(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物、浸出液及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/415 20060101AFI20231201BHJP
A61K 36/60 20060101ALI20231201BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231201BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20231201BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20231201BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231201BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20231201BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20231201BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20231201BHJP
C12Q 1/6895 20180101ALN20231201BHJP
【FI】
C07K14/415 ZNA
A61K36/60
A61P11/06
A61P11/02
A61P17/04
A61P37/08
C07K1/14
C07K1/34
C12Q1/686 Z
C12Q1/6895 Z
(21)【出願番号】P 2021558495
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2019088605
(87)【国際公開番号】W WO2020186624
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】201910210654.X
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521436898
【氏名又は名称】中国医学科学院北京協和医院
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNION MEDICAL COLLEGE HOSPITAL, CHINESE ACADEMY OF MEDICAL SCIENCES
【住所又は居所原語表記】Department of Allergy,Peking Union Medical College Hospital (East), 1 Shuaifuyuan, Wangfujing Street, Dongcheng District Beijing 100730(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】尹佳
(72)【発明者】
【氏名】周俊雄
(72)【発明者】
【氏名】程▲シェン▼
(72)【発明者】
【氏名】顧建青
(72)【発明者】
【氏名】李欣
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101392023(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103131752(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107669743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101791399(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102552900(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101972472(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101392017(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 1、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 2、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 3、配列番号9で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 4、配列番号10で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 5、配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 6、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 7、配列番号13で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 8、配列番号14で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 9、配列番号15で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 10、配列番号16で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 11、配列番号17で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 12、配列番号18で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 13、配列番号19で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 14、及び配列番号20で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 15を含むカナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物、体積比で0.2~0.4%のフェノール、体積比で45~55%のグリセリン、
並びに4.5~5.5g/LのNaClを含み、pH値が6.0~8.0であることを特徴とするカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
【請求項2】
前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液の活性濃度が50000~200000BAU/mlであり、蛋白濃度が0.40~1.60mg/mlであることを特徴とする請求項
1に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
【請求項3】
前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液の総蛋白濃度が0.40~1.60mg/mlであることを特徴とする請求項
1に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
【請求項4】
SDS-PAGE及びWestern Blotting検出に基づいて、前記カナムグラ花粉アレルゲン抽出物の蛋白は主に、10kDa、11.8kDa、12.3kDa、13.5kDa、15.2kDa、15.32kDa、16.45kDa、16.61kDa、19kDa、28kDa、37kDa、42kDa、45kDa、52kDa、66kDa、76kDaに分布することを特徴とする請求項
1に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
【請求項5】
ホロ蛋白マススペクトル検出に基づいて、主に、配列番号38~配列番号71の特性ペプチドセグメントを含むが、これらに限られないことを特徴とする請求項
1に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
【請求項6】
カナムグラ花粉を採集し、常温乾燥または真空乾燥またはフルイドベッド乾燥を行うステップS1と、
乾燥後の花粉を脱脂して、乾燥するステップS2と、
脱脂乾燥後のカナムグラ花粉を重量g体積ml比1:50~1:10でpH7.9~8.2のリン酸塩-塩水緩衝液に入れ、2~8℃で22~26h攪拌し、それを浸漬抽出するステップS3と、
