合物で1回すすいだ。湿収量:334.7g。次いで、湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:250.2g(理論値の100.08%)の無色の結晶性粉末。
【0087】
分析結果:
【0088】
【表9】
【0089】
MS(EIpos):m/z=379[M+H]
1H-NMR(400 MHz,DMSO-d6):δ=1.05(t,3H),2.12(s,3H),2.18(s,3H),3.82(s,3H),3.99-4.07(m,2H),5.39(s,1H),5,89(s,2H),6.60-6.84(m(broad signal),2H),7.14(d,1H),7.28(dd,1H),7.37(d,1H),7.55(s,1H),7,61(t,4H),7.69(s,1H),7,75(t,2H),8,04(d,4H),12.50-15.40(非常にブロードなシグナル,2H)および溶媒DMSOのシグナルおよび増大した水のシグナル:δ=2.5-2.6、ならびにδ=3.40-3.50(q)およびδ=1.05-1.10(t)のより小さいピーク、残留溶媒エタノールによる重なったシグナル。
【0090】
実施例1aにより得られた無色の結晶性粉末(フィネレノン-(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸複合体(VI))を以下の条件下、25℃でXRPDにより調べた:
サンプル調製:粉末は、2枚のフィルム(例えばポリアセテート)間の薄層として調製される
装置:X線粉末回折計X’Pert Pro
発生装置:40kV/40mA
検出器:PIXcel
放射:CuKa線
波長:1.5406Å
手法:透過法
走査範囲:2°£2Q£40°
ステップ幅:0.013°2Q
測定時間:25s/ステップ
【0091】
結果を図1および表1に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
実施例1b
粗生成物(I)調製
室温で、実施例1aにおいて調製した248gの化合物(IV)をエタノール(トルエンで変性)/水=20:80(v/v)からなる2480mlの混合物中に懸濁させた(pHはpH=4と決定された)。続いて、819.6gのリン酸ナトリウム水溶液(1000mlの水に溶解した100gのリン酸ナトリウム)を60分にわたって滴加し、pHをpH=7.2に調整した。混合物を23℃でさらに50分間撹拌した(pH=7.1)。続いて、98.3gのリン酸ナトリウム水溶液(1000mlの水に溶解した100gのリン酸ナトリウム)を10分にわたって滴加し、pHをpH=7.5に調整した。1時間にわたって混合物を50℃の内部温度まで加熱し、この温度で3.0時間撹拌した。混合物を1時間にわたって22℃まで冷却し、この温度でさらに1時間撹拌した。フリットに通して結晶を濾別し、エタノール(トルエンで変性)/水=20:80(v/v)からなる混合物200mlで1回、100mlで1回、200gの水で2回洗浄する。湿収量:263.4g。次いで、湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で週末の間(>48時間)乾燥した。収量:116.9g(理論値の93.52%)の無色の結晶性粉末。
【0094】
分析結果:
【0095】
【表11】
【0096】
MS(EIpos):m/z=379[M+H]
1H-NMR(400 MHz,DMSO-d6):δ=1.05(t,3H),2.12(s,3H),2.18(s,3H),3.82(s,3H),3.99-4.07(m,2H),5.37(s,1H),6.60-6.84(m(broad signal),2H),7.14(d,1H),7.28(dd,1H),7.37(d,1H),7.55(s,1H),7.69(s,1H)および溶媒DMSOのシグナルおよび著しく増大した水のシグナル:δ=2.5-2.6、ならびにδ=3.38の非常に小さいピーク(帰属されず)
【0097】
実施例1c
純粋な生成物(I)調製
