(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】圧縮ガス容器を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/32 20060101AFI20231201BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20231201BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20231201BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20231201BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20231201BHJP
F17C 1/06 20060101ALN20231201BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20231201BHJP
B29K 63/00 20060101ALN20231201BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20231201BHJP
【FI】
B29C70/32
C08G59/18
B29C70/16
B29C70/68
C08J5/04 CFC
F17C1/06
B29K105:08
B29K63:00
B29L22:00
(21)【出願番号】P 2021510367
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019072664
(87)【国際公開番号】W WO2020043641
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】102018121012.4
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512117801
【氏名又は名称】アルツヒエム トローストベアク ゲー・エム・べー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Alzchem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Str. 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ズゲラ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ディジキンク、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リッツィンガー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハートル、マクシミリアン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166617(JP,A)
【文献】特開2011-140966(JP,A)
【文献】特開2010-100730(JP,A)
【文献】特開2015-193713(JP,A)
【文献】特表2014-506621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/32
C08G 59/18
B29C 70/16
B29C 70/68
C08J 5/04
F17C 1/06
B29K 105/08
B29K 63/00
B29L 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガス用の貯蔵
容量と前記貯蔵
容量を
取り囲むスリーブとを有し、前記スリーブが、前記貯蔵
容量と接触するライナーおよび、少なくとも複数の領域において、前記ライナー上に堆積された少なくとも1つの第二の層を有する圧縮ガス容器を製造する方法であって、前記方法は以下の方法工程を含み、
a)
i)ライナー、
ii)硬化性エポキシ樹脂マトリックス、および
iii)強化繊維
を提供し、
b)前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスを前記強化繊維に塗布し、ここで前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは15から50℃の範囲の温度を有し、
c)前記ライナー上に前記強化繊維を巻き、敷設し、または堆積させて、第二の層を形成し、
d)70から140℃の範囲の温度で前記第二の層を硬化させる;
前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、40から50℃の範囲の温度で少なくとも48時間の間200から1000mPa・sの範囲の粘度を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
方法工程b)における前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスが、20から50℃の範
囲の温度を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂マトリックスが、前記第二の層が50:50から80:20の範囲の強化繊維対エポキシ樹脂マトリックスの重量比を有するように前記強化繊維に塗布されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂マトリックスが
、40から50℃の範囲の温度で300から900mPa・
sの粘度を有することを特徴とする
、請求項
1~3の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二の層が70から120℃の範囲の温度で硬化されることを特徴とする
、請求項
1~4の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂マトリックスが以下の項目を含むことを特徴し、該項目は:
