(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】眼科装置、及び眼科装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231201BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12
(21)【出願番号】P 2022029584
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2018059939の分割
【原出願日】2018-03-27
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】多々良 陽子
(72)【発明者】
【氏名】中西 美智子
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275375(JP,A)
【文献】特開2016-054854(JP,A)
【文献】特開2017-080135(JP,A)
【文献】特開2016-032609(JP,A)
【文献】特開2015-139512(JP,A)
【文献】特表2015-531274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼に投射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、
前記干渉光の検出結果に基づいて、所定の閾値以上の輝度を有する画素をアーチファクトとして特定するアーチファクト特定部と、
前記被検眼に対して前記干渉光学系を相対的に移動する移動機構と、
前記被検眼の角膜頂点に相当する位置に前記アーチファクトが出現するように前記移動機構を制御する制御部と、
前記移動機構により前記アーチファクトと前記干渉光学系との位置合わせが完了した状態で取得された前記干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する黄斑部特定部と、
前記アーチファクトの位置と前記黄斑部特定部により特定された前記黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する眼内距離算出部と、
と含む眼科装置。
【請求項2】
前記眼内距離算出部は、前記被検眼における眼軸長を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アーチファクトに対する前記干渉光学系の変位をキャンセルするように前記移動機構を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置するように合焦レンズを移動し、
前記アーチファクト特定部は、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置した状態で得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記アーチファクトを特定する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼に投射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、前記被検眼に対して前記干渉光学系を相対的に移動する移動機構と、を含む眼科装置の制御方法であって、
前記被検眼の角膜頂点に相当する位置に
所定の閾値以上の輝度を有する画素が出現するように前記移動機構を制御する移動機構制御ステップと、
前記干渉光の検出結果に基づいて、
前記所定の閾値以上の輝度を有する画素をアーチファクトとして特定するアーチファクト特定ステップと、
前記移動機構により前記アーチファクト特定ステップにおいて特定された前記アーチファクトと前記干渉光学系との位置合わせを行う位置合わせステップと、
前記位置合わせステップの後に取得された前記干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する黄斑部特定ステップと、
前記アーチファクトの位置と前記黄斑部特定ステップにおいて特定された前記黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する眼内距離算出ステップと、
と含む眼科装置の制御方法。
【請求項6】
前記眼内距離算出ステップは、前記被検眼における眼軸長を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項7】
前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置するように合焦レンズを移動するステップを含み、
前記アーチファクト特定ステップは、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置した状態で得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記アーチファクトを特定する
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の眼科装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置、及び眼科装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼軸長は、白内障手術前における眼内レンズの度数選択や、軸性屈折異常の確認などに有用な眼内パラメータの1つである。このような眼内パラメータは、光コヒーレンストモグラフィを用いて取得することができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
眼軸長は、例えば、被検眼の前眼部に対して前眼部OCTスキャンを行うことにより得られたスキャン結果から取得される。前眼部OCTスキャンでは、眼底上の所定位置に集光する測定光で前眼部がスキャンされる。この前眼部OCTスキャンのスキャン結果から眼内レンズの度数選択に有用な角膜形状情報や水晶体情報が取得される。この場合、眼軸長は、前眼部OCTスキャンにより得られた角膜頂点に相当する位置と眼底上の所定位置との間の距離として特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
眼軸長は、角膜頂点と黄斑部(中心窩)との間の距離とされている。しかしながら、従来の手法では、前眼部OCTスキャンにより得られた眼底上の位置が黄斑部であるか否かを判別することが難しい。同様に、前眼部OCTスキャンにより得られた角膜頂点の位置が真の角膜頂点の位置であるか否かを判別することが難しい。従って、従来の手法では、取得された眼軸長が真の角膜頂点と黄斑部との間の距離であるか否かを判断することが難しく、眼軸長の測定結果の信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
また、眼軸長だけでなく角膜厚や前房深度や水晶体厚等の眼内距離の測定結果についても、同様に信頼性が低下する場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能な眼科装置、及び眼科装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態の第1態様は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼に投射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、前記干渉光の検出結果に基づいて、所定の閾値以上の輝度を有する画素をアーチファクトとして特定するアーチファクト特定部と、前記被検眼に対して前記干渉光学系を相対的に移動する移動機構と、前記被検眼の角膜頂点に相当する位置に前記アーチファクトが出現するように前記移動機構を制御する制御部と、前記移動機構により前記アーチファクトと前記干渉光学系との位置合わせが完了した状態で取得された前記干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する黄斑部特定部と、前記アーチファクトの位置と前記黄斑部特定部により特定された前記黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する眼内距離算出部と、と含む眼科装置である。
【0009】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、前記眼内距離算出部は、前記被検眼における眼軸長を算出する。
【0010】
いくつかの実施形態の第3態様では、第1態様又は第2態様において、前記制御部は、前記アーチファクトに対する前記干渉光学系の変位をキャンセルするように前記移動機構を制御する。
【0011】
いくつかの実施形態の第4態様では、第1態様~第3態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置するように合焦レンズを移動し、前記アーチファクト特定部は、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置した状態で得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記アーチファクトを特定する。
【0012】
いくつかの実施形態の第5態様は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被検眼に投射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を検出する干渉光学系と、前記被検眼に対して前記干渉光学系を相対的に移動する移動機構と、を含む眼科装置の制御方法である。眼科装置の制御方法は、前記被検眼の角膜頂点に相当する位置に所定の閾値以上の輝度を有する画素が出現するように前記移動機構を制御する移動機構制御ステップと、前記干渉光の検出結果に基づいて、前記所定の閾値以上の輝度を有する画素をアーチファクトとして特定するアーチファクト特定ステップと、前記移動機構により前記アーチファクト特定ステップにおいて特定された前記アーチファクトと前記干渉光学系との位置合わせを行う位置合わせステップと、前記位置合わせステップの後に取得された前記干渉光の検出結果に基づいて、前記被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する黄斑部特定ステップと、前記アーチファクトの位置と前記黄斑部特定ステップにおいて特定された前記黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する眼内距離算出ステップと、と含む。