実施例1bにおいて調製した116.0gの粗生成物(I)を2330mlのエタノール(トルエンで変性)中に懸濁させ、次いで加熱還流した。加熱すると、生成物が溶液に溶けた。撹拌をこの温度で1時間続けた。溶液を、加熱した加圧フィルター(T=75℃)に通して濾別し、次いで、加圧フィルターを30mlのエタノール(トルエンで変性)ですすいだ。次いで、約4倍の最終体積(使用した物質に対して:116g×4~484ml)に達する点まで溶媒を留去した(約1920mlを留去した)。次いで、混合物を23℃の内部温度まで(約1.5~2時間の期間)冷却した。次いで、混合物を3℃の内部温度で2時間撹拌した。生成物を濾別し、100mlのエタノール(トルエンで変性)で1回すすいだ。湿収量:124g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で週末の間(>48時間)乾燥した。収量:112.6g(
理論値の97.07%)の無色の結晶性粉末、細い針状結晶。
【0098】
分析結果:
【0099】
【表12】
【0100】
MS(EIpos):m/z=379[M+H]
1H-NMR(400 MHz,DMSO-d6):δ=1.05(t,3H),2.12(s,3H),2.18(s,3H),3.82(s,3H),3.99-4.07(m,2H),5.37(s,1H),6.60-6.84(m(broad signal),2H),7.14(d,1H),7.28(dd,1H),7.37(d,1H),7.55(s,1H),7.69(s,1H)ならびにδ=2.5-2.6の溶媒DMSOおよび水の小さいシグナルならびにδ=3.38の非常に小さいピーク(帰属されず)
変更:変更A(絶対配置がX線により決定された国際公開第2016/016287(A1)号パンフレットの定義にしたがう)
【0101】
実施例2
(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸水和物(III)を使用する実験室バッチ
実施例2a
酒石酸塩調製
初めに、ラセミ体(II)350.0gを室温で入れ、次いで、3112gのスピリットを加えた。次いで、1200gの水を加えた。191.4gの(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸一水和物(III)を固体用漏斗を使用して加え、続いて113gの水ですすいだ。懸濁物を1時間にわたって75℃の内部温度まで加熱し、次いで、75℃で3時間撹拌した。続いて、冷却勾配を用いて、混合物を5.0時間にわたって23℃まで冷却し、次いで、この温度で一晩(約18時間)撹拌した。フリットに通して懸濁物を濾別し、332.3gのスピリットと140.2gの水からなる混合物で2回洗浄した。湿収量:487.6g。次いで、湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で週末の間(>48時間)乾燥した。収量:351.0g(理論値の100.29%)の無色の結晶性粉末。
【0102】
【表13】
【0103】
実施例1bおよび1cに記載の方法と類似の方法で、純粋なフィネレノン(I)をこの酒石酸塩から調製することができる。
【0104】
実施例3
2kgのラセミ体(II)から出発する、パイロットプラントにおける純粋なフィネレノン(I)の3種類のバッチの調製。
実施例3a
酒石酸塩(IV)調製
初めに、2.00kg(5.285mol)のラセミのフィネレノン(II)を室温(約23℃)でエタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる28.0lの混合物に入れた。1.042kg(2.907mol)の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を固体用漏斗を使用して加え、続いてエタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる2lの混合物ですすいだ。得られた懸濁物を45分にわたって75℃の内部温度まで加熱し、次いで、この温度で3.0時間撹拌した。続いて、冷却勾配を用いて、混合物を5.0時間にわたって23℃まで冷却し、次いで、この温度で一晩(約16時間)撹拌した。フリットに通して懸濁物を濾別し、エタノール(トルエンで変性)/水=75:25(v/v)からなる2lの混合物で1回すすぎ、10分間吸引乾燥した。湿収量:2.69kg。次いで、湿った生成物を質量が一定になる(約17時間後)まで減圧下(<100mbar)、50℃で乾燥した。収量:2.009kg(理論値の~100%)の無色の結晶性粉末。
【0105】
実施例3b
粗生成物(I)調製
