IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケーマイクロワークス 株式会社の特許一覧

特許7394916ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
<>
  • 特許-ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図1
  • 特許-ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図2
  • 特許-ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図3
  • 特許-ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231201BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G69/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022077822
(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公開番号】P2022179375
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065077
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、フンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0002425(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0409413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0407520(US,A1)
【文献】特表2021-503023(JP,A)
【文献】国際公開第2020/159085(WO,A1)
【文献】特開2016-108482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08G 69/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合体であり、
前記ポリアミド系重合体は、第1ジカルボニル化合物由来の第1アミド系繰り返し単位と、第2ジカルボニル化合物由来の第2アミド系繰り返し単位とを含み、
前記第1アミド系繰り返し単位と第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、21:79~79:21であり、
下記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下であり、
下記数式2で表示される耐光性色変化指数が1.55~1.64である、ポリアミド系フィルム:
[数1]
耐光性指数=ΔYI/Y
[数2]
耐光性色変化指数=ΔYI/ΔE
前記数式1において、Yはフィルムのモジュラスであり、ΔYIは60℃にてフィルムに340nm波長の光を0.63W/m の強度で4時間照射した後、UV照射を中止し水を噴射しながら50℃にて4時間静置する耐光性試験サイクルを12回繰り返す耐光性試験前後のフィルムの黄色度(YI)変化量であり、
前記数式2において、ΔEは、前記耐光性試験前後のフィルムの色差である。
【請求項2】
前記ΔYIは4.5以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
前記第1ジカルボニル化合物中の2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物中の2つのカルボニル基間の角度より大き、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアミド系フィルムの製造方法であって、
有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合してポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、
前記溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階と、を含み、
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを重合する段階は、
前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを反応させて、粘度1000cps~10000cpsの第1重合体溶液を形成する段階と、
前記第1重合体溶液に追加のジカルボニル化合物を反応させて、粘度200000cps~350000cpsの第2重合体溶液を形成する段階とを含み、
前記第1重合体溶液を形成する段階において、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物が前記ジアミン化合物と順次反応し、
前記第2重合体溶液を形成する段階において、前記第2ジカルボニル化合物が追加で反応し、
前記第1ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)を含み、前記第2ジカルボニル化合物は、イソフタロイルクロリド(IPC)を含む、ポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合体であり、
前記ポリアミド系重合体は、第1ジカルボニル化合物由来の第1アミド系繰り返し単位と、第2ジカルボニル化合物由来の第2アミド系繰り返し単位とを含み、
前記第1アミド系繰り返し単位と第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、21:79~79:21であり、
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下であり、下記数式2で表示される耐光性色変化指数が1.55~1.64である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ:
[数1]
耐光性指数=ΔYI/Y
[数2]
耐光性色変化指数=ΔYI/ΔE
前記数式1において、Yはフィルムのモジュラスであり、ΔYIは60℃にてフィルムに340nm波長の光を0.63W/m の強度で4時間照射した後、UV照射を中止し水を噴射しながら50℃にて4時間静置する耐光性試験サイクルを12回繰り返す耐光性試験前後のフィルムの黄色度(YI)変化量である。
【請求項7】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合体であり、
前記ポリアミド系重合体は、第1ジカルボニル化合物由来の第1アミド系繰り返し単位と、第2ジカルボニル化合物由来の第2アミド系繰り返し単位とを含み、
前記第1アミド系繰り返し単位と第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、21:79~79:21であり、
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下であり、下記数式2で表示される耐光性色変化指数が1.55~1.64である、ディスプレイ装置:
[数1]
耐光性指数=ΔYI/Y
[数2]
耐光性色変化指数=ΔYI/ΔE
前記数式1において、Yはフィルムのモジュラスであり、ΔYIは60℃にてフィルムに340nm波長の光を0.63W/m の強度で4時間照射した後、UV照射を中止し水を噴射しながら50℃にて4時間静置する耐光性試験サイクルを12回繰り返す耐光性試験前後のフィルムの黄色度(YI)変化量である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド系フィルム、その製造方法、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系重合体は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムが室内外に拡張されることにより、機械的/光学的物性および耐久性がともに向上したポリアミド系フィルムに対する要求が持続的に増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実現例の目的は、機械的特性および光学特性に優れたポリアミド系フィルム、これを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供することである。
