(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】分析物指示薬上の薬剤溶出マトリクス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1459 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
A61B5/1459
(21)【出願番号】P 2021524038
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019059384
(87)【国際公開番号】W WO2020092897
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501078166
【氏名又は名称】センセオニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ハフステトラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】モハンティー,サナート
(72)【発明者】
【氏名】アトウッド,ロバート
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530009(JP,A)
【文献】特表2014-514033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0137070(US,A1)
【文献】特表2006-525853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生動物内の媒体における分析物の測定用センサであって、
センサ筐体と、
前記センサ筐体の少なくとも一部を覆う分析物指示薬であって、前記分析物指示薬が、前記分析物と可逆的に結合し、前記分析物が結合されたか否かを示す検出可能な特性を呈する1つ以上の指示薬分子を含む、分析物指示薬と、
前記分析物指示薬の
一部のみを覆う薬剤溶出マトリクスであって、前記薬剤溶
出マトリクスが、前記媒体が前記薬剤溶出マトリクスを通過し、前記分析物指示薬と接触することを可能にするように構成された1つ以上の開口を含
み、前記薬剤溶出マトリクスの前記1つ以上の開口は、前記薬剤溶出マトリクスが前記分析物指示薬の1または複数の部分を覆わないようにする、薬剤溶出マトリクスと、
前記分析物指示薬の劣化を抑え、前記薬剤溶出マトリクス内に分散された1つ以上の治療薬と、
を備える、センサ。
【請求項2】
請求項1記載のセンサにおいて、前記センサが生動物内に埋植可能である、センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載のセンサにおいて、前記薬剤溶出マトリクスが、前記センサ筐体の少なくとも一部を覆う、センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記治療薬の1つ以上が、1つ以上の共有結合によって、前記薬剤溶出マトリクス内に組み込まれ、前記共有結合が、水性媒体の存在下で破壊し、前記1つ以上の治療薬を放出する、センサ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記治療薬の1つ以上が、1つ以上の共有結合によって、前記薬剤溶出マトリクス内に組み込まれ、前記共有結合が、光への露出によって破壊し、前記1つ以上の治療薬を放出する、センサ。
【請求項6】
請求項5記載のセンサであって、更に、光源を備え、前記共有結合が、前記光源によって放出される光への露出によって破壊する、センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の治療薬が抗炎症薬を含む、センサ。
【請求項8】
請求項7記載のセンサにおいて、前記抗炎症薬が非ステロイド系抗炎症薬である、センサ。
【請求項9】
請求項8記載のセンサにおいて、前記非ステロイド系抗炎症薬がアセチルサリチル酸である、センサ。
【請求項10】
請求項8記載のセンサにおいて、前記非ステロイド系抗炎症薬がイソブチルフェニルプロパン酸である、センサ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の治療薬がグルココルチコイドを含む、センサ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の治療薬が、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、これらの誘導体、およびこれらの類似体の内1つ以上を含む、センサ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の治療薬が、前記分析物指示薬の酸化を抑える、センサ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記分析物指示薬が、指示薬分子を含むグラフトである、センサ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項記載のセンサであって、更に、前記分析物指示薬の少なくとも一部の上において、過酸化水素を水および酸素に変換することができる触媒の層を備える、センサ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項記載のセンサであって、更に、
前記センサ筐体内にあり、励起光を放出するように構成された光源と、
