(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】構造用接着剤組成物の硬化性前駆体
(51)【国際特許分類】
C09J 4/00 20060101AFI20231201BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C09J4/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021518498
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 IB2019058427
(87)【国際公開番号】W WO2020070687
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ユング,エイドリアン テー.
(72)【発明者】
【氏名】タシュ,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ハセンバーグ,ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ルードウィグ,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】クーラ,エリザベス
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-088684(JP,A)
【文献】特表2017-508021(JP,A)
【文献】国際公開第2018/057335(WO,A1)
【文献】特表2018-500404(JP,A)
【文献】特表2013-500372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーと、
b)温度T1で開始される前記カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
c)前記カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始され、前記カチオン性自己重合性モノマーの前記重合開始剤とは異なる、前記硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
前記カチオン性自己重合性モノマーは、少なくとも1つの環状アミンを含む多官能性化合物であり、前記カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーは、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、硬化性前駆体。
【請求項2】
前記温度T2が、T1よりも高く、前記カチオン性自己重合性モノマーの前記重合開始剤が開始される前記温度T1が、前記硬化性モノマーの前記硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分である、請求項1に記載の硬化性前駆体。
【請求項3】
前記温度T1が、90℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は更には15℃以下である、請求項1又は2に記載の硬化性前駆体。
【請求項4】
前記温度T2が、90℃超、100℃超、120℃超、140℃超、150℃超、160℃超、180℃超、又は更には200℃超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項5】
前記カチオン性自己重合性モノマーが、特に20,000g/mol以下、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下、又は更には8,000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項6】
前記カチオン性自己重合性モノマーが、2つの環状アミンを含む多官能性化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項7】
前記カチオン性自己重合性モノマーが、アジリジノ官能性ポリエーテルオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性ポリエーテルオリゴマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項8】
前記カチオン性自己重合性モノマーとは異なる前記硬化性モノマーが、グリシジル基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項9】
前記カチオン性自己重合性モノマーの前記重合開始剤が、プロトン化剤、アルキル化剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項10】
前記硬化性モノマーの前記硬化開始剤が、第一級アミン、第二級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項11】
前記硬化性モノマーの硬化促進剤を更に含み、前記硬化促進剤が、特に、ポリアミン、ポリアミン付加物、尿素、置換尿素付加物、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、芳香族第三級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項12】
示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際、特に、60℃~140℃、70℃~120℃、80℃~100℃、又は更には85℃~95℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性樹脂を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性前駆体。
【請求項13】
部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料と、
b)任意に、温度T1で開始される前記カチオン性自己重合性モノマーの残留重合開始剤の一部と、
c)前記カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始される、前記カチオン性自己重合性モノマーの前記重合開始剤とは異なる前記硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
前記カチオン性自己重合性モノマーは、少なくとも1つの環状アミンを含む多官能性化合物であり、前記カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーは、エポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含み、
前記硬化性モノマーが、実質的に未硬化であり、特に、前記カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含む前記ポリマー材料中に埋め込まれている、部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体。
【請求項14】
2つの部品を結合させる方法であって、
a)請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は請求項13に記載の部分的に硬化した前駆体を、前記2つの部品のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、
b)前記硬化性前駆体又は前記部分的に硬化した前駆体構造用接着剤組成物が前記2つの部品の間に配置されるように、前記2つの部品を接合する工程と、
c)任意に、前記カチオン性自己重合性モノマーの前記重合開始剤を開始させることによって、工程a)に記載の前記硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、前記カチオン性自己重合性モノマーの
自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程、及び/又は
d)前記
硬化性モノマーの前記硬化開始剤を開始させることによって、工程a)又はc)の前記部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した構造用接着剤組成物を得て、前記2つの部品を結合させる工程と、を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は請求項13に記載の部分的に硬化した前駆体の、産業用途、特に建設用途及び自動車用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、接着剤の分野に関し、より具体的には、特に金属部品を結合させるために使用するための構造用接着剤組成物及びフィルムの分野に関する。より具体的には、本開示は、構造用接着剤組成物の硬化性前駆体及び部分的に硬化した前駆体組成物に関する。本開示はまた、2つの部品を結合させる方法及び複合材物品に関する。本開示は、建設及び自動車用途のための構造用接着剤組成物の硬化性前駆体の、特に自動車産業におけるホワイトボディ結合用途のための使用を更に目的とする。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、多様な保持、封止、保護、マーキング、及び遮蔽目的のために使用されている。多くの用途に特に好ましい接着剤の1つのタイプは、構造用接着剤に代表される。構造用接着剤は、典型的には、ネジ、ボルト、釘、ステープル、リベット及び金属融合プロセス(例えば、溶接、ろう付け、及びはんだ付け)などの従来の接合技術に取って代わるか、又はこれを強化するために使用され得る熱硬化性樹脂組成物である。構造用接着剤は、汎用産業用途、並びに自動車産業及び航空宇宙産業における高性能用途を含む様々な用途で使用される。構造用接着剤として好適であるために、接着剤は、高い耐久性のある機械的強度、並びに高い耐衝撃性を呈するものとする。
【0003】
構造用接着剤は、特に、車両内の金属接合部に使用されてもよい。例えば、接着剤を用い、例えば屋根パネル等の金属パネルを、車両の支持構造又はシャーシに結合させる場合がある。更に、接着剤を、車両クロージャパネルの2つの金属パネルの接合に用いる場合がある。車両クロージャパネルは、典型的には、外側金属パネル及び内側金属パネルのアセンブリを含み、外側パネルの縁部を内側パネルの縁部の上に折り重ねることによってヘム構造が形成される。典型的には、接着剤がパネルの間にもたらされ、これらを共に結合させる。更に、典型的には、シーラントを金属パネルの接合部に適用し、十分な耐食性をもたらす必要がある。例えば、米国特許第6,000,118号(Biernatら)は、2つのパネルの対向面の間への流動性シーラントビーズの使用、及び外側パネル上のフランジと内側パネルの露出面との間への未硬化塗料様樹脂の薄いフィルムの使用を開示している。塗料フィルムは、完成したドアパネル上で実施される焼き付け作業により、固体不透過状態に硬化される。米国特許第6,368,008号(Biernatら)は、2つの金属パネルを一緒に固定するための接着剤の使用を開示している。接合部の縁部は、金属コーティングによって更に封止される。国際公開第2009/071269号(Morralら)は、ヘムフランジ用のシーラントとして、膨張性エポキシペースト接着剤を開示している。更なるヘム付き構造が、米国特許第6,528,176号(Asaiら)に開示されている。2つの金属パネル、特に車両クロージャパネルの外側パネルと内側パネルとを、接合部を封止するための更なる材料を必要としない接着剤で接合できる、接着剤組成物を開発するための更なる取り組みが行われてきた。このように、十分な結合を提供する一方でまた、接合部を封止し、かつ耐食性を提供する接着システムを開発することが望ましいものとなった。部分的な解決方法が、例えば国際公開第2007/014039号(Lamon)に記載されており、膨張熱硬化されたフィルム強靭化発泡フィルムの、熱膨張性かつ硬化性のエポキシ系前駆体が開示されており、この前駆体は固体及び液体のエポキシ樹脂の混合物を含み、硬化して、好ましいエネルギー吸収特性及び間隙充填特性をもたらすことが主張されている。他の部分的な解決策は、欧州特許第A1-2700683号(Elgimiabiら)及び国際公開第2017/197087号(Aizawa)に記載されており、ヘムフランジ構造を形成するのに好適な構造用接着フィルムを開示している。構造用接着フィルム又はテープは、典型的には、弾性の欠如及び不十分な粘着性に悩まされており、それらをヘムフランジ結合に部分的にだけ適したものにする。更に部分的な解決策は、いわゆる構造用結合テープを開示する米国特許公開第A1-2002/0182955号(Weglewskiら)に記載されている。構造用結合テープは、接着強度及び耐腐食性の点で一般的に不十分である。
【0004】
当該技術分野において既知の解決策に関連する技術的利点への異議を唱えることなく、上記の欠点を克服する構造用接着剤組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様によると、本開示は構造用接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーと、
b)温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる、硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む、硬化性前駆体に関する。
【0006】
別の態様によると、本開示は部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料と、