【0007】
他の実現例の目的は、機械的特性および光学特性に優れたポリアミド系フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実現例は、ポリアミド系重合体を含み、下記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下であるポリアミド系フィルムを提供する。
【0009】
[数1]
耐光性指数=ΔYI/Y
前記数式1において、Yはフィルムのモジュラスであり、ΔYIは60℃にてフィルムに紫外線を照射した後、紫外線照射を中止して50℃にて水を噴射する耐光性試験前後のフィルムの黄色度(YI)変化量である。
【0010】
他の実現例は、有機溶媒上でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合してポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階と、を含む、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0011】
また他の実現例は、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み、前記ポリアミド系フィルムは、前記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
【0012】
実現例は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムは、前記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下である、ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
実現例によるポリアミド系フィルムは、所定範囲の耐光性指数を有することにより、柔軟性および光学特性に優れ、紫外線による色変化が効果的に抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。
図2図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。
図3図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
図4図4は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0016】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0018】
本明細書において単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0019】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0020】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0021】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0022】
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、モジュラス等の機械的特性に優れるのみならず、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有し、紫外線に露出の際の前記光学特性の劣化が効果的に抑制されたポリアミド系フィルムを提供する。
【0023】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
前記ポリアミド系フィルムは、下記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下である。
【0024】
[数1]
耐光性指数=ΔYI/Y
前記数式1において、Yはフィルムのモジュラスであり、ΔYIは60℃にてフィルムに紫外線を照射した後、紫外線照射を中止して50℃にて水を噴射する耐光性試験前後のフィルムの黄色度(YI)変化量である。
【0025】
一部の実現例において、前記耐光性試験は、前記紫外線照射および前記水噴射を含む試験サイクルを10回以上繰り返して行い、例えば、前記試験サイクルは12回以上行われ得る。
【0026】
前記紫外線を照射する際、紫外線はUVA(Ultraviolet A)であり、例えば10nm~400nmの電磁波を含み得る。好ましくは、前記紫外線は、300nm~400nm波長の近紫外線であり得る。一部の実現例において、前記紫外線の強度は0.2W/m~1W/mであり、好ましくは、0.2W/m~0.8W/m、0.2W/m~0.7W/m、0.4W/m~1W/m、0.4W/m~0.8W/m、0.4W/m~0.7W/m、0.6W/m~1W/m、0.6W/m~0.8W/m、または0.4W/m~0.6W/mであり得る。
【0027】
例えば、前記紫外線照射および前記水噴射は、それぞれ1時間~10時間行われ、例えば、それぞれ2時間~8時間または3時間~6時間行われ得る。一部の実現例において、前記紫外線照射と前記水噴射とは同時間の間行われ得る。
【0028】
実現例によるポリアミド系フィルムは、前記耐光性指数を満足することにより、前述のような過酷な耐光性試験後にも、優れた透過率、ヘイズ等の光学的物性およびモジュラス等の機械的物性が維持され、黄色度およびCIE Lab表色系による色指数の変化が効果的に抑制され得る。
【0029】
一部の実現例において、前記耐光性指数は、0.630GPa-1以下、0.620GPa-1以下、0.600GPa-1以下、0.550GPa-1以下、0.540GPa-1以下、0.500GPa-1以下、0.450GPa-1以下、または0.410GPa-1以下であり得る。これにより、フィルムが優れたモジュラス、光透過率、およびヘイズなどを有することができ、前記耐光性試験前後の黄色度変化量および色差が減少し得る。一部の実現例において、前記耐光性指数は、0.100GPa-1以上、0.150GPa-1以上、または0.200GPa-1以上であり得る。
【0030】
一部の実現例において、前記耐光性試験後の黄色度(Yellow Index;YI)と試験前の黄色度との差(ΔYI)は、4.5以下であり得る。好ましくは、前記ΔYIは、3.9以下、3.8以下、3.5以下、3.0以下、または2.5以下であり得る。
【0031】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、下記数式2で表示される耐光性色変化指数が1.55~1.64であり得る。これにより、モジュラス、透過率、およびヘイズに優れるとともに、紫外線露出による光学特性の劣化が抑制されたポリアミド系フィルムを提供され得る。
【0032】
[数2]
耐光性色変化指数=ΔYI/ΔE
前記数式2において、ΔEは、前記耐光性試験前後のフィルムの色差である。前記色差は、CIE Lab表色系において、下記数式3で定義され得る。
【0033】
[数3]
前記数式3において、L、aおよびbはそれぞれ前記耐光性試験後のCIE Lab表色系によるL、aおよびb値であり、L 、a およびb はそれぞれ前記耐光性試験前のCIE Lab表色系によるL、aおよびb値である。
【0034】
一部の実現例において、前記耐光性試験前後のフィルムの色差(ΔE)は2.6以下であり得る。好ましくは、前記ΔEは、2.4以下、2.3以下、2.0以下、または1.6以下であり得る。
【0035】
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(n)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
【0036】
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(n)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
【0037】
さらに、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(n)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
