(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20231201BHJP
【FI】
B66B5/02 C
B66B5/02 Q
(21)【出願番号】P 2023525249
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021021040
(87)【国際公開番号】W WO2022254619
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 然一
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051739(JP,A)
【文献】特許第6339256(JP,B1)
【文献】特開2015-009991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられているエレベーター装置を有しているエレベーターシステム本体
を備え、
前記エレベーター装置は、
かご、
釣合おもり、
前記かご及び前記釣合おもりの少なくともいずれか一方である昇降体に生じる鉛直方向の加速度である鉛直加速度と、前記昇降体に生じる水平方向の加速度である水平加速度とを検出する加速度検出器、
前記昇降体に接続されており、かつ可撓性を有している長尺物である推定対象物、及び
制御装置
を有しており、
前記制御装置は、揺れ推定部を有しており、
前記揺れ推定部は、前記鉛直加速度と前記水平加速度とに基づいて、前記推定対象物の揺れ量を推定するとともに、前記推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定するエレベーターシステム。
【請求項2】
前記揺れ推定部には、それぞれ前記建物の一次固有周期に基づいて、第1周波数帯域及び第2周波数帯域が設定されており、
前記揺れ推定部は、前記加速度検出器によって検出された前記水平加速度から前記第1周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理を施すとともに、前記加速度検出器によって検出された前記鉛直加速度から前記第2周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理を施し、
前記揺れ推定部は、フィルター処理後の前記鉛直加速度と、フィルター処理後の前記水平加速度とに基づいて、前記推定対象物の揺れ量を推定するとともに、前記推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する請求項1記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記揺れ推定部には、前記鉛直加速度の判定基準である第1鉛直方向閾値と、前記水平加速度の判定基準である第1水平方向閾値とが設定されており、
前記揺れ推定部は、前記鉛直加速度が前記第1鉛直方向閾値以上であり、かつ前記水平加速度が前記第1水平方向閾値以上である場合、前記推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する請求項1又は請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、
通常運転モード及び管制運転モードを含む複数の運転モードにより、前記かごの運転を制御する運転制御部
をさらに有しており、
前記管制運転モードは、前記推定対象物の揺れを抑制する位置に前記かごを移動させる前記運転モードであり、
前記揺れ推定部により前記推定対象物に異常な揺れが生じていると判定されると、前記運転制御部は、前記運転モードを前記管制運転モードとする請求項3記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記揺れ推定部には、前記鉛直加速度の判定基準として、前記第1鉛直方向閾値よりも大きい第2鉛直方向閾値が設定されており、
前記揺れ推定部は、前記鉛直加速度が前記第2鉛直方向閾値以上である場合、前記推定対象物に過大な揺れが生じていると判定し、
前記運転制御部は、前記揺れ推定部により前記推定対象物に過大な揺れが生じていると判定されると、前記運転モードを前記管制運転モードにせず、前記かごを最寄階に停止させ、前記かごの運転を休止させる請求項4記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記揺れ推定部には、前記水平加速度の判定基準として、前記第1水平方向閾値よりも小さい第2水平方向閾値が設定されており、
前記運転制御部は、前記運転モードが前記管制運転モードであるとき、前記揺れ推定部により前記水平加速度が前記第2水平方向閾値未満になったと判定されると、前記運転モードを前記通常運転モードに戻す請求項4又は請求項5に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記昇降体は、前記かご及び前記釣合おもりの両方であり、
前記揺れ推定部は、前記かごの前記鉛直加速度及び前記水平加速度と、前記釣合おもりの前記鉛直加速度及び前記水平加速度とに基づいて、前記推定対象物の揺れ量を推定するとともに、前記推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記昇降体は、前記かご及び前記釣合おもりの両方であり、
前記揺れ推定部には、前記かごの前記鉛直加速度の判定基準である第1かご鉛直方向閾値と、前記かごの前記水平加速度の判定基準である第1かご水平方向閾値と、前記釣合おもりの前記鉛直加速度の判定基準である第1おもり鉛直方向閾値と、前記釣合おもりの前記水平加速度の判定基準である第1おもり水平方向閾値とが設定されており、