ステップS3後の浸漬抽出液を取り、遠心分離により上清液を取り、上清液をろ過及び除菌ろ過するステップS4と、
ろ過後の上清液を限外ろ過濃縮し、限外ろ過濃縮液を得るステップS5と、
前記限外ろ過濃縮液を再度ろ過及び除菌ろ過した後、真空凍結乾燥してカナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品を得るステップS6と、
前記カナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品をpH6.5~7.5リン酸塩―塩水緩衝液で再溶解させてカナムグラ花粉アレルゲン原液を調製し、2~8℃で放置し、等体積で滅菌のグリセリンと均一に混合し、溶液のpH値を6.0~8.0に調整するステップS7と、
を含むことを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液の調製方法。
【請求項7】
ステップS2において、前記花粉脱脂は、花粉とアセトンとの重量g体積ml比1:5~1:1で、上層液体が上澄みになるまで脱脂処理を繰り返ることを特徴とする請求項
6に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップS4において、前記遠心分離の条件は、8000~12000g、遠心分離温度2~8℃、時間15~20minであり、前記ろ過及び除菌ろ過において、まず、4000メッシュのろ過布でろ過した後、板紙、0.45μm及び0.22μmのろ膜で順次にろ過することを特徴とする請求項
6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記限外ろ過濃縮は、3KD限外ろ過膜により限外ろ過を行い、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlである場合に、限外ろ過を中止させ、限外ろ過透過液における総蛋白含有量>0.02 mg/mlである場合に、限外ろ過膜を交換した後、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlとなるまで限外ろ過透過液の限外ろ過を繰り返し、
ステップS6において、前記真空凍結乾燥の条件は、-50~-35℃で凍結し、2~8mbar真空圧力で、-25℃で乾燥し、水分含有量≦3%に制御することを特徴とする請求項
6に記載の調製方法。
【請求項10】
前記ステップS1は、さらに原料カナムグラ花粉に対して鏡検識別および/またはDNA鑑定を行うステップを含み、DNA鑑定方法は、プライマーとして配列番号1、配列番号2を用い、識別のカナムグラ花粉原料をPCR増幅させ、増幅製品を検出することであることを特徴とする請求項
6に記載の調製方法。
【請求項11】
カナムグラ花粉の収集、乾燥、脱脂、抽出、限外ろ過濃縮、凍結乾燥によって製造される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液
の凍結乾燥品
の製造方法であって、
自然脱落法でカナムグラ花粉を収集する収集ステップ(1)と、
花粉が付着しなくなるまで常温乾燥または真空乾燥またはフルイドベッド乾燥で乾燥し、乾燥後の花粉を150~250メッシュのサンプルふるいに通過させる乾燥ステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた花粉とアセトンをそれぞれg及びmlとして1:5~1:1の重量体積比で脱脂処理し、攪拌または振動脱脂30分間した後、静置して分層させ、上層液を注出し、新たなアセトンを入れ、上層液体が上澄みになるまで脱脂を繰り返し、脱脂後の花粉を均一に散開させ、室温乾燥または真空乾燥またはフルイドベッド乾燥で48時間~72時間乾燥する脱脂ステップ(3)と、
脱脂乾燥後のカナムグラカナムグラ花粉を重量体積比1:50~1:10でpH7.9~8.2のリン酸塩―塩水緩衝液10Lに入れ、2~8℃で22~26h攪拌し、浸漬抽出し、抽出後の浸出液を取り、遠心分離力8000~12000g、遠心分離温度2~8℃、時間15~20分間とすることにより遠心分離し、上清液を回収し、まず、4000メッシュのろ過布でろ過した後、ろ液を順次に板紙、0.45μm及び0.22μmろ膜で順次にろ過させる抽出ステップ(4)と、
ろ過後の浸出液を3KD限外ろ過膜で限外ろ過し、限外ろ過濃縮液及び限外ろ過透過液をサンプルとして取り、その総蛋白含有量を検出し、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02mg/mlである場合に、透過液を直接排棄し、限外ろ過透過液における総蛋白含有量>0.02mg/mlである場合に、限外ろ過膜の完全性テストを行い、限外ろ過膜が破損しないと、透過液を排棄し、限外ろ過膜が破損すると、限外ろ過膜を交換した後、透過液の限外ろ過を繰り返る限外ろ過濃縮ステップ(5)と、
限外ろ過濃縮液を再度ろ過及び除菌ろ過した後、-50~-35℃で凍結し、2~8mbar真空圧力で、-25℃で乾燥し、水分含有量≦3%に制御するという凍結乾燥プロセス条件によって、カナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品を得る凍結乾燥ステップ(6)と、
を含む
、製造方法。
【請求項12】
浸出液浸出液過敏性喘息、アレルギー鼻炎、アトピー性皮膚炎及び慢性じんま疹を含むアレルギー疾患の診断
及びその特異免疫治療の製剤
であって、
請求項
1~5のいずれか一項に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液
又は請求項
11に記載のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液凍結乾燥品
を含む、製剤。
【請求項13】
前記カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物凍結乾燥品
を含む製剤は、錠剤
又は口腔内崩壊錠
であり、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液を
含む製剤は、注射液、舌下ドロップ、アレルゲン貼付剤
又はアレルゲン浸出液希釈液
であることを特徴とする請求項
12に記載の
製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に関し、具体的には、カナムグラ花粉標準化アレルゲン浸漬抽出物、浸出液及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々はアレルギー疾患に対する認識は「花粉症」から始まり、花粉症は過敏性鼻炎とも称する。1911年に、NoonとFreemanは初めて花粉抽出液を用いて花粉症を治療し、アレルギー疾患治療の歴史はここから始まった。現在、アレルギー疾患は、世界の重大な衛生問題の1つである。工業化国家において、25%を超える人口は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻結膜炎及びアレルギー性皮膚炎に悩まされ、その中で、アレルギー性喘息が最も一般的である。感作花粉の吸入はアレルギー性喘息やそのほかの気道アレルギー疾患の最も重要な要因である。VRTA―L.Aなどは、50%ほどのアレルギー疾患患者が草類花粉に過敏することを発見した。カナムグラ(Humulusscandens)はバラ目クワ科カナムグラ属に属し、一年または複数年の蔓草本植物であり、生長条件要求が少なく、溝と道端の荒れ地でよく生まれ、開花期が7~9月である。新疆ウイグル自治区と青海省を除いて、中国の各省にも分布し、一般的な雑草の1つである。カナムグラは、例えば日本、韓国、ベトナムなどの外国にも分布する。カナムグラ花粉症は中国の北の地域によく見られる。夏や秋の季節で、中国の北の大部の都市で、カナムグラ花粉の空気における含有量がヨモギ属花粉に次ぐが、個別の地域ですらヨモギ属花粉より高い。