b)任意に、温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの残留重合開始剤の一部と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
硬化性モノマーが、実質的に未硬化である、部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体を目的とする。
【0007】
本開示の更に別の態様では、本開示は、2つの部品を結合させる方法であって、
a)上記のような硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体を、2つの部品のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、
b)硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物が2つの部品の間に配置されるように、2つの部品を接合する工程と、
c)任意に、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤を開始させることによって、工程a)に記載の硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程、及び/又は
d)カチオン硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、工程a)又はc)の部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む、方法が提供される。
【0008】
なお別の態様では、本開示は、上記のような硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体の、産業用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様によると、本開示は構造用接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーと、
b)温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる、硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む、硬化性前駆体に関する。
【0010】
本開示の文脈において、驚くべきことに、上記のような硬化性前駆体は、それらの未硬化(又は予備硬化)状態における弾性、粘着性、コールドフロー、可撓性、取り扱い特性及び表面湿潤に関する、並びにそれらの完全に硬化した状態における接着強度、老化安定性、及び耐食性に関する優れた特性及び性能を備えた構造用接着剤組成物を製造するのに特に好適であることが見出された。上記のような構造用接着剤組成物の硬化性前駆体は、驚くべきことに、それらの既知の欠陥を呈することなく、構造用接着フィルム及び当該技術分野において既知の構造用結合テープの両方の有利な特性の大部分を組み合わせることが見出された。
【0011】
いくつかの実施では、上記のような硬化性前駆体は、ステンレス鋼及びアルミニウムなどの油性汚染基材への接着に関して優れた特性及び性能を備えた構造用接着剤組成物を製造するのに好適であることが更に見出されている。
【0012】
理論に束縛されるものではないが、これらの優れた特性は、特に硬化性前駆体中の特定の二重硬化系の存在に起因すると考えられ、硬化系は、a)温度T1で開始されるカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤、及びb)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む。
【0013】
理論に束縛されるものではないが、異なる化学的性質を有し、互いに干渉することなく硬化性前駆体中に共存する2つの独立した反応系を伴う、この二重/ハイブリッド型硬化系は、完全硬化時に、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物と、硬化性モノマーの硬化から生じるポリマー生成物とを含むポリマー材料を伴う相互貫入ネットワークを形成する能力を有すると考えられる。
【0014】
より具体的には、上記ハイブリッド型硬化系は、2つのポリマーネットワークが連続的に形成される二段階反応を伴う全体的な硬化機構を実施するのに特に好適である。
【0015】
第1段階の反応(B段階)において、カチオン性自己重合性モノマーは、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤による開始時に温度T1で重合し、それによりカチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料を形成する。典型的には、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が開始される温度T1は、硬化性モノマーの硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分である。結果として、第1段階の反応は、典型的には、部分的に硬化した前駆体をもたらし、硬化性モノマーは、実質的に未硬化であり、特に、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料中に埋め込まれている。
【0016】
典型的には、特に、初期硬化性前駆体に構造的一体性を提供するカチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物を含むポリマー材料に起因する初期硬化性前駆体の相転移に、典型的につながる第1段階の反応は、典型的には、フィルム形成反応と称される。有利には、第1段階の反応は、典型的には、いかなる実質的なエネルギー入力も必要としない。
【0017】
部分的に硬化した前駆体は、典型的には、寸法安定性を有するフィルム状の自己支持型組成物の形態をとり、それにより、更なる加工まで、選択された基材、特にライナー上にこれを予め適用することを可能にする。部分的に硬化した前駆体は、典型的には、弾性、粘着性、コールドフロー、及び表面湿潤に関して優れた特性及び性能を備える。有利には、部分的に硬化した前駆体は、任意の特定の用途の要件を満たすように適切に成形することができる。
【0018】
第2段階の反応(A段階)は、第1段階の反応後に起こり、典型的には、温度T2で適切な硬化開始剤による開始(典型的には、熱開始)の際に硬化性モノマーを硬化させることを伴う。この反応工程は、典型的には、硬化性モノマーの硬化から、特に硬化性モノマーの(共)重合及び硬化性モノマーの硬化開始剤(又は硬化剤)から生じるポリマー生成物の形成をもたらす。
【0019】
本開示の硬化性前駆体は、典型的には、連続して上述の2段階の反応を確実に実行するために、別個の温度(T1及びT2)で活性化された2つの独立した反応系を伴う、上述の二重/ハイブリッド型硬化系に依存する。有利には、本開示の硬化性前駆体は、所望の基材又は物品上に優れた特性を備えた構造用接着剤を製造するために、最終的に適所で硬化される前に、部分的に硬化され(又は予備硬化され)、選択された基材上に事前適用されてもよい。
【0020】
したがって、本開示の硬化性前駆体は、金属部品、特に自動車産業における金属部品のヘムフランジ結合のために著しく好適である。更に有利には、硬化性前駆体は、自動処理及び適用、特に高速ロボット設備に好適である。
【0021】
本開示の文脈において、「カチオン性自己重合性モノマー」という表現は、モノマーがもっぱらそのモノマー自体と重合して生じるポリマー生成物(ホモポリマー)を形成することができ、かつカチオン性中間部分の形成を伴い、それによってホモポリマーを形成することができるモノマーを指すことを意味する。用語「ホモポリマー」は、本明細書では、単一の種類のモノマーの重合から生じるポリマーを指すことを意味する。
【0022】
更に本開示の文脈において、「硬化性モノマー」という表現は、硬化性モノマーと硬化性モノマーの硬化開始剤(又は硬化剤)との(共)重合から生じるポリマー生成物(ヘテロポリマー)を形成することができるモノマーを指すことを意味する。用語「ヘテロポリマー」は、本明細書では、2種以上のモノマーの(共)重合から生じるポリマーを指すことを意味する。
【0023】
本開示の文脈において、「硬化性モノマーが実質的に未硬化である」という表現は、初期硬化性モノマーの10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、又は更には1重量%未満が未反応であることを指すことを意味する。
【0024】
「ガラス転移温度」及び「Tg」という用語は、互換可能に使用され、(コ)ポリマー材料又はモノマーとポリマーとの混合物のガラス転移温度を指す。特に指示がない限り、ガラス転移温度値は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
【0025】
本開示の硬化性前駆体の1つの典型的な態様によれば、本明細書で使用するための温度T2は、温度T1よりも高い。典型的な態様では、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が開始される温度T1は、硬化性モノマーの硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分であり、したがって、実質的に未反応のままである。
【0026】
本開示の硬化性前駆体の別の典型的な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーは、それらが重合又は硬化開始にそれぞれ供される場合であっても、互いに化学的に反応することができず、特に、共有結合することができない。例示的な態様では、カチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーは、23℃の温度で重合又は硬化開始に供される場合、互いに化学的に反応することができない。
【0027】
本開示の1つの例示的な態様では、本明細書で使用するための温度T1は、90℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は更には15℃以下である。本開示のいくつかの例示的態様では、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、室温(約23℃)で既に開始されている。
【0028】
本開示の別の例示的な態様では、温度T1は、-10℃~85℃、0℃~80℃、5℃~60℃、5℃~50℃、10~40℃、又は更には15~35℃の範囲である。
【0029】
本開示の更に別の例示的な態様では、本明細書で使用するための温度T2は、90℃超、100℃超、120℃超、140℃超、150℃超、160℃超、180℃超、又は更には200℃超である。
【0030】
硬化性前駆体の別の典型的な態様では、温度T2は、95℃~250℃、100℃~220℃、120℃~200℃、140℃~200℃、140℃~180℃、又は更には160℃~180℃の範囲である。
【0031】
本開示のいくつかの例示的な態様では、温度T2で開始される本明細書で使用するための硬化性モノマーの硬化開始剤は、熱開始される硬化開始剤又は実質的に高温で活性化される熱開始剤として見なされてもよい。
【0032】
本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、特に限定されない。本明細書で使用するために好適なカチオン性自己重合性モノマーは、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0033】
本開示の硬化性前駆体の1つの有利な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、カチオン開環重合によって重合することができる。したがって、有益な態様では、本開示で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、少なくとも2つの複素環式基、特に環状アミン基を含む。
【0034】
本開示の別の有利な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、更に架橋性であり、特にカチオン性自己重合性モノマーの重合から生じるポリマー生成物の架橋反応に関与することができる。
【0035】
本開示の有益な態様では、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、特に20,000g/mol以下、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下、又は更には8,000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーである。別途記載のない限り、数平均分子量は、当業者に周知の適切な技術を使用してGPCによって決定される。
【0036】
本開示の有益な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、少なくとも1つの環状アミン、好ましくは2つの環状アミンを含む多官能性化合物である。例示的な態様では、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーに含まれ得る環状アミンは、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0037】
1つの有利な態様では、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、少なくとも2つのアジリジン官能基を含む多官能性化合物である。より有利には、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、多官能性アジリジン、特にビス-アジリジノ化合物である。