【0013】
いくつかの実施形態の第6態様では、第5態様において、前記眼内距離算出ステップは、前記被検眼における眼軸長を算出する。
【0014】
いくつかの実施形態の第7態様は、第5態様又は第6態様において、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置するように合焦レンズを移動するステップを含み、前記アーチファクト特定ステップは、前記測定光の焦点位置が前記被検眼の角膜頂点又は水晶体に位置した状態で得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記アーチファクトを特定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能な眼科装置、及び眼科装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の動作例のフローを示す概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の動作例のフローを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る眼科装置、及び眼科装置の制御方法の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0018】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼の前眼部及び後眼部に対して光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherenece Tomography:以下、OCT)を実行可能である。前眼部は、少なくとも角膜頂点を含む。後眼部は、少なくとも黄斑部(中心窩)を含む。
【0019】
以下、実施形態では、スウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に詳しく説明するが、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ)のOCTを用いる眼科装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
【0020】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、OCTを実行するためのOCT光学系と、それ以外の検査光学系とを含む。このような検査光学系は、自覚検査を行うための自覚検査光学系、又は光干渉計測以外の他覚測定を行うための他覚測定光学系を含む。
【0021】
自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0022】
他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。他覚測定には、屈折力測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影等がある。
【0023】
以下、実施形態に係る眼科装置は、OCT光学系と、屈折力測定を行うための屈折力測定光学系(レフ測定光学系)とを含む場合について説明する。また、以下、眼底共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。同様に、瞳孔共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。
【0024】
<光学系の構成>
図1に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。実施形態に係る眼科装置1000は、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eを検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察系5が設けられている。被検眼Eを検査するための光学系としてOCT光学系やレフ測定光学系(屈折力測定光学系)が設けられている。
【0025】
眼科装置1000は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、及びOCT光学系8を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8が1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
【0026】
(前眼部観察系5)
前眼部観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過し、リレーレンズ55及び56を通過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述の処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を後述の表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。
【0027】
(Zアライメント系1)
Zアライメント系1は、前眼部観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。Zアライメント光源11から出力された光は、被検眼Eの角膜Crに投射され、角膜Crにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサー13のセンサー面に結像される。角膜頂点の位置が前眼部観察系5の光軸方向に変化すると、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置が変化する。処理部9は、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき光学系を移動させる機構を制御してZアライメントを実行する。
【0028】
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、前眼部観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。XYアライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0029】
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。処理部9は、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部の表示画面に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
【0030】
また、処理部9は、OCT光学系8を用いて取得された被検眼EのBスキャン画像を表示部の表示画面にリアルタイムに表示させることが可能である。ユーザは、Bスキャン画像中の所定位置と光学系との変位がキャンセルされるように光学系の移動操作を行うことにより手動でXYアライメントを実行可能である。また、処理部9は、Bスキャン画像中の所定位置と光学系との変位がキャンセルされるように光学系を移動させる制御を行うことにより、自動でXYアライメントを実行可能である。この実施形態では、Bスキャン画像中の所定位置は、後述のように被検眼Eの角膜頂点に相当する位置に描出されるアーチファクトの位置である。いくつかの実施形態では、同様に、Bスキャン画像中の所定位置に対する光学系のZ方向のアライメンも手動又は自動で行われる。
【0031】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、被検眼Eの角膜Crにリング状光束が投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータを算出する。
【0032】
(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7は、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
【0033】
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61は、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を通過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64の透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、ダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
【0034】
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を通過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を通過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を通過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。処理部9は、撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
【0035】
(固視投影系4)
ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に、後述のOCT光学系8が設けられる。ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路から分岐された光路に固視投影系4が設けられる。
【0036】
固視投影系4は、固視標を被検眼Eに呈示する。処理部9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。
【0037】
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を通過し、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を通過して眼底Efに投射される。液晶パネル41(又は液晶パネル41及びリレーレンズ42)は、光軸方向に移動可能である。