i)少なくとも1つのエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂、
ii)グリシジルエーテルの群からの少なくとも1つの反応性希釈剤、
iii
)少なくとも1つの硬化
剤
である
、請求項
1~5の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの硬化剤がシアナミド含有硬化剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂マトリックスが、硬化前に100から250g/eqの範囲の平均EEW値を有することを特徴とする
、請求項
1~7の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂が二官能性エポキシ樹脂の群から選択されること、および/または前記エポキシ樹脂が150から200g/eqの平均EEW値を有することを特徴とする、請求項6
または7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応性希釈剤が二官能性グリシジルエーテルの群から選択されること、および/または前記グリシジルエーテルが100から200g/eqの平均EEW値を有することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維および玄武岩繊維の群から選択されることを特徴とする
、請求項
1~10の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記強化繊維がフィラメント、糸、毛糸、織物、編みこみ生地またはニット生地の形態で提供されることを特徴とする
、請求項
1~11の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ライナーが熱可塑性プラスチックライナーまたは金属ライナーであることを特徴とする
、請求項
1~12の
いずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガス容器、特に液体ガスまたは天然ガスを輸送および貯蔵するための圧縮ガス容器を製造する、特にタイプIIまたはタイプIIIまたはタイプIVの圧縮ガス容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮天然ガスなどの液体、圧縮ガスを輸送するための加圧容器は、輸送容器としての承認に応じて、さまざまなクラスに分かれるか、さまざまなタイプに分類される。これらのタイプに共通しているのは、圧縮ガス容器が円筒形であり、1つまたは2つの多かれ少なかれドーム型の端部を有するということである。
【0003】
タイプIの圧縮ガス容器は、完全に金属、通常はアルミニウムまたは鋼でできた中空の本体を含む。このタイプIは安価であるが、その材料と設計のために、他のタイプの圧縮ガス容器と比較して重い。これらタイプIの圧縮ガス容器は広く使用されており、とりわけ海上輸送に使用されている。
【0004】
タイプIIの圧縮ガス容器は、エンドドームと呼ばれるドーム型の端部を有する金属製の薄い円筒形の中央部分を含み、前記ドーム型の端部も金属製である。エンドドーム間の円筒形の中央部分は、コンポジットと呼ばれるコンポジットスリーブで補強されている。コンポジットカバーは、一般に、ポリマーマトリックスを含浸させたガラスまたはカーボンフィラメントからなる。エンドドームは補強されていない。タイプIIの圧縮ガス容器では、金属ライナーは、輸送されるガスの内圧によって生成される張力の約50%を負担する。残りの張力はコンポジットによって吸収される。
【0005】
タイプIIIの圧縮ガス容器は、完全に金属、通常はアルミニウムでできた中空の本体を含む。タイプIIとは対照的に、ライナーとも呼ばれるこの中空の本体は、コンポジットで完全に補強されており、従ってエンドドームでも補強されている。タイプIII容器における張力は、実質的に完全にコンポジットスリーブに伝達される。ライナー自体は、負荷のごく一部しか負担しない。タイプIまたはタイプIIの圧縮ガス容器と比較して、タイプIIIの圧縮ガス容器は大幅に軽量であるが、その設計のため、購入するにはるかに高価である。
【0006】
タイプIVの圧縮ガス容器は、タイプIIIの圧縮ガス容器と同様に、コンポジット材料に完全に包まれたライナーを含む。しかしながら、タイプIIIの圧縮ガス容器とは対照的に、ライナーは、非常に気密性のある熱可塑性プラスチック材料、例えばポリエチレンやポリアミドからなる。タイプIVの圧縮ガス容器では、コンポジット材料は、輸送されるガスの内圧によって生成される張力をほぼ完全に負担する。タイプIVの圧縮ガス容器は、その設計のため、ここで述べられる圧縮ガス容器の中ではるかに軽量であるが、最も高価でもある。
【0007】
その名称で責任当局によって承認されているタイプIからIVの圧縮ガス容器に加えて、さらにタイプVの圧縮ガス容器がある。この圧縮ガス容器は、副層において異なる組成を有するコンポジット材料でできた新しいタイプの容器構造を含む。
【0008】
タイプII、タイプIIIまたはタイプIVの圧縮ガス容器が広く使用されており、特許文献の主題となっている。例として、以下の文書が参照される:DE 101 56377 A1、DE 10 2015 016 699 A1、EP 2 857 428 A1およびWO 2013/083 172 A1。さらに、国際特許出願WO 2013/083 152 A1およびWO 2016/06639 A1は、タイプVの圧縮ガス容器を製造する方法を記載している。
【0009】
現在、特に大きな容量のタイプIIIおよびタイプIVの圧縮ガス容器を製造し、この種の圧縮ガス容器の製造を連続プロセスで実施したいという要望が高まっている。これらの要望は、圧縮ガス容器の製造技術に特別な要求を課す。特に、ライナー上にコンポジット層を堆積させるためにより多くの時間が必要である。さらに、容器上の液体ガスによって生成される圧力を吸収するために、コンポジット材料により大きな層厚が必要とされる。増加する製造時間と必要とされる層厚の両方が、使用されるポリマーマトリックスに高い要求を課す。また、適切な製造方法を提供する需要もある。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明の目的は、広く使用することができ、機械的安全性に関する高い要望を満たす圧縮ガス容器を製造するために使用することができる圧縮ガス容器を製造する方法を提供することである。さらに、大型の圧縮ガス容器、特に大型のタイプII、タイプIIIおよびタイプIVの圧縮ガス容器を製造するのに適した方法が提供されることが意図されている。