【0038】
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
【0039】
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(R)は、800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(R)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
【0040】
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700nm、または4200nm~4650nmであり得る。
【0041】
なお、前記面内位相差(in-plane retardation、R)は、フィルムの平面内の直交する2つの軸の屈折率の異方性(△nxy=|n-n|)とフィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0042】
また、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルムの厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△nxz(=|n-n|)および△nyz(=|n-n|)にそれぞれフィルムの厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均と定義されるパラメータである。
【0043】
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学歪みおよび色相歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象も最小化し得る。
【0044】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体に加えて、フィラーをさらに含み得る。
【0045】
前記フィラーは、例えば、金属または準金属の酸化物、炭酸化物、硫酸化物などを含み得る。例えば、前記フィラーは、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記フィラーは、粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特殊なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体に亘ってむらなく分散され得る。
【0047】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは、光学特性の低下することなく、広い視野角を確保し得る。
【0048】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、n、nおよびnに関する複屈折値が適切に調整され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0050】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視されたり、フィラーに起因してヘイズが上昇したりする問題が発生し得る。
【0051】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~2500ppm、100ppm~2200ppm、200ppm~2500ppm、200ppm~2200ppm、250ppm~2100ppm、または300ppm~2000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して異物感が目視されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻脆性が低下し得る。
【0053】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は、1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
【0055】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を与え得る。
【0056】
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmとなるようにフォルディングする際、破断するまでのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0057】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように曲げて広げることを1回とする。
【0058】
前記ポリアミド系フィルムが、前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0059】
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合にも、高い輝度を実現するのに有利であり得る。
【0061】
ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。前記ポリアミド系重合体は、アミド繰り返し単位を含み得る。一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は必要に応じてイミド繰り返し単位を含んでも良い。
【0062】
前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成され得る。
【0063】
または、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され得る。この際、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
【0064】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0065】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0066】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0067】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0068】
前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
具体的に、前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0070】
より具体的に、前記化学式1の(E)は、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0071】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0072】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0073】
一部の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を含み得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0074】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0076】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され得る。
【0077】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0079】
具体的に、前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0080】