【0038】
(OCT光学系8)
OCT光学系8は、OCT計測を行うための光学系である。OCT計測よりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が眼底Efと光学系に共役となるように合焦レンズ87の位置が調整される。
【0039】
OCT光学系8は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4の光路は、ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路に結合される。それにより、OCT光学系8及び固視投影系4のそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
【0040】
OCT光学系8は、OCTユニット100を含む。
図2に示すように、OCTユニット100において、OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、共振器を含むレーザー光源を含んで構成される。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0041】
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、処理部9に送られる。
【0042】
OCT光源101は、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラー105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0043】
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
【0044】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラー122に導かれる。
【0045】
一方、ファイバーカプラー105により生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89により平行光束に変換され、光スキャナー88、合焦レンズ87、リレーレンズ85、及び反射ミラー84を経由し、ダイクロイックミラー83により反射される。
【0046】
光スキャナー88は、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する水平方向に眼底Efをスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する垂直方向に眼底Efをスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。このような光スキャナー88による測定光LSの走査態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0047】
ダイクロイックミラー83により反射された測定光LSは、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラー122に到達する。
【0048】
ファイバーカプラー122は、光ファイバー128を介して入射された測定光LSと、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラー122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0049】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
【0050】
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を処理部9の演算処理部220に送られる。演算処理部220は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算処理部220は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
【0051】
本例では、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114が設けられているが、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0052】
処理部9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、合焦レンズ74の移動に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87をその光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41をその光軸方向に移動させる。
【0053】
<処理系の構成>
眼科装置1000の処理系の構成について説明する。眼科装置1000の処理系の機能的構成の例を
図3及び
図4に示す。
図3は、眼科装置1000の処理系の機能ブロック図の一例を表す。
図4は、
図3のデータ処理部223の機能ブロック図の一例を表す。
【0054】
処理部9は、眼科装置1000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9は、プロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0055】
処理部9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。また、眼科装置1000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
【0056】
移動機構200は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7及びOCT光学系8等の光学系が収納されたヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構200に対する制御を行う。
【0057】
(制御部210)
制御部210は、プロセッサを含み、眼科装置の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。記憶部212には、眼科装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部211が動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
【0058】
主制御部211は、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。Zアライメント系1に対する制御には、Zアライメント光源11の制御、ラインセンサー13の制御などがある。Zアライメント光源11の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。ラインセンサー13の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。それにより、Zアライメント光源11の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、ラインセンサー13により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてラインセンサー13に対する光の投影位置を特定する。主制御部211は、特定された投影位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき移動機構200を制御してヘッド部を前後方向に移動させる(Zアライメント)。
【0059】
XYアライメント系2に対する制御には、XYアライメント光源21の制御などがある。XYアライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、XYアライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてXYアライメント光源21からの光の戻り光に基づく輝点像の位置を特定する。主制御部211は、所定の目標位置(例えば、アライメントマークALの中心位置)に対する輝点像Brの位置との変位がキャンセルされるように移動機構200を制御してヘッド部を左右上下方向に移動させる(XYアライメント)。
【0060】
この実施形態では、OCT光学系8を用いた眼軸長等の眼内距離測定時に、主制御部211は、表示部270に被検眼EのBスキャン画像を表示させることが可能である。ユーザは、表示部270に表示された角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトの位置を確認しながら操作部280に対して操作を行うことにより、主制御部211は、操作内容に対応した制御信号に基づいて移動機構200を制御してアーチファクトに対する光学系の位置合わせを手動で行うことが可能である。また、主制御部211は、Bスキャン画像における所望のターゲット位置に対するアーチファクトの位置の変位がキャンセルされるように移動機構200を制御することで、アーチファクトに対する光学系の位置合わせを自動で行うことが可能である。所望のターゲット位置は、操作部280を用いてユーザが指定可能である。
【0061】
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、被検眼Eの角膜形状パラメータが求められる。
【0062】
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標の表示のオン・オフや、固視標の表示位置の切り替えなどがある。それにより、被検眼Eの眼底Efに固視標が投影される。例えば、固視投影系4は、液晶パネル41(又は液晶パネル41及びリレーレンズ42)を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
【0063】
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
【0064】