【0011】
これらの目的は、請求項1に記載の方法により、本発明に従って達成される。従って、本発明の目的は、加圧ガス用の貯蔵容量と前記貯蔵容量を取り囲むスリーブとを有し、前記スリーブが、前記貯蔵容量と接触するライナーおよび、少なくとも複数の領域において、前記ライナー上に堆積された少なくとも1つの第二の層を有する圧縮ガス容器を製造する方法であって、前記方法は以下の方法工程を含み、
a)
i)ライナー、
ii)硬化性エポキシ樹脂マトリックス、および
iii)強化繊維
を提供し、
b)前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスを前記強化繊維に塗布し、ここで前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは15から50℃の範囲の温度を有し、
c)前記ライナー上に前記強化繊維を巻き、敷設し、または堆積させて、第二の層を形成し、
d)70から140℃の範囲の温度で前記第二の層を硬化させる;
前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、40から50℃の範囲の温度で少なくとも48時間の間200から1000mPa・sの範囲の粘度を有する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の圧縮ガス容器を製造するための繊維巻き取りプロセスの簡単な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
硬化性エポキシ樹脂マトリックスが40から50℃の範囲の温度で少なくとも48時間の間300から1000mPa・sの範囲、特に400から1000mPa・sの範囲、より好ましくは300から900mPa・sの範囲、さらにより好ましくは400から900mPa・sの範囲の粘度を有する、圧縮ガスシリンダーを製造する方法が好ましい。
【0014】
本発明の圧縮ガス容器は、特に加圧ガスを貯蔵することを目的としている。ガスは、通常の条件下、特に0℃の通常の温度と1.0バールの通常の圧力でガス状である材料を意味すると理解される。圧縮ガス容器自体の中においては、ガスは、例えば高圧または低温のために、液体形態でもあり得る。
【0015】
ガスは、特には水素、天然ガスまたは液体ガス、特にはプロパン、プロペン、ブタン、ブテン、イソブタンもしくはイソブテンまたはそれらの混合物である。ガスは、特に好ましくは水素または天然ガスである。
【0016】
本発明に従って製造される圧縮ガス容器の貯蔵容量は、特には30から9000L、好ましくは30から900L、より好ましくは30から400Lである。
【0017】
硬化した第二の層の層厚は、好ましくは8から100mm、特には8から80mm、そして特には8から70mmである。
【0018】
特に、本発明の目的は、圧縮ガスシリンダーを連続的に製造する方法であり、該圧縮シリンダーはそれぞれ、加圧ガス用の貯蔵容量および前記貯蔵容量を取り囲むスリーブを有し、前記スリーブが前記貯蔵容量と接触するライナーおよび、少なくとも複数の領域において、前記ライナー上に堆積された少なくとも1つの第二の層を含み、この方法は、上述の方法工程a)からd)を含み、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、40から50℃の範囲の温度で少なくとも48時間の間200から1000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0019】
方法工程a)からd)に加えて追加の方法工程を含む連続方法が好ましい。この追加の方法工程では、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、好ましくは、強化繊維への塗布中に取り出された量に対応する量で再充填され、特には連続的に再充填される。
【0020】
本発明の意味の範囲内で、「硬化性エポキシ樹脂」という用語は、特に、エポキシ樹脂として使用されるエポキシ樹脂が、熱硬化性のもの、すなわち、それらの官能基、特にエポキシ基のために重合、連結および/または架橋され得る、そして特に、熱によって重合、連結および/または架橋され得るものであることを意味する。この場合、重合、連結および/または架橋は、硬化剤によって誘発される重付加の結果として起こる。
【0021】
本発明によれば、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は、好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのエポキシ基を有するポリエーテルである。さらに好ましい実施態様では、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、硬化性エポキシ樹脂と、さらに硬化剤とを含む。ビスフェノール系エポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックエポキシ樹脂、特にエポキシフェノールノボラック、または脂肪族エポキシ樹脂が好ましく使用される。シアナミド含有硬化剤が硬化剤として好ましく使用される。
【0022】
本発明によれば、エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはビスフェノールFジグリシジルエーテルを使用することによって、および/または硬化剤としてシアナミドを使用することによって、特に良好な結果が得られる。
【0023】
