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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】溶滓量測定装置および溶滓量測定方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/00 20060101AFI20231201BHJP
   F27D 21/02 20060101ALI20231201BHJP
   F27D 15/00 20060101ALI20231201BHJP
   F27D 3/15 20060101ALI20231201BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20231201BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231201BHJP
【FI】
F27D21/00 A
F27D21/02
F27D15/00 C
F27D3/15 S
C21B7/24
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022188266
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2019129922の分割
【原出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2023029338
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018195547
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】迫田 尚和
(72)【発明者】
【氏名】桑名 孝汰
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】豊田 人志
(72)【発明者】
【氏名】新田 和明
(72)【発明者】
【氏名】光岡 那由多
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006221(JP,A)
【文献】特開2013-257181(JP,A)
【文献】特開2007-002307(JP,A)
【文献】特開2015-092015(JP,A)
【文献】特開2015-113476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
F27B 1/28
C21B 7/14
C21B 7/24
G06T 7/00
G06T 7/174
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型炉の出銑口から出てきた出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する溶滓量測定装置であって、
複数の前記第1画像を用いて、前記出銑滓流の表面に起こる波の像が除去された前記出銑滓流を示す像を含む第3画像を生成する生成部と、
前記第3画像を用いて、前記幅を算出する算出部と、を備える、
溶滓量測定装置。
【請求項2】
前記生成部は、複数の前記第1画像において、同じ位置の画素の値の最小値を、前記位置の画素の値とする前記第3画像を生成する、
請求項1に記載の溶滓量測定装置。
【請求項3】
竪型炉の出銑口から出てきた出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する溶滓量測定方法であって、
複数の前記第1画像を用いて、前記出銑滓流の表面に起こる波の像が除去された前記出銑滓流を示す像を含む第3画像を生成する生成ステップと、
前記第3画像を用いて、前記幅を算出する算出ステップと、を備える、
溶滓量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出銑口から取り出された出銑滓流に含まれる溶滓の量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型炉の一例として高炉がある。高炉内には、溶銑(溶けた状態の鉄)および溶滓(溶けた状態のスラグ)を含む高温溶融物がある。高炉の出銑口から取り出された高温溶融物は、出銑滓流と呼ばれている。出銑滓流は、出銑樋を流れ、ここで、溶銑と溶滓とに分離され、溶銑はトピードカーに移され、次の工程に送られる。溶滓は、水砕設備に送られ、水砕スラグにされる。水砕スラグは、セメント原料等として再利用される。
