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特許7395017パワーモジュールの信頼性を向上させる装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】パワーモジュールの信頼性を向上させる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231201BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231201BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022563557
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021010262
(87)【国際公開番号】W WO2021200057
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】20167777.0
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブランデレロ、ジュリオ・セザール
(72)【発明者】
【氏名】モロヴ、ステファン
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-532118(JP,A)
【文献】特表2018-528757(JP,A)
【文献】特開平07-135234(JP,A)
【文献】特開昭50-038467(JP,A)
【文献】特開2018-183015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60-21/607
H01L25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数のパワー半導体から構成されるパワーモジュールの信頼性を向上させる装置であって、前記パワー半導体は、金属接続部を介して前記パワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続され、前記装置は、
並列接続された前記パワー半導体の中から、基準に従って1つのパワー半導体を選択するための手段と、
並列接続された選択されていないパワー半導体に同じ入力パターンを印加するための手段と、
持続時間中に前記パワー半導体の目標温度に達するように、選択されたパワー半導体の温度を上昇させるための手段と、
前記持続時間の後に前記選択されたパワー半導体に前記同じ入力パターンを印加するための手段と、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
並列接続された複数のパワー半導体から構成されるパワーモジュールの信頼性を向上させる方法であって、前記パワー半導体は、金属接続部を介して前記パワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続され、前記方法が、
並列接続された前記パワー半導体の中から、基準に従って1つのパワー半導体を選択するステップと、
並列接続された選択されていないパワー半導体に同じ入力パターンを印加するステップと、
持続時間中に前記パワー半導体の目標温度に達するように、選択されたパワー半導体の温度を上昇させるステップと、
前記持続時間の後に前記選択されたパワー半導体に前記同じ入力パターンを印加するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記基準は、前記金属接続部の使用期間であり、新しい金属接続部を備えた前記パワー半導体が待ち行列に挿入されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準は、前記パワー半導体の前記金属接続部の劣化であり、該劣化は、前記パワー半導体の動作中の接合部温度の変化によって推定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パワー半導体の動作中の前記接合部温度の変化は、所与の温度変動ΔTjw及び所与の平均温度TjwにおけるW個の異なる温度レベル及びサイクル数Ncwを決定するために、前記接合部温度の履歴データを処理するレインフローアルゴリズムに従って推定され、該レインフローアルゴリズムは、次式
【数1】
