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特許7394905バインダー含有無機繊維成形体、排ガス浄化装置用保持材、およびバインダー含有無機繊維成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】バインダー含有無機繊維成形体、排ガス浄化装置用保持材、およびバインダー含有無機繊維成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4209 20120101AFI20231201BHJP
   D04H 1/488 20120101ALI20231201BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
D04H1/4209
D04H1/488
F01N3/28 311P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022053658
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023146465
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522123566
【氏名又は名称】マフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】進藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】板垣 和夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐介
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168089(WO,A1)
【文献】特開2013-213463(JP,A)
【文献】特開2009-085091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
F01N 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、
前記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、
前記バインダーの含有量が、前記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、
50mm角の前記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、前記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、前記振とう試験前後における前記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含む、バインダー含有無機繊維成形体。
【請求項2】
無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、
前記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、
前記バインダーの含有量が、前記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、
50mm角の前記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、前記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、前記振とう試験前後における前記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含む、バインダー含有無機繊維成形体。
【請求項3】
無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、
前記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、
前記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、前記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、前記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、前記各領域の前記バインダーの含有量のうち、最大値が、2.24質量部以下であり、
50mm角の前記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、前記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、前記振とう試験前後における前記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含む、バインダー含有無機繊維成形体。
【請求項4】
無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、
前記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、
前記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、前記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、前記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、前記各領域の前記バインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、
50mm角の前記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、前記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、前記振とう試験前後における前記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含む、バインダー含有無機繊維成形体。
【請求項5】
前記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、前記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、前記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、前記各領域の前記バインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下である、請求項1または請求項2に記載のバインダー含有無機繊維成形体。
【請求項6】
前記バインダー含有無機繊維成形体の前記バインダーの含有量と、前記各領域の前記バインダーの含有量のうち、前記最大値との差が、0.75質量部以下である、請求項3から請求項5までのいずれかの請求項に記載のバインダー含有無機繊維成形体。
【請求項7】
前記無機繊維成形体がアルミナ繊維を含有する、請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載のバインダー含有無機繊維成形体。
【請求項8】
前記無機繊維成形体がニードルブランケットである、請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載のバインダー含有無機繊維成形体。
【請求項9】
請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載のバインダー含有無機繊維成形体を有する、排ガス浄化装置用保持材。
【請求項10】
無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、
前記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、
前記バインダーの含有量が、前記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含み、
前記含浸工程での前記バインダー液の供給量が、前記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
【請求項11】
無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、
前記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、
前記バインダーの含有量が、前記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、
前記バインダーが有機バインダーのみを含み、
前記含浸工程での前記バインダー液の供給量が、前記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
【請求項12】