前記かごの前記鉛直加速度が前記第1かご鉛直方向閾値以上である条件と、前記釣合おもりの前記鉛直加速度が前記第1おもり鉛直方向閾値以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされ、かつ、前記かごの前記水平加速度が前記第1かご水平方向閾値以上であり、前記釣合おもりの前記水平加速度が前記第1おもり水平方向閾値以上であるとき、前記揺れ推定部は、前記推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する請求項1又は請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項9】
前記エレベーターシステム本体は、2つ以上の前記エレベーター装置を有しており、
各前記エレベーター装置における前記揺れ推定部は、対応する前記推定対象物の揺れ量を推定する際に、他の前記エレベーター装置における前記加速度検出器からの信号も参照する請求項1又は請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項10】
各前記エレベーター装置における前記昇降体は、前記かご及び前記釣合おもりの両方であり、
各前記エレベーター装置における前記揺れ推定部には、前記かごの前記鉛直加速度の判定基準である第1かご鉛直方向閾値と、前記かごの前記水平加速度の判定基準である第1かご水平方向閾値と、前記釣合おもりの前記鉛直加速度の判定基準である第1おもり鉛直方向閾値と、前記釣合おもりの前記水平加速度の判定基準である第1おもり水平方向閾値とが設定されており、
各前記エレベーター装置における前記揺れ推定部は、対応する前記かごの前記鉛直加速度が前記第1かご鉛直方向閾値以上である条件と、対応する前記釣合おもりの前記鉛直加速度が前記第1おもり鉛直方向閾値以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされ、かつ、全ての前記エレベーター装置における前記昇降体のうちの2つ以上の前記昇降体の前記水平加速度が、前記第1かご水平方向閾値及び前記第1おもり水平方向閾値のうちの対応する閾値以上であるとき、対応する前記推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する請求項9記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターの制御装置では、建物揺れ検出器によって検出された建物の揺れと、かごの位置とに基づいて、ロープの揺れ量が推測される。そして、推測されたロープの揺れ量が設定値以上である場合、減衰階が設定され、かごが減衰階に移動される。減衰階は、ロープの揺れを減衰させることが可能な階である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベーターの制御装置では、建物の揺れと、かごの位置とに基づいて、ロープの揺れ量が推測される。しかし、建物の揺れによって生じるロープの揺れは、ロープの固有周波数によって変化する。また、ロープの固有周波数は、かご位置によって変動する。このため、建物揺れ量からロープの揺れ量を推定するには、非常に複雑な計算が必要となる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、推定対象物の揺れ量を容易に推定することができるエレベーターシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターシステムは、建物に設けられているエレベーター装置を有しているエレベーターシステム本体を備え、エレベーター装置は、かご、釣合おもり、かご及び釣合おもりの少なくともいずれか一方である昇降体に生じる鉛直方向の加速度である鉛直加速度と、昇降体に生じる水平方向の加速度である水平加速度とを検出する加速度検出器、昇降体に接続されており、かつ可撓性を有している長尺物である推定対象物、及び制御装置を有しており、制御装置は、揺れ推定部を有しており、揺れ推定部は、鉛直加速度と水平加速度とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定するとともに、推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベーターシステムによれば、推定対象物の揺れ量を容易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1によるエレベーターシステムを示す概略の構成図である。
【
図2】
図1のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。
【
図3】
図1の複数本の主ロープに生じる揺れを模式的に示す説明図である。
【
図4】
図2の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2によるエレベーターシステムを示す概略の構成図である。
【
図6】
図5のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。
【
図7】
図6の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3によるエレベーターシステムの一例を示す概略の構成図である。
【
図9】
図8のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態1~3の制御装置の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。
【
図11】実施の形態1~3の制御装置の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベーターシステムを示す概略の構成図である。
図1において、建物50には、昇降路51及び機械室52が設けられている。機械室52は、昇降路51の上に設けられている。
【0010】
実施の形態1のエレベーターシステムは、エレベーターシステム本体30を備えている。エレベーターシステム本体30は、建物50に設けられている。実施の形態1のエレベーターシステム本体30は、1つのエレベーター装置31を有している。即ち、実施の形態1のエレベーターシステム本体30は、1つのエレベーター装置31のみにより構成されている。