前記センサ筐体内にある光検出器であって、前記1つ以上の指示薬分子によって放出される光に感応し、前記生動物内の前記媒体における分析物の量を示す信号を生成するように構成される、光検出器と、
を備える、センサ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の開口が複数の開口を含む、センサ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の開口が、円形、楕円形、正方形、梨形、または菱形を有する1つ以上の開口を含む、センサ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の開口が、比較的大きい開口と比較的小さい開口とを含む、センサ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項記載のセンサにおいて、前記1つ以上の開口が、開口の列を構成する、センサ。
【請求項21】
生動物内の媒体における分析物の測定用センサであって、
センサ筐体と、
前記センサ筐体の少なくとも一部を覆う分析物指示薬であって、前記分析物指示薬が、前記分析物と可逆的に結合し、前記分析物が結合されたか否かを示す検出可能な特性を呈する1つ以上の指示薬分子を含む、分析物指示薬と、
前記分析物指示薬の一部のみを覆う薬剤溶出マトリクスであって、前記薬剤溶出マトリクスが、前記媒体が前記薬剤溶出マトリクスを通過し、前記分析物指示薬と接触することを可能にするように構成された1つ以上の開口を含み、前記薬剤溶出マトリクスの前記1つ以上の開口は、前記1つ以上の開口のうちの1つの開口を通って前記分析物指示薬の一部分へと至る少なくとも1つの見通し線経路を与える、薬剤溶出マトリクスと、
前記分析物指示薬の劣化を抑え、前記薬剤溶出マトリクス内に分散された1つ以上の治療薬と、
を備える、センサ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001] 本願は、2018年11月2日に出願された米国仮特許出願第62/754,788号の優先権を主張する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
[0002] 発明の分野
[0003] 本発明は、一般的には、生動物内に埋植または挿入されたセンサを含むシステムを使用して、生動物の媒体(medium)における分析物の測定に関する。具体的には、本発明は、分析物指示薬(analyte indicator)の少なくとも一部に被着される薬剤溶出マトリクス内に組み込むことができる1つ以上の治療薬を利用するセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
[0004] 背景の論述
[0005] センサは、生動物(例えば、人間)内に埋植され、この生動物内の媒体(例えば、間質液(ISF)、血液、または腹腔液)において分析物(例えば、グルコース、酸素、心臓マーカ、低比重リポタンパク質(LDL)、高比重リポタンパク質(HDL)、または中性脂肪)を測定するために使用することができる。センサは、光源(例えば、発光ダイオード(LED)または他の発光素子)、指示薬分子、および光検出器(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ、または他の光感応素子)を含んでもよい。分析物を測定するために指示薬分子を採用する埋め込み可能なセンサの例が、米国特許第5,517,313号および第5,512,246号に記載されている。これらの特許をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0004】
[0006] センサが分析物指示薬を含むこともできるが、分析物指示薬は、分析物指示薬(例えば、グラフト、層、またはマトリクス)に埋め込まれた(embedded)指示薬分子の形態にすることができる。例えば、埋植可能な(implantable)蛍光ベースのグルコース・センサでは、蛍光指示薬分子が、可逆的にグルコースと結合し、励起光(例えば、約378nmの波長を有する光)が照射されると、グルコースが指示薬分子に結合したか否かに応じた量の光(例えば、400から500nmの範囲の光)を放出する。
【0005】
[0007] センサが生動物の体内に埋植される場合、動物の免疫系がセンサを攻撃し始める可能性がある。実例をあげると、人間にセンサを埋植した場合、白血球細胞がセンサを異物として攻撃する可能性があり、初期免疫系猛攻撃において、好中球がセンサを攻撃する主要白血球細胞となる可能性がある。好中球の防衛メカニズムには、活性酸素種として知られている高腐食性物質の放出が含まれる。活性酸素種には、例えば、過酸化水素が含まれる。
【0006】
[0008] 過酸化水素および他の活性酸素種は、分析物指示薬の指示薬分子を劣化させるおそれがある。実例をあげると、ボロン酸基を有する指示薬分子では、過酸化水素は、このボロン酸基を酸化させることによって、指示薬分子を劣化させ、指示薬分子のグルコースを結合する能力を不能化させるおそれがある。ボロン酸の劣化は、分析物指示薬の生体内機能を阻害し、更に**早すぎる除去および置換に対する因果関係を制限するおそれがある。
【0007】
