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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】処理装置および測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231201BHJP
   G01N 33/579 20060101ALI20231201BHJP
   B01L 7/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N33/579
B01L7/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021573038
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049204
(87)【国際公開番号】W WO2021149465
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020008729
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】宮戸 崇裕
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-297377(JP,A)
【文献】特開2017-026522(JP,A)
【文献】特開2007-078665(JP,A)
【文献】特開2017-129429(JP,A)
【文献】特表2007-510911(JP,A)
【文献】特開昭62-192659(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080939(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038473(WO,A1)
【文献】FUJIFILM,エンドトキシンキット エンドトキシン-シングルテスト ワコー(比濁時間分析法),添付文書,承認番号 20600AMZ00967000,pp.1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
G01N 33/579
B01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器を収容し、かつ、前記検体容器内の検体溶液の温度を変化させるための流体状の熱媒体を前記検体容器の周囲に貯留することが可能な収容槽であって、前記熱媒体を供給する供給口と、前記熱媒体を排出する排出口とが設けられた収容槽と、
前記熱媒体を供給する熱媒体供給部と、
前記収容槽内の熱媒体を交換する熱媒体交換機構であって、前記検体容器内の検体溶液を第1温度に加熱するための第1熱媒体と、前記第1温度よりも低い第2温度に前記検体溶液を冷却するための第2熱媒体とを交換する熱媒体交換機構と、
配管の一部であり、前記熱媒体供給部から供給される前記熱媒体を前記供給口に供給する供給路であって、断面形状における第1の方向の長さが、前記第1の方向と直交する第2の方向の長さよりも短い供給路と、
前記配管の一部であり、前記排出口から排出される前記熱媒体を前記熱媒体供給部に戻すための排出路と、
前記供給路に対して前記第2の方向に沿って密着して配置され、前記供給口に供給される前に前記熱媒体を前記第1温度以上に加熱することにより前記第1熱媒体に変換する第1温度調整部と、
前記供給路に対して前記第2の方向に沿って密着して配置され、前記供給口に供給される前に前記熱媒体を前記第2温度以下に冷却することにより前記第2熱媒体に変換する第2温度調整部と、を備え
前記熱媒体交換機構は、前記供給口と前記排出口とに接続された配管を通じて、前記収容槽内の前記第1熱媒体または前記第2熱媒体を循環させる
処理装置。
【請求項2】
前記熱媒体は、液体である
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記収容槽に前記第1熱媒体が供給されてから予め設定された設定時間が経過した後、前記熱媒体交換機構を制御することにより、前記収容槽に前記第2熱媒体を供給させる制御部を備える
請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記熱媒体を前記第1熱媒体とするために加熱するヒーターを備え、
前記ヒーターの温度は、30℃以上80℃以下である
請求項1からのいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記ヒーターの温度は、60℃以上80℃以下である
請求項項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記熱媒体を前記第2熱媒体とするために冷却する冷却素子を備え、
前記冷却素子の温度は、0℃以上10℃以下である
請求項1からのいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記収容槽は、複数の前記検体容器を収容する構成とされている
請求項1からのいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記検体溶液は、カブトガニ血球抽出物を含む試薬を用いた測定の測定対象であり、
前記熱媒体交換機構によって前記検体溶液の温度を変化させる処理は、前記測定を実行する前に行われる前処理である
請求項1からのいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の処理装置と、