【0038】
本開示のより有利な態様では、カチオン性自己重合性モノマーは、アジリジノ官能性オリゴマーである。有利には、カチオン性自己重合性モノマーは、アジリジノ官能性極性オリゴマーである。
【0039】
例示的な態様では、本明細書で使用するためのアジリジノ官能性オリゴマーは、20,000g/mol以下、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下、又は更には8,000g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0040】
本開示の別の有利な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、オリゴマー主鎖、特に、直鎖オリゴマー主鎖、より具体的には、直鎖極性オリゴマー主鎖に基づくアジリジノ官能性化合物である。
【0041】
例示的な態様では、アジリジノ官能性化合物で使用するためのオリゴマー主鎖は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオエーテル、ポリスルフィド、シリコーン、ポリアルキレン、ポリスチレン、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される部分を含む。より有利な態様では、アジリジノ官能性化合物で使用するためのオリゴマー主鎖は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリチオエーテル、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される部分を含む。
【0042】
有利な態様によれば、カチオン性自己重合性モノマーは、アジリジノ官能性(直鎖)ポリエーテルオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性(直鎖)ポリエーテルオリゴマーである。
【0043】
好適なポリエーテルオリゴマーは、反応性水素原子を有する出発化合物と、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン若しくはエピクロロヒドリン、又はこれらのうちの2つ以上の混合物との反応により、当業者に既知の方法で製造されてもよい。本明細書で使用するために特に好適なポリエーテルオリゴマーは、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド若しくはテトラヒドロフランの重付加、又は好適な出発化合物及び好適な触媒を用いた前述の化合物のうちの2つ以上の混合物の重付加により得ることができる。
【0044】
特に有益な態様では、本明細書で使用するために好適なポリエーテルオリゴマーは、三フッ化ホウ素エーテル酸塩の触媒作用下でのエチレンオキシドとテトラヒドロフランとのカチオン共重合によって得ることができるポリエーテルジオールである。本明細書で使用するために好適なカチオン性自己重合性モノマー及びその製造方法は、例えば、米国特許第3,453,242号(Schmittら)に記載されている。
【0045】
本開示の1つの好ましい実施によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、以下の式:
【化1】
[式中、
R
1は、共有結合又はアルキレン基であり、
各R
2は、アルキレン基からなる群から独立して選択され、
R
3は、直鎖又は分枝鎖アルキレン基であり、
Yは二価結合基であり、
nは、ポリエーテルオリゴマーの計算された数平均分子量が、特に2000g/molを超えるように選択される整数である]を有する。
【0046】
本開示の別の好ましい実施によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、以下の式:
【化2】
[式中、
R
1は、アルキレン基であり、
各R
2は、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基からなる群から独立して選択され、
nは、ポリエーテルオリゴマーの計算された数平均分子量が、特に2000~10,000g/molであるように選択される整数である]を有する。
【0047】
本開示の更に別の好ましい実施によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、以下の式を有する。
【化3】
【0048】
有利な態様では、ラジカルR1は、2個の炭素原子を有するアルキレン基である。別の有利な態様では、ラジカルR2は、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基からなる群から独立して選択される。
【0049】
本開示の更に別の有利な態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーは、以下の式:
【化4】
[式中、a及びbは、1以上の整数であり、aとbの合計は、nに等しい]を有する。
【0050】
本開示の例示的な態様によれば、カチオン性自己重合性モノマーの計算された数平均分子量が10,000グラム/モル以下であるようにnが選択される。
【0051】
本明細書で使用するための硬化性モノマーは、カチオン性自己重合性モノマーとは異なる限り、特に限定されない。構造用接着剤の当技術分野において公知の任意の硬化性モノマーを、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適な硬化性モノマーは、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0052】
本開示の特定の一態様によれば、本明細書で使用するための硬化性モノマーは、カチオン硬化性モノマーであり、これは、特にカチオン性開環硬化によって硬化可能である。
【0053】
本開示の有利な態様によれば、本明細書で使用するための硬化性モノマーは、エポキシ基、特にグリシジル基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む。
【0054】
別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための硬化性モノマーは、エポキシ樹脂である。本明細書で使用するための例示的なエポキシ樹脂は、フェノール性エポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から有利に選択され得る。
【0055】
エポキシ樹脂は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するために好適なエポキシ樹脂及びそれらの製造方法は、例えば、欧州特許第A1-2700683号(Elgimiabiら)及び国際公開第2017/197087号(Aizawa)に十分に記載されている。
【0056】
本開示の特に有利な態様では、本明細書で使用するための硬化性モノマーは、ノバラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である。
【0057】
本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、特に限定されない。構造用接着剤の当該技術分野において公知のカチオン性自己重合性モノマーの任意の重合開始剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの好適な重合開始剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0058】
本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの例示的な重合開始剤は、O.C.DERMER,G.E.HAM「Ethylenimine and other Aziridines」,Academic Press(1969)、及び特に、米国特許出願公開第A1-2003/0153726号(Eckhardtら)に十分に記載されている。
【0059】
本開示の例示的な一態様によれば、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、プロトン化剤、アルキル化剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0060】
本開示の有利な一態様では、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、アルキル化剤からなる群から選択され、特に、アリールスルホン酸エステル、スルホニウム塩、特に、アルキルスルホニウム塩、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0061】
より有利には、本明細書で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、アリールスルホン酸エステルからなる群から選択され、特にp-トルエンスルホン酸エステル、好ましくはメチル-p-トルエンスルホネートからなる群から選択される。
【0062】
本開示の有利な代替的な態様では、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、プロトン化剤からなる群から選択され、特に、ルイス酸、ブロンステッド酸又はブロンステッド酸の前駆体、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0063】
別の有利な態様では、本開示で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、ブロンステッド酸からなる群から選択され、特に、スルホン酸、スルホニウム酸、ホスホン酸、リン酸、カルボン酸、アンチモン酸、ホウ酸、及びこれらの任意の組み合わせ、混合物又は塩からなる群から選択される。
【0064】
更に別の有利な態様では、本開示で使用するためのカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、制酸作用成分と組み合わせたブロンステッド酸からなる群から選択され、特に、元素アルミニウム、クロム、銅、ゲルマニウム、マンガン、鉛、アンチモン、スズ、テルル、チタン及び亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩及びカルボキシレートからなる群から選択される。制酸作用成分は、有益には、亜鉛を含むように選択され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤は、特に亜鉛トシレートであるように選択される。
【0065】
本明細書で使用するための硬化性モノマーの硬化開始剤は、それらがカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる限り、特に限定されない。構造用接着剤の当技術分野において公知の硬化性モノマーの任意の硬化開始剤を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適な硬化開始剤は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0066】
本開示の1つの典型的な態様によれば、本明細書で使用するための硬化開始剤は、急速反応硬化開始剤、潜在性硬化開始剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。より典型的には、本明細書で使用するための硬化開始剤は、急速反応熱開始硬化開始剤、潜在性熱開始硬化開始剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0067】
本開示の有利な態様によれば、硬化性モノマーの硬化開始剤は、第一級アミン、第二級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0068】
別の有利な態様によれば、硬化性モノマーの硬化開始剤として使用するためのアミンは、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、1つ以上のアミノ部分を有する芳香族構造、ポリアミン、ポリアミン付加物、ジシアンジアミド、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0069】
本開示の更に別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための硬化性モノマーの硬化開始剤は、ジシアンジアミド、ポリアミン、ポリアミン付加物、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0070】
好ましい態様では、硬化性モノマーの硬化開始剤は、ジシアンジアミドであるように選択される。
【0071】
有利な実施では、本開示の硬化性前駆体は、硬化性モノマーの硬化促進剤を更に含み、硬化促進剤は、特に、ポリアミン、ポリアミン付加物、尿素、置換尿素付加物、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、芳香族第三級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0072】
硬化開始剤及び硬化促進剤は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するために好適な硬化開始剤及び硬化促進剤並びにそれらの製造方法は、例えば、欧州特許第A1-2700683号(Elgimiabiら)及び国際公開第2017/197087号(Aizawa)に十分に記載されている。
【0073】