【0003】
高炉内の高温溶融物の量が多すぎると、炉況が悪くなり、高炉の操業に支障が生じる。このため、高炉内の高温溶融物の量の管理が重要である。出銑滓流に含まれる溶銑および溶滓のそれぞれの量が分かれば、高炉内の高温溶融物の量が分かる。出銑滓流に含まれる溶銑の量は、溶銑が入っているトピードカーの重量と溶銑が入っていないトピードカーの重量とを用いて、正確に求めることができる。
【0004】
出銑滓流に含まれる溶滓の量は、水砕スラグから求めることができるが、信頼性が高くない。そこで、特許文献1は、出銑滓流の速度および幅を画像処理で求め、速度および幅を変数として含む所定の式を用いて、出銑滓流に含まれる溶滓の量を高精度に測定する技術を開示している。出銑滓流の幅は、出銑滓流が流れる方向と交差する方向の出銑滓流のサイズであり、言い換えれば、出銑滓流が流れ方向に垂直な出銑滓流の断面の直径である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-6221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出銑口から出銑滓流が取り出される際に、出銑口の下側部分に溶銑溶滓垂れが発生する。溶銑溶滓垂れは、出銑滓流の一部であるが、その速度は、出銑滓流の速度よりかなり遅く、出銑口の下側部分から滴り落ちる。特許文献1に開示された技術は、出銑口から出てきた出銑滓流(言い換えれば、出銑口から出た直後の出銑滓流)の画像を用いて、出銑滓流の幅を算出する。本発明者は、溶銑溶滓垂れが発生している場合、出銑滓流の幅が正確に算出されず、この結果、溶滓の量を正確に算出できないことを見出した。
【0007】
本発明の目的は、出銑滓流に含まれる溶滓の量を正確に算出できる溶滓量測定装置および溶滓量測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置は、竪型炉の出銑口から出てきた出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する溶滓量測定装置であって、複数の前記第1画像を用いて、前記出銑滓流の表面に起こる波の像が除去された前記出銑滓流を示す像を含む第3画像を生成する生成部と、前記第3画像を用いて、前記幅を算出する算出部と、を備える。
【0009】
本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置は、竪型炉の出銑口から出てきた出銑滓流(竪型炉の出銑口から排出され、出銑口付近を流れる出銑滓流)が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像を基にして、出銑滓流の速度および幅を算出し、速度および幅を変数として含む所定の式を用いて、出銑口から取り出された溶滓の量を算出する。これは、例えば、特許文献1に開示された技術によって実現することができる。以下、溶滓の量の算出の仕方の一例について説明する。
【0010】
算出部は、式(1)を用いて、単位時間当たりに出銑口から取り出される溶滓の量(溶滓量m)を算出する。
【0011】
【数1】
【0012】
溶銑量mは、例えば、溶銑が入っているトピードカーの重量と溶銑が入っていないトピードカーの重量とを基にして、求めることができる。出銑滓流の半径rは、出銑滓流の流れ方向に垂直な出銑滓流の断面の半径であり、出銑滓流の幅の半分である。補正係数kは、例えば、0≦k≦1である。
【0013】
算出部は、溶滓量mを時間積分することにより、溶滓量Mを算出する。
【0014】
出銑滓流は乱流なので、出銑滓流の表面には常に波(表面波)が起きている。このため、時間軸で見ると、出銑滓流の幅は不規則に変化している。出銑滓流が示す像のエッジが、時間軸で見て、出銑滓流が常に存在する箇所を示すのではなく、出銑滓流が存在する期間と存在しない期間とがある箇所を示す場合を考える。このエッジを基にした出銑滓流の幅で溶滓の量が計算されると、出銑滓流の量が実際より多くなり、この結果、溶滓の量が実際より多くなる。
【0015】
第3画像に含まれる出銑滓流を示す像は、出銑滓流の表面に起こる波の像が除去されており、出銑滓流の表面の波の部分まで出銑滓流が示す像のエッジが拡がっていない。従って、本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置によれば、溶滓の量を正確に計算することができる。
【0016】