前記検体溶液に対する測定を行う測定装置と、を備える測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置および測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料などの検体を分析するために、検体に含まれる種々の物質を測定することが行われている。このような測定として、カブトガニ血球抽出物を含むライセート試薬を用いた測定が知られている。ライセート試薬を用いることにより、検体溶液中のエンドトキシン量およびβ-グルカン量の測定を行うことができる。エンドトキシンは、グラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖であり、微量でも血中に入ることで、発熱などの生体反応を引き起こす代表的な発熱物質である。検体は、血液などの生体試料の他、生体内に直接導入される医薬品(例えば、注射剤など)などがある。このようなライセート試薬を用いた測定を行う際には、測定に先立って、検体溶液を加熱した後、検体溶液を冷却するといった前処理を行う場合があり、こうした前処理を行う処理装置が知られている。
【0003】
特開平2017-129429号公報には、ライセート試薬としてLAL(Limulus Amebocyte Lysate)試薬を用いて、検体溶液中のエンドトキシン量の測定を行う測定装置が記載されている。また、特開平08-029432号公報には、検体溶液に対して前処理を行う処理装置が記載されている。
【発明の概要】
【0004】
特開平08-029432号公報に記載の処理装置は、ハンドリングロボットによって検体容器を加熱部から冷却部に搬送する搬送機構を備えている。この搬送機構は、加熱部の容器挿入孔に挿入された検体容器をハンドリングロボットによって把持し、ロボットのアームを上方に移動させて容器挿入孔から検体容器を引き抜く。次に、ハンドリングロボットによって冷却部の上部まで検体容器を搬送し、ロボットのアームを下方に移動させて冷却部の容器挿入孔に検体容器を挿入する。
【0005】
しかしながら、特開平08-029432号公報の搬送機構のように、ハンドリングロボットによって検体容器を搬送する場合、搬送中にハンドリングロボットによって把持された検体容器が傾いて、冷却部の容器挿入孔に挿入できなくなるといった搬送不良が生じるおそれがある。また、ハンドリングロボットによって検体容器を1個ずつ搬送する場合、検体容器の数が多いと搬送効率が悪く、処理時間が長時間化するという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本開示の技術は、検体容器を加熱部から冷却部に搬送する際の搬送不良を抑制し、かつ、検体容器の搬送に起因する処理時間の長時間化を抑制することが可能な処理装置およびこの処理装置を備えた測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る処理装置は、検体容器を収容し、かつ、検体容器内の検体溶液の温度を変化させるための流体状の熱媒体を検体容器の周囲に貯留することが可能な収容槽と、収容槽内の熱媒体を交換する熱媒体交換機構であって、検体容器内の検体溶液を第1温度に加熱するための第1熱媒体と、第1温度よりも低い第2温度に検体溶液を冷却するための第2熱媒体とを交換する熱媒体交換機構と、を備える。
【0008】
上記態様の処理装置においては、収容槽には、熱媒体を供給する供給口と、熱媒体を排出する排出口とが設けられており、熱媒体交換機構は、供給口と排出口とに接続された配管を通じて、収容槽内の第1熱媒体または第2熱媒体を循環させてもよい。
【0009】
また、上記態様の処理装置においては、第1熱媒体を供給する第1熱媒体供給部に接続される第1供給路と、第2熱媒体を供給する第2熱媒体供給部に接続される第2供給路と、第1供給路と供給口を連通させる第1状態と、第2供給路と供給口を連通させる第2状態とを切り替える弁と、を備えてもよい。
【0010】
また、上記態様の処理装置においては、熱媒体供給部から供給される熱媒体を供給口に供給する供給路と、供給路上に配置され、供給口に供給される前に熱媒体を第1温度以上に加熱することにより第1熱媒体に変換する第1温度調整部と、供給路上に配置され、供給口に供給される前に熱媒体を第2温度以下に冷却することにより第2熱媒体に変換する第2温度調整部と、を備えてもよい。
【0011】
また、上記態様の処理装置においては、熱媒体は、液体であってもよい。
【0012】
また、上記態様の処理装置においては、収容槽に第1熱媒体が供給されてから予め設定された設定時間が経過した後、前記熱媒体交換機構を制御することにより、収容槽に第2熱媒体を供給させる制御部を備えてもよい。
【0013】
また、上記態様の処理装置においては、熱媒体を第1熱媒体とするために加熱するヒーターを備え、ヒーターの温度は、30℃以上80℃以下であってもよい。なお、ヒーターの温度は、60℃以上80℃以下であってもよい。
【0014】
また、上記態様の処理装置においては、熱媒体を第2熱媒体とするために冷却する冷却素子を備え、冷却素子の温度は、0℃以上10℃以下であってもよい。
【0015】
また、上記態様の処理装置においては、収容槽は、複数の検体容器を収容する構成とされていてもよい。
【0016】
また、上記態様の処理装置においては、検体溶液は、カブトガニ血球抽出物を含む試薬を用いた測定の測定対象であり、熱媒体交換機構によって検体溶液の温度を変化させる処理は、上記測定を実行する前に行われる前処理であってもよい。
【0017】
本開示の一態様に係る測定システムは、上記処理装置と、検体溶液に対する測定を行う測定装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、検体容器を加熱部から冷却部に搬送する際の搬送不良を抑制し、かつ、検体容器の搬送に起因する処理時間の長時間化を抑制することが可能な処理装置およびこの処理装置を備えた測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】測定システムの概要を示す図である。