[0009] グルココルチコイドは、炎症を抑えるために、心臓ペースメーカや眼科手術と共に使用されている。実例をあげると、以下の欧州特許出願公開は、ペース・メーカ・リード(pace-maker leads)およびステロイドの放出制御について記載する。EP2416783 A1( 「糖質コルチコイド治療の改良」(Improved glucocorticoid therapy))、EP1477187 B1(「 親水性及び疎水性薬剤の組合せによる薬剤の制御放出のための処方物」(Formulation for controlled release of drugs by combining hydrophilic and hydrophobic agents))、EP1637164 A2(「親水性及び疎水性薬剤の組合せによる薬剤の制御放出のための改良処方物」(Improved formulation for controlled release of drugs by combining hydrophilic and hydrophobic agents))、およびEP2303227 A2(「制御放出型コルチコステロイド組成物および目の疾患を処置する方法」(Controlled release corticosteroid compositions and methods for the treatment of optic disorders))。しかしながら、これらのデバイスは分析物指示薬を有しておらず、グルココルチコイドが使用されるのは、分析物指示薬の劣化を抑えるためではない。代わりに、瘢痕組織が積み上がるのを停止させるために、グルココルチコイドが使用される。
【0008】
[0010] 現在、当技術分野では、分析物指示薬劣化の抑制を改善することが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0011] 本発明は、利点の中でもとりわけ、分析物指示薬の劣化抑制を可能にする(provide)ことによって、従来のシステムの欠点を克服する。ある実施形態では、分析物センサの分析物検知部品上に直接薬剤溶出マトリクスを被着することによって、この利点を達成することができる。ある実施形態では、薬剤溶出マトリクスは、局在化された薬剤の生体内免疫反応の軽減により、センサの精度が維持され、センサの寿命を延ばすように構成することができる。
【0010】
[0012] 本発明の一態様では、生動物内の媒体における分析物測定用センサを提供することができる。このセンサは、センサ筐体、分析物指示薬、薬剤溶出マトリクス、および1つ以上の治療薬を含むことができる。分析物指示薬は、センサ筐体の少なくとも一部を覆ってもよい。分析物指示薬は、可逆的に分析物と結合し、分析物が結合されたか否かを示す検出可能な特性(property)を呈する1つ以上の指示薬分子を含んでもよい。薬剤溶出マトリクスは、分析物指示薬の少なくとも一部を覆ってもよい。薬剤溶出ポリマー・マトリクスは、媒体が薬剤溶出マトリクスを通過し、分析物指示薬と接触することを可能にするように構成された1つ以上の開口を含んでもよい。1つ以上の治療薬は、分析物指示薬の劣化を抑えることができ、薬剤溶出マトリクス内に1つ以上の治療薬を分散させることができる。
【0011】
[0013] ある実施形態では、センサは生動物内に埋植可能にすることもできる。ある実施形態では、薬剤溶出マトリクスは、センサ筐体の少なくとも一部を覆ってもよい。ある実施形態では、水性媒体が存在するときに1つ以上の共有結合が破壊して(break)1つ以上の治療薬を放出するによって、治療薬の内1つ以上を薬剤溶出マトリクス内に組み込むこともできる。
【0012】
[0014] ある実施形態では、1つ以上の共有結合が光への露出によって破壊し1つ以上の治療薬を放出することによって、治療薬の内1つ以上を薬剤溶出マトリクス内に組み込むこともできる。ある実施形態では、センサは光源を含むこともでき、共有結合は、この光源によって放出された光への露出によって、破壊することもできる。
【0013】
[0015] ある実施形態では、1つ以上の治療薬が抗炎症薬を含んでもよい。ある実施形態では、抗炎症薬が非ステロイド系抗炎症薬であってもよい。ある実施形態では、非ステロイド系抗炎症薬がアセチルサリチル酸であってもよい。ある実施形態では、非ステロイド系抗炎症薬がイソブチルフェニルプロパン酸であってもよい。
【0014】
[0016] ある実施形態では、1つ以上の治療薬がグルココルチコイド含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、これらの誘導体、およびこれらの類似体の内1つ以上を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、分析物指示薬の酸化を抑えることができる。ある実施形態では、分析物指示薬が、指示薬分子を含むグラフトであってもよい。
【0015】
[0017] ある実施形態では、センサは、分析物指示薬の少なくとも一部の上において過酸化水素を水および酸素に変換することができる触媒層を含んでもよい。ある実施形態では、センサは、更に、光源と光検出器とを含んでもよい。光源は、センサ筐体内に配することができ、励起光を放出するように構成することができ、光検出器は、センサ筐体内に配することができ、光検出器は、1つ以上の指示薬分子によって放出される光に感応することができ、生動物内の媒体における分析物の量を示す信号を生成するように構成することができる。
【0016】