【0011】
エレベーター装置31は、巻上機11、そらせ車13、複数本の主ロープ14、かご15、釣合おもり16、複数本のコンペンロープ17、釣合車18、かご加速度検出器19、及び制御装置20を有している。
【0012】
巻上機11は、機械室52に設けられている。また、巻上機11は、駆動シーブ12、図示しない巻上機モータ、及び図示しない巻上機ブレーキを有している。巻上機モータは、駆動シーブ12を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ12の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ12の回転を制動する。
【0013】
複数本の主ロープ14は、駆動シーブ12及びそらせ車13に巻き掛けられている。
図1では、1本の主ロープ14のみが示されている。かご15は、複数本の主ロープ14の第1端部に接続されている。釣合おもり16は、複数本の主ロープ14の第2端部に接続されている。
【0014】
かご15及び釣合おもり16は、複数本の主ロープ14により、昇降路51内に吊り下げられている。また、かご15及び釣合おもり16は、駆動シーブ12を回転させることにより、昇降路51内を昇降する。
【0015】
昇降路51内には、図示しない一対のかごガイドレールと、図示しない一対の釣合おもりガイドレールとが設置されている。一対のかごガイドレールは、かご15の昇降を案内する。一対の釣合おもりガイドレールは、釣合おもり16の昇降を案内する。
【0016】
複数本のコンペンロープ17は、かご15の下部と釣合おもり16の下部との間に吊り下げられている。
図1では、1本のコンペンロープ17のみが示されている。複数本のコンペンロープ17は、駆動シーブ12の一側と他側とにおける複数本の主ロープ14の重量不均衡を補償する。
【0017】
釣合車18は、昇降路51の底部に設けられている。釣合車18には、複数本のコンペンロープ17が巻き掛けられている。釣合車18は、複数本のコンペンロープ17に張力を与えている。
【0018】
かご加速度検出器19は、かご15に設けられている。実施の形態1の昇降体は、かご15である。かご加速度検出器19は、かご15の鉛直加速度ACv0と水平加速度ACh0とを検出する。鉛直加速度ACv0は、かご15に生じる鉛直方向の加速度である。水平加速度ACh0は、かご15に生じる水平方向の加速度である。
【0019】
複数本の主ロープ14及び複数本のコンペンロープ17は、それぞれかご15に接続されている。また、複数本の主ロープ14及び複数本のコンペンロープ17は、それぞれ可撓性を有している長尺物である。実施の形態1の推定対象物は、複数本の主ロープ14及び複数本のコンペンロープ17である。
【0020】
かご加速度検出器19からの信号は、制御装置20に送られる。制御装置20は、機械室52に設けられている。
【0021】
図2は、
図1のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。制御装置20は、機能ブロックとして、運転制御部21と、揺れ推定部22とを有している。
【0022】
運転制御部21は、巻上機11を制御することにより、かご15の運転を制御する。また、運転制御部21は、複数の運転モードにより、かご15の運転を制御する。複数の運転モードには、通常運転モードと、管制運転モードとが含まれている。
【0023】
通常運転モードは、かご15の通常運転を行うモードである。通常運転は、かご15内からの呼び、及び複数の乗場からの呼びに応じて、かご15を行先階に自動的に移動させる運転方法である。
【0024】
管制運転モードは、かご15の管制運転を行う運転モードである。管制運転は、推定対象物の揺れを抑制する位置にかご15を移動させる運転方法である。
【0025】
かご加速度検出器19は、鉛直加速度ACv0と水平加速度ACh0とを別々に検出し、それぞれに応じた信号を揺れ推定部22に出力する。
【0026】
揺れ推定部22は、かご加速度検出器19により検出された鉛直加速度ACv0と水平加速度ACh0とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定するとともに、推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する。
【0027】
図3は、
図1の複数本の主ロープ14に生じる揺れを模式的に示す説明図である。遠隔地で発生した地震、又は強風によって、建物50には長周期振動が生じる。このとき、建物50は、建物50の固有周波数で揺れる。このため、長周期振動における建物50の振動周波数は低い。また、長周期振動は、長時間に渡って継続することが多い。
【0028】
建物50の長周期振動に複数本の主ロープ14が共振すると、建物50の揺れが小さくても、複数本の主ロープ14の揺れは、次第に大きくなる。複数本の主ロープ14の揺れが大きくなると、その揺れ量に応じて、かご15に鉛直方向の振動が発生する。即ち、複数本の主ロープ14の揺れが大きくなると、複数本の主ロープ14の水平方向への振幅量に応じて、かご15に上下方向の振動が発生する。
【0029】
また、建物50が水平方向に振動していると、昇降路51内の機器にも水平振動が発生する。よって、建物50に長周期振動が生じると、かご15に鉛直振動と水平振動とが同時に発生する。
【0030】
一方、かご15の鉛直振動は、かご15への乗客の乗り込み時にも発生する。このため、単純に鉛直振動だけでは、推定対象物に揺れが発生しているかどうかを判定できない。
【0031】
このため、揺れ推定部22は、かご15に発生する鉛直振動と水平振動とに基づいて、建物50の揺れによる推定対象物の揺れ量を推定するとともに、建物50の揺れ、例えば長周期振動による推定対象物の異常な揺れの有無を判定する。
【0032】
ここで、揺れ推定部22には、第1周波数帯域及び第2周波数帯域が設定されている。第1周波数帯域及び第2周波数帯域は、それぞれ建物50の一次固有周期に基づいて設定されている。
【0033】