室温(約23℃)で、実施例3aにおいて調製した2.006kgの化合物(IV)をエタノール(トルエンで変性)/水=1:4(v/v)からなる20.0lの混合物中に懸濁させた(pHはpH=4と決定された)。次いで、6.05kgの9.09%強度リン酸ナトリウム水溶液を滴加し、pHをpH=7.2に調整した。混合物を23℃でさらに約50分間撹拌した(pH=7.17)。次いで、0.65kgの9.09%強度リン酸ナトリウム水溶液を滴加し、pHをpH=7.5に調整した。1時間にわたって混合物を50℃の内部温度まで加熱し、この温度で3.0時間撹拌した。混合物を1時間にわたって22℃まで冷却し、この温度で週末の間(約64時間)撹拌した。K800ザイツ濾過板に通して結晶を濾別し、エタノール(トルエンで変性)/水=20:80(v/v)からなる混合物1.6lで1回、0.8lで1回、それぞれの場合において1.6lの水で2回洗浄した。湿収量:1.82kg。次いで、湿った生成物を質量が一定になる(約17時間後)まで減圧下(<100mbar)、50℃で乾燥した。収量:0.978kg(理論値の97.8%)の無色の結晶性粉末。
)技術的な理由で、混合物を週末の間撹拌したが、通常、14時間の撹拌で十分である。
【0106】
実施例3c
純粋な生成物(I)調製
実施例3bにおいて調製した250gの粗生成物(I)を5000mlのエタノール(トルエンで変性)中に懸濁させ、次いで加熱還流した。加熱すると、生成物が溶液に溶けた。撹拌をこの温度で1時間続けた。溶液を、加熱した加圧フィルター(T=85℃)に通して濾別し、次いで、加圧フィルターを200mlのエタノール(トルエンで変性)ですすいだ。次いで、約4倍の最終体積(使用した物質に対して:250g×4~1000ml)に達する点まで溶媒を留去した(約4200mlを留去した)。次いで、混合物を4~5℃の内部温度まで冷却した(勾配:約4時間の期間)。次いで、混合物を4~5℃の内部温度で1時間撹拌した。生成物を濾別し、220mlのエタノール(トルエンで変性)で1回すすいだ。湿収量:251.2g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で週末の間(>48時間)乾燥した。収量:223.0g(理論値の89.2%)の無色の結晶性粉末。
【0107】
それぞれの場合において2kgのフィネレノン(II)のラセミ体から出発した3種類のバッチの結果を以下の表4にまとめる:
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
【表16】
【0111】
【表17】
【0112】
【表18】
【0113】
【表19】
【0114】
実施例4
プロセスの工業的実現。以下の実施例では、工業的規模でのプロセスの実現を説明する。次いで、純粋なフィネレノン(I)の2種類のバッチの収量および分析データなどの結果を表に示す:
実施例4a
酒石酸塩(IV)調製
バッチサイズは、ラセミのフィネレノン(II)80kgであった。
・1600l撹拌容器内に、初めに711.0kgのスピリットを20℃のITで入れ、続いて300kgの水、次いで80.0kgのラセミ体(II)、最後に41.7kgの(+)-ジベンゾイル酒石酸(III)を加えた。
・混合物を75℃のITまで加熱し、3時間撹拌した。
・混合物を5時間(勾配)にわたって23℃のITまで冷却し、さらに16時間撹拌した。
・遠心分離のために、懸濁物を反転型遠心分離機に移し、遠心分離し、10.7kgのスピリットと4.5kgの水からなる混合物ですすぎ、次いでタンブル乾燥し、取り出した。
・乾燥を300l球形乾燥機内で50℃のマントル温度および30mbarで行った。乾燥を45℃の内部温度で終了した(約6時間の期間)。
・生成物を15℃まで冷却し、次いで取り出した。
【0115】
実施例4b
粗生成物(I)
バッチサイズは、酒石酸塩(IV)出発材料89.3kgであった
・リン酸ナトリウム溶液の調製
・630l撹拌容器内に、初めに360.0kgの完全に脱塩した水を20℃で入れた
・36.0kgのリン酸ナトリウムを加え、溶解した
・1600l撹拌容器内に、初めに141.1kgのスピリットを20℃で入れた
・次いで、714.2kgの水および89.3kgの酒石酸塩(IV)を加えた
・混合物を50℃の内部温度まで加熱した
・次いで、295.1kgのリン酸ナトリウム溶液を計量投入した
・1.5時間後、35.4kgのリン酸ナトリウム溶液を加えることによりpHをpH=7.5(+/-0.1)に調整した
・混合物を撹拌したままにし、勾配(3時間)を用いてIT=22℃まで冷却した。
・次いで、撹拌をIT=22℃で続けた(18時間)
