(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20231201BHJP
A61B 3/107 20060101ALI20231201BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/107
A61B3/10 100
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2022170756
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2018059894の分割
【原出願日】2018-03-27
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】多々良 陽子
(72)【発明者】
【氏名】中西 美智子
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 俊一
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136215(JP,A)
【文献】特開平11-347002(JP,A)
【文献】特表2013-518695(JP,A)
【文献】特開2015-033650(JP,A)
【文献】特開昭62-224330(JP,A)
【文献】特開2016-077774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を収納するヘッド部と、
前記ヘッド部を前記光学系の光軸方向に移動することにより被検眼を検査位置に配置させる移動機構と、
を含み、
前記光学系は、
対物レンズと、
前記対物レンズを介して
前記被検眼に光を投射し、前記被検眼からの戻り光を検出する屈折力測定光学系と、
光スキャナーを有し、光源からの光を前記光スキャナーにより偏向し、前記光スキャナーにより偏向された光を前記対物レンズを介して前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光を検出する検査光学系と、
ケラト光源と、前記ケラト光源と前記被検眼との間に配置され、前記ケラト光源からの光を透過する透光部が形成されたケラト板とを含み、前記対物レンズの外縁側から前記被検眼の角膜において前記対物レンズの光軸を中心に円弧状又は円周状の測定パターンを前記被検眼に投射し、前記被検眼の角膜からの戻り光を検出する角膜形状測定光学系と、
を含み、
前記光学系から光を投射してその戻り光を検出するときの装置の作動距離をWDとし、前記被検眼の角膜頂点から瞳孔までの距離をd1とし、前記被検眼の瞳孔から眼底までの距離をd2とし、前記被検眼の角膜頂点と前記ケラト板との距離をLとし、前記被検眼の角膜曲率半径をRとし、前記光スキャナーによるスキャン範囲をSA四方であるとしたとき、前記対物レンズの直径は、((WD+d1)×SA/d2)以上であり、且つ、2×((L+(R-√(R
2-1.5
2)))×tan(2×sin
-1(1.5/R))+1.475)より小さ
い、眼科装置。
【請求項2】
前記ケラト光源は、前記対物レンズと前記ケラト板との間に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記検査光学系は、OCT光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記測定光を前記光スキャナーにより偏向し、前記偏向された測定光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの前記測定光の戻り光と前記参照光との干渉光を検出するOCT光学系を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記検査光学系は、SLO光源からの光を前記光スキャナーにより偏向し、前記偏向された光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光を受光するSLO光学系を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼に対して複数の検査や測定を実行可能な眼科装置が知られている。被検眼に対する検査や測定には、自覚検査や他覚測定がある。自覚検査は、被検者からの応答に基づいて結果を得るものである。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主として物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、自覚検査や他覚測定が可能な眼科装置が開示されている。この眼科装置では、他覚測定として、被検眼の屈折力測定やケラト測定や光コヒーレンストモグラフィを用いた撮影や計測が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の検査や測定を実行可能な眼科装置において、他覚測定の種別に対応した複数の光学系で対物レンズを共用化することで装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、複数の光学系それぞれに最適な作動距離がある。従って、眼科装置の作動距離を複数の光学系の1つに最適な作動距離に設定すると、別の光学系を用いた測定の範囲が狭くなったり、測定の精度が低下したりするという問題がある。
【0007】
例えば、眼科装置の作動距離を屈折力測定光学系に最適な作業距離に設定した場合、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherenece Tomography:以下、OCT)を実行するためのOCT光学系によるスキャン範囲が狭くなる。これに対して、眼科装置の作動距離をOCT光学系に最適な作動距離に設定した場合、器械近視の影響を受けやすくなる。それにより、対物レンズの径を大きくする必要がある。ところが、対物レンズの径を大きくすると、ケラト測定に用いる測定パターンの投射が難しくなり、角膜形状を高精度に測定することができなくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、他覚測定の種別に対応した複数の光学系による測定範囲や測定精度を劣化させることなく対物レンズの径を最適化するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態の1つの態様は、対物レンズと、前記対物レンズを介して被検眼に光を投射し、前記被検眼からの戻り光を検出する屈折力測定光学系と、光スキャナーを有し、光源からの光を前記光スキャナーにより偏向し、前記光スキャナーにより偏向された光を前記対物レンズを介して前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光を検出する検査光学系と、ケラト光源と、前記ケラト光源と前記被検眼との間に配置され、前記ケラト光源からの光を透過する透光部が形成されたケラト板とを含み、前記対物レンズの外縁側から前記被検眼の角膜において前記対物レンズの光軸を中心に円弧状又は円周状の測定パターンを前記被検眼に投射し、前記被検眼の角膜からの戻り光を検出する角膜形状測定光学系と、を含み、作動距離をWDとし