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御、ロータリープリズム66の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。ロータリープリズム66の制御には、ロータリープリズム66の回転制御などがある。例えば、ロータリープリズム66を回転させる回転機構が設けられており、主制御部211は、この回転機構を制御することによりロータリープリズム66を回転させる。
【0065】
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば被検眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
【0066】
OCT光学系8に対する制御には、OCT光源101の制御、光スキャナー88の制御、合焦レンズ87の制御、コーナーキューブ114の制御、検出器125の制御、DAQ130の制御などがある。OCT光源101の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88の制御には、第1ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御、第2ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御などがある。合焦レンズ87の制御には、合焦レンズ87の光軸方向への移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、合焦レンズ87を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ87を光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、眼科装置には、合焦レンズ74及び87を保持する保持部材と、保持部材を駆動する駆動部が設けられる。主制御部211は、駆動部を制御することにより合焦レンズ74及び87の移動制御を行う。主制御部211は、例えば、合焦レンズ74の移動に連動して合焦レンズ87を移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87だけを移動させるようにしてもよい。コーナーキューブ114の制御には、コーナーキューブ114の光路に沿った移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動させる。検出器125の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、検出器125により検出された信号をDAQ130によりサンプリングし、サンプリングされた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220(画像形成部222)に実行させる。
【0067】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0068】
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば他覚測定の測定結果、断層像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0069】
(演算処理部220)
演算処理部220は、眼屈折力算出部221と、画像形成部222と、データ処理部223とを含む。
【0070】
眼屈折力算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。例えば、眼屈折力算出部221は、得られたリング像が描出された画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部221は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を求める。或いは、眼屈折力算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
【0071】
また、眼屈折力算出部221は、前眼部観察系5により取得されたケラトリング像に基づいて、角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。例えば、眼屈折力算出部221は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、角膜曲率半径に基づいて上記パラメータを算出する。
【0072】
画像形成部222は、検出器115により検出された信号に基づいて、前眼部又は眼底Efの断層像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部222は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、フィルター処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。このようにして取得される画像データは、複数のAライン(被検眼E内における各測定光LSの経路)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データを含むデータセットである。
【0073】
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
【0074】
データ処理部223は、画像形成部222により形成された断層像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部223は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部223は、前眼部観察系5を用いて得られた画像(前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0075】
データ処理部223は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、前眼部又は眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像形成部222は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。
【0076】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層画像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層画像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0077】
データ処理部223は、アーチファクト特定部223Aと、黄斑部特定部223Bと、眼内距離算出部223Cとを含む。
【0078】
アーチファクト特定部223Aは、OCT光学系8により得られた干渉光LCの検出結果に基づいて、被検眼Eの角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトを特定する。制御部210は、アーチファクト特定部223Aにより特定されたアーチファクトの位置に対応する光学系の制御座標系における被検眼Eの角膜頂点の位置(3次元位置)を特定する。制御部210は、例えば、スキャン範囲におけるアーチファクトの位置を表す情報と、光学系に対するスキャン範囲を表す情報と、制御座標系における光学系の位置を表す情報とに基づいて当該制御座標系における被検眼Eの角膜頂点の位置を特定する。制御部210は、特定された制御座標系における被検眼Eの角膜頂点の位置に対して光学系の位置合わせを行うことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、アーチファクト特定部223Aは、所定の閾値以上の輝度を有する画素(画素群の中心、重心など)をアーチファクトとして特定する。いくつかの実施形態では、アーチファクト特定部223Aは、干渉光LCの検出結果に対応した検出信号のピーク位置をアーチファクトの位置として特定する。
【0080】
アーチファクト特定部223Aは、画像形成部222により形成された被検眼Eの断層像に基づいて、断層像中の被検眼Eの角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトを特定することが可能である。この場合、制御部210は、特定されたアーチファクトの位置が識別可能に表示された断層像を表示部270に表示させる。
【0081】
アーチファクト特定部223Aは、画像形成部222により形成された被検眼Eの3次元画像に基づいて、3次元画像中の被検眼Eの角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトを特定することが可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、アーチファクト特定部223Aは、画像形成部222により形成された断層像又は3次元画像に対してセグメンテーション処理を施すことにより、アーチファクトが描出されない角膜頂点に相当する位置を特定する。
【0083】
黄斑部特定部223Bは、OCT光学系8により得られた干渉光LCの検出結果に基づいて、被検眼Eの黄斑部に相当する位置を特定する。いくつかの実施形態では、黄斑部特定部223Bは、干渉光LCの検出結果に基づいて眼底Efの形態を特定することにより、被検眼Eの黄斑部に相当する位置を特定する。
【0084】
黄斑部特定部223Bは、画像形成部222により形成された被検眼Eの断層像(Bスキャン画像)に基づいて、断層像中の被検眼Eの黄斑部に相当する位置を特定することが可能である。黄斑部特定部223Bは、網膜の断面形状や網膜の厚さを解析することにより黄斑部に相当する位置を特定する。被検眼Eの断層像はアーチファクト特定部223Aによりアーチファクトが特定された断層像であってよい。
【0085】
