(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】タービン及びターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20231201BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
F02B37/18 E
F02B39/00 F
(21)【出願番号】P 2022541366
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029801
(87)【国際公開番号】W WO2022029876
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-019007(JP,A)
【文献】特開昭62-029723(JP,A)
【文献】特開平10-008977(JP,A)
【文献】特開2007-192172(JP,A)
【文献】特開2012-211572(JP,A)
【文献】特表2020-517861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の翼を有するタービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するタービンホイール収容空間を内部に形成するタービンハウジングと、
前記タービンハウジングの内部に形成されたウェストゲート流路を流れる排ガスの流量を制御するためのウェストゲートバルブと、を備えるタービンであって、
前記ウェストゲート流路は、前記タービンハウジングの内部に形成されたスクロール流路と、前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域とを接続するように構成さ
れ、
前記ウェストゲート流路と前記タービンホイールの下流側に形成される排出流路とを接続するように構成されたバイパス部を備え、
前記ウェストゲート流路は、前記ウェストゲートバルブによって開閉される開口を含み、
前記ウェストゲートバルブは、前記開口からの排ガスを前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域に流す流量と、前記開口からの排ガスを前記バイパス部を介して前記排出流路に流す流量との分配比率を前記ウェストゲートバルブの開度によって調節可能に構成されている
タービン。
【請求項2】
前記ウェストゲートバルブは、
規定の開度未満の開度において、前記開口からの排ガスを前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域に流すことを許可するとともに、前記開口からの排ガスを前記バイパス部を介して前記排出流路に流すことを阻害し、
前記規定の開度以上の開度において、前記開口からの排ガスを前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域に流すことを許可するとともに、前記開口からの排ガスを前記バイパス部を介して前記排出流路に流すことを許可する、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記ウェストゲート流路は、前記スクロール流路と、前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域の内のスロート部よりも下流側の領域とを接続するように構成された、
請求項1
又は2に記載のタービン。
【請求項4】
前記タービンホイールは、前記複数の翼の間に配置される複数の短翼であって、前記複数の短翼の各々の後縁が前記複数の翼の各々の前記後縁よりも前縁側に位置するように形成された複数の短翼をさらに有し、
前記ウェストゲート流路は、前記スクロール流路と、前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域の内の前記短翼の前記後縁よりも下流側の領域とを接続するように構成された、
請求項1
又は2に記載のタービン。
【請求項5】
前記ウェストゲート流路と前記タービンホイール収容空間とを連通する連通部は、周方向に間隔を置いて配置された複数の連通孔を含む、
請求項1
又は2に記載のタービン。
【請求項6】
前記ウェストゲート流路と前記タービンホイール収容空間とを連通する連通部は、周方向に延在する溝を含む、
請求項1
又は2に記載のタービン。
【請求項7】
前記ウェストゲート流路は、前記タービンホイールの回転方向の下流側に向かって断面積が小さくなるように構成されたスクロール部であって、前記溝を介して前記タービンホイール収容空間と連通するスクロール部を含む、
請求項
6に記載のタービン。
【請求項8】
前記溝内に周方向に間隔を置いて配置された複数のノズル部材であって、径方向内側に向かうにつれて前記タービンホイールの回転方向の下流側に向かって流れるように前記溝内を通過する排ガスを案内するための複数のノズル部材、
をさらに備える請求項
6に記載のタービン。
【請求項9】
前記連通部は、先細末広形状を有する、
請求項
5に記載のタービン。
【請求項10】
前記ウェストゲート流路は、前記ウェストゲートバルブによって開閉される開口を含み、
前記ウェストゲートバルブは、前記ウェストゲートバルブの径方向外側の位置が前記タービンハウジングに揺動可能に支持されたスイングバルブからなり、
前記ウェストゲート流路と前記タービンホイール収容空間とを連通する連通部は、前記開口に対して軸方向の上流側に位置し、
前記バイパス部は、前記開口に対して軸方向の下流側に位置する、
請求項
1又は2に記載のタービン。
【請求項11】
前記ウェストゲート流路は、前記ウェストゲートバルブによって開閉される開口を含み、
前記ウェストゲートバルブは、軸方向に移動可能に構成され、
前記ウェストゲート流路と前記タービンホイール収容空間とを連通する連通部は、前記開口に対して軸方向の上流側に位置し、
前記バイパス部は、前記開口に対して軸方向の下流側に位置する、
請求項
1又は2に記載のタービン。
【請求項12】
請求項1
又は2に記載のタービン、
を備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン及びターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャには、過給圧の過度な上昇を抑制するためにウェストゲートバルブが設けられる場合がある。ウェストゲートバルブは、ターボチャージャのタービンをバイパスするバイパス通路であるウェストゲート流路を開閉することにより、タービンへの排ガスの流入量を調節するものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のウェストゲート流路では、タービンホイールの翼をバイパスするように排ガスをタービンの下流側に流すように構成されている。そのため、タービン飲み込み流量を超える排ガスをバイパスさせるためにウェストゲート流路の排ガスを流す場合、ウェストゲート流路を流れる排ガスはタービンの出力向上に寄与できない。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、排ガスをウェストゲート流路にバイパスさせたときのタービンの出力を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンは、