を用いた損傷則に基づく線形累積則と組み合わされ、式中、係数A、α、Kcは、パワーサイクル試験によって予め決定されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記持続時間は、2時間から78時間まで変動することを特徴とする、請求項~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標温度は、最大接合部温度よりも低く、前記パワー半導体の相互接続部の溶融温度よりも低いことを特徴とする、請求項~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択されたパワー半導体の温の上昇は、パワー半導体の漏れ電流を誘発及び制御することによって実行されることを特徴とする、請求項~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記漏れ電流は、前記パワー半導体のゲート-ソース間電圧又はゲート-エミッタ間電圧を、前記選択されたパワー半導体の閾値電圧値よりも100mV~2V高い値まで増加させることによって誘発されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パワー半導体の前記ゲート-ソース間電圧又は前記ゲート-エミッタ間電圧は、パルス幅変調器を使用して取得され、該パルス幅変調器の周波数が、
【数2】
として定義され、式中、Cinは、前記パワー半導体の入力容量であり、Rgは、前記ゲートに接続された抵抗と前記パワー半導体の入力抵抗との和であり、Vcc及びVeeは、それぞれ前記パワー半導体を駆動するゲートドライバの正及び負の電圧レールであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パワー半導体の前記ゲート-ソース間電圧又は前記ゲート-エミッタ間電圧は、パルス幅変調器を使用して取得され、該パルス幅変調器の周波数が、
【数3】
として定義され、式中、Cinは、前記パワー半導体の入力容量であり、Rgは、前記ゲートに接続された抵抗と前記パワー半導体の入力抵抗との和であり、VgLは、2つのスイッチに印加される電圧であり、該2つのスイッチは、前記パルス幅変調器に従って制御され、それぞれの抵抗器を介して前記パワー半導体を駆動するゲートドライバの正及び負の電圧レールにリンクされることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、パワーモジュールの信頼性を向上させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールのパワー半導体の電気相互接続部は、パワーモジュールの最も故障しやすい箇所の1つである。パワー半導体の電気相互接続部の状態は、パワーモジュールの寿命を決定する要因の1つである。各パワー半導体は、一般に、ワイヤボンディング技術を用いてパワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続されている。ワイヤボンディングプロセスでは、力、温度及び超音波エネルギーを用いて、メタライズされたパワー半導体表面及びメタライズされた基板にワイヤがボンディングされる。これらの技術は、通常、信頼性の問題を引き起こすワイヤボンドとメタライゼーションとの間の微視的な差をもたらす。
【0003】
ワイヤボンディングプロセス中、構造ワイヤ/メタライゼーションはより硬化し、ワイヤボンドが破断するまでに得られ得る変形量は制限される。
【0004】
メタライズされたパワー半導体表面にボンディングされたワイヤによって構成される領域では、パワーモジュールのパッケージを構成する構造の熱膨張係数(CTE)が異なることにより、機械的応力が発生する。同様の硬化現象が、ワイヤボンディング/メタライゼーションの接触部の寿命中に現れる。硬質材料に関連する熱機械的応力は、ワイヤボンドとメタライゼーションとの間の接合部にクラックを発生させ、最終的にはワイヤボンドが完全にリフトオフし、パワーモジュールの故障につながる可能性がある。
【0005】
現在の技術では、この種の相互接続部の信頼性を向上させるために、アルミニウムワイヤ、最近では銀ワイヤ又は銅ワイヤが使用されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、パワーモジュールの信頼性を向上させる装置及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
そのため、本発明は、並列接続された複数のパワー半導体から構成されるパワーモジュールの信頼性を向上させる装置であって、パワー半導体は、金属接続部を介してパワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続され、装置は、
並列接続されたパワー半導体の中から、基準に従って1つのパワー半導体を選択するための手段と、
並列接続された選択されていないパワー半導体に同じ入力パターンを印加するための手段と、
選択されたパワー半導体の金属接続部の界面の結晶粒均質化を達成するために、持続時間中にパワー半導体の目標温度に達するように、選択されたパワー半導体の温度を上昇させるための手段と、
持続時間の後に選択されたパワー半導体に同じ入力パターンを印加するための手段と、
を備えることを特徴とする、装置に関する。
【0008】
本発明はまた、並列接続された複数のパワー半導体から構成されるパワーモジュールの信頼性を向上させる方法であって、パワー半導体は、金属接続部を介してパワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続され、方法は、
