(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】電動工具又は園芸工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231201BHJP
B23B 45/16 20060101ALI20231201BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
B23B45/16 B
B25B21/00 530Z
B25B21/00 510C
(21)【出願番号】P 2023002651
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2019002817の分割
【原出願日】2019-01-10
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-139800(JP,A)
【文献】特開2017-127916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B23B 45/16
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを保持するモータハウジングと、
前記モータハウジングにつなが
っており、前記モータハウジングの下部から下方へ突出するグリップハウジングと、
前記グリップハウジング
の下端部につなが
っており、前記グリップハウジングの下端部に対して前後左右に広がっている拡大部ハウジングと、
前記モータのトルク閾値の設定変更が可能である設定制御部と、
を備えており、
前記設定制御部は、前記トルク閾値の設定変更が行えるトルク設定ロック解除状態と、前記トルク閾値の設定変更が行えないトルク設定ロック状態と、で切替可能である
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
更に、前記トルク設定ロック解除状態及び前記トルク設定ロック状態の切替を操作するボタンと、
前記トルク閾値に係る表示を行う表示部と、
を備えており、
前記設定制御部、前記ボタン及び前記表示部は、設定部基板に搭載されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
更に、ダイヤル軸の周りで回転可能に設けられるダイヤルを備えており、
前記ダイヤルは、前記トルク閾値を変更可能であり、前記ボタン及び前記表示部の前方に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
更に、前記モータを制御するコントローラを備えており、
前記コントローラは、前記設定制御部と電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記コントローラは、前記設定制御部の下方に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記設定制御部は、前記トルク閾値を少なくとも20の異なる値の何れかに設定可能である
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の電動工具。
【請求項7】
更に、前記グリップハウジングに保持されており、前記設定制御部と電気的に接続されているスイッチを備えており、
前記設定制御部は、前記スイッチがオンであると、前記トルク閾値を変更しない
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の電動工具。
【請求項8】
前記設定制御部は、前記トルク設定ロック解除状態となってから所定時間が経過すると、前記トルク設定ロック状態に切り替える
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の電動工具。
【請求項9】
モータと、
前記モータを
収容するハウジングと、
前記モータに電力を供給するバッテリと電気的に接続される端子と、
前記モータの制御に関する設定を変更可能な設定制御部と、
を備えており、
前記設定制御部は、設定の変更が行える設定ロック解除状態と、前記設定の変更が行えない設定ロック状態と、で移行可能である
ことを特徴とする電動工具
又は園芸工具。
【請求項10】
更に、前記設定ロック解除状態における前記設定の変更を操作する設定変更操作部と、
前記設定ロック解除状態及び前記設定ロック状態の移行を操作する操作部と、
を備えている
ことを特徴とする請求項9に記載の電動工具又は園芸工具。
【請求項11】
更に、表示部を備えており、
前記表示部は、前記設定ロック解除状態及び前記設定ロック状態の何れかを表示可能であり、
前記操作部は、ボタンを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の電動工具又は園芸工具。
【請求項12】
更に、表示部を備えており、
前記表示部は、モータの制御に関する設定を表示可能である
ことを特徴とする請求項9から請求項11の何れかに記載の電動工具又は園芸工具。
【請求項13】
モータと、
前記モータを保持するモータハウジングと、
前記モータハウジングにつなが
っており、前記モータハウジングの下部から下方へ突出するグリップハウジングと、
前記グリップハウジング
の下端部につなが
っており、前記グリップハウジングの下端部に対して前後左右に広がっている拡大部ハウジングと、
前記モータのトルク閾値の設定変更が可能である設定制御部と、
前記トルク閾値の設定変更を回転位置の移動により操作する設定変更操作部と、
を備えており、
前記トルク閾値の設定変更が行えるトルク設定ロック解除状態と、前記トルク閾値の設定変更が行えないトルク設定ロック状態と、を有している
ことを特徴とする電動工具。
【請求項14】
前記設定変更操作部は、ダイヤルを含む
ことを特徴とする請求項13に記載の電動工具。