黄斑部特定部223Bは、画像形成部222により形成された被検眼Eの3次元画像に基づいて、3次元画像中の被検眼Eの黄斑部に相当する位置を特定することが可能である。被検眼Eの3次元画像は、アーチファクト特定部223Aによりアーチファクトが特定された3次元画像であってよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、黄斑部特定部223Bは、被検眼Eの眼底Efの正面画像に基づいて黄斑部を特定し、特定された黄斑部の位置に対応した深度方向の干渉光LCの検出結果に基づいて黄斑部に相当する位置を特定する。黄斑部特定部223Bは、正面画像において所定の閾値以下の輝度を有する画素群を黄斑部として特定することが可能である。また、黄斑部特定部223Bは、正面画像において視神経乳頭を特定し、特定された視神経乳頭の位置を基準に正面画像中の黄斑部の位置を特定することが可能である。正面画像として、Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラム、眼底観察光学系により別途に取得された眼底画像などがある。Cスキャン画像は、画像形成部222又はデータ処理部223において、眼底Efに対応する断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより取得される。プロジェクション画像は、画像形成部222又はデータ処理部223において、3次元データセットを所定方向(Z方向、深さ方向、Aスキャン方向)に投影することによって取得される。シャドウグラムは、画像形成部222又はデータ処理部223において、3次元データセットの一部(例えば特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって取得される。
【0087】
眼内距離算出部223Cは、アーチファクト特定部223Aにより特定されたアーチファクトの位置と黄斑部特定部223Bにより特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて被検眼Eの眼内距離を算出する。眼内距離として、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などがある。眼内距離算出部223Cは、Aスキャン画像中で特定されたアーチファクトの位置と黄斑部に相当する位置とに基づいて被検眼Eの眼内距離を算出することが可能である。
【0088】
いくつかの実施形態では、眼内距離算出部223Cは、複数のAスキャン画像のそれぞれについて眼内距離を算出し、算出された複数の眼内距離の平均値を出力する。
【0089】
制御部210(主制御部211)は、黄斑部特定部223Bにより黄斑部を特定できないとき、被検眼Eにおける固視標の投影位置を変更するように固視投影系4を制御することが可能である。眼内距離算出部223Cは、主制御部211により固視標の投影位置が変更された状態でアーチファクト特定部223Aにより特定されたアーチファクトの位置と黄斑部特定部223Bにより特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する。例えば、眼内距離算出部223Cは、アーチファクト特定部223Aにより特定されたアーチファクトの位置と黄斑部特定部223Bにより特定された黄斑部に相当する位置とを結ぶ測定光軸上の各部位を特定することで、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などの眼内距離を算出する。
【0090】
いくつかの実施形態では、データ処理部223(画像形成部222)は、黄斑部特定部223Bにより黄斑部を特定できないとき、干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの3次元画像を形成する。黄斑部特定部223Bは、データ処理部223により形成された3次元画像に基づいて黄斑部を特定する。制御部210(主制御部211)は、黄斑部特定部223Bにより3次元画像に基づいて特定された黄斑部に相当する位置に基づいて固視投影系4を制御する。すなわち、制御部210は、被検眼Eの3次元画像に基づいて特定された黄斑部に相当する位置に基づいて固視標の投影位置を変更する。例えば、黄斑部がOCT光学系8の光軸(測定光軸)に対して左にずれていたとしたら、固視標を左にずらすことで眼が左方向に回旋する。回転中心は眼内にあるため、黄斑部は右に移動し、その移動量を調整することで、黄斑部を適当な位置(例えば測定光軸上)に移動することが可能である。移動量は、測定光軸から黄斑部等の特徴部位(眼底)がずれている量が特定できれば、その画角分だけ固視標の位置を移動することで最適な位置に移動させることが可能である。このときアーチファクトが消失した場合は、再度アーチファクトが出現する位置にアライメントを行い、黄斑部が最適な位置にずれていれば固視標を動かすことを行うことを繰り返し、アーチファクトが得られて黄斑部が許容される最適な位置に配置されるようアライメントを行うことができる。ただし、被検眼の固視状態が悪く、固視標を移動したときに意図したように眼が回旋されない場合は、固視標の位置を動的に動かして、所望の位置に近くなるところで固視標の移動を止めて、その位置で測定を行うこともできる。それにより、黄斑部を所望の位置に配置させた状態で、アーチファクトの位置と黄斑部に相当する位置との間の眼内距離を算出することが可能になる。
【0091】
図5に、実施形態に係る眼内距離算出部223Cの動作説明図を示す。
図5は、アーチファクト特定部223Aにより特定されたアーチファクトの位置に対して光学系の位置合わせが完了したときの被検眼EのBスキャン画像の一例を表す。
図5は、眼内距離算出部223Cが眼軸長を算出する場合の動作説明図を表す。
【0092】
アーチファクト特定部223Aは、アーチファクトの位置P1を特定する。制御部210は、特定されたアーチファクトの位置P1に対して光学系の位置合わせを行う。
【0093】
その後、黄斑部特定部223Bは、アーチファクトが特定された断層像において黄斑部に相当する位置P2を特定する。黄斑部特定部223Bは、眼底Efの形態に基づいて黄斑部に相当する位置P2を特定することが可能である。
【0094】
眼内距離算出部223Cは、アーチファクトの位置P1と黄斑部に相当する位置P2との距離に基づいて眼軸長を求める。
【0095】
実施形態によれば、干渉光の検出結果に基づいてアーチファクトを特定し、特定されたアーチファクトの位置に対して光学系の位置合わせが行われる。この位置合わせが完了した状態で取得された干渉光の検出結果に基づいて黄斑部が特定されるため、アーチファクトが描出された角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼軸長等の眼内距離が測定されたことを確認することが可能になる。
【0096】
(表示部270、操作部280)
表示部270は、ユーザインターフェイス部として、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部270は、
図1などに示す表示部10を含む。
【0097】
操作部280は、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280は、眼科装置に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
【0098】
表示部270及び操作部280の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
【0099】
(通信部290)
通信部290は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。通信部290は、例えば処理部9に設けられていてもよい。
【0100】
OCT光源101は、実施形態に係る「光源」の一例である。OCT光学系8は、実施形態に係る「干渉光学系」の一例である。画像形成部222は、実施形態に係る「断層像形成部」の一例である。データ処理部223は、実施形態に係る「3次元画像形成部」の一例である。
【0101】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作について説明する。以下、眼軸長を測定する場合の動作例について説明する。
【0102】
図6及び
図7に、眼科装置1000の動作の一例を示す。
図6は、眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。
図7は、
図6のステップS8の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図6及び
図7に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図6及び
図7に示す処理を実行する。
【0103】
図6に示す処理に先立って、図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部280に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1000は、XYアライメント系2を用いたXYアライメントやZアライメント系1を用いたZアライメントが完了しているものとする。このとき、2以上の撮影部を用いて互いに異なる方向から実質的に同時に前眼部を撮影することにより視差が設けられた2以上の前眼部像からXYアライメントやZアライメントが実行されてもよい。
【0104】
(S1:Bスキャン画像を取得)
まず、主制御部211は、OCT計測を実行し、被検眼EのBスキャン画像を取得するための制御を実行する。
【0105】
OCT計測に先立って、主制御部211は、レフ測定光学系を用いて被検眼Eの屈折力に対応した位置に合焦レンズ87を移動することが可能である。
【0106】
主制御部211は、合焦レンズ87が移動された状態で、OCT光学系8を制御することによりOCT計測を実行させる。主制御部211は、OCT光源101を点灯させ、光スキャナー88を制御することにより眼底Efを測定光LSでスキャンさせる。測定光LSのスキャンにより得られた検出信号は画像形成部222に送られる。画像形成部222は、得られた検出信号から、前眼部及び眼底Efが描出された被検眼のBスキャン画像を形成する(
図5参照)。
【0107】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、測定光の焦点位置が角膜頂点又は水晶体に位置するように合焦レンズ87を光軸方向に移動し、角膜頂点等に測定光が合焦した状態でOCT計測を実行する。
【0108】
(S2:アーチファクト特定処理)
続いて、主制御部211は、ステップS1において取得されたBスキャン画像に基づいてアーチファクトの特定処理をアーチファクト特定部223Aに実行させる。アーチファクト特定部223Aは、上記のようにBスキャン画像を解析することによりアーチファクトの特定処理を実行する。
【0109】
なお、アーチファクト特定部223Aは、上記のように、Bスキャン画像に対してセグメンテーション処理を施すことにより、アーチファクトとして描出されない角膜頂点に相当する位置を特定してもよい。
【0110】
(S3:アーチファクトを特定?)