、前記被検眼の角膜頂点から瞳孔までの距離をd1とし、前記被検眼の瞳孔から眼底までの距離をd2とし、前記被検眼の角膜頂点と前記ケラト板との距離をLとし、前記被検眼の角膜曲率半径をRとし、前記光スキャナーによるスキャン範囲をSA四方であるとしたとき、前記対物レンズの直径は、((WD+d1)×SA/d2)以上であり、且つ、2×((L+(R-√(R2-1.52)))×tan(2×sin-1(1.5/R))+1.475)より小さく、前記スキャン範囲は、前記被検眼の眼底における(2×√2)ミリメートル四方以上の範囲である、眼科装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他覚測定の種別に対応した複数の光学系による測定範囲や測定精度を劣化させることなく対物レンズの径を最適化するための新たな技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の光学系を説明するための概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の光学系を説明するための概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の光学系を説明するための概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の光学系を説明するための概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成例を示す概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置の動作例のフローを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0013】
実施形態に係る眼科装置は、屈折力測定(レフ測定)と、ケラト測定と、スキャン測定とを実行可能である。スキャン測定は、測定用の光を偏向し、偏向された光を被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を検出することにより測定結果を得る。スキャン測定には、光コヒーレンストモグラフィを用いた計測や撮影、SLO光学系を用いた計測や撮影などがある。実施形態に係る眼科装置は、スキャン測定として、前眼部や眼底に対してOCTを実行する場合について説明する。
【0014】
以下、実施形態では、スウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に詳しく説明するが、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ、タイムドメインタイプ)のOCTを用いる眼科装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
【0015】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、更に、自覚検査を行うための自覚検査光学系や、その他の他覚測定を行うための他覚測定系を含む。
【0016】
自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0017】
他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。その他の他覚測定には、眼圧測定、眼底撮影等がある。
【0018】
以下、眼底共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。同様に、瞳孔共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。
【0019】
<光学系の構成>
図1に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。実施形態に係る眼科装置1000は、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eを検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察系5が設けられている。被検眼Eを検査するための光学系としてOCT光学系やレフ測定光学系(屈折力測定光学系)が設けられている。
【0020】
眼科装置1000は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、及びOCT光学系8を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8が1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
【0021】
(前眼部観察系5)
前眼部観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過し、リレーレンズ55及び56を通過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述の処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を後述の表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。
【0022】
(Zアライメント系1)
Zアライメント系1は、前眼部観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに投射する。Zアライメント光源11から出力された光は、被検眼Eの角膜Crに投射され、角膜Crにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサー13のセンサー面に結像される。角膜頂点の位置が前眼部観察系5の光軸方向に変化すると、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置が変化する。処理部9は、ラインセンサー13のセンサー面における光の投射位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき光学系を移動させる機構を制御してZアライメントを実行する。
【0023】
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、前眼部観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。XYアライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0024】
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。処理部9は、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部の表示画面に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させる機構を制御する。
