(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】施錠ハンドル
(51)【国際特許分類】
E05C 3/04 20060101AFI20231201BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
E05C3/04 J
E05B65/08 P
(21)【出願番号】P 2022012845
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 正太
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-324290(JP,A)
【文献】特開2021-95771(JP,A)
【文献】特開平6-108709(JP,A)
【文献】特開平11-256891(JP,A)
【文献】登録実用新案第3177232(JP,U)
【文献】特表2004-522031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向に延びるハンドル本体を備え、
前記ハンドル本体は、
第1樹脂材を用いて成形された一次成形部と、
第2樹脂材を用いて成形され、前記一次成形部の外側に設けられた二次成形部と、を有し、
前記一次成形部における前記長軸方向と直交する第一方向の厚さは、前記長軸方向の一方側に向かうにしたがって次第に薄くなっている施錠ハンドル。
【請求項2】
前記ハンドル本体から前記長軸方向及び前記第一方向と直交する第二方向の一方側に突出する回転軸を備え、
前記一次成形部における前記第一方向の厚さは、前記長軸方向に沿って前記回転軸から離れるにしたがって次第に薄くなっている請求項1に記載の施錠ハンドル。
【請求項3】
前記二次成形部における前記第一方向の厚さは、前記長軸方向の一方側に向かうにしたがって次第に厚くなっている請求項1または2に記載の施錠ハンドル。
【請求項4】
前記第1樹脂材は、ガラス強化材を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の施錠ハンドル。
【請求項5】
前記第2樹脂材は、前記第1樹脂材よりも少ない添加量の前記ガラス強化材を含む
請求項4に記載の施錠ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、施錠ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
施錠ハンドルを操作して施錠を行う錠装置として、特許文献1にはクレセント錠が開示されている。特許文献1に開示された施錠ハンドルは、回転軸部を軸として回転する。特許文献1に開示された施錠ハンドルは、棒状の樹脂成形品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施錠ハンドルが単一の樹脂で成形された場合、厚肉部の表面においてヒケ等の成形不良が生じやすい。樹脂成形品において厚肉部の存在を解消するためには、肉抜き部を設けることによって肉厚を均一にすることが行われている。施錠ハンドルにおいて肉抜き部を設けた場合には、意匠性が低下する。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、意匠性が向上する施錠ハンドルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る施錠ハンドルは、長軸方向に延びるハンドル本体を備え、前記ハンドル本体は、第1樹脂材を用いて成形された一次成形部と、第2樹脂材を用いて成形され、前記一次成形部の外側に設けられた二次成形部と、を有し、前記一次成形部における前記長軸方向と直交する直交方向の厚さは、前記長軸方向の一方側に向かうにしたがって次第に薄くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の施錠ハンドルを有する錠装置の正面図である。
【
図2】本開示の施錠ハンドルを有する錠装置の斜視図である。
【
図3】スプーン側から見た施錠ハンドルの分解斜視図である。
【
図4】軸を含む位置におけるY方向と直交する施錠ハンドルの断面図である。
【
図8】中心軸を含む位置のY方向と直交するハンドル本体の断面図である。
【
図9】中心軸を含む位置のX方向と直交するハンドル本体の断面図である。