次に、主制御部211は、ステップS2においてアーチファクトが特定されたか否かを判定する。主制御部211は、アーチファクト特定部223Aの処理結果に基づいてアーチファクトが特定されたか否かを判定することができる。
【0111】
アーチファクトが特定されたと判定されたとき(S3:Y)、眼科装置1000の動作はステップS5に移行する。アーチファクトが特定されたと判定されなかったとき(S3:N)、眼科装置1000の動作はステップS4に移行する。
【0112】
(S4:アライメント)
アーチファクトが特定されたと判定されなかったとき(S3:N)、主制御部211は、移動機構200を制御することにより所定の移動方向に所定の移動量だけ被検眼Eに対して光学系を相対的に移動する。眼科装置1000の動作は、ステップS1に移行する。
【0113】
すなわち、Bスキャン画像中にアーチファクトが特定されるまで、被検眼Eに対する光学系の位置合わせが実行される。
【0114】
(S5:黄斑部特定処理)
ステップS3においてアーチファクトが特定されたと判定されたとき(S3:Y)、主制御部211は、ステップS2において取得されたBスキャン画像に基づいて黄斑部の特定処理を黄斑部特定部223Bに実行させる。黄斑部特定部223Bは、上記のようにBスキャン画像を解析することにより黄斑部の特定処理を実行する。
【0115】
(S6:黄斑部を特定?)
次に、主制御部211は、ステップS5において黄斑部が特定されたか否かを判定する。主制御部211は、黄斑部特定部223Bの処理結果に基づいて黄斑部が特定されたか否かを判定することができる。
【0116】
黄斑部が特定されたと判定されたとき(S6:Y)、眼科装置1000の動作はステップS7に移行する。黄斑部が特定されたと判定されなかったとき(S6:N)、眼科装置1000の動作はステップS8に移行する。
【0117】
(S7:眼軸長を算出)
ステップS6において黄斑部が特定されたと判定されたとき(S6:Y)、主制御部211は、被検眼Eの眼軸長を眼内距離算出部223Cに算出させる。眼内距離算出部223Cは、ステップS3において特定されたアーチファクトの位置(角膜頂点に相当する位置)とステップS5において特定された黄斑部に相当する位置との距離に基づいて眼軸長を算出する。ステップS7では、眼軸長以外の角膜厚、前房深度、水晶体厚等の眼内距離を算出することが可能である。なお、ステップS7以降に、後眼部の断層像の取得等を行ってよい。以上で、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
【0118】
(S8:黄斑部再特定処理)
ステップS6において黄斑部が特定されたと判別されなかったとき(S6:N)、主制御部211は、黄斑部再特定処理を実行する。具体的には、主制御部211は、被検眼Eにおける固視標の投影位置を変更するように固視投影系4を制御する。ステップS8では、後述のように、固視標の投影位置が変更された状態で新たにアーチファクトの位置と黄斑部に相当する位置とが特定される。その後、眼科装置1000の動作はステップS7に移行する。
【0119】
図6のステップS8では、
図7に示すような処理が実行される。
【0120】
(S11:3Dスキャン)
まず、主制御部211は、光スキャナー88を制御することにより眼底Efを測定光LSでスキャンさせる。測定光LSのスキャンにより得られた検出信号は画像形成部222に送られる。画像形成部222は、得られた検出信号から眼底Efが描出された断層像を形成する。データ処理部223は、画像形成部222により形成された断層像から被検眼Eの3次元画像を形成する。なお、ステップS11におけるスキャンのスキャン間隔は、ステップS1やステップS14におけるスキャンのスキャン間隔より粗くてよい。
【0121】
(S12:黄斑部特定処理)
主制御部211は、ステップS11において取得された3次元画像に基づいて黄斑部の特定処理を黄斑部特定部223Bに実行させる。黄斑部特定部223Bは、上記のように3次元画像を解析することにより黄斑部の特定処理を実行する。
【0122】
(S13:固視標を移動)
主制御部211は、所望の固視位置とステップS12において特定された黄斑部の位置との変位を求める。主制御部211は、求められた変位がキャンセルされるように固視投影系4を制御し、液晶パネル41における固視標の表示位置を変更することにより眼底Efにおける固視標の投影位置を変更する。
【0123】
(S14:Bスキャン画像を取得)
続いて、主制御部211は、ステップS1と同様に、OCT計測を実行し、被検眼EのBスキャン画像を取得するための制御を実行する。それにより、固視標の投影位置が変更された状態でBスキャン画像が取得される。
【0124】
(S15:アーチファクト特定処理)
次に、主制御部211は、ステップS2と同様に、ステップS14において取得されたBスキャン画像に基づいてアーチファクト特定部223Aにアーチファクトを特定させる。
【0125】
(S16:アーチファクトを特定?)