[0018] ある実施形態では、1つ以上の開口が複数の開口を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の開口が、円形、楕円形、正方形、梨形、または菱形を有する1つ以上の開口を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の開口が、比較的大きな開口および比較的小さな開口を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の開口が、開口の列を含んでもよい。
【0017】
[0019] 本システムおよび方法内に含まれる(encompassed)更に他の変形については、発明の詳細な説明において以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[0020] 添付図面は、本明細書に組み込まれその一部を形成するが、本発明の種々の非限定的な実施形態を例示する。図面において、同様の参照番号は同一のまたは機能的に同様の要素を示す。
【
図1】本発明の態様を具体化するセンサ・システムを示す模式図である。
【
図2】本発明の態様を具体化したセンサの斜視図を示す。
【
図3】本発明の態様を具体化したセンサの分解図を示す。
【
図4A】本発明の実施形態にしたがって、分析物センサの分析物指示薬上に、どのようにして薬剤溶出マトリクスを直接適用すればよいかを示す。
【
図4B】本発明の実施形態にしたがって、分析物センサの分析物指示薬上に、どのようにして薬剤溶出マトリクスを直接適用すればよいかを示す。
【
図5A】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図5B】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図5C】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図6】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図7】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図8】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図9】本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクスを示す。
【
図10】一実施形態による薬剤溶出マトリクスからの酢酸デキサメタゾンの放出特性(release profile)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0031]
図1は、本発明の態様を具体化した例示的な分析物監視システムの模式図である。この分析物監視システムは、連続分析物監視システム(例えば、持続血糖値モニタ)であってもよい。ある実施形態では、分析物監視システムは分析物センサ100およびトランシーバ101の内1つ以上を含んでもよい。
【0020】
[0032] ある実施形態では、システム100は、小型の完全皮下埋植可能なセンサであり、生動物(例えば、生体の人間)の媒体(例えば、間質液)における分析物(例えば、グルコース)の濃度を測定することができる。ある実施形態では、センサ100は、例えば、生動物の腕、手首、足、腹部、腹膜、またはセンサ埋植に適した生動物の他の領域に埋植することができる。例えば、非限定的な一実施形態では、センサ100は皮膚の直下に(即ち、皮下または腹膜組織内)埋植されてもよい。しかしながら、センサ100が完全に完全埋植可能なセンサであることは必須ではなく、ある代替実施形態では、センサ100が部分的に埋植可能な(例えば、経皮)センサまたは完全に外部のセンサであってもよい。
【0021】
[0033] ある実施形態では、トランシーバ101は外部に装着されるトランシーバであってもよい(例えば、アームバンド、リストバンド、ウェストバンド、または接着パッチによって取り付けられる)。ある実施形態では、トランシーバ101は、センサに離れて給電し、および/またはセンサと通信して、測定を開始し測定値を受信する(例えば、近場通信(NFC)によって)こともできる。しかしながら、これは必須ではなく、ある代替実施形態では、トランシーバ101は、1つ以上の有線接続を介して、センサ100に給電する、および/またはセンサ100と通信するのでもよい。ある非限定的な実施形態では、トランシーバ101はスマートフォン(例えば、NFC対応スマートフォン)であってもよい。ある実施形態では、トランシーバ101は、ディスプレイ・デバイス(例えば、スマートフォン)上で実行するハンド・ヘルド・アプリケーションにワイヤレスで(例えば、Bluetooth(商標)通信規格、例えば、そして限定ではなく、Bluetooth Low Energy等によって)情報(例えば、1つ以上の分析物濃度)を伝達することもできる。ある実施形態では、検出物監視システムは、アップロードされたデータを表示および共有するためのウェブ・インターフェースを含むこともできる。
【0022】
[0034] ある実施形態では、
