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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/04 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
G01L19/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022568069
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037129
(87)【国際公開番号】W WO2022123886
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020205919
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】石川 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】金井 祐二
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040758(JP,A)
【文献】特開平10-325772(JP,A)
【文献】特開2000-214029(JP,A)
【文献】特開2003-130747(JP,A)
【文献】特開2019-174382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0285167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の圧力を受圧する金属製のダイヤフラムと、前記ダイヤフラムとともにオイルを封止する液封室を形成するハウジング部材と、前記液封室内で前記ハウジング部材に固着され、前記液封室内の圧力を検出する圧力検出部と前記圧力検出部の出力信号を補正する集積化された電子回路とが一体に形成された圧力センサチップと、前記圧力センサチップからの電気信号を外部に導出するためのリードピンとを備える液封型の圧力センサであって、
前記圧力センサチップの入力部および出力部に接続され電気的な入出力を変換する変換基板と、前記変換基板の出力が温度と圧力の条件の複数の組み合わせそれぞれで、目標電圧となるよう、前記圧力センサチップの出力を調整する補正部と、を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記圧力センサチップは前記圧力検出部からの検出出力を送出する出力部と、前記圧力検出部の検出出力のスパン調整を行うとともに、前記圧力検出部の一部を形成する温度検出部からの検出信号に基づいて前記圧力検出部の検出出力の温度変化に応じた前記スパン調整の温度補償を行う前記補正部と、前記補正部からの調整量および温度補償量をあらわすデータを格納する記憶部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記補正部は、前記圧力検出部の検出出力のスパン調整を行う圧力のスパン調整部と、前記圧力検出部の一部を形成する温度検出部からの検出信号に基づいて前記圧力検出部の検出出力の温度変化に応じた前記スパン調整の温度補償を行う温度スパン調整部と、前記温度検出部からの検出信号に基づいて前記出力部の検出出力に対し加算するオフセット量を調整する温度オフセット調整部とを含むことを特徴とする請求項2記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記記憶部は、前記圧力のスパン調整部の調整量、および、温度スパン調整部の温度補償量をあらわすデータと、温度オフセット調整部のオフセット量をあらわすデータとを格納することを特徴とする請求項3記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記センサチップは、圧力室内の圧力を検出し検出出力を送出するセンサユニットの液封室内に配置され、前記変換基板は、該センサユニットを収容するセンサユニット収容部内に前記液封室と隔絶されて形成された内部空間に配置されることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記変換基板は、電源電圧を降圧して前記圧力センサチップの前記入力部に供給することを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記変換基板は、電源電圧を昇圧して圧力センサチップの前記入力部に供給することを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記変換基板は、圧力センサチップの前記出力部の信号を電流信号に変換することを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記変換基板は、圧力センサチップの前記出力部の信号をデジタル信号に変換することを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