前記無機繊維成形体に前記バインダー液を含浸させる方法が、前記無機繊維成形体に前記バインダー液を塗布する方法であって、浸漬法以外の方法である、あるいは、前記無機繊維成形体の一部を前記バインダー液に浸漬する方法である、あるいは、前記無機繊維成形体に前記バインダー液を注入する方法である、請求項10または請求項11に記載のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなるバインダー含有無機繊維成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック繊維に代表される無機繊維をマット状に成形した無機繊維成形体は、工業用断熱材、耐火材、パッキン材等の高温状態に暴露される用途に広く用いられている。また、無機繊維成形体は、自動車の排ガス浄化装置用のクッション材、すなわち、触媒担持体や粒子フィルタ等の排ガス処理体を金属製のケーシングに収容する際に排ガス処理体に巻回され、排ガス処理体とケーシングとの間(GAP)に介装される排ガス浄化装置用保持材としても用いられている。
【0003】
一方、無機繊維成形体においては、加工時、組付け時、搬送時、使用時等に、表面から無機繊維が脱落して飛散し、作業環境が悪化するという問題がある。
【0004】
セラミック繊維は発がん性等の健康障害のおそれがあるとされており、無機繊維について規制が強化されてきている。例えば、世界保健機関(WHO)では、ヒトの呼吸と共に体内に吸入され、肺まで到達する繊維状物質を「吸入性繊維」といい、長さ5μm超、直径3μm未満、アスペクト比(長さと直径の比)3超と定義している。そのため、無機繊維成形体が、このような吸入性繊維を含む場合には、上記の繊維飛散の問題が顕著である。
【0005】
また、近年、触媒効率向上のため、排ガス浄化装置をエンジン直下の高温部に配置する傾向がある。そのため、より高温下でのGAPの広がりに対応し、排ガスのリークや排ガス処理体の破損を防ぐため、高坪量の無機繊維成形体が求められている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、無機繊維成形体の坪量が多くなるほど、表面からの無機繊維の飛散量が多くなる。そのため、無機繊維成形体が高坪量である場合にも、上記の繊維飛散の問題が顕著となる。
【0006】
そこで、繊維飛散を抑制するため、無機繊維成形体に有機バインダー等のバインダーを含有させることが一般的に行われている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
無機繊維成形体にバインダーを含有させる場合には、無機繊維成形体にバインダーを含有するバインダー液を含浸させる方法が行われている。高坪量の無機繊維成形体においては、厚みおよび嵩密度のいずれかが大きくなっていることから、バインダー液が浸透しにくい。そのため、高坪量の無機繊維成形体にバインダーを含有させたとしても、繊維飛散を十分に抑制することができない。
【0008】
なお、特許文献2には、無機繊維成形体にバインダー液を吹きつけて、その表面からバインダー液を浸透させる際に、バインダー液の吹きつけの強さを調節することにより、無機繊維成形体の上部、中部、下部におけるバインダーの含有量を調節することができることが開示されている。しかしながら、高坪量の無機繊維成形体の場合、すなわち、嵩密度や厚みが大きい無機繊維成形体の場合、無機繊維成形体の内部までバインダー液を浸透させるために、バインダー液の吹きつけの強さを増すと、無機繊維成形体の表層の構造を破壊し、その性能を低下させるおそれがある。
【0009】
また、有機バインダーを含有する無機繊維成形体では、高温使用時に有機バインダーの燃焼ガスが発生したり、有機バインダーや燃焼ガスによる臭気が発生したりするという問題がある。そのため、有機バインダーの量を増やすことによって繊維飛散の抑制効果は高まるものの、近年の環境問題の高まりから、有機バインダーの量を極力低減することが求められている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6870787号公報
【文献】特許第4042305号公報
【文献】特許第4665618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、高坪量の無機繊維成形体の場合、低バインダー量および低発塵の両立は困難である。そのため、高坪量の無機繊維成形体は、ニーズがあるものの、繊維飛散の問題の解決が困難であり、付加価値を高めることが難しいため、実用に至っていない。よって、高坪量の無機繊維成形体を用いており、バインダーの量が低減されており、繊維飛散を抑制できる、バインダー含有無機繊維成形体は、今のところ存在していない。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高坪量および低バインダー量の場合において、繊維飛散を抑制できるバインダー含有無機繊維成形体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である、バインダー含有無機繊維成形体を提供する。
【0014】
また、本発明は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である、バインダー含有無機繊維成形体を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、上記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、上記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、最大値が、2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である、バインダー含有無機繊維成形体を提供する。
【0016】
また、本発明は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、上記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、上記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である、バインダー含有無機繊維成形体を提供する。
【0017】
また、本発明においては、上記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、上記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、上記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下であることが好ましい。
【0018】
上記の場合、上記バインダー含有無機繊維成形体の上記バインダーの含有量と、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、上記最大値との差が、0.75質量部以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、上記バインダーが有機バインダーであることが好ましい。
【0020】
また、本発明においては、上記無機繊維成形体がアルミナ繊維を含有することが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、上記無機繊維成形体がニードルブランケットであることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、上述のバインダー含有無機繊維成形体を有する、排ガス浄化装置用保持材を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、上記含浸工程での上記バインダー液の供給量が、上記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、上記含浸工程での上記バインダー液の供給量が、上記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明においては、上記無機繊維成形体に上記バインダー液を含浸させる方法が、上記無機繊維成形体に上記バインダー液を塗布する方法であって、浸漬法以外の方法である、あるいは、上記無機繊維成形体の一部を上記バインダー液に浸漬する方法である、あるいは、上記無機繊維成形体に上記バインダー液を注入する方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のバインダー含有無機繊維成形体においては、高坪量および低バインダー量の場合において、繊維飛散を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のバインダー含有無機繊維成形体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のバインダー含有無機繊維成形体、排ガス浄化装置用保持材、およびバインダー含有無機繊維成形体の製造方法について説明する。
【0029】
A.バインダー含有無機繊維成形体