【請求項15】
前記設定制御部は、前記トルク閾値を少なくとも20の異なる値の何れかに設定可能である
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の電動工具。
【請求項16】
更に、前記グリップハウジングに保持されており、前記設定制御部と電気的に接続されているスイッチを備えており、
前記設定制御部は、前記スイッチがオンであると、前記トルク閾値を変更しない
ことを特徴とする請求項13から請求項15の何れかに記載の電動工具。
【請求項17】
前記設定制御部は、前記トルク設定ロック解除状態となってから所定時間が経過すると、前記トルク設定ロック状態に切り替える
ことを特徴とする請求項13から請求項16の何れかに記載の電動工具。
【請求項18】
更に、前記トルク設定ロック解除状態及び前記トルク設定ロック状態の切替を操作するボタンと、
前記トルク閾値に係る表示を行う表示部と、
を備えており、
前記設定制御部、前記ボタン及び前記表示部は、設定部基板に搭載されている
ことを特徴とする請求項13から請求項17の何れかに記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバドリルを始めとする電動工具、又は園芸工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-100259号公報(特許文献1)に示されるように、ドリルチャック6の後側において回転操作可能なチェンジリング86を備えたドライバドリルが知られている。
このチェンジリング86の回転操作により、フラットワッシャ92及び押圧ピン105を介してインターナルギヤ43Cを前方から付勢するコイルバネ104の軸方向長さが変更される。
そして、クラッチモードにおいて、スピンドル5への負荷がコイルバネ104の押圧力を超えると、インターナルギヤ43Cのクラッチカムが押圧ピン105及びフラットワッシャ92を前方へ押し出してインターナルギヤ43Cを空転させ、クラッチがチェンジリング86の操作(コイルバネ104の軸方向長さに応じた付勢力)に応じたトルクにおいて切れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ドライバドリルでは、ドリルチャック6後側のチェンジリング86を回転操作することにより、コイルバネ104の軸方向長さを変更して、クラッチが切れるトルクが変更されるため、トルクの設定幅が比較的に狭くなったり、トルク設定のためにドリルチャック6の隣接部に触れる必要があったりする等、トルク設定のための操作性に更なる向上が図られる余地がある。
本発明は、例えばクラッチが切れるトルクの設定等の操作がより行い易い電動工具、又は園芸工具を提供することを主な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、電動工具において、モータと、前記モータを保持するモータハウジングと、前記モータハウジングにつながっており、前記モータハウジングの下部から下方へ突出するグリップハウジングと、前記グリップハウジングの下端部につながっており、前記グリップハウジングの下端部に対して前後左右に広がっている拡大部ハウジングと、前記モータのトルク閾値の設定変更が可能である設定制御部と、を備えており、前記設定制御部は、前記トルク閾値の設定変更が行えるトルク設定ロック解除状態と、前記トルク閾値の設定変更が行えないトルク設定ロック状態と、で切替可能であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、更に、前記トルク設定ロック解除状態及び前記トルク設定ロック状態の切替を操作するボタンと、前記トルク閾値に係る表示を行う表示部と、を備えており、前記設定制御部、前記ボタン及び前記表示部は、設定部基板に搭載されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、更に、ダイヤル軸の周りで回転可能に設けられるダイヤルを備えており、前記ダイヤルは、前記トルク閾値を変更可能であり、前記ボタン及び前記表示部の前方に配置されていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、更に、前記モータを制御するコントローラを備えており、前記コントローラは、前記設定制御部と電気的に接続されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記コントローラは、前記設定制御部の下方に配置されていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記設定制御部は、前記トルク閾値を少なくとも20の異なる値の何れかに設定可能であることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、更に、前記グリップハウジングに保持されており、前記設定制御部と電気的に接続されているスイッチを備えており、前記設定制御部は、前記スイッチがオンであると、前記トルク閾値を変更しないことを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、前記設定制御部は、前記トルク設定ロック解除状態となってから所定時間が経過すると、前記トルク設定ロック状態に切り替えることを特徴とするものである。
請求項9に記載の発明は、電動工具又は園芸工具において、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記モータに電力を供給するバッテリと電気的に接続される端子と、前記モータの制御に関する設定を変更可能な設定制御部と、を備えており、前記設定制御部は、設定の変更が行える設定ロック解除状態と、前記設定の変更が行えない設定ロック状態と、で移行可能であることを特徴とするものである。
