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特許7394877導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20231201BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20231201BHJP
   H01H 85/055 20060101ALI20231201BHJP
   H01H 85/38 20060101ALI20231201BHJP
   H01H 85/36 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H01H39/00 C
H01H37/76 F
H01H85/055
H01H85/38
H01H85/36
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021570382
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2021113103
(87)【国際公開番号】W WO2022121363
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】202110702549.5
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011458690.7
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521368463
【氏名又は名称】西安中熔電気股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戈 西斌
(72)【発明者】
【氏名】段 少波
(72)【発明者】
【氏名】石 暁光
(72)【発明者】
【氏名】陳 蓉蓉
(72)【発明者】
【氏名】王 欣
(72)【発明者】
【氏名】王 偉
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/204154(WO,A1)
【文献】特開2014-49272(JP,A)
【文献】特表2017-539019(JP,A)
【文献】中国実用新案第208738069(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
H01H 37/76
H01H 85/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、当該ハウジングにおけるチャンバーとを含み、
少なくとも1本の導体が前記ハウジング及び前記チャンバーを穿通し、前記導体の両端が外部回路と接続可能であり、
前記導体に少なくとも1本の可溶体が並列接続され、前記導体の一の側のチャンバーに誘起装置及び切断装置が取り付けられ、
前記誘起装置が、外部誘起信号を受信することにより動作して、前記切断装置を、前記導体及び前記可溶体にそれぞれ少なくとも1つの破断口を形成するように駆動するように構成され、
前記導体における少なくとも1つの破断口が前記可溶体と並列接続され、
前記ハウジング内に位置する前記可溶体に少なくとも1組の力付与アッセンブリが設置され、前記力付与アッセンブリが前記切断装置の駆動により可溶体を破断して破断口を形成するように構成される
ことを特徴とする導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項2】
前記ハウジングに、消弧媒質が充填された密閉の消弧室が設けられ、前記可溶体の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項3】
前記力付与アッセンブリは、前記消弧媒質の外部に位置する可溶体に設置され、
前記力付与アッセンブリが、前記可溶体を挟持する少なくとも1組の挟持アッセンブリを含み、
前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記挟持アッセンブリを、直線変位又は回動変位の方式により前記可溶体を切断して破断口を形成するように駆動することができ、
回動の方式により前記可溶体を切断する場合、前記挟持アッセンブリは、両端が回動軸により前記ハウジングに固定されるものである
ことを特徴とする請求項2に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項4】
前記可溶体に少なくとも1組の前記挟持アッセンブリが設置され、前記挟持アッセンブリの間に破断凹部が形成され、
前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記破断凹部にぶつかって前記可溶体を破断させるように構成される
ことを特徴とする請求項3に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項5】
前記導体に、導体の機械的強度を低下させて切断装置による切断に寄与する破断脆弱箇所が設けられており、前記導体は回動脆弱箇所を有し、前記切断装置が前記導体を切断することができ、前記導体の各前記破断脆弱箇所のそれぞれにおいても破断口を形成することができ、前記回動脆弱箇所が前記破断脆弱箇所の一の側又は両側に設けられて片開きドア又は両開きドアの押し扉構造として形成され、
破断した前記導体が、前記切断装置により押されて、前記切断装置とともに移動せずに、前記回動脆弱箇所を軸として回動することができ、前記切断装置の運動する部分が、前記導体の回動により形成される隙間を通過するように構成される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項6】
前記導体の回動脆弱箇所が前記導体の破断脆弱箇所の両側に設けられ、前記両開きドアの押し扉構造として形成され、前記切断装置が前記導体を切断したあと、前記切断装置の運動する部分が、前記導体の回動により形成される隙間を通過するように構成され、
電流が前記導体を流れるとき、破断した2部分の前記導体の間にアークが形成され、前記アークが前記切断装置の運動部分の作用及び起電力の作用で運動部分のヘッド部を囲んで、さらに運動し、伸ばされる
ことを特徴とする請求項5に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項7】
前記ハウジング内に消弧構造が設置され、前記消弧構造が前記両開きドアの押し扉構造によるアークの運動経路又はその付近に位置し、破断したあとの2部分の前記導体の間のアークに対して消弧する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項8】
前記切断装置は、絶縁材料を有する衝撃端を備え、絶縁材料を有する前記衝撃端が前記導体を切断したあとに前記ハウジングとともに絶縁壁を形成することができ、前記絶縁壁により、両側の破断した前記導体を隔離することができる
ことを特徴とする請求項3に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項9】
前記切断装置は可溶体衝撃端を備え、前記可溶体衝撃端が絶縁材料を有する前記衝撃端の両側に位置し、前記切断装置が作動する前に、絶縁材料を有する前記衝撃端と前記導体との間隔が、前記可溶体衝撃端と前記可溶体との間隔より小さく、
又は、前記可溶体衝撃端が、絶縁材料を有する前記衝撃端の下方に位置し、且つ絶縁材料を有する前記衝撃端と直列接続され、前記切断装置が作動する前に、絶縁材料を有する前記衝撃端と前記導体との間隔が、前記可溶体衝撃端と前記可溶体との間隔より小さい
ことを特徴とする請求項8に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項10】
前記力付与アッセンブリは、少なくとも1本のプッシュロッド及び少なくとも1本のガイドロッドを含み、前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドの周りに前記消弧媒質が充填され、前記可溶体が前記プッシュロッドと前記ガイドロッドとの間に位置し、
前記プッシュロッドの一端が前記消弧室を穿通して前記消弧室から延出し、
前記ガイドロッドの一端が変位して前記消弧室における既設変位空間に進入し、又は前記消弧室から延出することができ、
前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドと前記消弧室の壁との間に、前記消弧媒質の漏れを防止するバリア構造が設置され、
