(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法および集積回路
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20231201BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20231201BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20231201BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20231201BHJP
【FI】
H04W28/06 110
H04W28/04 110
H04W16/28 130
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2022092476
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2019502119の分割
【原出願日】2017-07-04
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2016144911
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チトラカール ロジャン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン レイ
(72)【発明者】
【氏名】浦部 嘉夫
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】Raja Banerjea (Qualcomm),Comment Resolution on 9.3.1.23 - PHY TBD,IEEE 802.11-16/0780r1,米国,IEEE mentor,2016年07月06日
【文献】Reza Hedayat,MU BAR Frame Format,IEEE 802.11-15/1312r2,米国,IEEE mentor,2015年11月12日
【文献】Chittabrata Ghosh (Intel),Signaling of Multi-TID Aggregation Limit,IEEE 802.11-16/0667r0,米国,IEEE mentor,2016年05月16日
【文献】Alfred Asterjadhi (Qualcomm Inc.),HE variant HT control -buffer status report,IEEE 802.11-16/0806r0,米国,IEEE mentor,2016年07月06日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップリンクマルチユーザ送信
を要求し、前記アップリンクマルチユーザ送信用リソースを割り当てるためのトリガフレームを送信し、前記トリガフレームは、複数のトリガタイプのうちの1つを示すタイプサブフィールドを含む共通情報フィールドを含み、前記複数のトリガタイプは第1トリガタイプ
と第2トリガタイプを含
み、前記第1トリガタイプはベーシックトリガを示し、前記第2トリガタイプはマルチユーザブロックAckリクエストを示す、送信部と、
前記アップリンクマルチユーザ送信のデータを受信
する、
受信部と、を備え、
前記タイプサブフィールドが前記第1トリガタイプを示すとき、前記トリガフレームは、前記
要求されるアップリンクマルチユーザ送信の前記データ
として望ましいタイプを識別するトラフィック識別子を示す情報を含むタイプ依存フィールドを含
む、
通信装置。
【請求項2】
前記ベーシックトリガは、
前記要求されるアップリンクマルチユーザ送信のタイプに制限を課していない、
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項3】
アップリンクマルチユーザ送信
を要求し、前記アップリンクマルチユーザ送信用リソースを割り当てるためのトリガフレームを送信し、前記トリガフレームは、複数のトリガタイプのうちの1つを示すタイプサブフィールドを含む共通情報フィールドを含み、前記複数のトリガタイプは第1トリガタイプ
と第2トリガタイプを含
み、前記第1トリガタイプはベーシックトリガを示し、前記第2トリガタイプはマルチユーザブロックAckリクエストを示す、工程と、
前記アップリンクマルチユーザ送信のデータを受信
する、
工程と、を含み、
前記タイプサブフィールドが前記第1トリガタイプを示すとき、前記トリガフレームは、前記
要求されるアップリンクマルチユーザ送信の前記データ
として望ましいタイプを識別するトラフィック識別子を示す情報を含むタイプ依存フィールドを含
む、
通信方法。
【請求項4】
アップリンクマルチユーザ送信
を要求し、前記アップリンクマルチユーザ送信用リソースを割り当てるためのトリガフレームを送信し、前記トリガフレームは、複数のトリガタイプのうちの1つを示すタイプサブフィールドを含む共通情報フィールドを含み、前記複数のトリガタイプは第1トリガタイプ
と第2トリガタイプを含
み、前記第1トリガタイプはベーシックトリガを示し、前記第2トリガタイプはマルチユーザブロックAckリクエストを示す、処理と、
前記アップリンクマルチユーザ送信のデータを受信
する、
処理と、を制御し、
前記タイプサブフィールドが前記第1トリガタイプを示すとき、前記トリガフレームは、前記
要求されるアップリンクマルチユーザ送信の前記データ
として望ましいタイプを識別するトラフィック識別子を示す情報を含むタイプ依存フィールドを含
む、
集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、マルチユーザ管理フレームを交換するための送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)(登録商標) 802.11ワーキンググループは現在、802.11axタスクグループの下で次世代のWLAN(Wireless Local Area Network)技術の標準化に取り組んでいる。タスクグループは、アクセスポイント(AP:Access Point)および/または端末局(以降、「非AP STA(terminal Station)」または単にSTA)の高密度環境でのシステムスループット/エリアを向上させるためのスペクトル効率の改善を主な目的としている。IEEE802.11ax規格に基づくデバイスは、一般に、高効率(HE:High Efficiency)デバイスと呼ばれる。提案されている種々の技術の中で、IEEE802.11axタスクグループがスループット改善目標を達成するために採用したOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)およびアップリンクマルチユーザ送信の2つは、重要な技術である。
図1は、AP190およびAP190に関連付けられたいくつかのSTAを有する例示的な802.11ax WLANネットワーク100を示す。
【0003】
IEEE802.11規格は、IEEE802.11に基づく無線ネットワーク内で交換され得る種々のタイプのフレームを定義する。管理フレームは、無線ネットワーク内の無線通信を有効かつ維持するために使用される。これらのフレームは、IEEE802.11デバイスのメディアアクセス制御(MAC:Medium Access Control)層内で生成され、適切な受信を保証するために、通常、よりロバストな変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)で送信される。いくつかの管理フレームは、BSS(Basic Service Set)内のアクセスポイント(AP)によってブロードキャストされる。ブロードキャスト管理フレームは、例えば、BSSの存在ならびにBSSが動作している無線チャネル、BSSのサービスセット識別子(SSID:Service Set Identifier)などの種々の属性をアドバタイズするためのBeaconフレームを含む。APの通信範囲内にあるSTAは、Beaconフレームから取得した情報を使用して、BSSにまだ参加していない場合には、BSSに初めて参加し、BSSに既に参加している場合には、BSSの記録を更新することができる。しかしながら、管理フレームの大部分は、ユニキャスト方式(すなわち、特定のSTAまたはAP宛て)で使用される。
【0004】
場合によっては、APは、特定のSTAに管理フレームを送信して、特定の動作(例えば、STAにBSSを離脱するように要求するためのDisassociate フレームを実行するように)を要求することができる。しかし、大半の場合、APとSTAとの間で関連する管理フレームの交換が行われる。一例として、Association Requestフレームは、APからSTAに送信され、STAは、Association ResponseフレームをAPに返信してBSSに参加する。別の例として、Add Block Acknowledgment(ADDBA) Requestは、APからSTAに送信され、STAは、ADDBA ResponseフレームをAPに返信して、2つのデバイス間におけるBlock Acknowledgment(Ack)メカニズムを有効にするためのセットアップをする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】IEEE802.11-15/0132r17, Specification Framework for TGax, May 2015
【文献】IEEE802.11-16/0024r1, Proposed TGax draft specification
【文献】IEEE Std 802.11-2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダウンリンク(DL:downlink)において、MU-MIMO(Multi-user Multiple Input Multiple output)を用いたマルチユーザ送信が可能であり、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)は、ダウンリンクおよびアップリンク(UL:uplink)の両方において使用可能であるが、マルチユーザ送信で効率的な管理フレーム交換を行うことは、困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の非限定的な実施形態は、アップリンクマルチユーザ(UL MU:Uplink Multi user)送信用リソースを割り当てるためのTriggerフレームを送信し、Triggerフレームは、複数のTriggerタイプのうちの1つを示すタイプサブフィールドを含む共通情報フィールドを含み、複数のトリガタイプは、受信端末局から任意のタイプの応答フレームを要求するために使用される基本トリガを示す第1のトリガタイプと、複数の端末局から特定のタイプのUL MU応答フレームを要求するために使用される特定のトリガを示す第2のトリガタイプとを含む、送信部と、タイプサブフィールドが第2のトリガタイプを示す場合、複数の端末局から特定のタイプのUL MU応答フレームを受信する受信部とを有する、送信装置を提供する。