液封型の半導体圧力センサに内蔵されるセンサユニットは、継手部内に支持され圧力検出室と後述する液封室とを隔絶するダイヤフラムと、ダイヤフラムの上方に形成され圧力伝達媒体としてのシリコーンオイルを貯留する液封室と、液封室内に配されダイヤフラムを介しシリコーンオイルの圧力変動を検出するセンサチップと、センサチップを支持するチップマウント部材と、ハウジングの貫通孔におけるチップマウント部材の周囲を密封するハーメチックガラスと、センサチップからの出力信号の送出およびセンサチップへの電力供給を行う端子群とを主な要素として含んで構成されている。
【0003】
また、上述のセンサユニットにおいては、例えば、特許文献1に示されるように、半導体圧力センサに接続される空調システムの様々な制御回路に対応し得るように、中継基板に電気的に接続される場合がある。そのような中継基板は、上述のセンサユニットの端子群が電気的に接続される複数の電線を介して接続された変換回路を有している。その変換回路は、制御回路の駆動電圧をセンサユニットの駆動電圧に昇圧、または、降圧するための昇圧回路部、または、降圧回路部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6656125号
【発明の概要】
【0005】
発明が解決しようとする課題
【0006】
上述の半導体圧力センサの一連の製造工程中において、センサユニットのセンサチップは、所定の内部温度に保たれた恒温槽内の雰囲気のもとで、例えば、センサチップの出力特性のスパン調整(使用温度範囲における出力特性の調整)等が行われた後、それらをあらわす設定データがセンサチップ内の記憶部に書き込まれ、その後、センサユニットのセンサチップ単体で例えば、エージング試験が行われる場合がある。
【0007】
エージング試験の際、良品と判断されたセンサユニットのセンサチップは、製造工程の後工程において、仕向地に応じて上述のような中継基板に接続される場合がある。このような場合、中継基板に接続されたセンサユニットのセンサチップについて、再度、中継基板の出力部から出力される出力信号の特性が所定の許容範囲内の精度となっているかどうかの検査が常温で行われる。
【0008】
このような場合、センサチップの分解能、ならびに、中継基板の変換回路に使用された電子部品の製造上のばらつきに起因して中継基板の出力部から出力される出力信号の特性が所定の許容範囲内の精度とならないものが含まれることがある。斯かる場合の対策としては、予めセンサチップの分解能を高め、中継基板の変換回路に使用される電子部品の製造上のばらつきの少ない電子部品を採用することも考えられる。しかし、半導体圧力センサを構成する電子部品の製造コストが嵩み得策ではない。
【0009】
以上の問題点を考慮し、本発明は、圧力センサであって、電子部品の製造上の誤差に影響されることなく、中継基板の変換回路に接続されたセンサユニットのセンサチップの出力特性のばらつきを抑えることができる圧力センサを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明に係る圧力センサは、液体の圧力を受圧する金属製のダイヤフラムと、ダイヤフラムとともにオイルを封止する液封室を形成するハウジング部材と、液封室内でハウジング部材に固着され、液封室内の圧力を検出する圧力検出部と圧力検出部の出力信号を補正する集積化された電子回路とが一体に形成された圧力センサチップと、圧力センサチップからの電気信号を外部に導出するためのリードピンとを備える液封型の圧力センサであって、圧力センサチップの入力部および出力部に接続され電気的な入出力を変換する変換基板と、変換基板の出力が温度と圧力の条件の複数の組み合わせそれぞれで、目標電圧となるよう、圧力センサチップの出力を調整する補正部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