【0025】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラト板31には、対物レンズ51の光軸を中心とする円周上に沿ってケラトリング光源32からの光を透過するケラトパターン(透過部)が形成されている。なお、ケラトパターンは、対物レンズ51の光軸を中心とする円弧状(円周の一部)に形成されていてもよい。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、被検眼Eの角膜Crにリング状光束(円弧状又は円周状の測定パターン)が投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータを算出する。
【0026】
(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)
レフ測定光学系は、屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7は、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
【0027】
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61は、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を通過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64の透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、ダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
【0028】
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を通過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を通過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を通過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。処理部9は、撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの屈折力値を算出する。例えば、屈折力値は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
【0029】
(固視投影系4)
ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に、後述のOCT光学系8が設けられる。ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路から分岐された光路に固視投影系4が設けられる。
【0030】
固視投影系4は、固視標を被検眼Eに呈示する。処理部9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。
【0031】
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を通過し、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を通過して眼底Efに投射される。液晶パネル41(又は液晶パネル41及びリレーレンズ42)は、光軸方向に移動可能である。
【0032】
(OCT光学系8)
OCT光学系8は、OCT計測を行うための光学系である。OCT計測よりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が撮影部位(眼底Ef又は前眼部)と光学系に共役となるように合焦レンズ87の位置が調整される。
【0033】
OCT光学系8は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4の光路は、ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路に結合される。それにより、OCT光学系8及び固視投影系4のそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
【0034】
OCT光学系8は、OCTユニット100を含む。
図2に示すように、OCTユニット100において、OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、共振器を含むレーザー光源を含んで構成される。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0035】
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、処理部9に送られる。
【0036】
OCT光源101は、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラー105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0037】
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
【0038】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラー122に導かれる。
【0039】
一方、ファイバーカプラー105により生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89により平行光束に変換され、光スキャナー88、合焦レンズ87、リレーレンズ85、及び反射ミラー84を経由し、ダイクロイックミラー83により反射される。
【0040】
光スキャナー88は、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する水平方向に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する垂直方向に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。このような光スキャナー88による測定光LSの走査態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0041】
ダイクロイックミラー83により反射された測定光LSは、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラー122に到達する。
【0042】
ファイバーカプラー122は、光ファイバー128を介して入射された測定光LSと、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラー122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0043】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
【0044】