前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドを、直線変位するように駆動して前記可溶体を破断させ、破断した2部分の前記可溶体がそれぞれカソード及びアノードになり、前記カソードと前記アノードとの間にアーク経路が形成され、前記カソード及び/又は前記アノードが依然として前記消弧媒質内に位置し、アーク経路の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する
ことを特徴とする請求項2に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項11】
前記カソードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記アノードが前記プッシュロッドと前記ハウジングとの間のスリットに位置し、
或いは、前記アノードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記カソードが前記プッシュロッドと前記ハウジングとの間のスリットに位置する
ことを特徴とする請求項10に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項12】
前記プッシュロッドと前記可溶体との間、前記ガイドロッドと前記可溶体との間に隙間がなく又は微小な隙間を有し、前記微小な隙間の大きさが、破断したあとの2部分の前記可溶体の間に生じたアークを通さないほどのものである
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項13】
前記力付与アッセンブリは、前記消弧室に回動可能に設置される回動部材と、前記消弧室の外部に位置するトリガー部材とを含み、
前記回動部材が前記可溶体を接触し又は挟持するように構成され、
前記回動部材と前記消弧室との間に消弧媒質の漏れを防止するバリア構造が設置され、
前記切断装置が前記導体を切断したあと、前記切断装置が、前記トリガー部材を駆動することにより、前記回動部材を回動させて、回動変位の方式で前記可溶体を破断させるように構成され、
破断した前記可溶体がそれぞれカソード及びアノードになり、前記カソードと前記アノードとの間にアーク経路が形成され、前記カソード及び/又は前記アノードが依然として前記消弧媒質内に位置し、アーク経路の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する
ことを特徴とする請求項2に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項14】
前記カソードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記アノードが前記回動部材と前記ハウジングとの間のスリットに位置し、
或いは、前記アノードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記カソードが前記回動部材と前記ハウジングとの間のスリットに位置する
ことを特徴とする請求項13に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項15】
前記誘起装置が外部誘起信号を受信して動作することが可能なガス発生装置、シリンダ、液圧シリンダであり、
誘起装置がガス発生装置である場合、前記切断装置と前記ハウジングの側壁とが密封接触であり又は0.1mm未満の隙間を設けた接触である
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項16】
前記可溶体に、機械的強度を低下させて切断装置による切断に寄与する破断脆弱箇所が設けられる
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項17】
前記切断装置に少なくとも1つの衝撃端が設けられ、前記衝撃端が、端面縮小構造、尖っていた構造、斜めブレード線構造、又は両端が尖っており、中央が凹んだ構造のように構成される
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項18】
前記バリア構造は、力付与アッセンブリと消弧室壁との間に設置された密封材であり、
又は、力付与アッセンブリと消弧室壁とが締まりばめで設置され、
又は、消弧媒質が固体粒子状のものである場合、力付与アッセンブリと消弧室壁との間の隙間が消弧媒質粒子の粒径より小さいように構成される
ことを特徴とする請求項10又は13に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズを少なくとも1つ使用する配電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関係出願の相互参照)
本開示は、2020年12月11日に中国専利局に提出された、出願番号が202011458690.7であり、名称が「導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ」である中国出願、及び2021年6月24日に中国専利局に提出された、出願番号が202110702549.5であり、名称が「導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズ」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電力制御及び電気自動車の分野に属し、特に、外部信号により電流伝達回路の遮断を制御可能な誘起ヒューズに関する。
【背景技術】
【0003】
回路過電流保護用の製品は、ヒューズを流れる電流で生じた熱で溶断するヒューズであり、その主な問題として、如何にして負荷に適する熱溶断ヒューズを選択することである。例えば、新エネルギー車の主回路を保護する場合、倍数の小さい過負荷又は短絡が発生したとき、定格電流の小さいヒューズを利用すれば、電流の短時間でのオーバーシュートを防止できず、定格電流の大きいヒューズを利用すれば、素早く保護する要求を満たすことができない。現在、新エネルギー車両にエネルギーを供給するリチウム電池パックにおいて、短絡が完全短絡と不完全短絡を含む。完全短絡のとき、回路が直接接続され、短絡電流が大きくて、数千アンペアに達する。不完全短絡のとき、回路に、ある程度の抵抗値を有する1つの導体が直列接続されて電流が制限され、短絡電流が比較的に小さく、定格電流さえも超えない場合もある(直列接続された導体の抵抗によることである)。不完全短絡のとき、出力電流が定格電流の約数倍であるが、この大きさの電流でも、十分短い時間内でヒューズを溶断させることが困難であり、ヒューズが保護作用を発揮することができなく、しかし、電流がすでに電池パックにおける回路デバイスを損壊できるほど大きくなるため、電池パックが発熱して発火燃焼してしまう恐れがある。耐電流による発熱及び遮断電流による発熱に引き起こされた熔融は、ヒューズを流れる電流に起因することである。このような、電流の発熱による溶断を利用する保護用デバイスであれば、比較的に大きい定格電流を有し、又は比較的に大きい短時間過負荷/突入電流(例えば、電気自動車が始動し又は登坂走行するときの短時間大電流)の流れに耐えるときに、十分速い遮断速度で所定大きさの故障電流を遮断できなく、或いは、十分速い遮断速度で所定大きさの故障電流を遮断するとともに、比較的に高い定格電流を有し、又は、比較的に大きい過負荷/突入電流の流れに耐えるときに損傷しないことを実現できない。
【0004】
熱溶断ヒューズのもう1つの問題として、外部機器と通信できなく、電流以外の他の信号、例えば、車両ECU、BMS又は他のセンサからの信号などによりトリガーされることができない。車両がひどくぶつかったり、浸水したり、長く日光に当てた後に電池の温度が高すぎたりする状況で回路を適時に遮断できないと、電池パックが燃焼して車両を損傷する重大な事故を招く恐れがある。
【0005】
素早く分断可能な破断口構造を有する従来のヒューズは、主に、ガス発生装置と、導電端子と、落下した導電端子を受けるための収容チャンバーとを有する。ガス発生装置が発生した高圧ガスで駆動するピストンにより導電端子を切断して、破断した導電端子が下へ収容チャンバー内に落下し、よって回路を素早く遮断する目的を実現する。しかし、いくつかの不足や欠陥が存在する。例えば、空気の消弧能力に制限されて、大きい故障電流を遮断できず、直接空気を利用してアークを冷却させ、遮断能力が気圧、温度、湿度に大きく影響され、遮断過程において、アークが直接にピストンカッターの衝撃部を焼き、ピストンカッターの燃焼により順調な消弧が影響され、遮断過程において、ピストンカッターがアークに対してある程度かき乱す以外、消弧を補助可能な他の構造や機構がないため、上記のヒューズの消弧能力に限界があり、遮断能力に限界がある。