図1に示すように、トランシーバ101が、例えば、コイルのような誘導性素子103を含むのはもっともである。トランシーバ101は、センサ100の誘導性素子114に電流を誘発する電磁波または電気力学場を(例えば、コイルを使用することによって)生成することができ、これによってセンサ100に給電する。また、トランシーバ101はデータ(例えば、コマンド)をセンサ100に伝えることもできる。例えば、非限定的な実施形態では、トランシーバ101は、センサ100に給電するために使用される電磁波を変調することによって(例えば、トランシーバ101のコイル103を通過する電流を変調することによって)データを伝えることができる。トランシーバ101によって生成された電磁波における変調は、センサ100によって検出/抽出することができる。更に、トランシーバ101は、センサ100からセンサ・データ(例えば、測定情報)を受信することができる。例えば、非限定的な実施形態では、トランシーバ101は、センサ100によって生成された電磁波において変調を検出することによって、例えば、トランシーバ101のコイル103を流れる電流において変調を検出することによって、センサ・データを受信することができる。
【0023】
[0035] トランシーバ101の誘導性素子103およびセンサ100の誘導性素子114は、これら2つの誘導性素子が適した物理的近接内に導かれたときに適正な磁場強度を達成することができるのであれば、任意の構成にしてよい。
【0024】
[0036] ある非限定的な実施形態では、
図1に示すように、センサ100がセンサ筐体102(即ち、本体、シェル、カプセル、または容器(encasement))に包まれてもよい。センサ筐体102は、剛性および生体適合性であるとよい。センサ100は、例えば、センサ筐体102の外面の少なくとも一部の上または内部に、被覆、拡散、接着、または埋め込まれた(embed)ポリマー・グラフトのような、分析物指示薬106を含むことができる。センサ100の分析物指示薬106(例えば、ポリマー・グラフト)は、分析物指示薬106に近接する分析物の量または濃度に基づいて、1つ以上の検出可能な特性(property)(例えば、光学特性)を呈する指示薬分子104(例えば、蛍光指示薬分子)を含むのでもよい。ある実施形態では、指示薬分子104は、可逆的に分析物と結合し、分析物が結合されたか否かを示す検出可能な特性を呈することができる。ある実施形態では、センサ100は、光源108を含むことができる。光源108は、指示薬分子104と相互作用する波長範囲で励起光329を放出する。また、センサ100は、1つ以上の光検出器224、226(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトレジスタ、または他の光感応素子)も含むことができる。1つ以上の光検出器(例えば、光検出器224)は、指示薬分子104によって放出された放出光331(例えば、蛍光光)に感応し、光検出器(例えば、光検出器224)が放出光331に応答して生成する信号は、指示薬分子の放出光331のレベル、つまり、対象分析物(例えば、グルコース)の量を示すことができる。ある非限定的な実施形態では、光検出器(例えば、光検出器226)の内1つ以上が、反射光333のような、分析物指示薬106から反射した励起光329に感応してもよい。ある非限定的な実施形態では、光検出器の内1つ以上が、光の波長の特定の部分集合のみ(例えば、放出光331に対応する波長の部分集合、または反射光333に対応する波長の部分集合)が通過することを許容し、残りの波長を反射する1つ以上のフィルタによって覆われてもよい。ある非限定的な実施形態では、センサ100は温度変換器670を含むこともできる。ある非限定的な実施形態では、センサ100は、1つ以上の治療薬(例えば、抗炎症薬)を分散させる薬剤溶出マトリクス428を含むこともできる。
【0025】
[0037] ある実施形態では、
図1に示すように、センサ100は基板116を含むことができる。ある実施形態では、基板116は、回路ボード(例えば、印刷回路ボード(PCB)または可撓性PCB)であってもよく、その上に回路部品(例えば、アナログおよび/またはディジタル回路部品)を実装するまたはそうでなければ取り付けることができる。しかしながら、ある代替実施形態では、基板116は、内部に回路が製作されている半導体基板であってもよい。回路は、アナログおよび/またはディジタル回路を含んでもよい。また、ある半導体基板の実施形態では、半導体基板内に製作された回路に加えて、半導体基板116に回路を実装することができ、または別の方法で取り付けることもできる。言い換えると、ある半導体基板の実施形態では、ディスクリート回路素子、集積回路(例えば、特定用途集積回路(ASIC))および/または他の電子部品(例えば、不揮発性メモリ)を含むことができる回路の一部または全部が、半導体基板116内に製作され、残りの回路を半導体基板116および/または誘導性素子114のコア(例えば、フェライト・コア)に固着してもよい。ある実施形態では、半導体基板116および/またはコアが種々の固着された部品間に通信経路を設けることもできる。
【0026】
[0038] ある実施形態では、センサ筐体102、分析物指示薬106、指示薬分子104、光源108、光検出器224、226、温度変換器670、基板116、およびセンサ100の誘導性素子114の内1つ以上が、以下の特許出願の内1つ以上において記載されている特徴の一部または全部を含んでもよい。これらの特許をここで引用したことにより、それら全ての内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0027】
2013年2月7日に出願された米国特許出願第13/761,839号、
2013年7月9日に出願された米国特許出願第13/937,871号、および
2012年10月10日に出願された米国特許出願第13/650,016号。
【0028】