本発明のバインダー含有無機繊維成形体は、4つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0030】
I.バインダー含有無機繊維成形体の第1実施態様
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である。
【0031】
本実施態様においては、高坪量の無機繊維成形体を用いており、バインダーの含有量が少なくなっている。このような場合においても、上記の振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が所定の値以下であるため、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。よって、適正な作業環境を確保することができるとともに、環境に安全なバインダー含有無機繊維成形体を提供することができる。
【0032】
以下、本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の各構成について説明する。
【0033】
1.無機繊維成形体
本実施態様における無機繊維成形体は、無機繊維の集合体であり、例えばマット、ブランケットまたはブロック等と称される。
【0034】
無機繊維成形体の坪量は、2,600g/m超であり、好ましくは2,800g/m以上、より好ましくは3,000g/m以上である。本実施態様においては、無機繊維成形体の坪量が上記範囲のように高い場合であっても、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量を低減することができる。一方、無機繊維成形体の坪量の上限は、特に限定されないが、例えば、好ましくは10,000g/m以下、より好ましくは7,000g/m以下、さらに好ましくは5,000g/m以下である。無機繊維成形体の坪量が高すぎると、無機繊維成形体が厚くなり、バインダー含有無機繊維成形体の組付けが困難になったり、コストが高くなったりするおそれがある。
【0035】
無機繊維成形体の坪量は、無機繊維成形体の自由時の嵩密度や厚みを調整することにより、制御することができる。
【0036】
無機繊維成形体の自由時の嵩密度は、例えば、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であることが好ましく、0.13g/cm以上0.20g/cm以下であることがより好ましく、0.15g/cm以上0.20g/cm以下であることがさらに好ましい。本実施態様においては、無機繊維成形体の自由時の嵩密度が上記範囲内のように高い場合であっても、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量を低減することができる。一方、無機繊維成形体の自由時の嵩密度が高すぎると、硬くなるため、成形性が低下するおそれがある。また、無機繊維成形体の自由時の嵩密度が低すぎると、成形体としての機械的強度が低下するおそれがある。なお、無機繊維成形体の自由時の嵩密度とは、バインダーが含有される前の自由状態における無機繊維成形体の嵩密度をいう。
【0037】
無機繊維成形体の厚みは、上記の坪量および嵩密度を満たす厚みであることが好ましく、上記の坪量および嵩密度、ならびに用途等に応じて適宜設定することができる。
【0038】
無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、特に限定されず、例えば、セラミック繊維、生体溶解性繊維(アルカリアースシリケート繊維)、ロックウール、バサルト繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、ガラス繊維等を用いることができる。また、セラミック繊維としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア及びカルシア等の単独繊維または複合繊維が挙げられる。中でも、無機繊維は、アルミナ/シリカ繊維であることが好ましく、特に結晶質アルミナ/シリカ繊維であることが好ましい。アルミナ/シリカ繊維は、アルミナおよびシリカを主成分とするセラミック繊維であり、単に「アルミナ繊維」と称される。無機繊維がアルミナ/シリカ繊維(アルミナ繊維)である場合、アルミナ/シリカの組成比(質量比)は、例えば、60/40~98/2の範囲内であることが好ましく、65/35~95/5の範囲内であることがより好ましく、70/30~80/20の範囲内であることが好ましい。
【0039】
無機繊維は、短繊維であることが好ましい。無機繊維成形体の厚みを損なわず、靭性を高めることができるからである。無機繊維が短繊維であるとは、例えば、無機繊維の平均繊維長が1,000mm以下であることをいう。また、無機繊維が短繊維である場合、無機繊維の平均繊維長は、例えば、210μm以上1000μm以下の範囲内であってもよい。
【0040】
無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、例えば3μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以上13μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下、特に好ましくは5μm以上8μm以下である。無機繊維の反発力や靭性が向上し、繊維の強度を高めることができるからである。なお、無機繊維の平均繊維径が大きすぎると、無機繊維成形体の常温圧縮サイクル特性(コールドコンプレッション)が失われるおそれがある。一方、無機繊維の平均繊維径が小さすぎると、空気中に浮遊する発塵量が多くなったり、吸入した際に肺まで到達する繊維状物質が多くなったりするおそれがある。
【0041】
無機繊維成形体は、ニードルブランケットであることが好ましい。ニードルブランケットは、ニードリング処理された無機繊維成形体である。ニードリング処理によって、無機繊維成形体を構成する無機繊維同士が絡んだ強固な無機繊維成形体となるだけでなく、無機繊維成形体の厚みを調整することができる。
【0042】
無機繊維成形体がニードルブランケットである場合、複数のニードル痕を有し、すなわち複数の凹部を有する。ニードル痕は、無機繊維成形体の厚み方向に貫通する貫通孔であってもよく、貫通していない非貫通孔であってもよい。
【0043】
無機繊維成形体の単位面積当りのニードル痕の数(以下、ニードル痕密度と称する。)は、特に限定されないが、大きいほど剪断力は高くなるが面圧が低下し、小さいほど面圧は大きくなるが剪断力が低くなる。よって、ニードル痕密度は、剪断力と面圧とのバランスを良好にとることが可能な程度であることが好ましい。ニードル痕密度としては、例えば1.0個/cm以上50.0個/cm以下とすることができる。
【0044】
ここで、無機繊維成形体の一方の面に可視光を当てると、ニードル痕における透過光量は、ニードル痕以外の領域における透過光量よりも多いので、無機繊維成形体の他方の面で透過光が光点として観察される。そのため、無機繊維成形体の一方の面に可視光を当て、無機繊維成形体の他方の面への透過による光点をカウントすることにより、ニードル痕の数を求めることができる。なお、上記光点は、ニードル痕が貫通孔であっても非貫通孔であっても確認することができる。
【0045】
ニードル痕は、平面視において等間隔に設けられていてもよく、ランダムに設けられてもよい。近接する2つのニードル痕間の平均距離としては、例えば0.1cm以上4cm以下とすることができる。
【0046】
無機繊維成形体は、長尺状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0047】
2.バインダー
本実施態様におけるバインダーは、無機繊維成形体に含まれ、無機繊維や無機繊維束を結着する。バインダーとしては、有機バインダーおよび無機バインダーのいずれも用いることができる。
【0048】
有機バインダーとしては、例えば、各種のゴム、水溶性高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、アクリルゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム;カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物;またはアクリル樹脂が挙げられる。有機バインダーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、アクリルゴム、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルゴムに含まれないアクリル樹脂が好ましい。これらの有機バインダーは、有機バインダー液の調製等が容易であり、後述する有機バインダーによる効果を発揮しやすいからである。
【0049】
一方、無機バインダーとしては、例えば、無機酸化物が挙げられる。具体的には、アルミナ、スピネル、ジルコニア、マグネシア、チタニア、カルシア、および上記無機繊維と同質の組成を有する材料が挙げられる。無機バインダーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。無機酸化物の平均粒径は、特に限定されないが、例えば1μm以下とすることができる。