【0006】
上記のヒューズにおける補助消弧の欠陥に鑑みて、出願人は、1種のヒューズを開発した。該ヒューズにおいて、可溶体が並列接続された構造を用いて補助消弧を行うものであり、駆動装置により、主導電端子を破断させて、保護回路を保護し、消弧するため、主導電端子に可溶体が並列接続されている。ヒューズの主導電端子を破断させて回路保護を行うとき、大きい瞬時電流が可溶体を流れて可溶体を溶断させて、消弧の目的を実現する。
【0007】
このような並列接続された可溶体を有する誘起ヒューズにも欠陥がある。実際の使用において、導電板を破断させたあと、可溶体が、ある偶発的要因により溶断できなく、又は、溶断時間が設計した溶断時間より長くて、回路全体が適時且つ徹底的に破断させることができなく、大きな損失を引き起こすことがあり、特に、新エネルギー自動車の作動や使用中に、車両の損傷や人身事故などの重大な事故を引き起こす恐れがある。したがって、ヒューズが確実に遮断されることを如何にして確保するかという技術的問題を解決しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示が解决しようとする技術的問題は、機械力により導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズを提供することにより、ヒューズの破断時に生じた大量のアークに対してより効果的に消弧し、遮断能力を向上させるとともに、故障が発生したときにヒューズを確実に遮断させるのを確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的問題を解決するため、本開示に係る、導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズは、ハウジングと、ハウジングにおけるチャンバーとを含み、少なくとも1本の導体が前記ハウジング及び前記チャンバーを穿通し、前記導体の両端が外部回路と接続可能であり、前記導体に少なくとも1本の可溶体が並列接続され、前記導体の一の側のチャンバーに誘起装置及び切断装置が取り付けられ、前記誘起装置が、外部誘起信号を受信することにより動作して、前記切断装置を、前記導体及び前記可溶体にそれぞれ少なくとも1つの破断口を形成するように駆動するように構成され、前記導体における少なくとも1つの破断口が前記可溶体と並列接続される。
【0010】
前記ハウジングに、消弧媒質が充填された密閉の消弧室が設けられ、前記可溶体の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する。
【0011】
前記ハウジング内に位置する前記可溶体に少なくとも1組の力付与アッセンブリが設置され、前記力付与アッセンブリが前記切断装置の駆動により可溶体を破断して破断口を形成するように構成される。
【0012】
前記力付与アッセンブリは、前記消弧媒質の外部に位置する可溶体に設置され、前記力付与アッセンブリが、前記可溶体を挟持する少なくとも1組の挟持アッセンブリを含み、前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記挟持アッセンブリを、直線変位又は回動変位の方式により前記可溶体を切断して破断口を形成するように駆動することができ、回動の方式により前記可溶体を切断する場合、前記挟持アッセンブリは、両端が回動軸により前記ハウジングに固定されるものである。
【0013】
前記可溶体に少なくとも1組の前記挟持アッセンブリが設置され、前記挟持アッセンブリの間に破断凹部が形成され、前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記破断凹部にぶつかって前記可溶体を破断させるように構成される。
【0014】
前記導体は回動脆弱箇所を有し、前記切断装置が前記導体を切断することができ、前記導体の各前記破断脆弱箇所のそれぞれにおいても破断口を形成することができ、前記回動脆弱箇所が前記破断脆弱箇所の一の側又は両側に設けられて片開きドア又は両開きドアの押し扉構造として形成され、破断した前記導体が、前記切断装置により押されて、前記切断装置とともに移動せずに、前記回動脆弱箇所を軸として回動することができ、前記切断装置の運動する部分が、前記導体の回動により形成される隙間を通過するように構成される。
【0015】
前記導体の回動脆弱箇所が前記導体の破断脆弱箇所の両側に設けられ、前記両開きドアの押し扉構造として形成され、前記切断装置が前記導体を切断したあと、前記切断装置の運動する部分が、前記導体の回動により形成される隙間を通過するように構成され、電流が前記導体を流れるとき、破断した2部分の前記導体の間にアークが形成され、前記アークが前記切断装置の運動部分の作用及び起電力の作用で運動部分のヘッド部を囲んで、さらに運動し、伸ばされる。
【0016】
前記ハウジング内に消弧構造が設置され、前記消弧構造が前記両開きドアの押し扉構造によるアークの運動経路又はその付近に位置し、破断したあとの2部分の前記導体の間のアークに対して消弧する。
【0017】
前記切断装置は、絶縁材料を有する衝撃端を備え、絶縁材料を有する前記衝撃端が前記導体を切断したあとに前記ハウジングとともに絶縁壁を形成することができ、前記絶縁壁により、両側の破断した前記導体を隔離することができる。
【0018】
前記切断装置は可溶体衝撃端を備え、前記可溶体衝撃端が絶縁材料を有する前記衝撃端の両側に位置し、前記切断装置が作動する前に、絶縁材料を有する前記衝撃端と前記導体との間隔が、前記可溶体衝撃端と前記可溶体との間隔より小さい。
【0019】
又は、前記可溶体衝撃端が、絶縁材料を有する前記衝撃端の下方に位置し、且つ絶縁材料を有する前記衝撃端と直列接続され、前記切断装置が作動する前に、絶縁材料を有する前記衝撃端と前記導体との間隔が、前記可溶体衝撃端と前記可溶体との間隔より小さい。
【0020】
前記力付与アッセンブリは、少なくとも1本のプッシュロッド及び少なくとも1本のガイドロッドを含み、前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドの周りに前記消弧媒質が充填され、前記可溶体が前記プッシュロッドと前記ガイドロッドとの間に位置し、前記プッシュロッドの一端が前記消弧室を穿通して前記消弧室から延出し、前記ガイドロッドの一端が変位して前記消弧室における既設変位空間に進入し、又は前記消弧室から延出することができ、前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドと前記消弧室の壁との間に、前記消弧媒質の漏れを防止するバリア構造が設置され、前記切断装置が、前記導体を切断したあと、前記プッシュロッド及び前記ガイドロッドを、直線変位するように駆動して前記可溶体を破断させ、破断した2部分の前記可溶体がそれぞれカソード及びアノードになり、前記カソードと前記アノードとの間にアーク経路が形成され、前記カソード及び/又は前記アノードが依然として前記消弧媒質内に位置し、アーク経路の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する。
【0021】
前記カソードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記アノードが前記プッシュロッドと前記ハウジングとの間のスリットに位置し、或いは、前記アノードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記カソードが前記プッシュロッドと前記ハウジングとの間のスリットに位置する。
【0022】
前記プッシュロッドと前記可溶体との間、前記ガイドロッドと前記可溶体との間に隙間がなく又は微小な隙間を有し、前記微小な隙間の大きさが、破断したあとの2部分の前記可溶体の間に生じたアークを通さないほどのものである。
【0023】
前記力付与アッセンブリは、消弧室に回動可能に設置される回動部材と、前記消弧室の外部に位置するトリガー部材とを含み、前記回動部材が前記可溶体を接触し又は挟持するように構成され、前記回動部材と前記消弧室との間に消弧媒質の漏れを防止するバリア構造が設置され、切断装置が前記導体を切断したあと、前記切断装置が、前記トリガー部材を駆動することにより、前記回動部材を回動させて、回動変位の方式で前記可溶体を破断させるように構成される。
【0024】
破断した前記可溶体がそれぞれカソード及びアノードになり、前記カソードと前記アノードとの間にアーク経路が形成され、前記カソード及び/又は前記アノードが依然として前記消弧媒質内に位置し、アーク経路の一部又は全部が前記消弧媒質内に位置する。