同様に、センサ100および/またはトランシーバ101の構造および/または機能は、米国特許出願第13/761,839号、第13/937,871号、および第13/650,016号の内1つ以上において記載されている通りであってもよい。
【0029】
[0039] ある実施形態では、
図1に示すように、センサ100は光センサでもよいが、これは必須ではなく、1つ以上の代替実施形態では、センサ100は、例えば、電気化学センサ、拡散センサ、または圧力センサのような、異なる型式の分析物センサであってもよい。また、ある実施形態では、
図1および
図2に示すように、分析物センサ100は完全に埋植可能なセンサでもよいが、これは必須ではなく、ある代替実施形態では、センサ100は、トランシーバ101への有線接続を有する経皮センサであってもよい。例えば、ある代替実施形態では、センサ100が経皮ニードル内または経皮ニードル上に配置されてもよい(例えば、その先端に)。これらの実施形態では、誘導性素子103および114を使用するワイヤレス通信の代わりに、センサ100およびトランシーバ101は、トランシーバ101と、センサ100を含むトランシーバ経皮ニードルとの間を接続された1本以上のワイヤを使用して通信することができる。他の例をあげると、ある代替実施形態では、センサ100をカテーテル内に配置することもでき(例えば、静脈内血糖監視のため)、トランシーバ101と通信する(ワイヤレスで、またはワイヤを使用して)ことができる。
【0030】
[0040] ある実施形態では、センサ100はトランシーバ・インターフェース・デバイスを含んでもよい。センサ100がアンテナ(例えば、誘導性素子114)を含む実施形態では、トランシーバ・インターフェース・デバイスがセンサ100のアンテナ(例えば、誘導性素子114)を含んでもよい。センサ100とトランシーバ101との間に有線接続が存在する経皮実施形態の一部では、トランシーバ・インターフェース・デバイスが有線接続を含んでもよい。
【0031】
[0041]
図2および
図3は、
図1に示すセンサ・システムにおいて使用することができる本発明の態様を具体化したセンサ100の非限定的な実施形態を示す。
図2および
図3は、それぞれ、センサ100の非限定的な実施形態の斜視図および分解図である。
【0032】
[0042] ある実施形態では、
図3に示すように、センサ筐体102はエンド・キャップ113を含んでもよい。ある実施形態では、センサ100は、1つ以上のキャパシタ118を含んでもよい。1つ以上のキャパシタ118は、例えば、1つ以上の調整(tuning)キャパシタおよび/または1つ以上の規制(regulation)キャパシタであってもよい。1つ以上のキャパシタ118は、半導体基板116における製作には大きすぎて実用的でない場合もある。更に、1つ以上のキャパシタ118は、半導体基板116内に製作される1つ以上のキャパシタに追加されるのでもよい。
【0033】
[0043] ある実施形態では、
図3に示すように、センサ100は反射器119(即ち、ミラー)を含んでもよい。反射器119は、半導体基板116の終端に取り付けられてもよい。非限定的な実施形態では、反射器119は、反射器119の面部(face portion)121が半導体基板116の上面側(即ち、光源108および1つ以上の光検出器110が実装または製作されている半導体基板116の面)に対して概略的に垂直になり、光源108に面するように、半導体基板116に取り付けられてもよい。反射器119の面121は、光源108によって放出された光線を反射することができる。言い換えると、反射器119は、光源108によって放出された光線が、センサ100の軸方向端部から出射するのを阻止することができる。
【0034】
[0044] 本発明の一態様によれば、センサ100が開発された目的である用途は(1つの用途だけに適しているという訳では全くないが)、動物(人間を含む)の生体(living body)において種々の生物学的分析物を測定することである。例えば、センサ100は、グルコース、酸素、毒素、医薬品または他の薬剤、ホルモン、および他の代謝分析物を、例えば、人間の体内において測定するために使用することができる。
【0035】
[0045] 分析物指示薬106および指示薬分子104の具体的な組成は、センサを使用して検出しようとする特定の分析物、および/または分析物を検出するためにセンサをどこで使用するか(例えば、皮下組織内、血中、または腹膜内)によって異なるのはもっともである。しかしながら、分析物指示薬106は指示薬分子の分析物への露出を容易にすることが好ましい。また、指示薬分子の光学特性(optical characteristics)(例えば、蛍光指示薬分子の蛍光のレベル)が、指示薬分子が露出される具体的な分析物の濃度の関数となることも好ましい。
【0036】
[0046] バイオセンサのような医療デバイスのユーザ/患者の身体への埋植または挿入は、身体が有害な生理学的反応を呈する原因となる可能性があり、デバイスの機能に有害となる。この反応は、埋植手術による感染から、身体内に埋植された異物の免疫反応までの範囲に及ぶおそれがある。即ち、埋植可能なバイオセンサの性能が、生体内において、感染またはデバイス自体に対する免疫反応によって阻害されるまたは永続的に損傷する可能性がある。具体的には、分析物指示薬の性能が、センサ100が埋植された身体の免疫反応によって劣化するおそれがある。例えば、先に説明したように、好中球を含む白血球細胞が、埋植されたセンサ100を攻撃するおそれがある。好中球は、とりわけ、過酸化水素を放出し、指示薬分子104を劣化させるおそれがある(例えば、指示薬分子のボロン酸基を酸化させ、グルコースに結合する指示薬分子の能力を無能力化することによって)。