【0008】
これらの一般的および特定の態様は、デバイス、システム、方法、およびコンピュータプログラム、ならびにデバイス、システム、方法、およびコンピュータプログラムの任意の組み合わせを使用して実装することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示で説明される方法によって、効率的なマルチユーザ管理フレーム交換が可能となる。
【0010】
開示された実施形態のさらなる利益および利点は、明細書および図面から明らかになろう。利益および/または利点は、明細書および図面の種々の実施形態および特徴によって個別に得られてもよい。そのような利益および/または利点を1つ以上得るために、明細書および図面の種々の実施形態および特徴のすべてが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マルチユーザ管理フレーム交換を利用するシステムの特定の実施形態の図である。
【
図2】Block Ackメカニズムのセットアップ(Setup)およびティアダウン(Teardown)を含む例示的なフレーム交換シーケンスの図である。
【
図3】APと複数のSTAとの間のBlock Ack設定のための例示的なフレーム交換シーケンスの図である。
【
図4A】第1の実施形態で使用される「TF Timeout」フィールドを搬送するために使用されるエレメントの構成を示す。
【
図4B】第1の実施形態における「TF Timeout」フィールドの意味を示すテーブルである。
【
図5】APによって開始される、本開示に係る例示的なマルチユーザ管理フレーム交換の図である。
【
図6】APによって開始される、本開示に係る別の例示的なマルチユーザ管理フレーム交換の図である。
【
図7】STAによって開始される本開示に係る別の例示的なマルチユーザ管理フレーム交換の図である。
【
図8】STAによって開始される、本開示に係る別の例示的なマルチユーザ管理フレーム交換の図である。
【
図9A】第1の実施形態に係るTriggerフレームの構造を示す。
【
図9B】第1の実施形態に係るCommon Infoフィールドの構造を示す。
【
図9C】第1の実施形態に係るType-dependent Common Infoフィールドの構造を示す。
【
図9D】第1の実施形態に係るいくつかのフレームタイプを説明するテーブルを示す。
【
図9E】第1の実施形態に係るSubtype Specificサブフィールドの構造を示す。
【
図9F】第1の実施形態に係るAction Categoryサブフィールドを説明するテーブルを示す。
【
図9G】第1の実施形態に係るAction Fieldサブフィールドを説明するテーブルを示す。
【
図10A】第2の実施形態で使用される「TF Timeout」フィールドを搬送するために使用されるHE Variant Aggregated Control(A―Control)サブフィールドの構造を示す。
【
図10B】第2の実施形態に係るControlサブフィールドのフォーマットを示す。
【
図10C】第2の実施形態に係るControl IDサブフィールド値を説明するテーブルを示す。
【
図11A】第2の実施形態に係る種々のトリガタイプ(Trigger Type)を説明するテーブルを示す。
【
図11B】第2の実施形態に係るPreferred Response Typeサブフィールドのフォーマットを示す。
【
図11C】第2の実施形態に係るFrame Subtypeを説明するテーブルを示す。
【
図11D】第2の実施形態に係る種々のAction Field値を説明するテーブルを示す。
【
図11E】第2の実施形態に係るUser Infoフィールドのフォーマットを示す。
【
図12A】第3の実施形態に係るADDBA Extension elementフィールドのフォーマットを示す。
【
図12B】第3の実施形態に係るADDBA Capabilitiesフィールドのフォーマットを示す。
【
図12C】第3の実施形態に係る種々のTF Timeout値を説明するテーブルを示す。
【
図13A】第3の実施形態に係るPreferred Response Typeサブフィールドの構造を示す。
【
図13B】第3の実施形態に係る種々のFrame Type値を説明するテーブルを示す。
【
図14】第4の実施形態で使用されるTF Timeoutを搬送するために使用されるUL MU response scheduling Controlサブフィールド構造の図である。
【
図15】第4の実施形態に係るAPによって開始される例示的なマルチユーザ管理フレーム交換の図である。
【
図16】本開示に係るマルチユーザ管理フレーム交換を開始するためにAPによって実行される動作のフローチャートである。
【
図17】本開示に係るAPによって開始されるマルチユーザ管理フレーム交換に参加するためにSTAによって実行される動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、以下の図および実施形態を用いることでより理解することができる。本明細書に記載された実施形態は、本質的に単なる例示であり、本開示の可能な用途および使用のいくつかを説明するために使用され、本明細書に明示的に記載されていない代替実施形態に関して本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
図2は、Block Ackパラメータをネゴシエートするための管理フレームの交換を含む、2つの802.11デバイス間のフレーム交換の例示的なシーケンス200を示す。インフラストラクチャBSSにおいて、802.11デバイスの一方がAPとなり、他方がSTAとなる。シーケンス200は、(a)Block Ack Setupフェーズ210、(b)1つ以上のデータ交換フェーズ220、および(c)Block Ack Teardownフェーズ230の3つの異なるフェーズからなる。Block Ackは、IEEE802.11eの改正に伴い導入された機能である。その機能によって、802.11デバイスは、受信フレーム毎の即時Ackフレームの返信を要求することなく、別の802.11デバイスにフレームをバースト送信することができる。
【0014】
バースト送信を開始する802.11デバイスは、Originatorと呼ばれ、一方、受信側の802.11デバイスは、Recipientと呼ばれる。バースト送信完了後、Originatorは、Recipientに対してBlock Ack Requestフレームを送信することによって、受信フレームのビットマップを含むBlock Ackの送信を要求できる。このやり取りについて、
図2のフェーズ220に示す。IEEE802.11nの改正により、データのバーストをA-MPDUと呼ばれる単一の管理プロトコルデータユニット(MPDU:Management Protocol Data Unit)に集約できるようにすることで、この機能がさらに強化された。Block Ackは便利な機能であるが、この機能を使用できるようにするために、OriginatorとRecipientの両者が追加のリソースを用意する必要がある。Recipientは、フレームのバーストを受信するために追加のバッファを確保する必要があるだけでなく、フレームの受信状況を記録するスコアボードを保持する必要がある。同様に、Originatorは、送信フレームの記録を保持する必要がある。この準備は、Block Ack Setupフェーズ210で行われる。このフェーズにおいて、2つの802.11デバイスは、バッファサイズ、関連フレームのトラフィック識別子(TID:Traffic Identifier)、ネゴシエーションの有効期間などをネゴシエートできる。データ交換フェーズが完了すると、当事者のいずれかがTeardownフェーズ230でBlock Ackの取り決めをティアダウンしてもよい。
【0015】
先に説明したように、管理フレーム交換の大部分は、2つの802.11デバイスの間、通常、APとSTAとの間で行われる。一例として、Block Ack Setupフェーズ210に含まれる管理フレーム交換の詳細を
図3に示す。この例では、APがOriginatorであり、STAがRecipientである。APがBlock Ack機能を使用できるようになるには、Block Ack機能を使用したいAPがSTA毎にBlock Ack機能を設定する必要がある。フレーム交換シーケンス300、310および320は、それぞれSTA1、STA2およびSTAnとの間でBlock Ack機能を設定するために、APによって開始される。それぞれのシーケンスは、APと各STAとの間のADDBA Block Ack Action Managementフレームの交換を含む。例えば、シーケンス300において、APは、無線媒体に対する競合を行うことで交換を開始する。この競合については、本開示を通じて図中の記号302によって表される。
【0016】
APが競合に勝つと、STA1に向けて一意にアドレス指定されたADDBA Requestフレーム304を送信する。ADDBA Requestフレーム304を受信すると、STA1は、ADDBA Requestフレームの終端からShort Interframe Space(SIFS)時間後に、APに対してAckフレーム306を返信する。Ackフレームの送信については、無線媒体の競合を必要としない。ADDBA Requestフレームを処理し、要求を受け入れると、STAは、競合を通じて無線媒体を獲得した後、ADDBA Responseフレーム308を返信する。APは、Ackフレームを送信することによってADDBAフレームの受信に対する確認応答をする。STAがBlock Ack機能を使用する場合、逆方向、すなわちSTAによって開始される同様のフレーム交換が必要となる。多くのSTAが関与している場合、このSetup処理に多くの時間がかかることは明らかである。
【0017】