尹佳さんの「夏秋季花粉症患者が過敏性鼻炎と過敏性喘息を合併する状況及びそれらの関係研究」によれば、カナムグラ花粉症が北京の夏秋季花粉症患者の58%を占めることが分かった。趙京さんの「北京児童の気道過敏性疾患と皮膚アレルゲン試験の調査」によれば、13~14歳の児童に対する北京気道アレルギー疾患流行病学調査結果から、カナムグラ花粉敏感者が4.2%であることが分かった。任華麗さんの「北京地域成人過敏性鼻炎吸入アレルゲンスペクトル分析」によれば、北京の住民において過敏性鼻炎に診断した成人患者265例を選択し、永久性、季節性の2組の合計16種類の標準化アレルゲンに対して検出し、主なアレルゲン配列を分析し、カナムグラは18.11%であることが分かった。田芳潔さんの「北京地域アレルギー鼻炎の吸入性アレルゲン調査」によれば、北京地域アレルギー鼻炎(allergic rhinitis,AR)の主な吸入性アレルゲンに対して調査を行い、カナムグラが17.29%を占めることが分かった。李勇さんの「台州地域1013例アレルギー鼻炎患者アレルゲンスペクトル分析」によれば、台州地域アレルギー鼻炎患者のアレルゲン分布状況を調査し、カナムグラ花粉過敏者が248例で、30.58%を占めることが分かった。劉杰さんの「チンタオ地域空気伝染花粉及びそのα感作性調査」によれば、チンタオ市の空気伝染花粉の種類、数や発散特性は、主にマツ属花粉であり、2番目はカナムグラとヨモギ属であることが分かった。蘭海燕さんの「河北省遷安地域空気伝染花粉調査」によれば、遷安地域の空気伝染花粉種類、発散特性及び感作状況を調査し、空気伝染花粉の散るピークは春、秋であり、花粉種類はマツ属、コウヨウザン属、プラタナス属、ナシ属、サイプレス属、ヤナギ属、ヨモギ属、カナムグラ、ブタクサなどがあることが分かった。朱香順さんの「イ坊市花粉症患者において主な感作花粉種属分析」によれば、イ坊市花粉症患者において主な感作花粉種類における感作花粉がカナムグラで、68%を占め、2番目がカナムグラ、夏秋季花粉I、ブタクサ、スズカケノキであることが分かった。孫立英さんの「上海中心エリア空気伝染花粉調査」によれば、上海市年間空気伝染花粉の種類や数及びその分布特徴を分析し、秋に、カンナビス類及びグラミナス花粉が主であり、主にカナムグラ属(59.01%)、グラミナス(18.45%)やヨモギ属(5.32%)であることが分かった。
以上のカナムグラ花粉流行病学調査研究によれば、カナムグラ花粉過敏は幅広く中国各地に分布し、北の地域では、カナムグラ花粉は花粉過敏の主な感作原である。
現在のアレルゲン特異免疫治療の方法は、主に、皮下注射投薬免疫治療と舌下投薬免疫治療に分けられる。皮下注射投薬免疫治療は、すでに100年以上の歴史を持ち、その安全性と有効性は証明された。20世紀90年代最初に、アレルゲン舌下ドロップワクチンが誕生し、1998年に、WHOはアレルゲン舌下ドロップワクチンの安全と有効を開示した。
しかしながら、舌下投薬免疫脱感作の方式は、皮下注射免疫投薬に比べて、治療周期が長く、短時間内に治療効果が明らかではなく、平均脱感作周期が3~5年である。1つの治療周期では、舌下投薬方式免疫脱感作投薬量は皮下注射投薬量の100倍である。このため、皮下注射投薬免疫脱感作の方式は舌下投薬に比べて、患者コンプライアンスが悪いが、治療周期が短く、効果が速く、治療費用が低い。したがって、2種類の投薬方式は相互に補い合って作り上げる。現在、カナムグラ花粉アレルゲンに用いられる皮下注射免疫製剤の安定性が悪く、蛋白含有量と生物力価とも時間に従って低下し、成分不明の試薬が特定時間に保存した後、カナムグラ花粉によるアレルギー疾患を診断するとき、陽性率が低下し、正確性が低い。
【発明の概要】
【0003】
上述した技術的問題を解決するために、本発明はカナムグラ花粉アレルゲン浸出液を提供し、この浸出液は特異性が高く、カナムグラ感作蛋白成分抽出が充分であり、且つ割合が恒常となり、総生物力価が安定であり、有効期間が長い。アレルギー疾患の皮膚プリックテスト診断及び特異免疫治療に効果的に応用でき、カナムグラ花粉によるアレルギー疾患を効果的に診断し、それに対して特異免疫治療を行うことができる。
上記の目的を実現するために、本発明は以下の技術的方案を利用する。
【0004】
カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 1を含み、
配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 2を含み、
配列番号7で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 3を含み、
配列番号9で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 4を含み、
配列番号10で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 5を含み、
配列番号11で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 6を含み、
配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 7を含み、
配列番号13で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 8を含み、
配列番号14で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 9を含み、
配列番号15で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 10を含み、
配列番号16で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 11を含み、
配列番号17で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 12を含み、
配列番号18で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 13を含み、
配列番号19で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 14を含み、
配列番号20で示されるアミノ酸配列を有するカナムグラ花粉アレルゲン蛋白Hum sc 15を含む。
【0005】
前記遺伝子は、例えば配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9―20で示されるアミノ酸配列をコードし、それぞれ配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号26―37で示される配列に対応するものであるカナムグラ花粉花粉アレルゲン浸漬抽出物をコードするための遺伝子。
前記カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物、体積比で0.2~0.4%のフェノール、体積比で45~55%のグリセリン、及び4.5~5.5g/LのNaClを含み、pH値が6.0~8.0であるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液。
好ましくは、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液の活性濃度が50000~200000BAU/mlであり、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液の総蛋白濃度が0.40~1.60mg/mlであり、前記カナムグラ花粉のアレルゲン蛋白含有量が0.08~0.32mg/mlである。
【0006】
さらに、SDS-PAGE及びWestern Blotting検出に基づいて、前記カナムグラ花粉アレルゲン抽出物の蛋白は主に、10kDa(具体的な分子量は6.3 kDa、7.0kDa、8.09kDa、8.8kDa、9.6kDa、10.03kDa、10.22kDaである)、11.8 kDa、12.3 kDa、13.5 kDa 、15.2 kDa、 15.32 kDa、16.45 kDa 、16.61 kDa、19 kDa(具体的には、19.04 kDa、19.18 kDa、19.99 kDa)、28 kDa、37 kDa、42 kDa、45 kDa、52 kDa、66 kDa、76 kDaに分布する。
カナムグラ花粉を採集し、常温乾燥または真空乾燥またはフルイドベッド乾燥を行うステップS1と、
乾燥後の花粉を脱脂、乾燥するステップS2と、
【0007】
脱脂乾燥後のカナムグラ花粉を重量g体積ml比1:50~1:10でpH7.9~8.2のリン酸塩-塩水緩衝液に入れ、2~8℃で22~26h攪拌し、それを浸漬抽出するステップS3と、
ステップS3後の浸漬抽出液を取り、遠心分離により上清液を取り、上清液をろ過及び除菌ろ過するステップS4と、
ろ過後の上清液にを限外ろ過濃縮し、限外ろ過濃縮液を得るステップS5と、
前記限外ろ過濃縮液を再度ろ過及び除菌ろ過した後、真空凍結乾燥してカナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品を得るステップS6と、