【0025】
前記カソードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記アノードが前記回動部材と前記ハウジングとの間のスリットに位置し、或いは、前記アノードが前記消弧媒質内に位置する場合、前記カソードが前記回動部材と前記ハウジングとの間のスリットに位置する。
【0026】
前記誘起装置が外部誘起信号を受信して動作することが可能なガス発生装置、シリンダ、液圧シリンダであり、誘起装置がガス発生装置である場合、前記切断装置と前記ハウジングの側壁とが密封接触であり又は0.1mm未満の隙間を設けた接触である。
【0027】
前記導体及び/又は前記可溶体に、導体の機械的強度を低下させて切断装置による切断に寄与する破断脆弱箇所が設けられる。
【0028】
前記切断装置に少なくとも1つの衝撃端が設けられ、前記衝撃端が、端面縮小構造、尖っていた構造、斜めブレード線構造、又は両端が尖っており、中央が凹んだ構造のように構成される。
【0029】
前記バリア構造として、力付与アッセンブリと消弧室壁との間に設置された密封材であり、又は、力付与アッセンブリと消弧室壁とが締まりばめで設置され、又は、消弧媒質が固体粒子状のものである場合、力付与アッセンブリと消弧室壁との間の隙間が消弧媒質粒子の粒径より小さいように構成される。
【0030】
本開示に係る、導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズは、配電ユニット、又はエネルギー貯蔵設備、又は新エネルギー自動車に適用することができる。
【0031】
本開示に係る、導体及び可溶体を順に破断させる誘起ヒューズは、配電設備、エネルギー貯蔵設備、自動車、又は回路保護を必要とする他の分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本開示における実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本開示の一部の内容を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに、他の関連図面を得ることが可能である。
【0033】
図1】本開示に係るヒューズの、遮断していないときの縦方向断面の模式的構成図である。
図2図1を他の角度から見たときの模式図である。
図3】可溶体、押し板及びガイドプレートの模式的構成図である。
図4】導体における破断脆弱箇所の模式的構成図であり、図4におけるaが導体の側面図であり、図4におけるbが導体の正面図である。
図5】本開示に係る他の選択可能な構成のヒューズの、遮断していないときの断面構造の模式図である。
図6図5におけるヒューズの、遮断したあとの断面構造の模式図である。
図7図5における押圧ブロックの、円弧状面を有する場合の模式的構成図である。
図8】可溶体に対するプッシュロッド及びガイドロッドが消弧室に位置するときの模式的構成図である。
図9】消弧室に設置されるとともに回動方式で可溶体を破断させる力付与アッセンブリの模式的構成図である。
図10】本開示に係る他の選択可能な構成のヒューズの、導体が破断してU形アークが生じたときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施例の目的、技術案及び利点をより明瞭にするため、以下、本開示の実施例に用いられる図面を参照しながら、本開示の実施例における技術案を明瞭且つ完全に説明し、説明される実施例が本開示の一部の実施例にすぎず、すべての内容ではないことは無論である。ここで図面を用いて示した本開示の実施例における部品は、様々な配置方法で配置、設計することが可能である。
【0035】
このため、以下の、図面に示された本開示の実施例に対する詳細な説明は、本開示の選択された実施例にすぎず、保護しようとする本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本開示の保護範囲に属する。
【0036】
なお、同様な符号は、図面において同様なものを示すので、1つの図面で定義された場合、その他の図面でさらに定義、解釈することが不要になる。
【0037】
本開示の説明において、「内」、「外」などの用語で表される方向又は位置関係は、図面に基づくものであり、該製品の通常の配置方向又は位置関係であり、本開示を簡単且つ簡略に説明するためのものにすぎず、該当装置又は要素が、必ずしも特定の方向を有したり、特定の方向に構成、操作されたり、することを明示又は暗示するものではないため、本開示を限定するものではないと理解すべきである。「第1」、「第2」などの用語は、区別して説明するためのものにすぎず、相対重要性を明示又は暗示するものではないと理解すべきである。
【0038】
本開示の説明において、明確な定義や限定がない限り、用語の「設置」、「接続」を、広義に理解すべきである。例えば、固定接続でもよいし、取外し可能な接続でもよいし、一体的な接続でもよい。そして、機械的な接続でもよいし、電気的な接続でもよい。あまた、直接接続してもよいし、中間物を介して間接的に接続してもよいし、2つの素子の内部が連通してもよい。当業者は、本開示における上記用語の具体的な意味を、具体的な状況に応じて理解することができる。
【0039】
実施例
【0040】
上記の技術案に対して、実施例を挙げて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
本開示の実施例による誘起ヒューズ(トリガー型ヒューズとも呼ばれる)は、主にハウジングと、導体3と、可溶体6と、誘起装置4と(トリガー装置とも呼ばれる)、切断装置とを備える。
【0042】
図1及び図2に示すように、ハウジングは、上ハウジング1と、下ハウジング2とを含み、上ハウジング1と下ハウジング2との間に1本の導体3が設置され、導体3の両端がハウジングの外部へ延出して、外部回路と接続可能である。上ハウジング1と下ハウジング2との接触面が密封装置により密封される。ヒューズのハウジングが密封設計され、通気孔がなく、外物による破断口の汚染を防止することができ、高温アークがハウジングから噴出して周囲のデバイスを損壊することを防止することもでき、セキュリティレベルを向上させる。導体3は、全部ハウジング内に設置され、両端のそれぞれに導電端子が接続され、導電端子がハウジングの両端に設置されるとともにハウジングの外部へ延出し、導電端子を介して外部回路と接続するように構成してもよい。導体3の形状として、板状構造であってもよく、その断面形状は、例えば、円状、四角形、異形、管状など、及びその組み合わせた形状のような任意の形状であってもよい。以下の説明において、板状構造を例にして導体3を説明する。導体3は、1本設置してもよく、複数本並列してハウジングに設置してもよい。本開示において、上ハウジング1と下ハウジング2を備える構成を例にして説明するが、ハウジングが、上下に構成するものに限定されなく、左右に構成するものであってもよい。
【0043】
電流は、保護システム回路に直列接続された導体3の両端を通って流れ、可溶体6に悪影響を与えることがなく、そして、導体3は、断面が大きく、抵抗が小さいため、発した熱が小さく、電力消費が低く、耐電流衝撃性が優れる。
【0044】
導体3の上下の2つの面に位置するハウジングのそれぞれに、貫通するチャンバー30が開設される。導体3の上方の上ハウジング1のチャンバー30において、上から下へ誘起装置4及び切断装置5が順に設置される。チャンバー30に位置制限階段が設けられ、誘起装置4が、チャンバー30における位置制限階段に取り付けられ、押圧プレート又は押圧スリーブ(図示しない)によりハウジングに固定される。誘起装置4は、誘起信号を送信する外部の制御装置(図示しない)と接続することができ、制御装置からの誘起信号を受信するものであり、誘起信号が一般的に電気信号である。
【0045】
誘起装置4は、シリンダ、液圧シリンダ、カム伝動装置などの、外部誘起信号を受信して動作し、切断装置5に線状変位駆動を提供する機構であってもよい。実施例において、誘起装置4は、化学エネルギーが貯蔵されて電流によりトリガーされるガス発生装置であり、受信した外部誘起信号により動作し、大量の高圧ガスを発生して、切断装置5に駆動力を提供することができる。
【0046】