圧力センサチップは、さらに、圧力検出部からの検出出力を送出する出力部と、圧力検出部の検出出力のスパン調整を行うとともに、圧力検出部の一部を形成する温度検出部からの検出信号に基づいて圧力検出部の検出出力の温度変化に応じたスパン調整の温度補償を行う補正部と、補正部からの調整量および温度補償量をあらわすデータを格納する記憶部と、を含んでもよい。補正部は、圧力検出部の検出出力のスパン調整を行う圧力のスパン調整部と、圧力検出部の一部を形成する温度検出部からの検出信号に基づいて圧力検出部の検出出力の温度変化に応じたスパン調整の温度補償を行う温度スパン調整部と、温度検出部からの検出信号に基づいて出力部の検出出力に対し加算するオフセット量を調整する温度オフセット調整部とを含んでもよい。
【0012】
記憶部は、圧力のスパン調整部の調整量、および、温度スパン調整部の温度補償量をあらわすデータと、温度オフセット調整部のオフセット量をあらわすデータとを格納するものであってもよい。
【0013】
また、センサチップは、圧力室内の圧力を検出し検出出力を送出するセンサユニットの液封室内に配置され、変換基板は、センサユニットを収容するセンサユニット収容部内に液封室と隔絶されて形成された内部空間に配置されてもよい。
【0014】
変換基板は、電源電圧を降圧して圧力センサチップの入力部に供給するものでもよく、あるいは、変換基板は、電源電圧を昇圧して圧力センサチップの入力部に供給するものでもよい。また、変換基板は、圧力センサチップの出力部の信号を電流信号に変換するものでもよい。さらに、変換基板は、圧力センサチップの出力部の信号をデジタル信号に変換するものでもよい。
発明の効果
【0015】
本発明に係る圧力センサによれば、センサチップの補正部が、変換基板の出力変換部の出力の目標値と出力部の出力の特性とを整合させるように、動作するので電子部品の製造上の誤差に影響されることなく、中継基板の変換回路に接続されたセンサユニットのセンサチップの出力特性のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る圧力センサの一例に用いられるセンサチップおよび変換基板の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示される補正部および記憶部の構成を概略的に示すブロック図である。
図3図3は、本発明に係る圧力センサの一例の全体構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3は、本発明に係る圧力センサの一例の全体構成を示し、例えば、液封型の半導体圧力センサとされる。
【0018】
圧力センサは、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、継手部材30のベースプレート28に連結されセンサユニットを収容し後述するセンサチップ16からの検出出力信号を所定の測定装置42(図1参照)に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0019】
金属製の継手部材30は、上述の配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部30fsを内側に有している。雌ねじ部30fsは、矢印Pの示す方向から供給される流体を後述する圧力室28Aに導く継手部材30のポート30aに連通している。ポート30aの一方の開口端は、継手部材30のベースプレート28と後述するセンサユニットのダイヤフラム32との間に形成される圧力室28Aに向けて開口している。圧力室28A内には、継手部材30のポート30aを通じて流体としての気体または液体が供給される。センサユニットのハウジング62の下端面は、ベースプレート28に載置されている。
【0020】
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、円筒状のハウジング62と、圧力室28Aとハウジング62の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、センサチップ16と、接着層を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材68と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群を構成するリードピン60LP1,60LP2,60LP3,60LP4,60LP5、60LP6、60LP7、および、60LP8と、入出力端子群およびオイル充填用パイプ58をチップマウント部材68の外周面とハウジング62の内周面との間に固定するハーメチックガラス64と、を主な要素として含んで構成されている。
【0021】
なお、図3においては、リードピン60LP1~60LP8のうちリードピン60LP6、60LP7、60LP8、60LP1、および、オイル充填用パイプ58のみを代表的に示す。
【0022】