管理フレーム交換の際、MU-MIMOを使用するダウンリンク(DL)および直交周波数分割多元接続(OFDMA)を使用するDLおよびアップリンク(UL)において、マルチユーザ送信が可能であるが、効率的なマルチユーザ通信を妨げる問題が、特にUL方向において、いくつか存在する。これら問題は、次の2つの問題としてまとめられる。1)ほとんどの管理フレームは、Enhanced Distributed Channel Access(EDCA)の最も高いアクセスカテゴリ(AC:Access Category)であるAC_VOを使用して送信される。APがDLマルチユーザPHY Protocol Data Unit(PPDU)で複数の管理フレームを複数のSTAに送信する場合、フレームを首尾よく受信したSTAは、返信の準備ができ次第、それぞれの応答管理フレームをAPに返信しようとする。同時に、STAからマルチユーザの方式で複数の応答管理フレームを要求するために、APは、Triggerフレームと呼ばれる新たに定義された制御フレームの基本バリアントを送信しようとする。
【0018】
基本Trigger(Basic Trigger)フレームは、UL送信に使用されるリソースユニット(RU)割当(RU Allocation)、PPDU長、MCS等の情報を含む。Triggerフレームを受信すると、TriggerフレームでRUを割り当てられたSTAは、ULマルチユーザPPDUで各ULフレームを返信することができる。これにより、STAの応答管理フレームの間およびAPのTriggerフレームとの間で無線媒体に対する競合が行われる。Triggerフレームが媒体へアクセスできない場合、またはその送信が遅延された場合、STAは、ULフレームに対してマルチユーザ送信を利用することができない。2)Triggerフレームの基本バリアントは、STAがULマルチユーザPPDUで返信することができるフレームタイプを指定しない。これにより、いくつかのSTAが応答管理フレーム以外のフレームを返信し、APが1つ以上のTriggerフレームをそれらのSTAに送信することが必要となる状況につながる可能性がある。これらの両方の要因によって、非効率になるだけではなく、応答フレームの返信遅延により、タイムアウトのために要求フレームの一部を再発行する必要が生じる可能性がある。
【0019】
本開示で説明された技術は、多くの無線通信システムに適用可能であるが、例として、本開示における残りの記載については、IEEE802.11WLANシステムおよびそれに関連する用語をもってなされる。これは、代替の無線通信システムに関して本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0020】
再び
図1を参照すると、例示的な無線ネットワーク100は、AP190および多くの関連付けられたSTAを含み得る。STA2 120およびSTA6 160は、処理能力が高く、QoS要件が高く、省電力要件が比較的低いデバイスクラスを表す。STA1 110およびSTA4 140は、高い処理能力およびおそらくは高いQoS要件を有する可能性はあるが、消費電力についてより高い関心がある別のデバイスクラスを表す。もう1つの極端な場合、STA3 130およびSTA5 150は、処理能力が低く、消費電力に対して影響されやすい可能性のある別のクラスのデバイスを表す。IEEE 802.11axの用語では、STA1 110、STA2 120、STA4 140、およびSTA6 160は、高性能デバイスであるClass Aデバイスと見なされ、STA3 130およびSTA5 150は、能力の低いデバイスであるClass Bデバイスと見なされる。
【0021】
任意の無線通信における基本的な課題は、無線トランシーバが任意の時点で送信状態または受信状態のいずれか一方の状態でもありうるという事実である。無線デバイスが複数のトランシーバを含んでいても、送信信号は、受信信号よりも数倍強力であるため、トランシーバが特定の周波数で送信している間、同じ周波数の信号を受信することはできない。このため、事実上すべての無線デバイスは、半二重通信で動作する。この事実は次の課題にもつながる。送信部は自身で、送信信号に発生する可能性のある衝突を検出することができない。
【0022】
IEEE802.11では、受信側デバイスからの肯定応答を使用することで、この課題を排する。送信部によって要求された場合、受信者は、送信部のフレーム受信に成功したことを確認応答するために何らかの確認応答フレーム(Ack/Block Ackなど)を返信する。送信部がその送信に対して何も確認応答を受信しなければ、それは送信が失敗したと仮定し、フレームを再送するなどの回復動作の実行に移るかもしれない。予防措置について言えば、IEEE802.11は、プライマリチャネルアクセスメカニズムとして、搬送波感知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA:Channel Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を使用する。衝突回避は、ランダムバックオフを使用することで実現されるが、CSMAは、物理的なおよび仮想的なチャネルセンス(CS:Channel Sense)メカニズムの使用を伴う。物理的なCSメカニズムは、PHYレイヤによって提供され、無線媒体の実際の検出(プリアンブル検出またはエネルギー検出またはその両方)を含む。仮想的なCSメカニズムは、MACレイヤによって提供され、ネットワークアロケーションベクタ(NAV:Network Allocation Vector)を利用する。NAVは、ほとんどのIEEE802.11フレームで通知される時間情報に基づいて、媒体上の将来のトラフィックの予測を維持する。この時間は、MACヘッダに含まれてもよく、および/または、もし存在するならば、PHYヘッダ内のTransmit Opportunity(TXOP)時間から取得されてもよい。物理的なCSまたは仮想的なCSのいずれかが、媒体がビジーであることを示している場合、デバイスは、AckフレームまたはBlock Ackフレームなどのいくつかの特定のフレーム以外の信号を送信することはできない。NAVは、デバイスの送信をその通信範囲内にある第三者デバイスから保護するのに有用であるが、NAVを設定するフレームの受信者であるSTAからの競合を防止するようには設計されていない。
【0023】
マルチユーザ送信は、IEEE 802.11acの改正で導入された、MU-MIMOを用いた技術であるが、その対象は、ダウンリンクのみである。APは、異なる空間ストリームを使用して異なるSTA宛ての異なるユニキャストフレームを送信することができる。しかし、追加のアンテナが必要となり、かつ別種の複雑性を伴うので、この機能は、アップリンク方向には導入されなかった。先に説明したように、ダウンリンクおよびアップリンク方向の両方でOFDMAを使用するマルチユーザ送信は、IEEE802.11axタスクグループがスループット改善目標を達成するために採用した重要な技術である。ダウンリンク方向では、APがすべてのマルチユーザフレームを送信するので、マルチユーザ送信は、比較的簡単である。DLマルチユーザPPDUは、個々のPHYサービスデータユニット(PSDU:PHY Service Data Unit)が搬送される狭帯域チャネル(リソースユニットまたはRUとして知られる)に関する情報を搬送するワイドチャネルPHYヘッダから構成される。理論的には、1つの20MHzチャネル内で、最大37の独立した送信をマルチユーザPPDUで37の別個のSTAに搬送可能である。
【0024】
複数のSTAからの送信間の時間同期が必要であり、また、異なるSTAからの送信が互いに干渉しないようにする必要があるため、すなわち、STA毎にユニークなRUを割り当てる必要があるため、アップリンク方向の送信は、より複雑である。これは、APによって送信されるTriggerフレームと呼ばれる特別な制御フレームを通じて、IEEE802.11axにおいて実現される。Triggerフレームは、リソースユニット(RU:Resource Unit)割当、PPDU長、MCS等、UL送信で使用される情報を含む。Triggerフレームを受信すると、TriggerフレームでRUを割り当てられたSTAは、無線媒体に対する競合を行うことなく、Triggerフレームの終端からSIFS後にULマルチユーザPPDUで各ULフレームを送信することができる。任意のタイプのフレームを要求するために使用され得るBasic Triggerフレームとは別に、特定のタイプのフレームを要求するために、Triggerフレームの様々なバリアントが定義されている。例えば、MU-RTS(Multi-user Request To Send)バリアントは、複数のSTAからCTS(Clear To Send)フレームを要求するために使用され、MU-BAR(Multi-User Block Ack Request)は、複数のSTAなどからBlock Ackフレームを要求するために使用される。
【0025】
上記の知見に基づいて、本出願の発明者らは、本開示に至った。マルチユーザ管理フレーム交換の効率的でタイムリーな交換を可能にする方法が開示される。本開示の一態様によれば、APは、1つ以上のフレームを搬送するDL PPDUにおいて、時間を示し、その時間の間、DL PPDUに含まれるフレームにおいてアドレス指定された受信側STAは、明示的な再送許可を与える別のフレームを受信するまで、直前のDL PPDUへの即時確認応答以外のフレームを送信することはできない。これは、送信部が、それより以前に行った送信の受信者である1つ以上のSTAからなされるであろう送信を保護するものとして見なされ得る。第三者のSTAからの保護は、従来のNAV保護メカニズムを使用することによって保証され得る。これにより、APは、適時にULマルチユーザPPDUを要求するTriggerフレームを送信することができる。
【0026】
本開示の第2の態様は、UL PPDUにおいて要求されるフレームタイプを、APが望むタイプに制限するために、Triggerフレームをカスタマイズすることを含む。マルチユーザ管理フレーム交換の場合、これは、Triggerフレームにおいて、特定のTriggerフレームタイプを使用するか、またはBasic Triggerフレームの新しいバリアントを使用して、正確な管理フレームタイプ、サブタイプおよびその他の詳細を示し、これによって、アドレス指定されたSTAが、UL PPDUに含まれるべきAPが望む正確な管理フレームタイプを明確に識別できるようになる。
【0027】
本開示で提案されるマルチユーザ管理フレーム交換のための種々の実施形態は、以下のセクションで詳細に説明される。
【0028】
<第1実施形態>
前述のように、マルチユーザ管理フレーム交換の課題の1つは、複数のSTA宛ての管理要求フレームを含むDLマルチユーザPPDUを送信することによって、APが交換を開始する場合、それぞれのSTAからの、対応するシングルユーザ管理応答/通知フレームがAPのTriggerフレームとの間で媒体に対して競合し、Triggerフレームの送信に遅延が生じる可能性があるという事実である。複数の管理応答フレームを搬送するULマルチユーザPPDUは、APからTriggerフレームを受信することなく送信することはできないので、マルチユーザ管理フレーム交換に乱れが生じる。