請求項10に記載の発明は、上記発明において、更に、前記設定ロック解除状態における前記設定の変更を操作する設定変更操作部と、前記設定ロック解除状態及び前記設定ロック状態の移行を操作する操作部と、を備えていることを特徴とするものである。
請求項11に記載の発明は、上記発明において、更に、表示部を備えており、前記表示部は、前記設定ロック解除状態及び前記設定ロック状態の何れかを表示可能であり、前記操作部は、ボタンを含むことを特徴とするものである。
請求項12に記載の発明は、上記発明において、更に、表示部を備えており、前記表示部は、モータの制御に関する設定を表示可能であることを特徴とするものである。
請求項13に記載の発明は、電動工具において、モータと、前記モータを保持するモータハウジングと、前記モータハウジングにつながっており、前記モータハウジングの下部から下方へ突出するグリップハウジングと、前記グリップハウジングの下端部につながっており、前記グリップハウジングの下端部に対して前後左右に広がっている拡大部ハウジングと、前記モータのトルク閾値の設定変更が可能である設定制御部と、前記トルク閾値の設定変更を回転位置の移動により操作する設定変更操作部と、を備えており、前記トルク閾値の設定変更が行えるトルク設定ロック解除状態と、前記トルク閾値の設定変更が行えないトルク設定ロック状態と、を有していることを特徴とするものである。
請求項14に記載の発明は、上記発明において、前記設定変更操作部は、ダイヤルを含むことを特徴とするものである。
請求項15に記載の発明は、上記発明において、前記設定制御部は、前記トルク閾値を少なくとも20の異なる値の何れかに設定可能であることを特徴とするものである。
請求項16に記載の発明は、上記発明において、更に、前記グリップハウジングに保持されており、前記設定制御部と電気的に接続されているスイッチを備えており、前記設定制御部は、前記スイッチがオンであると、前記トルク閾値を変更しないことを特徴とするものである。
請求項17に記載の発明は、上記発明において、前記設定制御部は、前記トルク設定ロック解除状態となってから所定時間が経過すると、前記トルク設定ロック状態に切り替えることを特徴とするものである。
請求項18に記載の発明は、上記発明において、更に、前記トルク設定ロック解除状態及び前記トルク設定ロック状態の切替を操作するボタンと、前記トルク閾値に係る表示を行う表示部と、を備えており、前記設定制御部、前記ボタン及び前記表示部は、設定部基板に搭載されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の主な効果は、例えばクラッチが切れるトルクの設定等の操作がより行い易い電動工具が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る震動ドライバドリルの左側面図である。
【
図7】(a)~(d)は、
図1におけるダイヤルの永久磁石の磁場の変化によりダイヤルの回転を把握する場合の模式図である。
【
図8】
図1のモータに係るトルク閾値の設定変更に関するフローチャートである。
【
図9】ダイヤルの永久磁石の変更例に係る縦中央断面の模式図である。
【
図10】磁場センサの変更例に係る縦中央断面の模式図である。
【
図11】磁場センサの別の変更例に係る縦中央断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
当該形態及び変更例における前後上下左右は、説明の便宜上定めたものであり、使用状況及び移動する部材の状態の少なくとも一方等により変化することがある。
又、本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0009】
図1は、電動工具の一例である震動ドライバドリル1の左側面図である。
図2は、
図1の下半部の前面図である。
図3は、
図2の上面図である。
図4は、
図2の一部分解斜視図である。
図5は、
図2の中央縦断面図である。
図6は、
図2のA-A線断面図である。
尚、
図1,5の左が震動ドライバドリル1の前となり、
図3の下が震動ドライバドリル1の前で、
図3の左が震動ドライバドリル1の右となる。
【0010】
震動ドライバドリル1は、中心軸を前後方向とする円柱状の本体部2と、本体部2の下部から下方へ突出するように形成されたグリップ部3と、グリップ部3の下端につながっており、グリップ部3の下端部に対して前後左右に広がっている拡大部4と、を有する。本体部2、グリップ部3及び拡大部4の外郭は、各種の部材を直接あるいは間接的に保持するハウジング5となっている。尚、拡大部4は、グリップ部3の下端部に対して上下方向を除く何れかの方向で張り出していれば良く、例えば前のみに突出していても良いし、前及び左右に広がっていても良いし、前後に突出して左右に突出しなくても良い。
本体部2の前端には、先端部においてビット(先端工具)を把持可能な先端工具保持部としてのドリルチャック6が設けられる。
ハウジング5の一部であり本体部2の後半部分とグリップ部3と拡大部4との外郭となる後ハウジング7は、互いに半割とされた左後ハウジング7L及び右後ハウジング7Rを、複数の左右方向のネジ7sによって組み付けることで形成されている。
後ハウジング7における本体部2後部の外郭部分は、モータハウジング7Aとなっており、後ハウジング7におけるグリップ部3の外郭部分は、グリップハウジング7Bとなっており、後ハウジング7における拡大部4の外郭部分は、拡大部ハウジング7Cとなっている。尚、モータハウジング7Aとグリップハウジング7Bと拡大部ハウジング7Cとの少なくとも何れか2つは、互いに別体であっても良い。
【0011】
モータハウジング7Aには、モータ8が保持されている。
モータ8は、ブラシレスモータであって、筒状のステータ9と、ステータ9の内部に配置されステータ9に対して回転可能であるロータ10と、を備えており、インナロータ型となっている。ロータ10は、自身の中心軸周りで回転するモータ軸10aを備えている。