【
図10】一次成形部を成形する一次金型の断面図である。
【
図11】二次成形部を成形する二次金型の断面図である。
【
図12】軸部材の+Z側端部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の施錠ハンドル及び施錠ハンドルの製造方法の実施の形態を、
図1から
図12を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、本開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0009】
図1に示すように、錠装置1は、引違いサッシにおける内障子の召し合わせ框2に取り付けられる。錠装置1は、二つの取付ねじ3を用い召し合わせ框2に対してねじ止めしたときに固定される。錠装置1は、クレセント錠である。
【0010】
錠装置1は、クレセント本体10と台座部20とを有する。台座部20は、取付ねじ3を用いて召し合わせ框2に固定される。
図2に示すように、クレセント本体10は、施錠ハンドル11とスプーン12とを有する。施錠ハンドル11は、ハンドル本体13と回転軸14(
図1参照)とを有する。
図3に示すように、ハンドル本体13は、長軸方向に延びている。回転軸14は、長軸方向と直交する軸J方向に延びている。回転軸14は、ハンドル本体13から軸J方向の一方側に突出する。施錠ハンドル11は、回転軸14をインサート部材としたインサート成形を用いて、回転軸14とハンドル本体13とが一体成形された成形体である。
【0011】
図面においては、ハンドル本体13が延びる長軸方向をX方向とし、回転軸14が延びる軸J方向をZ方向とし、X方向とZ方向とに直交しハンドル本体13の幅方向をY方向として説明する。X方向のうち、ハンドル本体13において回転軸14が配置される側を-X側とする。Z方向のうち、ハンドル本体13に対して回転軸14が突出する側を-Z側とする。+X側は、請求項の長軸方向の一方側に対応する。幅方向のY方向は、請求項の第一方向に対応する。-Z側は、請求項の第二方向の一方側に対応する。
【0012】
スプーン12は、サッシにおける外障子のフックに係合したときに、内障子と外障子とを連結する。スプーン12は、フックに係合したときに、サッシを閉じた状態に保持する。スプーン12は、貫通孔12Aと貫通孔12Bとを有する。貫通孔12Aは、Z方向に見て軸Jを中心とする円形でありZ方向に貫通する。貫通孔12Aには、回転軸14の先端側が挿通される。貫通孔12Bは、Z方向に見て軸Jを中心とする円弧状でありZ方向に貫通する。貫通孔12Bには、ハンドル本体13における突部13Aが挿入される。貫通孔12Bに挿入された突部13Aは、軸Jを中心とする周方向に嵌め合わせられる。突部13Aが貫通孔12Bに嵌め合わせられたときに、スプーン12はハンドル本体13に周方向に固定される。
【0013】
回転軸14は、台座部20(
図1参照)に対して軸Jを中心として回転自在に支持されている。ハンドル本体13は、回転軸14を中心として台座部20に対して回転する。ハンドル本体13を操作して、ハンドル本体13が回転軸14を中心として回転したときに、スプーン12はハンドル本体13と一体的に回転する。スプーン12は、回転軸14を中心として回転したときに、サッシにおける外障子のフックに係合する。スプーン12は、サッシにおける外障子のフックに係合したときに、内障子と外障子とを連結する。スプーン12は、フックに係合したときに、サッシを閉じた状態に保持する。ハンドル本体13を操作することで、サッシが閉じた施錠状態と、サッシが開いた解錠状態とを切り替えることができる。
【0014】
ハンドル本体13は、一次成形部30と二次成形部40と凹部50と突起60とを有する。一次成形部30は、第1樹脂材を用いて成形されている。
図4に示すように、一次成形部30は、回転軸14と一体的に成形された一次成形体を構成する。一次成形部30は、回転軸14をインサート部材としたインサート成形を用いて成形されたときに、回転軸14と一体成形された一次成形体を構成する。回転軸14は、一次成形部30における-X側の端部の近くに配置されている。突部13Aは、一次成形部30において回転軸14の+X側に隣り合って配置されている。
【0015】