1つの好ましい実施では、硬化性モノマーの硬化促進剤は、ポリアミン付加物、置換尿素、特にN-置換尿素付加物の群から選択される。
【0074】
本開示の特に好ましい実施では、硬化性モノマーの硬化促進剤は、置換尿素付加物、特に、N-置換尿素付加物の群から選択される。本開示の文脈において、実際に驚くべきことに、置換尿素付加物、特にN-置換尿素付加物の群から選択される硬化性モノマーの硬化促進剤の使用は、接着特性、特に得られる構造用接着剤組成物の剥離接着特性を実質的に改善することが見出された。
【0075】
本開示の典型的な態様によれば、硬化性前駆体は、カチオン性自己重合性モノマーとも異なる第2の硬化性モノマーを更に含む。
【0076】
有利な態様では、本開示で使用するための第2の硬化性モノマーは、エポキシ基、特にグリシジル基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む。更に有利には、本明細書で使用するための第2の硬化性モノマーは、エポキシ樹脂であり、特に、フェノール性エポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0077】
本開示の特に好ましい実施では、本明細書で使用するための第2の硬化性モノマーは、水素化ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、水素化ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(水素化DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である。本開示の文脈において、実際に驚くべきことに、特に水素化ビスフェノールエポキシ樹脂の群から選択される第2の硬化性モノマーの使用は、接着特性、特に、得られる構造用接着剤組成物の油性汚染基材への剥離接着特性を実質的に維持又は更に改善することが見出された。これらの特定の硬化性前駆体は、特に油性汚染金属基材に向かって著しく優れた油汚染耐性を有する構造用接着剤組成物をもたらすのに特に好適である。
【0078】
例示的な油性汚染物質は、例えば、鉱油、及び合成油である。典型的な鉱油としては、パラフィン系鉱油、中間鉱物油、及びナフテン系鉱油が挙げられる。
【0079】
有利な態様では、結合される表面の固着工程は、基材、部品の予備洗浄工程を使用することなく、及び/又は接着促進剤、特にプライミング組成物若しくは結合層を使用せずに実施してもよい。
【0080】
別の有利な態様によれば、本開示による硬化性前駆体は、熱可塑性樹脂を更に含む。本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、特に限定されない。構造用接着剤の当技術分野において公知の任意の熱可塑性樹脂を、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するために好適な熱可塑性樹脂は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0081】
熱可塑性樹脂は、構造用接着剤組成物の当業者に既知である。本明細書で使用するために好適な例示的な熱可塑性樹脂は、例えば、欧州特許第A1-2700683号(Elgimiabiら)に記載されている。
【0082】
本開示の有利な一態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際、60℃~140℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0083】
より有利な態様では、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、70℃~120℃、好ましくは80℃~100℃、より好ましくは85℃~95℃の軟化点を有する。
【0084】
本開示の別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、ポリウレタン熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0085】
本開示の更に別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、ポリエーテル熱可塑性樹脂、及び特に、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択される。
【0086】
より有利な態様では、本明細書で使用するためのポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、特に、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。
【0087】
本開示の特に好ましい実施によれば、本明細書で使用するための熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂の群から選択される。
【0088】
本開示の文脈において、実際に驚くべきことに、熱可塑性樹脂、特に、フェノキシ樹脂の群から選択される熱可塑性樹脂の使用は、接着特性、特に、剥離接着特性、並びに得られる構造用接着剤組成物の強靭化特性を実質的に改善することが見出された。これは、熱可塑性樹脂が一般的に、フィルム形成添加剤として認識され使用されるため、特に驚くべきことかつ直観に反することである。
【0089】
本開示の有利な態様によれば、硬化性前駆体は、アクリル系モノマー又はアクリル樹脂を実質的に含まない。「アクリル系モノマー又はアクリル樹脂を実質的に含まない」とは、本明細書では、硬化性前駆体が、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は更には0.5重量%未満のアクリル系モノマー又はアクリル樹脂を含むことを表すことを意味する。
【0090】
別の有利な態様によれば、本開示の硬化性前駆体は、フリーラジカル重合性モノマー又は化合物、特に、照射開始フリーラジカル開始剤を実質的に含まない。「フリーラジカル重合性モノマー又は化合物を実質的に含まない」とは、本明細書では、硬化性前駆体が、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は更には0.5重量%未満のフリーラジカル重合性モノマー又は化合物を含むことを表すことを意味する。
【0091】
例示的な一態様では、本開示による硬化性前駆体は、
a)0.1~20重量%、0.5~15重量%、0.5~10重量%、又は更には1~5重量%のカチオン性自己重合性モノマーと、
b)10~80重量%、20~70重量%、又は更には20~60重量%の硬化性モノマーと、
c)0.01~10重量%、0.02~8重量%、0.05~5重量%、0.1~3重量%、又は更には0.2~2重量%のカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
d)0.1~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、又は更には1~6重量%の硬化性モノマーの硬化開始剤と、
e)0~60重量%、1~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、5~30重量%、5~20重量%、又は更には8~15重量%の第2の硬化性モノマーと、
f)0~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、又は更には1~5重量%の熱可塑性樹脂と、
g)0~20重量%、0.05~15重量%、0.1~10重量%、0.5~8重量%、又は更には0.5~5重量%の硬化性モノマーの硬化促進剤と、
h)任意に、強靭化剤(toughening agent)と、を含む。
【0092】
本開示の有利な態様によれば、硬化性前駆体は、カチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーを、0.5:99.5~50:50、1:99~40:60、1:99~30:70、2:98~30:70、2:98~20:80、2:98~15:85、2:98~10:90、3:97~8:92、又は更には3:97~6:94の範囲の重量比で含む。
【0093】
典型的な一態様によれば、本開示の硬化性前駆体は、一剤型構造用接着剤組成物の形態である。
【0094】
別の典型的な態様によれば、本開示の硬化性前駆体は、第1の部分及び第2の部分を有する二剤型構造用接着剤組成物の形態であり、
a)第1の部分が、
i.カチオン性自己重合性モノマーと、
ii.硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
b)第2の部分が、
i.硬化性モノマーと、
ii.カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、を含み、
第1の部分及び第2の部分は、2つの部分を組み合わせて、構造用接着剤組成物を形成する前には分離されたままである。
【0095】
別の態様によると、本開示は部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料と、
b)任意に、温度T1で開始されるカチオン性自己重合性モノマーの残留重合開始剤の一部と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
硬化性モノマーが、実質的に未硬化である、部分的に硬化した構造用接着剤組成物の前駆体を目的とする。
【0096】
部分的に硬化した構造用接着剤の前駆体の典型的な態様では、硬化性モノマーは、実質的に未硬化であり、特に、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料中に埋め込まれている。典型的な態様では、硬化性モノマーは更に、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合から生じるポリマー材料中に埋め込まれた液体モノマーであり、このポリマー材料は、完全に確立された三次元ネットワークを表す。
【0097】
部分的に硬化した前駆体は、典型的には、寸法安定性を有する安定かつ自己支持型の組成物であり、それにより、更なる加工まで、選択された基材、特にライナー上にこれを予め適用することを可能にする。特に、予め適用された基材は、最終的な完全硬化が行われるまで、他の製造現場に適宜に移動されてもよい。更に有利には、部分的に硬化した前駆体は、任意の選択された用途の特定の要件を満たすように適切に成形することができる。部分的に硬化した前駆体は、典型的には、弾性、粘着性、コールドフロー、及び表面湿潤に関して優れた特性及び性能を備える。
【0098】
本開示による部分的に硬化した前駆体の典型的な態様によれば、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料が、実質的に完全に重合されており、特に、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の重合度を有する。カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物を含むポリマー材料が実質的に完全に重合されると、この重合反応は、有利には固定端及び不可逆末端を有し、硬化性前駆体の残部における任意の貯蔵寿命減少反応を誘発しないであろう。この特性は、硬化性前駆体の全体的な貯蔵寿命に有益に影響するであろう。
【0099】
部分的に硬化した前駆体の特に有利な態様によれば、ポリマー材料は、ポリエーテルイミン、特に、直鎖又は分枝鎖ポリエチレンイミン(PEI)を含むか、又はこれからなる。ポリエーテルイミンは、典型的には、カチオン性自己重合性モノマーとして作用する、ビス-アジリジノ化合物、特に、N-アルキルアジリジノ官能性ポリエーテルオリゴマーの自己重合から生じる。
【0100】
本開示の典型的な一態様では、部分的に硬化した前駆体は、実験セクションに記載される試験方法に従って測定された際、1000~250,000Pa、1000~200,000Pa、2000~150,000Pa、3000~150,000Pa、3000~100,000Pa、又は更には3000~80,000Paの範囲の貯蔵剪断弾性率を有する。
【0101】
有利な一態様では、本開示による部分的に硬化した前駆体は、DSCにより測定された際、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、又は更には-20℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0102】
本開示の別の有利な態様では、部分的に硬化した前駆体は、引張試験DIN EN ISO527に従って測定された際、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は更には少なくとも200%の破断点伸びを有する。この特定の特性は、部分的に硬化した前駆体及び得られる構造用接着剤を、自動処理及び適用に好適な、特に高速ロボット設備によるものに好適にする。より具体的には、本開示の部分的に硬化した前駆体及び得られる構造用接着剤は、金属プレート間に金属接合部を形成するプロセスの効率的な自動化を可能にする。更に、この弾性は、特に金属基材のうちの1つがプロセス工程中に再成形又は折り畳まれている際、金属基材を結合させるのに非常に有利である。これは、例えば、1つの金属パネルが別の金属パネルの縁部の周囲に折り畳まれる、いわゆるヘムフランジプロセスの場合である。典型的には、接着剤は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間のヘムフランジ部分に提供される。しばしば、折り畳まれた金属パネルセクションが、その本来の形状の方向に少なくとも部分的に戻る特定の傾向を呈し、それによってヘムフランジを開くという、「スプリングバック」と呼ばれる現象に遭遇することが多い。当業者に既知であるように、これはまた、このセクションにおいて金属パネルと接着剤との間の特定の切断をもたらし得る。所望の形状から離れるヘムフランジの変形は、表面的な問題であるが、金属パネルと接着剤との間の切断は、このセクションにおいて腐食問題を引き起こし得る。しかしながら、本開示の予備硬化した接着剤組成物の弾性により、金属プレートは強固に一体に保持され、それによってスプリングバック及びそこから生じる問題を回避するか、又は少なくとも緩和する。加えて、基材間の間隙の改善された封止は、本開示による接着剤組成物によって提供される。