ステータ9には、ロータ10の回転位置を検出するセンサ回路基板(図示略)が取り付けられている。
尚、モータ8は、ブラシ付きのモータ等の、ブラシレスモータ以外のものであっても良いし、ロータ10がステータ9の径方向外側に配置されるアウタロータ型であっても良い。
【0012】
モータ軸10aの後部には、ファン11Aが固定されている、ファン11Aは、ここでは遠心ファンとされている。尚、ファン11Aは、軸流ファン等の他の形式のファンとされても良い。ファン11Aは、ステータ9よりも前方に配置されていても良い。
モータハウジング7Aの後端部は、後方へ開口する開口部を有しており、その後側には、開口部を覆う皿状のリアカバー11Bが被せられている。ファン11Aは、リアカバー11Bの径方向内方に配置されている。リアカバー11Bの左部及び右部には、前後方向に延びる排気口11Cが、複数、上下に並ぶように配置されている。
又、モータハウジング7Aの左右には、複数の吸気口11Dが設けられている。モータハウジング7A左部において、吸気口11Dは上下に配置されており、上の3個の吸気口11Dは、後上がりとされて前後に並び、下の3個の吸気口11Dは、前上がりとされて前後に並んでいる。モータハウジング7A右部において、吸気口11Dはモータハウジング7A左部と同様に形成されている。各吸気口11Dは、モータ8の径方向外方に配置されている。
尚、リアカバー11Bは、モータハウジング7A(後ハウジング7)と一体であっても良い。又、排気口11C及び吸気口11Dの少なくとも一方は、上記以外の形状,配置,設置数とされても良い。
【0013】
モータ8の前方には、ギヤアッセンブリ12が組み付けられている。ギヤアッセンブリ12は、ハウジング5の一部であるギヤケース12Cと、前端部がギヤケース12C前端部から前方へ露出するスピンドル13と、を備えている。ギヤケース12Cの前部及びスピンドル13の前端部は、モータハウジング7Aから前方へ出るように配置されている。スピンドル13の前部には、ドリルチャック6が取り付けられている。尚、スピンドル13は、ギヤアッセンブリ12の構成要素ではないものとされても良い。又、ギヤケース12Cは、後ハウジング7と一体とされていても良い。
ギヤアッセンブリ12は、モータ8のモータ軸10aの回転を減速してスピンドル13に伝達する減速機構12Aと、スピンドル13に軸方向への震動を付与する震動機構12Bと、を有している。
【0014】
グリップハウジング7Bの上部には、スイッチ14が保持されている。スイッチ14は、グリップ部3における後ハウジング7(グリップハウジング7B前上部)から露出したトリガ15を備えている。尚、スイッチ14は、ボタンを備えたもの等、他の形式に変更されても良い。
スイッチ14の上方には、モータ軸10aの回転方向を切り替える正逆切替ボタン16が設けられる。
正逆切替ボタン16の前方には、ドリルチャック6の前方を照射するライト17が、透光性を有するライトカバー17a内にLED(図示略)を斜め上向きに配置することで設けられている。
正逆切替ボタン16及びライト17は、モータハウジング7Aに保持されている。尚、これらのうちの少なくとも一方は、グリップハウジング7Bに保持されていても良い。
【0015】
拡大部ハウジング7Cの下部には、モータ8等の電源となるバッテリ18が前方からのスライドにより取り付けられるバッテリ取付部19が形成されている。拡大部ハウジング7Cは、バッテリ取付部19を有することから、バッテリ取付ハウジングとして捉えることもできる。
バッテリ取付部19には、取り付けられたバッテリ18が電気的に接続される端子を備えた端子台19aが保持されている。バッテリ取付部19は、隣接部分に対して上方へ凹む凹部19bを有している。バッテリ18は、弾性体(図示略)により上方に付勢されたバッテリ爪18aと連動する(一体である)バッテリボタン18bを有している。バッテリ爪18aは、バッテリ18の取付時、バッテリ取付部19の凹部19bに入る。バッテリ取付部19からバッテリ18が外される場合、バッテリボタン18bが下方に押されて、バッテリ爪18aが凹部19bから出た状態で、バッテリ18が前方へスライドされる。
又、拡大部ハウジング7Cには、モータ8を制御するコントローラ20が保持されている。コントローラは、マイコン及び6個のスイッチング素子並びにコンデンサ21a等を搭載した制御回路基板21と、制御回路基板21の下側及び前後左右を覆うコントローラケース22と、を備えている。制御回路基板21は、スイッチ14並びにモータ8のステータ9(複数のコイル)及びセンサ回路基板と、図示されないリード線により電気的に接続されている。
【0016】
更に、拡大部ハウジング7Cの前上部には、ダイヤル24が設けられている。
ダイヤル24は、外周に滑り止めの凹凸が形成された円筒状のダイヤルカバー26と、ダイヤルカバー26の径方向内方において保持される円筒状の永久磁石28と、永久磁石28の中央孔を通過する左右方向のダイヤル軸29と、ボール30と、弾性体であるコイル状のスプリング32と、を備えている。
ダイヤルカバー26の右端は、永久磁石28が通過可能であるように開放されている。他方、ダイヤルカバー26の左端には、ダイヤル軸29の通過部分を除いて塞ぐような左面部が形成されており、当該左面部の左面には、ボール30に対応する大きさを有する複数(8個)の窪み26aが、周方向に並べられている。
図7に示されるように、永久磁石28は、周方向に極性が変わるものとなっており(リング磁石)、ここではN極,S極,N極,S極の順で周方向に並ぶものとなっている。
ダイヤルカバー26及び永久磁石28は、ダイヤル軸29の周りで双方向(左方から見た場合の時計回り及び反時計回り)に一体で回転可能である。ダイヤル軸29の左右の端部は、拡大部ハウジング7Cの左右の内面に形成されたボス穴34に入っている。