主制御部211は、ステップS3と同様に、ステップS15においてアーチファクトが特定されたか否かを判定する。
【0126】
アーチファクトが特定されたと判定されたとき(S16:Y)、眼科装置1000の動作はステップS17に移行する。アーチファクトが特定されたと判定されなかったとき(S16:N)、眼科装置1000の動作はステップS19に移行する。
【0127】
(S17:黄斑部特定処理)
ステップS16において角膜頂点が特定されたと判定されたとき(S16:Y)、主制御部211は、ステップS5と同様に、ステップS14において取得されたBスキャン画像に基づいて黄斑部の特定処理を黄斑部特定部223Bに実行させる。
【0128】
(S18:黄斑部を特定?)
主制御部211は、ステップS6と同様に、ステップS17において黄斑部が特定されたか否かを判定する。
【0129】
黄斑部が特定されたと判定されたとき(S18:Y)、
図6のステップS8の動作は終了である(エンド)。黄斑部が特定されたと判定されなかったとき(S18:N)、眼科装置1000の動作はステップS13に移行する。
【0130】
(S19:スキャン範囲を変更)
ステップS16においてアーチファクトが特定されたと判定されなかったとき(S16:N)、主制御部211は、移動機構200を制御することにより、被検眼Eに対して光学系を相対的に移動する。
【0131】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、所定の移動方向に所定の移動量だけ光学系を被検眼Eに対して相対的に移動する。ステップS16からステップS19への移行が所定回数以上だけ連続する場合、主制御部211は、移動方向及び移動量の少なくとも1つを変更することが可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、操作部280に対するユーザの操作内容に基づいて移動機構200を制御することにより、被検眼Eに対する光学系の相対位置を変更する。この場合、ユーザは、表示部270にリアルタイムに表示されたBスキャン画像を見ながら光学系の移動方向及び移動量を操作部280を用いて指定することが可能である。
【0133】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、光スキャナー88を制御することにより、眼底Efにおけるスキャン範囲(スキャン位置)を変更する。
【0134】
その後、眼科装置1000の動作はステップS14に移行する。
【0135】
なお、上記の実施形態において、2以上の撮影部を用いて互いに異なる方向から実質的に同時に前眼部を撮影し、視差が設けられた2以上の前眼部像から被検眼Eにおけるアーチファクトの位置を特定し、特定された位置に基づいて移動機構200を制御することにより被検眼Eに対する光学系の位置合わせを行ってもよい。
【0136】
上記の実施形態において、合焦レンズ74、及び87の少なくとも1つの機能が液晶レンズ又は液体レンズにより実現されてもよい。
【0137】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置、及び眼科装置の制御方法の作用及び効果について説明する。
【0138】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1000)は、干渉光学系(OCT光学系8)と、アーチファクト特定部(223A)と、移動機構(200)と、制御部(210)と、黄斑部特定部(223B)と、眼内距離算出部(223C)とを含む。干渉光学系は、光源(OCT光源101)からの光(L0)を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、測定光を被検眼(E)に投射し、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。アーチファクト特定部は、干渉光の検出結果に基づいて被検眼の角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトを特定する。移動機構は、被検眼に対して干渉光学系を相対的に移動する。制御部は、移動機構を制御する。黄斑部特定部は、移動機構によりアーチファクトと干渉光学系との位置合わせが完了した状態で取得された干渉光の検出結果に基づいて、被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する。眼内距離算出部は、アーチファクトの位置と黄斑部特定部により特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する。
【0139】
このような構成では、干渉光の検出結果に基づいてアーチファクトを特定し、特定されたアーチファクトの位置に対して干渉光学系の位置合わせが行われる。この位置合わせが完了した状態で取得された干渉光の検出結果に基づいて黄斑部が特定されるため、アーチファクトが描出された角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼内距離が測定されたことを確認することが可能になる。それにより、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能になる。
【0140】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、眼内距離算出部は、被検眼における眼軸長を算出する。
【0141】
このような構成によれば、アーチファクトが描出された角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼軸長が測定されたことを確認することが可能になるため、信頼性が高い眼軸長の測定結果を得ることが可能になる。
【0142】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、制御部は、アーチファクトに対する干渉光学系の変位をキャンセルするように移動機構を制御する。
【0143】
このような構成によれば、アーチファクトに対する干渉光学系の位置合わせを自動で実行することができるので、信頼性がより一層高い眼内距離を容易に取得することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0144】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、干渉光の検出結果に基づいて、被検眼の断層像を形成する断層像形成部(画像形成部222)を含み、黄斑部特定部は、アーチファクトが特定された断層像を解析することにより黄斑部を特定する。
【0145】