・受器内で、129.6kgの水と25.6kgのスピリットの混合物を調製した(洗浄のため)
・懸濁物を一度に少しずつ反転型遠心分離機に計量投入(約4バッチ+残りのバッチ)し、129.6kgの水と25.6kgのスピリットの混合物で1回、288.0kgの完全に脱塩した水で1回洗浄した。
・生成物を取り出し、球形乾燥機内で乾燥した(TM=50℃、30mbar、IT=45℃で終了、約6時間)
・生成物を冷却し、<30℃で取り出した。
【0116】
実施例4c
粗生成物(I)の再処理
場合によっては、粗生成物中の(+)-ジベンゾイル酒石酸(III)の仕様限界が>0.1%であれば、確実に限界値<0.1%が再現性よく達成されるように再処理を行うことが有利であることが明らかになった(実施例6参照)。加えて、再処理プロセスは実質的に損失がなく、一般に>95%の収率で粗生成物を与える。
【0117】
再処理した粗生成物(I)
バッチサイズは、粗生成物(I)30kgであった。
・リン酸ナトリウム溶液の調製:室温で、2.3kgのリン酸ナトリウムを147.8kgの水に250l撹拌受器内で溶解した
・20℃で、初めに198.8kgのスピリットを630l撹拌容器に入れ、120kgの水を加え、続いて30kgの粗生成物(表5に記載の(+)-ジベンゾイル酒石酸(III)を含む)を加えた。
・混合物を70℃の内部温度まで加熱し、30分間撹拌した。
・70℃で、pHをpH8.9(+/-0.1)に調整しながら上述の調製したリン酸ナトリウム溶液14.1kgを計量投入し、混合物を70℃で20時間撹拌した。
・勾配を用いて、混合物を60分にわたって44℃まで冷却し、300gの純粋なフィネレノン(I)種結晶を加えた
・次いで、溶媒を200mbarおよび高々60℃の内部温度で留去し、同時に369kgの水を撹拌容器に計量投入した。
・最後に、混合物を1.5時間にわたって22℃まで冷却し、生成物を加圧吸引フィルター上で単離し、合計180lの水で3回に分けて洗浄した
・次いで、50℃のマントル温度および減圧下(30mbar)で、生成物を恒量まで乾燥した。
・生成物を15℃まで徐冷し、次いで取り出した。
【0118】
実施例4d
純粋な生成物(I)
バッチサイズは、再処理した粗生成物(I)26kg(13kgを2回)であった
・事前に不活性化した250l撹拌容器内で、初めに13kgの再処理した粗生成物(I)を184.9kgのスピリットに20℃で入れた
・溶液を80℃のマントル温度まで加熱し、78℃で30分間撹拌した(生成物の溶解を伴う)。
・溶液を0.65μmフィルターエレメント(Sartorius製PPエレメント)に通して濾過(GMP濾過)し、濾液を630l撹拌容器に移した。
・生成物を18.5kgのスピリットで洗浄した
・これを2回に分けて繰り返し(13kgの生成物を2回)、溶液を合わせた
・溶媒を約130lの最終充填レベルまで大気圧で蒸留除去した(2回に分けて、マントル温度:104℃、約6時間の期間)
・直線温度勾配を用いて、溶液を4時間にわたって0℃まで冷却し、次いで、さらに1時間撹拌した。
・生成懸濁物を加圧吸引フィルター上で単離し、45.9kgのスピリットで洗浄した
・次いで、湿った生成物を減圧下(30mbar)、50℃で恒量まで乾燥した(約12時間)。混合物を15℃まで冷却し、生成物を取り出した。
【0119】
純粋なフィネレノン(I)の調製のための3種類の工業的バッチの収量および分析結果の概要を表5に示す
酒石酸塩(IV)
【0120】
【表20】
【0121】
【表21】
【0122】
【表22】
【0123】
【表23】
【0124】
【表24】
【0125】
【表25】
【0126】
【表26】
【0127】
【表27】
【0128】
【表28】
【0129】
実施例5
いくつかの変種は、実施例1bの手順と類似して、粗製フィネレノン(I)の遊離に適している。本明細書において、粗生成物中の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)の割合をできるだけ小さく(0.15%以下)保つことが目的であった。具体的には、リン酸ナトリウム溶液の計量添加後の最終pH、温度、リン酸ナトリウム溶液の計量添加の時間および追加の撹拌時間を変えて、粗生成物中の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸の含有量に対する影響を調査した。
【0130】
バッチサイズ:158.0gのスピリットと799.8gの水中の酒石酸塩(IV)100g