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を処理部9の演算処理部220に送られる。演算処理部220は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算処理部220は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
【0045】
本例では、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114が設けられているが、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0046】
処理部9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から屈折力値を算出し、算出された屈折力値に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、合焦レンズ74の移動に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87をその光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41をその光軸方向に移動させる。
【0047】
実施形態に係る眼科装置1000では、対物レンズ51の直径(光軸に直交する方向の直径)を以下のように、上限値Dmaxより小さく、且つ、下限値Dmin以上である。それにより、角膜形状解析に有用なサイズの測定パターンを角膜Crに投射するケラト測定と、器械近視の影響を低減可能な広い視野での屈折力測定と、断層解析に有用なスキャン範囲でのOCT計測とが可能になる。例えば、上限値Dmaxは、角膜形状解析に有用なケラト測定と、器械近視の影響を低減して測定精度の高い屈折力測定とを実現できるように規定される。例えば、下限値Dminは、断層解析に有用なOCT計測を実現できるように規定される。
【0048】
[対物レンズの直径の上限]
図3に、実施形態に係る対物レンズ51の直径の上限の説明図を示す。
図3は、
図1の光学系の一部を拡大した図である。
図3において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
ケラト測定系3は、作動距離が変化しても高さが変化しないケラトリング像を取得できるようにテレセントリックな光学である。ケラト測定系3により角膜Crに光を投射したとき、角膜が凸面鏡として作用し、主として角膜Crの前面で反射された像が現れる。
【0050】
被検眼Eの角膜Crの曲率半径をRとし、対物レンズ51の光軸に対するケラトリング像の高さをhとし、光軸に対するリング状光束の投影角をαとする。ケラトリング光源32からのリング状光束の入射位置にリングパターン(測定パターン)が配置されるためには、角膜Crの曲率中心と当該入射位置とを結ぶ線が光軸となす角をβとすると、以下の式が成立する。
【0051】
h=R×sin(β) ・・・(1)
β=α/2 ・・・(2)
【0052】
ケラト板31に形成されたケラトパターンの半径(平均径)をH0とし、ケラト板31から角膜頂点までの距離をLとし、リング状光束の入射位置と角膜頂点との距離Δd(=R-√(R2-h2))を考慮すると、以下の式が成立する。
【0053】
H0=(L+(R-√(R2-h2)))×tan(α)+h ・・・(3)
【0054】
また、ケラトパターンの径方向の幅をΔtとすると、ケラトパターンの内径は、式(3)を変形することにより、式(4)が得られる。なお、式(4)において、α=2×sin-1(h/R)である。
【0055】
H=H0-Δt/2=(L+(R-√(R2-h2)))×tan(α)+h-Δt/2 ・・・(4)
【0056】
上記のように器械近視の影響を低減するためには、対物レンズ51の径は、できるだけ大きい方が望ましい。以上から、対物レンズ51の直径の上限値Dmaxは、2×H(ケラトパターンの内径)より小さい範囲で、できるだけ大きいことが望ましい。
【0057】
図4に、実施形態に係る対物レンズ51の直径の上限の具体例を示す。
【0058】
例えば、角膜形状解析に有用な角膜Cr上のφ3のエリアの角膜形状を測定するために、h=1.5ミリメートルである。被検眼Eの曲率半径が8ミリメートルであり、L=49.5ミリメートルであるとすると、投影角αは約21.6度となり、ケラトパターンの直径(平均径)は2×H=42.22455ミリメートルとなる。
【0059】
ケラトパターンの径方向の幅をΔt=0.05ミリメートルとすると、ケラトパターンの内径は41.44778ミリメートルとなり、外径は43.00543ミリメートルとなる。
【0060】
従って、対物レンズ51の直径の上限値Dmaxは、41.44778ミリメートルより小さい範囲で、できるだけ大きいことが望ましい。
【0061】
[対物レンズの直径の下限]
図5に、実施形態に係る対物レンズ51の直径の下限の説明図を示す。
図5は、
図1の光学系の一部を拡大した図である。
図5において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
所望のスキャン範囲のデータを網羅なく取得するために、光スキャナー88はX方向及びY方向それぞれの方向に測定光LSを偏向する。眼底Efにおけるスキャン範囲を直径RAの範囲とすると、光スキャナー88は各方向に少なくともRA×√2(=SA)だけ偏向する必要がある。
【0063】
ここで、光スキャナー88が被検眼Eの瞳孔と光学的に略共役になるように配置される。作動距離をWDとし、角膜頂点から瞳孔までの距離をd1とし、瞳孔から眼底までの距離をd2とする。瞳孔を頂点とし底辺が対物レンズ51の半径とする三角形と、瞳孔を頂点とし底辺が眼底Efにおけるスキャン範囲SA/2とする三角形との相似の関係から、対物レンズ51の直径の下限値Dminは、以下の式を満たす。
【0064】
Dmin=(WD+d1)×SA/d2 ・・・(5)
【0065】
上記のように、SA四方の範囲をスキャン範囲とするOCT計測を行うためには、対物レンズ51の直径は、Dmin以上である必要がある。
【0066】
例えば、眼底Efにおける黄斑部のサイズは、直径が2ミリメートルの範囲である。従って、スキャン範囲を2×√2四方とし、作動距離を63ミリメートルとし、d1を3ミリメートルとし、d2を21(=24-3)ミリメートルとすると、下限値Dminは約8.9mmとなる。
【0067】
図6に、実施形態に係る対物レンズ51とケラト板31との関係を模式的に示す。
図6において、
図1と同様の部分には同一符号を付す。
【0068】
図6において、ケラト板31には、内径がKpiであり、外径がKpoであるケラトパターンが形成されている。
図4に示したように、対物レンズ51の直径は、ケラト板31に形成されたケラトパターンの内径Kpiより小さい範囲であることが望ましい。内径Kpiは、2×Hにより求められる。従って、対物レンズ51の直径は、2×Hより小さい範囲であることが望ましい。
【0069】
また、
図5に示すように、対物レンズ51の直径は、眼底Efにおける所望のスキャン範囲に対してOCT計測が可能なサイズであることが望ましい。例えば、少なくとも黄斑部に対するOCT計測が可能なように、対物レンズ51の直径は、下限値Dmin以上であることが望ましい。
【0070】
<処理系の構成>
眼科装置1000の処理系の構成について説明する。眼科装置1000の処理系の機能的構成の例を