複数の翼を有するタービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するタービンホイール収容空間を内部に形成するタービンハウジングと、
前記タービンハウジングの内部に形成されたウェストゲート流路を流れる排ガスの流量を制御するためのウェストゲートバルブと、を備えるタービンであって、
前記ウェストゲート流路は、前記タービンハウジングの内部に形成されたスクロール流路と、前記タービンホイール収容空間における前記複数の翼の後縁よりも上流側の領域とを接続するように構成されている。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、上記(1)の構成のタービン、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、排ガスをウェストゲート流路にバイパスさせたときのタービンの出力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】幾つかの実施形態に係るターボチャージャの一例を示す断面図である。
【
図2】幾つかの実施形態に係るタービンホイールの外観の斜視図である。
【
図3】幾つかの実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図4】他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図5A】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の一例である。
【
図5B】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
【
図5C】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
【
図5D】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
【
図5E】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
【
図5F】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
【
図6】他の実施形態に係るタービンの断面を模式的に示した図である。
【
図7】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図8A】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図8B】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図8C】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図9A】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図9B】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【
図9C】さらに他の実施形態に係るタービンの一部の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(ターボチャージャ1の全体構成)
図1は、幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1の一例を示す断面図である。
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1は、例えば自動車などの車両に搭載されるエンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。
ターボチャージャ1は、ロータシャフト2を回転軸として連結されたタービンホイール3及びコンプレッサホイール4と、タービンホイール3を回転自在に収容するケーシング(タービンハウジング)5と、コンプレッサホイール4を回転自在に収容するケーシング(コンプレッサハウジング)6とを有する。また、タービンハウジング5は、内部にスクロール流路7aを有するスクロール部7を含む。コンプレッサハウジング6は、内部にスクロール流路8aを有するスクロール部8を含む。
幾つかの実施形態に係るタービン30は、タービンホイール3と、ケーシング5とを備える。幾つかの実施形態に係るコンプレッサ40は、コンプレッサホイール4と、ケーシング6とを備える。
【0012】
(タービンホイール3)
図2は、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3の外観の斜視図である。
図3は、幾つかの実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るタービンホイール3は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面32を有するハブ31と、ハブ面32に設けられた複数の翼(動翼)33とを有する。なお、
図1、2に示したタービンホイール3はラジアルタービンであるが、斜流タービンであってもよい。
図2において、矢印Rはタービンホイール3の回転方向を示す。翼33は、タービンホイール3の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、周方向で隣り合う2つの翼33の間に形成される流路の流路面積が最も小さくなるスロート部35が形成されている(
図3参照)。なお、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3では、スロート部35は、翼33の腹側において、翼の後縁37よりも前縁36側の領域に形成されている。
【0013】