上記構成において、前記生成部は、複数の前記第1画像において、同じ位置の画素の値の最小値を、前記位置の画素の値とする前記第3画像を生成する。
【0017】
この構成は、第3画像の生成方法の一例である。この方法で生成される第3画像は最小値画像である。同じ位置の画素とは、言い換えれば、同じ画素座標の画素である。
【0018】
本発明の第2局面に係る溶滓量測定方法は、竪型炉の出銑口から出てきた出銑滓流が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像を基にして、前記出銑滓流の速度および幅を算出し、前記速度および前記幅を変数として含む所定の式を用いて、前記出銑口から取り出された溶滓の量を算出する溶滓量測定方法であって、複数の前記第1画像を用いて、前記出銑滓流の表面に起こる波の像が除去された前記出銑滓流を示す像を含む第3画像を生成する生成ステップと、前記第3画像を用いて、前記幅を算出する算出ステップと、を備える。
【0019】
本発明の第2局面に係る溶滓量測定方法は、本発明の第3局面に係る溶滓量測定装置を方法の観点から規定しており、本発明の第1局面に係る溶滓量測定装置と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、出銑滓流に含まれる溶滓の量を正確に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】高炉の出銑口から取り出された出銑滓流の処理を説明する説明図である。
図2】実施形態に係る溶滓量測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1画像と第2画像との関係を説明する説明図である。
図4】連続する2つの画像のうち、先に撮像された画像の例を示す第1画像の画像図である。
図5】連続する2つの画像のうち、後に撮像された画像の例を示す第1画像の画像図である。
図6】第1画像の例を示す画像図である。
図7図6に示す第1画像において、y方向に延びる矢印上に位置する画素の輝度プロファイルを示すグラフである。
図8】出銑滓流像の幅の算出を説明するフローチャートである。
図9図6に示す第1画像を含む複数の第1画像を基にして生成された第2画像の例を示す画像図である。
図10図9に示す第2画像において、y方向に延びる矢印上に位置する画素の輝度プロファイルと、図7に示す輝度プロファイルとを示すグラフである。
図11】最大値画像と最小値画像と差分画像との関係を説明する説明図である。
図12】最大値画像と最小値画像を用いて生成された差分画像の例を示す画像図である。
図13】最大値画像と最小値画像と平均値画像と差分画像との関係を説明する説明図である。
図14】最小値画像の例を示す画像図である。
図15】標準偏差画像の例を示す画像図である。
図16】最小値画像および標準偏差画像において、y方向に延びる矢印上に位置する画素の輝度プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0023】
実施形態では、竪型炉として、高炉を例にして説明する。図1は、高炉10の出銑口11から取り出された出銑滓流30の処理を説明する説明図である。出銑口11の下方には、出銑樋20の端部20aが位置している。出銑口11から取り出された出銑滓流30(出銑口11から出てきた出銑滓流30)は、出銑樋20の所定箇所に落ちて、出銑樋20を流れる。この所定箇所には、出銑樋20を覆う出銑樋カバー21が配置されている。出銑樋カバー21により、所定箇所に落ちた出銑滓流30が外部に飛散することを防止する。出銑樋20を流れる出銑滓流30は、溶銑31と溶滓32とに分離される。溶銑31は、トピードカーに送られる。溶滓32は、水砕設備へ送られる。
【0024】
出銑口11から取り出された出銑滓流30が、出銑口11から出銑樋20に到達するまでの空間が、出銑滓流30の撮像範囲に設定される。撮像範囲に出銑口11を含めているが、出銑口11が含まれていなくてもよい。出銑滓流30の下側部分30aは、出銑口11の下側部分付近11aを通る。
【0025】
図2は、実施形態に係る溶滓量測定装置1の構成を示すブロック図である。溶滓量測定装置1は、撮像部3と、制御処理部5と、表示部7と、入力部9と、を備える。これらのうち、制御処理部5、表示部7、および、入力部9は、オペレータ室(不図示)に配置されている。
【0026】