図2】前処理における検体溶液の温度変化の推移を示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る処理装置の構成を示す概略図である。
図4】収容槽の斜視図である。
図5】収容槽の分解斜視図である。
図6】収容槽の断面図である。
図7】測定装置の構成を示す概略図である。
図8】処理装置における前処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図9】処理装置における加熱時の状態を示す図である。
図10】処理装置における冷却時の状態を示す図である。
図11】第2実施形態に係る処理装置の構成を示す概略図である。
図12】第1温度調整部および第2温度調整部の周辺の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1実施形態」
[測定システムの全体構成]
図1は、本開示の第1実施形態に係る処理装置10を備えた測定システム1の概要を示す図である。図1に示すように、測定システム1は、処理装置10と、測定装置60とを備えている。処理装置10は、生体試料などの検体Aに緩衝液Bを加えて希釈することにより生成した検体溶液Cに対して、エンドトキシン測定を実行する前に行われる前処理を行う。測定装置60は、前処理後の検体溶液Cを測定対象として、エンドトキシン測定を実行する。
【0021】
上述したとおり、エンドトキシンは、微量でも血中に入ることで、発熱などの生体反応を引き起こす代表的な発熱物質であり、検体Aは、血液などの生体試料の他、生体内に直接導入される医薬品(例えば、注射剤など)などである。エンドトキシン測定では、検体溶液C中のエンドトキシン量が測定され、検体A中のエンドトキシンの定量化が行われる。エンドトキシン測定は、カブトガニ血球抽出物を含むライセート試薬Dなどの試薬を用いた測定である。エンドトキシン測定は、エンドトキシンによりカブトガニ血球抽出物の凝集および凝固が起こることを利用した測定である。エンドトキシン測定では、先ず、カブトガニ血球抽出物を含むライセート試薬Dが検体溶液Cに添加される。ライセート試薬Dが添加された検体溶液Cが攪拌されることにより、検体溶液Eが生成される。次に、検体溶液Eの特性の変化に基づいて、検体溶液E中のエンドトキシン量が測定される。
【0022】
ライセート試薬Dの原料となるカブトガニとして、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)の血球抽出物から調製されるライセート試薬は、LAL(Limulus Amebocyte Lysate)試薬と呼ばれる。
【0023】
本実施形態の測定システム1における測定装置60は、ライセート試薬DとしてLAL試薬を使用し、エンドトキシンとの反応によりライセート試薬Dがゲル化する過程での検体溶液Eの濁度変化を指標とする比濁法によりエンドトキシン測定を行う。比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合、測定に先立って検体溶液Cに対して加熱および冷却を行う前処理が必要である。図1に示すとおり、検体溶液Cに対して前処理が行われ、前処理後の検体溶液Cとライセート試薬Dとを含む検体溶液Eに対してエンドトキシン測定が行われる。
【0024】
比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合の前処理は、具体的には、図2のグラフに示すように、先ず、検体Aに緩衝液Bを加えて希釈することにより生成した検体溶液Cを約70℃の温度で約10分間加熱することにより、エンドトキシン測定における干渉因子を不活化する加熱処理を行う。その後、約70°の検体溶液Cを約5℃の温度まで冷却することにより、不活化処理を停止する冷却処理を行う。冷却開始から冷却終了までの冷却処理の時間は例えば約3分間である。冷却処理において、約70°の検体溶液Cを約5℃の温度まで冷却するのに時間がかかると、検体溶液Cに対する不活化処理の時間にバラツキが生じて、エンドトキシン測定の精度が低下する。そのため、前処理において、検体溶液Cの冷却は急激に、具体的には、約70°の検体溶液Cを約5℃の温度まで冷却する時間を短時間で行う必要がある。
【0025】
本実施形態の測定システム1における処理装置10は、検体Aに緩衝液Bを加えて希釈した検体溶液Cに対し、上記前処理を行う装置である。
【0026】
<処理装置>
図3は、処理装置10の構成を示す概略図である。図3に示すように、処理装置10は、収容槽20と、熱媒体交換機構と、制御部11とを備える。収容槽20は、検体容器5を収容し、かつ、検体容器5内の検体溶液Cの温度を変化させるための流体状の熱媒体15を貯留することが可能である。熱媒体交換機構は、収容槽20内の熱媒体を交換する。制御部11は、熱媒体交換機構を制御する。処理装置10に装填される検体容器5は、例えば、外観が円筒形状であり、本体5aと蓋体5bとを備えている。収容槽20に貯留する流体状の熱媒体15としては、例えば純水が用いられる。
【0027】
図4は、収容槽20の斜視図である。図5は、収容槽20の分解斜視図である。図6は、収容槽20の断面図(図4中のVI-VI線断面図)である。なお、図6において、検体容器5は、断面図ではなく、側面図を示している。図4に示すように、収容槽20の上面20aには、検体容器5を挿入するための複数の容器挿入孔20bが形成されている。また、図5に示すように、収容槽20において、長手方向の一方の側面20cには、収容槽20内に熱媒体15を供給する供給口20dが設けられている。収容槽20において、長手方向の他方の側面20eには、収容槽20内から熱媒体15を排出する排出口20fが設けられている。
【0028】
収容槽20は、上面が開口した水槽型の容器本体21と、検体容器5を保持する保持部材22と、容器本体21の開口を封止する蓋体23と、供給口20dの側の配管取付用金具24と、排出口20fの側の配管取付用金具25と、を備えている。
【0029】