【0103】
別の態様によれば、本開示は、上述の硬化性前駆体を実質的に完全に硬化させることによって、特にT2以上の温度で実質的に完全に硬化することによって得ることができる構造用接着剤組成物に関する。
【0104】
典型的な態様では、構造用接着剤組成物は、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物と、硬化性モノマーの硬化から生じるポリマー生成物とを含むポリマー材料を伴う相互貫入ネットワークを含む。
【0105】
有利な態様によれば、本開示の部分的又は完全に硬化した構造用接着剤組成物は、伸長フィルムの形態で成形される。これは、本開示による部分的に硬化した接着剤組成物を、結合される基材に適用するのに有利である。接着フィルムは、自動又はロボット設備によっても容易かつ正確に表面に適用されてもよく、用途の速度を大幅に増加させる。更に、部分的に硬化した構造用接着剤組成物の予め定義された形状は、産業製造作業中、例えば自動車産業において生じる要件に従って容易に製造され得る。これは、異なる形状及び厚さを含む。特に、単純な伸長フィルム又はストリップは、多くの場合に十分であり得るが、結合される基材に適合された特定の輪郭を有するフィルム又はストリップは、非常に有利であり得る。
【0106】
本開示の更に別の態様によれば、構造用接着剤組成物に好適な硬化系であって、
a)温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
b)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる、硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む、硬化系が提供される。
【0107】
硬化系の典型的な態様では、温度T2は、T1よりも高く、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が開始される温度T1は、硬化性モノマーの硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分である。
【0108】
特に、構造用接着剤組成物、カチオン性自己重合性モノマー、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤、硬化性モノマー、硬化性モノマーの硬化開始剤、硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体との関連で上述した温度T1及びT2、並びに部分的に硬化した前駆体に関する全ての特定かつ好ましい態様は、構造用接着剤組成物用の硬化系に完全に適用可能である。
【0109】
更に別の態様では、本開示は、物品の表面の少なくとも一部に適用された、上記のような硬化性前駆体、又は上記のような部分的若しくは完全に硬化した構造用接着剤組成物を含む、複合材物品に関する。
【0110】
本明細書で使用するための好適な表面及び物品は、特に限定されない。構造用接着剤組成物と組み合わせて使用するのに好適であることが公知の任意の表面、物品、基材及び材料を、本開示の文脈において使用することができる。
【0111】
別の態様によれば、本開示は、上記のような硬化性前駆体又は上記のような部分的に硬化した前駆体を使用する工程を含む、複合材物品の製造方法を目的とする。
【0112】
別の一態様において、本開示は、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の製造方法であって、
a)上記のような硬化性前駆体を提供する工程と、
b)カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤を開始させることによって、工程a)の硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程と、
c)硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、工程b)の部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得る工程と、を含む、製造方法を提供する。
【0113】
本開示の文脈において、「部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させる」という表現は、硬化性モノマーの90重量%超、95重量%超、98重量%超、又は更には99重量%超が重合/硬化されることを表すことを意味する。
【0114】
本開示のなお別の態様では、上記のような硬化性前駆体又は上記のような部分的に硬化した前駆体を使用する工程を含む、2つの部品を結合させる方法が提供される。
【0115】
本開示の特定の態様によれば、2つの部品を結合させる方法は、
a)項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目60~65のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体を、2つの部品のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、
b)硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物が2つの部品の間に配置されるように、2つの部品を接合する工程と、
c)任意に、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤を開始させることによって、工程a)に記載の硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程、及び/又は
d)カチオン硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、工程a)又はc)の部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む。
【0116】
2つの部品を結合させる方法の有利な態様によれば、2つの部品は金属部品である。
【0117】
別の有利な態様によれば、2つの部品を結合させる方法は、金属部品のヘムフランジ結合のためのものであり、
- 部分的に硬化した前駆体が、伸長フィルムの形態で成形され、
- 部分的に硬化した前駆体フィルムが、前駆体フィルムの第1の端部付近の第1の部分と、前駆体フィルムの第1の端部の反対側の第2の端部付近の第2の部分と、を有し、
- 第1の金属部品が、第1の本体部分と、第1の本体部分の第1の端部に隣接する第1の本体部分の縁に沿う第1のフランジ部分と、を有する第1の金属パネルを含み、
- 第2の金属部品が、第2の本体部分と、第2の本体部分の第2の端部に隣接する第2の本体部分の縁に沿う第2のフランジ部分と、を有する第2の金属パネルを含み、
本方法は、
部分的に硬化した前駆体フィルムを第1の金属パネル又は第2の金属パネルに固着させ、それにより、固着及び折り畳み後に、部分的に硬化した前駆体フィルムが、下記のように折り畳まれている金属接合部が得られ、
i.部分的に硬化した前駆体フィルムの第1の部分が、第2の金属パネルの第2のフランジと第1の金属パネルの第1の本体部分との間に設けられ、
ii.部分的に硬化した前駆体フィルムの第2の部分が、第1の金属パネルの第1のフランジと第2の金属パネルの第2の本体部分との間に設けられる、部分的に硬化した前駆体フィルムを接着させる工程と、
b)カチオン硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得て、金属接合部を結合させる工程と、を含む。
【0118】
2つの部品を結合させる方法の更に別の有利な態様によれば、第1の金属部品の第1の縁部の側が折り返され、第2の金属部品を挟むようにヘムフランジ構造が形成され、上記の硬化性前駆体又は上記の部分的に硬化した前駆体が、少なくとも第1の金属部品の第1の縁部及び第2の金属部品の第1の表面側を互いに固着させるように配置される。
【0119】
特に金属部品のヘムフランジ結合のために、2つの部品を結合させる方法は、構造用接着剤組成物の当業者に周知である。本明細書で使用するために好適な2つの部品を結合させる方法は、例えば、欧州特許第A1-2700683号(Elgimiabiら)及び国際公開第2017/197087号(Aizawa)に十分に記載されている。
【0120】
本開示の特定の態様では、これらの方法で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウム、鋼、鉄、及びこれらの任意の混合物、組み合わせ、又は合金からなる群から選択される金属を含む。より有利には、本明細書で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、及びこれらの任意の混合物、組み合わせ、又は合金からなる群から選択される金属を含む。本開示の特に有利な実施では、本明細書で使用するための基材、部品、及び表面は、アルミニウムを含む。
【0121】
別の態様によれば、本開示は、上述の方法によって得ることができる金属部品アセンブリに関する。
【0122】
更に別の態様によれば、本開示は、上記のような硬化性前駆体又は上記のような部分的に硬化した前駆体の、産業用途、特に建設及び自動車用途のための、特に、自動車産業におけるホワイトボディ結合用途のための使用に関する。
【0123】
なお別の態様によれば、本開示は、上記のような硬化性前駆体又は上記のような部分的に硬化した前駆体の、金属部品を結合させるための、特に自動車産業用における金属部品のヘムフランジ結合のための使用に関する。
【0124】
なお別の態様では、本開示は、上記のような硬化系の、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の製造のための使用に関する。
【0125】
項目1は、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の硬化性前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーと、
b)温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる、硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む、硬化性前駆体である。
【0126】
項目2は、温度T2が、T1よりも高く、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が開始される温度T1が、硬化性モノマーの硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分である、項目1に記載の硬化性前駆体である。
【0127】
項目3は、カチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーが、重合又は硬化開始に供される場合であっても、互いに化学的に反応することができず、特に、共有結合することができない、項目1又は2に記載の硬化性前駆体である。
【0128】
項目4は、カチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーが、23℃の温度で重合又は硬化開始に供される場合、互いに化学的に反応することができない、項目1~3のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0129】
項目5は、温度T1が、90℃以下、80℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は更には15℃以下である、項目1~4のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0130】
項目6は、温度T1が、-10℃~85℃、0℃~80℃、5℃~60℃、5℃~50℃、10~40℃、又は更には15~35℃の範囲である、項目1~5のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0131】
項目7は、温度T2が、90℃超、100℃超、120℃超、140℃超、150℃超、160℃超、180℃超、又は更には200℃超である、項目1~6のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0132】
項目8は、温度T2が、95℃~250℃、100℃~220℃、120℃~200℃、140℃~200℃、140℃~180℃、又は更には160℃~180℃の範囲である、項目1~7のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0133】
項目9は、カチオン性自己重合性モノマーが、更に架橋性である、項目1~8のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0134】
項目10は、カチオン性自己重合性モノマーが、カチオン開環重合によって重合する、項目1~9のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0135】