前記カナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品をpH6.5~7.5リン酸塩―塩水緩衝液で再溶解させてカナムグラ花粉アレルゲン原液を調製し、2~8℃で放置し、等体積で滅菌のグリセリンと均一に混合し、溶液のpH値を6.0~8.0に調整するステップS7と、
を含む前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液の調製方法。
前記調製方法において、好ましくは、ステップS2において、前記花粉脱脂は、花粉とアセトンとの重量g体積ml比1:5~1:1で上層液体が上澄みになるまで脱脂処理を繰り返る。
前記調製方法において、好ましくは、ステップS4において、前記遠心分離の条件は、8000~12000g、遠心分離温度2~8℃、時間15~20minであり、前記ろ過及び除菌ろ過において、まず、4000メッシュのろ過布でろ過した後、板紙、0.45μm及び0.22μmのろ膜で順次にろ過する。
【0008】
前記調製方法において、好ましくは、ステップS5において、前記限外ろ過濃縮は、3KD限外ろ過膜により限外ろ過を行い、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlである場合に、限外ろ過を中止させ、限外ろ過透過液における総蛋白含有量>0.02 mg/mlである場合に、限外ろ過膜を交換した後、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlとなるまで限外ろ過透過液の限外ろ過を繰り返る。
前記調製方法において、好ましくは、ステップS6において、前記真空凍結乾燥の条件は、-50~-35℃で凍結し、2~8mbar真空圧力で、-25℃で乾燥し、水分含有量≦3%に制御する。
前記調製方法において、好ましくは、前記ステップS1は、さらに、原料カナムグラ花粉に対して鏡検識別および/またはDNA鑑定を行うステップを含み、DNA鑑定方法は、プライマーとして配列番号1、配列番号2を用い、識別のカナムグラ花粉原料をPCR増幅させ、増幅製品を検出することである。
前記調製方法において、好ましくは、前記リン酸塩―塩水緩衝液は4.5~5.5g/Lの塩化ナトリウム、0.03%~0.05%のリン酸二水素カリウム、1.5%~2%二塩基性リン酸ナトリウム十二水和物、及び0.2%~0.4%のフェノールを含む。
カナムグラ花粉アレルゲンの調製において、浸漬抽出するとき、発明人は、様々な浸出液を試した上、それらの浸浸漬抽出効率を比較した。用いた浸出液は、0.8%の塩化ナトリウム、pH5.0 のリン酸水素二ナトリウム―クエン酸緩衝液、pH6.0のリン酸水素二ナトリウム―クエン酸緩衝液、pH7.5のリン酸水素二ナトリウム―リン酸二水素ナトリウム緩衝液、pH8.0のリン酸水素二ナトリウム―リン酸二水素ナトリウム緩衝液、pH8.2のcoca's液、pH8.9のTris―塩酸緩衝液、pHが7.9~8.2であり、4.5~5.5g/Lの塩化ナトリウムを含有し、重量%含有量が0.03%~0.05%であるリン酸二水素カリウム、1.5%~2%二塩基性リン酸ナトリウム十二水和物、0.2%~0.4%のフェノールなどを含む。実験の結果、pHが7.9~8.2であり、4.5~5.5g/Lの塩化ナトリウムを含有し、重量%含有量が0.03%~0.05%であるリン酸二水素カリウム、1.5%~2%二塩基性リン酸ナトリウム十二水和物、0.2%~0.4%のフェノールを利用すれば、浸漬抽出効率が高く、調製したカナムグラ花粉アレルゲン浸出液を長期間に効果的に保存でき、安定性が高いことが分かった。
【0009】
本発明はさらに、カナムグラ花粉の収集、乾燥、脱脂、抽出、限外ろ過濃縮、凍結乾燥によって製造されるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液凍結乾燥品であって、
自然脱落法でカナムグラ花粉を収集する収集ステップ(1)と、
花粉が付着しなくなるまで常温乾燥または真空乾燥またはフルイドベッド乾燥で乾燥し、乾燥後の花粉を150~250メッシュのサンプルふるいに通過させる乾燥ステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた花粉とアセトンをそれぞれg及びmlとして1:5~1:1の重量体積比で脱脂処理し、30分間振動脱脂した後、静置して分層させ、上層液を注出し、新たなアセトンを入れ、上層液体が上澄みになるまで脱脂を繰り返し、脱脂後の花粉を均一に散開させ、室温で48時間~72時間乾燥する脱脂ステップ(3)と、
脱脂乾燥後のカナムグラカナムグラ花粉を重量体積比1:50~1:10でpH7.9~8.2のリン酸塩―塩水緩衝液10Lに入れ、2~8℃で22~26h攪拌し、浸漬抽出し、抽出後の浸出液を取り、遠心分離力8000~12000g、遠心分離温度2~8℃、時間15~20分間とすることにより遠心分離し、上清液を回収し、まず、4000メッシュのろ過布でろ過した後、ろ液を順次に板紙、0.45μmと0.22μmろ膜で順次にろ過させる抽出ステップ(4)と、
ろ過後の浸出液を3KD限外ろ過膜で限外ろ過し、限外ろ過濃縮液及び限外ろ過透過液をサンプルとして取り、その総蛋白含有量を検出し、限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlである場合に、透過液を直接排棄し、限外ろ過透過液における総蛋白含有量>0.02 mg/mlである場合に、限外ろ過膜の完全性テストを行い、限外ろ過膜が破損しないと、透過液を排棄し、限外ろ過膜が破損すると、限外ろ過膜を交換した後、透過液の限外ろ過を繰り返る限外ろ過濃縮ステップ(5)と、
限外ろ過濃縮液を再度ろ過及び除菌ろ過を行った後、-50~-35℃で凍結し、2~8mbar真空圧力で、―25℃で乾燥し、水分含有量≦3%に制御するという凍結乾燥プロセス条件によって、カナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品を得る凍結乾燥ステップ(6)と、
を含むことによって製造されるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液凍結乾燥品を提供する。
【0010】
過敏性喘息、アレルギー鼻炎、アトピー性皮膚炎及び慢性じんま疹を含むアレルギー疾患の診断、及びその特異免疫治療の製剤への、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液及びカナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品の使用。
さらに、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸漬抽出物凍結乾燥品を錠剤、口腔内崩壊錠の調製に用い、前記カナムグラ花粉アレルゲン浸出液を注射液、舌下ドロップ、アレルゲン貼付剤、アレルゲン浸出液希釈液の調製に用いる。本発明により提供されるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液をカナムグラ花粉過敏性疾患を治療する薬物の調製に用いる。
【0011】
具体的には、本発明により提供されるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液または凍結乾燥品を用い、治療有効量または診断有効量のカナムグラ花粉アレルゲン、及び薬学的に受け入れ可能担体により、カナムグラ花粉過敏性疾患を治療する薬物を調製することができる。
【0012】
カナムグラ花粉過敏性疾患を治療するための薬物は医学的に受け入れ可能な剤型に調製でき、医師により患者年齢、体重及び疾患状况などの要素で患者に有益な剤量を決定して施用する。カナムグラ花粉過敏性疾患を治療するための薬物の剤型は、経口剤、(皮下)注射剤、舌下口腔内製剤、エアロゾル、鼻腔製剤、または皮膚プリック剤などの液体剤型から選ばれ、好ましくは、(皮下)注射剤、舌下口腔内製剤、または皮膚プリック剤を選ぶ。(皮下)注射剤、舌下口腔内製剤は、一般的に、特異免疫治療の常用の剤型であるが、皮膚プリック剤は、体内アレルゲン検出の常用の剤型である。
【0013】
本発明のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液をカナムグラ花粉による過敏性疾患の診断(即ち、アレルゲン皮膚プリック診断試験)に用いるとき、本発明のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液以外に、一般的に、陰性対照液、陽性対照液、及びプリック針を含む。陰性対照液は、一般的には、人体に対して無過敏性反応の液体(例えば、グリセリンと塩溶液の混合物など)であり、陽性対照液は、一般的には、1.0~5.0mg/mlのリン酸ヒスタミン/ヒスタミン二塩酸塩溶液である。