【0050】
バインダーは、有機バインダーを含むことが好ましい。この場合、バインダーは有機バインダーのみであってもよく、有機バインダーおよび無機バインダーの両方を含んでいてもよい。中でも、バインダーは、有機バインダーであることが好ましい。有機バインダーは、無機バインダーよりも無機繊維成形体に含浸しやすいからである。また、バインダー含有無機繊維成形体の使用温度条件下で、有機バインダーを容易に熱分解または焼失させることができる。そのため、無機繊維成形体の反発力を復元することができ、バインダー含有無機繊維成形体を例えば排ガス浄化装置用保持材として好適に使用することができる。
【0051】
本実施態様において、バインダーの含有量は、無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、0.10質量部以上1.50質量部以下であることがより好ましい。本実施態様においては、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、バインダー含有量が上記範囲内のように少ない場合であっても、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量を低減することができる。
【0052】
また、本実施態様においては、例えば図1に示すように、バインダー含有無機繊維成形体1を厚さ方向Dに3等分し、バインダー含有無機繊維成形体1の一方の面側から第1領域1a、第2領域1b、第3領域1cとするとき、各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、各領域のバインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下であることが好ましく、0.10質量部以上1.50質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
この場合、バインダー含有無機繊維成形体のバインダーの含有量と、各領域のバインダーの含有量うち、最大値との差が、0.75質量部以下であることが好ましく、0.70質量部以下であることがより好ましく、0.60質量部以下であることがさらに好ましい。上記のバインダー含有量の差が上記範囲であれば、第1領域、第2領域、第3領域のすべての領域において、バインダーが、偏在することなく、含有されているとみなすことができる。よって、バインダーにより無機繊維や無機繊維束が結着されている部分を増やすことができ、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量をより低減することができる。
【0054】
また、第1領域、第2領域、第3領域のすべての領域において、バインダーが含有されていることが好ましい。上述したように、バインダーにより無機繊維や無機繊維束が結着されている部分を増やすことができ、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量をより低減することができる。
【0055】
この場合、第1領域、第2領域、第3領域において、各領域のバインダーの含有量は、例えば、各領域に含まれる無機繊維100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、0.10質量部以上1.50質量部以下であることがより好ましい。各領域のバインダーの含有量が上記範囲であれば、第1領域、第2領域、第3領域のすべての領域において、バインダーにより無機繊維や無機繊維束を結着することができ、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量をより低減することができる。
【0056】
また、第1領域、第2領域、第3領域において、各領域のバインダーの含有量は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
なお、バインダー含有無機繊維成形体において、バインダーの含有量とは、無機繊維成形体の質量あたりのバインダーの質量の割合(%)をいう。また、第1領域、第2領域、第3領域において、各領域のバインダーの含有量とは、各領域に含まれる無機繊維の質量あたりの各領域に含まれるバインダーの質量の割合(%)をいう。
【0058】
ここで、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量の求め方は、特に限定されないが、例えばバインダーが有機バインダーである場合は、以下の方法により算出することができる。すなわち、まず、バインダー含有無機繊維成形体から50mm角のサンプルを切り出す。次に、バインダー含有無機繊維成形体のサンプルを800℃で1時間加熱するバインダー焼失処理を行って、有機バインダーを焼失させる。また、バインダー焼失処理前後の質量を測定する。なお、バインダー焼失処理後の質量は、バインダー含有無機繊維成形体を構成する無機繊維成形体の質量に相当する。また、バインダー焼失処理前後の質量の差は、バインダー含有無機繊維成形体に含まれる有機バインダーの質量に相当する。そして、下記式(1)により、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量を算出する。
バインダーの含有量(%)=(バインダー焼失処理前の質量-バインダー焼失処理後の質量)/バインダー焼失処理後の質量×100 (1)
【0059】
また、第1領域、第2領域、第3領域において、各領域のバインダーの含有量の求め方は、特に限定されないが、例えばバインダーが有機バインダーである場合は、以下の方法により算出することができる。すなわち、まず、バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分に分離し、バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とする。次いで、各領域から50mm角のサンプルを切り出す。各領域のサンプルを800℃で1時間加熱するバインダー焼失処理を行って、有機バインダーを焼失させる。また、バインダー焼失処理前後の質量を測定する。なお、バインダー焼失処理後の質量は、各領域に含まれる無機繊維の質量に相当する。また、バインダー焼失処理前後の質量の差は、各領域に含まれる有機バインダーの質量に相当する。そして、上記式(1)により、各領域のバインダーの含有量を算出する。
【0060】
また、第1領域、第2領域、第3領域において、各領域にバインダーが含有されていることを確認する方法は、特に限定されないが、例えばバインダーが有機バインダーである場合は、以下の方法により有機バインダーの含有の有無を確認することができる。すなわち、まず、バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分に分離し、バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とする。次いで、各領域から50mm角のサンプルを切り出す。各領域のサンプルを800℃で1時間加熱するバインダー焼失処理を行って、有機バインダーを焼失させる。また、バインダー焼失処理前後の質量を測定する。バインダー焼失処理前後の質量の差は、各領域に含まれる有機バインダーの質量に相当する。そのため、バインダー焼失処理後の質量が、バインダー焼失処理前の質量よりも少ない場合には、有機バインダーを含有すると判断する。
【0061】
3.振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率
本実施態様においては、50mm角のバインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下であり、好ましくは0.9%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。上記の重量減少率が上記範囲であることにより、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。なお、上記の重量減少率は少ないほど好ましいため、下限値は特に限定されない。
【0062】
振とう試験は、下記の方法により行う。まず、バインダー含有無機繊維成形体から50mm角のサンプルを切り出す。次に、バインダー含有無機繊維成形体のサンプルをふるいに入れる。ふるいとしては、大きさが直径200mm、目開きが4mmであるふるいを用いる。次いで、ふるいを振とう機に装着する。振とう機としては、例えば、FRITSCH社製「ANALYSETTE3」を用いることができる。次に、振とう機を用いて、ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行う。また、振とう試験前後のバインダー含有無機繊維成形体の重量を測定する。そして、下記式(2)により、振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率を算出する。
重量減少率(%)=(振とう試験前のバインダー含有無機繊維成形体の重量-振とう試験後のバインダー含有無機繊維成形体の重量)/振とう試験前のバインダー含有無機繊維成形体の重量×100 (2)