より具体的に、前記化学式3の(J)は、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0081】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物をともに含み得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)が前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0082】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0083】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。好ましくは、TPCおよびIPCがともに使用され得る。
【0084】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体は、2種以上のアミド系繰り返し単位を含み得る。
【0085】
例えば、前記2種以上のアミド系繰り返し単位は、第1アミド系繰り返し単位および第2アミド系繰り返し単位を含み得る。前記第1アミド系繰り返し単位は、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され、前記第2アミド系繰り返し単位は、第2ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応して形成され得る。
【0086】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0087】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ2つのカルボニル基を含み得る。前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度は、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基間の角度よりも大きくて良い。
【0088】
実現例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、構造異性体であり得る。構造異性体の関係にある2種のジカルボニル化合物を用いることにより、前記数式1および/または数式2を満足するポリアミド系重合体およびフィルムを形成することができ、これにより、ポリアミド系フィルムの光学特性および機械的特性を向上させ得る。
【0089】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。一部の実現例において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ1個のベンゼン環(フェニル基)を有し得る。
【0090】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0091】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物の場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
【0092】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は160°~180°であり、前記第2ジカルボニル化合物に含まれている2つのカルボニル基の間角は80°~140°であり得る。
【0093】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0094】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はTPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はIPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記第1ジカルボニル化合物としてTPC、前記第2ジカルボニル化合物としてIPCを適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い透光率、ヘイズ、透明度、モジュラスなどを有することができ、耐光性が向上し得る。
【0096】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0097】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0098】
[化B-1]
前記化学式B-1のyは1~400の整数である。
【0099】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0100】
一部の実現例において、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、21:79~79:21であり得る。前記第1および第2アミド系繰り返し単位のモル比を前述の範囲に設定することにより、ポリアミド系フィルムの前記耐光性指数および/または前記耐光性色変化指数を前記数式1および数式2を満足する範囲で効果的に調整し得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的/光学特性および耐光性が改善され得る。好ましくは、前記第1アミド系繰り返し単位と前記第2アミド系繰り返し単位とのモル比は、25:75~75:25、30:70~70:30、35:65~65:35、または40:60~60:40であり得る。
【0101】
前記ジアンヒドリド化合物は、特に制限されないが、環状ジアンヒドリド化合物を含み得る。例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、ポリアミド系樹脂の複屈折特性を減少させ、ポリアミド系フィルムの透過度などの光学特性を向上させ得る。
【0102】
一部の実現例において、前記環状ジアンヒドリド化合物は、脂環式ジアンヒドリド化合物または芳香族ジアンヒドリド化合物を含み得る。
【0103】
前記脂環式ジアンヒドリド化合物は、脂環式環構造に2個のアンヒドリド基が置換された化合物を含み得る。前記脂環式環構造は、4個~12個の炭素を含み、全体的に飽和されるか、または部分的に不飽和となり得る。前記脂環式ジアンヒドリド化合物は、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic dianhydride:CBDA)を含み得る。
【0104】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、炭素数6~30の芳香族環に2個のアンヒドリド基が置換された化合物を含み得る。前記芳香族環は、ベンゼン、ナフタレンなどの縮合環またはビフェニルなどの連結環を含み得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyltetracarboxylic dianhydride:BPDA)を含み得る。
【0105】
前記ジアンヒドリド化合物の前記2個のアンヒドリド基は、環状炭化水素基に直接置換されてもよく、前記脂環式または前記芳香族環において互いに対称となる位置に置換され得る。これにより、ポリアミド系フィルムの硬度および圧入の復元力が向上され得る。
【0106】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を含まなくてもよい。例えば、前記ジアンヒドリド化合物がフッ素基を含む場合、フィルムの塑性(plasticity)成分が過剰に増加することがあり、これにより、柔軟性および圧入に対する復元力が低下し得る。
【0107】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2で表される化合物を含み得る。
[化2]
【0108】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC-C12脂環式基、置換または非置換の4価のC-C12ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、-O-、-S-、-C(=O)-、および-S(=O)-の中から選択された連結基によって連結され得る。
【0109】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0110】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0111】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記の構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4)-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride;6-FDA)を含み得るが、これらに限定されない。