本発明によるエポキシ樹脂またはエポキシ成分のエポキシ当量(EEW、以下、当量とも呼ぶ)は、各エポキシ樹脂の材料特性として決定され、1当量[val]のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の[g]単位での量を示す。これは、[g/mol]単位のモル質量を[val/mol]単位の関数fで割って計算される。EEWは、[g/eq]単位または[g/val]単位での平均値Φとして与えられる。
【0024】
【0025】
異なる反応性成分が樹脂構成に使用されている場合、iエポキシ成分の混合物またはiエポキシ成分を含む含浸樹脂の当量(Φ EEWmixture[g/val])は、以下のように計算される。
【0026】
【0027】
粘度は、液体の靭性を表し、CTD450粘度計を備えたAnton Paar MCR 302を使用して測定される。硬化性エポキシ樹脂マトリックスは等温粘度測定にかけられ、ここで、含浸浴中の硬化性エポキシ樹脂マトリックスの温度は40℃と50℃の間の範囲で測定温度として選択される。レオメーターの対応する測定プレートが特定の測定温度に加熱され、前記温度に達したときに硬化性エポキシ樹脂マトリックスサンプルが塗布される。0.052mmの測定ギャップと5 1/秒の回転せん断速度で、硬化性エポキシ樹脂マトリックスの粘度は、1000mPa・sの粘度に達するまで40℃と50℃の温度で測定される。硬化性エポキシ樹脂マトリックスが1000mPa・sに達する粘度は、測定限界に達するのにかかる時間が、本発明の方法に属する硬化性エポキシ樹脂マトリックスと圧縮ガスシリンダーを製造する方法用の典型的なアミンおよび無水物エポキシ樹脂マトリックスとの間の比較を表す測定限界として機能する。
【0028】
硬化性エポキシ樹脂マトリックスを使用して圧縮ガス容器を製造する本発明の方法に関する重要な点は、少なくとも48時間の間液体であり、200から1000mPa・sの範囲の粘度を有するという特性のため、この硬化性エポキシ樹脂マトリックスが、より大容量の圧縮ガスシリンダーに特に有利であるということである。長期間にわたって一定に保たれる粘度のために、硬化性マトリックスが強化繊維の一定の濡れにつながり、これらの圧縮ガスシリンダーは、処理に時間をかけることができる。
【0029】
従って、本発明の目的はまた、加圧ガス用の貯蔵容量および前記貯蔵容量を取り囲むスリーブを有し、前記スリーブが、前記貯蔵容量と接触するライナーおよび、少なくとも複数の領域において、前記ライナー上に堆積された少なくとも1つの第二の層を含む圧縮ガス容器を製造する方法、特に、圧縮ガス容器を製造する連続的な方法であり、この方法は、方法工程a)からd)を含む。ここで、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、少なくとも48時間の間40から50℃の範囲の温度で200から1000mPa・sの範囲の粘度を有し、少なくとも48時間の間の40から50℃の範囲の温度での粘度の偏差は、最大で+/- 15%、特には最大で+/- 10%、特には最大で+/- 8%である。
【0030】
さらに、高い潜在性のため、連続生産が可能である。すなわち、製造されたエポキシ樹脂マトリックスを使用して少なくとも48時間巻き取ることが、初めて可能である。エポキシ樹脂マトリックスは、強化繊維の含浸により巻き取りプロセスで継続的に消費されるため、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、連続プロセスのために再充填される必要がある。新しい硬化性エポキシ樹脂マトリックスを再充填することにより、含浸浴内の古いマトリックスが薄くなり、このようにしてマトリックスの潜在性が延長される、すなわち48時間を超える。アミンまたは無水物の群からの硬化剤を含む現在一般的に使用されているエポキシ樹脂マトリックスでは、再充填または補充は限られた程度においてのみ可能である。このようなエポキシ樹脂マトリックスを使用した巻き取り方法は、システムが完全に洗浄され得るように、4から8時間後に停止されなければならない。
【0031】
従って、本発明の目的は、圧縮ガス容器を製造する連続的な方法であり、該圧縮ガス容器はそれぞれ、加圧ガス用の貯蔵容量および前記貯蔵容量を取り囲むスリーブを有し、前記スリーブが、前記貯蔵容量と接触するライナーおよび、少なくとも複数の領域において、前記ライナー上に堆積された少なくとも1つの第二の層を含み、前記方法は以下の方法工程を含み、
a)
i)ライナー、
ii)硬化性エポキシ樹脂マトリックス、および
iii)強化繊維
を提供し、
b)前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスを前記強化繊維に塗布し、ここで前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは15から50℃の範囲の温度を有し、
c)前記ライナー上に前記強化繊維を巻き、敷設し、または堆積させて、第二の層を形成し、
d)強化繊維への塗布中に取り出された量に対応する量で、硬化性エポキシ樹脂マトリックスを再充填、特に連続的に再充填し、
e)70から140℃の範囲の温度で前記第二の層を硬化させる;
前記硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、40から50℃の範囲の温度で少なくとも48時間の間200から1000mPa・sの範囲の粘度を有する方法である。
【0032】
方法工程d)が、補充量が1時間あたり2から8kgのエポキシ樹脂マトリックス、特に1時間あたり2から6kgのエポキシ樹脂マトリックスであるように実施される連続的な方法が好ましい。
【0033】
含浸浴の温度を、すなわち硬化性エポキシ樹脂マトリックスを40から50℃の間の温度に制御することにより、マトリックスは、生産スペースに広がる外部温度に影響を受けない。このようにして、常に一定なマトリックスの温度は、温度制御された一定の含浸粘度につながる。一定の粘度、すなわち一定の含浸により、巻かれた圧縮ガス容器の製造において一定の品質を達成することができる。
【0034】
さらに、硬化性エポキシ樹脂マトリックスの高い潜在性は、1日以上の製造日で1Cバッチ(1成分バッチ)を製造することを可能とする。すなわち、定められた製造期間中、より大量の硬化性エポキシ樹脂マトリックスを予備混合し、室温で保存し、必要に応じて取り出すことができる。同じ混合物が常に使用されるため、大きなバッチの製造は、複数の新しく混合されたマトリックスと比較して品質も向上させる。