施錠ハンドル11は、回転軸領域31と操作領域32とを有している。回転軸領域31は、回転軸14が設けられた領域である。回転軸領域31は、回転軸14に加えて、スプーン12及びスプーン12の回転に関する機能部品が配置される領域である。一次成形部30は、回転軸14が設けられた回転軸領域31において、-Z側に臨んで露出している。操作領域32は、施錠操作及び解錠操作が行われる領域である。操作領域32は、回転軸領域31から+X側に長軸方向に離れて配置されている。
【0016】
二次成形部40は、第2樹脂材を用いて成形されている。二次成形部40は、一次成形部30の外側に設けられている。二次成形部40は、一次成形部30における特定領域を全周に亘って覆う。二次成形部40は、一次成形部30における操作領域32を全周に亘って覆う。二次成形部40は、回転軸14及び一次成形部30を含む一次成形体と一体的に成形された二次成形体を構成する。二次成形体は、施錠ハンドル11である。二次成形部40は、一次成形体をインサート部材としたインサート成形を用いて成形されたときに、一次成形体と一体成形された二次成形体を構成する。
【0017】
第1樹脂材と第2樹脂材とは、同一種の樹脂材であってもよいし、異種の樹脂材であってもよい。第1樹脂材と第2樹脂材とは、同一種の樹脂材を用い添加剤が異なってもよいし、添加剤の添加量が異なる樹脂材であってもよい。第1樹脂材と第2樹脂材とが同一種の樹脂材を用いる場合には、一次成形部30を射出成形する際の成形条件と二次成形部40を射出成形する際の成形条件の設定を容易化できる。第1樹脂材と第2樹脂材とが同一種の樹脂材を用いる場合には、一次成形部30と二次成形部40における線膨張係数の差を小さくできる。一次成形部30と二次成形部40における線膨張係数の差を小さくすることによって、線膨張係数の差に起因して二次成形部40が一次成形部30から剥離することを抑制できる。第1樹脂材及び第2樹脂材は、例えば、ポリアミド樹脂、ナイロン等の合成樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
添加剤としては、機械的強度を確保するために強化材を用いることが好ましい。強化材としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、炭酸カルシウム等を用いることができる。機械強度及び入手性の観点から、強化材としてはガラス繊維が好ましい。強化材としてガラス繊維を用いる場合、施錠ハンドル11の母材となる一次成形部30は、添加量を多くすることが好ましい。ガラス繊維の添加量が多い場合には、ガラス繊維が毛羽立ち意匠性が低下するとともに、耐候性が低下する。表面に露出して意匠面となる二次成形部40は、一次成形部30におけるガラス繊維の添加量よりも少ないことが好ましい。
【0019】
一次成形部30は、ガラス強化材としてガラス繊維を50%含有するナイロンで形成されている。二次成形部40は、ガラス強化材としてガラス繊維を30%含有するナイロンで形成されている。一次成形部30がガラス繊維を50%含有するナイロンで形成され、二次成形部40がガラス繊維を30%含有するナイロンで形成されることによって、高い機械強度を有し意匠性及び耐候性に優れたハンドル本体13が得られる。
【0020】
図5に示すように、一次成形部30におけるY方向の厚さは、+X側に向かうにしたがって次第に薄くなっている。一次成形部30におけるY方向の厚さは、Y方向に沿って回転軸14から離れるにしたがって次第に薄くなっている。厚さt1よりも、厚さt2の方が薄い。一次成形部30におけるY方向を向く両面は、XZ方向に沿う面から0.5度傾斜している。
【0021】
二次成形部40におけるY方向の厚さは、+X側に向かうにしたがって次第に厚くなっている。厚さt11よりも、厚さt12の方が厚い。
【0022】
図4に示すように、一次成形部30における+Z側を向く面30aは、+X側に向かうにしたがって次第に-Z側にわずかに傾斜している。一次成形部30の面30aの外側に設けられた二次成形部40のZ方向の厚さは、+X側に向かうにしたがって次第に厚くなっている。厚さt21よりも、厚さt22の方が厚い。これによって、二次成形時に、一次成形部30が上方に浮き上がることが抑制される。
【0023】
凹部50は、回転軸14から+X側に離れて位置し軸J方向に延びる中心軸Cを中心として設けられている。凹部50は、ハンドル本体13における-Z側の第1端面41から+Z側に窪んでいる。第1端面41は、二次成形部40の端面である。