【0112】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とは、重合してアミド酸(amic acid)基を形成し得る。
【0113】
次いで、前記アミド酸基は、脱水反応によりイミド基に転換され得、この場合、ポリイミドセグメント(segment)およびポリアミドセグメントを含むポリアミド-イミド系重合体が形成され得る。
【0114】
前記ポリイミドセグメントは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を含み得る。
[化A]
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は前述の通りである。
【0115】
例えば、前記ポリイミドセグメントは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
[化A-1]
前記化学式A-1のnは、1~400の整数であり得る。
【0116】
一部の実現例において、前記ポリアミド系重合体は、アミド系繰り返し単位およびイミド系繰り返し単位を100:0~90:10のモル比で含み得る。これにより、ポリアミド系フィルムの柔軟性、機械的強度等の機械的特性および透明性、透過率、ヘイズ等の光学特性がともに改善され得る。
【0117】
好ましくは、前記ポリアミド系重合体は、前記イミド系繰り返し単位を含まなくても良い。この場合、前記耐光性指数および/または前記耐光性色変化指数が前述の範囲で効果的に調整され、これによりポリアミド系フィルムの耐光性が向上され得る。
【0118】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは青色顔料を含み得る。前記青色顔料は、TOYO社のOP-1300Aを含み得るが、これに限定されない。
【0119】
一部の実現例において、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して50ppm~5000ppmで含まれ得る。この場合、フィルムの耐光性試験前後の黄色度が減少し得る。好ましくは、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、100ppm~5000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~5000ppm、400ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm~3000ppm、200ppm~3000ppm、300ppm~3000ppm、400ppm~3000ppm、50ppm~2000ppm、100ppm~2000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~2000ppm、400ppm~2000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1000ppm、300ppm~1000ppm、または400ppm~1000ppmで含まれ得る。
【0120】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムはUVA吸収剤をさらに含み得る。前記UVA吸収剤は、当分野で使用される10nm~400nm波長の電磁波を吸収する吸収剤を含み得る。例えば、前記UVA吸収剤はベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物を含み、前記ベンゾトリゾール系化合物はN-フェノリックベンゾトリアゾール(N-phenolic benzotriazole)系化合物を含み得る。一部の実現例において、前記N-フェノリックベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール基が炭素数1~10のアルキル基で置換されたN-フェノリックベンゾトリゾールを含み得る。前記アルキル基は2個以上で置換され、直鎖状、分岐状または環状であり得る。
【0121】
一部の実現例において、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して0.1重量%~10重量%含まれ得る。これにより、フィルムの耐光性が向上され得る。好ましくは、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得る。
【0122】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、青色顔料およびUVA吸収剤をともに含み得る。これにより、フィルムの黄色度が減少し透明性が向上され、耐光性試験時の黄色度増加量および色差が減少し得る。
【0123】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意の(random)の位置の10個のポイントを測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有し、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に表れ得る。
【0124】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズが1%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは0.7%以下または0.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0125】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は3以下であり得る。例えば、前記黄色度が2.8以下または2.5以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記ポリアミド系フィルムのモジュラス(Y)は4GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5GPa以上、6GPa以上、6.3GPa以上または6.5GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0130】
前記ポリアミド系フィルムは、表面硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0131】
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm以上、20kgf/mm以上、21kgf/mm以上、または22kgf/mm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0132】
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0133】
実現例によるポリアミド系フィルムは、柔軟性および透明度が向上し、紫外線に対する透明度および色変化が抑制され得る。
【0134】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0135】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0136】
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3以下であり得る。
【0137】
また、前記ポリアミド系フィルムの前述した耐光性指数および耐光性色変化指数は、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的な物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の工程条件が総合されて調整され得る。
【0138】
例えば、ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程における重合条件および熱処理条件などと、すべてのものが総合され、目的とする範囲の耐光性指数および/または耐光性色変化指数を実現し得る