【0029】
DL PPDUにより長いTXOP時間を含めることによって、フレーム交換を開始するAPがSTAからの後続の応答フレームを保護する試みを可能とし、それによって第三者STAのNAVを設定することになる。あるいは、APは、管理フレーム交換の前にマルチユーザRTS(MU―RTS:Multi-user RTS)およびCTSフレームの交換などの保護メカニズムを使用することもできる。しかしながら、NAV設定規則がSTAに適用されないので、DL PPDUの受信者であるSTAからの競合のためにTriggerフレームに遅延が生じるという問題は、解決されない。APが、STAのAckフレームをDL PPDUへ搬送するUL PPDUの終端からSIFS(Short Interframe Space)後にTriggerフレームを送信することによって、DL PPDUの受信者であるSTAから上記の競合を回避する試みが可能である。これにより、STAのシングルユーザ管理応答/通知フレームが媒体に対して競合することを防止する。しかし、この方法は、STAがこの時間内に管理応答/通知フレームを準備することができない場合があるので、必ずしも機能しない可能性がある。これは、いくつかの要因に起因する可能性があり、例えば、STAの処理能力、交換される管理フレームの性質、またはSTAが管理要求フレームの受信時に他の処理によりビジー状態にある場合などである。これによって、UL PPDUのRUが使われないことになり、媒体の非効率的な使用だけでなく、極端な場合には、第三者STAが、媒体がアイドル状態にあると認識し、送信を行い、その結果APで衝突が発生することにつながる。
【0030】
この問題を解決するために、本開示では新たな保護メカニズムが導入されている。これは、APがダウンリンクユニキャストフレームにおいて、ここではTF Timeoutと呼ばれるTriggerフレームタイムアウト(Trigger Frame Timeout)を表す時間を含むことを伴う。TF Timeoutをフレームに含めることは、次のダウンリンクフレームとして、アップリンクフレームを送信するためにRUを受信側STAに割り当てるTriggerフレームをタイムアウト時間内に送信するというAPの意図を示している。TF Timeoutは、TF Timeoutを搬送するという明確な目的のために定義された新しいエレメントの別個のフィールドとして搬送されてもよいし、既存のエレメントで搬送されてもよい。
【0031】
図4Aは、第1の実施形態に係るTF Timeout時間を搬送するエレメント400の構成を示す。エレメント400は、エレメント(Element)ID410と、長さ(Length)フィールド420と、TF Timeoutフィールド430とを含む。Element ID410は、エレメントを一意的に識別し、1オクテット長であり、IEEE802.11規格によって定義される。Lengthフィールド420も1オクテット長であり、Lengthフィールド後のオクテット数を指定する。この例では、Lengthフィールドは、1オクテットを示している。
【0032】
TF Timeoutフィールド430も1オクテット長であり、その符号化については、
図4Bのテーブル450に示す通りである。TF Timeoutに0が設定されると、Timeoutが設定されていないことを示し、TF Timeoutにゼロ以外の値が設定されていた場合は、TF Timeoutがリセットされる。ゼロ以外の値が設定されると、TF Timeoutは、タイムユニット(TU:Time Unit、1TU=1024μs)のタイムアウト時間を示す。
【0033】
図5は、この開示によって可能となる例示的なマルチユーザ管理フレーム交換500を示す。この例におけるフレーム交換シーケンスは、
図3で述べたBlock Ack設定処理のマルチユーザバージョンであり、AP(Originator)からのADDBA RequestフレームとSTA(Recipients)からのADDBA Responseフレームの交換を伴う。APが媒体の競合を通じて、媒体を獲得し、STA1、STA2、...、STAn宛ての1つ以上のユニキャストADDBA Requestフレーム504、506、...、508を搬送するOFDMA DLマルチユーザPPDU502を送信することによって、フレーム交換が開始される。「X、...、Y」は、XからYまで昇順に番号付けされたオブジェクトを表す。STAnの文字「n」は、2より大きく、マルチユーザPPDUで対応可能なSTAの最大数よりも小さい数を表す。
【0034】
第1の実施形態により、ADDBA Requestフレーム504、506、...、508のそれぞれは、TF Timeoutフィールド430を含むエレメント400も搬送する。TF Timeoutフィールド430は、518によって視覚化されたように、時間を示し、その間、各ADDBA Requestフレーム504、506、...、508のReceiver Addressフィールドと一致するアドレスを有するSTA(STA1、STA2、...、STAn)は、それぞれのULフレーム送信のためにRUを割り当てるTriggerフレーム510を受信するまで、直前のDL PPDUに対する即時確認応答以外のフレームを送信することはできない。TF Timeout時間用に使用される適切な値を決定するために、APは、交換されている管理フレームのタイプまたはSTAの処理能力などのいくつかの要因を考慮する。例えば、APは、ADDTSフレームが多くのパラメータを含み、STAがADDTSフレームを準備するのにより長い時間を必要とする可能性があるので、ADDTS管理フレームの交換のためにより長いTF Timeout時間を設定することができる。同様に、APは、交換に関係するすべてのSTAがより高い能力のクラスAデバイスである場合には、より短いTF Timeout時間を設定し、STAがより低い能力のクラスBデバイスである場合には、より長いTF Timeout時間を設定することができる。
【0035】
APのTF Timeout時間は、以前に実施したSTAとのBlock Ack Setupに伴うAPの経験に基づいて選択してもよい。例えば、STAがADDBA Responseフレームを時間通りに送信できないために、以前に行ったSTAとのBlock Ack Setupに失敗した場合、APは、以降のBlock Ack Setupにおいて、そのようなSTAのために、より長いTF Timeout時間を選択してもよい。同じフレーム交換に参加しているSTAのグループのTF Timeout時間は、同じ値にする必要がある。TF Timeout時間の計算は、APのMAC層内の専用モジュール1854によって行うことができ、またはMAC内のソフトウェア機能として実装することができる。TF Timeout時間を受信したSTAは、この時間のカウントダウンするためにMAC層内に別個のタイマ(TF Timeout Timer1954)を実装してもよく、タイマ値が非ゼロである間に任意の送信を制限するTX Restriction Flag1958を設定してもよい。APから有効なTriggerフレームを受信し、ULフレーム送信用のRUをSTAに割り当てると、TF Timeout Timer1954はゼロにリセットされ、TX Restriction Flag1958はクリアされる。
【0036】
ADDBA Requestフレームに対するAckフレームを受信した後、APは、Ackフレームを返信したSTAにTriggerフレーム510を送信して、ADDBA応答フレームの返信を要求する。前述の他の情報とは別に、Triggerフレーム510は、STAが直後のUL PPDUで送信することができるフレームタイプをADDBA Responseフレームに制限するための情報を含む。例示的なシーケンス500において、Triggerフレーム510は、RU512、514、...、516をそれぞれSTA1、STA2、...、STAnに割り当てる。Triggerフレームは、シングルユーザPPDU(Single user PPDU)フォーマットのブロードキャストTriggerフレームとして送信されてもよく、マルチユーザPPDU(Multi-user PPDU)フォーマットの複数のユニキャストTriggerフレームとして送信されてもよい。
【0037】
STAが時間内にADDBA Responseフレームを準備することができるとAPが確信している場合、APは、媒体に対して競合し、STAからAckフレームを受信した直後にTriggerフレーム510を送信しようと試みてもよい。あるいは、STAにADDBA Responseフレームを準備するためのより多くの時間を与えるために、送信を少し後で試みることを選択してもよいが、これは、第三者STAがTriggerフレームの送信を先取りするリスクを伴う。このリスクは、管理フレーム交換の前にマルチユーザRTS(MU―RTS)およびCTSフレームの交換などの保護メカニズムを使用することによって最小限に抑えられる。マルチユーザ管理フレーム交換を保護するためにMU-RTS/CTS交換または最初のダウンリンクMU PPDUで使用されるTXOP時間をAPがどのように選択するかは、TF Timeout時間に依存する。理想的には、管理フレーム交換を第三者STAから保護するために、管理フレーム交換全体をカバーするTXOP時間が望ましいが、TF Timeout時間が比較的長いと、そのような保護は、第三者の端末から不公平と見なされる可能性があるので望ましくない。
【0038】
より合理的なアプローチは、APが応答管理フレームを要求するTriggerフレーム510を保護するのにちょうどの長さのTXOP時間を設定することであり、Triggerフレーム510は、次のフレーム交換を保護するのに十分長いTXOP時間で次のTXOPを開始する。より慎重なアプローチは、AckフレームによってダウンリンクMU PPDU502の確認応答を行うまでの間だけTXOP時間を設定することであり、その場合、第三者STAに対する保護はない。管理フレーム交換に関与するAPまたはSTAが、Triggerフレームまたはシングルユーザ応答管理フレームを送信するために、どのように媒体に対して競合するかについてもまた、TXOP時間の長さに依存し得る。TXOP時間内で、競合には、ランダムなバックオフを実行せず固定時間、例えば、PIFSの間の媒体のセンシングだけを伴い、一方、TXOP時間外では、媒体競合はランダムバックオフも伴う。
【0039】
Triggerフレーム510を受信すると、各STA(STA1、STA2、...、STAn)は、ULマルチユーザPPDU520を送信し、そのPHYヘッダは全帯域を占め、それぞれのADDBA Responseフレーム522、524、...、526は、それぞれ割り当てられたRU512、514、...、516の狭い帯域を占める。ULマルチユーザPPDU520を受信すると、APは、個々のAckフレーム532、543、...、536を搬送するDLマルチユーザPPDUとして確認応答フレーム530を、別個のRUで送信することによって、フレーム交換を完了する。