なお、斜視図による図示は省略するが、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4も、幾つかの実施形態に係るタービンホイール3と同様の構成を有している。すなわち、幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、ロータシャフト(回転軸)2に連結されて回転軸線AXwの周りに回転される羽根車である。幾つかの実施形態に係るコンプレッサホイール4は、回転軸線AXwに沿った断面において、回転軸線AXwに対して傾斜するハブ面42を有するハブ41と、ハブ面42に設けられた複数の翼(動翼)43とを有する。翼43は、コンプレッサホイール4の周方向に間隔をあけて複数設けられる。
以下の説明では、回転軸線AXwの延在方向を単に軸方向とも称し、回転軸線AXwを中心とする径方向を単に径方向とも称し、回転軸線AXwを中心とする周方向を単に周方向とも称する。
【0014】
このように構成されるターボチャージャ1では、タービン30の作動流体である排ガスは、タービンホイール3の前縁36から後縁37に向かって流れる。これにより、タービンホイール3は、回転させられるとともに、ロータシャフト2を介して連結されたコンプレッサ40のコンプレッサホイール4が回転させられる。これにより、コンプレッサ40の入口部40aから流入した吸気は、コンプレッサホイール4の前縁46から後縁47に向かって流れる過程でコンプレッサホイール4によって圧縮される。
【0015】
(ウェストゲート流路110の概要)
幾つかの実施形態に係るタービン30は、上述したように、タービンホイール3と、タービンホイール3を収容するタービンホイール収容空間53を内部に形成するタービンハウジング5と、を備える。幾つかの実施形態に係るタービン30は、タービンハウジング5の内部に形成されたウェストゲート流路110を流れる排ガスの流量を制御するためのウェストゲートバルブ55を備える。幾つかの実施形態では、例えば
図3、後述する
図4、
図6、
図7及び
図8A乃至
図8Cに示すように、ウェストゲートバルブ55は、ウェストゲートバルブ55の径方向外側の位置がタービンハウジング5に揺動可能に支持されたスイングバルブからなっていてもよい。また、例えば後述する
図9A乃至
図9Cに示すように、ウェストゲートバルブ55Aは、揺動するのではなく、タービンハウジング5に対する姿勢を変えずに軸方向に移動可能に構成されていてもよい。
なお、
図1は、ウェストゲートバルブ55によって開閉されるウェストゲート流路110の開口111がウェストゲートバルブ55によって閉じられた状態を示している。また、
図3は、開口111が開放された状態を示している。
また、例えば
図1、
図3、及び後述する各図において、ウェストゲートバルブ55の揺動中心Cvの位置を図示しているが、揺動中心Cvの位置は、各図において図示した位置に限定されない。
【0016】
幾つかの実施形態に係るタービン30では、
図1、
図3、及び後述する各図に示すように、ウェストゲート流路110は、タービンハウジング5の内部に形成されたスクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後37縁よりも上流側の領域とを接続するように構成されている。より具体的には、幾つかの実施形態に係るウェストゲート流路110は、翼33の先端部(チップ)34と対向するケーシング5の内面51に形成された開口部57を下流端とする連通部120を含んでいる。幾つかの実施形態に係る連通部120は、ウェストゲート流路110とタービンホイール収容空間53とを連通する。なお、連通部120の詳細については、後で説明する。
【0017】
一般的なターボチャージャでは、タービンにおけるウェストゲート流路では、タービンホイールの翼をバイパスするように排ガスをタービンの下流側に流すように構成されている。そのため、タービン飲み込み流量を超える排ガスをバイパスさせるためにウェストゲート流路の排ガスを流す場合、ウェストゲート流路を流れる排ガスはタービンの出力向上に寄与できない。
【0018】
これに対して、幾つかの実施形態に係るタービン30によれば、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域に案内されるようにウェストゲート流路110が構成されている。これにより、ウェストゲート流路110内の排ガスがタービンホイール3の複数の翼33に向かって流れるので、該排ガスのエネルギーをタービンホイール3の運動エネルギーとして回収可能である。したがって、ウェストゲート流路110を流れた排ガスからの動力回収が可能となるので、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を向上できる。
【0019】
ターボチャージャにおける一般的なタービンでは、翼33のチップ34とケーシング5の内面51との間に隙間が存在するが、この隙間から漏れ流れ(チップリーク)が発生し、ターボ機械における流れ場と性能に影響を与える。
ターボチャージャにおけるタービンでは、ウェストゲート流路の上流端は、一般的にはスクロール流路7aの途中やスクロール流路7aよりも上流の流路等、タービンホイール3よりも径方向外側に位置する流路に設けられる。そのため、幾つかの実施形態に係るタービン30において、ウェストゲート流路110をタービンホイール収容空間53に接続するためには、ウェストゲート流路110の下流端、すなわち幾つかの実施形態に係る連通部120の下流端は、翼33のチップ34と対向するケーシング5の内面51に設けることとなる。そのため、幾つかの実施形態に係るタービン30によれば、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53に案内される際にケーシング5の内面51からチップ34に向かって流れるので、上述したチップリークの流れを阻害して、チップリークを抑制できる。これにより、タービン30の効率が向上するので、タービン30の出力を向上できる。
幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1によれば、幾つかの実施形態に係るターボチャージャ1が幾つかの実施形態に係るタービン30を備えるので、タービン30の部分負荷性能を向上させたターボチャージャ1を実現できる。
【0020】
幾つかの実施形態に係るタービン30では、例えば
図3に示すように、ウェストゲート流路110は、スクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域の内のスロート部35よりも下流側の領域とを接続するように構成されているとよい。
一般的に、タービンにおける飲み込み流量はスロート部の流路面積によって決まる。そのため、スロート部35よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続すると、ウェストゲート流路110を介してスロート部35よりも上流側の領域に流入した排ガスの影響でタービン30における飲み込み流量が減ってしまうおそれがある。