撮像部3は、赤色波長以上または近赤外波長以上の光を透過するバンドパスフィルターを備え、図1に示す出銑口11から出銑樋20までの空間にある出銑滓流30(出銑口11の付近にある出銑滓流30)の動画Vを撮像し、制御処理部5へ送る。このように、撮像部3は、高炉10の出銑口11の付近の出銑滓流30を複数の時刻で撮像し、これにより得られた複数の第1画像Im1を制御処理部5へ送る。撮像部3は、例えば、CCDイメージセンサーまたはCMOSイメージセンサーを備えるカメラである。
【0027】
制御処理部5は、ハードウェアプロセッサである。詳しくは、制御処理部5は、機能ブロックとして、取得部51と、生成部52と、算出部53と、表示制御部54と、を備える。制御処理部5は、通信インターフェイス、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および、HDD(Hard Disk Drive)等のハードウェア、上記機能ブロックの機能を実行するためのプログラムおよびデータ等によって実現される。
【0028】
図1および図2を参照して、取得部51は、撮像部3から制御処理部5へ送られてきた動画Vを受信する。このように、取得部51は、高炉10の出銑口11から出てきた出銑滓流30(出銑口11付近の出銑滓流30)が複数の時刻で撮像されることにより得られた複数の第1画像Im1を取得する。各第1画像Im1は、動画Vの各フレームである。
【0029】
生成部52は、取得部51が取得した複数の第1画像Im1を用いて、第2画像Im2を生成する。第2画像Im2は、複数の第1画像Im1を用いて、出銑滓流を示す像のエッジと溶銑溶滓垂れを示す像との明暗比(コントラスト)を大きくする画像処理がされて生成された画像である。例えば、第2画像Im2は、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値のばらつきを示す値を、この位置の画素の値とする画像である。ばらつきを示す値は、例えば、標準偏差、分散である。標準偏差を例にして、第2画像Im2について詳しく説明する。
【0030】
図3は、第1画像Im1と第2画像Im2との関係を説明する説明図である。複数の第1画像Im1が、N枚の第1画像Im1とする(Nは整数)。各第1画像Im1を構成する画素数がMとする(Mは整数)。1番目の第1画像Im1‐1~N番目の第1画像Im1‐Nにおいて、1番目の画素の値の標準偏差が、第2画像Im2を構成する1番目の画素の値となり、2番目の画素の値の標準偏差が、第2画像Im2を構成する2番目の画素の値となり、・・・、M番目の画素の値の標準偏差が、第2画像Im2を構成するM番目の画素の値となる。
【0031】
図1および図2を参照して、算出部53は、取得部51が取得した複数の第1画像Im1を用いて、出銑滓流30の速度を算出し、生成部52が生成した第2画像Im2を用いて、出銑滓流30の幅を算出する。そして、算出部53は、速度および幅を変数として含む所定の式を用いて、出銑口11から取り出された溶滓32の量を算出する。式(1)を例にして、溶滓量mの算出の仕方を説明する。溶滓量mとは、単位時間当たりに出銑口11から取り出された溶滓32の量である。
【0032】
【数2】
【0033】
出銑滓流30の半径rは、出銑滓流30が流れ方向に垂直な出銑滓流30の断面の半径であり、出銑滓流30の幅の半分である。溶銑量mは、例えば、溶銑31が入っているトピードカーの重量と溶銑31が入っていないトピードカーの重量とを基にして、求めることができる。補正係数kは、例えば、0≦k≦1である。
【0034】
算出部53は、溶滓量mを時間積分することにより、出銑口11から取り出された溶滓量Mを算出する。
【0035】
表示制御部54は、所定の情報を示す画像を表示部7に表示させる。例えば、表示制御部54は、溶滓量測定装置1によって測定された溶滓量を示す画像を表示部7に表示させる。
【0036】
表示部7は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)等によって実現される。
【0037】
入力部9は、ユーザーが溶滓量測定装置1に命令(例えば、溶滓量の測定開始、溶滓量の測定終了)等を入力するための装置である。入力部9は、キーボード、マウス、タッチパネル等によって実現される。
【0038】
出銑滓流30の速度の算出について、図1および図2を参照して、詳しく説明する。算出部53は、取得部51が受信した動画Vの中から、連続する2つの第1画像Im1(フレーム)を選択する。図4は、連続する2つの第1画像Im1のうち、先に撮像された第1画像Im1の例を示す第1画像Im1‐aの画像図である。図5は、連続する2つの第1画像Im1のうち、後に撮像された第1画像Im1の例を示す第1画像Im1‐bの画像図である。第1画像Im1‐a,Im1‐bにおいて、x方向は水平方向を示し、y方向は鉛直方向を示す。y方向を出銑滓流30の幅方向とする。第1画像Im1‐a,Im1‐bには、出銑滓流30を示す像(以下、出銑滓流像300)が写されている。出銑滓流30の撮像範囲は、上述したように、出銑口11から取り出された出銑滓流30が、出銑口11から出銑樋20に到達するまでの空間である。