【0040】
図6は、フレーム交換シーケンス500に非常に類似するフレーム交換シーケンス600を示すが、1つ以上のSTAが、要求された管理フレームすなわち、この例におけるADDBA Responseフレームを時間内に準備することができない場合の例を示す。ここで、STA1は、ADDBA Responseフレームを返信することができず、STA1に割り当てられたRUは、612で示すように空である。そのような場合、APは、STA1が以前にADDBA Requestフレームに対して確認応答をしたことがあるという経験を利用して、STA1が一定時間後にADDBA Responseフレームの送信を試みるという知識に基づく仮定を行う。
【0041】
EDCAチャネルアクセスの非効率性を回避するために、APは、Ackフレーム624、...、626を、各Ackフレームが1つのRUを占有した状態で、STAs2、...、STAnに搬送する同じDLマルチユーザPPDUにおいて、別のTriggerフレーム622をSTA1に送信する。Triggerフレーム622は、Ackフレームよりも長いので、APは、パディングを最小限に抑えるために、Ackフレームを搬送するRUと比較して、Triggerフレームに対してより大きなRUを割り当てることができる。さらに、Triggerフレーム622は、1つのSTA、すなわちSTA1に対してのみRUを割り当てるので、APは、例えば、その周波数帯域内の最大のRU、例えば、20MHzの動作帯域内の242 tone RUを割り当てる可能性が高い。要求されたアップリンクPPDUは、複数のユーザからの複数のPSDUといったより一般的な場合ではなく、シングルユーザからPSDUを搬送するので、これはTriggerフレームの特別な使用と見なされる。
【0042】
ADDBAフレーム交換以外の管理フレーム交換のために、APおよびSTAがBlock Ack設定を実施済みの場合、APは、個々のAckフレーム624、...、626ではなく、単一のMulti-STA Block Ack variantフレームを使用して、STAs2、...、STAnからのADDBA Requestフレームに対して確認応答することもできる。これはまた、Triggerフレーム622とAckフレームとの間のRUサイズのバランスをとるのに役立つ。Triggerフレーム620の終端からSIFS時間後、STA1は、Triggerフレーム622によって割り当てられたRUでAPにADDBA Responseフレーム630を返信する。最後に、APは、Ackフレーム640を送信することによってフレーム交換を終了する。この例では、STA1のみが最初にADDBA Responseフレームの送信に失敗するが、他のSTAも、各ADDBA Responseフレームの送信に失敗する、またはSTAが第2またはそれ以降のTriggerフレーム後であっても、ADDBA Response時間の送信に失敗するといった他の多くのシナリオも起こり得る。当業者には、ここで説明した回復動作、すなわち、Ackフレームと同じPPDUで別のTriggerフレームを送信することも、フレーム交換シーケンスを回復するのに機能することは明らかである。APは、ADDBA Responseフレームの送信に失敗したSTAの数が予め設定された値未満であるか、または回復の試みがマルチユーザフレーム交換シーケンスのためにAPによって予め決定されたタイムアウト時間を超過するまで、その処理を繰り返してもよい。
【0043】
図7は、STA1、STA2、...、STAn(Originator)と、STAが関連付けられているAP(Recipient)との間のBlock Ackメカニズムを設定するために使用される別の例示的なマルチユーザ管理フレーム交換シーケンス700を示す。シングルユーザの場合、STAは、ADDBA RequestをAPに送信することによってADDBAフレーム交換を開始する。APは、複数のSTAからの多くのそのようなリクエストを待機し、DLマルチユーザPPDUでADDBA Responseフレームを統合することが常に可能である。しかし、より効率的な方法は、STAからのADDBA Requestを同期させることであろう。
【0044】
APは、Block Ack設定を要求する可能性が最も高いSTAに関する十分な情報を有すると想定される。APは、要求していないBuffer Status ReportをSTAから受動的に収集することによって、事前にそのような情報を収集することができる。または、APは、BSRP(Buffer Status Report Poll)バリアントTriggerフレームを使用して、バッファステータスレポート(Buffer Status Report)のためにSTAを能動的にポーリングすることもできる。ある閾値を上回るバッファ負荷を示すSTAは、マルチユーザBlock Ack設定対象の候補と見なしてもよい。APは、STAがAPとの間で設定した既存のトラフィックストリーム(TS:Traffic Stream)の情報を、マルチユーザBlock Ack設定のための候補STAを決定するために使用することもできる。APは、候補STA(STA1、STA2、...、STAn)からのADDBA Requestフレームを要求するTriggerフレーム710を送信することによって、フレーム交換シーケンスを開始する。
【0045】
Triggerフレーム710を受信すると、アドレス指定された各STAは、それぞれのADDBA Requestフレーム722、724、...、726を準備し、それらをULマルチユーザPPDU720内のそれぞれに割り当てられたRUで送信する。APは、それぞれのAckフレームを搬送するDLマルチユーザPPDU730を送信することにより、ULマルチユーザPPDU720の受信に対する確認応答をする。すべてのADDBA Responseフレームを準備し終えると、APは、媒体に対して競合し、媒体を獲得すると、ADDBA Responseフレームを搬送するDLマルチユーザPPDU740をSTAに送信する。最後に、フレーム交換シーケンスは、各Ackフレームを搬送するULマルチユーザPPDUを送信することによって、STAによって完結される。
【0046】
図8は、フレーム交換シーケンス700に非常に類似した別の管理フレーム交換シーケンス800を示す。APは、候補STA(STA1、STA2、...、STAn)からのADDBA Requestフレームを要求するTriggerフレーム810を送信することによって、フレーム交換シーケンスを開始する。Triggerフレームを受信すると、アドレス指定された各STAは、それぞれのADDBA Requestフレームを準備し、それらをULマルチユーザPPDU820内のそれぞれに割り当てられたRUで送信する。この例では、APは、ADDBA Requestフレームを受信した際のSIFS時間内にADDBA Responseフレームを準備できるくらい十分に速い。EDCAの競合の非効率を回避するために、STA毎に、APは、ADDBA Requestフレームに対するAckフレームおよび各ADDBA Responseフレームを集約し、UL PPDU820の終了からSIFSだけ後に、DLマルチユーザPPDU830でそれらを送信する。最後に、フレーム交換シーケンスは、各Ackフレームを搬送するULマルチユーザPPDUを送信することによって、STAによって完結される。この例では、APが、フレーム交換シーケンス800全体を完了するのに十分な長さのTXOP時間をTriggerフレーム810に設定すると仮定する。
【0047】
図9Aは、この開示に従って特定のタイプのフレームを要求するようにカスタマイズ可能なTriggerフレームの構造を示す。フレーム構造900は、IEEE802.11axにおいて、ULマルチユーザ送信の要求とリソース割り当てに使用されるTriggerフレームと呼ばれる特殊な制御フレームとして提案されている。Frame Control902、Duration904、Receiver Address(RA)906、Transmitter Address(TA)908、およびFrame Check Sequence(FCS)918のような共通のMACフレームフィールドの他に、Triggerフレームは、以下のフィールドも含む。
・TriggerフレームによってRUを割り当てられたすべてのSTAに対する共通の情報を示すために使用されるCommon Infoフィールド910、
・特定のユーザ固有の情報を示すために使用される1つ以上のUser Infoフィールド912、...、914。ブロードキャストTriggerフレームは、複数のUser Infoフィールドを搬送するが、ユニキャストTriggerフレームは、単一のUser Infoフィールドのみを搬送する。
・任意で、Triggerフレームは、Triggerフレームを拡張し、STAに対してULマルチユーザPPDUを準備するためのより多くの時間を提供するために、Paddingフィールド916を含んでもよい。
【0048】
図9Bは、Common Infoフィールド910の構造を示し、以下のサブフィールドを含む。
・Trigger Typeサブフィールド922は、Triggerフレームのタイプを示す。第1の実施形態では、Trigger Typeサブフィールドは、値0(ゼロ)に設定され、Basic Triggerフレームを示す、
・Lengthサブフィールド924は、要求されたUL PPDUの長さを示す。
・Cascade Informationサブフィールド926は、1であれば、次のTriggerフレームが現在のTriggerフレームに続くことを示す、
・CS Requiredフィールド928は、STAが応答フレームを送信する前に物理的および仮想的なキャリアセンシング(Carrier Sensing)を行う必要があるかどうかを示している、
・BWフィールド930は、チャネル帯域幅を示す、
・Subfields CP and LT Type932、MU MIMO LTF mode934、# of LTF936、STBC938、LDPC Extra Symbol940、AP TX Power942およびPacket Extension944は、PHYレイヤがUL PPDUを準備および送信するために必要な情報を示す、
・Spatial Reuseサブフィールド946は、媒体のSpatial Reuseのための情報を示している、
・UL PPDUのSIGA内の予備ビットをどのように設定すべきかを示すHE-SIGA Reservedサブフィールド948、