使用した酒石酸塩(IV)の分析データ:
【0131】
【表29】
【0132】
結果を以下の表6にまとめる:
【0133】
【表30】
【0134】
実施例6
再処理プロセス
実施例6a
再処理した粗生成物:(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸の割合の<0.1%への低減
この実験は、(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)の割合が高いバッチを意図的に使用することにより再処理プロセスの頑健性を実証するものであった。
【0135】
分析によればまだ0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む粗生成物を再処理に使用した
【0136】
【表31】
【0137】
粗生成物の再処理:(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)の割合の<0.1%への低減
分析によればまだ0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む粗生成物を再処理に使用した。以下の手順を採用した:
150gの粗生成物(I)(0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む)を600gの水および953.9gのスピリットに加え、70℃まで加熱した。1時間にわたり、固体全体が溶液に溶けた。次いで、混合物を70℃で30分間撹拌した。pHはpH=5.0である。44.6gのリン酸ナトリウム水溶液(985gの水につき15gのリン酸ナトリウム)を加えることにより、pHをpH=8.5に調整し、次いで、混合物を70℃で2時間撹拌した。30分にわたり混合物を53℃まで冷却し、純粋な材料(種結晶)を入れた。次いで、撹拌を50~52℃で30分間続けた。200~155mbarおよび内部温度で、エタノールを実質的に完全に蒸留除去し、同時に1845mlの水を計量投入した(充填レベルを一定に保った:留去した量=加えた水の量)。加熱のスイッチを切り、懸濁物を23℃で一晩撹拌した。フリットに通して結晶を濾別し、それぞれの場合において300mlの水で3回洗浄した。湿収量:218.9g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で週末の間(>48時間)乾燥した。収量:146.7g(理論値の97.8%)
【0138】
【表32】
【0139】
実施例6b
安定性の実証、70℃で20時間の撹拌
粗生成物の再処理:(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)の割合の<0.1%への低減
分析によればまだ0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む粗生成物を再処理に使用した。以下の手順を採用した:
150gの粗生成物(I)(0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む)を600gの水および953.9gのスピリットに加え、70℃まで加熱した。1時間にわたり、固体全体が溶液に溶けた。次いで、混合物を70℃で30分間撹拌した。pHはpH=5.0である。45.2gのリン酸ナトリウム水溶液(985gの水につき15gのリン酸ナトリウム)を加えることにより、pHをpH=8.5に調整し、次いで、混合物を70℃で20時間撹拌した。30分にわたり混合物を53℃まで冷却し、純粋な材料(種結晶)を入れた。次いで、撹拌を50~52℃で30分間続けた。200~155mbarおよび内部温度で、エタノールを実質的に完全に蒸留除去し、同時に1845mlの水を計量投入した(充填レベルを一定に保った:留去した量=加えた水の量)。加熱のスイッチを切り、懸濁物を23℃で一晩撹拌した。フリットに通して結晶を濾別し、それぞれの場合において300mlの水で3回洗浄した。湿収量:194.3g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:143.1g(理論値の95.4%)
【0140】
【表33】
【0141】
実施例6c
粗生成物の再処理:(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)の割合の<0.1%への低減。リン酸二水素ナトリウムによるpHのpH7.0までの逆滴定