ダイヤフラム32の外周縁は、上述の圧力室28Aに向き合うハウジング62の一方の下端面に支持されている。圧力室28Aに配されるダイヤフラム32を保護するダイヤフラム保護カバー34は、複数の連通孔を有している。ダイヤフラム保護カバー34の周縁は、ダイヤフラム32の外周縁とともに溶接によりステンレス鋼製のハウジング62の下端面に接合されている。
【0023】
金属製のダイヤフラム32と向かい合うセンサチップ16およびハーメチックガラス64の端面との間に形成される液封室33には、例えば、圧力伝達媒体PMとして所定量のシリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体がオイル充填用パイプ58を介して充填されている。なお、オイル充填用パイプ58の一方の端部は、オイル充填後、押し潰され閉塞される。
【0024】
絶縁部材としてのハーメチックガラス64の端部に形成される凹部に配されるセンサチップ16とダイヤフラム32との間には、さらに、金属製の電位調整部材37がハーメチックガラス64の下端面に支持されている。電位調整部材37は、例えば、センサチップ16の回路のゼロ電位に接続される端子に接続されている。
【0025】
なお、入出力端子群およびオイル充填用パイプ58をチップマウント部材68の外周面とハウジング62の内周面との間に固定する絶縁部材は、斯かる例に限られることなく、例えば、入出力端子群等を絶縁しながら液封室33の気密性を担保するセラミック、耐熱性樹脂等であってもよい。
【0026】
リードピン60LP6およびリードピン60LP7は、例えば、2本の電源用端子(Vcc、GND)とされ、リードピン60LP8は、例えば、センサチップ16からの出力信号を送出する外部出力用端子(Vout)とされる。その他のリードピン60LP1~60LP5は、それぞれ、5本の調整用端子とされる。リードピン60LP1~60LP5の両端部は、それぞれ、上述のハーメチックガラス64の端部に形成される凹部、および、後述する変換基板24に向けて突出している。
【0027】
リードピン60LP6、リードピン60LP7、および、リードピン60LP8の両端部は、それぞれ、上述のハーメッチックガラス64の端部に形成される凹部、および、変換基板24に向けて突出している。リードピン60LP6、リードピン60LP7、および、リードピン60LP8の一端は、それぞれ、可撓性結線材56の下端部に接続されている。センサチップ16とリードピン60LP1~60LP5、リードピン60LP6、リードピン60LP7、および、リードピン60LP8の他端との間は、ボンディングワイヤWiで接続されている。
【0028】
なお、リードピンの本数は、斯かる例に限られることなく、例えば、センサチップ16の入出力ポートの数に応じて適宜設定されてもよい。
【0029】
図3において、複数の接続端子54ai(i=1~3)にそれぞれ、接続される可撓性結線材56は、雄型のコネクタ52を介して測定装置42(図1参照)に接続される。複数の接続端子54aiは、後述する変換基板24のスリットを貫通し後述する端子台52aに設けられている。各接続端子54aiは、例えば、上述のリードピン60LP6、リードピン60LP7、および、リードピン60LP8の一端に可撓性結線材56を介して接続される外部出力用接続端子(Vout)、駆動電圧供給用接続端子(Vcc)、接地用接続端子(GND)とされる。
【0030】
センサユニット収容部の外郭部は、雄型のコネクタ52を構成する円筒状の防水ケース50と、継手部材30のベースプレート28と防水ケース50の連結端部との間に上述のハウジング62を挟持しベースプレート28と防水ケース50とを連結する接続部材70と、により形成されている。
【0031】
樹脂製の防水ケース50の連結端部の端面には、内部空間50Aに連通する開口部50aが形成されている。窪んだ内部空間50Aは、開口部50aを形成する防水ケース50の内側側面と、内側側面に連なる最上端面とから形成されている。最上端面には、接着剤27により変換基板24が接着されている。変換基板24におけるハーメッチックガラス64の端部に向き合う実装面には、複数の電子部品25が実装されている。
【0032】
防水ケース50の連結端部の端面における開口部50aの周縁には、ハウジング62の上端面が当接されている。また、防水ケース50の開口部50aの周縁には、Oリング72が挿入されるOリング用溝50Gが形成されている。
【0033】
雄型のコネクタ52の防水ケース50は、例えば、樹脂材料で形成されている。雄型のコネクタ52は、図示が省略される雌型のコネクタに着脱可能とされる接続口部52FCと、接続口部52FCの基部と一体に形成され上述の接続端子54aiを支持する端子台52aとから構成されている。端子台52aにおける内部空間50Aの一部を形成する上述の最上端面には、変換基板24と、接続端子54aiとが配置されている。