・Type-dependent common infoサブフィールド950は、特定のTriggerフレームタイプに固有の情報を示す。IEEE802.11axで提案されている現在のBasic Triggerフレームには、Type-dependent common infoサブフィールドは含まれていない。
【0049】
図9Cは、第1の実施形態で提案されたType-dependent Common Infoフィールド950の構造を示しており、User Infoフィールドに示されたSTAがTriggerフレームに続くUL PPDUに含まれる可能性のあるフレームタイプを制限する。Basic Triggerフレームは現在、UL PPDUに含まれる可能性のある応答フレームタイプに制限を課していない。第1の実施形態によれば、2オクテット長のPreferred Response Typeサブフィールド952がType-dependent Common Infoフィールド950に含まれ、以下のサブフィールドを含む。
・1ビット長のFrame Typeサブフィールド954は、UL PPDUにおいて要求されるフレームタイプを示す。値0は、データ(Data)フレームを示し、値1は、管理(Management)フレームを示す。
・4ビット長のTID/Frame Subtypeサブフィールド956は、Frame Typeサブフィールド954がDataフレームを示す場合、DataフレームのTIDを示し、Frame Typeサブフィールド954がManagementフレームを示す場合、Management frame Subtypeを示す。IEEE802.11規格のFrame Controlフィールドのために定義されたSubtypeサブフィールドと同じフレームサブタイプ符号化が使われ、例えば、0がAssociation Requestフレーム、13がActionフレームを示す。
・1オクテット長のSubtype Specificサブフィールド958は、Frame Typeサブフィールド954がDataフレームを示す場合は予備であり、Frame Typeサブフィールド954がManagementフレームを示す場合、フレームタイプに関するさらなる詳細を示す。Subtype Specificサブフィールド958の符号化は、管理フレーム毎に異なる場合がある。例えば、Frame Subtypeサブフィールド956が13、すなわち管理アクション(Management Action)フレームを示す場合、Subtype Specificサブフィールド958は、5ビット長のAction Categoryサブフィールド972および3ビット長のAction Fieldサブフィールド974にさらに分割される。Action Categoryサブフィールド972の符号化は、
図9Fのテーブル980に詳述されており、値0~21は、IEEE802.11規格で定義されたAction frame Categoryを指定するために使用される。例えば、0がSpectrum Management Actionフレームを示し、3がBlock Ack Actionフレームを示す。Action Fieldサブフィールド974は、Actionフレームカテゴリ内のフレームフォーマットを指定し、Action CategoryがBlock Ack Actionフレームを示すときの例が
図9Gのテーブル990に詳述されている。値0~7の意味は、IEEE802.11規格の関連するセクションで定義されているものと同じであり、例えば、0がADDBA Request、1がADDBA Responseを示す。
【0050】
Preferred Response Typeの符号化は、
図9Dのテーブル960に要約されている。
【0051】
<第2実施形態>
第2の実施形態により、APは、HE Variant HT ControlフィールドのAggregated Control(A―Control)サブフィールド内のControlサブフィールドのうちの1つを使用してTF Timeoutを示す。
【0052】
図10Aは、IEEE802.11axで定義されているHE Variant HT Controlフィールド1000のA―Controlサブフィールドのフォーマットを示す。A―Controlサブフィールドは、1つ以上のControlサブフィールド1010、...、1020の並びと、それに続く、A―Controlサブフィールドの長さを30ビットにするために0でパディングされたオプションのPaddingサブフィールド1030を含む。各Controlサブフィールドは、4ビット長のControl IDサブフィールドと可変長のControl Informationサブフィールドで構成される。Control IDサブフィールドは、Control Informationサブフィールドで搬送される情報タイプを示し、Control Informationサブフィールドの長さは、予備以外のControl IDサブフィールドの値毎に定められる。Control ID0~3は、802.11axで定義されており、その詳細は
図10Cのテーブル1060に示す通りである。
図10Bは、第2の実施形態によるTF Timeoutを搬送するために使用されるControlサブフィールド1050のフォーマットを示す。Control IDサブフィールド1052の他に、8ビット長のTF Timeoutサブフィールド1054を搬送する。サブフィールドが取り得る符号化は、テーブル1060の行1062に詳述される通りである。ダウンリンクフレームのMACヘッダでA―Controlサブフィールド内のTF Timeoutを搬送することは、TF Timeoutを伝える効率的な方法となり得る。
【0053】
第2の実施形態により、新しいTrigger Typeが、Managementフレームを要求するために使用されるTriggerフレームに対して定義される。
図11Aのテーブル1100は、802.11axで定義された種々のTrigger Typeと共に、行1102の、第2の実施形態で提案された、Managementフレームを要求するために使用されるTrigger Typeの符号化の例を詳細に示す。Managementフレームを要求するために使用される場合、Trigger Typeサブフィールド922は、Management frame Triggerを示す値に設定される。
【0054】
図11Bは、Type―Dependent Common Infoフィールド950に含まれるように提案された2オクテット長のPreferred Response Typeサブフィールド1100の構造を示し、Preferred Response Typeサブフィールド1100は、APが望む特定のManagementフレームをさらに絞り込むために使用され、4ビット長のFrame Subtypeサブフィールド1112と8ビット長のSubtype Specificサブフィールド1114とを含み、残りの4ビットは予備となる。Frame Subtypeサブフィールド1112は、要求されているManagement frame Subtypeを示し、IEEE802.11規格のFrame Controlフィールドのために定義されたSubtypeサブフィールドと同じフレームサブタイプ符号化を使用することができる。Subtype Specificサブフィールド1114の符号化は、Managementフレーム毎に異なり、Frame Subtypeサブフィールド1112がManagement Actionフレームを示すときの符号化例を
図9Eに示す。
【0055】
図11Dのテーブル1140は、Action Categoryが、QoS Actionフレームである1を示す場合の、Action Fieldサブフィールド974の符号化例を示す。0から6までの値の意味は、IEEE802.11規格の関連するセクションで定義されているものと同じであり、例えば、1がADDTS Responseを示し、4がQoS Map configureを示す。
【0056】
図11Eは、User Infoフィールド912、...、914のうちの1つの構造1150を示し、以下のサブフィールドを含む。
・User Infoフィールドが意図するSTAのAIDを搬送するAID12サブフィールド1152、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAに割り当てられたRUを示すRU Allocationサブフィールド1154、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAによって応答として送信されるアップリンクPPDUのコードタイプを示すcoding Typeサブフィールド1156、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAによって応答として送信されるアップリンクPPDUのMCSを示すMCSサブフィールド1158、
・デュアルキャリア変調(DCM:Dual Carrier Modulation)が、User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAによって応答として送信されるアップリンクPPDUによって使用されるどうかを示すDCMサブフィールド1160、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAによって応答として送信されるアップリンクPPDUの空間ストリームを示すSS Allocationサブフィールド1162、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAによって応答として送信されるアップリンクPPDUに対するAPの想定されるRSSIを示すTarget RSSIサブフィールド1164、
・1ビット長のReservedフィールド1165、
・User Identifierサブフィールド1152によって識別されるSTAに固有の情報を示すType dependent User Infoサブフィールド1166。第2の実施形態により、Trigger Typeサブフィールド922がManagement frame Triggerを示す値に設定されている場合、Type dependent User Infoサブフィールド1166は、Managementフレーム交換に関連するユーザ固有の追加情報を搬送する。一例として、ADDTS QoS Actionフレームの交換中に使用される場合、Traffic Stream ID(TSID)値を含むことができ、またはBlock Ack Actionフレームの交換中に使用される場合、TID値を含むことができる。異なるUser Infoフィールドは、異なる値を搬送することができる。
【0057】
<第3実施形態>