並列接続されたパワー半導体の中から、基準に従って1つのパワー半導体を選択するステップと、
並列接続された選択されていないパワー半導体に同じ入力パターンを印加するステップと、
選択されたパワー半導体の金属接続部の界面の結晶粒均質化を達成するために、持続時間中にパワー半導体の目標温度に達するように、選択されたパワー半導体の温度を上昇させるステップと、
持続時間の後に選択されたパワー半導体に同じ入力パターンを印加するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0009】
したがって、熱処理によって、選択されたパワー半導体の金属接続構造上の微細構造を変化させ、粒径を大きくすることで、パワーモジュールの寿命が向上する。その結果、より軟質で延性のある金属接続部及び界面が得られ、温度とパワーモジュール構造上に存在する異なる材料のCTE不整合とによる大きな変形に対応することができる。パワーモジュールにかかる温度は所与の歪みを与えるため、本発明に従って得られる軟質材料は信頼性の向上を示す。本方法では、従来の金属接続部の材料及び技術を使用することができ、パワーモジュールの信頼性及び寿命を向上させることができる。選択されたパワー半導体の温度を上昇させるために要求される総電力は、パワーモジュール全体の総散逸損失のほんの一部に過ぎない。
【0010】
特定の特徴によれば、基準は、金属接続部の使用期間(age)であり、新しい金属接続部を備えたパワー半導体が待ち行列に挿入される。
【0011】
したがって、従来のプロセスで得られる金属接続構造上の微細かつ不十分に選別された粒径を変化させることで、より粗い粒径が得られ、その結果、クラック又は破断を伴わずにより多くの変形に対応することができる軟質材料が得られる。
【0012】
特定の特徴によれば、基準は、パワー半導体の金属接続部の劣化であり、劣化は、パワー半導体の動作中の接合部温度の変化によって推定される。
【0013】
したがって、パワーモジュールの動作中の温度変動による疲労効果によって引き起こされる金属接続構造上の蓄積された歪み/応力を軽減するために、結晶粒均質化のプロセスがパワーモジュールの寿命中に何度も繰り返される。
【0014】
特定の特徴によれば、パワー半導体の動作中の接合部温度の変化は、所与の温度変動ΔTjw及び所与の平均温度TjwにおけるW個の異なる温度レベル及びサイクル数Ncwを決定するために、接合部温度の履歴データを処理するレインフローアルゴリズムに従って推定され、レインフローアルゴリズムは、次式
【数1】
を用いた損傷則に基づく線形累積則と組み合わされ、式中、係数A、α、Kcは、パワーサイクル試験によって予め決定される。
【0015】
したがって、結晶粒均質化のプロセスは、過去のパワーサイクル試験により決定された結晶粒成長に関する知識と、温度変動によりパワーモジュールに課せられた実際の履歴応力レベルとに基づいて、結晶粒構造の成長がクラック形成にとって重要となる場合にのみ適用される。
【0016】
特定の特徴によれば、持続時間は、2時間から78時間まで変動する。
【0017】
したがって、金属接続部の微細構造は、比較的低温でアニール効果により変化し、持続時間は比較的短い。
【0018】
特定の特徴によれば、目標温度は、最大接合部温度よりも低く、パワー半導体の相互接続部の溶融温度よりも低い。
【0019】
したがって、パワー半導体は結晶粒界面の均質化中に動作可能であり、この熱処理中にダイを所定の位置に維持するために任意の特別な支持が必要である。
【0020】
特定の特徴によれば、選択されたパワー半導体の温度の上昇は、パワー半導体の漏れ電流を誘発及び制御することによって実行される。
【0021】
したがって、熱処理は、パワーモジュールの出力波形(電圧/電流)が変化しない通常動作時に、パワー半導体ごとに制御され、他の並列パワー半導体がBUS電圧(+V~-V)を遮断していれば、温度を上昇させるのにわずか数アンペアで十分である。
【0022】
特定の特徴によれば、漏れ電流は、パワー半導体のゲート-ソース間電圧又はゲート-エミッタ間電圧を、選択されたパワー半導体の閾値電圧値よりも100mV~2V高い値まで増加させることによって誘発される。
【0023】
したがって、熱処理コントローラーは、電圧レベルの互換性を前提として、選択されたパワー半導体の従来の制御ユニット上に統合することができる。
【0024】
特定の特徴によれば、パワー半導体のゲート-ソース間電圧又はゲート-エミッタ間電圧は、パルス幅変調器を使用して取得され、パルス幅変調器の周波数が、
【数2】
として定義され、式中、Cinは、パワー半導体の入力容量であり、Rgは、ゲートに接続された抵抗とパワー半導体の入力抵抗との和であり、Vcc及びVeeは、パワー半導体を駆動するゲートドライバの正及び負の電圧レールであることを特徴とする。
【0025】
したがって、従来のゲートドライバのハードウェアを用いてフルデジタル電圧レギュレーターを実現することができ、漏れ電流のピーク間リップルも100mV以下に抑えられる。