【0034】
接続端子54aiの固定端子部は、接続口部52FCの下端に形成される端子台52aに支持されている。端子台52aから突出する各接続端子54aiの係合端子は、接続口部52FCの中心軸線Cに対し平行になるように、接続口部52FCに向けて開口する小径部52b内に延びている。
【0035】
図1は、上述のワンチップICで構成されたセンサチップ16、および、変換基板(変換回路)24を含んで構成されるシステム構成を示す。
【0036】
そのような半導体圧力センサは、圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットを含んで構成されている。センサユニットは、例えば、図3に示されるように、円筒状のステンレス鋼製のハウジング62と、検出されるべき流体が導入される圧力室28Aとハウジング62の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、ダイヤフラム32で仕切られたハウジング62の内周部の液封室33内に配される圧力検出部を有するセンサチップ16と、接着剤層を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材68と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群(60LP1~60LP8)と、入出力端子群(60LP1~60LP8)およびオイル充填用パイプ58をチップマウント部材68の外周面とハウジング62の内周面との間に固定するハーメチックガラス64と、を主な要素として含んで構成されている。
【0037】
図1において、変換基板24は、上述のセンサユニットの製造工程の最終工程において所定の測定装置42に着脱可能に接続される。
【0038】
変換基板24は、測定装置42の出力ポートからポート24b1に供給された電圧を所定の電圧まで降圧、または、昇圧し、ポート24a1を通じてセンサチップ16のポート16P1に出力する電源電圧変換部24Aと、センサチップ16のポート16P2からポート24a2に送出されたセンサ出力(DC0.5V~4.5V)を所定の電圧(DC0V~10V)まで昇圧(増幅)、または、所定の電圧(DC0.3V~3.0V)まで降圧(減衰)し、ポート24b2を介して測定装置42の入力ポートに送出する出力変換部24Bとを含んで構成されている。
【0039】
電源電圧変換部24Aは、例えば、ポート24b1に供給された入力電源電圧(DC12V~24V)を圧力検出素子の電源電圧DC5Vに降圧し、あるいは、ポート24b1に供給された入力電源電圧(DC3.3V)を圧力検出素子の電源電圧DC5Vに昇圧するものとされる。
【0040】
なお、出力変換部24Bは、例えば、センサ出力を所定の電流(DC4mA~20mA)に変換して出力するものでもよい。また、出力変換部24Bは、例えば、UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter、または、I2C:Inter-Integrated Circuitなどのシリアルインターフェースデバイスを有し、シリアル通信機能を備えるものでもよい。
【0041】
センサチップ16は、例えば、ワンチップICからなり、圧力を検出するゲージ抵抗からの流体圧力をあらわす検出出力を信号処理部16Bに送出するとともに、その検出出力に対し後述する補正部16Dからの圧力のスパン調整量をあらわす調整信号Acs1および、温度のスパン調整量をあらわす調整信号Acs2に基づいて検出出力に温度のスパン調整量および圧力のスパン調整量を反映させる圧力検出部16Aと、後述するデータ群Ca1に基づいて所定の試験恒温槽(不図示)内の所定の試験温度に応じて変換基板24の出力変換部24Bから出力される出力電圧が所定の目標電圧となるように、圧力検出部16Aにおける圧力検出出力について圧力のスパン調整等、ならびに、出力部16Cにおける出力信号に対し所定の温度特性に応じた温度オフセット調整等を行う補正部16Dと、補正部16Dからの後述する所定の温度特性に応じたオフセット量をあらわす温度オフセット調整信号Avs1、および、Avs2に基づいて信号処理部16Bからの圧力に比例する電圧値をあらわす出力信号に対し各オフセット量を加算し、出力電圧を形成する出力部16Cと、を含んで構成されている。
【0042】
また、センサチップ16は、図2に示されるように、後述する補正部16Dの各レジスタ16DR(RAM)からの更新された各データDp、Dt、DS1、および、DS2が順次、送信され格納される記憶部(EPROM)16Mを備えている。