【0037】
[0047] ある実施形態では、
図4Aおよび
図4Bに示すように、1つ以上の薬剤溶出マトリクス428を分析物センサ100の分析物指示薬106上に被着することができる。
図4Aは、薬剤溶出マトリクス428を被着しようとするセンサ100の非限定的な実施形態を示し、
図4Bは、薬剤溶出マトリクス428が被着された後のセンサ100の非限定的な実施形態を示す。ある実施形態では、
図4Bに示すように、薬剤溶出マトリクス428をセンサ100の分析物指示薬106上に直接被着することができる。ある実施形態では、
図4Bに示すように、センサ100への被着後、薬剤溶出マトリクス428が分析物指示薬106の少なくとも一部を覆ってもよい。ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428が、加えて、センサ筐体102の少なくとも一部を覆ってもよい。ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428が薬剤溶出ポリマー・マトリクス(例えば、不活性ポリマー・マトリクス)であってもよい。
【0038】
[0048] ある実施形態では、
図4Bに示すように、薬剤溶出マトリクス428が1つ以上の開口430を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の開口430は、分析物(例えば、グルコース)を含有する媒体(例えば、ISF、血液、または腹腔液)に、分析物指示薬106への進路(access)を与えるように構成することができる。ある実施形態では、1つ以上の開口430は、分析物含有媒体が薬剤溶出マトリクス428を通過し、分析物指示薬106と接触することを可能にするように構成することもできる。
【0039】
[0049]
図4B~
図9は、本発明の態様を具体化した薬剤溶出マトリクス428の種々の非限定的な実施形態を示す。ある実施形態では、
図4B~
図5Cに示すように、薬剤溶出マトリクス428が、センサ100の一端を覆うように構成されるように、薬剤溶出マトリクス428が一端において閉じてもよい。ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428の閉鎖端が、センサ筐体102の一端に寄りかかっても(rest against)よい。ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428の閉鎖端が、エンド・キャップ113を有さないセンサ筐体102の端部に寄りかかってもよい。しかしながら、薬剤溶出マトリクス428は必須ではなく、そしてある代替実施形態では、
図6~
図9に示すように、薬剤溶出マトリクス428の両端が開いていてもよい。これらの代替実施形態では、
図6~
図9に示すように、薬剤溶出マトリクス428が円筒形のスリーブ形状を有してもよい。
【0040】
[0050] ある実施形態では、
図4Bに示すように、1つ以上の開口430が矩形形状を有してもよい。しかしながら、これは必須ではなく、ある代替実施形態では、開口430が異なる形状を有してもよい。例えば、そして限定ではなく、ある代替実施形態では、1つ以上の開口430が円形(
図5A~
図5Cおよび
図8参照)、楕円形(
図6および
図9参照)、正方形、梨形、または菱形を有してもよい。更に、ある実施形態では、開口403が1つよりも多い形状を有してもよい(例えば、薬剤溶出マトリクス428が、
図7におけるように、円形および楕円形の開口を有してもよい)。
【0041】
[0051] 薬剤溶出マトリクス428の種々の実施形態において、
図4B~
図9に示すように、開口430の数、形状、および/またはサイズは様々であってよい。ある実施形態では、
図5Aに示すように、薬剤溶出マトリクス428が多くの小さい開口430(例えば、100μmの直径を有する開口)を有してもよい。他の実施形態では、
図5Bに示すように、薬剤溶出マトリクス428がもっと少ない開口430を有してもよく、開口430はもっと大きくてもよい(例えば、400μmの直径を有する開口)。更に他の実施形態では、
図5Cに示すように、薬剤溶出マトリクス428は、更に少ない開口430を有してもよく、開口430は更に大きくてもよい(例えば、700μmの直径を有する開口)。ある実施形態では、
図6に示すように、薬剤溶出マトリクス428は2つの非常に大きな開口430を有してもよい。ある実施形態では、
図7に示すように、薬剤溶出マトリクス428は、複数の比較的大きな開口430(例えば、2つの楕円形開口)と、複数の比較的小さい開口430(例えば、4つの円形開口)を有してもよい。ある実施形態では、薬剤溶出マトリクス428は、複数の列の開口430(例えば、3つずつ6列の円形開口430)を有してもよい。ある実施形態では、
図9に示すように、薬剤溶出マトリクス428が4つの大きな開口430を有してもよい。
【0042】
[0052] ある実施形態では、センサ100が、分析物指示薬106の少なくとも一部を覆う薬剤溶出マトリクス428を有してもよい。ある実施形態では、薬剤溶出マトリクス428が、センサ筐体102の少なくとも一部も覆ってもよい。ある実施形態では、1つ以上の治療薬を薬剤溶出マトリクス428から分散させることもできる。ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、好中球が傷空間(wound space)から入る移動を低減または停止し、こうして過酸化水素および/または線維性被包の産生を低減もしくは停止することができる。したがって、ある実施形態では、1つ以上の治療薬が分析物指示薬106(例えば、ポリマー・グラフト)の劣化を抑えることができる。