【0026】
特定の特徴によれば、パワー半導体のゲート-ソース間電圧又はゲート-エミッタ間電圧は、パルス幅変調器を使用して取得され、パルス幅変調器の周波数が、
【数3】
として定義され、式中、Cinは、パワー半導体の入力容量であり、Rgは、ゲートに接続された抵抗とパワー半導体の入力抵抗との和であり、VgLは、2つのスイッチに印加される電圧であり、2つのスイッチは、パルス幅変調器に従って制御され、それぞれの抵抗器を介してパワー半導体を駆動するゲートドライバの正及び負の電圧レールにリンクされる。
【0027】
したがって、制御漏れモード中にゲートドライバに印加される電圧を低減することができ、及び/又はゲート抵抗を増加することができ、PWM変調器の周波数が低減され得、ゲートドライバスイッチ及び受動素子上の損失を低減することができる。
【0028】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】複数のパワー半導体を含むパワーモジュールの一例を示す図である。
図2】メタライズされたパワー半導体表面にボンディングされたワイヤ上のクラック形成の一例を示す図である。
図3】本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させるための装置のアーキテクチャの一例を示す図である。
図4】本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させるためのアルゴリズムの一例を示す図である。
図5】本発明による選択されたパワー半導体に印加される信号の一例を示す図である。
図6a】本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させる前の、パワー半導体のメタライゼーション表面へのワイヤボンディング接続部の結晶学的特徴を示す図である。
図6b】本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させた後の、パワー半導体のメタライゼーション表面へのワイヤボンディング接続部の結晶学的特徴を示す図である。
図7】本発明によるパワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの一例を示す図である。
図8】パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第1の例を示す図である。
図9】パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第2の例を示す図である。
図10】パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、複数のパワー半導体を含むパワーモジュールの一例を表す。
【0031】
図1の例では、パワーモジュールは、D1,1~D1,N及びD2,1~D2,Nで示される複数の半導体から構成されており、ここでNは概して4よりも大きい。D1,1~D1,Nで示される半導体が並列接続され、D2,1~D2,Nで示される半導体が並列接続されている。
【0032】
パワー半導体D1,1~D1,N及びD2,1~D2,Nは、金属接続部を介してパワーモジュールのパッケージの外部ピンに接続されている。
【0033】
金属接続部は、ワイヤボンド及び/又は金属ビア及び/又は金属リボン及び/又はダイレクトリードボンディング及び/又は導電性充填材である。
【0034】
本発明は、金属接続部がワイヤボンドである一例において開示される。金属ビア及び/又は金属リボン及び/又はダイレクトリードボンディング及び/又は導電性充填物にも同様に適用可能である。
【0035】
半導体1個あたり20本のボンディングと考えると、ワイヤボンディングの総接続本数は非常に多くなる。
【0036】
各ワイヤボンドはパワーモジュール全体の構造上の弱点であり、ボンドの数が増加すると、パワーモジュールの信頼性が低下する。パワーモジュールの寿命の間に、図2に示すように、熱機械応力によって引き起こされたクラックがボンディング領域上に生じる。
【0037】
図2は、メタライズされたパワー半導体表面にボンディングされたワイヤ上のクラック形成の一例を表す。
【0038】
図2において、ワイヤボンドBdは、パワー半導体Di,j(i=1又は2、j=1~N)のメタライズされた表面Meにボンディングされる。
【0039】
熱機械応力に起因してボンディング領域にクラックCra及びCrbが発生する。
【0040】
パワーモジュールは、同じCTEを有する材料では構成されていない。一般に、Siのパワー半導体は、2.56e-6/Kの線形CTEを有し、23.1e-6/KのCTEを有するアルミニウムでメタライズされている。さらに、温度はパワー半導体上で均一ではない。結果として、接合構造上に機械的な変形が生じる。動作中の温度変動に伴うボンドの疲労効果により、クラックCra及びCrbが発生し、これらは、ワイヤボンディングのリフトオフを誘発する。
【0041】