第3の実施形態により、TF Timeoutを搬送する別の方法が提案される。新しいエレメントを定義する代わりに、管理フレームによって搬送された既存のエレメントをAPが使用して、TF Timeoutを搬送してもよい。
【0058】
Block Ack Actionフレームの場合の例を
図12Aに示す。TF Timeoutは、ADDBA Extensionエレメント1200で搬送される。Element ID1202は、802.11規格で規定されているように設定される。Lengthフィールド1204は、1オクテットを示し、ADDBA Capabilitiesフィールド1206は、
図12Bに示すようにカスタマイズされる。既存のNo-Fragmentationサブフィールド1212以外の残りの7ビットは、現在予備扱いとなっている。第3の実施形態により、予備扱いされているビットのいくつか、例えば、6ビットは、TF Timeout1224を示すために使用され、残りの1ビットは予備となる。TF Timeoutの符号化は、
図12Cのテーブル1230に詳述されている通りである。ゼロ値は、TF Timeoutが設定されていないことを示すか、または以前に設定されたTF Timeoutをリセットするために使用される。また、値1~63は、1~63TUのタイムアウト値をそれぞれ示す。第1の実施形態と比較して、第2の実施形態で提案された方法によって設定することができるTF Timeout範囲は、TF Timeoutを示すために既存のエレメントで使用可能なビット数に依存してより短くなるかもしれないが、実際の実装ではTF Timeout時間が非常に長くなることは期待されないので、APの送信を保護するという目標は達成することができる。
【0059】
第3の実施形態により、第1の実施形態で提案されたTriggerフレームのバリアントであるTriggerフレームの別のバリアントが提案される。
図13Aは、第3の実施形態により、Type-Dependent Common Infoフィールド950に含まれるように提案された2オクテット長のPreferred Response Typeサブフィールド1300の構造を示す。Preferred Response Typeサブフィールド1300は、2ビットのFrame Typeサブフィールド1310、4ビットのTID/Frame Subtypeサブフィールド1320および8ビットのSubtype Specificサブフィールド1330を含み、残りの2ビットは予備となる。
【0060】
残りのサブフィールドは、第1の実施形態で定義されたものと同じであるが、Frame Typeサブフィールド1310の符号化は、
図13Bのテーブル1340に詳述されている通りであり、802.11規格のFrame Controlフィールドに対して定義されたTypeサブフィールドの定義と一致する。TID/Frame Subtypeサブフィールド1320は、Frame Typeサブフィールド1310がDataフレームを示す場合には、DataフレームのTIDを示し、Frame Typeサブフィールド1310がManagementフレームを示す場合には、Management frame Subtypeを示し、Frame Typeサブフィールド1310がControlフレームを示す場合、Control frame Subtypeを示す。Subtype Specificサブフィールド1330は、Frame Typeサブフィールド1310がManagementフレームを示す場合、フレームタイプに関するさらなる詳細を示し、そうでない場合は、DataおよびControlフレームのために予約される。Subtype Specificサブフィールド1330の符号化は、Managementフレーム毎に異なり、Frame Subtypeサブフィールド1320がManagement Actionフレームを示す場合の符号化例を
図9Eに示す。
【0061】
<第4実施形態>
第4の実施形態によれば、APは、マルチユーザ管理フレーム交換を開始するDLマルチユーザPPDU内に、APがDLマルチユーザPPDUに続く次のフレームとして、RUをSTAに割り当てるTriggerフレームを送信する意図を受信側STAに示す、TF Flagと呼ばれる1つ以上のフラグを含む。TF Flagは、HE Variant HT Controlフィールド1000のA―ControlサブフィールドのControlサブフィールドのうちの1つで搬送されてもよい。
【0062】
図14は、Control IDサブフィールドが0である場合のControlサブフィールド1450の構造を示し、この場合、Control informationサブフィールドは、Controlサブフィールドを含むフレームに対する即時確認応答を搬送するULマルチユーザPPDUのためのスケジューリング情報を搬送する。Controlサブフィールド1450は、以下のサブフィールドを含む。
・アップリンク応答PPDUの長さを示すUL PPDU Lengthサブフィールド1452。
・アップリンク応答PPDUを送信するために割り当てられたRUを示すRU Allocationサブフィールド1454。
・APの送信電力を示すDL TX Powerサブフィールド1456。
・APのターゲット受信電力を示すUL Target RSSIサブフィールド1458。
・アップリンク応答PPDUのために使用されるMCSを示すUL MCSサブフィールド1460。
・Controlサブフィールド1450を含むフレームに続く次のフレームとして、RUをSTAに割り当てて後続のアップリンク応答PPDUを送信するためのTriggerフレームを送信するAPの意図を示す、第4の実施形態で提案されたTF Flag1462。
【0063】
TFフラグ1462が1に設定されているとき、送信制限を表し、TF Flag1462を搬送するフレームの受信者であるSTAは、APからRUを割り当てるTriggerフレームを受信するまで、またはTF Flag1462を搬送するフレームによって示されるTXOP時間が満了するまで、即時確認応答フレームを除いて、媒体上での送信が制限される。言い換えれば、第4の実施形態により、TF Flag1462を搬送するフレームによって示されるTXOP時間は、他の実施形態で提案された暗黙的なTF Timeoutとして機能する。Triggerフレームの受信に失敗した場合、STAは、TXOPが満了すると通常の送信を再開することができる。
【0064】
図15のフレーム交換シーケンス1500は、第4の実施形態によるマルチユーザ管理フレーム交換の一例を示す。Block Ack Setupのための管理フレーム交換を例にして説明する。ダウンリンクマルチユーザPPDU1510は、STA(STA1、...、STAn)宛ての複数のユニキャストADDBA Requestフレーム1512、...、1516を搬送する。各ADDBA Requestフレームはまた、TF Flag1462を1に設定した状態で、ADDBA Requestフレームに対するAckフレームのRUを割り当てるControlサブフィールド1450を搬送する。PPDU1510はまた、APがSTAからのADDBA Responseフレームを要求するTriggerフレーム1530を送信すると想定される時間をカバーするのに十分な長さを有するTXOP時間1520を設定する。TXOP時間1520は、第三者STAからTriggerフレーム1520を保護するものとして機能する。TF Flag1462は、1に設定されているので、Triggerフレーム1530が受信されるまで、STAは、各自のシングルユーザADDBA Responseフレームを送信することが制限される。
【0065】
TF Flagを搬送する別の代替方法は、マルチユーザ管理フレーム交換を開始するDLマルチユーザPPDUのPHYヘッダ内の1ビットを使用することであり、例えば、HE SIG-Bのcommon blockフィールドの1ビットである。そのビットが設定されている場合、送信制限は、SIG―B userフィールドに割り当てられた非ブロードキャストRUを持つすべてのSTAに適用される。
【0066】
<無線通信システム>
図16は、APによって開始されるマルチユーザManagementフレーム交換を容易にするために、APによって実施される例示的な方法1600を示す。STAによって開始されるフレーム交換の場合の例も同様であり、したがって説明を省略する。1610において、上位層アプリケーションからの情報に基づいて、またはAPのバッファ内にあるDataフレームに基づいて、APは、APがManagementフレーム交換を開始しようとするSTAのグループを選択する。APは、グループの選択中、STAの能力などの他の要因も考慮することができる。例えば、能力が高いクラスAのSTAを1つのグループにまとめ、能力の低いクラスBのSTAを別のグループにまとめるなどである。
【0067】
同様の情報に基づいて、1620において、APは、TF Timeoutに対して使用される値、またはTF Flagの方法が使用される場合に使用される適切なTXOP時間も決定する。1630において、APは、ユニキャスト管理フレームを搬送するためのマルチユーザPPDUを構築し、マルチユーザPPDUは、TF TimeoutまたはTF Flagを含む。1640において、媒体に対して競合した後、APは、マルチユーザPPDUを送信する。1650において、APは、各応答管理フレームを返信するためのRUをSTAに割り当てるTriggerフレームを構築し、適切な時間待機した後、Triggerフレームを送信する。1660において、STAから応答管理フレームを受信すると、APは、各Ackフレームを搬送するマルチユーザPPDUを送信する。STAのいずれかが応答管理フレームの返信に失敗した場合、APは、マルチユーザPPDUに、そのようなSTAそれぞれに対してRUを割り当てるブロードキャストまたは単一/複数のユニキャストTriggerフレームも含める。このステップは、TXOP時間が満了するまで、またはAPが関連するすべてのSTAから応答管理フレームを受信するまで、必要に応じて繰り返すことができる。
【0068】
図17は、APによって開始されたマルチユーザManagementフレーム交換に参加するためにSTAによって実施される例示的な方法1700を示す。STAによって開始されたフレーム交換の場合の例も同様であり、したがって説明を省略する。1710において、STAは、APによって送信されたマルチユーザPPDUを受信し、PHYヘッダからの関連情報に基づいて、STA宛ての管理フレームを抽出する。1720において、STAは、受信した管理フレームの処理とは別に、TF TimeoutフィールドまたはTF Flagのいずれかを抽出し、TF Timeout時間、またはTF Flagの方法が使用される場合、残りのTXOP時間に初期化されるタイマを開始する。タイマが非ゼロである間、STAは、受信した管理フレームに対する即時確認応答以外のフレーム送信を控える。