図6に示すように、凹部50は、ハンドル本体13におけるY方向の中央に配置されている。凹部50は、台座部20に対して、ハンドル本体13が二点鎖線で示す施錠位置のとき及び実線で示す解錠位置のときのそれぞれにおいて台座部20と対向する位置に配置されている。施錠位置及び解錠位置のときのそれぞれにおいて凹部50が台座部20と対向する位置に配置されることによって、施錠位置及び解錠位置のときのそれぞれにおいて凹部50が視認されることを抑制できる。凹部50の存在に起因する意匠性の低下は、抑制される。
【0024】
図7、
図8及び
図9に示すように、凹部50は、空洞51と第1窪み52と第2窪み53と一対の第1対向壁部54と連結壁部55とリブ部56と一対の第2対向壁部57を有している。第2窪み53と一対の第1対向壁部54と連結壁部55とリブ部56と一対の第2対向壁部57は、第2樹脂材で成形された二次成形部40の一部である。
【0025】
第1窪み52は、一次成形部30における-Z側に位置する第2端面33から+Z側に窪んで形成されている。第1窪み52は、平面視で円形である。空洞51は、第1端面41から+Z側に窪んで形成されている。空洞51は、第1窪み52と同軸であり、+Z側に延びている。空洞51は、第1窪み52に囲まれた領域まで延びている。第2窪み53は、第1端面41から+Z側に窪んで形成されている。第2窪み53は、空洞51を挟んだX方向の両側に配置されている。平面視における第2窪み53は、第1窪み52と同一直径の円弧と、当該円弧におけるY方向に延びる弦によって囲まれた形状である。第2窪み53は、一次成形部30よりも-Z側に位置する二次成形部40の厚さよりも小さな深さを有する。
【0026】
一対の第1対向壁部54は、空洞51を挟んだX方向の両側にそれぞれ対向して配置されている。第1対向壁部54は、第2窪み53の底部から第1窪み52の内周面に沿って+Z側に延びている。第1対向壁部54の平面視形状は、第2窪み53の平面視形状と同一である。連結壁部55は、第1窪み52の底部に位置し、一対の第1対向壁部54における+Z側端部同士を繋ぐ。連結壁部55の平面視形状は、第1窪み52と同一直径の円形である。リブ部56は、Y方向の寸法が連結壁部55よりも短いX方向に延びるリブ状である。リブ部56のY方向の位置は、凹部50における中心位置である。リブ部56は、連結壁部55から-Z側に突出して一対の第1対向壁部54同士を繋ぐ。
【0027】
一対の第2対向壁部57は、空洞51を挟んだY方向の両側にそれぞれ対向して配置されている。第2対向壁部57は、連結壁部55における幅方向の両端から第1窪み52の内周面に沿って-Z側に延びている。第2対向壁部57は、X方向において一対の第1対向壁部54の間に設けられている。第2対向壁部57における-Z側の端部は、一次成形部30の第2端面33よりも+Z側に位置する。第2端面33と第2対向壁部57における-Z側の端部との間には、第1窪み52の内周面52aが空洞51に臨んで露出している。空洞51に露出する内周面52aの周方向の位置は、平面視において第2窪み53の形状を規定する一対の弦の間である。
【0028】
図4に示すように、突起60は、凹部50よりも回転軸14からX方向に離れて位置する。突起60は、凹部50よりも+X側に配置されている。一次成形部30は、突起60が設けられる位置に、第2端面33から+Z側に窪んだ第2凹部34を有する。突起60は、第2凹部34に充填された第2樹脂材によって形成されている。突起60は、二次成形部40の一部である。一次成形部30に形成された第2凹部34に、二次成形部40の一部である突起60が充填されて設けられることによって、二次成形部40が一次成形部30から剥離することを抑制できる。
【0029】
施錠ハンドルの製造方法について、
図10から
図12を参照して説明する。
図10に示すように、一次金型MD1は、一次成形部30を成形する金型である。一次金型MD1においては、回転軸14が予め内部に装着されたインサート成形が行われる。
【0030】
一次金型MD1は、上型U1と下型L1とを有する。上型U1は、下型L1の上側に配置されている。上型U1は下型L1に対して上下移動することで開閉する。一次金型MD1は、上型U1と下型L1とが型締めされたときに、一次成形部30が成形される空間であるキャビティC1を有する。キャビティC1におけるY方向の長さは、+X側に向かうにしたがって次第に短くなっている。