図7に示す。
図7は、眼科装置1000の処理系の機能ブロック図の一例を表す。
【0071】
処理部9は、眼科装置1000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9は、プロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0072】
処理部9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。また、眼科装置1000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
【0073】
移動機構200は、Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7及びOCT光学系8等の光学系が収納されたヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構200に対する制御を行う。
【0074】
(制御部210)
制御部210は、プロセッサを含み、眼科装置の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212とを含む。記憶部212には、眼科装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部211が動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
【0075】
主制御部211は、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。Zアライメント系1に対する制御には、Zアライメント光源11の制御、ラインセンサー13の制御などがある。Zアライメント光源11の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。ラインセンサー13の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。それにより、Zアライメント光源11の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、ラインセンサー13により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてラインセンサー13に対する光の投影位置を特定する。主制御部211は、特定された投影位置と、XYアライメント系2によって得られた輝点像の位置とに基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づき移動機構200を制御してヘッド部を前後方向に移動させる(Zアライメント)。
【0076】
XYアライメント系2に対する制御には、XYアライメント光源21の制御などがある。XYアライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、XYアライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいてXYアライメント光源21からの光の戻り光に基づく輝点像の位置を特定する。主制御部211は、所定の目標位置(例えば、アライメントマークALの中心位置)に対する輝点像Brの位置との変位がキャンセルされるように移動機構200を制御してヘッド部を左右上下方向に移動させる(XYアライメント)。
【0077】
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、被検眼Eの角膜形状パラメータが求められる。
【0078】
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標の表示のオン・オフや、固視標の表示位置の切り替えなどがある。それにより、被検眼Eの眼底Efに固視標が投影される。例えば、固視投影系4は、液晶パネル41(又は液晶パネル41及びリレーレンズ42)を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
【0079】
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
【0080】
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御、ロータリープリズム66の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。ロータリープリズム66の制御には、ロータリープリズム66の回転制御などがある。例えば、ロータリープリズム66を回転させる回転機構が設けられており、主制御部211は、この回転機構を制御することによりロータリープリズム66を回転させる。
【0081】
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば被検眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
【0082】
OCT光学系8に対する制御には、OCT光源101の制御、光スキャナー88の制御、合焦レンズ87の制御、コーナーキューブ114の制御、検出器125の制御、DAQ130の制御などがある。OCT光源101の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88の制御には、第1ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御、第2ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御などがある。
【0083】
合焦レンズ87の制御には、合焦レンズ87の光軸方向への移動制御、撮影部位に対応した合焦基準位置への合焦レンズ87の移動制御、撮影部位に対応した移動範囲(合焦範囲)内での移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、合焦レンズ87を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ87を光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、眼科装置には、合焦レンズ74及び87を保持する保持部材と、保持部材を駆動する駆動部が設けられる。主制御部211は、駆動部を制御することにより合焦レンズ74及び87の移動制御を行う。主制御部211は、例えば、合焦レンズ74の移動に連動して合焦レンズ87を移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87だけを移動させるようにしてもよい。
【0084】
コーナーキューブ114の制御には、コーナーキューブ114の光路に沿った移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動させる。検出器125の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、検出器125により検出された信号をDAQ130によりサンプリングし、サンプリングされた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220(画像形成部222)に実行させる。