【0035】
高い潜在性、連続生産の可能性、および生産用のバッチとして大量の硬化性エポキシ樹脂マトリックスを製造することは、廃棄される硬化性エポキシ樹脂マトリックスの減少につながり得る。硬化性エポキシ樹脂残留物に加えて、アセトンなどの洗浄剤が使用され処分されなければならない含浸浴の洗浄も考慮に入れることができる。全ての側面が含まれるのであれば、廃棄物の発生を抑え、洗浄と処分の追加コストを節約し、より環境に優しい方法でエポキシ樹脂マトリックスを製造することが可能である。
【0036】
本発明にとって、硬化性エポキシ樹脂マトリックスが15から50℃の範囲の温度で強化繊維に塗布されるように本方法が実施されることが必須である。本方法は、好ましくは、方法工程b)の硬化性エポキシ樹脂マトリックスが、20から50℃の範囲、好ましくは25から50℃の範囲、好ましくは30から50℃の範囲の温度を有する、特に好ましくは40から50℃の範囲の温度を有するように実施することができる。
【0037】
その結果、含浸浴中のマトリックスの含浸粘度は、硬化性エポキシ樹脂マトリックスの温度を50℃の温度まで調整することによって調整される。200から1000mPa・s、特に300から900mPa・sの含浸粘度が設定され得る。さらに、エポキシ樹脂マトリックスの好ましい温度は、製造施設の室温よりも高い40から50℃の範囲であり、従って、硬化性エポキシ樹脂マトリックスの温度または粘度は影響を受けず、このようにして強化繊維への質的に一定な塗布が、より長い製造期間にわたって一定の含浸粘度によって可能となる。
【0038】
従って、圧縮ガス容器を製造するための本発明の方法では、エポキシ樹脂マトリックスが必要であり、これは、繊維巻き取りプロセスの結果として、含浸によって強化繊維に容易に塗布することができる。エポキシ樹脂マトリックスを強化繊維に最適に塗布するための関連変数は、含浸粘度である。これは、エポキシ樹脂マトリックスに対する強化繊維の重量比が50:50から80:20の範囲になるように調整されなければならない。ユーザーが知っているように、エポキシ樹脂マトリックスの不十分な塗布は強化繊維の高い重量比率につながり、プロセス側で制御される強化繊維の最大充填密度のために、誤った結合が生じ得るため、これらの重量比の範囲が好まれる。エポキシ樹脂マトリックスの過度な塗布は、強化繊維の充填密度を減少させ得る。どちらの場合も、これは、硬化したコンポジット成分の弾性や引張強度などの機械的特性の低下につながる。
【0039】
従って、さらなる概念によれば、本発明の目的は、第二の層が50:50から80:20の範囲、好ましくは60:40から80:20の範囲のエポキシ樹脂マトリックスに対する強化繊維の重量比を有するように、エポキシ樹脂マトリックスが強化繊維に塗布される方法でもある。
【0040】
本発明の方法のための強化繊維へのエポキシ樹脂マトリックスの最適な塗布を保証するために、またすなわち、第二の層が50:50から80:20の範囲のエポキシ樹脂マトリックスに対する強化繊維の重量比を有することを保証するために、本発明の方法のために開発されるエポキシ樹脂マトリックスは、エポキシ樹脂マトリックスが低分子量を有する、従って低粘度でもあるように、硬化前に100から250g/eqの範囲の平均EEW値を有することが必要である。エポキシ樹脂マトリックスの塗布に関連するこの特性に加えて、硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、強化繊維の含浸温度で十分に低粘度であり、40から50℃では、生産スペースに広がる外部温度に影響を受けないため、40から50℃で、300から900mPa・s、特には400から800mPa・s、特には400から700mPa・sの含浸粘度を有する。このようにして、本発明の方法に従って使用されるエポキシ樹脂マトリックスでの強化繊維の最適な含浸が可能であり、これは、硬化された圧縮ガス容器の高い機械的性能につながる。
【0041】
本発明には、エポキシ樹脂マトリックスが40から50℃の範囲の温度で200から1000mPa・sの粘度を有するように本方法が実施されることが必須である。ここで、エポキシ樹脂マトリックスは、40から50℃の範囲の温度で、300から900mPa・s、特に400から800mPa・s、特に400から700mPa・sの粘度を有することが好ましい。
【0042】
第二の層は、70から110℃の温度範囲で硬化され得る。従って、本発明の目的は、第二の層が70から110℃の範囲の一定温度で硬化される方法でもある。
【0043】
本発明によれば、本方法は、硬化性エポキシ樹脂マトリックスが以下の成分i)からiii)を含む場合、特に有利に実施されることができる。具体的には、
i)少なくとも1つのエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂、
ii)グリシジルエーテルの群からの少なくとも1つの反応性希釈剤、
iii)特にシアナミド含有硬化剤の群からの、少なくとも1つの硬化剤、特に液体硬化剤
【0044】
硬化性エポキシ樹脂マトリックスは、本来、繊維強化圧縮ガス容器用の特性を提供することに加えて、圧縮ガス容器を製造するための本発明の方法の要件も満たすように構成される。ここでは、二官能性エポキシ樹脂および/または150から200g/eqの平均EEW値を有するエポキシ樹脂が好ましい。架橋特性は、エポキシ樹脂の二機能性により圧縮ガス容器の機械的特性を強化することを目的としているが、同時に、強化繊維への最適な塗布のために低粘度であることも目的としている。
【0045】
同じことが、エポキシ樹脂マトリックスをさらに希釈する反応性希釈剤にも当てはまる。圧縮ガス容器の性能特性を適切にするために、ここでは二官能性グリシジルエーテルも選択されている。
【0046】
液体シアナミド含有硬化剤は、潜在性の液体硬化剤の1つであり、本発明の方法のための硬化性エポキシ樹脂マトリックス中の樹脂の長い処理時間を可能にする。
【0047】
本発明による配合物の硬化プロファイルは、エポキシ樹脂マトリックスを処理および硬化するこの方法で使用するために当業者に知られている、市販の添加剤をさらに加えることによって変えることができる。