【0139】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0140】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下である。
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0141】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0142】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の範囲の耐光性指数を有することにより、優れた光学特性および機械的特性を有することができ、紫外線に対する耐光性が向上され得る。
【0143】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウが、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0144】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、前記数式1で表示される耐光性指数が0.660GPa-1以下である。
【0145】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0146】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的分解図である。図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的斜視図である。図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的断面図である。
【0147】
具体的に、図1図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0148】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0149】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0150】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0151】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などの駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0152】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0153】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実施例によるディスプレイ装置の外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0154】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムおよび機能層を含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0155】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透光率、および高い透明性を有するディスプレイ装置を提供することができるため、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0156】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性およびモジュラス、柔軟性などの機械的特性を有することができ、紫外線にさらされても光学的/機械的特性の変化(劣化)が抑制され得る。
【0157】
具体的に、前述の範囲の耐光性指数および/または耐光性色変化指数を有するポリアミド系フィルムの場合、優れた透明性、柔軟性および耐光性を有することにより、室外などの紫外線に強くさらされ得る環境においても、透明性および柔軟性が長期間維持され、これにより、屋外フレキシブルディスプレイ装置または携帯型フレキシブルディスプレイ装置などに効果的に適用され得る。
【0158】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0159】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【0160】
図4を参照すると、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物とジカルボニル化合物とを重合して、ポリアミド系重合体を含む溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む。
【0161】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド重合体を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0162】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含む樹脂である。選択的に、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含んでも良い。
【0163】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0164】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを混合および反応させてポリアミド(PA)溶液を調製する段階を含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0165】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記ジカルボニル化合物として、互いに異なる2種のジカルボニル化合物を用いて行われ得る。この場合、前記2種のジカルボニル化合物は、同時または順次混合および反応され得る。好ましくは、第1ジカルボニル化合物と前記ジアミン化合物とが反応してプレポリマーが形成され、前記プレポリマーと第2ジカルボニル化合物とが反応して、前記ポリアミド系重合体が形成され得る。これにより、ポリアミド系重合体の前記耐光性指数および/または耐光性色変化指数を容易に調整し得る。
前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0166】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階以降、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温基準200000cps~350000cpsに調整され得る。これにより、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0167】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0168】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くても良い。
【0169】
一部の実現例において、前記第1重合体溶液を調製する際、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が順次前記ジアミン化合物と反応し得る。これにより、粘度1000cps~10000cpsの第1重合体溶液が形成され得る。好ましくは、前記第1重合体溶液の粘度は、1000cps~8000cps、1000cps~5000cps、2000cps~10000cps、2000cps~8000cps、2000cps~5000cps、3000cps~10000cps、3000cps~8000cps、または3000cps~5000cpsであり得る。
【0170】
前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物がさらに反応して、粘度200000cps~350000cpsの第2重合体溶液を形成し得る。例えば、前記第2ジカルボニル化合物が追加反応する段階が前記粘度調整段階として提供され得る。