【0063】
また、バインダー含有無機繊維成形体において、無作為に50mm角のサンプルを3つ切り出し、各サンプルについて上記振とう試験を行い、上記重量減少率を算出して、平均値を求める。この平均値を、振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率として採用する。なお、同一のバインダー含有無機繊維成形体からサンプリングした3つのサンプルについては、重量測定を個別に行えば、同時に振とう試験を実施してもよい。
【0064】
4.その他
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の平均厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定することができる。上記平均厚みは、例えば、2mm以上50mm以下程度とすることができる。
【0065】
5.用途
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の用途としては、例えば、断熱用途、耐火用途、建築用途、車載用途等が挙げられる。具体的には、本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、例えば、断熱材、耐火材、クッション材(保持材)、シール材、パッキン材等に適用することができる。中でも、本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、高坪量かつ低バインダー量であるため、排ガス浄化装置用保持材として好適である。
【0066】
II.バインダー含有無機繊維成形体の第2実施態様
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である。
【0067】
本実施態様においては、高嵩密度で高坪量の無機繊維成形体を用いており、バインダーの含有量が少なくなっている。このような場合においても、上記の振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が所定の値以下であるため、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。よって、適正な作業環境を確保することができるとともに、環境に安全なバインダー含有無機繊維成形体を提供することができる。
【0068】
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の構成については、上記の第1実施態様のバインダー含有無機繊維成形体と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
III.バインダー含有無機繊維成形体の第3実施態様
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、上記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、上記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、最大値が、2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である。
【0070】
本実施態様においては、バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分した各領域のバインダー含有量のうち、最大値が、所定の範囲内であり、少なくなっている。そのため、バインダー含有無機繊維成形体のバインダー含有量も少ないとみなすことができる。また、本実施態様においては、高坪量の無機繊維成形体を用いており、バインダーの含有量が少なくなっている。このような場合においても、上記の振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が所定の値以下であるため、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。よって、適正な作業環境を確保することができるとともに、環境に安全なバインダー含有無機繊維成形体を提供することができる。
【0071】
また、本実施態様においては、バインダー含有無機繊維成形体のバインダーの含有量と、各領域のバインダーの含有量うち、最大値との差が、0.75質量部以下であることが好ましい。上記のバインダー含有量の差が上記範囲であれば、第1領域、第2領域、第3領域のすべての領域において、バインダーが、偏在することなく、含有されているとみなすことができる。よって、バインダーにより無機繊維や無機繊維束が結着されている部分を増やすことができ、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量をより低減することができる。
【0072】
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の構成については、上記の第1実施態様のバインダー含有無機繊維成形体と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0073】
IV.バインダー含有無機繊維成形体の第4実施態様
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体は、無機繊維成形体にバインダーが含有されてなる、バインダー含有無機繊維成形体であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、上記バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、上記各領域に含まれる無機繊維100質量部に対する、上記各領域の上記バインダーの含有量のうち、最大値が、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、50mm角の上記バインダー含有無機繊維成形体を、目開き4mmのふるいに入れ、上記ふるいを、垂直方向の往復振とう方式、振幅2mm、振とう速度3000往復/分、振動時間10分の条件で振とうする振とう試験を行ったとき、上記振とう試験前後における上記バインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が、1.0%以下である。
【0074】
本実施態様においては、バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分した各領域のバインダー含有量のうち、最大値が、所定の範囲内であり、少なくなっている。そのため、バインダー含有無機繊維成形体のバインダー含有量も少ないとみなすことができる。また、本実施態様においては、高嵩密度で高坪量の無機繊維成形体を用いており、バインダーの含有量が少なくなっている。このような場合においても、上記の振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率が所定の値以下であるため、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。よって、適正な作業環境を確保することができるとともに、環境に安全なバインダー含有無機繊維成形体を提供することができる。
【0075】
また、本実施態様においては、バインダー含有無機繊維成形体のバインダーの含有量と、各領域のバインダーの含有量うち、最大値との差が、0.75質量部以下であることが好ましい。上記のバインダー含有量の差が上記範囲であれば、第1領域、第2領域、第3領域のすべての領域において、バインダーが、偏在することなく、含有されているとみなすことができる。よって、バインダーにより無機繊維や無機繊維束が結着されている部分を増やすことができ、バインダー含有無機繊維成形体の発塵量をより低減することができる。
【0076】
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の構成については、上記の第1実施態様のバインダー含有無機繊維成形体と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
B.排ガス浄化装置用保持材
本発明の排ガス浄化装置用保持材は、上述のバインダー含有無機繊維成形体を有する。排ガス浄化装置用保持材は、触媒担持体や粒子フィルタ等の排ガス処理体の保持材であって、排ガス処理体を金属製のケーシングに収容する際に、排ガス処理体に巻回され、排ガス処理体とケーシングとの間に介装される排ガス浄化装置用の保持材である。本発明の排ガス浄化装置用保持材は、上述のバインダー含有無機繊維成形体から構成される。具体的には、上述のバインダー含有無機繊維成形体に切断等の形状加工を施し、排ガス浄化装置用保持材とする。
【0078】
C.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0079】
I.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法の第1実施態様