【0048】
未硬化エポキシ樹脂組成物の加工性を改善するための添加剤またはそれから製造される熱硬化性製品の熱機械的特性を要求プロファイルに適合させるための添加剤は、例えば、充填剤、チキソトロピー剤または分散添加剤などのレオロジー添加剤、消泡剤、染料、顔料、強靭性調整剤、衝撃強度向上剤または防火添加剤を含む。
【0049】
使用されるエポキシ樹脂に関しては、通常は1を超える1,2-エポキシ基(オキシラン)を有し、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であり得る全ての市販製品を使用することができる。さらに、エポキシ樹脂は、ハロゲン、リン基およびヒドロキシル基などの置換基を有することができる。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)とその臭素置換誘導体(テトラブロモビスフェノールA)のグリシジルポリエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテル、およびノボラックのグリシジルポリエーテルにエポキシ樹脂、並びにアニリンまたはp-アミノフェノールもしくは4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの置換アニリンに基づくエポキシ樹脂が特に好ましい。2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂が非常に特に好ましい。そのようなエポキシ樹脂は、本明細書で好ましい硬化剤組成物を使用することによって特によく硬化され得る。本発明の方法に関して、反応性希釈剤および硬化剤と組み合わせた上記樹脂の1つまたは組み合わせは、100から250g/eqの範囲の平均EEW値を有するエポキシ樹脂マトリックスを好適に形成することを意図している。
【0050】
本発明によれば、「低粘度変性ビスフェノールA」と呼ぶことができるエポキシ樹脂が非常に特に好ましく使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、室温(25℃)で4000から6000mPa・sの動的粘度を有している。すなわち、室温(25℃)で4000から6000mPa・sの動的粘度を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂は、より好ましく使用することができる。室温(25℃)で4000から6000mPa・sの動的粘度を有し、100から250g/eqの範囲、特に100から210g/eqの範囲、特に100から190g/eqの範囲の平均EEW値を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルに基づくエポキシ樹脂が、非常に特に好ましく使用できる。
【0051】
このように、本発明の方法においては、硬化前に100から250g/eqの範囲の平均EEW値を有する硬化性エポキシ樹脂マトリックスを特に好ましく使用することができる。
【0052】
さらに、本発明の方法においては、二官能性エポキシ樹脂の群からのエポキシ樹脂を含む、および/またはエポキシ樹脂、特に150から200g/eqの平均EEW値を有する二官能性エポキシ樹脂を含む硬化性エポキシ樹脂マトリックスを特に好ましく使用することができる。
【0053】
さらに、本発明の方法においては、二官能性グリシジルエーテルの群から選択される反応性希釈剤を含む、および/またはグリシジルエーテル、特に100から200g/eqの平均EEW値を有する二官能性グリシジルエーテルを含む硬化性エポキシ樹脂マトリックスを特に好ましく使用することができる。
【0054】
本方法の特に好ましい実施態様によれば、エポキシ樹脂マトリックスは、その組成物中にシアナミド(CAS 420-04-2;NC-NH2)を含む硬化剤、特に液体硬化剤を含む。エポキシ樹脂におけるこれらの硬化剤、特に液体硬化剤の作用機序は、イミダゾールで加速されたジシアンジアミドの硬化特性に匹敵する。しかしながら、典型的なアミン硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物とは対照的に、室温で数日の潜在性が維持される。さらに、アミン硬化剤で硬化されたポリマー樹脂と比較して高いガラス転移温度を有する、シアナミド系液体硬化剤で硬化されたポリマー樹脂が提供され得る。
【0055】
従って、全体として、ポリマー樹脂組成物における高い潜在性および硬化温度でのポリマー樹脂組成物における高い反応性のために、繊維巻きによって圧縮ガスシリンダーを製造するための本発明の方法での使用に非常に適した、硬化剤または硬化剤組成物、特に液体硬化剤を利用可能にすることができる。
【0056】
特に、グリシジルエーテルは、本発明の方法またはエポキシ樹脂マトリックスにおいて反応性希釈剤として使用することができる。さらに、単官能性、二官能性および多官能性グリシジルエーテルが好ましく使用できる。特に、グリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテルおよびマルチグリシジルエーテル、ならびにそれらの組み合わせがここで言及されるべきである。1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、C8-C10アルコールグリシジルエーテル、C12-C14アルコールグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ポリグリセロールマルチグリシジルエーテルおよびそれらの組み合わせを含む群からのグリシジルエーテルが、特に好ましく使用できる。
【0057】
非常に特に好ましいグリシジルエーテルは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルおよびそれらの組み合わせである。