分析によればまだ0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む粗生成物を再処理に使用した。以下の手順を採用した:
375.0gの粗生成物(I)(0.77%の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸(III)を含む)を1500gの水および2384.8gのスピリットに加え、70℃まで加熱した。1時間にわたり、固体全体が溶液に溶けた。次いで、混合物を70℃で30分間撹拌した。pHはpH=4.9である。101.4gのリン酸ナトリウム水溶液(985gの水につき15gのリン酸ナトリウム)を加えることにより、pHをpH=8.5に調整し、次いで、混合物を70℃で20時間撹拌した。続いて、リン酸二水素ナトリウム溶液(200mlの水中の50gのリン酸二水素ナトリウム)を使用してpHをpH=7に調整した。30分にわたり混合物を53℃まで冷却し、純粋な材料(種結晶)を入れた。次いで、撹拌を50~52℃で30分間続けた。200~155mbarおよび内部温度で、エタノールを実質的に完全に蒸留除去し、同時に4610mlの水を計量投入した(充填レベルを一定に保った:留去した量=加えた水の量)。最後に、混合物を90分にわたって23℃まで冷却した。次いで、反応混合物を22℃で週末の間(約70時間)撹拌した。フリットに通して結晶を濾別し、それぞれの場合において750mlの水で3回洗浄した。湿収量:402.3g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:336.6g(理論値の89.76%)
【0142】
【表34】
【0143】
実施例6d
実施例6cからのバッチの最終結晶化
実施例6cにおいて調製した80.0gの粗生成物(I)を1600mlのエタノール(トルエンで変性)中に懸濁させ、次いで加熱還流した。加熱すると、生成物が溶液に溶けた。撹拌をこの温度で1時間続けた。溶液を、加熱した加圧フィルター(T=75℃)に通して濾別し、次いで、加圧フィルターを100mlのエタノール(トルエンで変性)ですすいだ。次いで、約5倍の最終体積(使用した物質に対して:80g×5 ~400ml)に達するまで溶媒を減圧下(マントル温度45~47℃)でできるだけ穏やかに留去した。次いで、1時間にわたって混合物を2℃の内部温度まで冷却し、この温度で1時間撹拌した。生成物を濾別し、80mlのエタノール(トルエンで変性)で1回すすいだ。湿収量:83.3g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:71.4g(理論値の89.3%)の無色の結晶性粉末、細い針状結晶。
【0144】
分析結果:
【0145】
【表35】
【0146】
実施例7
フィネレノンエナンチオマー(Ia)の単離
実施例7a
(-)-O,O-ジベンゾイル-L-酒石酸塩の調製
初めにラセミ体(II)187.2gを室温で入れ、次いで、1662.5gのスピリットを加えた。次いで、485.5gの水を加えた。97.5gの(-)-O,O-ジベンゾイル-L-酒石酸(IIIa)を固体用漏斗を使用して加え、続いて156.0gの水ですすいだ。懸濁物を1時間にわたって75℃の内部温度まで加熱し、次いで、75℃で3時間撹拌した。続いて、冷却勾配を用いて、混合物を5.0時間にわたって23℃まで冷却し、次いで、この温度で一晩(約18時間)撹拌した。フリットに通して懸濁物を濾別し、178gのスピリットと75gの水からなる混合物で2回洗浄した。湿収量:255.4g。次いで、湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:188.6g(理論値の100.73%)の無色の結晶性粉末。母液と洗浄溶液を合わせ(約3200mlの黄色がかった溶液、pH=4.6)、粗製フィネレノン(I)をそこから単離した(実施例7b)
【0147】
【表36】
【0148】
実施例1bおよび1cに記載の方法と類似の方法で、フィネレノンのエナンチオマー(Ia)をこの酒石酸塩から調製することができる。
【0149】
実施例7b
母液からの粗製フィネレノン(I)の単離