本発明は、パワーモジュールのパワー半導体のうちの1つのパワー半導体の温度を、界面の結晶粒均質化を達成するのに必要な持続時間にわたってパワーモジュールの動作中にパワー半導体の最大接合部温度に近い温度まで上昇させることを目的とする。パワー半導体の温度上昇は、パワー半導体の制御された漏れ電流を誘発及び制御することによって得られる。その結果、パワー半導体の損失により温度が増加し、それにより、アニール効果によりワイヤボンドの微細構造が変化し、ワイヤボンド構造の軟度が増大し、耐変形能力が向上し、パワーモジュール全体の寿命が増加する。
【0042】
図3は、本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させるための装置のアーキテクチャの一例を表す。
【0043】
装置100は、例えば、バス301によって互いに接続された構成要素と、プログラムによって制御されるプロセッサ300とに基づくアーキテクチャを有する。
【0044】
バス301は、プロセッサ300を、読み出し専用メモリROM302、ランダムアクセスメモリRAM303、及び入出力(I/O)インターフェース(I/F)305にリンクする。
【0045】
メモリ303は、図4に開示されたアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受け取るように意図されたレジスタを含む。
【0046】
読み出し専用メモリ、又は場合によっては、フラッシュメモリ302は、図4に開示されたアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含む。
【0047】
装置100の電源が投入されると、メモリ302に記憶された命令がランダムアクセスメモリ303に転送される。
【0048】
図4は、本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させるためのアルゴリズムの一例を表す。
【0049】
本アルゴリズムは、プロセッサ300によって実行される一例において開示される。
【0050】
ステップS40において、プロセッサ300は、パワーモジュールのパワー半導体の中から1つのパワー半導体Di,jを選択する。ここで、i=1又は2であり、jは1~Nの整数値である。
【0051】
例えば、パワーモジュールのパワー半導体のうち、パワー半導体によって構成される待ち行列が、少なくとも1つの基準に従って確立される。
【0052】
例えば、基準は、ワイヤボンディング接続部の使用期間である。新しいワイヤボンディング相互接続部を備えたパワー半導体が待ち行列に挿入される。
【0053】
例えば、基準は、パワー半導体のワイヤボンディング相互接続部の劣化である。ワイヤボンディング相互接続部の劣化は、動作中の接合部温度の変化、例えば、所与の動作点又は所与の接合部温度サイクル数Ncにおいて接合部温度が5%を超えて上昇することにより推定することができる。
【0054】
接合部温度は、温度センサ又は温度感知電気パラメーター(TSEP)方式の技術を使用して測定することができる。
【0055】
例えば、基準は、接合部温度の履歴データの分析に基づく。例えば、基準は、所与の温度変動ΔTjw及び所与の平均温度TjwにおけるW個の異なる温度レベル及びサイクル数Ncwを決定するために、接合部温度の履歴データを処理するレインフローアルゴリズムに従って定義され、レインフローアルゴリズムは、以下の式に示されるように、損傷則に基づく線形累積則と組み合わされ、式中、係数A、α、Kcは、パワーサイクル試験によって予め決定される。
【数4】
【0056】
例えば、プロセッサ300は、ラウンドロビン方式でパワー半導体を選択する。
【0057】
ステップS41において、プロセッサ300は、選択されたパワー半導体Di,jに一般に印加される入力パターンを無効にする。
【0058】
ステップS42において、プロセッサ300は、目標温度に達するように、選択されたパワー半導体Di,jの温度を上昇させる。パワーモジュールの通常動作時には、1つのパワー半導体に対してのみ温度制御が行われる。
【0059】
選択されたパワー半導体の温度の上昇は、パワー半導体の漏れ電流を誘発及び制御することによって行われる。
【0060】
パワー半導体の目標温度は、最大接合部温度よりもわずかに低く、パワー半導体の相互接続部の溶融温度よりも低い。漏れ電流制御の持続時間は、図6bにおいて説明されるように、界面の結晶粒均質化を達成するために決定される。この持続時間は、例えば、開発段階におけるワイヤボンディング及びメタライゼーション構造に関する実験的試験によって得られる。持続時間は、2時間から78時間まで変動し得る。
【0061】
漏れ電流は、ゲート-ソース/エミッタ間電圧を、選択されたパワー半導体の閾値電圧値よりも100mV~2V高い値まで増加させることによって誘発される。
【0062】
その結果、他のパワー半導体が図1に示すバス電圧V+、V-を遮断しているときに、選択されたパワー半導体に漏れ電流が流れる。したがって、選択されたパワー半導体を加熱するのに必要な電流はわずか数アンペアである。温度は、一般にフィードバック制御システムによって制御することができる。