【0085】
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0086】
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば他覚測定の測定結果、断層像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0087】
(演算処理部220)
演算処理部220は、眼屈折力算出部221と、画像形成部222と、データ処理部223とを含む。
【0088】
眼屈折力算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。例えば、眼屈折力算出部221は、得られたリング像が描出された画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折力算出部221は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を求める。或いは、眼屈折力算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて眼屈折力のパラメータを求めることができる。
【0089】
また、眼屈折力算出部221は、前眼部観察系5により取得されたケラトリング像に基づいて、角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。例えば、眼屈折力算出部221は、ケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、角膜曲率半径に基づいて上記パラメータを算出する。
【0090】
画像形成部222は、検出器115により検出された信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部222は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、フィルター処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。このようにして取得される画像データは、複数のAライン(被検眼E内における各測定光LSの経路)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データを含むデータセットである。
【0091】
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
【0092】
データ処理部223は、画像形成部222により形成された断層像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部223は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部223は、前眼部観察系5を用い得られた画像(前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0093】
データ処理部223は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部223は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
【0094】
(表示部270、操作部280)
表示部270は、ユーザインターフェイス部として、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部270は、
図1などに示す表示部10を含む。
【0095】
操作部280は、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280は、眼科装置に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
【0096】
表示部270及び操作部280の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
【0097】
(通信部290)
通信部290は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。通信部290は、例えば処理部9に設けられていてもよい。
【0098】
レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7は、実施形態に係る「屈折力測定光学系」の一例である。OCT光学系8は、実施形態に係る「検査光学系」の一例である。ケラト測定系3は、実施形態に係る「角膜形状測定光学系」の一例である。ケラトリング光源32は、実施形態に係る「ケラト光源」の一例である。
【0099】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作について説明する。
【0100】
図8に、眼科装置1000の動作の一例を示す。
図8は、眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図8に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図8に示す処理を実行する。
【0101】
(S1:アライメント)
図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部280に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1000は、アライメントを実行する。
【0102】
具体的には、主制御部211は、Zアライメント光源11やXYアライメント光源21を点灯させる。また、主制御部211は、前眼部照明光源50を点灯させる。処理部9は、撮像素子59の撮像面上の前眼部像の撮像信号を取得し、表示部270に前眼部像を表示させる。その後、
図1に示す光学系が被検眼Eの検査位置に移動される。検査位置とは、被検眼Eの検査を十分な精度内で行うことが可能な位置である。前述のアライメント(Zアライメント系1及びXYアライメント系2と前眼部観察系5とによるアライメント)を介して被検眼Eが検査位置に配置される。光学系の移動は、ユーザによる操作若しくは指示又は制御部210による指示にしたがって、制御部210によって実行される。すなわち、被検眼Eの検査位置への光学系の移動と、他覚測定を行うための準備とが行われる。また、このアライメントは測定が終わるまで随時行われる。
【0103】
また、主制御部211は、レフ測定光源61と、合焦レンズ74と、液晶パネル41をそれぞれの光軸に沿って原点の位置(例えば、0Dに相当する位置)に移動させる。
【0104】
(S2:ケラト測定)
次に、主制御部211は、所望の固視位置に対応した表示位置に固視標を示すパターンを液晶パネル41に表示させる。それにより、所望の固視位置に被検眼Eを注視させる。
【0105】