項目11は、カチオン性自己重合性モノマーが、特に20,000g/mol以下、15,000g/mol以下、12,000g/mol以下、10,000g/mol以下、又は更には8,000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーである、項目1~10のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0136】
項目12は、カチオン性自己重合性モノマーが、少なくとも1つの環状アミン、好ましくは2つの環状アミンを含む多官能性化合物である、項目1~11のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0137】
項目13は、環状アミンが、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目12に記載の硬化性前駆体である。
【0138】
項目14は、カチオン性自己重合性モノマーが、少なくとも2つのアジリジン官能基を含む多官能性化合物である、項目1~13のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0139】
項目15は、カチオン性自己重合性モノマーが、多官能性アジリジン、特に、ビス-アジリジノ化合物である、項目1~14のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0140】
項目16は、カチオン性自己重合性モノマーが、アジリジノ官能性オリゴマー、特に、アジリジノ官能性極性オリゴマーである、項目1~15のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0141】
項目17は、カチオン性自己重合性モノマーが、特に、(直鎖)ポリエーテル、(直鎖)ポリエステル又は(直鎖)ポリチオエーテルを含む、オリゴマー主鎖、特に極性オリゴマー主鎖に基づくアジリジン官能性化合物である、項目1~16のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0142】
項目18は、カチオン性自己重合性モノマーが、アジリジノ官能性(直鎖)ポリエーテルオリゴマー、特にN-アルキルアジリジノ官能性(直鎖)ポリエーテルオリゴマーである、項目1~17のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0143】
項目19は、(直鎖)ポリエーテルオリゴマー主鎖が、テトラヒドロフラン単位、エチレンオキシド単位、及び任意にプロピレンオキシド単位の共重合によって得られる、項目18に記載の硬化性前駆体である。
【0144】
項目20は、カチオン性自己重合性モノマーが、以下の式:
【化5】
[式中、
R
1は、共有結合又はアルキレン基であり、
各R
2は、アルキレン基からなる群から独立して選択され、
R
3は、直鎖又は分枝鎖アルキレン基であり、
Yは二価結合基であり、
nは、ポリエーテルオリゴマーの計算された数平均分子量が、特に2000g/molを超えるように選択される整数である]を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0145】
項目21は、カチオン性自己重合性モノマーが以下の式:
【化6】
[式中、
R
1は、アルキレン基であり、
各R
2は、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基からなる群から独立して選択され、
nは、ポリエーテルオリゴマーの計算された数平均分子量が、特に2000~10,000g/molであるように選択される整数である]を有する、項目1~20のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0146】
項目22は、カチオン性自己重合性モノマーが以下の式を有する、項目20又は21に記載の硬化性前駆体である。
【化7】
【0147】
項目23は、R1が、2個の炭素原子を有するアルキレン基である、項目19~22のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0148】
項目24は、各R2が、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基からなる群から独立して選択される、項目20又は21に記載の硬化性前駆体である。
【0149】
項目25は、カチオン性自己重合性モノマーが以下の式:
【化8】
[式中、a及びbは、1以上の整数であり、aとbの合計は、nに等しい]を有する、項目20に記載の硬化性前駆体である。
【0150】
項目26は、カチオン性自己重合性モノマーの計算された数平均分子量が10,000グラム/モル以下であるようにnが選択される、項目20~22のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0151】
項目27は、カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーが、特に、カチオン開環硬化によって硬化可能であるカチオン性硬化性モノマーである、項目1~26のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0152】
項目28は、カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーが、エポキシ基、特に、グリシジル基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、項目1~27のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0153】
項目29は、硬化性モノマーが、特にフェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目1~28のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0154】
項目30は、硬化性モノマーが、ノバラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目1~29のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0155】
項目31は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、プロトン化剤、アルキル化剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~30のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0156】
項目32は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、アルキル化剤からなる群から選択され、特に、アリールスルホン酸エステル、スルホニウム塩、特に、アルキルスルホニウム塩、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~31のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0157】
項目33は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、アリールスルホン酸エステルからなる群から選択され、特にp-トルエンスルホン酸エステル、好ましくはメチル-p-トルエンスルホネートからなる群から選択される、項目31又は32のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0158】
項目34は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、プロトン化剤からなる群から選択され、特に、ルイス酸、ブロンステッド酸又はブロンステッド酸の前駆体、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~31のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0159】
項目35は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、ブロンステッド酸からなる群から選択され、特に、スルホン酸、スルホニウム酸、ホスホン酸、リン酸、カルボン酸、アンチモン酸、ホウ酸、及びこれらの任意の組み合わせ、混合物又は塩からなる群から選択される、項目1~31のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0160】
項目36は、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、制酸作用成分と組み合わせたブロンステッド酸からなる群から選択され、特に、元素アルミニウム、クロム、銅、ゲルマニウム、マンガン、鉛、アンチモン、スズ、テルル、チタン及び亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩及びカルボキシレートからなる群から選択される、項目1~31又は34のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0161】
項目37は、制酸作用成分が、亜鉛を含むように選択され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が、特に亜鉛トシレートであるように選択される、項目36に記載の硬化性前駆体である。
【0162】
項目38は、硬化性モノマーの硬化開始剤が、急速反応(熱開始)硬化開始剤、潜在性(熱開始)硬化開始剤、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~37のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0163】
項目39は、硬化性モノマーの硬化開始剤が、第一級アミン、第二級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~38のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0164】
項目40は、アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、1つ以上のアミノ部分を有する芳香族構造、ポリアミン、ポリアミン付加物、ジシアンジアミド、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目39に記載の硬化性前駆体である。
【0165】
項目41は、硬化性モノマーの硬化開始剤が、ジシアンジアミド、ポリアミン、ポリアミン付加物、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~40のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0166】
項目42は、硬化性モノマーの硬化開始剤が、ジシアンジアミドであるように選択される、項目1~41のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0167】
項目43は、硬化性モノマーの硬化促進剤を更に含み、硬化促進剤が、特に、ポリアミン、ポリアミン付加物、尿素、置換尿素付加物、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、芳香族第三級アミン、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目1~42のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0168】
項目44は、硬化性モノマーの硬化促進剤が、ポリアミン付加物、置換尿素、特に、N-置換尿素付加物の群から選択される、項目43に記載の硬化性前駆体である。
【0169】
項目45は、カチオン性自己重合性モノマーとは異なる第2の硬化性モノマーを更に含む、項目1~44のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0170】
項目46は、第2の硬化性モノマーが、エポキシ基、特に、グリシジル基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、項目45に記載の硬化性前駆体である。
【0171】
項目47は、第2の硬化性モノマーが、特に、フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、水素化エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目45又は46に記載の硬化性前駆体である。
【0172】
項目48は、第2の硬化性モノマーが、水素化ビスフェノールエポキシ樹脂、特に、水素化ビスフェノール-Aとエピクロロヒドリンとの反応から誘導されたもの(水素化DGEBA樹脂)、及びこれらの任意の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂である、項目45~47のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0173】
項目49は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された際、特に、60℃~140℃、70℃~120℃、80℃~100℃、又は更には85℃~95℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性樹脂を更に含む、項目1~48のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0174】