【0063】
持続時間が終了すると、プロセッサ300はステップS43に移動する。
【0064】
ステップS43において、プロセッサは、選択されたパワー半導体Di,jに対する入力パターンINを有効にし、待ち行列内に別のパワー半導体が存在するか否かをチェックする。
【0065】
待ち行列内に少なくとも1つの他のパワー半導体が存在する場合、プロセッサ300はステップS400に戻り、待ち行列内の次のパワー半導体を選択する。
【0066】
図5は、本発明による選択されたパワー半導体に印加される信号の一例を表す。
【0067】
通常動作中、同じ入力パターンINが、並列接続されたパワー半導体に印加されている。印加される入力パターンINは、例えば、数マイクロ秒の周期Tswを有する信号である。パワー半導体Di,jが選択されると、半導体Di,jの漏れ電流は、図5においてTで示される期間の間、ステップS42において誘発及び制御される。
【0068】
漏れ電流は、信号Vctrlを用いて、ゲート-ソース/エミッタ間電圧を、選択されたパワー半導体の閾値電圧Vthよりも高いが近い値まで上昇させることによって誘発される。
【0069】
その結果、他のパワー半導体がバス電圧V+、V-を遮断しているときに、選択されたパワー半導体に漏れ電流が流れる。
【0070】
選択されたパワー半導体の接合部温度を目標温度まで上昇させる。
【0071】
図6aは、本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させる前の、パワー半導体のメタライゼーション表面へのワイヤボンディング接続部の結晶学的特徴を表す。ボンディングプロセスの後、又はパワーモジュールの動作中に、図6aに示されるようなワイヤボンディングの化学的特徴が存在する。図6aに示すように、ワイヤボンディング構造上に微細かつ不十分に選別された粒径が得られる。これは、微細な粒度、並びに少量の歪みで発生する降伏点及び極限強度、破断を伴う硬質材料をもたらすものである。
【0072】
図6bは、本発明によるパワーモジュールの信頼性を向上させた後の、パワー半導体のメタライゼーション表面へのワイヤボンディング接続部の結晶学的特徴を表す。
【0073】
軟質材料は、図6bに示すように、大量の歪みで発生する降伏点及び極限強度、破断を有する。本発明による熱処理の適用後、粒度はより粗くなる。パワーモジュールにかかる温度は所与の歪みを与えるため、本発明に従って得られる軟質材料は信頼性の向上を示す。
【0074】
図7は、本発明によるパワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの一例を表す。
【0075】
入出力(I/O)インターフェース(I/F)305には、パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュール70が含まれる。
【0076】
パワー半導体D1,1~D1,N及びD2,1~D2,Nはそれぞれ並列接続されており、通常動作において同じゲート-ソース/エミッタ間電圧IN(i=1又は2)によって制御される。各パワー半導体は、パワー半導体の漏れ電流を誘発及び制御するためのそれぞれのモジュールを有する。
【0077】
したがって、各ゲート-エミッタ/ソース間電圧は、通常動作モードでは入力信号INを基準に制御し、電圧Vctrlがパワー半導体のソース/エミッタに印加される漏れモードでは個別に制御することができる。
【0078】
各モジュール70は、電圧Vctrl又はINがパワー半導体に印加されることを可能にする信号Selci,jによって制御される少なくとも1つのスイッチを備える。例えば、電圧Vctrlは、測定された接合部温度が目標温度から減算され、減算の結果が乗算係数及び積分演算に適用される従来の制御構造によって得られる。
【0079】
図8は、パワー半導体に印加される漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第1の例を表す。
【0080】
パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールは、抵抗81及び82と、pnp又はnpnトランジスタ83と、演算増幅器84とを含む。
【0081】
信号INは、スイッチ85に供給される。スイッチ85は、信号Selci,jに応じて、信号IN又はゲートドライバ80の基準電圧を選択する。
【0082】
スイッチ85の出力は、ゲートドライバ80の入力に接続されている。
【0083】
抵抗81の第1の端子は、ゲートドライバ80に接続されている。抵抗81の第2の端子は、パワー半導体のゲートと、抵抗器82の第1の端子と、pnpトランジスタ83のコレクタと、演算増幅器84の非反転入力とに接続されている。抵抗82の第2の端子はゲートドライバ80の正電圧レールVccに接続され、pnpトランジスタ83のエミッタはゲートドライバ80の基準電圧に接続され、pnpトランジスタ80のベースは演算増幅器84の出力によって駆動され、演算増幅器の反転入力ポートには制御電圧値Vctrlが供給される。