したがって、幾つかの実施形態に係るタービン30のようにスロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53に流入しても、タービン30における飲み込み流量に及ぼす影響を抑制できる。また、スロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、スロート部35よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続した場合と比べて、排ガスを効率的にウェストゲート流路110を介してタービン30の下流側に排出できる。
【0021】
(タービンホイール3が短翼133を有する場合)
図4は、他の実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態に係るタービン30では、例えば
図4に示すように、タービンホイール3は、複数の翼33の間に配置される複数の短翼133であって、複数の短翼133の各々の後縁137が複数の翼33の各々の後縁37よりも前縁36側に位置するように形成された複数の短翼133をさらに有していてもよい。そして、幾つかの実施形態に係るタービン30では、ウェストゲート流路110は、スクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域の内の短翼133の後縁137よりも下流側の領域とを接続するように構成されているとよい。
【0022】
周方向で隣り合う2つの翼33の間に形成される流路の内、短翼133が存在する領域においてスロート部35が存在していれば、タービンホイール収容空間53において複数の翼33の後縁37よりも上流側且つ短翼133の後縁137よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、スロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することになる。したがって、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53に流入しても、タービン30における飲み込み流量に及ぼす影響を抑制できる。また、短翼133の後縁137よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、短翼133の後縁137よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続した場合と比べて、排ガスを効率的にウェストゲート流路110を介してタービン30の下流側に排出できる。さらに、タービンホイール3が複数の短翼133を有するので、ウェストゲート流路110に排ガスが流れていない状態においても、タービン30の性能を向上できる。
【0023】
(幾つかの実施形態に係る連通部120について)
図5Aは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の一例である。
図5Bは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
図5Cは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
図5Dは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
図5Eは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
図5Fは、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図の他の一例である。
なお、
図5A乃至
図5Fでは、タービンホイール3の記載を省略している。
【0024】
幾つかの実施形態では、
図5A及び
図5Bに示すように、連通部120は、周方向に間隔を置いて配置された複数の連通孔121、122を含んでいてもよい。
これにより、ウェストゲート流路110内の排ガスを複数の連通孔121、122からタービンホイール3の複数の翼33に向かって流すことができ、複数の連通孔121、122から吹き出される排ガスの流速を確保できる。
【0025】
図5A及び
図5Bに示す複数の連通孔121、122のそれぞれは、径方向内側に向かうにつれてタービンホイール3の回転方向Rの下流側に向かうように、径方向に対して傾斜していてもよい。
例えば、
図5Aに示す複数の連通孔121のそれぞれは、上流側端部121aから下流側端部121bに至るまでの流路断面積が一定である。
例えば、
図5Bに示す複数の連通孔122のそれぞれは、上流側端部122aから下流側端部122bに向かうにつれて流路断面積が漸増する。
なお、
図5A及び
図5Bに示した複数の連通孔121、122において上流側端部121a、122aから下流側端部121b、122bに向かって見たときの流路断面の形状は、矩形であってもよく、円形であってもよく、矩形以外の多角形であってもよい。また、該流路断面の形状は、周方向に延在する長軸を有する楕円形状であってもよい。
【0026】
図5A及び
図5Bに示した複数の連通孔121、122の周方向への配置ピッチは、等ピッチでもよいし、不等ピッチでもよい。なお、
図5A及び
図5Bに示した複数の連通孔121、122の周方向への配置ピッチや孔数は、連通孔121、122から吹き出される排ガスによって翼33の振動が引きこ起こされないように設定するとよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、
図5C乃至
図5Eに示すように、連通部120は、周方向に延在する溝125を含んでいてもよい。
これにより、ウェストゲート流路110内の排ガスを周方向に延在する溝125からタービンホイール3の複数の翼33に向かって流すことで、翼33の振動を抑制できるので、タービン30の信頼性を向上できる。
なお、幾つかの実施形態に係る溝125は、例えば
図5Cに示すように周方向に沿って複数に分割されていてもよく、全周にわたって連続して設けられた単一の溝125であってもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、
図5D及び
図5Eに示すように、溝125内に周方向に間隔を置いて配置された複数のノズル部材131、132であって、径方向内側に向かうにつれてタービンホイール3の回転方向Rの下流側に向かって流れるように上記溝125内を通過する排ガスを案内するための複数のノズル部材131、132を備えていてもよい。
これにより、排ガスが複数のノズル部材131、132によって上述のように案内されることで、排ガスを効率的にタービンホイール収容空間53に流入させることができる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。
【0029】
例えば、