【0039】
算出部53は、第1画像Im1‐aに写された出銑滓流像300の中に関心領域ROIを設定する。出銑滓流30は、流れているので、関心領域ROI内の像は、出銑滓流30が流れている方向に移動する。算出部53は、関心領域ROI内の像について、図5に示す第1画像Im1‐bに写された出銑滓流像300上での位置を特定する。これは、例えば、パターンマッチングによって実現できる。算出部53は、第1画像Im1‐aと第1画像Im1‐bとにおいて、関心領域ROI内の像の移動量を算出し、これを基にして、出銑滓流30の速度を算出する。出銑滓流30の速度を算出するために、撮像部3が撮像する動画Vのフレームレートは、100fps以上(例えば、180fps)が好ましい。
【0040】
出銑滓流30の幅の算出について、詳しく説明する。まず、第1画像Im1を用いて出銑滓流30の幅が算出されると、出銑滓流30の幅が正確に算出できないことを説明する。
【0041】
図1および図2を参照して、撮像部3は、赤外線カメラであるので、撮像部3が撮像した複数の第1画像Im1(動画V)は、赤外画像である。溶銑溶滓垂れが発生している状態の下で、第1画像Im1(赤外画像)を用いて、出銑滓流の幅が算出されると、算出された幅は出銑滓流の実際の幅より大きくなる。図6は、第1画像Im1の例である第1画像Im1‐cの画像図である。x方向は水平方向を示し、y方向は鉛直方向を示す。y方向を出銑滓流30の幅方向とする。第1画像Im1‐cには、出銑滓流像300と、溶銑溶滓垂れを示す像(以下、溶銑溶滓垂れ像301)と、背景400と、が写されている。溶銑溶滓垂れは、出銑口11の下側部分付近11a(図1)に発生している。楕円500で囲む範囲内に、溶銑溶滓垂れ像301がある。
【0042】
図7は、図6に示す第1画像Im1‐cにおいて、y方向に延びる矢印601上に位置する画素の輝度プロファイル701を示すグラフである。矢印601は、背景400、出銑滓流像300、溶銑溶滓垂れ像301、背景400を通過している。横軸は、y方向の画素の位置を示す。縦軸は、各画素の輝度を示す。
【0043】
図1図6および図7を参照して、出銑滓流30は高温であり、出銑滓流30の背景は常温(室温)であるので、第1画像Im1‐cでは、出銑滓流像300が明るく写り、背景400が暗く写る。溶銑溶滓垂れの温度は、出銑滓流30の温度に近いので、明るく写る。このため、第1画像Im1‐cにおいて、出銑滓流像300と溶銑溶滓垂れ像301との区別が困難であるので、出銑滓流像300に溶銑溶滓垂れ像301が加えられた像の幅が、出銑滓流像300の幅として算出されてしまう。すなわち、出銑滓流30に溶銑溶滓垂れが加えられた物体の幅が、出銑滓流30の幅として算出されてしまう。従って、式(1)を用いて算出される溶滓量は、実際の値より多くなる。この結果、高炉10内の高温溶融物の量が実際の量よりも少なく算出されるので、高炉10内の高温溶融物の量が多すぎる事象が発生する(これは高炉10の炉況を悪くする原因となる)。
【0044】
そこで、実施形態では、第2画像Im2を用いて、出銑滓流像300の幅(すなわち、出銑滓流30の幅)を算出する。図8は、これを説明するフローチャートである。図1および図2を参照して、生成部52は、撮像部3が撮像した動画Vから、連続する複数のフレーム(第1画像Im1)を取り出す(図8のステップS1)。これは、複数の時刻で撮像された複数の第1画像Im1である(言い換えれば、時系列に並ぶ複数の第1画像Im1)。複数の第1画像Im1の中には、出銑滓流30の速度の算出に用いた2つの第1画像Im1が含まれる。出銑滓流30の幅の算出に用いた第1画像Im1の撮像時点と出銑滓流30の速度の算出に用いた第1画像Im1の撮像時点とを同じにするためである。これらの撮像時点が同じでないと、溶滓32の量は正確に測定できない。
【0045】
生成部52は、複数の第1画像Im1を用いて、第2画像Im2を生成する(図8のステップS2)。
【0046】