【0043】
[0053] ある実施形態では、薬剤溶出マトリクス428の表面エリアが、十分な量の1つ以上の治療薬が放出されるようにしてもよい。ある実施形態では、1つ以上の開口430の面積を合わせると、分析物指示薬106の十分な表面積が、分析物含有媒体(例えば、間質液)に露出されるようにしてもよい。
【0044】
[0054] ある非限定的な実施形態では、分析物指示薬106(例えば、ポリマー・グラフト)が、グラフト106の外側に薄い層(例えば、10nm)を有してもよい。この薄い層は、指示薬分子を劣化から保護することができる。この薄い層は、プラチナであってもよく、指示薬分子104を含むことができる分析物指示薬106の外側の表面上にプラチナをスパッタリングすることができる。プラチナは、センサには無害である水および酸素に過酸化酸素を変換するときに、触媒として素早く作用する。この反応の速度は、ボロン酸の酸化よりも遙かに速く、したがって、プラチナは、活性酸素種による酸化に対する保護を受け持つことになる。ある実施形態では、過酸化水素の水および酸素への変換の触媒はプラチナであるが、代替実施形態では、例えば、パラジウムまたはカタラーゼのような、この反応の他の触媒を、プラチナの代わりにまたはプラチナに加えて、薄膜に使用してもよい。
【0045】
[0055] ある実施形態では、薬剤溶出マトリクス428から分散することができる1つ以上の治療薬は、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)および/またはイソブチルフェニルプロパン酸(イブプロフェン))というような、1つ以上の抗炎症薬を含んでもよい。ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428から分散される1つ以上の治療薬が、1つ以上のグルココルチコイドを含んでもよい。ある非限定的な実施形態では、1つ以上の治療薬が、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、これらの誘導体、およびこれらの類似体の内1つ以上を含んでもよい。ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、好中球およびマクロファージによる過酸化水素の産生を抑えることができる。ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、分析物指示薬106の劣化を抑えることができる。
【0046】
[0056] ある非限定的な実施形態では、薬剤溶出マトリクス428は、マトリクス428全体に分散された1つ以上の治療薬を放出するように制御することができる。実例をあげると、種々の実施形態において、薬剤溶出マトリクス428は、時間、日、週、または月単位の期間にわたって、1つ以上の治療薬を放出するように制御することができる。
図10は、非限定的な一実施形態による、薬剤溶出マトリクス428からの酢酸デキサメタゾンの放出特性を示す。
【0047】
[0057] ある実施形態では、1つ以上の治療薬が、化学的に薬剤溶出マトリクス428内に組み込まれてもよい。ある非限定的な実施形態では、1つ以上の治療薬を、共有結合によって、薬剤溶出マトリクス428内に組み込むことができる。薬剤溶出マトリクス428は、共有結合の1つ以上が破壊されたとき、1つ以上の治療薬を放出することができる。例えば、非限定的な実施形態では、共有結合が水の存在下で(例えば、間質液、血液、または腹腔液における水の存在下で)破壊するのでもよい。しかしながら、これは必須ではなく、共有結合は、加えてまたは代わりに、紫外線または可視光への露出によって、破壊するのでもよい。ある非限定的な実施形態では、共有結合が、光源108によって放出された光への露出によって破壊するのでもよい。例えば、一実施形態では、光源108によって放出された励起光329(例えば、約378nmの波長を有する)への露出が、共有結合を破壊させることができる。更に、1つ以上の治療薬の溶出特性を変化させる(例えば、1つ以上の治療薬を放出する速度を高める)ように、光源108を制御して光を放出させる(例えば、特定の間隔および/または強度で点滅させる)ことができる(例えば、指示薬種の酸化を防止する有効性を最大限高めるため)。ある実施形態では、特定の範囲(例えば、150nm~1000nmまたは300~600nm)の波長が、光開裂(photocleave)(即ち、共有結合を破壊し解放する)に必要となることもあり、センサ100の光源108によって放出される光の波長は、この特定の範囲内に入ればよい。
【0048】
[0058] 薬剤溶出マトリクス428を含み埋植されたセンサ100は、薬剤溶出マトリクスを含まないセンサよりも性能を向上させることができた。実例をあげると、1つ以上の治療薬の放出(例えば、薬剤溶出マトリクス428による)を制御することによって、寿命を伸ばし機能を向上させることができた。
【0049】
[0059] 以上、本発明の実施形態について、図面を参照しながら余すところなく説明した。これらの好ましい実施形態に基づいて本発明について説明したが、発明の主旨および範囲内において、説明した実施形態には特定の変更、変形、および代替構造が可能であることは、当業者には明白であろう。