図5Dに示す複数のノズル部材131のそれぞれは、例えば軸方向(
図5Dにおける紙面奥行き方向)が厚さ方向となる板状の部材であってもよい。これにより、ノズル部材131の製造コストを抑制できる。
また、例えば、
図5Eに示す複数のノズル部材132のそれぞれは、例えば翼型形状を有する部材であってもよい。これにより、排ガスを効率的にタービンホイール収容空間53に流入させることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、
図5Fに示すように、連通部120は、先細末広形状を有していてもよい。すなわち、幾つかの実施形態では、
図5Fに示すように、連通部120は、先細末広形状を有するノズル部140を有していてもよい。
一般的に、ウェストゲートバルブ55、55Aが開いてウェストゲート流路110に排ガスを流す状況では、タービン30の圧力比が高い場合が多い。そのため、連通部120を流れる排ガスの流速は非常に大きい。したがって、上記のように、連通部120を先細末広形状、すなわちラバールノズルのような形状にすることで、連通部120から吹き出す排ガスのエネルギーを効率的にタービンホイール3の運動エネルギーに変換できる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。また、連通部120を先細末広形状に加工することは比較的容易であるので、製造コストを抑制できる。
なお、
図5C乃至5Eに示すように、連通部120が周方向に延在する溝125を含む場合、溝125を周方向に沿って見たときに溝125が先細末広形状を有するように、軸方向に沿った溝125の幅を径方向の位置によって変更すればよい。
【0031】
図6は、他の実施形態に係るタービン30の断面を模式的に示した図である。
幾つかの実施形態では、例えば
図6に示すように、ウェストゲート流路110は、タービンホイール3の回転方向Rの下流側に向かって断面積が小さくなるように構成されたスクロール部150であって、上記溝125を介してタービンホイール収容空間53と連通するスクロール部150を含んでいてもよい。
これにより、排気ガスがウェストゲート流路110のスクロール部150で周方向に沿って案内されることで、上記溝125を介してタービンホイール収容空間53に流入する排ガスの流量についての周方向の位置による差を抑制できる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。
【0032】
(バイパス部160を有する場合)
図7は、さらに他の実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
図7は、開口111が開放された状態を示している。
図8A乃至
図8Cは、さらに他の実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
図8Aは、開口111がウェストゲートバルブ55によって閉じられた状態を示している。
図8Bは、ウェストゲートバルブ55の開度が比較的小さい場合を示している。
図8Cは、ウェストゲートバルブ55の開度が比較的大きい場合を示している。
図9A乃至
図9Cは、さらに他の実施形態に係るタービン30の一部の断面を模式的に示した図である。
図9Aは、開口111がウェストゲートバルブ55Aによって閉じられた状態を示している。
図9Bは、ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的小さい場合を示している。
図9Cは、ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的大きい場合を示している。
【0033】
図7、
図8A乃至
図8C及び
図9A乃至
図9Cに示すように、幾つかの実施形態に係るタービン30では、ウェストゲート流路110とタービンホイール3の下流側に形成される排出流路171とを接続するように構成されたバイパス部160をさらに備えてもよい。
これにより、ウェストゲート流路110を流れる排ガスの流量を増やすことができる。また、コンプレッサ40駆動のために要求されるタービン動力を得るのに必要な排ガス量を超えて排ガスが供給されても、余剰の排ガスをタービン30の外にバイパスさせることができる。よって、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を向上できるとともに、タービン30の過回転を抑制してタービン30の信頼性を向上できる。
【0034】
より具体的には、
図7に示すタービン30では、ウェストゲート流路110における開口111よりも下流側の領域にバイパス部160の上流端161が接続されている。該バイパス部160の下流端163は、タービンホイール3の複数の翼33の後縁37よりも下流側に形成された排出流路171に接続されている。
図7に示すタービン30では、ウェストゲートバルブ55が開口111を開放すると、開口111から流出した排ガスは、連通部120とバイパス部160とに流入する。
図7に示すタービン30では、上述したように連通部120に流入した排ガスは、連通部120からタービンホイール収容空間53に流入して、タービンホイール3の複数の翼33に向かって流れる。
図7に示すタービン30では、バイパス部160に流入した排ガスは、バイパス部160からタービンホイール収容空間53に流入することなく、排出流路171に直接流入する。
【0035】
図7、
図8A乃至
図8C及び
図9A乃至
図9Cに示すように、幾つかの実施形態に係るタービン30では、ウェストゲート流路110とタービンホイール収容空間53とを連通する連通部120は、開口111に対して軸方向の上流側に位置するとよい。バイパス部160は、開口111に対して軸方向の下流側に位置するとよい。
【0036】
例えばウェストゲートバルブ55、55Aの開度が比較的小さく、ウェストゲートバルブ55、55Aと開口111との間の隙間の軸方向位置がバイパス部160の上流端161よりも軸方向に沿って上流側に位置する場合、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55、55Aによってバイパス部160側への流れが阻害される。そのため、開口111から流出した排ガスは、連通部120側に向かって流れるようになる。すなわち、ウェストゲートバルブ55、55Aの開度が比較的小さいと、開口111から流出した排ガスは、主として連通部120を流れるようになる。
【0037】
ウェストゲートバルブ55、55Aの開度が比較的大きいと、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55、55Aによってバイパス部160側への流れが阻害され難くため、バイパス部160側に向かって流れ易くなる。すなわち、例えばウェストゲートバルブ55、55Aの開度が比較的大きく、例えば