【0171】
ポリアミド系重合体溶液の粘度が、前記第1重合体溶液および前記第2重合体溶液を経て調整されることにより、目的とする範囲の耐光性指数および/または耐光性色変化指数が効果的に実現され得る。
【0172】
例えば、重合体溶液の粘度、耐光性指数および/または耐光性色変化指数は、前記第1ジカルボニル化合物と第2ジカルボニル化合物との投入順序および投入量を制御することによって調整され得る。
【0173】
前記重合体溶液を調製するために用いられる前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物とのモル比は21:79~79:21であり、好ましくは、25:75~75:25、30:70~70:30、35:65~65:35または40:60~60:40であり得る。
【0174】
前記第1ジカルボニル化合物と前記第2ジカルボニル化合物がこのような割合で用いられることにより、耐光性指数および/または耐光性色変化指数が前述の範囲にあるポリアミド系重合体およびフィルムを調製することができ、ポリアミド系フィルムのモジュラス、ヘイズ、透光度、黄色度、耐光性などを改善し得る。
【0175】
一部の実現例において、前記重合体溶液(第1重合体溶液)を調製する際、ジアンヒドリド化合物をジアミン化合物と反応させてポリアミック酸またはポリイミドを形成した後、前記ポリアミック酸またはポリイミドを前記ジカルボニル化合物と反応させてポリアミド-イミドを含む重合体溶液を形成し得る。この際、前述のジアンヒドリド化合物が使用され、その使用量はジカルボニル化合物およびジアンヒドリド化合物の総量に対して1モル%~10モル%、1モル%~3モル%または1モル%~5モル%であり得る。これにより、重合体溶液、第1重合体溶液および第2重合体溶液の粘度を目的とする範囲に調整することができ、目的とする耐光性指数および/または耐光性色変化指数を有するポリアミド系フィルムを製造し得る。一部の実現例において、前記重合体溶液を形成する際、前記ジアンヒドリド化合物を使用しなくてもよく、その場合、前記イミド繰り返し単位を含まないポリアミド系重合体が形成され得る。
【0176】
一実現例において、前記溶媒、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20℃~25℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少なすぎるか多すぎて、目的とする耐光性指数および/または耐光性色変化指数を有するポリアミド系重合体またはフィルムの製造が難しくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定の範囲に未達となり得る。好ましくは、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物の混合および反応は、-20~20℃、-20~15℃、-20~10℃、-15~20℃、-15~15℃、-15~10℃、-10~20℃、-10~15℃、-10~10℃、-8~20℃、-8~15℃、-8~10℃、-5~20℃、-5~15℃、または-5~10℃の温度条件にて行われ得る。
【0177】
一実現例において、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~50℃の温度条件にて行われ得る。前記温度範囲から外れると、重合核の形成が少なすぎるかまたは多すぎるため、目的とする耐光性指数および/または耐光性色変化指数を有するポリアミド系重合体またはフィルムの製造が難しくなり得る。したがって、ポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が低下し得る。また、前記重合体溶液の粘度が所定範囲に未達となり得る。好ましくは、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との混合および反応は、0℃~45℃、0℃~40℃、10℃~50℃、10℃~45℃、10℃~40℃、20℃~50℃、20℃~45℃、または20℃~40℃の温度条件にて行われ得る。
【0178】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0179】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、キャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド系フィルムは、向上された機械的物性および光学物性を有し得る。
【0180】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0181】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0182】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0183】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0184】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
一部の実現例において、前記重合体溶液に青色顔料およびUVA吸収剤のうち少なくとも1つが添加され得る。前記青色顔料および前記UVA吸収剤の種類および含有量は前述の通りである。前記青色顔料および前記UVA吸収剤は、前記重合体溶液中で前記ポリアミド系重合体と混合され得る。
【0186】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0187】
前記温度で保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0188】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0189】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上、-10℃~10℃の温度条件に静置して行われ得る。これにより、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性、光学特性がフィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得る。
【0190】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0191】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0192】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件で前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0193】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0194】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0195】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上され得る。
【0196】
前述のように、有機溶媒中でポリアミド系重合体を含む溶液を調製した後、前記溶液にフィラーを投入しても良い。
【0197】
前記フィラーの平均粒径は60nm~180nmであり、屈折率は1.55~1.75であり、含有量はポリアミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~3000ppmである。前記フィラーに関するさらに具体的な説明は、前述の通りである。
【0198】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で塗布、押出および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
【0199】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0200】
前記重合体溶液の粘度は、前述のように、常温にて200000cps~350000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミドフィルムを形成し得る。また、前述の耐光性指数および/または耐光性色変化指数を有するフィルムが製造され得る。