【0069】
1730において、STAは、APからの要求を受け入れ、Triggerフレームを待つ場合、応答管理フレームを準備する。1740において、APからTriggerフレームを受信すると、タイマがリセットされ、STAは、準備した応答管理フレームを、TriggerフレームによってSTAに割り当てられたRUで送信する。一方、STAがAPからTriggerフレームを受信する前にタイマが満了すると、送信制限が解除され、STAは自由に競合して、シングルユーザPPDUフォーマットで応答管理フレームを送信する。
【0070】
<アクセスポイントの構成>
図18は、例示的なAP1800のブロック図であり、AP1800は、
図1のAP190であってもよい。AP1800は、メモリ1820、二次記憶装置1840、1つ以上の無線通信インタフェース1850、および他の有線通信インタフェース1880に結合された中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)1830を含む。二次記憶装置1840は、関連する命令コード、データなどを永続的に記憶するために使用される不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。起動時に、CPU1830は、実行のために命令コードおよび関連データを揮発性メモリ1820にコピーしてもよい。命令コードは、AP1800の動作に必要なオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、デバイスドライバ、実行コードなどであってもよい。命令コードのサイズ、したがって、二次記憶装置1840およびメモリ1820の両方の記憶容量は、STA1700の記憶容量よりもかなり大きくてもよい。
【0071】
STA1800は、電源1810を備えてもよく、多くの場合、電源1810は、電源幹線でもよいが、場合によっては、車載バッテリーなどの大容量バッテリーでもよい。有線通信インタフェース1880は、イーサネット(登録商標)インタフェース、電力線インタフェース、または電話回線インタフェースなどでもよい。無線通信インタフェース1850は、セルラ通信用のインタフェース、Zigbee(登録商標)などの短距離通信プロトコル用のインタフェースを備えてもよく、またはWLANインタフェースでもよい。
【0072】
無線インタフェース1850は、MACモジュール1852およびPHYモジュール1860をさらに含んでもよい。APのMACモジュール1852は、STA1900のMACモジュールよりもかなり複雑であり、多くのサブモジュールを含んでもよい。サブモジュールの中でも特に、MACモジュール1852は、方法1600のステップ1620の実行を担うTF Timeout計算部1854を備えてもよい。MACモジュール1852はまた、Triggerフレーム内のPreferred Response Typeを表すのに使用される符号化のテーブル1856を格納してもよい。PHYモジュールは、MACモジュールデータと送信/受信信号間の変換を担う。無線インタフェースはまた、PHYモジュールを介して、無線媒体上の/無線媒体からの無線通信信号の実際の送信/受信を担う1つ以上のアンテナ1870に結合されてもよい。
【0073】
特定の実施形態では、オペレーティングシステムは、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を備え、ユーザアプリケーションは、ウェブブラウザまたはスマートフォンアプリを備え、デバイスドライバは、WLANドライバを備え、実行コードは、CPU1830によって実行されることで、メソッド1600を実行させる。実施形態に応じて、Preferred Response Typeの符号化テーブル1856は、Preferred Response Typeの符号化960、Preferred Response Typeの符号化1130、またはPreferred Response Typeの符号化1340を表すことができる。Preferred Response Typeの符号化テーブル1856は、製造時にデフォルト値と共に記憶されてもよいが、AP1800は、必要に応じて、現行のネットワーク条件に従ってこれらを微調整し、例えば、association処理の間、メンバSTAに新規テーブルの内容を通知してもよい。または、AP1800は、Beaconフレームのようないくつかの周期的なフレーム内の情報エレメントで新しいテーブル内容をアドバタイズすることを選択してもよい。
【0074】
AP1800は、分かりやすくするために
図18には図示していない多くの他の構成要素を備えてもよい。本開示に最も関連する構成要素のみが図示されている。
【0075】
<STAの構成>
図19は、例示的なSTA1900のブロック図であり、
図1のSTAのいずれか1つであってもよい。STA1900は、メモリ1920、二次記憶装置1940、および1つ以上の無線通信インタフェース1950に結合された中央処理装置(CPU)1930を含む。
【0076】
二次記憶装置1940は、関連する命令コード、データなどを永続的に記憶するために使用される不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。起動時に、CPU1930は、実行のために命令コードおよび関連データを揮発性メモリ1920にコピーしてもよい。命令コードは、STA1900の動作に必要なオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、デバイスドライバ、実行コードなどであってもよい。STA1900はまた、電源1910、例えば、リチウムイオン電池またはコインセル電池などを備えてもよい。無線通信インタフェース1950は、セルラ通信用のインタフェース、またはZigbeeなどの短距離通信プロトコル用のインタフェースを備えてもよく、またはWLANインタフェースでもよい。
【0077】
無線インタフェース1950は、MACモジュール1952およびPHYモジュール1960をさらに含んでもよい。サブモジュールの中でも特に、MACモジュール1952は、TF Timeoutフィールド、またはTF Flagの方法が使用される場合のTXOP時間のいずれかに基づいて送信制限期間を追跡するTF Timeoutタイマ1954を備えてもよい。MACモジュール1952は、送信制限状態を記録するTX Restriction Flag1958を維持してもよく、フラグがセットされている場合、STAは、即時確認応答以外のフレーム送信を控える。MACモジュール1952はまた、Preferred Response Typeの符号化を表すために使用されるビット符号化のテーブル1956を格納してもよい。PHYモジュールは、MACモジュールデータと送信/受信信号間の変換を担う。無線インタフェースはまた、PHYモジュールを介して、無線媒体上の/無線媒体からの無線通信信号の実際の送信/受信を担う1つ以上のアンテナ1970に結合されてもよい。
【0078】
特定の実施形態では、オペレーティングシステムは、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を備え、ユーザアプリケーションは、ウェブブラウザまたはスマートフォンアプリを備え、デバイスドライバは、WLANドライバを備え、実行コードは、CPU1930によって実行されることで、メソッド1700を実行させる。TF Timeoutタイマ1954は、TF Timeoutを追跡するために1720で使用される。実施形態に応じて、Preferred Response Typeの符号化テーブル1956は、Preferred Response Typeの符号化960、Preferred Response Typeの符号化1130、またはPreferred Response Typeの符号化1340を表すことができる。Preferred Response Typeの符号化テーブル1956は、製造時にデフォルト値と共に格納されてもよい。Preferred Response Typeの符号化テーブル1956は、association処理中にAPによって通知される値に従って、またはBeaconフレームのような周期的なフレームでAPによって定期的にアドバタイズされる値に基づいて更新されることも可能である。
【0079】
STA1900は、分かりやすくするために
図19には図示されていない多くの他の構成要素を備えてもよい。本開示に最も関連する構成要素のみが図示されている。
【0080】
上述した実施形態では、一例として、本開示をハードウェアで構成したが、ハードウェアと協働するソフトウェアで実現してもよい。
【0081】
また、本実施形態の説明に用いた機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIデバイスとして実現される。機能ブロックは、個々のチップとして形成されてもよいし、機能ブロックの一部または全部が単一チップに集積されてもよい。ここでは「LSI」という用語を用いているが、集積度によっては、「IC」、「システムLSI」、「スーパーLSI」、「ウルトラLSI」という用語も使用することができる。
【0082】
また、回路の集積化は、LSIに限らず、LSI以外の専用回路や汎用プロセッサで実現してもよい。LSIの製造後、プログラマブルなFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSIの回路セルの接続や設定の再構成が可能なリコンフィギュラブルプロセッサを用いてもよい。
【0083】
LSIに置き換わる集積回路化技術が、半導体技術やその技術に由来する他の技術の進歩の結果として現れた場合、そのような技術を用いて機能ブロックを統合することができる。別の可能性は、バイオテクノロジーなどの応用である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示は、効率的な方法で複数の無線装置間の管理フレームの交換を可能にするために使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 無線ネットワーク
110,120,130,140,150,160,1900 STA
190,1800 AP
1810,1910 電源
1820,1920 メモリ
1830,1930 CPU
1840,1940 二次記憶装置
1850,1950 無線インタフェース
1852,1952 MACモジュール
1854 TF Timeout計算部
1856,1956 Preferred Response Typeテーブル
1860,1960 PHYモジュール
1870,1970 アンテナ
1880 有線通信インタフェース
1954 TF Timeoutタイマ
1958 TX Restriction Flag