その後、主制御部211は、ケラトリング光源32を点灯させる。ケラトリング光源32から光が出力されると、被検眼Eの角膜Crに角膜形状測定用のリング状光束が投射される。眼屈折力算出部221は、撮像素子59によって取得された像に対して演算処理を施すことにより、角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。制御部210では、算出された角膜屈折力などが記憶部212に記憶される。主制御部211からの指示、又は操作部280に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科装置1000の動作はステップS3に移行する。なお、ケラト測定は、次のレフ測定でリング像を取得するときに同時に、又は連続的に実行されてもよい。
【0106】
(S3:屈折力測定)
次に、主制御部211は、液晶パネル41を制御することにより固視標を被検眼Eに投影させ、屈折力測定を実行させる。
【0107】
レフ測定では、主制御部211は、前述のようにレフ測定のためのリング状の測定パターン光束を被検眼Eに投射させる。被検眼Eからの測定パターン光束の戻り光に基づくリング像が撮像素子59の撮像面に結像される。主制御部211は、撮像素子59により検出された眼底Efからの戻り光に基づくリング像を取得できたか否かを判定する。例えば、主制御部211は、撮像素子59により検出された戻り光に基づく像のエッジの位置(画素)を検出し、像の幅(外径と内径との差)が所定値以上であるか否かを判定する。或いは、主制御部211は、所定の高さ(リング径)以上の点(像)に基づいてリングを形成できるか否かを判定することにより、リング像を取得できたか否かを判定してもよい。
【0108】
リング像を取得できたと判定されたとき、眼屈折力算出部221は、被検眼Eに投射された測定パターン光束の戻り光に基づくリング像を公知の手法で解析し、仮の球面度数S及び仮の乱視度数Cを求める。主制御部211は、求められた仮の球面度数S及び乱視度数Cに基づき、レフ測定光源61、合焦レンズ74、及び液晶パネル41を等価球面度数(S+C/2)の位置(仮の遠点に相当する位置)へ移動させる。この後もう一度リング像を取得し、解析し、仮の球面度数S及び仮の乱視度数Cを求め、一度目の測定で移動した位置から移動して微調整する。主制御部211は、その位置から液晶パネル41を更に雲霧位置に移動させた後、本測定としてレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を制御することによりリング像を再び取得させる。主制御部211は、前述と同様に得られたリング像の解析結果と合焦レンズ74の移動量から球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を眼屈折力算出部221に算出させる。
【0109】
また、眼屈折力算出部221は、求められた球面度数及び乱視度数から被検眼Eの遠点に相当する位置(本測定により得られた遠点に相当する位置)を求める。主制御部211は、求められた遠点に相当する位置に液晶パネル41を移動させる。制御部210では、合焦レンズ74の位置や算出された球面度数などが記憶部212に記憶される。主制御部211からの指示、又は操作部280に対するユーザの操作若しくは指示により、眼科装置1000の動作はステップS4に移行する。
【0110】
リング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、強度屈折異常眼である可能性を考慮して、レフ測定光源61及び合焦レンズ74をあらかじめ設定したステップでマイナス度数側(例えば-10D)、プラス度数側(例えば+10D)へ移動させる。主制御部211は、レフ測定受光系7を制御することにより各位置でリング像を検出させる。それでもリング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、所定の測定エラー処理を実行する。このとき、眼科装置1000の動作はステップS4に移行してもよい。制御部210では、レフ測定結果が得られなかったことを示す情報が記憶部212に記憶される。
【0111】
OCT光学系8の合焦レンズ87は、レフ測定光源61や合焦レンズ74の移動に連動して光軸方向に移動される。
【0112】
(S4:断層像撮影)
次に、主制御部211は、液晶パネル41を制御することにより固視標を被検眼Eに投影させ、OCT計測を実行させる。
【0113】
主制御部211は、OCT光源101を点灯させ、光スキャナー88を制御することにより眼底Efの所定の部位を測定光LSでスキャンさせる。測定光LSのスキャンにより得られた検出信号は画像形成部222に送られる。画像形成部222は、得られた検出信号から眼底Efの断層像を形成する。以上で、眼科装置1000の動作は、終了となる(エンド)。
【0114】
以上説明したように、レフ測定光学系とOCT光学系8とで対物レンズ51が共用されている場合において、対物レンズ51の直径をケラトパターンの内径より小さい範囲でできるだけ大きくすることができる。それにより、対物レンズ51の外縁側からケラト照明を行いつつ、作動距離を変更することなく、有用なケラト解析結果を取得し、且つ、器械近視の影響を低減する広い視野での屈折力測定が可能な眼科装置を提供することができる。
【0115】
更に、対物レンズ51の直径を、黄斑部のOCT計測が可能なスキャン範囲を確保するような下限値以上にしたので、作動距離を変更することなく、有用な断層解析結果(断層像、層厚分布、層厚情報等の解析結果)を取得可能な眼科装置を提供することができる。
【0116】
なお、実施形態では、光スキャナーを有する検査光学系としてOCT光学系を例に説明したが、実施形態に係る眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態に係る検査光学系は、SLO光学系である。SLO光学系は、光スキャナーにより光で眼底Efをスキャンし、その戻り光を受光デバイスで検出するための光学系である。いくつかの実施形態において、SLO光学系は、共焦点光学系を用いたレーザー走査により眼底Efの正面画像を得る。SLO光学系は、光スキャナーと、SLO光源からの光を光スキャナーで偏向し偏向された光を被検眼Eに投射するSLO投射系と、その戻り光を受光するSLO受光系とを含む。
【0117】
この場合でも、対物レンズ51の直径を、少なくとも黄斑部の正面画像の取得が可能なスキャン範囲を確保するような下限値以上にすることで、作動距離を変更することなく、有用な正面画像解析結果を取得可能な眼科装置を提供することができる。
【0118】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0119】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1000)は、対物レンズ(51)と、屈折力測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)と、検査光学系(OCT光学系8)と、角膜形状測定光学系(ケラト測定系3)と、を含む。屈折力測定光学系は、対物レンズを介して被検眼(E)に光を投射し、被検眼からの戻り光を検出する。検査光学系は、光スキャナー(88)を有し、光源からの光を光スキャナーにより偏向し、光スキャナーにより偏向された光を対物レンズを介して被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を検出する。角膜形状測定光学系は、対物レンズの外縁側から円弧状又は円周状の測定パターンを被検眼に投射し、被検眼の角膜(Cr)からの戻り光を検出する。作動距離をWDとし、被検眼の角膜頂点から瞳孔までの距離をd1とし、被検眼の瞳孔から眼底までの距離をd2とし、光スキャナーによるスキャン範囲をSA四方であるとしたとき、対物レンズの直径は、((WD+d1)×SA/d2)以上である。