ボール30は、ダイヤルカバー26の左面部に対して、ボール30左側のスプリング32の付勢力によって右方へ押し付けられており、何れかの窪み26aに入ることで、ダイヤルカバー26の回転操作時におけるクリック感の付与と、回転操作後のダイヤルカバー26及び永久磁石28の回転位置(回転姿勢)の保持とがなされる。ダイヤルカバー26及び永久磁石28は、ここでは8個の窪み26aにより45°ずつの回転角において回転位置が保持される。
尚、ダイヤルカバー26、ボール30及びスプリング32の少なくとも何れかは、省略されても良い。又、ダイヤル軸29は、前後方向等の左右方向以外に延びていても良い。永久磁石28とダイヤル軸29とが一体であっても良い。ダイヤル24は、拡大部ハウジング7Cの側部等に設けられていても良い。永久磁石28は、2対の極を持つものに代えて、1対の極を持つもの、あるいは3対以上の極を持つものとされても良い。窪み26aは、7個以下であっても良いし、9個以上であっても良い。
【0017】
又、拡大部ハウジング7C内であってダイヤル24の下方には、磁場センサ38が保持されている。ダイヤル24は、拡大部ハウジング7Cの前上部において外部に露出しており、磁場センサ38は、拡大部ハウジング7Cの前中央部内で保持されて露出しない。
磁場センサ38は、ダイヤル24の永久磁石28の磁場を検知するもので、ここではホール素子を含んでいる。磁場センサ38は、より詳しくは、自身の垂直方向(ここでは前後方向)での磁場(縦磁場)の大きさ及び向きと、自身に沿う方向(ここでは上下方向)での磁場(横磁場)の大きさ及び向きと、を検知可能である。
【0018】
拡大部4におけるダイヤル24の後方でコントローラ20の上方には、設定部40が設けられている。設定部40は、設定部基板42と、その上側に配置された設定部カバー44と、これらを連結する複数(4本)のネジ45と、設定部シール46と、を有する。
【0019】
設定部基板42は、図示されないリード線によりコントローラ20(制御回路基板21)と電気的に接続されている。磁場センサ38は、設定部基板42と、図示されないリード線により電気的に接続されている。尚、磁場センサ38及び制御回路基板21の少なくとも一方は、コントローラ20に搭載(統合)されても良い。
設定部基板42は、表示部50と、操作部52と、図示されない設定制御部(例えばCPU)を有する。
表示部50は、各種の設定値及び設定状態を表示するもので、ここでは複数(3個)の7セグメント表示器50aを含んでいる。尚、表示部50は、フラットディスプレイ及びランプの少なくとも一方等といった、他の表示器によるものであっても良い。
操作部52は、各種の設定値の設定及び設定状態の変更を操作するもので、ここでは複数(3個)のボタンスイッチ52aを含んでいる。尚、操作部52は、2個以下あるいは4個以上のボタンスイッチ52aを含んでいても良いし、スライドスイッチ等の他の形式のスイッチが用いられても良い。
【0020】
設定部カバー44は、表示部50の各7セグメント表示器50aの表示を通すための上下方向の孔44aと、操作部52の各ボタンスイッチ52aに対する接触及び非接触が切替可能であるボタン連絡部44bと、を有している。
設定部シール46は、対応する7セグメント表示器50aの表示を透過可能である表示窓46aと、ボタン連絡部44bを介してボタンスイッチ52aを切替可能であるボタン46bと、を有している。
【0021】
1つのボタン46b(例えば右のボタン46b)が押されると、設定制御部がこれを把握し、設定部40がトルク設定モードとなる(トルク設定ロック解除状態)。設定制御部は、トルク設定モードであることを、例えば右の7セグメント表示器50aにおいて点滅表示を行うことで表示する。
設定制御部は、再度同じボタン46bが押されると、トルク設定モードを終え(トルク設定ロック状態)、その表示も終えて、更なる同じボタン46bの押下によるトルク設定モードへの移行に備える。又、設定制御部は、所定時間(例えば60秒間)の経過により、同じボタン46bへの押下がなくてもトルク設定モード及びその表示を終える。尚、設定制御部は、このような自動的なトルク設定モードの終了(自動的なトルク設定ロック状態への復帰)を行わなくても良い。
【0022】
トルク設定モードにおいて、設定制御部は、
図7に示されるように、磁場センサ38により、45°ずつの回転位置で保持されるダイヤル24の永久磁石28の磁場を把握する。
図7(a)に示されるように、上下にN極とS極とが並んでおり前上及び後下にN極が位置する回転位置では、永久磁石28下方の磁力線が、図中の矢印Mのように、後側のN極から前側のS極へ回り込むように出ており、磁場センサ38は、後側から前側への磁力線に係る磁場、即ち縦磁場が0であり横磁場が前方向で最大値をとる磁場を検知し、設定制御部に送信する。
この状態から図中の矢印Dの方向にダイヤル24が45°回転されると、
図7(b)に示されるように、永久磁石28は、N極が上下に位置しS極が前後に位置する回転位置となる。この回転位置では、永久磁石28下方の磁力線が磁場センサ38に向かうように出ており、磁場センサ38は、この磁力線に係る磁場、即ち縦磁場が下方向で最大値となり横磁場が0である磁場を検知し、設定制御部に送信する。
更に同じ方向にダイヤル24が回転されると、
図7(c)に示されるように、永久磁石28は、上下にN極とS極とが並んでおり前上及び後下にS極が位置する回転位置となる。この回転位置では、永久磁石28下方の磁力線が前側のN極から後側のS極へ回り込むように出ており、磁場センサ38は、この磁力線に係る磁場、即ち縦磁場が0であり横磁場が後方向で最大値をとる磁場を検知し、設定制御部に送信する。
更に同じ方向にダイヤル24が回転されると、
図7(d)に示されるように、永久磁石28は、S極が上下に位置しN極が前後に位置する回転位置となる。この回転位置では、永久磁石28下方の磁力線が磁場センサ38から永久磁石28へ向かうように通っており、磁場センサ38は、この磁力線に係る磁場、即ち縦磁場が上方向で最大値となり横磁場が0である磁場を検知し、設定制御部に送信する。