図7、
図8A乃至
図8C及び
図9A乃至
図9Cに示すようにウェストゲートバルブ55、55Aと開口111との間の隙間の軸方向位置の範囲内にバイパス部160の上流端161が位置する場合、開口111から流出した排ガスは、連通部120だけでなく、バイパス部160にも流れるようになる。
これにより、ウェストゲートバルブ55、55Aの開度によって連通部120及びバイパス部160を流れる排ガスの分配比率を調節できる。よって、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力をより向上できるとともに、タービン30の過回転を抑制してタービン30の信頼性を向上できる。
【0038】
なお、例えば
図8A乃至
図8Cに示すように、揺動可能に支持されたウェストゲートバルブ55は、ウェストゲートバルブ55の揺動中心Cvから最も遠い位置にある先端部56を有していてもよい。例えば
図8A乃至
図8Cに示すタービン30は、ウェストゲート流路110内でウェストゲートバルブ55の先端部56と比較的小さな隙間を介して対向する対向部115を有していてもよい。例えば
図8A乃至
図8Cに示すタービン30では、バイパス部160の上流端161は、対向部115よりも軸方向の下流側に位置しているとよい。
【0039】
図8A乃至
図8Cに示すタービン30では、
図8Aに示すようにウェストゲートバルブ55が開口111を閉じている場合、開口111よりも下流側のウェストゲート流路110には排ガスは流れない。
【0040】
図8A乃至
図8Cに示すタービン30において、
図8Bに示すようにウェストゲートバルブ55の開度が比較的小さく、ウェストゲートバルブ55の先端部56の少なくとも一部と対向部115とが軸方向に沿って重複する位置に存在する場合、すなわち、先端部56の少なくとも一部がバイパス部160の上流端161よりも軸方向の上流側に位置している場合について考える。この場合、ウェストゲートバルブ55の先端部56の少なくとも一部が対向部115と軸方向に沿って重複しているため、ウェストゲートバルブ55の先端部56と対向部115との間の隙間を排ガスは、ほとんど流れることができない。そのため、開口111から流出した排ガスは、該隙間を流れた僅かな量を除いて、連通部120に流入する。
【0041】
図8A乃至
図8Cに示すタービン30において、
図8Cに示すようにウェストゲートバルブ55の開度が比較的大きく、ウェストゲートバルブ55の先端部56が対向部115よりも軸方向に沿って下流側に存在する場合、すなわち、バイパス部160の上流端161の少なくとも一部がウェストゲートバルブ55の先端部56よりも軸方向の上流側に位置する場合について考える。この場合、開口111から流出した排ガスは、連通部120とバイパス部160とに流入する。
【0042】
また、例えば
図9A乃至
図9Cに示すように、ウェストゲートバルブ55Aは、揺動するのではなく、タービンハウジング5に対する姿勢を変えずに軸方向に移動可能に構成されていて、軸方向に移動することで開口111を閉止又は開放するように構成されていてもよい。
図9A乃至
図9Cに示すウェストゲートバルブ55Aは、ウェストゲートバルブ55Aの径方向内側に位置する先端部56Aを有していてもよい。例えば
図9A乃至
図9Cに示すタービン30は、ウェストゲート流路110内でウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aと比較的小さな隙間を介して対向する対向部115Aを有していてもよい。例えば
図9A乃至
図9Cに示すタービン30では、バイパス部160の上流端161は、対向部115Aよりも軸方向の下流側に位置しているとよい。
【0043】
図9A乃至
図9Cに示すタービン30では、
図9Aに示すようにウェストゲートバルブ55Aが開口111を閉じている場合、開口111よりも下流側のウェストゲート流路110には排ガスは流れない。
【0044】
図9A乃至
図9Cに示すタービン30において、
図9Bに示すようにウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的小さく、ウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aの少なくとも一部と対向部115Aとが軸方向に沿って重複する位置に存在する場合、すなわち、先端部56Aの少なくとも一部がバイパス部160の上流端161よりも軸方向の上流側に位置している場合について考える。この場合、ウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aの少なくとも一部が対向部115と軸方向に沿って重複しているため、ウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aと対向部115Aとの間の隙間を排ガスは、ほとんど流れることができない。そのため、開口111から流出した排ガスは、該隙間を流れた僅かな量を除いて、連通部120に流入する。
【0045】
図9A乃至
図9Cに示すタービン30において、
図9Cに示すようにウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的大きく、ウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aが対向部115Aよりも軸方向に沿って下流側に存在する場合、すなわち、バイパス部160の上流端161の少なくとも一部がウェストゲートバルブ55Aの先端部56Aよりも軸方向の上流側に位置する場合について考える。この場合、開口111から流出した排ガスは、連通部120とバイパス部160とに流入する。
【0046】
なお、
図8A乃至
図8C及び
図9A乃至
図9Cに示すように、バイパス部160の下流側の領域160Dを軸方向下流側に向けて傾斜させ、バイパス部160から排出される排ガスが排出流路171を形成する流路壁面172に沿って軸方向下流側に流れるようにするとよい。
上述したように、一般的に、ウェストゲートバルブ55Aが開いてウェストゲート流路110に排ガスを流す状況では、タービン30の圧力比が高い場合が多い。そのため、バイパス部160を流れる排ガスの流速は比較的大きい。そのため、バイパス部160から排出される排ガスが流路壁面172に沿って軸方向下流側に流れるようにバイパス部160を構成することで、バイパス部160から排出された排ガスによって排出流路171の下流側に接続された不図示のタービンディフューザにおける境界層に運動量を与えることができる。これにより、タービンディフューザにおける流れの剥離を抑制できる。