切断装置5は、ピストン、スライダーのような構造であってもよく、上記の部材を組み合わせた構造であってもよく、誘起装置4により駆動されて導体3を切断できればよい。誘起装置4はガス発生装置である場合、切断装置5とハウジングの側壁とが密封接触であり又は0.1mm未満の隙間を設けた接触である。密封接触は、切断装置5とチャンバー30との間にパッキンなどのような密封材41を設置することにより実現してもよく、切断装置5とチャンバー30との締まりばめにより実現してもよい。寸法がミリメートル級以上のピストンの場合、一般的に隙間が0.1mm以下であり、少量のガスを漏らしてもピストンの運動に影響することがなく、良好な押動力を得ることができる。ピストンとハウジングの側壁とが密封接触であれば、より大きい押動力を得ることができるが、ピストンにかかった摩擦力も比較的に大きい。このため、ガス発生装置が発生した高圧ガスの駆動力に応じて、切断装置5とハウジングの側壁との接触を密封接触にするか、小さい隙間を設けた接触にするかを決める。
【0047】
切断装置5が初期位置に位置するとき、切断装置5とチャンバー30との間に位置制限構造が設置される。位置制限構造の役割として、外部振動があるときに切断装置5の位置を保ち、振動などに起因して切断装置5が切断導体3及び可溶体6を意図せずに切断することを防止し、ヒューズが取り付けられた設備の正常作動に影響を与えることを避ける。
【0048】
位置制限構造は、切断装置5の外周に間隔をあけて設けられた凸状ブロック及びチャンバー30の対応する位置に設けられた凹溝であり、凸状ブロックが凹溝に係止することにより位置制限を実現する。又は、チャンバー30の内壁に間隔をあけてリブを設け、リブに対応して切断装置5に凹溝を開設し、リブが切断装置5の凹溝に係止することにより位置制限を行う。誘起装置4が切断装置5を駆動して動作させるとき、切断装置5が該位置制限構造を突破して変位することができる。
【0049】
図1に示すように、ハウジングのチャンバー30に位置する導体3に、破断脆弱箇所31が設けられ、破断脆弱箇所31の両側の、ハウジング内のチャンバー30のハウジング壁に近接する位置に回動脆弱箇所32が設けられる。破断脆弱箇所31を設ける目的は、導体3の機械的強度を低下させることである。図4に示すように、下記の破断口の強度を低下させる手段を選択的に使用してもよく、同時に使用してもよい。破断口の断面面積を減少させて、破断脆弱箇所31を断面面積の小さい構造に形成させ、例えば、U形溝、V形溝、孔、中空構造など、又はその組み合わせた構造にする。破断脆弱箇所31が任意の角度で前記導体3の横断面に設けられてもよく、断面変化構造を利用して過渡領域で応力を集中させ、例えば、隙間を設け、又はせん断力を利用する。導体3の材料は、破断口においてスズなどの低強度のものを採用する。機械力で圧着及び/又は固定された既製品の破断口などを利用する。破断口の強度を低下させる手段は、上記の手段に限定されない。破断脆弱箇所31の両側の導体3にそれぞれ折り曲がり凹部が設けられ、したがって、導体3が破断したあとに折り曲がり凹部で折り曲がることに寄与できる。折り曲がり凹部を設けなくてもよい。
【0050】
ハウジング内に位置する導体3は、一字形の平面状ものと設けられてもよく、下へ凹んだ几字形構造と設けられてもよい。几字形構造により、導体3を上ハウジング1及び下ハウジング2によりよく合わせ、位置決めすることができる。導体3の下方の下ハウジング2に、導体3が破断したあとに切断された部分が落下する空間が開設される。
【0051】
ハウジング内に位置する導体3に、少なくとも1本の可溶体6が並列接続される。図1及び図2に示すように、実施例において、2本の可溶体6が、それぞれ導体3の両側に位置するように導体3に並列接続される。各可溶体6の両端のそれぞれは、破断脆弱箇所31の両端に位置する。導体3の破断口の両側に可溶体6を並列接続することにより、導体3に破断口が生じたとき、約60~70%の大部分の故障電流エネルギーが並列接続された可溶体6を通るため、並列接続された可溶体6の設置により、導体3の破断口の故障電流エネルギーを大幅に減少させ、破断口の絶縁性能の素早い回復に寄与し、数ミリ秒内に絶縁性能が回復することができる。しかし、故障電流が比較的に小さくて並列接続された可溶体6を溶断できなく又は並列接続された可溶体6を流れる時間が十分長くなくて、並列接続された可溶体6が適時に溶断されなく又は溶断できないと、回路が適時に遮断できないことになる。このため、本開示において、切断装置5で導体3及び可溶体6を順に切断し、回路を遮断し、遮断の確実性を確保する。正常の通流状態は、電流が主に導体3の両端を通って流れ、極めて微小な電流だけが並列接続された可溶体6を流れる状態であり、したがって、可溶体6を導体と見なすことができる。
【0052】
可溶体6の、切断装置5に対応する上下両面のそれぞれに力付与アッセンブリが設置される。力付与アッセンブリは、可溶体6の両面を挟持する1組の挟持アッセンブリであり、押し板61とガイドプレート62とを含む。図1及び図3に示すように、押し板61とガイドプレート62とが接続され、可溶体6を押し板61とガイドプレート62との間に固定し、押し板61とガイドプレート62とが対向して固定される1組の挟持アッセンブリと形成される。押し板61とガイドプレート62とが位置決め構造(図示しない)によりハウジングに固定され、押し板61が、切断装置5により駆動されるとき、位置決め構造による位置決めを克服して変位し、可溶体6を破断させることができる。押し板61及びガイドプレート62の両側のハウジングに、消弧媒質63が充填された消弧室60が設けられ、可溶体6が消弧室60を穿通して導体3と接続する。可溶体6に、溶断脆弱箇所と、機械的手段により可溶体6を破断させるための破断脆弱箇所とが設けられ、溶断脆弱箇所及び破断脆弱箇所が互に影響しないように設置され、つまり、可溶体6が機械的に破断したあと、可溶体6の溶断が影響されず、可溶体6が溶断されたあと、可溶体6の機械的手段による破断が影響されない。消弧媒質63は、密実に充填された分散の粒子とコロイドとを組み合わせたものであってもよく、液体であってもよく、実際の消弧要求に応じて選択することができる。消弧媒質により、可溶体6の破断口でのアークの拡大を防止する。
【0053】
遮断の過程において、素早い切断とヒューズの消弧原理とを結合して、遮断能力がほとんど気圧、温度、湿度に影響されなく、消弧能力が向上されるため、より大きい故障電流を遮断でき、遮断能力を向上させることができる。
【0054】
溶断脆弱箇所は、消弧媒質63に配置され、破断脆弱箇所は、消弧媒質63に配置してもよく、消弧媒質63の外部に配置され、且つ押し板61及びガイドプレート62の一の側又は両側に近接する可溶体6に設けられてもよい。折り曲げの方式で可溶体6を設置する場合、破断脆弱箇所を可溶体6の折り曲がり箇所に設けることができ、このようにして、可溶体6の破断に寄与できる。溶断脆弱箇所は、狭径の構造であってもよく、可溶体6の表面に低温溶融金属を塗布することにより冶金学的効果層などを生じさせた溶断速度を加速する構造又は材料であってもよく、可溶体6に低溶融点材料を接続してもよい。
【0055】
可溶体6の、消弧室60に位置する部分の構造が台形構造66として設けられ、図3に示すように、台形構造66の、押し板61とガイドプレート62との間に位置する可溶体6と接続する側が傾斜線状と設けられ、破断脆弱箇所が台形構造の曲がり箇所に設けられる。このようにして、可溶体6を破断させるとき、可溶体6をより容易に引き裂くことができる。
【0056】
ガイドプレート62の直下のハウジングに、ガイドプレート62が下へ変位するための空間が開設され、該空間の底部にバッファ層が設けられる。該空間の高さは、少なくとも、可溶体6が引き裂かれ破断したあとのガイドプレート62の変位距離よりも大きい。
【0057】
ヒューズの製造において、組立を容易にするため、下ハウジング2の、可溶体6の下方に位置する部分を、他の部分と別に加工して、可溶体底部ハウジング64として形成させる。図3に示すように、可溶体底部ハウジング64に、上向きに開口する部分消弧室60及び可溶体6の下方の空間が開設され、そしてガイドプレート62を位置制限構造により可溶体6の下方の空間の開口の上面に設置し、そして可溶体6を可溶体底部ハウジング64の上面に固定設置し、最後に押し板61を設置することにより、可溶体6と、押し板61と、ガイドプレート62と、可溶体6の下方に位置する空間と、部分消弧室60などとが一体の構造として形成される。下ハウジング2に、それぞれ可溶体底部ハウジング64に対応する部分消弧室60と導体3の下方に位置する空間が開設される。下ハウジング2に、下向きに開口する取付用凹部が形成される。取り付けるとき、可溶体6とその下方の構造とからなる一体の構造を下ハウジング2に取り付け、この一体の構造と下ハウジング2との接触面で密封し、可溶体底部ハウジング64の部分消弧室60と下ハウジング2の部分消弧室60とを接続して、完全な密封室を形成し、そして、ねじにより固定すればよい。このような構成を採用することにより、加工の難易度を低下させ、組立時間を短縮することができる。