【0043】
記憶部16Mは、ポート16P5に供給される更新しながら書き込みを指令する書き込み制御信号CW1に基づいて後述する各レジスタ16DR(RAM)の各データを順次、所定のメモリアドレスに格納する。
【0044】
補正部16Dは、例えば、図2に示されるように、上述の圧力検出部16Aの一部を形成する温度検出部(ゲージ抵抗部)16Dtを含んでいる。温度検出部16Dtからの温度に応じて変化するゲージ抵抗部を流れる電流値をあらわす出力信号Stは、それぞれ、後述する温度スパン調整部16DT、および、温度オフセット調整部16Ds1に送信される。
【0045】
また、補正部16Dは、加えて、上述の圧力検出出力をあらわす特性線(一次関数)の傾きを調整し検出される最小圧力から最大圧力までの範囲を設定する圧力スパン調整部16DPと、温度に応じて変化する圧力検出出力をあらわす特性線(一次関数)の傾きを調整する温度スパン調整部16DTと、温度に応じて変化する圧力検出出力の特性線(一次関数)の切片(オフセット量ともいう)を調整する温度オフセット調整部16Ds1と、オフセット調整部16Ds2と、を備えている。
【0046】
補正部16Dの調整は、補正部16Dにおける圧力スパン調整部16DP、温度スパン調整部16DT、温度検出部16Dt、オフセット調整部16Ds2に基づいて行われる。各調整部16DP、16DT、16Ds2は、図示が省略される調整回路からポート16P8、16P7、16P6にそれぞれ送信されるデータ群Ca1、イネーブル信号Ca2、および、クロック信号Ca3に基づいて調整を行う。
【0047】
センサチップ16および変換基板24を恒温槽(不図示)に入れ、センサチップ16および変換基板24が所定の温度になるように恒温槽の温度が制御され、圧力室28A内の圧力が所定の圧力となるように圧力が制御される。変換基板24の出力信号が目標電圧となるように補正部16Dの調整は、補正部16Dにおける圧力スパン調整部16DP、温度スパン調整部DT、温度検出部Dt、オフセット調整部16Ds2、温度オフセット調整部16Ds1を操作し、調整を行う。調整は、変換基板24の出力が、1条件以上の温度と、1条件以上の圧力の組み合わせのそれぞれで目標電圧となるように調整を行う。各調整部16DP、16DT、16Ds1、16Ds2の最終的な調整データが記憶部(EPROM)に記憶される。
【0048】
上述したように、センサチップ16の出力部16C、および、変換基板24の出力変換部24Bの出力が、対となって補正部16Dにより調整されることとなるので電子部品の製造上の誤差に影響されることなく、変換基板24の変換回路に接続されたセンサユニットのセンサチップ16の出力特性のばらつきを抑えることができる。
【0049】
そして、センサチップ16および変換基板24は、センサチップ16のエージング試験後、上述のセンサユニットの製造工程の最終工程において接続された測定装置42によって、圧力室28Aの圧力が所定の圧力のとき、良品とされるセンサチップ16に接続された変換基板24の出力変換部24Bからの出力が、所定の正常な電圧値となっているか否かが、検査される。
【0050】
例えば、様々な変換基板に対しワンチップICからなる共通の圧力検出素子を接続することにより、圧力検出素子の調整設備が共通化でき、従って、設備コストを節約できる。また、圧力検出素子と変換基板とをそれぞれ高精度に製作しても、組み合わせることで発生する誤差が解消できないという問題が伴う。一方、上述の例のように、圧力検出素子と変換基板とを組み合わせた状態で出力部の出力を補正することにより、そのような組み合わせ誤差を解消できる。圧力検出素子の消費電流が変化することにより、変換基板の内部電源状態が変動してしまい誤差の原因となるが、これは圧力検出素子と変換基板とを組み合わせるまで分からない。
【0051】
なお、上述の例においては、出力部16Cにおいて、各温度オフセット量を信号処理部16Bからの出力信号に加算し、出力電圧を形成しているが、斯かる例に限られることなく、例えば、出力部16Cではなく、信号処理部16Bにおいて、温度オフセット調整部16Ds1、および、オフセット調整部16Ds2からの温度オフセット調整信号に基づいて出力電圧を形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
16 センサチップ
16A 圧力検出部
16B 信号処理部
16C 出力部
16D 補正部
16M 記憶部
16DP 圧力スパン調整部
16DT 温度スパン調整部
16Ds1 温度オフセット調整部
16Ds2 オフセット調整部
24 変換基板
33 液封室
50 防水ケース
50A 内部空間
70 接続部材
図1
図2
図3