図9は、図6に示す第1画像Im1‐cを含む複数の第1画像Im1を基にして生成された第2画像Im2の例を示す画像図である。複数の第1画像Im1は、例えば、30秒間に撮像された14枚の第1画像Im1である。x方向、y方向は、図6のx方向、y方向と同じである。第2画像Im2には、出銑滓流像300と、溶銑溶滓垂れ像301と、背景400と、出銑滓流像300の上側のエッジ(上側エッジ302)と、出銑滓流像300の下側のエッジ(下側エッジ303)と、が写されている。
【0047】
図10は、図9に示す第2画像Im2において、y方向に延びる矢印602上に位置する画素の輝度プロファイル702と、図7に示す輝度プロファイル701とを示すグラフである。矢印602は、背景400、上側エッジ302、出銑滓流像300、下側エッジ303、溶銑溶滓垂れ像301、背景400を通過している。横軸、縦軸は、図7の横軸、縦軸と同じである。
【0048】
図1図9および図10を参照して、第2画像Im2を構成する各画素の値は、複数の第1画像Im1において、同じ位置にある画素の値の標準偏差である。すなわち、第2画像Im2を構成する各画素の値は、複数の第1画像Im1の各位置の画素について、時間軸上のばらつき示す値である。出銑滓流30は、溶銑31の放射率と溶滓32の放射率との差が主な原因で、時間軸上で温度の変動が大きい。出銑滓流30の背景は、時間軸上で温度の変動が小さい。よって、第1画像Im1‐cと同様に、第2画像Im2では、出銑滓流像300が明るく写り、背景400が暗く写る。
【0049】
溶銑溶滓垂れは、高温であるが、流れる速度が遅いので、時間軸上で温度の変動が小さい。よって、第1画像Im1‐cと異なり、第2画像Im2では、溶銑溶滓垂れ像301が暗く写る。このため、輝度プロファイル702に示すように、第2画像Im2では、下側エッジ303(出銑滓流像300のエッジ)と溶銑溶滓垂れ像301と明暗比が大きくされている。従って、第2画像Im2では、出銑滓流像300と溶銑溶滓垂れ像301との区別が可能であるので、出銑滓流30の幅を正確に算出することができる。
【0050】
上側エッジ302と下側エッジ303との距離が、出銑滓流像300の幅である。出銑滓流30は、出銑口11から勢いよく流れ出すので、出銑滓流30のエッジの位置には、常に、出銑滓流30があるのでなく、出銑滓流30があったり、なかったりする。このため、出銑滓流30のエッジは、時間軸上で温度の変動が極めて大きい。よって、第2画像Im2では、出銑滓流像300のエッジ(上側エッジ302、下側エッジ303)が、出銑滓流像300の残りの部分および溶銑溶滓垂れ像301よりも明るく写る。出銑滓流像300と溶銑溶滓垂れ像301との境界が、下側エッジ303である。
【0051】
算出部53は、上側エッジ302および下側エッジ303の位置を特定するために、出銑滓流像300の輝度より大きい所定のしきい値800を予め記憶している。算出部53は、しきい値800を用いて、輝度プロファイル702を分けることにより、上側エッジ302の位置と下側エッジ303の位置とを決定する(図8のステップS3)。
【0052】
算出部53は、これらの位置を用いて、上側エッジ302と下側エッジ303との間の画素数を算出する。算出部53は、第2画像Im2の1画素に相当する出銑滓流30の部分の長さを予め記憶している。算出部53は、この長さと画素数とを乗算することにより、出銑滓流30の幅を算出する(図8のステップS4)。算出部53は、第2画像Im2を用いて、出銑滓流30の幅を算出する。第2画像Im2は、複数の第1画像Im1を用いて生成されるので(図8のステップS2)、出銑滓流30の幅は、複数の第1画像Im1を基にして算出されることになる。
【0053】
実施形態の主な効果を説明する。図9を参照して、第2画像Im2によれば、出銑滓流像300と溶銑溶滓垂れ像301とを区別できる。従って、実施形態によれば、出銑滓流像300の幅を正確に算出できるので、出銑滓流30の幅を正確に算出することができる。
【0054】
第1変形例について、実施形態と相違する点を中心に説明する。実施形態の第2画像Im2は、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の標準偏差を、その位置の画素の値とする画像である(標準偏差画像Im‐std)。同じ位置の画素は、言い換えれば、同じ画素座標の画素である。画素の値は、輝度のような明るさを示す指標値である。
【0055】
第1変形例の第2画像Im2は、差分画像Im‐dである。差分画像Im‐dは、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の最大値、最小値、平均値、中央値をそれぞれ、その位置の画素の値とする最大値画像Im‐max、最小値画像Im‐min、平均値画像Im‐ave、中央値画像Im‐medのうち、2つ以上を組み合わせて生成される。