本実施態様の本発明は、無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記無機繊維成形体の坪量が、2600g/m超であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、上記含浸工程での上記バインダー液の供給量が、上記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法を提供する。
【0080】
本実施態様においては、高坪量の無機繊維成形体を用いている。このような場合においても、含浸工程でのバインダー液の供給量を比較的多くすることにより、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。そのため、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量が比較的少ない場合でも、繊維飛散を抑制することができる。したがって、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、バインダーの含有量を低減しつつ、発塵量を低減することが可能である。すなわち、高坪量の無機繊維成形体の場合に、低バインダー量および低発塵の両立が可能である。
【0081】
以下、本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における各工程について説明する。
【0082】
1.含浸工程
本実施態様においては、無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を行う。
【0083】
本実施態様においては、含浸工程でのバインダー液の供給量が、無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上であり、好ましくは10体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは100体積%以上である。上記のバインダー液の供給量を上記範囲のように比較的多くすることにより、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。これにより、繊維飛散を抑制し、発塵量を低減することができる。一方、上記のバインダー液の供給量の上限は、特に限定されないが、多すぎても効果が飽和する。そのため、コストや、乾燥工程等の含浸工程後の工程での作業性等の観点から、上記のバインダー液の供給量は、例えば、1000体積%以下であり、500体積%以下であってもよく、300体積%以下であってもよい。
【0084】
無機繊維成形体については、上記「A.無機繊維成形体 I.第1実施態様」の項に記載した無機繊維成形体と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0085】
無機繊維成形体の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、国際公開第2016/152795号に開示される方法が挙げられる。
【0086】
また、バインダー液に含まれるバインダーについても、上記「A.無機繊維成形体 I.第1実施態様」の項に記載したバインダーと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
バインダー液に含まれる溶媒や分散媒としては、バインダーやバインダー液の種類に応じて適宜選択されるものであり、例えば水、有機溶媒等が挙げられる。溶媒や分散媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
有機バインダーの場合、バインダー液としては、有機バインダーを含む水溶液、水分散型のエマルション、ラテックス、または有機溶媒溶液を用いることができる。特に、エマルションが好ましい。バインダー液は、調製してもよく、市販されている有機バインダー液を用いてもよい。市販品の有機バインダー液は、そのまま又は水等で希釈して用いることができる。有機バインダー液には、無機バインダーが含有されていてもよい。また、有機バインダーの分散媒としては、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。ラテックスの長期安定性の観点から、これらの分散媒は、バインダー液を調製する際に適宜追加してもよい。
【0089】
また、無機バインダーの場合、バインダー液としては、無機バインダーを含むゾル、コロイド、スラリー、溶液を用いることができる。無機バインダー液には、有機バインダーが含有されていてもよい。また、無機バインダー液には、無機バインダーの安定性を高めるために分散安定剤が添加されていてもよい。分散安定剤としては、例えば酢酸、乳酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。
【0090】
バインダー液中のバインダー濃度は、バインダー液の供給量や、目的とするバインダー含有無機繊維成形体中のバインダーの含有量、バインダーの種類、バインダー液の含浸方法等に応じて適宜調整される。バインダー液中のバインダー濃度は、例えば、0.5質量%以上50質量%以下の範囲内とすることができる。バインダー濃度が低すぎると、バインダー含有無機繊維成形体において、バインダーが偏在し、繊維飛散量を十分に抑制できなくなるおそれがある。また、バインダー濃度が高すぎると、バインダー液が無機繊維成形体に含浸しにくくなるおそれがある。
【0091】
無機繊維成形体にバインダー液を含浸させる方法としては、無機繊維成形体にバインダー液を均一に含浸させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、無機繊維成形体にバインダー液を塗布する方法や、無機繊維成形体にバインダー液を注入する方法が挙げられる。
【0092】
無機繊維成形体にバインダー液を塗布する方法としては、無機繊維成形体にバインダー液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、キスコート法、グラビアコート法、ダイコート法、浸漬法等が挙げられる。また、浸漬法の場合、無機繊維成形体の全部をバインダー液に浸漬してもよく、無機繊維成形体の一部をバインダー液に浸漬してもよい。なお、無機繊維成形体の一部をバインダー液に浸漬する場合、例えば、容器等にバインダー液を所定量入れて、無機繊維成形体の表面または端面の一部をバインダー液と接触させ、バインダー液の全量を無機繊維成形体に吸収させることにより、バインダー液の供給量を多くすることができる。
【0093】
また、無機繊維成形体にバインダー液を注入する方法においては、例えば、シリンジ、ピペット、スポイト等の注入器を用いることができる。バインダー液の注入は、複数回繰り返し行ってもよい。
【0094】
中でも、無機繊維成形体にバインダー液を含浸させる方法は、無機繊維成形体にバインダー液を塗布する方法であって、浸漬法以外の方法である、あるいは、無機繊維成形体の一部をバインダー液に浸漬する方法である、あるいは、無機繊維成形体にバインダー液を注入する方法であることが好ましい。浸漬法以外の塗布方法や、一部浸漬法、注入方法の場合、バインダー液の供給量は比較的少ないのが一般的である。この場合、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させるのは困難である。これに対し、本実施態様においては、浸漬法以外の塗布方法や、一部浸漬法、注入方法の場合に、バインダー液の供給量を多くすることにより、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。
【0095】
また、塗布方法の場合、バインダー液を無機繊維成形体の片面に塗布してもよく、両面に塗布してもよい。両面塗布の場合は、バインダー液の供給量を多くすることにより、無機繊維成形体の内部までバインダー液を含浸させることができる。また、片面塗布の場合でも、バインダー液の供給量を多くすることにより、無機繊維成形体の内部までバインダー液を含浸させることができる。さらに、片面塗布の場合は、例えば、後述の脱液工程にて、無機繊維成形体のバインダー液の塗布面とは反対側の面からバインダー液を吸引することで、無機繊維成形体のバインダー液の塗布面からその反対側の面にバインダー液を移動させることができ、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。
【0096】
また、塗布方法の場合、無機繊維成形体の表面だけでなく、無機繊維成形体の端面にバインダー液を塗布してもよい。バインダー含有無機繊維成形体において、切断加工等の加工による端面は表面に比べてダメージが大きいことから、無機繊維成形体の端面にバインダー液を塗布することにより、繊維飛散を効果的に抑制し、発塵量をより低減することができる。
【0097】
また、注入方法の場合、例えば、無機繊維成形体の片面からバインダー液を注入してもよく、無機繊維成形体の両面からバインダー液を注入してもよい。中でも、両面注入が好ましい。両面注入の場合は、片面注入の場合と比べて、深部まで注入器を侵入させる必要が無いため、無機繊維成形体へのダメージを小さくできる。一方、片面注入の場合でも、バインダー液の供給量を多くすることにより、注入器を深部まで侵入させる必要が無く、所定のバインダー液量を含浸させることができる。