更に同じ方向にダイヤル24が回転されると、永久磁石28は
図7(a)の回転位置となる。永久磁石28を含むダイヤル24は、
図7(a)~(d)で半回転する。又、ダイヤル24が矢印Dと逆方向に回転される場合、磁場センサ38が検知する磁場は
図7(a)~(d)に対して逆となる。よって、設定制御部は、磁場センサ38により検知された回転位置及びその遷移により、ダイヤル24の45°毎の回転及び回転方向を把握可能である。
【0023】
又、トルク設定モードにおいて、設定制御部は、
図8に示されるようにモータ8のトルク閾値の設定変更を行い、コントローラ20に伝える。
即ち、ユーザによりダイヤル24が回されると(ステップS1)、磁場センサ38は、ダイヤル24の回転量及び回転方向を検出し、検出結果に応じた信号を設定制御部に出力して、設定制御部がダイヤル24の回転量及び回転方向を把握する(ステップS2)。
そして、設定制御部は、トルク設定モードになっている(YES)か否(NO)か、即ちトルク設定ロックが解除されているか否か、を判断し(ステップS3)、判断の結果がNOであれば、トルク閾値を変更しない(ステップS4)。
他方、設定制御部は、当該判断の結果がYESであれば、更に、トリガ15が引かれているか(スイッチ14がオンとなっているか)を判断する(ステップS5)。
設定制御部は、トリガ15が引かれていれば(YES)、モータ8の動作の安定のため、トルク閾値を変更しない(ステップS4)。
【0024】
他方、設定制御部は、トリガ15が引かれていなければ(NO)、ダイヤル24の回転量及び回転方向に応じてトルク閾値に係る設定値を現在の設定値から増減する(ステップS6)。ここでは、トルク閾値は小さい方を1段目(1ニュートンメートル(Nm)に対応)として40段(45Nmに対応)まで設定可能とされ、ダイヤル24の上部が後から前へ移動する方向でダイヤル24が45°回されるとトルク閾値の段数が1減少され(但し0以下とされない)、これとは逆方向でダイヤル24が45°回されるとトルク閾値の段数が増加される(但し41以上とされない)。トルク閾値の段数は、表示部50(中央及び左の7セグメント表示器50a)において表示される。
尚、トルク閾値の段数は、39以下あるいは41以上とされても良い。段数とトルク閾値との対応関係は、様々に設定されても良い。段数が用いられず、設定に係るトルク閾値が直接表示部50において表示されても良い。表示部50において、段数あるいはトルク閾値に対応する記号(例えばA,B,C等)が表示されても良い。ダイヤル24の回転方向とトルク閾値の段数の増減との関係は、逆であっても良い。設定制御部は、トルク閾値の段数が最大である状態で更にダイヤル24が段数増加方向に回された場合に、段数を最小値にループさせても良いし、最小値からの段数減少方向へのダイヤル24の回転で段数を最大値にループさせても良い。
【0025】
そして、設定制御部は、増減により変更されたトルク閾値をコントローラ20(制御回路基板21)に送信し、コントローラ20はこれを受信して、モータ8のトルク閾値を受信した値に設定変更する(ステップS7)。
モータ8のロータ10は、コントローラ20(制御回路基板21)により回転制御され、コントローラ20が現在の設定に係るトルク閾値を超えるトルクをトルク閾値に対応する電流値(電流閾値)により把握すると、ロータ10の回転を停止する。即ち、コントローラ20は、現在のモータ8の電流値を検知可能であり、設定されたトルク閾値に係る電流値を検知すると、モータ8の回転を停止する。尚、コントローラ20は、電流閾値以外の閾値をトルク閾値に対応させてモータ8の回転を停止しても良い。
【0026】
ギヤアッセンブリ12は、減速機構12Aとして、ここでは複数段(3段)の遊星歯車機構を有している。各段には、複数の遊星ギヤと、これらに噛み合うインターナルギヤと、各遊星ギヤを回転可能に支持する軸を有するキャリアと、が設けられている。尚、ギヤアッセンブリ12は、1段の遊星歯車機構を有していても良いし、他の減速機構を有していても良い。
モータ軸10aの前端部は、歯を有しており、1段目の遊星ギヤに噛み合っている。
2段目のインターナルギヤは、回転可能且つ軸方向へ前後移動可能となっている。2段目のインターナルギヤには、連結部材(図示略)を介して、後ハウジング7上部において前後方向でスライド可能に設けられた速度切替レバー60が連結されている。
速度切替レバー60を前方位置にスライドする操作により2段目のインターナルギヤが前進位置となると、ギヤケース12Cに保持される結合リング(図示略)と噛み合って回転規制される。よって、2段目の減速が機能する低速モードとなる。
他方、速度切替レバー60を後退位置にスライドする操作により2段目のインターナルギヤが後退位置となると、2段目の遊星ギヤとの噛み合いを保ったまま1段目のキャリアの外周に噛み合う。よって、2段目の減速がキャンセルされる高速モードとなる。
【0027】
又、ギヤケース12Cの内側であって、スピンドル13の径方向外側に、震動機構12Bが設けられる。
スピンドル13は、ギヤケース12Cに保持された前後の軸受(図示略)によって支持されると共に、その後端部が3段目のキャリア35Cにスプライン結合されている。
震動機構12Bにおいて、スピンドル13における前後の軸受の間には、前方からリング状の第1カム,第2カムがそれぞれ同軸で外装されている。第1カム(図示略)は、後面にカム歯を有してスピンドル13にスプライン結合されている。第2カム(図示略)は、前面にカム歯を有しており、ギヤケース12C内でスピンドル13を囲んだ状態で回転不能に配置されている。