【0031】
上型U1は、キャビティC1に溶融した第1樹脂材を充填するためのゲート部G1を有している。ゲート部G1は、キャビティC1における+X側の端部に開口して設けられている。ゲート部G1は、後工程のゲートカットを考慮して一次成形部30において平坦部が設けられた+X側の端部に配置されている。ゲート部G1としては、ジャンプゲート方式、サイドゲート方式、トンネルゲート方式等を選択できる。選択したゲート方式に応じ、ゲート部G1は下型L1に設ける構成であってもよいし、上型U1と下型L1の双方に跨がって設ける構成であってもよい。
【0032】
下型L1は、一次成形部30において-Z側に臨む面を成形する。下型L1は、軸保持部14Mとピン部材52Mとピン部材34Mを有する。軸保持部14Mは、+Z側に開口する空洞である。軸保持部14Mには、回転軸14が装着される。軸保持部14Mには、一次成形部30から突出する部分の回転軸14が挿入されて嵌め合わせる。軸保持部14Mの底部15Mは、軸保持部14Mに挿入された回転軸14の先端を-Z側から支持する。底部15Mが回転軸14の先端を-Z側から支持することによって、回転軸14をZ方向に位置決めできる。
【0033】
ピン部材52Mは、キャビティC1に突出する部分において第1窪み52を成形する。ピン部材34Mは、キャビティC1に突出する部分において第2凹部34を成形する。ピン部材34M及びピン部材52MがキャビティC1に突出することによって、キャビティC1に充填された第1樹脂材は、固化する際の収縮力でピン部材34M及びピン部材52Mに保持される。
【0034】
一次金型MD1においては、回転軸14が装着された下型L1と上型U1とが型締されたときに、溶融した第1樹脂材をゲート部G1からキャビティC1に充填する。キャビティC1に充填した第1樹脂材が冷却されて固化した後に、上型U1を上昇させて型開きする。上型U1が上昇した後に、下型L1におけるエジェクタ機構を作動させて、回転軸14及び一次成形部30を含む一次成形体を下型L1から上側に離型させる。エジェクタ機構は、下型L1に設けられているため、上型U1を上昇させて型開きした際に一次成形体は下型L1に止まっている必要がある。キャビティC1に充填された第1樹脂材は、固化する際の収縮力でピン部材34M及びピン部材52Mに保持されているため、一次成形体は下型L1に止まり、エジェクタ機構によって円滑に下型L1から離型させることができる。
【0035】
下型L1から離型した一次成形体は、ロボット等によって保持されて搬出されて一次成形が完了する。一次成形が完了した後には、一次成形体に接続されたゲートを切断して分離する。一次成形が完了し、ゲートを分離することによって、ハンドル本体13の一部であり、回転軸14が設けられた回転軸領域31と、施錠操作が行われる操作領域32とを有する一次成形部30が成形される。キャビティC1におけるY方向の長さが+X側に向かうにしたがって次第に短くなっているため、一次成形部30では、+X側に向かうにしたがってY方向の厚さが次第に薄くなるように成形される。
【0036】
図11に示すように、二次金型MD2は、二次成形部40を成形する金型である。二次金型MD2においては、回転軸14及び一次成形部30を含む一次成形体が予め内部に装着されたインサート成形が行われる。
【0037】
二次金型MD2は、上型U2と下型L2とを有する。上型U2は、下型L2の上側に配置されている。上型U2は下型L2に対して上下移動することで開閉する。二次金型MD2は、上型U2と下型L2とが型締めされたときに、二次成形部40が成形される空間であるキャビティC2を有する。キャビティC2におけるY方向の長さは、+X側に向かうにしたがって次第に長くなっている。
【0038】
上型U2は、キャビティC2に溶融した第2樹脂材を充填するためのゲート部G2を有している。ゲート部G2は、スプーン12の回転に関する機能部品が配置されて外観的に目立ちづらいことから、キャビティC2における-X側の端部に開口して設けられている。ゲート部G2としては、ジャンプゲート方式、サイドゲート方式、トンネルゲート方式等を選択できる。外側に露出する二次成形部40におけるゲート部G2としては、ゲートカットした後のゲート痕が最も目立たないジャンプゲート方式が好ましい。
【0039】