容器本体21において、長手方向の一方の側面21cには供給口20dが形成されており、他方の側面21eには排出口20fが形成されている。本実施形態において、容器本体21は、ポリフタルアミドにより構成されている。容器本体21は、ポリフタルアミド(PPA)またはポリフェニレンエーテル(PPE)などの、耐熱性および断熱性が高く、また熱媒体に対する耐薬性が高く、さらに熱容量の小さい樹脂材料により構成することが好ましい。
【0030】
保持部材22は、平板状の台座部22aと、台座部22a上に設けられた複数の筒状の容器挿入部22bとが、一体的に形成された形状である。保持部材22は、容器本体21の内部に収容される。本実施形態において、保持部材22は、アルミにより構成されている。保持部材22としては、アルミなどの、熱伝導性に優れ、さびにくく、かつ安価で加工性が高い金属材量により構成することが好ましい。
【0031】
蓋体23には、複数の容器挿入孔20bの挿入口23aが形成されている。収容槽20を組み上げた際に、蓋体23の挿入口23aと保持部材22の容器挿入部22bの内部とが連通して、容器挿入孔20bが形成される。本実施形態において、蓋体23は、容器本体21と同様に、ポリフタルアミドにより構成されている。蓋体23としては、ポリフタルアミド(PPA)またはポリフェニレンエーテル(PPE)などの、耐熱性および断熱性が高く、かつ熱媒体に対する耐薬性が高く、さらに熱容量の小さい樹脂材料により構成することが好ましい。
【0032】
容器挿入孔20bの内径は、検体容器5の外径よりもわずかに大きく形成されているが、ほぼ同径である。そのため、検体容器5を容器挿入孔20bに挿入した際には、検体容器5は容器挿入孔20b内において傾くことなく保持される。
【0033】
本実施形態の処理装置10の収容槽20においては、10個の容器挿入孔20bが一列に並べて配置されている。処理装置10は、最大10個までの検体容器5を装填し、同時に前処理を行うことが可能である。
【0034】
配管取付用金具24は、配管装着部およびボルト結合部が形成された金具本体24aと、ボルト24bと、を備えている。配管取付用金具24は、容器本体21の外側から金具本体24aのボルト結合部を供給口20dに挿入し、かつ、容器本体21の内側から金具本体24aに対してボルト24bを結合させることにより、容器本体21に取り付けられている。配管取付用金具24は、貫通孔を有しており、配管取付用金具24が容器本体21に取り付けられた状態では、配管取付用金具24の貫通孔が供給口20dとして機能する(図6も参照)。
【0035】
配管取付用金具25も同様に、配管装着部およびボルト結合部が形成された金具本体25aと、ボルト25bと、を備えている。配管取付用金具25は、容器本体21の外側から金具本体25aのボルト結合部を排出口20fに挿入し、かつ、容器本体21の内側から金具本体25aに対してボルト25bを結合させることにより、容器本体21に取り付けられている。配管取付用金具25は、貫通孔を有しており、配管取付用金具25が容器本体21に取り付けられた状態では、配管取付用金具25の貫通孔が排出口20fとして機能する(図6も参照)。
【0036】
図3に戻り、熱媒体交換機構は、第1熱媒体供給部30、第1供給路40、第1排出路44、第2熱媒体供給部31、第2供給路41、および第2排出路45を備えている。収容槽20、第1熱媒体供給部30、第1供給路40および第1排出路44は、第1熱媒体15aの循環路を構成する。第1熱媒体供給部30は、第1供給路40を通じて収容槽20に対して、第1熱媒体15aを供給する。第1熱媒体15aは、収容槽20内の検体容器5に収容された検体溶液Cを第1温度に加熱する。収容槽20に供給された第1熱媒体15aは第1排出路44を通じて収容槽20から排出され、第1排出路44を通じて第1熱媒体供給部30に回収される。
【0037】
収容槽20、第2熱媒体供給部31、第2供給路41および第2排出路45は、第2熱媒体15bの循環路を構成する。第2熱媒体供給部31は、第2供給路41を通じて収容槽20に対して、第2熱媒体15bを供給する。第2熱媒体15bは、収容槽20内の検体容器5に収容された検体溶液Cを、第1温度に加熱された状態から第2温度に冷却する。収容槽20に供給された第2熱媒体15bは第2排出路45を通じて収容槽20から排出され、第2排出路45を通じて第2熱媒体供給部31に回収される。
【0038】
第1供給路40および第2供給路41は、弁32および共通供給路42を介して収容槽20の供給口20dに接続されている。弁32は、第1供給路40と供給口20dを連通させる第1状態と第2供給路41と供給口20dを連通させる第2状態とを切り替える。第1状態では、収容槽20に対する第1熱媒体15aの供給が行われ、第2状態では、収容槽20に対する第2熱媒体15bの供給が行われる。
【0039】
第1排出路44および第2排出路45は、弁33および共通排出路43を介して収容槽20の排出口20fに接続されている。弁33は、第1排出路44と排出口20fを連通させる第1状態と第2排出路45と排出口20fを連通させる第2状態とを切り替える。
【0040】
第1熱媒体供給部30は、熱媒体15aを貯留する貯留部30aと、貯留部30aに貯留されている熱媒体15を第1熱媒体15aとするために加熱するヒーター30bと、ポンプ30dと、貯留部30aの排出口とポンプ30dの供給口とを接続する配管30cと、を備えている。
【0041】
比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合の検体溶液Cに対する前処理としては、30℃以上80℃以下で加熱することが好ましい。そのため、ヒーター30bの温度は、30℃以上80℃以下に設定可能である。なお、ヒーター30bの温度は、60℃以上80℃以下とすることがより好ましい。本実施形態では、制御部11からの制御に基づいて、ヒーター30bの温度は、70℃(第1温度の一例)に設定される。
【0042】