項目50は、熱可塑性樹脂が、ポリエーテル熱可塑性樹脂、ポリプロピレン熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル熱可塑性樹脂、ポリエステル熱可塑性樹脂、ポリカプロラクトン熱可塑性樹脂、ポリスチレン熱可塑性樹脂、ポリカーボネート熱可塑性樹脂、ポリアミド熱可塑性樹脂、ポリウレタン熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物の任意の組み合わせからなる群から選択される、項目49に記載の硬化性前駆体である。
【0175】
項目51は、熱可塑性樹脂が、ポリエーテル熱可塑性樹脂、特に、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂の群から選択される、項目49又は50に記載の硬化性前駆体である。
【0176】
項目52は、ポリヒドロキシエーテル熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリエーテルジアミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、特に、ポリビニルブチラール樹脂、及びこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される、項目51に記載の硬化性前駆体である。
【0177】
項目53は、熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂の群から選択される、項目49~52のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0178】
項目54は、アクリル系モノマー又はアクリル樹脂を実質的に含まない、項目1~53のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0179】
項目55は、フリーラジカル重合性モノマー又は化合物、特に、照射開始フリーラジカル開始剤を実質的に含まない、項目1~54のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0180】
項目56は、
a)0.1~20重量%、0.5~15重量%、0.5~10重量%、又は更には1~5重量%のカチオン性自己重合性モノマーと、
b)10~80重量%、20~70重量%、又は更には20~60重量%の硬化性モノマーと、
c)0.01~10重量%、0.02~8重量%、0.05~5重量%、0.1~3重量%、又は更には0.2~2重量%のカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
d)0.1~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、又は更には1~6重量%の硬化性モノマーの硬化開始剤と、
e)0~60重量%、1~50重量%、1~40重量%、2~30重量%、5~30重量%、5~20重量%、又は更には8~15重量%の第2の硬化性モノマーと、
f)0~20重量%、0.2~15重量%、0.2~10重量%、0.5~8重量%、又は更には1~5重量%の熱可塑性樹脂と、
g)0~20重量%、0.05~15重量%、0.1~10重量%、0.5~8重量%、又は更には0.5~5重量%の硬化性モノマーの硬化促進剤と、
h)任意に、強靭化剤と、を含む、項目1~55のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0181】
項目57は、カチオン性自己重合性モノマー及び硬化性モノマーを、0.5:99.5~50:50、1:99~40:60、1:99~30:70、2:98~30:70、2:98~20:80、2:98~15:85、2:98~10:90、3:97~8:92、又は更には3:97~6:94の範囲の重量比で含む、項目1~56のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0182】
項目58は、一剤型(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の形態である、項目1~57のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0183】
項目59は、第1の部分及び第2の部分を有する二剤型(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の形態であり、
a)第1の部分が、
i.カチオン性自己重合性モノマーと、
ii.硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
b)第2の部分が、
i.硬化性モノマーと、
ii.カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、を含み、
第1の部分及び第2の部分は、2つの部品を組み合わせて、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を形成する前には分離されたままである、項目1~58のいずれか一項に記載の硬化性前駆体である。
【0184】
項目60は、部分的に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の前駆体であって、
a)カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料と、
b)任意に、温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの残留重合開始剤の一部と、
c)カチオン性自己重合性モノマーとは異なる硬化性モノマーと、
d)温度T2で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含み、
硬化性モノマーが、実質的に未硬化であり、特に、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料中に埋め込まれている、部分的に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の前駆体である。
【0185】
項目61は、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物を含むポリマー材料が、実質的に完全に重合されており、特に、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の重合度を有する、項目60に記載の部分的に硬化した前駆体である。
【0186】
項目62は、ポリマー材料が、ポリエーテルイミン、特に、直鎖又は分枝鎖ポリエチレンイミン(PEI)を含むか、又はこれからなる、項目60又は61に記載の部分的に硬化した前駆体である。
【0187】
項目63は、実験セクションに記載される試験方法に従って測定された際、1000~250,000Pa、1000~200,000Pa、2000~150,000Pa、3000~150,000Pa、3000~100,000Pa、又は更には3000~80,000Paの範囲の貯蔵剪断弾性率を有する、項目60~62のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体である。
【0188】
項目64は、DSCにより測定された際、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、又は更には-20℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する、項目60~63のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体である。
【0189】
項目65は、引張試験DIN EN ISO527に従って測定された際、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は更には少なくとも200%の破断点伸びを有する、項目60~64のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体である。
【0190】
項目66は、項目1~65のいずれか一項に記載の硬化性前駆体を、特に、T2以上の温度で実質的に完全に硬化させることにより得ることができる(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物である。
【0191】
項目67は、カチオン性自己重合性モノマーを含む重合性材料の自己重合反応生成物と、硬化性モノマーの硬化から生じるポリマー生成物とを含むポリマー材料を伴う相互貫入ネットワークを含む、項目66に記載の(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物である。
【0192】
項目68は、伸長フィルムの形態で成形された、項目60~67のいずれか一項に記載の部分的又は完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物である。
【0193】
項目69は、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物に好適な硬化系であって、
a)温度T1で開始される、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤と、
b)温度T2で開始され、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤とは異なる、硬化性モノマーの硬化開始剤と、を含む、硬化系である。
【0194】
項目70は、温度T2が、T1よりも高く、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤が開始される温度T1が、硬化性モノマーの硬化開始剤の開始を引き起こすには不十分である、項目69に記載の硬化系である。
【0195】
項目71は、項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は物品の表面の少なくとも一部に適用された、項目68に記載の部分的又は完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を含む、複合材物品である。
【0196】
項目72は、項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目60~65のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体を使用する工程を含む、複合材物品の製造方法である。
【0197】
項目73は、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の製造方法であって、
a)項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体を提供する工程と、
b)カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤を開始させることによって、工程a)の硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程と、
c)硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、工程b)の部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得る工程と、を含む、製造方法である。
【0198】
項目74は、項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目60~65のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体を使用する工程を含む、2つの部品を結合させる方法である。
【0199】
項目75は、
a)項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目60~65のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体を、2つの部品のうちの少なくとも1つの表面に適用する工程と、
b)硬化性前駆体又は部分的に硬化した前駆体(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物が2つの部品の間に配置されるように、2つの部品を接合する工程と、
c)任意に、カチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤を開始させることによって、工程a)に記載の硬化性前駆体を部分的に硬化させ、それにより、カチオン性自己重合性モノマーの自己重合反応生成物から生じたポリマー材料を含む部分的に硬化した前駆体を形成する工程、及び/又は
d)カチオン硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、工程a)又はc)の部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得て、2つの部品を結合させる工程と、を含む項目74に記載の2つの部品を結合させる方法である。
【0200】
項目76は、2つの部品が金属部品であり、方法が金属部品のヘムフランジ結合のための方法である、項目74又は75に記載の2つの部品を結合させる方法である。
【0201】
項目77は、
- 部分的に硬化した前駆体が、伸長フィルムの形態で成形され、