本発明により調製されたカナムグラ花粉アレルゲン浸出液はパッチテストに応用できる。その原理は、感作物質(アレルゲン)を患者皮膚に敷き、皮膚または粘膜を介して、身体に入った後、抗原提示細胞により、抗原をTリンパ球に提示し、特異性Tリンパ球を活性化させ、炎症反応を誘発させる。
【0014】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
1、カナムグラは北の地域においての主な花粉アレルゲンであり、本発明により提供されるカナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液は、カナムグラ花粉によるアレルギー疾患を効果的に診断してそれに対して特異免疫治療を行うことができる。
2、安定剤グリセリンを入れ、安定性と徐放作用を向上させ、投薬の有効性と安全性を向上させる。
3、アレルギー疾患皮下注射免疫脱感作投薬方式は、舌下ドロップ投薬方式に比べて、効果が速く、周期が短い。治療周期全体の投薬剤量は舌下ドロップ投薬量(約100倍)より遥かに少なく、その治療費用は舌下ドロップ投薬免疫脱感作よりはるかに安く、患者の医療負担を低減させる。
4、本発明は、原液として、調製したアレルゲン浸出液を用い、プリックテストを行い、それぞれアレルギー専門医臨床総合特異性診断と血清特異性IgE(specific IgE,sIgE)診断に対比し、皮内試験結果と臨床総合特異性診断及び血清sIgEとの診断の結果が一致し、優れた感度と特異度を有し、安全性が良好である。
本発明により提供されるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液は、特異性が高い特徴を有し、カナムグラ感作蛋白成分抽出が充分であり、総生物力価が安定であり、有効期が長く、無菌効果がよい。アレルギー疾患の皮膚プリックテスト診断及び特異免疫治療に効果的に利用でき、カナムグラ花粉によるアレルギー疾患を効果的に診断してそれに対して特異免疫治療を行うことができる。標準化制御を実現でき、使用有効期を延長させ、よい経済的な利益をもたらす。
5、本発明は、調製したアレルゲン浸出液を1:103~108で希釈した後、体外好塩基球活性化試験を行い、臨床特異性でカナムグラ過敏患者を診断でき、一部の体外sIgE検出偽陽性を避け、それとともに、アレルゲン皮膚試験(プリックまたは皮内)による一部のヨモギ属花粉過敏患者の過敏性ショックのリスクを避けることができる。
本発明の方法によれば、凍結乾燥して再構成した後に取得した浸出液は、北京協和医院で調製したカナムグラ花粉アレルゲン注射原液に比べて、さらに安定であり、生物力価と蛋白含有量とも安定であり、且つ有効期間は3年である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】カナムグラ花粉原料ITS2配列PCR電気泳動結果を示す図である。
【
図2】異なるロットのカナムグラ花粉の異なる脱脂時間における脂肪含有量変化トレンドを示す図である。
【
図3】カナムグラ花粉浸出液総蛋白含有量と浸漬抽出時間との関係を示す図である。
【
図4】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液のSDS―PAGE蛋白電気泳動結果(成分識別を示す)を示す図である。
【
図5】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液とカナムグラ過敏患者血清のWestern Blotting反応検出結果(カナムグラアレルゲン成分識別を示す)を示す図である。
【
図6a】新規鑑定のカナムグラ花粉感作蛋白2Dゲル電気泳動図を示す。
【
図6b】Western Blotting図を示す。
【
図7】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品のpH値の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図8】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品のフェノール含有量の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図9】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の塩化ナトリウム含有量の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図10】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の総蛋白含有量の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図11】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の総アレルゲン活性の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図12】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の主な感作蛋白含有量Hum s 3の長期間安定性試験におけるテスト結果を示す図である。
【
図13】カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品を臨床カナムグラ花粉過敏患者体外に応用させる好塩基球活性化試験結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために用いられるが、本発明を限定するものではない。本発明の精神および本質から逸脱せずに、本発明に対して行われる修正または置換は、本発明の範囲に含まれる。
特別指定がない限り、実施形態で使用される技術的手段は、当業者に周知の従来の手段である。
【0017】
実施例1 カナムグラ花粉原料の識別
原料の識別と純度が後続のアレルゲン診断及び治療製剤にとって極めて重要となるため、本実施例は、DNA特異性配列検出と顕微鏡検によりカナムグラ原料に対して二重識別及品質管理を行った。
1、カナムグラ花粉DNA抽出
天根快速DNA抽出増幅キット(天根生化KG203)を用いる。
抽出方法は、カナムグラ花粉サンプル5mgを量り取り、1.5mLの遠心分離管に置き、Buffer 1 100μlを加えた後、一回限りの擂粉木棒でサンプルを徹底的に摺り砕いた後、Buffer 2 100μlを加えた後、振蕩して均一に混合し、遠心分離分離機12000r/minにより5min遠心分離した後、上清液を新たな遠心分離管に入れ、DNA鋳型として控えた。
2、プライマーの設計及び合成
プライマー配列は以下の通りであった。
Hum ITS2―F(配列番号1):5'―CTGAGAAACGGCTACCACATC―3'
Hum ITS2―R(配列番号2):5'―GTCGGCCAAGGCTATAAACTC―3'
プライマー配列は上海生工生物工程有限公司により合成された。合成後、サブパッケージにして、―20℃に保存した。
3、PCR反応体系
PCR増幅キット(天根生化)。抽出したDNAに対して、表1に示す50μl体系の配合PCR反応体系を用いた。
【表1】
4、PCR反応条件は表2を参照
【表2】
PCR増幅後の反応液に対し、1%アガロオリゴ糖電気泳動を行い、100mAで20min電気泳動して観察し、電気泳動結果は
図1に示す。L1、L2、L3は3ロットのカナムグラ花粉PCR製品であり、Lmixは上述した3ロットのカナムグラ花粉混合原料PCR製品であり、DNA Markerは
図1に示す。
5、シークエンシング
PCR製品純化回収キット(生工SK1141)により、PCR製品を回収し、シークエンシングを行い、シークエンシング結果番号Hum s ITS2は配列番号3に示した。
6、カナムグラの顕微鏡検
カナムグラ花粉顕微鏡下の形態学識別は、花粉粒球形となり、極面輪郭が円形であり、直径が26.7ミクロン×27.5ミクロンであり、3穴を有し、たまに4穴を有し、均一に赤道に配列した。穴の所に、外壁外部がやや厚く、穴環を形成する。外壁層がはっきりしなく、表面に細粒状装飾を有した。
【0018】
実施例2 カナムグラ花粉脱脂及び浸出のキー・プロセスにおける重要なパラメータの決定
1、カナムグラ花粉脱脂プロセスにおけるパラメータの決定
(1)カナムグラ花粉(g)とアセトン(ml)を1:2の重量体積比(w/v)で脱脂処理を行った。最適な脱脂時間を決定するために、異なるロット(異なる採集時間)のカナムグラ花粉の異なる脱脂時間サンプルに対して脂肪含有量検出を行った。