下型L2は、回転軸収容部31Mと軸部材50Mとを有する。回転軸収容部31Mは、+Z側に開口する空洞である。回転軸収容部31Mは、回転軸14を含む回転軸領域31を収容する。回転軸収容部31Mは、軸保持部36Mを有する。軸保持部36Mは、+Z側に開口する空洞である。軸保持部36Mには、一次成形体における回転軸14が装着される。軸保持部36Mには、一次成形部30から突出する部分の回転軸14が挿入されて嵌め合わせる。回転軸14が軸保持部36Mに嵌め合わせることによって、一次成形体は、下型L2と軸保持部36Mにおいて位置決めされる。
【0040】
回転軸収容部31Mに収容された回転軸領域31は、キャビティC2と区画される。キャビティC2は、回転軸領域31と区画された操作領域32の周囲に形成される。回転軸収容部31Mの底部35Mは、回転軸収容部31Mに挿入された回転軸14の先端を-Z側から支持する。底部35Mが回転軸14の先端を-Z側から支持することによって、回転軸14をZ方向に位置決めできる。
【0041】
軸部材50Mは、先端部分において第1窪み52に嵌め合い凹部50を成形する。軸部材50Mは、中心軸CMを中心とする円柱状である。軸部材50Mは、中心軸CMが下型L2においてハンドル本体13の中心軸Cとなる位置に配置されている。軸部材50Mは、キャビティC2に突出する部分で凹部50を成形する。軸部材50Mは、-Z側の端部における鍔部61において下型L2に対して-Z側から係合している。鍔部61は、回り止め部62において下型L2と接している。鍔部61が回り止め部62において下型L2と接することによって、軸部材50Mは、下型L2に対して中心軸CMを中心とする周方向に位置決めされる。
【0042】
成形後の第1樹脂材及び第2樹脂材は、固化後に収縮するため、軸部材50Mの寸法は第1樹脂材及び第2樹脂材の収縮率を見込んで大きく形成される。以下の説明では収縮率を考慮せず、凹部50の寸法と、凹部50を成形する箇所の軸部材50Mの寸法とは同一とする。
【0043】
図12に示すように、軸部材50Mは、本体部51Mと角柱部58Mと段差部53Mと段差部57Mと溝部56Mとを有している。
【0044】
本体部51Mは、-Z側の領域が下型L2に保持されている。本体部51Mは、+Z側の領域が下型L2において二次成形部40における第1端面41を成形する成形面41Mの位置よりも+Z側に位置する。本体部51Mにおいて、成形面41Mの位置よりも+Z側に位置する箇所は、空洞51を成形する。
【0045】
角柱部58Mは、軸部材50Mの+Z側の先端部に位置する。角柱部58Mは、円柱状の本体部51MからX方向の両側端部とY方向の両側端部を欠落させた四角柱状に形成されている。角柱部58Mは、X方向の両側にYZ平面と平行な側面54Mを有している。角柱部58Mは、Y方向の両側にXZ平面と平行な側面59Mを有している。
【0046】
段差部53Mは、角柱部58Mを挟んだX方向の両側に配置されている。
図12においては、-X側に配置された段差部53Mが図示され、+X側に配置された段差部53Mの図示は省略されている。段差部53Mは、本体部51Mと角柱部58Mとの間の段差であり、+Z側に臨んで形成されている。段差部53Mは、第2窪み53を成形する。段差部53Mは、第1対向壁部54における-Z側の端面を成形する。成形面41Mから段差部53MまでのZ方向の距離H1は、第2窪み53の深さと同一である。第1窪み52の内周面52aと段差部53Mと側面54Mに囲まれた空間に第1対向壁部54が成形される。
【0047】
段差部57Mは、角柱部58Mを挟んだY方向の両側に配置されている。
図12においては、-Y側に配置された段差部57Mが図示され、+Y側に配置された段差部57Mの図示は省略されている。段差部57Mは、本体部51Mと角柱部58Mとの間の段差であり、+Z側に臨んで形成されている。段差部57Mは、第2対向壁部57における-Z側の端面を成形する。段差部57MのZ方向の位置は、一次成形部30の第2端面33よりも+Z側に位置する。第1窪み52の内周面52aと段差部57Mと側面59Mに囲まれた空間に第2対向壁部57が成形される。
【0048】
段差部57MのY方向外側に位置する外周面62Mは、本体部51Mの外周面と面一である。外周面62Mは、一次成形部30が下型L2に装着されたときに、一次成形部30における第1窪み52の内周面52aと嵌め合わせる。軸部材50Mの外周面62Mが一次成形部30における内周面52aと嵌め合わすことによって、一次成形体は下型L2と軸部材50Mにおいて位置決めされるとともに、下型L2に安定して支持される。一次成形体が下型L2に安定して支持されることによって、一次成形部30と下型L1との間に形成されるキャビティC2の寸法を保持できる。