【0084】
図9は、パワー半導体に印加される漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第2の例を表す。
【0085】
パワー半導体に印加される漏れ電流を制御するためのモジュールは、パルス幅変調器90と、3つのスイッチ91、95、96と、インバータ92と、抵抗93とを含む。
【0086】
信号Vctrlはパルス幅変調器90に供給され、パルス幅変調器90の出力は、
【数5】
に等しいデューティサイクルを有する矩形波である。
【0087】
パルス幅変調器90の周波数は十分に高く、パワー半導体がMOSFETである場合にはパワー半導体のゲート及びソースにおいて、又はパワー半導体がIGBTである場合にはパワー半導体のゲート及びエミッタにおいて100mV未満のリップル電圧が得られる。パルス幅変調器90の周波数は、
【数6】
として定義される。
【0088】
式中、Cinはパワー半導体の入力容量であり、Rgは抵抗93とパワー半導体の入力抵抗との和である。スイッチ91には、信号INとパルス幅変調器90の出力とが供給される。スイッチ91は、信号Selci,jに応じて、信号IN又はパルス幅変調器90の出力を選択する。
【0089】
スイッチ91の出力は、スイッチ95を駆動し、インバータ92を介してスイッチ96を駆動する。
【0090】
スイッチ95の第1の端子は正電圧レールVccに接続され、スイッチ95の第2の端子は抵抗器93の第1の端子及びスイッチ96の第1の端子に接続される。
【0091】
スイッチ96の第2の端子は、負電圧レールVeeに接続される。
【0092】
図10は、パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールの実装形態の第3の例を表す。
【0093】
パワー半導体の漏れ電流を制御するためのモジュールは、パルス幅変調器1000と、4つのスイッチ1001、1005、1006及び1010と、インバータ1002と、トランジスタ1007と、4つの抵抗1003、1008、Rgl及び1011とを含む。
【0094】
信号Vctrlはパルス幅変調器1000に供給される。
【0095】
パルス幅変調器1000の周波数は十分に高く、100mV未満のリップル電圧が得られる。パルス幅変調器1000の周波数は、
【数7】
として定義され、式中、Cinはパワー半導体の入力容量であり、Rgは抵抗1003とパワー半導体の入力抵抗との和であり、VgLはパワー半導体が選択されたときにトランジスタ1007によってスイッチ1005及び1006に印加される電圧であり、
【数8】

【数9】
の間に含まれ、Vthは選択されたパワー半導体の閾値電圧である。スイッチ1001には、信号INとパルス幅変調器1000の出力とが供給される。スイッチ1001は、信号Selci,jに応じて、信号IN又はパルス幅変調器1000の出力を選択する。パルス幅変調器1000の出力は、
【数10】
に等しいデューティサイクルを有する矩形波である。
【0096】
スイッチ1001の出力はスイッチ1005を駆動し、インバータ1002を介してスイッチ1006を駆動する。
【0097】
スイッチ1005の第1の端子は、抵抗器1008を介して正電圧レールVccに接続されるとともに、トランジスタ1007のコレクタに接続される。スイッチ1005の第2の端子は、抵抗器Rglの第1の端子、スイッチ1010の第1の端子、及びスイッチ1006の第1の端子に接続される。
【0098】
スイッチ1006の第2の端子は、トランジスタ1007のエミッタと、抵抗器1011を介して負電圧レールVeeとに接続される。抵抗器Rglの第2の端子は、スイッチ1010の第2の端子及び抵抗器1003の第1の端子に接続される。
【0099】
トランジスタ1007のベースは信号Vglに接続されている。信号INが選択された場合、信号Vglの電流はゼロである。信号Vctrlが選択された場合、信号Vglの電流は、1007のコレクタにおける電圧を、選択されたパワー半導体の閾値電圧+2V以上に維持するのに十分高い電流となる。
【0100】
例えば、信号Vctrlが選択された場合の信号Vglの電流は、図10に示されていない従来の演算増幅器の出力によって制御されてもよく、演算増幅器の非反転入力は、トランジスタ1007のコレクタに接続され、演算増幅器の反転入力ポートには、パワー半導体の閾値電圧+2Vの電圧値が供給される。
【0101】
スイッチ1010は、Vctrlが選択された場合に開き、INが選択された場合に閉じる。
【0102】
したがって、信号INが選択された場合、パワー半導体は、Vcc及びVeeレールに対して、かつ抵抗1003を介して制御される。信号Vctrlが選択された場合、パルス幅変調器の周波数は、図9と比較して低減することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10