第1供給路40は、ポンプ30dの排出口と弁32の接続口32aとを接続する配管により構成されている。
【0043】
第1排出路44は、弁33の接続口33aと第1熱媒体供給部30の供給口とを接続する配管により構成されている。
【0044】
第2熱媒体供給部31は、熱媒体15を貯留する貯留部31aと、貯留部31aに貯留されている熱媒体15を第2熱媒体15bとするために冷却する冷却素子31bと、ポンプ31dと、貯留部31aの排出口とポンプ31dの供給口とを接続する配管31cと、を備えている。
【0045】
比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合の検体溶液Cに対する前処理としては、0℃以上10℃以下で冷却することが好ましい。そのため、冷却素子31bの温度は、0℃以上10℃以下に設定可能である。本実施形態では、制御部11からの制御に基づいて、冷却素子31bの温度は、5℃(第2温度の一例)に設定される。冷却素子31bとしては、ペルチェ素子を用いる。
【0046】
第2供給路41は、ポンプ31dの排出口と弁32の接続口32bとを接続する配管により構成されている。
【0047】
第2排出路45は、弁33の接続口33bと第2熱媒体供給部31の供給口とを接続する配管により構成されている。
【0048】
弁32は、三方弁であり、第1供給路40が接続される接続口32aと、第2供給路41が接続される接続口32bと、弁32と供給口20dとを接続する共通供給路42が接続される接続口32cと、を備える。弁32は、制御部11からの制御に基づいて、第1供給路40と供給口20dを連通させる第1状態と、第2供給路41と供給口20dを連通させる第2状態とを切り替え可能に構成されている。第1状態では、接続口32aと接続口32cとが内部で連通する。第2状態では、接続口32bと接続口32cとが内部で連通する。共通供給路42は、接続口32cと供給口20dとを接続する配管により構成されている。
【0049】
弁33は、三方弁であり、第1排出路44が接続される接続口33aと、第2排出路45が接続される接続口33bと、弁33と排出口20fとを接続する共通排出路43が接続される接続口33cと、を備える。弁33は、制御部11からの制御に基づいて、第1排出路44と排出口20fを連通させる第1状態と、第2排出路45と排出口20fを連通させる第2状態とを切り替え可能に構成されている。第1状態では、接続口33aと接続口33cとが内部で連通する。第2状態では、接続口33bと接続口33cとが内部で連通する。共通排出路43は、排出口20fと接続口33cとを接続する配管により構成されている。
【0050】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)11aと、メモリ11bと、制御用プログラムが格納されたストレージ11cと、を備えている。メモリ11bは、CPU11aが制御用プログラムを実行する際に使用するワークメモリであり、例えば揮発性メモリが使用される。ストレージ11cは、種々のデータを格納するための不揮発性メモリであり、フラッシュメモリなどが使用される。制御部11は、制御用プログラムを実行することにより、ヒーター30b、ポンプ30d、冷却素子31b、ポンプ31d、弁32、および弁33の各部を制御する制御部として機能する。
【0051】
<測定装置>
図7は、測定装置60の構成を示す概略図である。図7に示すように、測定装置60は、検体容器5に対して測定光を照射するLED(Light Emitting Diode)61と、検体容器5を挟んでLED61と対向する位置に配されたPD(Photodiode)62と、測定制御部63と、を備える。測定制御部63は、PD62の検出結果に基づいて検体溶液E中のエンドトキシン量の測定を行う。また、測定制御部63は、LED61およびPD62を制御する。検体容器5内には、前処理後の検体溶液Cとライセート試薬Dとが混合された検体溶液Eが収容される。
【0052】
測定制御部63は、CPU(Central Processing Unit)63aと、メモリ63bと、測定制御用プログラムが格納されたストレージ63cと、を備えている。メモリ63bは、CPU63aが測定制御用プログラムを実行する際に使用するワークメモリであり、例えば揮発性メモリが使用される。ストレージ63cは、種々のデータを格納するための不揮発性メモリであり、フラッシュメモリなどが使用される。測定制御部63は、測定制御用プログラムを実行することにより、LED61およびPD62の各部を制御する制御部として機能する。また、測定制御部63は、測定制御用プログラムを実行することにより、PD62の検出結果に基づいて検体溶液E中のエンドトキシン量の測定を行う測定部として機能する。
【0053】
測定装置60におけるエンドトキシン測定の手法としては、上述のとおり比濁法が用いられる。比濁法は、エンドトキシンの作用によりライセート試薬Dがゲル化する過程での濁度変化を指標とする手法である。検体溶液E中のエンドトキシンの量と、前処理後の検体溶液Cに対してライセート試薬Dを添加してからの経過時間とに応じて、検体溶液Eの濁度に変化が生じる。検体溶液Eの濁度が変化すると、検体溶液Eを透過する測定光の光量が変化するため、PD62により透過光量の経時変化を測定することにより、検体溶液Eの濁度の状態および推移を測定することができる。測定制御部63は、検体溶液Eの濁度の状態および推移に基づいて、検体溶液E中のエンドトキシン量の演算を行う。
【0054】
[前処理の流れ]
図8は、処理装置10における前処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0055】