【0058】
可溶体6が、導体3の直下の所定距離離れた箇所に設置されてもよく、導体3の縁部両側の外側の下方に設置されてもよく、可溶体6の設置位置がどのようにしても、切断装置5の衝撃端が導体3を衝撃、切断したあと、さらに可溶体6を切断できる条件を満たさなければならない。よって、導体3と可溶体6とを破断させることに要求される時間間隔に基づいて、切断装置5の衝撃端構造又は導体3と可溶体6との垂直距離を確定することができる。可溶体6が導体3の縁部両側の外側の下方に位置する場合、切断装置5の衝撃端は、導体3の破断箇所と正対し且つ絶縁材料を有する衝撃端51と、絶縁材料を有する衝撃端51の両側に位置する、可溶体6を破断させる可溶体衝撃端52とのそれぞれ独立した3つの部分として設置してもよく、したがって、破断導体3と可溶体6とをそれぞれ破断させる。可溶体6が導体3の下方に位置し、可溶体衝撃端52と絶縁材料を有する衝撃端51とを異なる高さで設置し、導体3及び可溶体6の破断の時間間隔に基づいて、可溶体衝撃端52及び絶縁材料を有する衝撃端51の、それぞれ可溶体6及び導体3への距離を確定し、導体3及び可溶体6を規定の時間間隔で前後に破断させる。
【0059】
実施例において、導体3及び可溶体6を順に切断することを保証するように、絶縁材料を有する衝撃端51と導体3との間隔が、可溶体衝撃端52と可溶体6との間隔より小さい。任意選択で、可溶体衝撃端52が、絶縁材料を有する衝撃端51の下方に位置し、且つ絶縁材料を有する衝撃端51と直列接続され、切断装置5が作動する前に、絶縁材料を有する衝撃端51と導体3との間隔が、可溶体衝撃端52と可溶体6との間隔より小さい。可溶体衝撃端52が絶縁材料を有する衝撃端51の下方に位置しても、同じ作用を果たすことができ、製品の空間レイアウトに応じて選択することができる。
【0060】
さらに、絶縁材料を有する衝撃端51が、ハウジングと接触した位置に運動することができ、ハウジングとともに絶縁壁を形成することにより、両側の導体3が破断したあとに隔離される。実施例において、絶縁材料を有する衝撃端51の幅が導体3の幅よりも大きくされて、該絶縁壁を形成し、また、絶縁壁を形成可能な他の形態を選択してもよい。可溶体6が溶断され、又は切断される過程において瞬間過電圧が生じるが、絶縁壁による隔離で、分かれた2つの室が形成されるため、該過電圧が空気を通って上方の破断口を撃ち抜くことを避けて、再び燃え出すことを防止することができる。破断口の両端に互いに独立した2つの室を形成する過程において、アークをスリットに押し込むことができ、消弧に寄与できる。絶縁壁の形成により、本開示に係るヒューズの信頼性を向上させる。
【0061】
絶縁材料を有する衝撃端51及び可溶体衝撃端52の端面は、端部の尖っていた構造、刃状構造、端面縮小構造、斜めブレード構造又は狭い平面構造などにしてもよく、導体3及び可溶体6における破断脆弱箇所を切断して破断口を形成することに寄与できる。可溶体6に、図3に示す構成の押し板61やガイドプレート62のような板状構造の挟持アッセンブリが設置される場合、可溶体衝撃端52の端面が平面構造になり、押し板61を押して可溶体6を破断させることに寄与できる。
【0062】
可溶体6が導体3の直下に位置する場合、切断装置5は、1つの衝撃端のみを備えればよい。このような構造によれば、切断装置5の衝撃端が、先に導体3を破断させ、そしてさらに変位し、導体3を破断させる衝撃端により可溶体6を破断させ、導体3及び可溶体6において破断口を前後に形成する。
【0063】
図5及び図6に示すように、導体3は回動脆弱箇所105を有し、切断装置5が導体3を切断することができ、導体3の各破断脆弱箇所31のそれぞれが破断口として形成されることができ、回動脆弱箇所105が破断脆弱箇所31の一の側又は両側に設けられて片開きドア又は両開きドアのような押し扉構造を形成し、破断した導体3が切断装置5により押されて、切断装置5とともに移動せずに、回動脆弱箇所105を軸として回動することができ、切断装置5の運動する部分が、導体3の回動により形成される隙間を通過する。実施例において、回動脆弱箇所105は、破断脆弱箇所31の両側に設けられる。切断装置5が下に向かって導体3を切断して1つの切断箇所を形成したとき、導体3がさらに切断装置5に押されて、回動脆弱箇所105を曲がり点として回動し、2枚の扉を押して開くようになり、落下することがなく、落下により立ち上がって切断装置5をふさぐことがない。したがって、切断装置5がさらに下へ運動することを確保して、さらに可溶体70を切断することを保証する。なお、実施例において、両開きドアの形態のものが提供され、2つの回動脆弱箇所105を有する。1つの回動脆弱箇所105を設けてもよく、押されるとき、導体3が片開きドアのように破壊される。片開きドア又は両開きドアでも、回動脆弱箇所105を設ければ、切断装置5の力をより小さく且つより均一にすることができ、均一の切断力で導体3を破壊することができ、また、破断箇所のアークを導体3の破断に従って破断方向に沿ってU形に伸ばすことができて、消弧に寄与できる。
【0064】
さらに、図10は、2つの回動脆弱箇所105が導体3の破断脆弱箇所の両側に設けられ、両開きドアの押し扉構造として形成されるものの実施例を示すものである。切断装置5が導体3を切断したあと、切断装置5の運動部分が導体3の回動により形成される隙間を通過する。電流が導体3を流れるとき、破断した導体3の間にアークが形成され、アークが切断装置5の運動部分の作用及び起電力の作用で運動部分のヘッド部を囲んで、さらに運動し、伸ばされる。
【0065】
両開きドア構造の場合、消弧構造は、両開きドアの押し扉構造によるアークの運動経路又はその付近に位置し、破断したあとの2部分の導体3の間のアークに対して消弧する。運動部分のヘッド部が絶縁材料を用いてアークを冷却させ、消弧に補助してもよく、運動部分のヘッド部に、ガスを発生可能な絶縁材料を塗布して消弧に補助しもよく、運動部分のヘッド部の運動方向の前方に、金属アークシュート、絶縁アークシュート又はギャップを設置して消弧に補助してもよい。
【0066】
例えば、図10において、右側に示すように、金属アークシュート101を嵌設することによりアークを区切って冷却させて消弧する。左側に示すように、間隔をあけて突出した絶縁凸起102を設置し、又は間隔をあけた絶縁片103を設置して絶縁ギャップ消弧構造を構成することにより、アークを絶縁壁の表面に沿って伸ばし、アークの経路を伸ばし、ギャップ消弧及び冷却消弧を実現する。破断口の下方のハウジング2にアークの作用でガスを発生するコーティングを塗布してもよく、アークが周囲空間へ拡散して冷却消弧される。これらの形態は、個別に実施してもよく、組み合わせて実施してもよい。上記の両開きドア構造に合わせて、導体3が1箇所で破断したあと、対称のU形アークHを形成させることができ、巨大なアークの起電力が導電粒子に作用することにより、アークが切断装置5のヘッド部よりも速く前方空間に運動し、運動速度が数キロメートル/秒を超えて、アークを素早く伸ばし、アークの長さが長くなればなるほど、アークの抵抗が大きくなり、アーク電圧をより速く増大し、アークがよりよく消弧される。U形アークの運動方向の前方のハウジング壁及び空間内に上記の消弧構造を設置することにより、アーク電圧を高めることができ、電流(I)の分岐電流、つまり、導体3の電流(I1方向電流)がより速く可溶体106(I2方向電流)に転移して、可溶体106がより速く溶断される。アークをさらに伸ばしてアークを冷却させ、絶縁抵抗効果をより早くもたらし、可溶体106が溶断されるときの過電圧に耐えて、撃ち抜かれることを防止する。
【0067】
可溶体106の切断は、下記の押圧ブロックの回動の形態にしてもよく、図8に示したプッシュロッド81とガイドロッド82との共働による切断の形態にしてもよく、図9に示した回動切断の形態にしてもよい。図10において、引き裂きロッド104を利用し、可溶体106が引き裂きロッド104を穿通し、切断装置5がさらに下へ移動して引き裂きロッド104を押して下へ移動させるとき、可溶体106を引き裂くことができ、破断箇所が周囲の消弧媒質63により包まれ、引き裂きロッド104とハウジングとの間で密封し、消弧媒質63の漏れを防止することができる。
【0068】