このような構成によれば、断層像に基づいて角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼内距離が測定されたことを確認することが可能な眼科装置を提供することが可能になる。
【0146】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、被検眼に固視標を投影する固視投影系(4)を含み、制御部は、黄斑部特定部により黄斑部を特定できないとき、被検眼における固視標の投影位置を変更するように固視投影系を制御し、眼内距離算出部は、固視標の投影位置が変更された状態でアーチファクト特定部により特定されたアーチファクトの位置と黄斑部特定部により特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する。
【0147】
このような構成によれば、黄斑部が特定できない場合であっても、被検眼に対する固視標の投影位置を変更することで、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることができるようになる。
【0148】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、黄斑部特定部により黄斑部を特定できないとき、干渉光の検出結果に基づいて被検眼の3次元画像を形成する3次元画像形成部(データ処理部223)を含み、黄斑部特定部は、3次元画像に基づいて黄斑部を特定し、制御部は、黄斑部特定部により3次元画像に基づいて特定された黄斑部に相当する位置に基づいて固視投影系を制御する。
【0149】
このような構成によれば、3Dスキャンで特定された黄斑部に基づいて固視標の投影位置を変更するようにしたので、黄斑部を確実に特定し、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能な眼科装置を提供できるようになる。
【0150】
いくつかの実施形態に係る眼科装置の制御方法は、光源(OCT光源101)からの光(L0)を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、測定光を被検眼(E)に投射し、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する干渉光学系(OCT光学系8)と、被検眼に対して干渉光学系を相対的に移動する移動機構(200)と、を含む眼科装置の制御方法である。眼科装置の制御方法は、アーチファクト特定ステップと、位置合わせステップと、黄斑部特定ステップと、眼内距離算出ステップとを含む。アーチファクト特定ステップは、干渉光の検出結果に基づいて被検眼の角膜頂点に相当する位置におけるアーチファクトを特定する。位置合わせステップは、移動機構によりアーチファクト特定ステップにおいて特定されたアーチファクトと干渉光学系との位置合わせを行う。黄斑部特定ステップは、位置合わせステップの後に取得された干渉光の検出結果に基づいて、被検眼における黄斑部に相当する位置を特定する。眼内距離算出ステップは、アーチファクトの位置と黄斑部特定ステップにおいて特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する。
【0151】
このような構成では、干渉光の検出結果に基づいてアーチファクトを特定し、特定されたアーチファクトの位置に対して干渉光学系の位置合わせが行われる。この位置合わせが完了した状態で取得された干渉光の検出結果に基づいて黄斑部が特定されるため、アーチファクトが描出された角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼内距離が測定されたことを確認することが可能になる。それにより、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能になる。
【0152】
いくつかの実施形態に係る眼科装置の制御方法では、眼内距離算出ステップは、被検眼における眼軸長を算出する。
【0153】
このような構成によれば、アーチファクトが描出された角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼軸長が測定されたことを確認することが可能になるため、信頼性が高い眼軸長の測定結果を得ることが可能になる。
【0154】
いくつかの実施形態に係る眼科装置の制御方法は、干渉光の検出結果に基づいて、被検眼の断層像を形成する断層像形成ステップを含み、黄斑部特定ステップは、アーチファクトが特定された断層像を解析することにより黄斑部を特定する。
【0155】
このような構成によれば、断層像に基づいて角膜頂点と黄斑部とを通過する測定光で眼内距離が測定されたことを確認することが可能になる。
【0156】
いくつかの実施形態に係る眼科装置の制御方法では、眼科装置は、被検眼に固視標を投影する固視投影系を含む。眼科装置の制御方法は、黄斑部特定ステップにおいて黄斑部を特定できないとき、被検眼における固視標の投影位置を変更するように固視投影系を制御する固視制御ステップを含み、眼内距離算出ステップは、固視標の投影位置が変更された状態でアーチファクト特定ステップにおいて特定されたアーチファクトの位置と黄斑部特定ステップにおいて特定された黄斑部に相当する位置とに基づいて眼内距離を算出する。
【0157】
このような構成によれば、黄斑部が特定できない場合であっても、被検眼に対する固視標の投影位置を変更することで、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることができるようになる。
【0158】
いくつかの実施形態に係る眼科装置の制御方法は、黄斑部特定ステップにおいて黄斑部を特定できないとき、干渉光の検出結果に基づいて被検眼の3次元画像を形成する3次元画像形成ステップを含み、黄斑部特定ステップは、3次元画像に基づいて黄斑部を特定し、固視制御ステップは、黄斑部特定ステップにおいて3次元画像に基づいて特定された黄斑部に相当する位置に基づいて固視投影系を制御する。
【0159】
このような構成によれば、3Dスキャンで特定された黄斑部に基づいて固視標の投影位置を変更するようにしたので、黄斑部を確実に特定し、信頼性が高い眼内距離の測定結果を得ることが可能な眼科装置を提供できるようになる。
【0160】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0161】
1 Zアライメント系
2 XYアライメント系
3 ケラト測定系
4 固視投影系
5 前眼部観察系
6 レフ測定投射系
7 レフ測定受光系
8 OCT光学系
9 処理部
210 制御部
211 主制御部
220 演算処理部
222 画像形成部
223 データ処理部
223A アーチファクト特定部
223B 黄斑部特定部
223C 眼内距離算出部
1000 眼科装置