【0049】
一次成形体は、回転軸14が軸保持部36Mに嵌め合い、第1窪み52が軸部材50Mと嵌め合わすことによって、下型L2に対してX方向及びY方向に位置決めされる。第1窪み52の内周面52a及び外周面62Mが、+Z側に向かうにつれて先細る抜き勾配を有する場合には、第1窪み52が軸部材50Mと嵌め合ったときに、軸部材50Mは一次成形体を下方から支持する。軸部材50Mは一次成形体を下方から支持することによって、一次成形体は下型L2に対してX方向、Y方向及びZ方向に位置決めされる。
【0050】
一次成形体が下型L2に装着されたときに、角柱部58Mの+Z側の端面55Mは、第1窪み52における底部よりも-Z側に位置する。第1窪み52底部と内周面52aと端面55Mに囲まれた空間に連結壁部55が成形される。溝部56Mは、X方向に延び角柱部58Mの端面55Mに開口している。溝部56Mは、X方向に角柱部58Mを貫いている。溝部56Mは、リブ部56を成形する。
【0051】
二次金型MD2においては、下型L2に回転軸14及び一次成形部30を有する一次成形体が装着され、下型L2と上型U2とが型締されたときに、溶融した第2樹脂材をゲート部G2からキャビティC2に充填する。キャビティC2は、-X側の端部において-Z側に位置する回転軸領域31と区画されているため、キャビティC2に導入された第2樹脂材は、一次成形体の+Z側に位置する空間を流動した後に、一次成形体の-Z側に位置する空間に向けて流動する。一次成形体は、軸部材50Mと嵌め合わすことによって安定して支持され、キャビティC2の寸法が保持されているため、第2樹脂材は円滑にキャビティC2に充填される。
【0052】
キャビティC2を流動して軸部材50Mに達した第2樹脂材は、段差部53Mを介して第1窪み52に流入する。第1窪み52に流入した第2樹脂材は、第1対向壁部54が成形される空間から段差部57Mを介して第2対向壁部57が成形される空間に流入する。第1対向壁部54が成形される空間及び第2対向壁部57が成形される空間に流入した第2樹脂材は、リブ部56が成形される空間及び連結壁部55が成形される空間に流入する。
【0053】
キャビティC2を流動して一次成形部30における第2凹部34に達した第2樹脂材は、第2凹部34に流入して充填される。キャビティC2に充填した第2樹脂材が冷却されて固化することによって、回転軸領域31を除いた操作領域32を含む一次成形部30を全周に亘って覆う二次成形部40が成形される。キャビティC2におけるY方向の長さが+X側に向かうにしたがって次第に長くなっているため、二次成形部40では、+X側に向かうにしたがってY方向の厚さが次第に厚くなるように成形される。成形された二次成形部40の凹部50においては、空洞51と第1窪み52と第2窪み53と一対の第1対向壁部54と連結壁部55とリブ部56と一対の第2対向壁部57が成形される。凹部50においては、軸部材50Mにおける外周面62Mと嵌め合わす一次成形部30の内周面52aが空洞51に臨んで露出するが、内周面52aはZ方向に延びる中心軸Cを中心とする周方向の延びているため、-Z側から見た際にも不可視となる、露出する内周面52aが-Z側から不可視であることによって、施錠ハンドル11の意匠性低下を抑制することができる。
【0054】
キャビティC2に充填した第2樹脂材が冷却されて固化することによって、二次成形部40が成形される。二次成形部40のうち、一次成形部30における第1窪み52に流入した第2樹脂材は、固化する際の収縮力で軸部材50Mに保持される。二次成形部40が成形された後に、上型U2を上昇させて型開きする。上型U2が上昇した後に、下型L2におけるエジェクタ機構を作動させて、回転軸14、一次成形部30及び二次成形部40を含む二次成形体を下型L2から上側に離型させる。キャビティC2に充填された第2樹脂材は、固化する際の収縮力で軸部材50Mに保持されているため、二次成形体は下型L2に止まり、エジェクタ機構によって円滑に下型L2から離型させることができる。
【0055】