海能SOX500脂肪テスターによりカナムグラ花粉において脂肪含有量を測定し、ソックスレー抽出及び乾燥称量の方法により、抽出前後の花粉重量の変化を比較し、対応する脂肪含有量を取得し、脂肪含有量結果により脱脂後花粉に対して質量制御を行った。
結果は、
図2を参照する。アセトン脱脂時間が30minになった後、脂肪含有量が脱脂時間に従ってほとんど下がらないため、脱脂時間を30minに決定した。
(2)脱脂パラメータの検証は、異なるロット(異なる採集時間)のカナムグラ花粉に対して30min脱脂を行った後、脂肪含有量を検出し、結果が表3に示した。
【表3】
結果によれば、カナムグラ花粉において脂肪含有量が0.5%~3%であるため、後の脱脂では、脱脂後のカナムグラ花粉の脂肪含有量が0.5%~3%を下げる可能性があり、つまり、花粉総重量も0.5%~3%を下げるべきである。
2、カナムグラ花粉蛋白浸漬抽出プロセスにおける重要なパラメータを決定
(1)カナムグラ花粉(g)とアセトン(ml)を1:2の重量体積比(w/v)で30分間攪拌または振動脱脂処理し、静置して分層させ、上層液体の上澄み状況を観察し、上層液体が上澄みになるまでに、繰り返して脱脂し、脱脂後の花粉を均一に散開させ、室温で48時間以上乾燥した。
(2)脱脂乾燥後のカナムグラ花粉を重量体積比1:10でpH7.9~8.2のリン酸塩―塩水緩衝液10Lに入れ、2~8℃で、攪拌速度250rpmで、攪拌時間がそれぞれ3h、6h、9h、12h、18h、24h、48h、72hなどになった抽出点に、抽出後の抽出液と浸出液を全部遠心分離桶に入れ、バランスを調整し、遠心分離力8000~12000g、遠心分離温度4℃、時間15~20分間で、遠心分離し、上清液を回収した。
(3)遠心分離後の上清液を、まず、4000メッシュろ過布でろ過した後、板紙でろ過し、0.45μmと0.22μmのろ膜で順次にろ過し、カナムグラ花粉粗抽出液を取得した。
サンプルを取り、Bradford法により蛋白含有量を測定し、結果は、カナムグラ花粉浸出液総蛋白含有量と浸漬抽出時間の関係を示す
図3を参照する。
図3に示すように、蛋白抽出プロセスにおいて、攪拌抽出時間に従って、蛋白抽出含有量が増加し、抽出時間24hにおける含有量が最大982±10μg/mlになった。蛋白類物質の抽出時間が長すぎると、その蛋白含有量に影響を与えるため、抽出時間が22~26h左右であることが好ましい。
【0019】
実施例3 カナムグラ花粉原料プロセス
1、花粉採集
自然脱落法でカナムグラ花粉を収集した。花粉が粘着しないまでに、常温または真空またはフルイドベッド乾燥を行った。乾燥後の花粉を150~250メッシュサンプルふるいに通過させ、本実施例において、180メッシュサンプルふるいが好ましい。
2、乾燥
花粉が粘着しないまでに、通風して花粉を6~48h自然乾燥し、または真空乾燥し、またはフルイドベッド乾燥した。
3、脱脂
取得した花粉(g)とアセトン(ml)を1:5~1:1の重量体積比(w/v)で脱脂処理を行った。本実施例において、1:2が好ましい。30分間攪拌または振動脱脂した後、静置して分層させ、上層液体の上澄み状況を観察した。上層液を注出し、新たなアセトンを入れ、上層液体が上澄みになるまでに、繰り返して脱脂した。
4、再乾燥
脱脂後の花粉を均一に散開させ、室温で6~48h乾燥、または真空乾燥、またはフルイドベッド乾燥を行った。
5、不純物制御
(1)顕微鏡で、粒子計数法により測定した。不純物粒子の含有量は、胞子含有量≦1%、無関係花粉含有量≦2%、そのほかの不純物含有量≦10%という標準を満たすべきである。
(2)重金属及び有害元素
総重金属≦50 mg/kg、ヒ素≦5 mg/kg。
(3)アセトン残留
アセトン残留量≦0.5%(体積分率)。
【0020】
実施例4 カナムグラ花粉アレルゲン原液(凍結乾燥品)の調製プロセス
1、実施例3のカナムグラ花粉原料プロセスによりカナムグラ花粉原料を調製した。
2、浸漬抽出
脱脂乾燥後のカナムグラ花粉を重量体積比1:50~1:10、本実施例において、1:20で、pH7.9~8.2のリン酸塩―塩水緩衝液10Lに入れ、2~8℃で22~26h攪拌して浸漬抽出させた。リン酸塩―塩水緩衝液(pH 8.2)1000mlを例とする調合方法は表4に示した。リン酸塩―塩水緩衝液を充分に溶解させた後、除菌ろ過を行い、2~8℃で放置し、30日以内に保存した。
【表4】
3、固液分離
抽出後の浸出液を取り、浸出液全体を遠心分離桶に入れ、バランスを調製し、遠心分離力8000~12000g、遠心分離温度2~8℃、時間15~20分間により、遠心分離を行い、上清液を回収した。
4、上澄み
遠心分離分離後の上清液を、まず、4000メッシュろ過布でろ過した後、ろ液を板紙でろ過し、0.45μmと0.22μmろ膜で順次にろ過した。
5、限外ろ過、透析、濃縮
ろ過後の浸出液に対し、3KDまたは1KD限外ろ過膜でタンジェント流限外ろ過を行い、好ましくは、本実施例において、3KD限外ろ過膜で限外ろ過を行った。透析液は、25~125mMのNH4HCO3を用い、本実施例において、50mMのNH4HCO3が好ましい。蛋白含有量品質標準に基づき、適当な体積までに限外ろ過して濃縮し、蛋白含有量から品質標準の総蛋白含有量までの区間を検出した。限外ろ過濃縮液、限外ろ過透過液を取り、それらの総蛋白含有量を検出した。限外ろ過透過液における総蛋白含有量≦0.02 mg/mlとなったとき、透過液を直接排棄し、限外ろ過透過液における総蛋白含有量>0.02 mg/mlとなったとき、限外ろ過膜に対して完全性テストを行い、限外ろ過膜が破損しなければ、透過液を排棄し、限外ろ過膜が破損すれば、限外ろ過膜を交換した後、透過液に対して繰り返して限外ろ過を行った。
6、無菌ろ過
0.22μm膜で除菌ろ過を行った。
7、凍結乾燥
―50~―35℃で凍結し、2~8mbar真空圧力で、―25℃で乾燥し、水分含有量≦3%に制御するという凍結乾燥プロセス条件により、カナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品を取得した。
【0021】
実施例5 カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の調製プロセス
1、再構成
実施例4で調製したカナムグラ花粉アレルゲン凍結乾燥品をリン酸塩―塩水緩衝液(pH 6.5~7.5、調合方法は表5を参照)で再構成させ、総蛋白含有量を品質標準2倍範囲区間にさせた。2~8℃で放置した。
【表5】
2、半製品配合
原液再構成後、クリーンホールにてA級清潔条件下で、再構成液と予め湿熱滅菌(121℃、30分間)して等体積で冷却のグリセリンとを均一に混合し、溶液のpH値を6.0~8.0に調製した。
3、半製品を除菌ろ過し、無菌サブパッケージで製品にさせ
クリーンホール内A級清潔条件下で、半製品を0.22μmろ膜で除菌ろ過させ、無菌サブパッケージで製品にさせ、pH6.0~8.0の浅黄色乃至茶褐色液体、即ちカナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液製品を取得した。
【0022】
実施例6 カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の質量制御
1、カナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液総蛋白成分SDS―PAGE法識別
還元型SDS―PAGE法により、分離ゲル濃度が4~12%であり、クマシーブリリアントブルーで染色した。結果は
図3に示した。MはGenstar M223―01 Markerであり、Rは凍結乾燥内部参照品(即ち、凍結乾燥したカナムグラ花粉アレルゲン原液)であり、L1、L2及びL3は異なるロットのカナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液であり、その蛋白は主に6.3~76kDaに分布し、具体的には、10kDa(具体的な分子量は6.3 kDa、7.0kDa、8.09kDa、8.8kDa、9.6kDa、10.03kDa、10.22kDaである)、11.8 kDa、12.3 kDa、13.5 kDa 、15.2 kDa、 15.32 kDa、16.45 kDa 、16.61 kDa、19 kDa(具体的には、19.04 kDa、19.18 kDa、19.99 kDa)、28 kDa、37 kDa、42 kDa、45 kDa、52 kDa、66 kDa、76 kDaに分布した。
鑑定した感作蛋白分子量、配列、過敏血清陽性率、対応ホロ蛋白マススペクトル鑑定ペプチドセグメント概況は表6に参照する。
2、カナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液総アレルゲン成分Western Blotting法識別