図1による案をもとに、力付与アッセンブリは、可溶体70に間隔をあけて設置される2組の挟持アッセンブリ74を含み、2組の挟持アッセンブリ74の間に、可溶体70の破断に寄与する破断凹部75が形成される。各組の挟持アッセンブリ74は、可溶体70の両面に設置される対をなす押圧ブロック71を含む。可溶体70の同じ側に位置する2つの押圧ブロック71の隣接する面は、円弧状面であり、このようにして、2組の挟持アッセンブリ74の間にラッパ状の破断凹部75が形成され、ピストン衝撃端が破断凹部75に進入して可溶体70を破断させることに寄与できる。押圧ブロック71の両端は、回動軸73によりハウジングに固定される。消弧室72は、2組の挟持アッセンブリ74の両側に位置する。
【0069】
切断装置5が導体3を切断したあと、その衝撃端が2組の押圧ブロック71の間の破断凹部75に進入して、該破断凹部75で可溶体70を切断し、同時に、押圧ブロック71の円弧状面が切断装置5により押圧され、押圧ブロック71の間に配置される可溶体70が押圧ブロック71とともに回動軸73を回りに回動して、押圧ブロック71の両端に位置する可溶体70がともに破断する。可溶体70に複数の破断口が形成される。図5及び図6から分かるように、可溶体70の両端が複数の破断口の両側の導体3に並列接続される。3つの破断口が同時に形成されたため、大部分の過電流のエネルギーが、3つの破断口に並列接続された可溶体70を経由して流れ、3つの破断口が、直列分圧のため、各破断口で生じたアークが非常に小さく、空気による消弧が容易に実現でき、破断口の絶縁性能が素早く回復することができる。可溶体70が消弧媒質63内に溶断される同時に切断装置5により機械的に切断されて少なくとも2つの破断口を形成し、分圧及び消弧媒質63により、可溶体70の破断口のアークも素早く消弧される。
【0070】
破断したあと押圧ブロック71をよりスムーズに作動させるため、可溶体70の対向する側に位置する押圧ブロック71の表面が突出した円弧状面であり、図7における押圧ブロック71の上面又は底面がいずれも円弧状を呈し、このようにして、2組の押圧ブロック71の間にラッパ状の破断凹部75が形成される。押圧ブロック71が位置するチャンバー30のチャンバー壁は、押圧ブロック71の円弧状面に合う円弧状面であってもよく、可溶体70が破断したあと、押圧ブロック71がチャンバー30の円弧状面に沿って安定的に回動することができる。押圧ブロック71の両側に位置する可溶体70がハウジングにおける消弧室72に配置され、消弧室72に消弧媒質63が充填される。
【0071】
上記の図3及び図5における挟持アッセンブリは、可溶体40に力を付与するための力付与アッセンブリであり、切断装置5により挟持アッセンブリを駆動して変位させて、可溶体40を破断させることができる。挟持アッセンブリが消弧室72bの外部に位置するが、破断脆弱箇所が消弧室72の外部に位置してもよく、消弧室72の内部に位置してもよい。破断脆弱箇所が消弧室72の内部に位置する場合、可溶体40が引き裂かれるとき、引き裂き箇所が消弧室72を脱離してハウジングチャンバー30内に入ることができる。
【0072】
図3及び図6に示すような力付与アッセンブリ及び可溶体も消弧室60に配置することができる。消弧室60に消弧媒質が充填されるため、挟持アッセンブリが可溶体を駆動して消弧媒質内で変位して破断させ、且つ消弧媒質を漏らさない課題を解決すればよい。
【0073】
図8に示すように、力付与アッセンブリ及び可溶体6は、消弧室60に位置する。図8において、力付与アッセンブリは、可溶体6を挟持する挟持アッセンブリである。具体的に、可溶体6の両面にプッシュロッド81及びガイドロッド82がそれぞれ対向して設置されて挟持アッセンブリを形成する。プッシュロッド81の上端が上に向かって消弧室60の壁を穿通する。その上端が消弧室60の壁から延出してもよく、延出しなくてもよい。延出しない場合、ピストンの衝撃端が消弧室60の壁に進入してプッシュロッド81を駆動しなければならない。
【0074】
可溶体6がプッシュロッド81及びガイドロッド82により切断されたあとも消弧媒質63により包まれることを確保し、消弧効果を向上させるように、プッシュロッド81及びガイドロッド82の周りが消弧媒質63で包まれ、且つ可溶体6の一部が消弧媒質63により包まれる。さらに、本開示に係る導体3及び可溶体6は二段階破断構造であり、導体3が銅列であり、断面が比較的に大きく、可溶体6の断面が比較的に小さい。断面の大きい導体3は、通流能力が強く、抵抗が小さく、温度上昇が小さいが、単独の破断による遮断能力が弱く、消弧速度が遅い。消弧媒質63における可溶体6は、断面がより小さく、引き裂きやすく、遮断能力が比較的に強く、消弧速度が速いが、通電能力が弱い。両方を並列接続して前後に破断させることにより、通電能力及び遮断能力をともに配慮して、遮断速度を上げることができる。このような設計によれば、ヒューズ全体を軽量化させ、体積を小さくすることもできる。
【0075】
具体的に、導体3(主銅列)を先に破断し、電流が並列接続された可溶体6に転移され、このとき、主銅列の破断口における媒質の絶縁能力が回復し(破断の瞬間、アークが生じて、破断口における媒質の絶縁能力が低下し、撃ち抜かれやすい)、二度目に撃ち抜かれることが発生しにくく、遮断の確実性を向上させることができる。
【0076】
2回の素早い切断により遮断を実現し、先に導電銅列を切断し、そして可溶体6を切断し、消弧時間を大幅に短縮させて、素早い保護を実現することができる。
【0077】
電流の流れによる可溶体6の破断過程は、下記のようになる。
大電流で、可溶体6が消弧媒質63内において素早く溶断され、回路が切断され、可溶体6が、下へ運動するプッシュロッド81により引き裂かれ、絶縁能力をさらに向上させる(大電流で、アークのエネルギーが低く、溶断速度が速く、可溶体6の溶断による破断口が大きく、アークが容易に消弧される)。
中電流で、可溶体6が消弧媒質63内において溶断される過程において、可溶体6が、下へ運動するプッシュロッド81により引き裂かれ、引き裂かれた破断口が消弧媒質63(例えば、砂)内を運動し、引き裂かれた破断口及び溶断による破断口が共働してアークを消弧して、絶縁になる。
小電流で、可溶体6が消弧媒質63内において溶断せず、可溶体6が、下へ運動するプッシュロッド81により引き裂かれ、引き裂かれた破断口が消弧媒質63(例えば、砂)内を運動して、アークを消弧して、絶縁環境が構築される(小電流でアークのエネルギーが低く、溶断速度が遅いが、消弧媒質63内において引き裂かれたアークが容易に消弧される)。
【0078】
具体的に、破断した2部分の可溶体6がそれぞれカソード及びアノードであり、カソードとアノードとの間にアーク経路が形成され、カソード及び/又はアノードが依然として消弧媒質63内に位置し、アーク経路の一部又は全部が消弧媒質63内に位置する。より具体的に、カソードが消弧媒質63に位置する場合、アノードがプッシュロッド81とハウジングとの間のスリットに位置し、或いは、アノードが消弧媒質63に位置する場合、カソードがプッシュロッド81とハウジングとの間のスリットに位置する。
【0079】
さらに、プッシュロッド81と可溶体6との間、ガイドロッド82と可溶体6との間に隙間がなく又は微小な隙間を有し、微小な隙間の大きさが、破断したあとの2部分の可溶体6の間に生じたアークを通さないほどのものである。微小な隙間を有する構造を採用する場合、消弧媒質63が固体消弧媒質を採用し、このようにして、プッシュロッド81とガイドロッド82と可溶体6との間に遮断効果のよい壁が形成され、アークの圧力で気流導通の発生を避け、そして、隙間から消弧媒質63が通ることがないため、遮断効果が影響されなく、消弧媒質63の充填密度も影響されない。このようにして、可溶体6が切断される前も後も、アークに撃ち抜かれるほどの大きな空気空間がないため、消弧効果を向上させることができる。
【0080】
プッシュロッド81及びガイドロッド82の移動に寄与するため、プッシュロッド81及びガイドロッド82の長手方向を、運動方向と平行するように設計し、さらに消弧媒質63に接触するハウジングの表面を平滑表面に設計し、このようにして、プッシュロッド81及びガイドロッド82が運動するときの摩擦力を減少させて、切断時の振動及び騒音を減少させることができる。そして、運動がよりスムーズになり、抵抗がより小さいため、導体3の破断口と切断装置5との間、可溶体6の破断口と消弧媒質63との間に摩擦がより小さく、降温に寄与でき、摩擦発熱を軽減させることができる。
【0081】
ガイドロッド82の下端が下に向かって消弧室60の壁を穿通し、ガイドロッド82の下端と消弧室60の壁との間にガイドロッド82が変位するための隙間が設けられ、該隙間により、プッシュロッド81及びガイドロッド82が可溶体6を破断させて可溶体6に破断口を形成することができる。
【0082】