【0098】
また、注入方法の場合、無機繊維成形体の表面近傍や中央部だけでなく、無機繊維成形体の端面近傍にバインダー液を注入してもよい。バインダー含有無機繊維成形体において、切断加工等の加工による端面は表面に比べてダメージが大きいことから、無機繊維成形体の端面近傍にバインダー液を注入することにより、繊維飛散を効果的に抑制し、発塵量をより低減することができる。
【0099】
本実施態様において、無機繊維成形体に切断加工を行う場合には、切断加工前に含浸工程を行ってもよく、切断加工後に含浸工程を行ってもよい。
【0100】
2.乾燥工程
本実施態様においては、通常、上記含浸工程後に、バインダー液が含浸された無機繊維成形体を乾燥する乾燥工程が行われる。
【0101】
乾燥方法としては、バインダー液に含まれる溶媒や分散媒を除去できる方法であれば特に限定されず、例えば、自然乾燥、圧縮乾燥、通気乾燥、熱風乾燥、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、遠心乾燥、吸引乾燥等が挙げられる。
【0102】
乾燥温度としては、乾燥方法や、バインダーの種類等に応じて適宜選択される。乾燥温度は、バインダー液に含まれる溶媒や分散媒の沸点以上であればよい。中でも、有機バインダーの場合は、乾燥温度は、有機バインダーの架橋反応が開始および進行する温度以上、有機バインダーの分解温度以下であることが好ましい。具体的には、乾燥温度は、80℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、120℃以上160℃以下の範囲内であることがより好ましい。乾燥温度が低すぎると、十分に乾燥することができないおそれや、バインダーの架橋が不十分となるおそれがある。一方、乾燥温度が高すぎると、バインダーが変質したり、バインダー液の溶媒や分散媒の急激な蒸発が起こり、バインダーのマイグレーションが発生したりするおそれがある。
【0103】
乾燥時の風量、乾燥時間等、他の乾燥条件は、バインダー液が含浸された無機繊維成形体から、溶媒や分散媒を除去することができ、かつ、バインダーが除去されないように適宜調整される。乾燥時間は、例えば、10秒程度から数十分程度とすることができる。
【0104】
また、無機バインダーを用いた場合には、通常、乾燥後に焼成を行う。焼成条件は、無機バインダーを含有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における一般的な焼成条件から適宜選択することができる。
【0105】
3.脱液工程
本実施態様においては、上記の含浸工程と乾燥工程との間に、バインダー液が含浸された無機繊維成形体からバインダー液を除去する脱液工程を行ってもよい。後述の乾燥工程にてバインダー液の溶媒や分散媒を除去しやすくなり、乾燥時間を短縮することができる。
【0106】
脱液方法としては、例えば、遠心脱液、圧縮脱液、吸引脱液等が挙げられる。吸引脱液の場合、無機繊維成形体のバインダー液の供給面とは反対側の面からバインダー液を吸引することが好ましい。無機繊維成形体のバインダー液の塗布面からその反対側の面にバインダー液を移動させることができ、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。
【0107】
脱液時の圧力、脱液時間等の脱液条件は、バインダー液中のバインダーの全量が除去されないように適宜調整される。
【0108】
II.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法の第2実施態様
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、無機繊維成形体に、バインダーを含有するバインダー液を含浸させる含浸工程を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記無機繊維成形体の自由時の嵩密度が、0.10g/cm以上0.20g/cm以下であり、上記バインダーの含有量が、上記無機繊維成形体100質量部に対して、0.01質量部以上2.24質量部以下であり、上記含浸工程での上記バインダー液の供給量が、上記無機繊維成形体100体積%に対して、5体積%以上である、バインダー含有無機繊維成形体の製造方法を提供する。
【0109】
本実施態様においては、高嵩密度で高坪量の無機繊維成形体を用いている。このような場合においても、含浸工程でのバインダー液の供給量を比較的多くすることにより、無機繊維成形体の全体にバインダー液を含浸させることができる。そのため、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量が比較的少ない場合でも、繊維飛散を抑制することができる。したがって、高嵩密度で高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、バインダーの含有量を低減しつつ、発塵量を低減することが可能である。すなわち、高嵩密度で高坪量の無機繊維成形体の場合に、低バインダー量および低発塵の両立が可能である。
【0110】
本実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法の各工程については、上記の第1実施態様のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
また、無機繊維成形体については、上記「A.無機繊維成形体 II.第2実施態様」の項に記載した無機繊維成形体と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0112】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0113】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0114】
[実施例1]
無機繊維成形体として、坪量2800g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いた。また、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットと同体積のアクリルバインダー液を、ニードルブランケットに、スプレー法により塗布した。その後、遠心脱水機を用いて脱水し、135℃の送風乾燥機にて20分間乾燥した。これにより、バインダー含有無機繊維成形体を得た。
【0115】
[実施例2]
無機繊維成形体として、坪量2800g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いた。無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が0.3質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットと同体積のアクリルバインダー液を、容器に入れ、アクリルバインダー液の上にニードルブランケットを置いて、アクリルバインダー液にニードルブランケットの一部を浸漬した。その後、遠心脱水機を用いて脱水し、135℃の送風乾燥機にて20分間乾燥した。これにより、バインダー含有無機繊維成形体を得た。
【0116】
[実施例3]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0117】
[実施例4]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して10体積%のアクリルバインダー液に、ニードルブランケットの一部を浸漬したこと以外は、実施例2と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0118】
[実施例5]
無機繊維成形体として、坪量5600g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して10体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0119】
[実施例6]
無機繊維成形体として、坪量6400g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が0.3質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して10体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0120】
[実施例7]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して50体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0121】
[実施例8]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して50体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0122】