まず、検体Aに緩衝液Bを加えて希釈することにより検体溶液Cが生成される。生成された検体溶液Cが収容された検体容器5は、収容槽20の容器挿入孔20bに挿入される。この後、制御部11は、第1熱媒体15aを収容槽20内に供給を開始し、第1熱媒体15aの循環を開始させる(ステップS1)。詳細には、制御部11は、弁32に対して、第1供給路40と供給口20dを連通させる第1状態に切り替える制御を行う。また、弁33に対して、第1排出路44と排出口20fを連通させる第1状態に切り替える制御を行う。次に、制御部11は、ポンプ30dを駆動し、図9中に矢印で示すように、第1熱媒体供給部30内の第1熱媒体15aを、第1供給路40および第1排出路44を通じて収容槽20内に循環させる制御を行う。
【0056】
次に、制御部11は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を開始してから10分が経過したか否かの判定を行う(ステップS2)。ステップS2において、10分が経過していないと判定された場合(判定結果No)、制御部11は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を継続する。
【0057】
ステップS2において、10分が経過したと判定された場合(判定結果Yes)、制御部11は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を停止し、第2熱媒体15bを収容槽20内に循環させる(ステップS3)。詳細には、制御部11は、弁32に対して、第2供給路41と供給口20dを連通させる第2状態に切り替える制御を行う。また、弁33に対して、第2排出路45と排出口20fを連通させる第2状態に切り替える制御を行う。次に、制御部11は、ポンプ31dを駆動し、図10中に矢印で示すように、第2熱媒体供給部31内の第2熱媒体15bを、第2供給路41および第2排出路45を通じて収容槽20内に循環させる制御を行う。
【0058】
次に、制御部11は、収容槽20内への第2熱媒体15bの循環を開始してから3分が経過したか否かの判定を行う(ステップS4)。ステップS4において、3分が経過していないと判定された場合(判定結果No)、制御部11は、収容槽20内への第2熱媒体15bの循環を継続する。
【0059】
ステップS4において、3分が経過したと判定された場合(判定結果Yes)、制御部11は、収容槽20内への第2熱媒体15aの循環を停止する制御を行い、処理を終了する。
【0060】
[作用効果]
本実施形態の処理装置10は、以上で説明したように、検体容器5を収容し、かつ、検体容器5内の検体溶液Cの温度を変化させるための流体状の熱媒体15を検体容器5の周囲に貯留することが可能な収容槽20と、収容槽20内の熱媒体15を交換する熱媒体交換機構であって、検体容器5内の検体溶液Cを第1温度に加熱するための第1熱媒体15aと、第1温度よりも低い第2温度に検体溶液Cを冷却するための第2熱媒体15bとを交換する熱媒体交換機構と、を備える。
【0061】
このような構成とすることにより、検体容器5を収容槽20に装填したまま、検体容器5内の検体溶液Cに対して加熱と冷却の両方を行うことができる。これにより、加熱部と冷却部が個別に設けられている従来の処理装置のように、検体容器を加熱部から冷却部まで搬送するハンドリングロボットのような搬送機構を設ける必要がなくなるため、検体容器の搬送不良の問題を解消することができる。
【0062】
また、収容槽20に複数の検体容器5を装填した場合でも、複数の検体容器5を移動させることなく、加熱と冷却の両方を行うことができる。そのため、従来の処理装置のように、ハンドリングロボットによって検体容器を1個ずつ搬送する場合と比較して、処理時間を短縮することができる。
【0063】
また、本実施形態の処理装置10においては、収容槽20には、熱媒体15を供給する供給口20dと、熱媒体15を排出する排出口20fとが設けられており、熱媒体交換機構は、供給口20dと排出口20fとに接続された配管を通じて、収容槽20内の第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを循環させるように構成されている。
【0064】
第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを循環させることにより、収容槽20から排出された第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを設定温度に復帰させやすく、収容槽20に対して供給する第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを設定温度に維持しやすい。そのため、第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを循環させない場合と比べて、加熱または冷却を迅速に行いやすい。
【0065】
また、本実施形態の処理装置10は、第1熱媒体15aを供給する第1熱媒体供給部30に接続される第1供給路と、第2熱媒体15bを供給する第2熱媒体供給部31に接続される第2供給路と、第1供給路と供給口20dを連通させる第1状態と、第2供給路と供給口20dを連通させる第2状態とを切り替える弁32と、を備える。
【0066】
このように弁32を設けることで、温度が異なる第1熱媒体15aと第2熱媒体16bの供給路を区別することができる。供給路を区別すると、本例で示したように、第1熱媒体供給部30と、第2熱媒体供給部31とを別々に設けることができる。そのため、第1熱媒体15aと第2熱媒体15bとを個別に用意し、いずれかを選択的に収容槽20内に供給する構成となるため、安定した温度の第1熱媒体15aまたは第2熱媒体15bを供給することができる。
【0067】
また、熱媒体15として、気体と比較して比熱が大きい液体を用いると次のような効果がある。熱媒体15は、比熱が大きい方が温まりにくく冷めにくい。検体溶液Cを加熱する場合において、比熱が大きい(すなわち、冷めにくい)熱媒体15を用いて加熱する方が、相対的に比熱が小さい(すなわち、冷めやすい)熱媒体15を用いる場合と比べて、熱媒体15が加熱された状態が維持されることになるため、検体溶液Cを迅速に加熱することができる。検体溶液Cを冷却する場合も、比熱が大きい(すなわち、温まりにくい)熱媒体15を用いれば、相対的に比熱が小さい(すなわち、温まりやすい)熱媒体15を用いる場合と比べて、熱媒体15が冷却された状態が維持されることになるため、検体溶液Cを迅速に冷却することができる。