還元型SDS―PAG電気泳動を用い、分離ゲル濃度が4~12%であり、0.2μm PVDF ImmobilonR―PSQ転写フィルムを用い、一次抗体血清反応希釈度が1:3であり、室温で2h雑交し、そして、4℃冷蔵庫で一晩雑交し、1×PBSTで3回洗い、10min/回となった。二次抗体Ms mAb to Hu IgE(ab99806)が1:1000であり、室温で2h雑交し、1×PBSTで3回洗い、10min/回となった。ECL現像液のA液とB液を1:1で均一に混合した後、露光して顕色させた。
結果は
図4に示した。MはGenstar M223―01 Markerであり、Rは内部参照品であり、Nは浸出液と健康被験者血清の反応ストリップであり、P1~24はそれぞれ浸出液と臨床確診のカナムグラ過敏陽性患者24例(sIgE≧3級、皮膚試験≧+++、典型的な夏秋花粉症病史)の血清反応ストリップ結果であり、感作Hum sc 1―Hum sc 11の分子量及び過敏血清陽性率は表6に示した。これによって、血清陽性率最大のHum s 3(9.6kDa)がカナムグラ花粉の主な感作蛋白(血清陽性率最大が68.9%)であることが分かった。
3、感作蛋白配列測定
本発明の製品により、対応の感作蛋白(表6を参照)に対して全蛋白配列測定を行い、カナムグラ花粉原料においてそれぞれの感作蛋白対応mRNAに対してヌクレオチドフル・シークエンシングを行い、感作蛋白コード、配列識別子及びアミノ酸フル・配列、対応mRNAフル・配列結果は表6を参照する。そのうち、Hum s 3は主な感作蛋白であった。
本発明に含まれるカナムグラ感作蛋白のフル・配列は順次に以下となった。
Hum sc 1感作蛋白フル・配列は、配列番号4に示した。
Hum sx 2感作蛋白フル・配列は、配列番号5に示した。
Hum sc 2感作蛋白フル・配列は、配列番号6に示した。
Hum sc 3感作蛋白フル・配列は、配列番号7に示した。
Hum s 3感作蛋白フル・配列は、配列番号8(本出願者がこの前に発見したNCBIデータベースにおけるHum s 3:ADB97919.1蛋白配列に完全に合致するが、mRNAが第15位で同義的置換が発生した)に示した。
Hum sc 4感作蛋白フル・配列は、配列番号9に示した。
Hum sc 5感作蛋白フル・配列は、配列番号10に示した。
Hum sc 6感作蛋白フル・配列は、配列番号11に示した。
Hum sc 7感作蛋白フル・配列は、配列番号12に示した。
Hum sc 8感作蛋白フル・配列は、配列番号13に示した。
Hum sc 9感作蛋白フル・配列は、配列番号14に示した。
Hum sc 10感作蛋白フル・配列は、配列番号15に示した。
Hum sc 11感作蛋白フル・配列は、配列番号16に示した。
Hum sc 12感作蛋白フル・配列は、配列番号17に示した。
Hum sc 13感作蛋白フル・配列は、配列番号18に示した。
Hum sc 14感作蛋白フル・配列は、配列番号19に示した。
Hum sc 15感作蛋白フル・配列は、配列番号20に示した。
カナムグラ花粉原料においての前記それぞれの感作蛋白対応mRNAがヌクレオチドフル・シークエンシングを行った後、それらのmRNA対応配列は以下の通りであった。
Hum sc 1感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号21に示した。
Hum sx 2感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号22に示した。
Hum sc 2感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号23に示した。
Hum sc 3感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号24に示した。
Hum s3感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号25に示した。(NCBI番号FJ967117.1に比べて、第15位ヌクレオチドがT→C同義的置換を行った)
Hum sC 4感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号26に示した。
Hum sC5感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号27に示した。
Hum sC6感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号28に示した。
Hum sC7感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号29に示した。
sHum sC8感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号30に示した。
Hum sC 9感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号31に示した。
Hum sC 10感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号32に示した。
Hum sC 12感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号34に示した。
Hum sC 13感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号35に示した。
Hum sC 14感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号36に示した。
Hum sC 15感作蛋白遺伝子フル・配列は、配列番号37に示した。
本発明において新規鑑定したカナムグラ花粉蛋白(Hum sc 1―15)に対し、本発明は高解像度の両方向電気泳動(2D)にWestern Blotting技術(15例のカナムグラ花粉過敏患者陽性血清池と反応する)を加え、上記の蛋白とカナムグラ花粉過敏患者外周血におけるsIgEが結合できることを証明し、このため、感作蛋白となっている。2Dのゲル電気泳動図は
図6(a)に示し、Western Blotting結果は
図6(b)示した。
4、質量スペクトル検出
カナムグラアレルゲン浸出液に対し、ホロ蛋白マススペクトル分析を行い、カナムグラアレルゲンがSDS―PAGE分離した後に対応するガムテープに対し、それぞれサンプルを取り、質量スペクトル鑑定を行い、以下のペプチドセグメントを含むが、これらに限られない。
Hum sc 3質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号38:TADAAHSAADSVQEGKであった。
Hum S 3質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号39:ACTSLYDK
配列番号40:ACTSLYDKYYQNCVMK
配列番号41:LPPGACIDSENYR
配列番号42:LPPGACIDSENYRK
配列番号43:SIYPSNYAECATTHHNICGDLQG
配列番号44:YYQNCVMKであった。
Hum sc 4質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号45:YESCLLSHISCDFDSCK
配列番号46:ADCFTTCDSYYPK
配列番号47:IKHDDICNGLPであった。
Hum sc 7質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号48:ACGSLYDK
配列番号49:ACGSLYDKYYQNCVMK
配列番号50:YYQNCVMK
配列番号51:LPHGACIDDENYQNCLK
配列番号52:NNIGSCNINTCFEDTSK
配列番号53:SIYPNNYGDCATTHHDICGDLQGであった。
Hum sc 9質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号54:IISHHYNEK
配列番号55:IISHHYNEKR
配列番号56:LVKIISHHYNEK
配列番号57:NVPTLIDAR
配列番号58:RNVPTLIDAR
配列番号59:VIGPTTLRであった。
Hum sc 11質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号60:TLEQVEIK
配列番号61:GTTLIECGFSWDWGK
配列番号62:QSHHTDIYTPEGPNCRであった。
Hum sc 12質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号63:IEQVDVR