これらの反応性希釈剤は、エポキシ樹脂の粘度を調整するために使用できる。ここで、単官能性グリシジルエーテルは、架橋することなくエポキシ樹脂と反応することができる。従って、少なくとも1つの二官能性グリシジルエーテル、すなわちジグリシジルエーテルが、含浸粘度を調整するために、本発明の方法に使用される。これは、圧縮ガス容器の良好な機械的特性を達成するために、硬化性エポキシ樹脂マトリックスの架橋も可能であることを保証する助けとなることを意図している。さらに、ジグリシジルエーテルは、好ましくは、100から200g/eqの平均EEW値を有し、それゆえ、分子量が小さく、その結果、より高いEEWを有するジグリシジルエーテルと比較して、より低粘度を有する。
【0058】
使用される強化繊維の選択に関しては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維および玄武岩繊維の群から選択される強化繊維が、本明細書に記載の方法で使用できる。
【0059】
これらの強化繊維は、より好ましくは、フィラメント、糸(Faeden)、毛糸(Garnen)、織物(Geweben)、編みこみ生地(Geflechten)またはニット生地(Gewirken)の形で提供または使用することができる。
【0060】
さらに、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、グラファイト、炭化タングステンまたはホウ素からなる強化繊維も選択することができる。さらに、強化繊維は、種子繊維(例えばカポック、綿)、靭皮繊維(例えば竹、麻、ケナフ、亜麻)、葉繊維(エネケン、アバカなど)などの天然繊維の群から選択することもできる。繊維の組み合わせもまた、本発明の方法に使用することができる。
【0061】
上述した強化繊維のうち、特にフィラメント、糸(Faeden)または毛糸(Garnen)の形態のガラス繊維および炭素繊維が好ましい。これらの強化繊維は、特に優れた機械的特性、特に、高い引張強度を有する。
【0062】
冒頭で述べたように、ライナーの選択は、製造される圧縮ガス容器のタイプに依存する。すなわち、熱可塑性プラスチックライナー、特にHDポリエチレンまたはポリアミド製のライナー、および金属ライナー、特にアルミニウムまたは鋼製のライナーの両方とも、本発明の方法で使用することができる。ライナーはまた、本発明によりエポキシ樹脂マトリックスおよび強化繊維を含む第二の層が堆積される第一の層と見なすこともできる。
【0063】
本発明は、図面および関連する実施例を参照して、以下でより詳細に説明される。
【0064】
図1には、圧縮ガス容器を製造するための巻き取りシステムが概略的に示されている。スプールスタンドシステム(1)から始めて、強化繊維(2)は、強化繊維ガイド(3)を介して、含浸ローラー、樹脂スクレーパーおよび強化繊維ガイドを使用して、加熱可能な含浸浴(4)に引き込まれる。含浸浴(4)を通る強化繊維の張力は、プロセスの開始時に強化繊維束が固定されたライナー(6)と共にクランプ装置の回転によって生成される。張力の結果、含浸ローラー上の強化繊維が硬化性エポキシ樹脂マトリックスで濡らされ、樹脂スクレーパーを使用して余分な樹脂が拭き取られ、強化繊維ガイドが出口ヘッド(5)の方向に引っ張られる。出口ヘッド(5)は、ライナー(6)上の強化繊維の配置を制御する。
【0065】
本方法の以下の例は、この基本的配置に対応するシステムを使用して実施された。
【実施例】
【0066】
1)硬化性エポキシ樹脂マトリックス
a)使用される原材料
成分(A) 製品名:DYHARD(登録商標) RF2100(AlzChem Trostberg GmbH)
変性二官能性ビスフェノールAエポキシ樹脂
(EEW=170-190 g/eq)(25℃での粘度=4000-6000mPa・s)
【0067】
成分(B) 製品名:DYHARD(登録商標) Fluid 212(AlzChem Trostberg GmbH)
シアナミド系液体硬化剤(25℃での粘度=80-160mPa・s)
【0068】
成分(C) 製品名:EPON RESIN 828(Hexion Inc.)
非修飾ビスフェノールAエポキシ樹脂(EEW=185-192g/eq)(25℃での粘度=11-16Pa・s)
【0069】
成分(D) 製品名:Jeffamine(登録商標) T-403(ハンツマン コオペレーション)
アミン液体硬化剤(25℃での粘度=72mPa・s)
【0070】
成分(E) 製品名:Araldite(登録商標) LY 1564 SP(ハンツマン コオペレーション)
配合されたビスフェノールA系エポキシ樹脂
(エポキシ含有量=5.8-6.05eq/kg)(25℃での粘度=1200~1400mPa・s)
【0071】
成分(F) 製品名:Aradur(登録商標) 917(ハンツマン コオペレーション)
無水物液体硬化剤(25℃での粘度=50-100mPa・s)
【0072】
成分(G) 製品名:DMP-30TM(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)
促進剤:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
【0073】
成分(H) 製品名:Araldite(登録商標) LY 1556 SP(ハンツマン コオペレーション)
ビスフェノールA系エポキシ樹脂
(エポキシ含有量=5.30-5.45eq/kg)(25℃での粘度=10-12Pa・s)
【0074】
成分(I) 製品名:1-メチルミダゾール(Carl Roth GmbH & Co KG)
促進剤
【0075】
b)マトリックスの製造
液体硬化剤(成分B、D、F)が、特定のエポキシ樹脂(成分A、C、E、H)に添加され、無水物液体硬化剤(成分F)の場合、特定の促進剤(成分GまたはI)が添加され、均一になるまで撹拌される。いずれの場合も、ゲル化時間測定のために100gの配合物がその後取り出される。同時に、等温粘度が粘度計で測定される。混合物のごく一部がDSCでの測定のために取り出される。巻き取りプロセスでは、それぞれに製造された硬化性エポキシ樹脂マトリックスが40℃に加熱され、温度制御された含浸浴に入れられる。繊維の巻き取りプロセスは、温度が一定となったときに始まる。
【0076】
【0077】
c)材料特性をチェックするための試験規制
DSC:
Mettler Toledo DSC 1
【0078】
動的DSC:
配合物のサンプルが、10K/分の加熱速度で30から250℃に加熱される。発熱反応のピークは、開始温度(TOnset)、ピーク最大時温度(TMax)、および放出される反応熱(ΔRH)の尺度としてのピーク面積を決定することによって評価される。
【0079】
等温DSC:
配合物のサンプルが、指定された温度で指定された時間一定に保たれる(配合物の等温硬化)。評価は、ピーク最大(硬化プロセスの開始の尺度として)および発熱反応ピークの90%の変換(硬化プロセスの終了の尺度として)の時間を決定することにより実行される。
【0080】
レオメーター:
CTD 450を備えたAnton Paar MCR 302
【0081】
等温粘度:
40℃および50℃でのサンプルの等温粘度曲線が、0.052mmの測定ギャップで測定システムD-PP25(1°測定コーン)を備えたAnton Paar粘度計MCR302で測定される。粘度計の測定チャンバー内であらかじめ設定された温度に達すると、測定サンプルが測定プレートに塗布される。測定点を記録するためのデフォルト設定は、1分あたり1または0.5測定点の連続記録に設定された。
【0082】
これは、5 1/秒のせん断速度で回転して測定される。測定コーンをあらかじめ設定された0.052mmの測定ギャップ高さまで移動し、測定を開始する。
測定完了後、レオプラス(Rheoplus)ソフトウェアバージョン3.62のデータ記録を用いて測定曲線を評価し、データ記録から1000mPa・sの粘度に達するまでの時間を取得する。
【0083】
ゲル化時間試験:
正確に100gの各配合物を一度に製造し、次いですぐに40℃と50℃の乾燥キャビネットに入れた。配合物を撹拌し、1時間ごとにチェックした。混合物をもはや均一に攪拌できなくなったとき、その時間がゲル化時間として記録され、サンプルはもはや液体ではないと分類された。
【0084】
実施例1(本発明の)
10重量部の成分(B)を100重量部の成分(A)に加え、混合物を均一になるまで撹拌する。いずれの場合も、次いで、ゲル化時間測定のために100gの配合物が取り出される。同時に、等温粘度を粘度計で測定する。混合物のごく一部がDSCでの測定のために取り出される。
【0085】
【0086】
表2は、マトリックス1~4の等温測定シリーズからの等温粘度測定および初期粘度の決定から、マトリックス1が40℃と50℃の両方で、40℃では59時間、50℃では95時間の高いポットライフ値を達成し、すなわち48時間を超えて200~1000mPa・sの粘度範囲を有することを示す。マトリックス1~4の手動ゲル化時間テストは、マトリックス1が両方の温度で48時間をはるかに超える時間液体であり、それゆえ50℃では144時間から、40℃では240時間を超えてから硬化することも示す。従って、これらの比較は、比較マトリックス2~4と比較して、マトリックス1のポットライフはより長く、従って潜在性もより高いことを示す。
【0087】
これは、マトリックスシステム1は、高い潜在性のため、より大容量のものを含む圧縮ガスシリンダーの要求を有利に満たすことを意味する。洗浄停止と処分残留物を減らしつつ処理時間を長くすることが可能であり、巻き取り時間中の一定の低粘度は、強化繊維の一定の濡れにつながり得る。
【0088】
2)ライナーの実施例-製造者証明書
実験には、容量51リットル、全長882mm、直径314.5mmおよび重量8.9kg(ボス部分を含む)のHDPE(PE-HD;高密度ポリエチレン)ライナーが使用された。
【0089】
3)強化繊維の実施例-製造者証明書
炭素繊維:三菱レイヨンMRC_37_800WD_30K
製造者:三菱化学カーボンファイバーアンドコンポジットインコーポレイテッド
【0090】
4)圧縮ガス容器を製造する方法の実施例
a)一般的な手続き上の規制-できれば図面を参照
Composicadソフトウェアを使用して、460バールの理論破裂圧力用に設計された炭素繊維の巻き取り構造が計算された。我々の一連の実験は、200バール用に設計されたシリンダーに基づく。この規格は、このタイプの圧力容器用の動作圧力に2.3の安全係数を、従って460バールの最小破裂圧力を求めている。最初に、HDPEライナーはクランプ装置の両端で巻き取り機に固定され、アセトンで洗浄され、外側のブンゼンバーナーを使用して小さな炎で活性化される。配合では、100部の成分Aが10部の成分Bと一緒に均一になるまで攪拌され、40℃に加熱される。次いで、配合物が温度制御された含浸浴に入れられる。
【0091】
最適な含浸粘度を設定するため、含浸浴は40℃に加熱される。巻き取り時の外気温は15.9℃であった。スクレーパーの刃は0.6mmのギャップに設定された。8つのスプールからの強化繊維は、槽を通ってライナーに引っ張られ、成分上で一緒になって、幅約2.7cmのストリップを形成する。巻き取りプロセスは35分かかる。巻き取りは、プログラムの計算と調整に従って、ライナーの周りで軸方向および放射状に行われる。補強繊維の端を固定するために、最後から2番目の巻線の下にループとして配置され、突き出た繊維が切断される。硬化は、95℃で8時間行われた。シリンダーは、炉内で水平につるされ、硬化されながら回転された。
【0092】
b)試験規制
ISO11439に準拠した破裂試験
ISO11439およびNGV02に準拠した圧力サイクル試験
【0093】
c)試験結果
硬化したシリンダーは17.70kgの重量である。直径は330mmである。巻き取りには合計5.494kgの炭素繊維が使用された。すなわち、配合物の量は3.306kgである。
【0094】
破裂試験:Maximator Manometerアナログ0-2500バール(シリアル番号247298001)、GS 4200 USB圧力トランスデューサー(シリアル番号510305)
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
圧力サイクルテスト:Galiso Manometerアナログ0-11,000PSI(シリアル番号508130013)
【0099】
【0100】
試験後、シリンダーを検査したところ、外部の欠陥は見られなかった。半分にカットした場合に、61432サイクル後のHDPEライナーに小さな亀裂が見つけられただけであった。ラミネートは損傷を受けていなかった。