【0047】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービン30は、複数の翼33を有するタービンホイール3と、タービンホイール3を収容するタービンホイール収容空間53を内部に形成するタービンハウジング5と、タービンハウジング5の内部に形成されたウェストゲート流路110を流れる排ガスの流量を制御するためのウェストゲートバルブ55、55Aと、を備える。ウェストゲート流路110は、タービンハウジング5の内部に形成されたスクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域とを接続するように構成されている。
【0049】
上記(1)の構成によれば、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域に案内されるようにウェストゲート流路110が構成されている。これにより、ウェストゲート流路110内の排ガスがタービンホイール3の複数の翼33に向かって流れるので、該排ガスのエネルギーをタービンホイール3の運動エネルギーとして回収可能である。したがって、ウェストゲート流路110を流れた排ガスからの動力回収が可能となるので、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を向上できる。また、ウェストゲート流路110を流れた排ガスをタービンホイール収容空間53に導くことで、複数の翼33のチップ34とタービンハウジング5との間の隙間における排ガスのチップリークを抑制できる。これにより、タービン30の効率が向上するので、タービン30の出力を向上できる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、ウェストゲート流路110は、スクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域の内のスロート部35よりも下流側の領域とを接続するように構成されているとよい。
【0051】
上述したように、一般的に、タービンにおける飲み込み流量はスロート部の流路面積によって決まる。そのため、スロート部35よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続すると、ウェストゲート流路110を介してスロート部35よりも上流側の領域に流入した排ガスの影響でタービン30における飲み込み流量が減ってしまうおそれがある。
したがって、上記(2)の構成のようにスロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53に流入しても、タービン30における飲み込み流量に及ぼす影響を抑制できる。また、スロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、スロート部35よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続した場合と比べて、排ガスを効率的にウェストゲート流路110を介してタービン30の下流側に排出できる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、タービンホイール3は、複数の翼33の間に配置される複数の短翼133であって、複数の短翼133の各々の後縁137が複数の翼33の各々の後縁37よりも前縁36側に位置するように形成された複数の短翼133をさらに有していてもよい。ウェストゲート流路110は、スクロール流路7aと、タービンホイール収容空間53における複数の翼33の後縁37よりも上流側の領域の内の短翼133の後縁137よりも下流側の領域とを接続するように構成されているとよい。
【0053】
周方向で隣り合う2つの翼33の間に形成される流路の内、短翼133が存在する領域においてスロート部35が存在していれば、上記(3)の構成を採用することで、スロート部35よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することになるので、ウェストゲート流路110を流れた排ガスがタービンホイール収容空間53に流入しても、タービンにおける飲み込み流量に及ぼす影響を抑制できる。また、短翼133の後縁137よりも下流側の領域にウェストゲート流路110を接続することで、短翼133の後縁137よりも上流側の領域にウェストゲート流路110を接続した場合と比べて、排ガスを効率的にウェストゲート流路110を介してタービン30の下流側に排出できる。さらに、タービンホイール3が複数の短翼133を有するので、ウェストゲート流路110に排ガスが流れていない状態においても、タービン30の性能を向上できる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、ウェストゲート流路110とタービンホイール収容空間53とを連通する連通部120は、周方向に間隔を置いて配置された複数の連通孔121、122を含むとよい。
【0055】
上記(4)の構成によれば、ウェストゲート流路110内の排ガスを複数の連通孔121、122からタービンホイール3の複数の翼33に向かって流すことができ、複数の連通孔121、122から吹き出される排ガスの流速を確保できる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、ウェストゲート流路と110タービンホイール収容空間53とを連通する連通部120は、周方向に延在する溝125を含むとよい。
【0057】
上記(5)の構成によれば、ウェストゲート流路110内の排ガスを周方向に延在する溝125からタービンホイール3の複数の翼33に向かって流すことで、翼33の振動を抑制できるので、タービン30の信頼性を向上できる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、ウェストゲート流路110は、タービンホイール3の回転方向Rの下流側に向かって断面積が小さくなるように構成されたスクロール部150であって、上記溝125を介してタービンホイール収容空間53と連通するスクロール部150を含むとよい。
【0059】
上記(6)の構成によれば、排気ガスがスクロール部150で周方向に沿って案内されることで、上記溝125を介してタービンホイール収容空間53に流入する排ガスの流量についての周方向の位置による差を抑制できる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の構成において、上記溝125内に周方向に間隔を置いて配置された複数のノズル部材131、132であって、径方向内側に向かうにつれてタービンホイール3の回転方向Rの下流側に向かって流れるように上記溝125内を通過する排ガスを案内するための複数のノズル部材131、132をさらに備えるとよい。
【0061】