【0056】
図3を参照して、最大値画像Im‐max、最小値画像Im‐min、平均値画像Im‐ave、および、中央値画像Im‐medの生成方法について簡単に説明する。図示はしていないが、最大値画像Im‐max、最小値画像Im‐min、平均値画像Im‐ave、中央値画像Im‐medは、それぞれ、第2画像Im2の位置にある。最大値画像Im‐maxは、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の最大値を、その位置の画素の値とする画像である。最小値画像Im‐minは、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の最小値を、その位置の画素の値とする画像である。平均値画像Im‐aveは、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の平均値を、その位置の画素の値とする画像である。中央値画像Im‐medは、複数の第1画像Im1において、同じ位置の画素の値の中央値を、その位置の画素の値とする画像である。
【0057】
これらの2つを組み合わせて生成される差分画像Im‐dについて、最大値画像Immaxと最小値画像Im‐minを例にして説明する。図2に示す生成部52は、最大値画像Im‐maxおよび最小値画像Im‐minを生成し、これらの画像を用いて差分画像Im‐dを生成する。差分画像Im‐dは、最大値画像Im‐maxと最小値画像Im‐minにおいて、同じ位置の画素の値の差分を、その位置の画素の値とする画像である。
【0058】
図11は、最大値画像Im‐maxと最小値画像Im‐minと差分画像Im‐dとの関係を説明する説明図である。各画像を構成する画素数がMとする(Mは整数)。最大値画像Im‐maxと最小値画像Im‐minにおいて、1番目の画素の値の差分が、差分画像Im‐dを構成する1番目の画素の値となり、2番目の画素の値の差分が、差分画像Im‐dを構成する2番目の画素の値となり、・・・、M番目の画素の値の差分が、差分画像Im‐dを構成するM番目の画素の値となる。
【0059】
図12は、最大値画像Im‐maxと最小値画像Im‐minを用いて生成された差分画像Im‐dの例を示す画像図である。最大値画像Im‐maxおよび最小値画像Imminの生成に用いられた複数の第1画像Im1は、例えば、30秒間に撮像された14枚の第1画像Im1である。x方向、y方向は、図4のx方向、y方向と同じである。差分画像Im‐dには、図9に示す第2画像Im2(標準偏差画像Im‐std)と同様に、出銑滓流像300と、溶銑溶滓垂れ像301と、背景400と、出銑滓流像300の上側のエッジ(上側エッジ302)と、出銑滓流像300の下側のエッジ(下側エッジ303)と、が写されている。
【0060】
3つ以上を組み合わせて生成される差分画像Im‐dについて、最大値画像Im‐max、最小値画像Im‐min、平均値画像Im‐aveを例にして説明する。図2に示す生成部52は、最大値画像Im‐max、最小値画像Im‐minおよび平均値画像Im‐aveを生成し、同じ位置の画素において、最大値画像Im‐maxの画素の値と平均値画像Im‐aveの画素の値の差分、最小値画像Im‐minの画素の値と平均値画像Im‐aveの画素の値の差分のうち、大きい方を差分画像Im‐dの画素の値にする。
【0061】
図13は、最大値画像Im‐maxと最小値画像Im‐minと平均値画像Im‐aveと差分画像Im‐dとの関係を説明する説明図である。各画像を構成する画素数がMとする(Mは整数)。最大値画像Im‐maxと平均値画像Im‐aveにおける1番目の画素の値の差分と最小値画像Im‐minと平均値画像Im‐aveにおける1番目の画素の値の差分のうち、大きい方が差分画像Im‐dの1番目画素の値となり、・・・、最大値画像Im‐maxと平均値画像Im‐aveにおけるM番目の画素の値の差分と最小値画像Im‐minと平均値画像Im‐aveにおけるM番目の画素の値の差分のうち、大きい方が差分画像Im‐dのM番目画素の値となる。
【0062】
図12に示すように、差分画像Im‐dも図9に示す第2画像Im2と同様の画像になる。図2に示す算出部は、差分画像Im‐dに対して、第2画像Im2と同様の処理をして、出銑滓流30の幅を算出する。
【0063】
第2変形例について、実施形態と相違する点を中心に説明する。第2変形例では、出銑滓流30の幅の算出に用いられる画像が、第3画像である。第3画像は、出銑滓流30の表面に起こる波の像が除去された出銑滓流像300を含む。