更に、第1カムの前方で前の軸受との間には、リング状の受け板によって複数のスチール製のボール(図示略)が保持されており、ボールと第1カムとの間には、カム板(図示略)が設けられている。又、カム板から後方へ延びるようにアーム(図示略)が設けられている。アームは、後ハウジング7の前方外側に対して回転可能に組み付けられたモード切替リング62に、連結板(図示略)を介して連結されている。アームは、モード切替リング62の回転操作に伴う連結板の回転により、カム板を介して第1カムを後方へスライドさせ、第1カムを第2カムに噛み合わせたり、カム板を介して第1カムを前方へスライドさせ、第1カムの第2カムに対する噛み合いを解除させたりする。
【0028】
各動作モードに関し、カム板が第1カムを後方へスライドさせない位相となるモード切替リング62の第1の回転位置では、第1カムは第2カムより前方にあって第2カムとは噛み合わない。よって、スピンドル13が震動しないクラッチモードとなる。
このクラッチモードでは、スピンドル13の回転は、ダイヤル24により設定部40を介してコントローラ20に指示されたトルク閾値を超えたことによりモータ8の回転がコントローラ20により停止されるまで継続する。クラッチモードは、モータ8によるトルク閾値超過での停止(クラッチ作動)があるドリルモードとみることもできる。
【0029】
又、第1の回転位置からモード切替リング62を所定角度回転させた第2の回転位置では、カム板が第1カムを後方へスライドさせる。よって、第1カムと第2カムが噛み合って震動機構12Bが作動する震動モードとなる。この震動モードでスピンドル13を回転させた場合、スピンドル13と一体回転する第1カムが、ギヤケース12Cに保持される第2カムと噛み合うため、スピンドル13に震動が発生する。
この場合においても、モータ8及びスピンドル13は、トルクが設定に係るトルク閾値を超えることにより停止する。
尚、モード切替リング62の第2の回転位置においてオンとなる電気的なスイッチが設けられ、当該スイッチがオンとなると、コントローラ20はモータ8のトルク閾値超過での停止を行わないものとされても良い(振動モードにおけるクラッチ非作動)。又、モード切替リング62の第3の回転位置において、震動機構12B及びモータ8のトルク閾値超過での停止が作動しないようにしても良い(クラッチ作動のないドリルモード)。更に、これらのクラッチ非作動の場合であっても、安全等のため特定トルク以上となった際にモータ8が停止されても良い。
【0030】
かような震動ドライバドリル1では、トリガ15が引き込み操作されてスイッチ14がオンとされると、コントローラ20(制御回路基板21)のマイコンが、センサ回路基板から出力されるロータ10の回転位置を取得し、取得した回転位置に応じて各スイッチング素子のオンオフを制御し、ステータ9(複数のコイル)に対し順番に励磁電流を流すことでロータ10を回転させる。
よって、モータ軸10aが回転し、減速機構12Aを介してスピンドル13及びドリルチャック6が、モード切替リング62で選択された動作モードに従い回転し、ドリルチャック6に装着され回転されたビットが被加工材に適用される。
コントローラ20(制御回路基板21)のマイコンは、ビットからスピンドル13及びドリルチャック6を介してロータ10において現在の設定に係るトルク閾値を超えるトルクを受けたことを把握すると、ロータ10の回転を停止する(クラッチ作動)。これにより、ユーザは、例えば所定のトルクにおいてネジ締めを完了することができる。
【0031】
モータ軸10aの回転に伴ってファン11Aが回転すると、モータハウジング7Aの側部の吸気口11Dからエアが吸い込まれ、エアの流れ(風)がステータ9の外側及び内側(ロータ10との間)を通って、リアカバー11B側部の排気口11Cから排出され、モータ8が冷却される。
【0032】
以上の震動ドライバドリル1は、モータ8と、モータ8を保持するモータハウジング7Aと、モータハウジング7Aにつながるグリップハウジング7Bと、グリップハウジング7Bにつながる拡大部ハウジング7Cと、拡大部ハウジング7Cにおいてダイヤル軸29の周りで回転可能に設けられるダイヤル24とを備えており、モータ8は、ダイヤル24により制御可能である。
よって、ユーザは、グリップ部3を一方の手で握りつつ他方の手でダイヤル24を回すことにより、モータ8の制御に関する設定を変更することができ、ユーザにとって操作性に優れた震動ドライバドリル1が提供される。
【0033】
更に、震動ドライバドリル1は、モータ8と、モータ8を保持するモータハウジング7Aと、モータハウジング7Aにつながるグリップハウジング7Bと、グリップハウジング7Bにつながるバッテリ取付ハウジング(拡大部ハウジング7C)と、拡大部ハウジング7Cにおいてダイヤル軸29の周りで回転可能に設けられるダイヤル24とを備えており、モータ8を停止するための閾値が、ダイヤル24により設定可能である。又、当該閾値は、モータ8のトルクに係る電流閾値である。
よって、当該閾値(トルク閾値)に係る設定操作が行い易い震動ドライバドリル1が提供される。
特に、モード切替リング62と同様に成る操作リングの回転操作により閾値が変更されるものである本発明に属さない比較例と比べた場合に、震動ドライバドリル1のダイヤル24(本発明)に係る操作の行い易さが顕著となる。
即ち、比較例の操作リングの場合、設定値の明確化(2周以上になると同じ回転位置での設定値が分かり難くなることの防止)の観点から、最大1周の間における回転位置で設定値が振り分けられるところ、設定値の振り分け数(段数)に物理的な限界があるため、設定値の最小値と最大値との差を大きくすると隣接する設定値同士の差が大きくなって設定値の微調整が行い難くなり、設定値の最小値と最大値との差を小さくすれば隣接する設定値同士の差は小さくなるものの設定幅が小さくなってしまう。又、比較例の操作リングの場合、比較的に径が大きくなり、その分操作リングの操作に力が必要となる。