上記(7)の構成によれば、排ガスが複数のノズル部材131、132によって上述のように案内されることで、排ガスを効率的にタービンホイール収容空間53に流入させることができる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(7)の何れかの構成において、連通部120は、先細末広形状を有していてもよい。
【0063】
一般的に、ウェストゲートバルブ55、55Aが開いてウェストゲート流路110に排ガスを流す状況では、タービン30の圧力比が高い場合が多い。そのため、連通部120を流れる排ガスの流速は非常に大きい。したがって、上記(8)の構成によれば、連通部120を先細末広形状、すなわちラバールノズルのような形状にしているので、連通部120から吹き出す排ガスのエネルギーを効率的にタービンホイール3の運動エネルギーに変換できる。これにより、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を一層向上できる。また、連通部120を先細末広形状に加工することは比較的容易であるので、製造コストを抑制できる。
【0064】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、ウェストゲート流路110とタービンホイール3の下流側に形成される排出流路171とを接続するように構成されたバイパス部160をさらに備えてもよい。
【0065】
上記(9)の構成によれば、ウェストゲート流路110を流れる排ガスの流量を増やすことができる。また、コンプレッサ40駆動のために要求されるタービン動力を得るのに必要な排ガス量を超えて排ガスが供給されても、余剰の排ガスをタービン30の外にバイパスさせることができる。よって、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力を向上できるとともに、タービン30の過回転を抑制してタービン30の信頼性を向上できる。
【0066】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、ウェストゲート流路110は、ウェストゲートバルブ55によって開閉される開口111を含むとよい。ウェストゲートバルブ55は、ウェストゲートバルブ55の径方向外側の位置がタービンハウジング5に揺動可能に支持されたスイングバルブからなるとよい。ウェストゲート流路110とタービンホイール収容空間53とを連通する連通部120は、上記開口111に対して軸方向の上流側に位置するとよい。バイパス部160は、上記開口111に対して軸方向の下流側に位置するとよい。
【0067】
上記(10)の構成によれば、ウェストゲートバルブ55の開度が比較的小さいと、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55によってバイパス部160側への流れが阻害されるため、連通部120側に向かって流れるようになる。そのため、ウェストゲートバルブ55の開度が比較的小さいと、開口111から流出した排ガスは、主として連通部120を流れるようになる。
ウェストゲートバルブ55の開度が比較的大きいと、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55によってバイパス部160側への流れが阻害され難くため、バイパス部160側に向かって流れ易くなる。そのため、ウェストゲートバルブ55の開度が比較的大きいと、開口111から流出した排ガスは、連通部120だけでなく、バイパス部160にも流れるようになる。
これにより、ウェストゲートバルブ55の開度によって連通部120及びバイパス部160を流れる排ガスの分配比率を調節できる。よって、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力をより向上できるとともに、タービンの過回転を抑制してタービン30の信頼性を向上できる。
【0068】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、ウェストゲート流路110は、ウェストゲートバルブ55Aによって開閉される開口111を含むとよい。ウェストゲートバルブ55Aは、軸方向に移動可能に構成されていてもよい。ウェストゲート流路110とタービンホイール収容空間53とを連通する連通部120は、上記開口111に対して軸方向の上流側に位置するとよい。バイパス部160は、上記開口111に対して軸方向の下流側に位置するとよい。
【0069】
上記(11)の構成によれば、ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的小さいと、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55Aによってバイパス部160側への流れが阻害されるため、連通部120側に向かって流れるようになる。そのため、ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的小さいと、開口111から流出した排ガスは、主として連通部120を流れるようになる。
ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的大きいと、開口111から流出した排ガスは、ウェストゲートバルブ55Aによってバイパス部160側への流れが阻害され難くため、バイパス部160側に向かって流れ易くなる。そのため、ウェストゲートバルブ55Aの開度が比較的大きいと、開口111から流出した排ガスは、連通部120だけでなく、バイパス部160にも流れるようになる。
これにより、ウェストゲートバルブ55Aの開度によって連通部120及びバイパス部160を流れる排ガスの分配比率を調節できる。よって、排ガスをウェストゲート流路110にバイパスさせたときのタービン30の出力をより向上できるとともに、タービンの過回転を抑制してタービン30の信頼性を向上できる。
【0070】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャ1は、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のタービン30を備える。
【0071】
上記(12)の構成によれば、タービン30の部分負荷性能を向上させたターボチャージャ1を提供できる。
【符号の説明】
【0072】
1 ターボチャージャ
3 タービンホイール
5 ケーシング(タービンハウジング)
7 スクロール部
7a スクロール流路
30 タービン
33 翼(動翼)
34 先端部(チップ)
35 スロート部
36 前縁
37 後縁
53 タービンホイール収容空間
55、55A ウェストゲートバルブ
110 ウェストゲート流路
111 開口
120 連通部
121、122 連通孔
125 溝
131、132 ノズル部材
133 短翼
137 後縁
140 ノズル部
160 バイパス部
171 排出流路