配列番号64:NVLDGKQDLSVYCK
配列番号65:QDLSVYCK
配列番号66:NNEFNTQILSYK
配列番号67:EFHNVQIFMPESLNCR
配列番号68:SFTFDCFDWGKであった。
Hum sc 13質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号69:AFLDAHNAIRであった。
Hum sc 15質量スペクトル鑑定したペプチドセグメントは、
配列番号70:AYLDAHNAVR
配列番号71:TLEDYAQKであった。
【表6】
備考:SDS―PAGE解像度は限界があり、10kDa蛋白総体血清陽性率は66.7%であり、Hum sc 3とHum S 3は同じ蛋白であり、19kDa蛋白総体血清陽性率は24.1%である。
5、理化学的性質検出
このカナムグラアレルゲン浸出液は理化学的性質検出を行った後、その品質標準は表7に示した。
【表7】
6、総アレルゲン活性測定
アレルゲン浸出液には治療有効量または診断有効量のカナムグラ花粉アレルゲンが含まれるとき、競争性ELISA法により、相対生物力価50000 BAU/ml~200000 BAU/ml、蛋白濃度0.40~1.60mg/mlであったことを測定した。
7、主な感作蛋白Hum s 3含有量検出
二抗体モノクローナル抗体サンドイッチ測定法ELISA法により、カナムグラ花粉アレルゲン浸出液における主な感作蛋白含有量を検出した。複数のロットの検出により、その変動範囲0.08~0.32mg/mlを決定した。
8、無菌検査
非無菌生長してはならなかった。
【0023】
実施例7 カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品安定性試験
実施例5に調製したカナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液製品に対し、2~8℃で長期間安定性研究試験を行い、3つのロットのサンプルにそれぞれ0ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月及び12ヶ月のpH値変化、フェノール含有量、塩化ナトリウム含有量、蛋白含有量、総アレルゲン活性、主な感作蛋白Hum s 3含有量の変化を検出し、結果は
図7~
図12に示した。
上述した安定性結果において、12ヶ月の長期間試験では、カナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液の品質管理パラメータが不規則波動したが、実験誤差による可能性があるが、それにしても、品質標準管理範囲内にあり、且つ、異なるロットの間の変化トレンドがほぼ一致し、本発明によるカナムグラ花粉標準化アレルゲン浸出液は、2~8℃条件で、少なくとも12ヶ月内に安定に保存することができることが分かった。このため、カナムグラ花粉アレルゲン浸出液製品の有効期間は、36ヶ月と推定された。
【0024】
実施例8 評価応用1
本発明によるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液により、カナムグラ花粉過敏に対し、臨床特異性皮膚試験診断を行い、有効性と安全性を評価した。方法は以下の通りであった。2015年8月24日から2016年9月21日までの間に、北京協和医院アレルギー科の外来診療で、過敏性結膜炎、過敏性鼻炎、過敏性喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎等の過敏性疾患にかかった患者1026例を選択した。被験者に対し、カナムグラ花粉アレルゲン皮膚プリックテスト(Skin prick test,SPT)を行い、原液を用い、平均膨疹径(Mean wheal diameter,MWD)を判定標準とし、花粉sIgEを標準とし、ROC分析を行い、異なる診断分割点下で、カナムグラ花粉アレルゲン浸出液を用い、診断カナムグラ花粉過敏の正確性を分析した。それとともに、不良事件を記録し、安全性を評価した。結果(Results)には、外来診療患者1026例(4~70歳)を含み、脱落症例がなく、除去率が22.1%であった。安全セット(Safety Set,SS)は1026例であり、フル・アナリシス・セット(Full Analysis Set,FAS)は990例であり、パー・プロトコル・セット(Per protocol set,PPS)は799例であった。年齢は、最小が6歳、最大が67歳であった。PPSのROC曲線を分析し、カナムグラ花粉SPTの最適な診断閾値がMWD 6.75mmであり、特異度が95%ときの診断閾値はMWD 8.25mmであることを推定した。それぞれMWD 3mm(国際通用閾値)、6.75mm、8.25mmを診断閾値とした。本発明のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液をカナムグラ花粉過敏の診断に用いる感度を順次に低下し、それぞれ0.9366(95%CI:0.9159 ~ 0.9572)、0.5485(95%CI:0.5064 ~ 0.5906)、0.4216(95%CI:0.3798 ~ 0.4634)であり、特異度は順次に上昇し、それぞれ0.0913(95%CI:0.0565 ~ 0.1261)、0.8517(95%CI:0.8088 ~ 0.8947)、0.9696(95%CI:0.9488 ~ 0.9903)であった。1026例患者では、7例は8回の不良事件が行われ、不良事件発生率が0.68%(7/1026)であり、主な症状は、鼻水、くしゃみ、鼻のかゆみ、呼吸困難、目のかゆみ、胸部圧迫感、局部皮膚プリック反応などであった。深刻な不良事件はなかった。結論は、本発明のカナムグラ花粉アレルゲン浸出液はカナムグラ花粉過敏の診断に用い、診断価値が高く、安全性がよく、カナムグラ花粉アレルゲン特異性体内診断の臨床検査方法として利用されることができる。
実施例9 評価応用2
本発明によるカナムグラ花粉アレルゲン浸出液により、カナムグラ花粉過敏患者全血に対し、好塩基球活性化試験を行い、臨床特異性過敏体外診断することができる。この検出方法は、IgEまたは非IgEにより誘発された過敏反応にも適用でき、一部のsIgE体外診断には偽陰性、偽陽性が存在する患者の確診及び一部の過敏性ショック患者が皮膚試験診断に不適合の状況にも利用されることができる。
【0025】
試験原理は、アレルゲンと患者全血細胞反応が人体内アレルギープロセスを模擬でき、即ち、特異性IgE抗体と対応するアレルゲンとは細胞表面に架橋結合され、細胞内信号カスケード接続を活性化し、好塩基球(CCR3が持続して好塩基球に表現され、その特異性表記であった)の活性化脱粒子をさせた。この脱粒子のプロセスにおいて、細胞内複合物は膜貫通蛋白CD63(gp53)に影響を与え、細胞表面に表現させ、細胞外基質に露出させた。このため、フローサイトメトリー原理(抗人走化因子受容体CCR3―フィコエリトリン(anti―CCR3―PE)により好塩基球に対して表記を行い、抗人CD63モノクローン抗体―フルオレセインイソチオシアナート(anti―CD63―FITC)を用い、活性化状態の好塩基球に表記し、非特異性細胞活性化剤fMLPを陽性品質管理とする)により、好塩基球脱粒子のパーセント変化により、被験者が特定アレルゲンに対して過敏になるか否かを判定した。方法は、健康被験者、カナムグラ過敏患者を選択し、そのEDTA抗凝全血サンプルを取り、刺激緩衝液(陰性対照)、カナムグラアレルゲン浸出液(1:103~1010希釈比例を最適化させ、本実施例において、1:108にした)、fMLP刺激液(陽性品質管理)を好塩基球の賦活剤として、全血に入れ、そして、anti―CD63―FITC、anti―CCR3―PEを入れて染色し、48h内に、フローサイトメーターで検出を行った。結果は、
図13を参照する。健康被験者は陰性対照、カナムグラアレルゲン浸出液、陽性対照を好塩基球活性化物とするとき、その好塩基球活性化率はそれぞれ<15%、<15%、≧15%となり、カナムグラ花粉過敏患者は陰性対照、カナムグラアレルゲン浸出液、陽性対照を好塩基球活性化物とするとき、その好塩基球活性化率はそれぞれ<15%、≧15%、≧15%となる。結論は、このカナムグラアレルゲン浸出液は、活性化物として好塩基球活性化試験に応用でき、その判断標準により臨床診断を効果的に行うことができる。
【0026】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。本発明の技術原理から逸脱しない限り、当業者にとって、いくつかの改善および修正を行うことができる。これらの改善および修正は、本発明の保護範囲に含まれるものである。
【配列表】