【0201】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度にて5分~60分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を70℃~90℃の温度にて15分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る
【0202】
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0203】
乾燥されたゲルシートは、熱処理されてポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
【0204】
前記熱硬化装置は、熱風により前記ゲルシートを熱処理し得る。
熱風による熱処理を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できず、そうすると、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0205】
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
【0206】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。
【0207】
また、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
【0208】
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含み得る。
【0209】
このような条件にて熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスおよび表面エネルギーを有するように硬化され、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正なレベルの光沢度を同時に確保し得る。
【0210】
一実現例によると、前記熱処理はIRヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
【0211】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、前述の耐光性指数および/または耐光性色変化指数を満足することができ、優れた光学的、機械的に物性および耐光性を示し得る。
【0212】
このような前記ポリアミド系フィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの輝度が求められる様々な用途に適用可能である。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0213】
特に、前記ポリアミド系フィルムは、機械的、光学特性および耐光性を有するので、ディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れてフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0214】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0215】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0216】
(実施例1)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)567gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)64.0g(0.200mol)を徐々に投入しながら溶解させた。
【0217】
次いで、テレフタロイルクロリド(TPC)30.37g(0.15mоl)をゆっくり投入しながら1時間撹拌した。そして、イソフタロイルクロリド(IPC)を全投入量に対して94%である9.13g(0.05mol)を投入した後、1時間撹拌して第1重合体溶液を調製した。第1重合体溶液の粘度は約1000cps~10000cpsであった。
【0218】
そして、前記第1重合体溶液に濃度10重量%のIPC溶液(DMAc溶媒)を1mL添加した後、30分間撹拌させる過程を繰り返して、粘度250000cpsの第2重合体溶液を調製した。この時、前記IPC溶液は約12.18g添加されており、添加されたIPCの量は、前記第1重合体溶液の調製時のTFMBの総モル数に対して、TPCとIPCとが投入されたモル数の残量に該当する。
【0219】
前記第2重合体溶液をガラス板に塗布して100℃の熱風で30分乾燥した。乾燥されたポリアミド重合体をガラス板から剥離し、ピンフレームに固定して80℃~300℃の温度範囲で2℃/分の速度で昇温しながら熱処理して、厚さ50μmのポリアミドフィルムを得た。
【0220】
(実施例2~5および比較例)
前記実施例1において、ジカルボニル化合物の含有量を下記表1および表2に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリアミドフィルムを製造した。
【0221】
比較例4~7においては、TPCの投入前、BPDAおよび6-FDAを投入してTFMBと反応させ、BPDAおよび6-FDAを約30℃にてTFMBと反応させた後、反応器温度を10℃に下げてTPCを添加した。
【0222】
実施例4、5、比較例5および7においては、前記第2重合体溶液に青色顔料(OP-1300A、Toyo社製)および/またはUVA吸収剤(Tinuvin 328、BASF社製)が添加された。青色顔料は、第2重合体溶液の総重量に対して500ppm、UVA吸収剤は1.25重量%で添加された。
【0223】
<評価例>
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0224】
(評価例1:モジュラス測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmで切り、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで12.5mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
【0225】
(評価例2:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0226】
(評価例3:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0227】
(評価例4:色指数測定)
HunterLab社のUltraScan Proを用いて、フィルムのCIE Lab表色系による色指数を測定した。
【0228】
(評価例5:耐光性評価)
Accelerated Weathering Tester(QUV/Spray、Q-Lab社製)を用いて、下記条件による耐光性試験サイクルを12回繰り返し、耐光性試験後の黄色度および色指数を再度測定し、ΔYI、ΔE、ΔYI/Y、およびΔYI/ΔEを計算して下記表1および表2に示した(Y:モジュラス)。なお、ΔEは、下記数式3に基づいて計算した。
耐光性試験サイクル:60℃にてフィルムサンプルに340nm波長の光を0.63W/mの強度で4時間照射した後、UV照射を中止し水を噴射しながら50℃にて4時間静置する。
【0229】
[数3]
前記数式3において、L、aおよびbはそれぞれ前記耐光性試験後のCIE Lab表色系によるL、aおよびb値であり、L 、a およびb はそれぞれ前記耐光性試験前のCIE Lab表色系によるL、aおよびb値である。
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
表1および表2を参照すると、実現例によって耐光性指数が0.660GPa-1以下に調整された実施例のフィルムの場合、優れたモジュラスを有し、耐光性指数が実現例の範囲を外れる比較例に比べて、光透過率およびヘイズに優れるだけでなく、耐光性試験前後の黄色度変化量および色差が減少して、紫外線による光学特性低下および色変化が効果的に防止されたことが確認された。
【符号の説明】
【0233】
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層
図1
図2
図3
図4