【0120】
このような構成によれば、屈折力測定光学系と検査光学系とで対物レンズが共用されている場合において、対物レンズの外縁側から照明しつつ、作動距離を変更することなく、眼底におけるSA四方(SA×SA)のスキャン範囲での検査が可能になる。それにより、他覚測定の種別に対応した複数の光学系による測定範囲や測定精度を劣化させることなく対物レンズの径を最適化し、眼科装置の小型化を図ることが可能になる。また、眼底における所望のスキャン範囲をスキャンして有用な検査結果の取得が可能になる。
【0121】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、スキャン範囲は、被検眼の眼底(Ef)における(2×√2)ミリメートル四方以上の範囲である。
【0122】
このような構成によれば、作動距離を変更することなく、眼底における黄斑部をスキャンして有用な検査結果の取得が可能な眼科装置を提供することができる。
【0123】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、角膜形状測定光学系は、ケラト光源(ケラトリング光源32)と、ケラト光源と被検眼との間に配置され、ケラト光源からの光を透過する透光部(ケラトパターン)が形成されたケラト板(31)と、を含み、被検眼の角膜において対物レンズの光軸を中心に測定パターンを投射する。被検眼の角膜頂点とケラト板との距離をLとし、対物レンズの光軸に対する測定パターンに基づく像の高さをhとし、被検眼の角膜曲率半径をRとし、測定パターンの径方向の幅をΔtとしたとき、対物レンズの直径は、2×((L+(R-√(R2-h2)))×tan(2×sin-1(h/R))+h-Δt/2)より小さい。
【0124】
このような構成によれば、対物レンズの直径を、ケラト板に形成された透光部の内径より小さい範囲でできるだけ大きくすることができるので、作動距離を変更することなく、有用なケラト解析結果を取得し、且つ、器械近視の影響を低減する広い視野での屈折力測定が可能な眼科装置を提供することができる。
【0125】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、対物レンズ(51)と、屈折力測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)と、検査光学系(OCT光学系8)と、角膜形状測定光学系(ケラト測定系3)と、を含む。屈折力測定光学系は、対物レンズを介して被検眼(E)に光を投射し、被検眼からの戻り光を検出する。検査光学系は、光スキャナー(88)を有し、光源からの光を光スキャナーにより偏向し、光スキャナーにより偏向された光を対物レンズを介して被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を検出する。角膜形状測定光学系は、対物レンズの外縁側から円弧状又は円周状の測定パターンを被検眼に投射し、被検眼の角膜(Cr)からの戻り光を検出する。角膜形状測定光学系は、ケラト光源(ケラトリング光源32)と、ケラト光源と被検眼との間に配置され、ケラト光源からの光を透過する透光部(ケラトパターン)が形成されたケラト板(31)と、を含み、被検眼の角膜において対物レンズの光軸を中心に測定パターンを投射する。被検眼の角膜頂点とケラト板との距離をLとし、対物レンズの光軸に対する測定パターンに基づく像の高さをhとし、測定パターンの径方向の幅をΔtとし、被検眼の角膜曲率半径をRとしたとき、対物レンズの直径は、2×((L+(R-√(R2-h2)))×tan(2×sin-1(h/R))+h-Δt/2)より小さい。
【0126】
このような構成によれば、対物レンズの外縁側から照明しつつ、作動距離を変更することなく、有用な角膜形状解析結果を取得し、且つ、器械近視の影響を低減する広い視野での屈折力測定が可能な眼科装置を提供することができるようになる。それにより、他覚測定の種別に対応した複数の光学系による測定範囲や測定精度を劣化させることなく対物レンズの径を最適化し、眼科装置の小型化を図ることが可能になる。
【0127】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、測定パターンに基づく像の高さは、1.5ミリメートルである。
【0128】
このような構成によれば、角膜における3ミリメートルの形状測定が可能になるので、角膜形状解析に有用な角膜形状測定が可能になる。
【0129】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、検査光学系は、OCT光源(101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、測定光を光スキャナーにより偏向し、偏向された測定光を被検眼に投射し、被検眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出するOCT光学系(8)を含む。
【0130】
このような構成によれば、作動距離を変更することなく、眼底における所望のスキャン範囲をスキャンして有用な断層解析結果の取得が可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0131】
いくつかの実施形態に係る眼科装置では、検査光学系は、SLO光源からの光を光スキャナーにより偏向し、偏向された光を被検眼に投射し、被検眼からの戻り光を受光するSLO光学系を含む。
【0132】
このような構成によれば、作動距離を変更することなく、眼底における所望のスキャン範囲をスキャンして有用な眼底画像の解析結果の取得が可能な眼科装置を提供することができるようになる。
【0133】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0134】
例えば、実施形態に係る対物レンズ51の直径は、上限値Dmaxより小さいだけでもよい。また、実施形態に係る対物レンズ51の直径は、下限値Dmin以上であればよい。
【0135】
また、上記の実施形態では、眼科装置1000が眼底Efに対してOCTを実行する場合について説明したが,実施形態に係る眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、眼底Efと前眼部に対してOCTを実行する眼科装置に対して本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 Zアライメント系
2 XYアライメント系
3 ケラト測定系
4 固視投影系
5 前眼部観察系
6 レフ測定投射系
7 レフ測定受光系
8 OCT光学系
9 処理部
31 ケラト板
32 ケラトリング光源
210 制御部
211 主制御部
1000 眼科装置