下型L2から離型した二次成形体は、ロボット等によって保持されて搬出されて二次成形が完了する。二次成形が完了した後には、二次成形体に接続されたゲートを切断して分離する。二次成形が完了し、ゲートを分離することによって、回転軸14、一次成形部30及び二次成形部40を含む二次成形体である施錠ハンドル11が得られる。
【0056】
施錠ハンドル11においては、第2樹脂の成形時に、-X側にある回転軸14が軸保持部36Mに保持されるため、一次成形部30の+X側が変位しやすい。第2樹脂の成形時に、一次成形部30がキャビティC2内でY方向に変位したとしても、一次成形部30におけるY方向の厚さが+X側に向かうにしたがって次第に薄くなっているため、+X側でキャビティC2の寸法が十分に確保されている。これによって、供給された第2樹脂の下流側の+X側で二次成形部40のY方向の厚さが十分に確保されるため、+X側で、二次成形部40の厚さが薄くなったり、一次成形部30が露出したりすることがなく、意匠性を向上させることができる。
【0057】
施錠ハンドル11においては、二次成形部40におけるY方向の厚さは、+X側に向かうにしたがって次第に厚くなっている。これによって、+X側で、二次成形部40の厚さが薄くなったり、一次成形部30が露出したりすることがなく、意匠性を向上させることができる。
【0058】
施錠ハンドル11においては、ハンドル本体13が一次成形部30と一次成形部30のうち少なくとも操作領域32を全周に亘って覆う二次成形部40を含むため、施錠ハンドル11の製造方法においては、ハンドル本体13が一次成形部30で成形される場合と比較して、各成形時における肉厚を小さくできる。各成形時における肉厚を小さくすることによって、ヒケ等の成形不良を抑制して意匠性を向上させることができる。
【0059】
施錠ハンドル11においては、一次成形部30が第2凹部34を有し、二次成形部40が第2凹部34に充填された突起60を有するため、二次成形部40が一次成形部30から剥離することを抑制できる。
【0060】
施錠ハンドル11の製造方法においては、二次成形部40が一次成形部30のうち少なくとも操作領域32を全周に亘って覆うため、一次成形部30にヒケ等の成形不良が生じていても、二次成形部40がヒケ等の成形不良を覆うことによって意匠性を向上させることができる。
【0061】
施錠ハンドル11の製造方法では、回転軸14が軸保持部36Mに保持されるとともに、軸部材50Mにおける外周面62Mが一次成形部30における第1窪み52に嵌め合わさるため、下型L2に対する一次成形部30の高さ、X方向の位置及びY方向の位置を保持できる。下型L2に対する一次成形部30の高さ、X方向の位置及びY方向の位置を保持することによって、二次成形時に第2樹脂材の充填圧によって一次成形部30が下型L2に対して位置がずれ、一次成形部30と二次成形部40の相対位置関係がずれることを抑制できる。
【0062】
施錠ハンドル11と施錠ハンドル11の製造方法では、第1樹脂材と第2樹脂材とがガラス強化材を含むことによって、一次成形部30と二次成形部40の機械強度を確保することができる。施錠ハンドル11と施錠ハンドル11の製造方法では、第2樹脂材が第1樹脂材よりも少ない添加量のガラス強化材を含むことによって、高い機械強度を有し意匠性及び耐候性に優れたハンドル本体13が得られる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0064】
実施形態で説明した施錠ハンドル11は、一次成形部30のうち回転軸領域31を除く領域を二次成形部40が全周に亘って覆う構成に限定されない。二次成形部40が回転軸領域を覆う構成の施錠ハンドル11であってもよい。
【0065】
実施形態で説明した施錠ハンドル11は、クレセント錠の一部である構成に限定されない。施錠ハンドル11としては、カムラッチハンドル、グレモンハンドル等のクレセント錠以外のハンドルに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…錠装置、11…施錠ハンドル、13…ハンドル本体、14…回転軸、20…台座部、30…一次成形部、31…回転軸領域、32…操作領域、33…第2端面、34…第2凹部、40…二次成形部、41…第1端面、50…凹部、50M…軸部材、51…空洞、52…第1窪み、53…第2窪み、54…第1対向壁部、55…連結壁部、56…リブ部、57…第2対向壁部、60…突起、C…中心軸、C2…キャビティ、J…軸、MD1…一次金型、MD2…二次金型