【0068】
また、本実施形態の処理装置10においては、熱媒体15として純水を用いている。純水は、不純物が少なく腐食しづらいため、上記の効果に加えて、熱媒体交換機構の配管の詰まりの防止にも寄与する。
【0069】
また、収容槽20に第1熱媒体15aが供給されてから予め設定された設定時間が経過した後、熱媒体交換機構を制御することにより、収容槽20に第2熱媒体15bを供給させる制御部11を備えることにより、前処理の自動化を行うことができる。
【0070】
また、熱媒体15を第1熱媒体15aとするために加熱するヒーター30bを備え、このヒーター30bの温度を30℃以上80℃以下に設定することにより、比濁法によるエンドトキシン測定用の前処理に適した加熱処理を行うことができる。なお、ヒーター30bの温度を60℃以上80℃以下に設定することにより、加熱処理をより効率的に行うことができる。
【0071】
また、熱媒体15を第2熱媒体15bとするために冷却する冷却素子31bを備え、この冷却素子31bの温度を0℃以上10℃以下に設定することにより、比濁法によるエンドトキシン測定用の前処理に適した冷却処理を行うことができる。
【0072】
「第2実施形態」
上記測定システム1は、処理装置10について、第2実施形態に係る処理装置10Bに変更することができる。なお、処理装置10B以外の構成については、第1実施形態と同じであるため、処理装置10B以外の説明は省略する。
【0073】
<処理装置>
図11は、第2実施形態に係る処理装置10Bの構成を示す概略図である。図11に示すように、処理装置10Bは、検体容器5を収容し、かつ、検体容器5内の検体溶液Cの温度を変化させるための流体状の熱媒体15を貯留することが可能な収容槽20と、収容槽20内の熱媒体を交換する熱媒体交換機構と、熱媒体交換機構を制御する制御部12と、を備える。
【0074】
収容槽20は、第1実施形態に係る処理装置10と同じであるため、説明は省略する。
【0075】
熱媒体交換機構は、熱媒体供給部34と、熱媒体供給部34から供給される熱媒体15を収容槽20の供給口20dに供給する供給路46と、供給路46上に配置され、供給口20dに供給される前に熱媒体15を第1温度以上に加熱することにより第1熱媒体15aに変換する第1温度調整部35と、供給路46上に配置され、供給口20dに供給される前に熱媒体15を第2温度以下に冷却することにより第2熱媒体15bに変換する第2温度調整部36と、収容槽20から排出される熱媒体15を熱媒体供給部34に戻すための排出路47と、を備えている。
【0076】
熱媒体供給部34は、熱媒体15を貯留する貯留部34aと、ポンプ34cと、貯留部34aの排出口とポンプ34cの供給口とを接続する配管34bと、を備えている。
【0077】
供給路46は、ポンプ34cの排出口と収容槽20の供給口20dとを接続する配管により構成されている。
【0078】
第1温度調整部35は、ヒーターを備えている。比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合の検体溶液Cに対する前処理としては、60℃以上80℃以下で加熱することが好ましい。本実施形態では、第1熱媒体15aの温度を70℃とする。制御部12からの制御に基づいて、ヒーターの温度は、供給路46の第1温度調整部35の取り付け位置を通過する熱媒体15の温度が70℃となるように設定される。
【0079】
第2温度調整部36は、冷却素子であるペルチェ素子を備えている。比濁法によりエンドトキシン測定を行う場合の検体溶液Cに対する前処理としては、0℃以上10℃以下で冷却することが好ましい。本実施形態では、第2熱媒体15bの温度を5℃とする。制御部12からの制御に基づいて、冷却素子の温度は、供給路46の第2温度調整部36の取り付け位置を通過する熱媒体15の温度が5℃となるように設定される。
【0080】
排出路47は、収容槽20の排出口20fと貯留部34aの供給口とを接続する配管により構成されている。
【0081】
図12は、第1温度調整部35および第2温度調整部36の周辺の構造を示す断面図である。図12に示すように、第1温度調整部35は、供給路46に密着するように取り付けられており、供給路46内の第1温度調整部35の取り付け位置を通過する熱媒体15を瞬時に第1熱媒体15aに変換する。供給路46の断面形状は、例えば、紙面と平行な方向の厚みが薄く、厚みに対して紙面と直交する方向の奥行が長い扁平な形状をしている。第1温度調整部35は、供給路46との接触面積が大きくなるように、供給路46の奥行方向に延びている。このため、第1温度調整部35の取り付け位置を通過する単位時間当たりの熱媒体15の量が少ないため、熱媒体15を瞬時に加熱することができる。
【0082】
また、第2温度調整部36も第1温度調整部35と同様に、供給路46内の第2温度調整部36の取り付け位置を通過する熱媒体15を瞬時に第2熱媒体15bに変換する。第2温度調整部36も第1温度調整部35と同様に、供給路46に密着するように取り付けられており、供給路46との接触面積が大きくなるように、供給路46の奥行方向に延びている。これにより、第2温度調整部36の取り付け位置を通過する単位時間当たりの熱媒体15の量が少ないため、熱媒体15を瞬時に冷却することができる。
【0083】
図11に戻り、制御部12は、CPU(Central Processing Unit)12aと、メモリ12bと、制御用プログラムが格納されたストレージ12cと、を備えている。制御部12は、制御用プログラムを実行することにより、ポンプ34c、第1温度調整部35、および第2温度調整部36の各部を制御する制御部として機能する。