[実施例9]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して50体積%のアクリルバインダー液に、ニードルブランケットの一部を浸漬したこと以外は、実施例2と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0123】
[実施例10]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して10体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0124】
[実施例11]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して10体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0125】
[実施例12]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して5体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0126】
[実施例13]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して5体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0127】
[実施例14]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して300体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0128】
[実施例15]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと、および、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して280体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0129】
[比較例1]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して1体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0130】
[比較例2]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して2体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0131】
[比較例3]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと以外は、比較例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0132】
[比較例4]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が2.5質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して1体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0133】
[比較例5]
坪量2800g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットの一部を、水に浸漬させた後、遠心脱水機を用いて脱水し、135℃の送風乾燥機にて20分間乾燥した。
【0134】
[比較例6]
坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットの一部を、水に浸漬させた後、遠心脱水機を用いて脱水し、135℃の送風乾燥機にて20分間乾燥した。
【0135】
[評価1]
(振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率)
上記の「A.バインダー含有無機繊維成形体 I.第1実施態様 3.振とう試験」の項に記載したように、振とう試験を行い、振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率を算出した。
【0136】
(バインダーの含有量)
上記の「A.バインダー含有無機繊維成形体 I.第1実施態様 2.バインダー」の項に記載したように、バインダー含有無機繊維成形体における、無機繊維成形体100質量部に対するバインダーの含有量(質量部)を求めた。
【0137】
【表1】
【0138】
表1から、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量が少ない場合であっても、振とう試験前後の重量減少率が1%以下であり、繊維飛散を抑制できることが確認された。また、比較例1、2のように、従来のバインダー液の含浸方法では、振とう試験前後の重量減少率が多く、繊維飛散が抑えられないことが分かった。また、比較例3、4から、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、従来のバインダー液の含浸方法を適用する場合には、繊維飛散を抑制するために、バインダー含有無機繊維成形体におけるバインダーの含有量を多くする必要があることが分かった。さらに、比較例5、6から、水を用いて無機繊維成形体を洗浄し、粉塵となりうる絡みつきの弱い微細な繊維を除去するだけでは、繊維飛散を抑制できないことが分かった。
【0139】
[実施例16]
無機繊維成形体として、坪量2800g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いた。また、無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットと同体積のアクリルバインダー液を、ニードルブランケットに、スプレー法により塗布した。その後、遠心脱水機を用いて脱水し、135℃の送風乾燥機にて20分間乾燥した。これにより、バインダー含有無機繊維成形体を得た。
【0140】
[実施例17]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと以外は、実施例16と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0141】
[比較例7]
無機繊維成形体に対するバインダーの含有量が1質量部(目標値)になるように水で希釈した、ニードルブランケットに対して1体積%のアクリルバインダー液を塗布したこと、および、遠心脱水を行わなかったこと以外は、実施例16と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0142】
[比較例8]
無機繊維成形体として、坪量3200g/mのアルミナ繊維ニードルブランケットを用いたこと以外は、比較例7と同様に、バインダー含有無機繊維成形体を作製した。
【0143】
[評価2]
(振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率)
上記の「A.バインダー含有無機繊維成形体 I.第1実施態様 3.振とう試験」の項に記載したように、振とう試験を行い、振とう試験前後におけるバインダー含有無機繊維成形体の重量減少率を算出した。
【0144】
(バインダーの含有量)
上記の「A.バインダー含有無機繊維成形体 I.第1実施態様 2.バインダー」の項に記載したように、バインダー含有無機繊維成形体における、無機繊維成形体100質量部に対するバインダーの含有量(質量部)を求めた。
【0145】
(第1領域、第2領域、第3領域のバインダーの含有量)
上記の「A.バインダー含有無機繊維成形体 I.第1実施態様 2.バインダー」の項に記載したように、バインダー含有無機繊維成形体を厚さ方向に3等分し、バインダー含有無機繊維成形体の一方の面側から第1領域、第2領域、第3領域とするとき、各領域における、無機繊維100質量部に対するバインダーの含有量(質量部)を求めた。下表には3当分したうち最大のバインダー含有量を示した領域におけるバインダーの含有量を示す。
【0146】
【表2】
【0147】
比較例7、8では、各領域のバインダー含有量のうち最大値が、バインダー含有量の目標値である1質量部に対して2倍以上になっており、バインダーが偏在していることが分かった。そして、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合において、バインダーが偏在する場合には、振とう試験前後の重量減少率が多く、繊維飛散が抑えられないことが示唆された。一方、実施例16、17では、比較例7、8と比べると、バインダー含有無機繊維成形体のバインダー含有量と、各領域のバインダー含有量のうち最大値との差が、小さく、バインダーの偏在が減っていた。このことから、高坪量の無機繊維成形体を用いる場合、バインダーの偏在を減らすことで、発塵を低減できることが示唆された。
【符号の説明】
【0148】
1 … バインダー含有無機繊維成形体
図1