ガイドロッド82が変位するときに生じる騒音を軽減するため、隙間の底部にバッファ層を設けることができる。ガイドロッド82の下端が消弧室60の壁の外部に延出してもよく、このような構造であれば、消弧室60の底部のハウジングに、チャンバー30を有するハウジングを設置することが最も好ましく、これにより、ガイドロッド82がハウジング内に運動可能である。図8において、消弧媒質63の漏れを防止するように、プッシュロッド81及びガイドロッド82と、消弧室60とが締まりばめで接触する。プッシュロッド81、ガイドロッド82と消弧室60の壁との接触面に密封材を設置することにより密封する。密封材を用いてプッシュロッド81及びガイドロッド82を密封する場合、位置決め構造(図示しない)によりプッシュロッド81及びガイドロッド82のそれぞれをハウジングに固定することにより初期位置に保つ。位置決め構造は、プッシュロッド81又はガイドロッド82における、ハウジングに嵌設するための凸状ブロックである。可溶体6の溶断脆弱箇所及び破断脆弱箇所は、いずれも消弧室60に位置する可溶体6に設けられる。プッシュロッド81及びガイドロッド82は、対面して設置してもよく、対面せずに設置してもよく、又は、1つのプッシュロッド81が複数のガイドロッド82を押して動作させ、又は、複数のプッシュロッド81が1つのガイドロッド82を駆動して運動させる。プッシュロッド81がガイドロッド82を駆動してともに変位させればよい。
【0083】
可溶体6の破断がプッシュロッド81及びガイドロッド82により実現されるため、導体3が破断したあとに可溶体6と接触することがなく、切断装置5が、導体3を切断したあと、第1階段の運動が完了し、プッシュロッド81に接触してプッシュロッド81を押動することは、第2階段の運動である。2階段の運動が互いに影響しなく、落下した導体3が可溶体6に接触することもなく、よって、可溶体6が破断するときのアークが、落下した導体3を介して周囲の構造に影響を与えたり、周囲の空気を撃ち抜いたりすることを避け、消弧効果を向上させることができる。
【0084】
図8において、力付与アッセンブリが切断装置5の駆動により直線運動し、挟持アッセンブリの構造を変更して力付与アッセンブリを回動運動させて、可溶体6を破断させるようにしてもよい。
【0085】
図9は、回動変位の方式により可溶体94を破断させる回動アッセンブリとなる力付与アッセンブリの簡単構造を示す模式図である。回動アッセンブリは、消弧室92に設置される回動部材90を含み、回動部材90が回動軸によりハウジング91に固定される。回動部材90の一部が消弧室92に延出するとともにトリガー部材とされ、回動部材90と消弧室92の壁とが密封接触する。密封接触は、密封材による密封又は締まりばめによる密封である。消弧室92の外部に位置する回動部材90に回動レバー93(即ち、上記のトリガー部材)が設けられる。回動レバーは、切断装置5の衝撃端が回動レバーを押圧することにより回動部材90を駆動して回動させることを可能にする構造である。消弧室92に位置する回動部材90に、可溶体94を固定する挟持凹溝又は可溶体94が穿通する挟持孔などの構造を設け、挟持凹溝の開設方向、挟持孔の開設方向を回動軸の軸方向に垂直にし、つまり、回動部材90が可溶体94を接触し、又は挟持することを実現し、可溶体94が回動部材90に固定設置され、そして、回動部材90が回動するとき、可溶体94を破断させて破断口を形成することができる。破断した可溶体94がそれぞれカソード及びアノードになり、カソードとアノードとの間にアーク経路が形成され、カソード及び/又はアノードが依然として消弧媒質63内に位置し、アーク経路の一部又は全部が消弧媒質63内に位置する。
【0086】
カソードが消弧媒質63に位置する場合、アノードが回動部材90とハウジングとの間のスリットに位置し、或いは、アノードが消弧媒質63に位置する場合、カソードが回動部材90とハウジングとの間のスリットに位置する。
【0087】
上記の可溶体94は、可溶体94の両端により直接導体3と接続してもよく、接続リード線により導体3と接続してもよい。上記の各図面において、切断装置5がピストン構造である。
【0088】
図1における構造、誘起装置4がガス発生装置であり、切断装置5がピストンであることを例にして、作動原理及び消弧原理を説明する。
【0089】
作動原理:
まず、ガス発生装置は外部から外部の誘起信号を受信して点火する。誘起信号は一般的に電気信号である。ガス発生装置が点火するとき、化学反応によって高圧ガスを放出し、高圧ガスによってピストンを駆動して運動させ、ピストンが高圧ガスの作用で位置制限構造の位置制限を克服して導体3の方向へ変位し、破断脆弱箇所31で導体3を破断させて導体3に破断口を形成する。このとき、可溶体6はまだ破断していない。導体3の破断口の抵抗が可溶体6の抵抗よりはるかに大きいため、大部分の電流が可溶体6を流れ、導体3の破断口において少しだけの電流でアークが発生するため、導体3の破断口が焼灼されることがなく、導体3における消弧媒質63、例えば空気が、絶縁性能が素早く回復できる。大部分の電流が可溶体6を流れるとき、可溶体6の溶断脆弱箇所の抵抗が比較的に大きいため、温度が速く上昇し、可溶体6が溶断し始める。可溶体6が溶断されると同時に、ピストンがさらに下へ運動し、可溶体6を破断させて可溶体6に破断口を形成させ、ピストンの運動が停止したとき、動作が終了し、回路が切断される。可溶体6が破断するとき、過電流が導体3の破断口で少なくとも30%のエネルギーを放出するため、電流が可溶体6において比較的に大きいアークを生じることがない。過電流が比較的に小さいとき、可溶体6を溶断させないが、可溶体6が機械的に切断されるため、ヒューズの遮断が確保される。
【0090】
消弧原理:
零電流下で遮断する必要がある場合、又は倍数の小さい故障電流下で可溶体6を溶断できない場合、ピストンにより導体3及び可溶体6を順に切断して、ヒューズに遮断させ、故障電流が比較的に小さいため、導体3の破断口及び可溶体6の破断口で形成されたアークも比較的に小さく、容易に消弧できる。
中倍数の故障電流下で、導体3に破断口が形成されたあと、大部分の故障電流が可溶体6を流れ、故障電流が比較的に大きいため、可溶体6の溶断脆弱箇所が溶断され始める同時に、可溶体6がピストンにより破断する。ピストンによる破断により発生した、可溶体6の破断口におけるアークが、ピストンの更なる変位により伸ばされて押圧され、アークが伸ばされて押圧されたとき、アークをなくす消弧が容易になる。消弧媒質63に位置する可溶体6の溶断箇所の破断口で発生したアークが、消弧媒質63において消弧される。
倍数の高い故障電流下で、導体3が破断したあと、大部分の故障電流が完全に可溶体6に転移され、導体3における破断口で発生したアークが非常に小さく、さらに、ピストンの運動によりここのアークを伸ばして押圧し、導体3の破断口におけるアークが容易に消弧される。故障電流が非常に大きいため、可溶体6の溶断脆弱箇所で大量の熱が発生して可溶体6が素早く溶断され、消弧媒質63による消弧で、アークが速く消弧され、そして、ピストンがさらに下へ運動して可溶体6を切断し、物理的破断口を形成し、ヒューズの徹底的な遮断を確保する。
【0091】
2回の素早い切断により確実な物理的破断口を形成することにより、遮断されたあとの絶縁性能が優れる。
【0092】
上記の記載は、本開示の好ましい実施例にすぎず、本開示を限定するものではない。当業者にとって、本開示に各種の変更や変化を有してもよい。本開示の精神及び原則から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良なども、本開示の保護範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示に係るヒューズは、下記の利点を有する。電流は保護システム回路に直列接続された導電板の両端を通って流れ、可溶体に悪影響を与えることがなく、そして、導電板は、断面が大きく、抵抗が小さいため、発した熱が小さく、電力消費が低く、耐電流衝撃性が優れる。遮断の過程において、素早い切断とヒューズ消弧原理とを結合して、遮断能力がほとんど気圧、温度、湿度に影響されなく、消弧能力が向上されるため、より大きい故障電流を遮断でき、遮断能力を向上させることができる。2回の素早い切断により遮断を実現し、先に導電銅列を切断し、そして可溶体を切断することにより、消弧時間を大幅に短縮して、素早い保護を実現することができる。2回の素早い切断により確実な物理的破断口を形成することにより、遮断されたあとの絶縁性能が優れる。ハウジングが密封設計され、通気孔がなく、外物による破断口の汚染を防止することができ、高温アークがハウジングから噴出して周囲のデバイスを損壊することを防止することもでき、セキュリティレベルを向上させる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10