【0084】
[前処理の流れ]
図8(第1実施形態と共通)は、処理装置10Bにおける前処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0085】
検体Aに緩衝液Bを加えて希釈することにより生成した検体溶液Cが収容された検体容器5が、収容槽20の容器挿入孔20bに挿入された後、制御部12は、第1熱媒体15aを収容槽20内に循環させる(ステップS1)。詳細には、制御部12は、ポンプ34cおよび第1温度調整部35を駆動して、供給路46内を通過する熱媒体15を第1熱媒体15aに変換し、図11中に矢印で示すように、第1熱媒体15aを収容槽20内に循環させる制御を行う。
【0086】
次に、制御部12は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を開始してから10分が経過したか判定を行う(ステップS2)。ステップS2において、10分が経過していないと判定された場合(判定結果No)、制御部12は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を継続する。
【0087】
ステップS2において、10分が経過したと判定された場合(判定結果Yes)、制御部12は、収容槽20内への第1熱媒体15aの循環を停止し、第2熱媒体15bを収容槽20内に循環させる(ステップS3)。詳細には、制御部12は、ポンプ34cを駆動したまま、第1温度調整部35の駆動を停止するとともに第2温度調整部36を駆動して、供給路46内を通過する熱媒体15を第2熱媒体15bに変換し、図11中に矢印で示すように、第2熱媒体15bを収容槽20内に循環させる制御を行う。
【0088】
次に、制御部12は、収容槽20内への第2熱媒体15bの循環を開始してから3分が経過したか判定を行う(ステップS4)。ステップS4において、3分が経過していないと判定された場合(判定結果No)、制御部12は、収容槽20内への第2熱媒体15bの循環を継続する。
【0089】
ステップS4において、3分が経過したと判定された場合(判定結果Yes)、制御部12は、収容槽20内への第2熱媒体15aの循環を停止する制御を行い、処理を終了する。
【0090】
[作用効果]
本実施形態の処理装置10Bにおいても、第1実施形態の処理装置10と同様に、検体容器の搬送不良の問題を解消することができるとともに、処理時間を短縮することができる。
【0091】
また、本実施形態の処理装置10Bは、以上で説明したように、熱媒体供給部34から供給される熱媒体15を供給口20dに供給する供給路46と、供給路46上に配置され、供給口20dに供給される前に熱媒体15を第1温度以上に加熱することにより第1熱媒体15aに変換する第1温度調整部35と、供給路46上に配置され、供給口20dに供給される前に熱媒体15を第2温度以下に冷却することにより第2熱媒体15bに変換する第2温度調整部36と、を備える。
【0092】
このような構成とすることにより、熱媒体を貯留する貯留部が1つで済むため、熱媒体交換機構の容積を低減させることができ、さらに配管の構成を簡素化することができる。
【0093】
[変形例]
上記実施形態は、一例であり、以下に示すように種々の変形が可能である。
【0094】
例えば、エンドトキシン測定に用いるライセート試薬としては、LAL試薬に限らず、アメリカカブトガニとは別種のカブトガニ(Tachypleus tridentatus)の血球抽出物から調製されるTAL(Tachypleus Amebocyte Lysate)試薬を用いてもよい。
【0095】
また、エンドトキシン試験の手法としては、上記実施形態で説明した比濁法に限らず、エンドトキシンの作用によるライセート試薬のゲル形成を指標とするゲル化法、または、合成基質の加水分解による発色を指標にする比色法を用いてもよい。
【0096】
また、カブトガニ血球抽出物を含む試薬を用いた測定は、エンドトキシンに限らず、β-グルカンでもよい。
【0097】
また、本開示の処理装置として、カブトガニ血球抽出物を含む試薬を用いた測定の前処理を行う処理装置を例に説明したが、他の試薬を用いた測定の前処理を行う処理装置に適用してもよい。
【0098】
また、検体溶液に対する前処理は、上記実施形態で説明した、10分加熱後に3分冷却する処理に限らず、検体溶液に対して行う測定に合わせて、適宜変更してもよい。
【0099】
また、処理装置で行う検体溶液への温度調整処理は、測定に先だって行われる前処理に限らず、どのような用途であってもよい。
【0100】
また、熱媒体は、純水に限らず、不凍液を用いてもよい。熱媒体として不凍液を用いた場合には、0℃に近い温度でも熱媒体が凍らずに熱媒体交換機構内を循環させることができるため、検体溶液の冷却をより迅速に行うことができる。また、熱媒体は、液体に限らず、流体であればどのようなものを用いてもよい。
【0101】
また、上記実施形態において、例えば、制御部11,12および測定制御部63等の各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)に加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0102】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0103】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0104】
なお、以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識などに関する説明は省略されている。
【0105】
2020年1月22日に出願された日本出願特願2020-008729の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12