- 部分的に硬化した前駆体フィルムが、前駆体フィルムの第1の端部付近の第1の部分と、前駆体フィルムの第1の端部の反対側の第2の端部付近の第2の部分と、を有し、
- 第1の金属部品が、第1の本体部分と、第1の本体部分の第1の端部に隣接する第1の本体部分の縁に沿う第1のフランジ部分と、を有する第1の金属パネルを含み、
- 第2の金属部品が、第2の本体部分と、第2の本体部分の第2の端部に隣接する第2の本体部分の縁に沿う第2のフランジ部分と、を有する第2の金属パネルを含み、
本方法が、
1.部分的に硬化した前駆体フィルムを第1の金属パネル又は第2の金属パネルに固着させ、それにより、固着及び折り畳み後に、部分的に硬化した前駆体フィルムが、下記のように折り畳まれている金属接合部が得られ、
iii.部分的に硬化した前駆体フィルムの第1の部分が、第2の金属パネルの第2のフランジと第1の金属パネルの第1の本体部分との間に設けられ、
iv.部分的に硬化した前駆体フィルムの第2の部分が、第1の金属パネルの第1のフランジと第2の金属パネルの第2の本体部分との間に設けられる、部分的に硬化した前駆体フィルムを接着させる工程と、
2.カチオン硬化性モノマーの硬化開始剤を開始させることによって、部分的に硬化した前駆体を実質的に完全に硬化させ、それにより、実質的に完全に硬化した(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物を得て、金属接合部を結合させる工程と、を含む、項目76に記載の方法である。
【0202】
項目78は、第1の金属部品の第1の縁部の側が折り返され、第2の金属部品を挟むようにヘムフランジ構造が形成され、項目1~57のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目58~62のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体が、少なくとも第1の金属部品の第1の縁部及び第2の金属部品の第1の表面側を互いに固着させるように配置される、項目76に記載の方法である。
【0203】
項目79は、項目76~78のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる金属部品アセンブリである。
【0204】
項目80は、項目1~59のいずれか一項に記載の硬化性前駆体又は項目60~65のいずれか一項に記載の部分的に硬化した前駆体の、産業用途、特に建設用途及び自動車用途、特に自動車産業用のホワイトボディ結合用途のための使用である。
【0205】
項目81は、金属部品、特に自動車産業における金属部品のヘムフランジ結合のための、項目80に記載の使用である。
【0206】
項目82は、(ハイブリッド型)構造用接着剤組成物の製造のための、項目69又は70に記載の硬化系の使用である。
【実施例】
【0207】
以下の実施例により本開示を更に説明する。これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0208】
試験方法
試験用配合物の調製:
硬化性前駆体組成物は、2つの成分(B部及びA部)の押出混合物から調製される。A部及びB部の両方の調製を、以下に記載する。A部及びB部を適切な混合比でビーカー内に秤量し、均質な混合物が得られるまで3500rpmで0.5分間混合する。この工程が完了するとすぐに、混合は、第1の反応工程(B段階反応工程)を開始し、30~60分の範囲の時間内に部分的に硬化した前駆体が得られる。オープンタイム内で、得られたペーストを試験パネルの表面に適用して、以下に指定される方法で更に試験する。
【0209】
OLS及びT型剥離試験用の試験サンプルの調製:
OLS及びT型剥離サンプルの表面(鋼、グレードDX54+ZMB-RL1615)をn-ヘプタンで洗浄し、油状汚染サンプルの場合、3g/m2の試験油(Fuchs Petrolub AG,Germanyから市販されているPL 3802-39S)でコーティングする。試験サンプルは、試験前に、周囲室温(23℃+/-2℃、50%の相対湿度+/-5%))で24時間放置し、OLS及びT型剥離強度を上記のように測定する。
【0210】
1)DIN EN 1465による重なり剪断強度(OLS)
重なり剪断強度は、10mm/分のクロスヘッド速度で動作するZwick Z050引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germanyにより市販されている)を使用して、DIN EN 1465に従って測定される。重なり剪断強度試験アセンブリの調製のために、A部とB部との混合から生じるペーストを試験パネルの1つの表面上に重ね、スキージで除去して、300μmの厚さを有する画定された層を与える。次いで、サンプルを室温で12時間保管して、予備硬化前駆体への完全な変換を確実にする。その後、13mmの重なり接合部を形成する第2の鋼ストリップによってサンプルを被覆する。次いで、2つのバインダークリップを使用して重なり接合部を一緒にクランプし、試験アセンブリを、結合後に更に室温で4時間保管し、次いで、180℃で30分間、空気循環オーブンに入れる。翌日、サンプルを直接試験するか、又は老化を受けさせた後に試験する。実施例のそれぞれについて5つのサンプルを測定し、結果を平均して、MPaで報告する。
【0211】
2)DIN EN ISO 11339によるT型剥離強度
T型剥離強度は、100mm/分のクロスヘッド速度で動作するZwick Z050引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germanyにより市販されている)を使用して、DIN EN ISO 11339に従って測定される。T型剥離強度試験アセンブリの調製のために、A部とB部との混合から生じたペーストを、ニードルキャップを有さない注射器内に配置し、T型剥離試験パネルの中央にビードを押し出すことによって第1の表面に直接適用する。次いで、第2の試験パネル表面を、予め硬化された前駆体状態への変換を待つことなく、すぐに100mmの重なり接合部を形成する第1の試験パネル表面に結合させる。ガラスビーズを配合物に含めることにより、表面を共に押圧することによって、層の適切な厚さ(0.3mm)に達することを確実にする。絞り出し接着剤を除去した後、サンプルをクランプで固定し、最初に室温で12時間保管し、次いで、180℃で30分間空気循環オーブンに入れる。翌日、サンプルを直接試験するか、又は老化を受けさせた後に試験する。実施例のそれぞれについて3つのサンプルを測定し、結果を平均し、ニュートン(N)で報告する。
【0212】
老化後のOLS強度試験
試験前に試験サンプルが以下の手順に従って処理されたことを除いて、OLSの一般的な試験手順で前述したようにサンプルを調製する。
a)EN ISO 6270-2:2018に従う10日間の高温/多湿(H/W)老化手順、及び
b)任意に、PV 1210-2:2010(Volkswagen Group)による高温/多湿(H/W)腐食老化手順。
【0213】
適切な老化後、試験サンプルを一定の気候室内で24時間再調整し、性能を上述のように測定する。
【0214】
3)損傷モード
試験パネルの材料が異なることを除いて、上記のような重なり剪断強度試験を実施した。接着剤結合が損傷された後、肉眼でサンプルを目視検査し、次のように評価した:損傷が完全に接着剤層内に存在した場合、破壊モードは「凝集損傷」と見なされた。しかしながら、損傷が、接着剤層の少なくとも一部が金属基材から分離したと観察された場合、損傷モードは「接着損傷」と見なされた。実施例の材料ごとに、3つの接着剥離強度試験アセンブリを調製し、試験結果を平均化する。応用的見地から、「凝集損傷ード」は非常に望ましいため、非常に好ましい。
【0215】
原材料
実施例では、以下の原材料及び使用済みの市販の接着テープを使用する。
ビスアジリジノポリエーテル(BAPE)は、約6200g/molの数平均分子量を有するカチオン性自己重合性ビスアジリジノ官能性オリゴマーであり、これは、ドイツ特許第1544837号(Schmittら)に記載されるように、エチレンオキシドとテトラヒドロフランと(約1:4の比)の共重合によって得られる。
メチル-p-トルエンスルホネート(MPTS)は、Sigma-Aldrichから市販されているカチオン性自己重合性モノマーの重合開始剤である。
DEN431は、DOW Chemical Pacific,The Heeren,Singaporeから市販されているエポキシ樹脂である。
Epikote 828は、Hexion Specialty Chemicals GmbH,Iserlohn,Germanyから市販されているエポキシ樹脂である。
Eponex 1510は、Hexion Specialty Chemicals GmbH,Iserlohn,Germanyから市販されている水素化ビスフェノールエポキシ樹脂である。
Amicure CG1200は、Evonik,Allentown,PA,USAから市販されているエポキシド用ジシアンジアミド系潜在性硬化開始剤である。
Ancamine 2014 FGは、Evonik,Allentown,PA,USAから市販されているエポキシド用ポリアミン系硬化促進剤である。
Dyhard UR500は、AlzChem Trostberg,Germanyから市販されているエポキシド用硬化促進剤である。
PK-HAは、Gabriel Phenoxies Inc.,Rock Hill,SC,USAから市販されているフェノキシ樹脂である。
KaneAce MX 257は、Kaneka Belgium N.V.,Westerlo,Belgiumから市販されている強靭化剤である。
KaneAce MX 153は、Kaneka Belgium N.V.,Westerlo,Belgiumから市販されている強靭化剤である。
Sil Cell 32は、Stauss Perlite GmbH,Austriaから市販されているケイ酸アルミニウムフィラーである。
Shieldex AC-5は、Grace GmbH,Germanyから市販されているシリカ系防錆剤である。
MinSil SF20は、3M Company,USAから入手した溶融シリカフィラーである。
Dynasylan GLYEOは、Evonik GmbH,Germanyから市販されているシラン系接着促進剤である。
Glass Beads Class IVは、3M Company,USAから得られた。
【0216】
実施例
実施例1~3及び比較例C1の調製
本開示による例示的な二成分(A部及びB部)硬化性組成物は、表1の材料のリストからの成分を、高速ミキサー(Hauschild Engineering,Germanyから入手可能なDAC 150 FVZ Speedmixer)内で、均質な混合物が達成されるまで、3500rpmで0.5分間撹拌することによって調製する。表1において、全ての濃度は重量%で示す。比較例C1は、いかなるカチオン性自己重合性モノマーも、又はその任意の重合開始剤も含まない。
【0217】
B部を、以下のように調製した。
KaneAce MX 257、KanAce MX 153、Eponex 1510及びDEN 431を小型ビーカーに入れ、遊星高速ミキサー(DAC150 FVZ)を用いて3500rpmで1分間、一緒に混合する。次いで、メチル-p-トルエンスルホネートを添加し、均質な混合物が得られるまで混合する。その後、Sil Cell 32、Shieldex AC-5及びMinSil SF20を続いて添加し、3500rpmで1分間混合することにより混合物にブレンドする。次いで、Dynasylan GLYEOを添加し、続いてGlass Beadsを添加し、二成分硬化性組成物のB部を得た。
【0218】
A部を、以下のように調製した。
Amicure CG1200及びAncamine 2014 FG(又はDyhard UR500)をビーカーに入れる。続いて、ビスアジリジノポリエーテル(BAPE)を混合物に添加し、次いで、これを遊星高速ミキサー(DAC150 FVZ)を用いて3500rpmで1分間、均質な混合物が得られるまで混合し、二成分硬化性組成物のA部を得る。
【0219】
A部及びB部を、正確な混合比でビーカー内に秤量し、均質な混合物が達成されるまで3500rpmで0.5分間混合する。
【0220】
【0221】
【0222】
表2に示される結果から分かるように、本開示による構造用接着剤は、重なり剪断強度及びT型剥離強度に関して優れた性能及び特性を提供する。実施例2及び3の硬化性組成物で得られた結果は、エポキシド(Dyhard UR500)及びフェノキシ樹脂(PK-HA)のそれぞれ置換尿素系硬化促進剤を使用して得られた、改善されたT型剥離接着性能を示す。
【0223】
油性汚染基材に対するOLS強度性能
OLS強度性能はまた、試験油(Fuchs Petrolub AG,Germanyから市販されている、3g/m2のPL 3802-39S)で汚染された鋼サンプルについても試験される。
【0224】
【0225】
表3に示される結果から分かるように、本開示による構造用接着剤は、清浄な基材と比較した際、油性汚染基材に対する更に改善されたOLS強度性能を提供する。対照的に、比較例1(いかなるカチオン性自己重合性モノマーも、又はいかなるその重合開始剤も含まない)は、油性汚染基材に対するOLS強度のわずかな損失を予想外に示す。
【0226】
老化時のOLS強度性能
OLS強度性能はまた、様々な老化条件下で鋼サンプル上で試験される。
【0227】
【0228】
表4に示される結果から分かるように、本開示による構造用接着剤は、様々な老化条件下で、更に改善されたOLS強度性能を提供する。対照的に、比較例1(いかなるカチオン性自己重合性モノマーも、又はいかなるその重合開始剤も含まない)は、老化時の、特に油性汚染基材上で、OLS強度の実質的な損失を予想外に示す。
【0229】
損傷モード:
実施例1による接着剤を使用して、金属/金属及び金属/CFKパネルの多数の組み合わせについて損傷モードを試験した。結果を、表5にまとめる。
【0230】