室温で、43.3gのリン酸ナトリウム水溶液(1lの水に100g溶解)を加えることにより、実施例7aからの合わせた母液と洗浄溶液(約3200mlの黄色がかった溶液、pH=4.6)をpH=7.6に調整した。次いで、減圧下(85~65mbar、内部温度38~20℃)でスピリットをほとんど留去し、混合物を約0.8lの最終体積まで減少させた。混合物を室温まで冷却し、沈殿した懸濁物を22℃で2時間撹拌した。懸濁物を吸引により濾別し、それぞれの場合において150mlの水で2回洗浄した。湿収量:159.1g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:86.3g(実施例7aにおいて使用したラセミ体(II)に基づく理論値の92.2%)。
【0150】
【表37】
【0151】
同様に、実施例1cに記載の通り、この粗生成物を使用して純粋な形態のフィネレノン(I)を生成することができる。
【0152】
実施例8
実施例8a
母液からの誤ったエナンチオマー(Ia)の単離
室温で、101.1gのリン酸ナトリウム水溶液(1lの水に100g溶解)を加えることにより、実施例1aからの合わせた母液と洗浄溶液(約3750mlの黄色がかった溶液、pH=4.5)をpH=7.5に調整した。次いで、減圧下(85~65mbar、内部温度38~20℃)でスピリットをほとんど留去し、混合物を約0.85lの最終体積まで減少させた。混合物を室温まで冷却し、沈殿した懸濁物を週末の間(>48時間)撹拌し、次いで、22℃でさらに2時間撹拌した。懸濁物を吸引により濾別し、それぞれの場合において200mlの水で2回洗浄した。湿収量:139.1g。湿った生成物を減圧下(<100mbar)、50℃で一晩(約16時間)乾燥した。収量:103.1g(実施例1aにおいて使用したラセミ体(II)に基づく理論値の82.48%)。
【0153】
【表38】
【0154】
実施例8b
フィネレノンエナンチオマー(Ia)の単離のための工業的バッチ
実施例4(工業的規模での酒石酸塩調製)からの合わせた母液と洗浄溶液のワークアップを以下の通り行った:約1165kgの溶液量
・リン酸ナトリウム溶液の調製:20℃で、7.3kgのリン酸ナトリウムを73.1kgの水に溶解した
・1600l撹拌容器内に、初めに1165kgの母液(洗浄溶液を含む)を20℃で入れ、上述の調製したリン酸ナトリウム溶液28kgを使用してpH7.5(+/-0.1)に調整した
・混合物を0.25時間撹拌し、続いてスピリットを約310lの充填レベルまで減圧下(65mbar、約22℃のIT)で留去した
・次いで、混合物を20℃で2時間撹拌し、それぞれの場合において20kgの水で洗浄しながら、反転型遠心分離機を使用して懸濁物を単離した。
・次いで、湿った生成物を球形乾燥機内で減圧下(30mbar;約6時間)、50℃で乾燥した
・混合物を15℃まで冷却し、生成物を取り出した
【0155】
バッチ1に使用された母液(洗浄溶液を含む)の分析データ
【0156】
【表39】
【0157】
バッチ2に使用された母液(洗浄溶液を含む)の分析データ
【0158】
【表40】
【0159】
【表41】
【0160】
分析データ バッチ1
【0161】
【表42】
【0162】
分析データ バッチ2
【0163】
【表43】
【0164】
実施例9
さらなる酒石酸誘導体およびさらなる溶媒の例
実施例9a
(+)-O,O-ジ-p-アニソイル-D-酒石酸
100mgのラセミ体および111mgの(+)-O,O-ジ-p-アニソイル-D-酒石酸を5mlのジクロロメタンに溶解し、静置した。しばらくしてジアステレオマー塩が析出した。塩を濾別し、エナンチオマー過剰率を測定した。測定は、(Ia)について68%e.e.のエナンチオマー過剰率を示した
【0165】
実施例9b
(-)-O,O’-ジ-p-トルイル-L-酒石酸
100mgのラセミ体および0.55当量の(-)-O,O-ジ-p-トルイル-L-酒石酸を4mlの溶媒に溶解し、静置した。しばらくしてジアステレオマー塩が析出した。塩を濾別し、エナンチオマー過剰率を測定した。測定は、(Ia)についてy%e.e.のエナンチオマー過剰率を示した。結果を以下の表7にまとめる。
【0166】
【表44】
【0167】
実施例9c
(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸
100mgのラセミ体および0.55当量の(+)-O,O-ジベンゾイル-D-酒石酸を4mlの溶媒に溶解し、静置した。しばらくしてジアステレオマー塩が析出した。塩を濾別し、エナンチオマー過剰率を測定した。測定は、(I)についてy%e.e.のエナンチオマー過剰率を示した。結果を以下の表8にまとめる。
【0168】
【表45】
図1