これに対し、震動ドライバドリル1のダイヤル24の場合、ダイヤル24の回転位置の遷移によって閾値の設定値が変更可能であり、ダイヤル24が2回転以上回転しても設定値の変更は区別可能であって、多段の設定値の変更が容易であり、設定値の最小値と最大値との差を大きくして設定幅が確保されたとしても、設定値が細かく設定可能である。又、ダイヤル24の径は比較的に小さくすることができ、ダイヤル24はより軽い力で操作可能である。
【0034】
加えて、ダイヤル軸29は、グリップハウジング7Bが延びる方向(上下方向,本体部2下部から下方への方向)と交わる方向(左右方向)に延びている。よって、グリップハウジング7Bを握った状態におけるダイヤル24の操作がより行い易い。
又、ダイヤル24は、永久磁石28を含んでおり、震動ドライバドリル1には、永久磁石28が形成する磁場を検知する磁場センサ38が設けられている。よって、ダイヤル24の回転位置の遷移が磁場センサ38によって簡単に把握可能である。又、ダイヤル24の回転位置が非接触で検知され、磁場センサ38は密閉部(拡大部ハウジング7C)内に配置可能であり、震動ドライバドリル1は、防塵及び防滴の少なくとも一方が図られた構造を具備することとなる。
更に、永久磁石28は、リング磁石である。よって、磁場センサ38がダイヤル24の回転位置の遷移を把握し易い永久磁石28がシンプルに提供される。
【0035】
尚、本発明の形態は上記形態及び変更例に限定されず、例えば上記形態あるいは変更例に対して次のような変更を適宜施すことができる。
ダイヤル24によるモータ8の制御は、トルク閾値の設定の実行に代えて、あるいは当該設定と共に、トルク閾値超過による回転停止制御の有無の切替(クラッチ作動モードとクラッチ非作動モードとの切替)、及びモータ8の回転数の閾値の設定の少なくとも一方の実行であっても良い。これらの実行に際し、現在の(設定される)設定値あるいはモードが表示部50において表示されても良い。又、トルク閾値の設定、回転停止制御の有無の切替、及び回転数の閾値の設定のうちの少なくとも2つが実行される場合、操作部52における操作(例えば中央のボタン46bの押下)により実行する項目が切り替えられても良い。
ダイヤル24により設定される閾値は、トルク閾値に代えて、あるいはこれと共に、モータ8の電流に係るもの、回転数に係るもの、及びこれらの積算値に係るものの少なくとも何れかとされても良い。この場合においても、上述のように現在の状態が表示部50において表示され、又操作部52で項目が切り替えられても良い。
永久磁石28(リング磁石)の極数は、4個(N極2個及びS極2個)に限られず、例えば8個(N極4個及びS極4個)であっても良いし、N極とS極との数が相違するものであっても良いし、その他の数であっても良い。
【0036】
又、
図9に示されるように、永久磁石28は、リング磁石ではなく、複数の板磁石28Xであっても良い。
即ち、ダイヤル24Xは、樹脂製等の柱状部材26Xと、その外周に設けられた複数(4個)の板磁石28Xと、を有する。板磁石28Xは、周方向に等間隔に配置されている。又、板磁石28Xは、径方向外方に臨む極が交互に入れ替わるように配置されており、
図9の状態では、当該極がN極となるものが上下に配置され、当該極がS極となるものが前後に配置されている。
この場合であっても、リング磁石の場合と同様に、磁場センサ38によりダイヤル24Xの回転位置の検知が可能となる。
尚、板磁石28Xの個数及び配置は、リング磁石の場合と同様、様々に変更可能である。又、板磁石28Xは、柱状部材26Xから突出していても良いし、柱状部材26Xに埋設されていても良い。又更に、柱状部材26Xは、筒状部材であっても良い。
【0037】
更に、
図10に示されるように、磁場センサ38と同様でありダイヤル24に隣接している磁場センサ38Xは、制御回路基板21と同様な制御回路基板21Xに搭載されていても良く、この場合、磁場センサ38Xがコンパクトに配置され、又磁場センサ38Xに係るリード線が省略されて、磁場センサ38Xと制御回路基板21Xとの電気的な接続が行い易い。
又、
図11に示されるように、設定部基板42と同様である設定部基板42Yは、制御回路基板21と同様な制御回路基板21Yに搭載されていても良く、この場合、設定部基板42Yがコンパクトに配置され、又設定部基板42Yに係るリード線が省略されて、設定部基板42Yと制御回路基板21Yとの電気的な接続が行い易い。
更に、図示されないが、制御回路基板21Zに磁場センサ38X及び設定部基板42Yの双方が搭載されても良い。
又更に、ダイヤル24,24Xの回転位置は、磁場センサ38に代えて、あるいは磁場センサ38と共に、光学式センサ及び接触式センサの少なくとも一方等によって検知されても良い。
【0038】
バッテリ18は、14.4V、18V(最大20V),18V,25.2V,28V,36V等の18~36Vの任意のリチウムイオンバッテリを用いることができ、10.8V未満あるいは36Vを超える電圧のリチウムイオンバッテリを用いることもできるし、他の種類のバッテリを用いることもできる。
又、本発明は、出力軸(先端工具保持部)の方向が動力部の方向(モータのロータ軸の方向及びその回転力を伝達する機構の伝達方向の少なくとも一方)と異なる(略90度となる)アングル電動工具にも、適用可能である。更に、本発明は、商用電源で駆動されるものを始めとする充電式(バッテリ駆動)でないドライバドリル、及び震動機構12Bが省略されたドライバドリル、並びにインパクトドライバ、グラインダ、マルノコ、ハンマ、及びハンマドリル等の他の電動工具に適用可能であり、又クリーナ、ブロワ、及び園芸用トリマを始めとする園芸工具等に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1・・震動ドライバドリル(電動工具)、7A・・モータハウジング、7B・・グリップハウジング、7C・・拡大部ハウジング、8・・モータ、24,24X・・ダイヤル、28・・永久磁石(磁石,リング磁石)、28X・・板磁石(磁石)、29・・ダイヤル軸、38・・磁場センサ。