【0064】
図5を参照して、出銑滓流30は乱流なので、出銑滓流30の表面には常に波(表面波)が起きている。このため、時間軸で見ると、出銑滓流30の幅は不規則に変化している。上述したように、出銑滓流30の幅の算出には、出銑滓流像300のエッジが用いられる。エッジが、時間軸で見て、出銑滓流30が常に存在する箇所を示すのではなく、出銑滓流30が存在する期間と存在しない期間とが混在する箇所を示す場合を考える。このエッジを基にした出銑滓流30の幅を用いて、溶滓32の量が計算されると、出銑滓流30の量が実際より多くなり、この結果、溶滓32の量が実際より多くなる。第2変形例では、これを防止できる。
【0065】
図2に示す生成部52は、複数の第1画像Im1を用いて、出銑滓流30の表面に起こる波の像が除去された出銑滓流像300を含む第3画像Im3を生成する。第3画像Im3として、例えば、第1変形例で説明した最小値画像Im‐minがある。図14は、最小値画像Im‐minの例を示す画像図である。最小値画像Im‐minの生成に用いられた複数の第1画像Im1は、例えば、30秒間に撮像された14枚の第1画像Im1である。図14に示す最小値画像Im‐minの比較となる標準偏差画像Im‐stdを説明する。図15は、標準偏差画像Im‐stdの例を示す画像図である。この標準偏差画像Im‐stdは、図14に示す最小値画像Im‐minの生成に用いられた複数の第1画像Im1を用いて生成されている。標準偏差画像Im‐stdは、図3および図9で説明した第2画像Im2のことである。
【0066】
図14および図15を参照して、x方向、y方向は、図4のx方向、y方向と同じである。最小値画像Im‐min、標準偏差画像Im‐stdのそれぞれには、出銑滓流像300と、背景400と、出銑滓流像300の上側のエッジ(上側エッジ302)と、出銑滓流像300の下側のエッジ(下側エッジ303)と、が写されている。
【0067】
図16は、図14に示す最小値画像Im‐minおよび図15に示す標準偏差画像Im‐stdにおいて、y方向に延びる矢印603上に位置する画素の輝度プロファイル703および輝度プロファイル704を示すグラフである。横軸、縦軸は、図7の横軸、縦軸と同じである。最小値画像Im‐minの出銑滓流像300の幅(最小値画像Im‐minの出銑滓流像300における上側エッジ302と下側エッジ303との距離)は、標準偏差画像Im‐stdの出銑滓流像300の幅(標準偏差画像Im‐stdの出銑滓流像300における上側エッジ302と下側エッジ303との距離)より、小さい。これは、最小値画像Im‐minの出銑滓流像300が、出銑滓流30の表面に起こる波の像が除去されているからである。
【0068】
図2に示す算出部53は、第3画像を用いて、出銑滓流30の幅を算出する。算出の仕方は第2画像Im2と同様である。
【0069】
第3画像は、最小値画像Im‐minに限定されない。詳しく説明する。複数の第1画像Im1に関して、同じ位置の画素の中で、例えば、2番目や3番目に小さい値であっても、出銑滓流30の表面に起こる波の像が除去された出銑滓流像300を含む画像を生成できるのであれば、この画像でもよい。また、複数の第1画像Im1に関して、同じ位置の画素の中で、下位一定割合以内の画素値を示す画素が抽出され、抽出された画素が示す画素値の平均値や中央値であっても、出銑滓流30の表面に起こる波の像が除去された出銑滓流像300を含む画像を生成できるのであれば、この画像でもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 溶滓量測定装置
10 高炉
11 出銑口
11a 出銑口の下側部分付近
20 出銑樋
20a 出銑樋の端部
21 出銑樋カバー
30 出銑滓流
30a 出銑滓流の下側部分
31 溶銑
32 溶滓
300 出銑滓流像
301 溶銑溶滓垂れ像
302 上側エッジ
303 下側エッジ
400 背景
500 楕円
601,602,603 矢印
701,702,703,704 輝度プロファイル
800 しきい値
Im1‐a,Im1‐b,Im1‐c,Im1‐1~Im1‐N 第1画像
Im2 第2画像
Im‐d 差分画像(第2画像)
Im‐max 最大値画像
Im‐min 最小値画像
Im‐ave 平均値画像
Im‐std 標準偏差画像
ROI 関心領域
V 動画
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16