具体的には、第1周波数帯域は、建物50の固有周波数を含む周波数帯域である。また、第2周波数帯域は、建物50の固有周波数の1/2を含む周波数帯域である。
【0034】
建物50に長周期振動が生じると、建物50は、建物50の固有周波数で振動するため、昇降路51内のかご15も、建物50の固有周波数で水平振動する。このため、揺れ推定部22は、かご加速度検出器19によって検出された水平加速度ACh0から第1周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理、例えばバンドパスフィルター処理を施し、水平加速度ACh1を演算する。
【0035】
また、かご加速度検出器19によって検出された鉛直加速度ACv0には、重力加速度が含まれている。このため、揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv0から重力加速度分を除去する。重力加速度分の除去は、重力加速度の大きさを直接引いてもよいし、かご15の停止中における重力加速度の一定時間の平均値を差し引いてもよい。
【0036】
また、推定対象物の揺れは、建物50の長周期振動に共振して発生するため、推定対象物も建物50の固有周波数で揺れる。そして、かご15の鉛直振動は、推定対象物の水平方向への振幅に応じて発生する。このため、かご15の鉛直振動の周波数は、推定対象物の揺れの周波数、つまり建物50の固有周波数に対応する周波数で発生する。
【0037】
推定対象物の揺れによって発生するかご15の鉛直振動の周波数は、建物50の固有周波数の1/2となる。このため、揺れ推定部22は、重力加速度を除去後の鉛直加速度ACv0から第2周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理、例えばバンドパスフィルター処理を施し、鉛直加速度ACv1を演算する。
【0038】
そして、揺れ推定部22は、フィルター処理後の鉛直加速度ACv1と、フィルター処理後の水平加速度ACh1とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定するとともに、推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する。
【0039】
揺れ推定部22には、第1鉛直方向閾値LCv1と、第1水平方向閾値LCh1と、第2鉛直方向閾値LCv2と、第2水平方向閾値LCh2とが設定されている。
【0040】
第1鉛直方向閾値LCv1及び第2鉛直方向閾値LCv2は、それぞれかご15の鉛直加速度ACv1の判定基準である。また、第2鉛直方向閾値LCv2は、第1鉛直方向閾値LCv1よりも大きい。即ち、LCv2>LCv1である。
【0041】
第1水平方向閾値LCh1及び第2水平方向閾値LCh2は、それぞれかご15の水平加速度ACh1の判定基準である。また、第2水平方向閾値LCh2は、第1水平方向閾値LCh1よりも小さい。即ち、LCh2<LCh1である。
【0042】
揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1以上であり、かつ水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1以上である場合、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。
【0043】
このとき、揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1以上であり、かつ水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1以上である状態が、設定時間以上継続した場合に、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定してもよい。
【0044】
第1鉛直方向閾値LCv1は、推定対象物の揺れにより、推定対象物が昇降路51内の機器に衝突しないような大きさに設定されている。
【0045】
第1水平方向閾値LCh1は、推定対象物の揺れが建物50の揺れに起因する揺れであると推定できる大きさに設定されている。
【0046】
揺れ推定部22により推定対象物に異常な揺れが生じていると判定されると、運転制御部21は、運転モードを管制運転モードとする。
【0047】
揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2以上である場合、推定対象物に過大な揺れが生じていると判定する。
【0048】
運転制御部21は、揺れ推定部22により推定対象物に過大な揺れが生じていると判定されると、運転モードを管制運転モードにせず、かご15を最寄階に停止させ、かご15の運転を休止させる。
【0049】
運転制御部21は、運転モードが管制運転モードであるとき、揺れ推定部22により水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になったと判定されると、運転モードを通常運転モードに戻す。第2水平方向閾値LCh2は、建物50の揺れが収まったことを検出するための閾値である。
【0050】
このとき、揺れ推定部22は、水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満である状態が設定時間以上継続した場合に、水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になったと判定してもよい。
【0051】
図4は、
図2の制御装置20の動作を示すフローチャートである。制御装置20は、かご15の通常運転中に、
図4の処理を繰り返し実行する。
【0052】
制御装置20は、ステップS101において、鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1以上であるかどうかを判定する。鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1未満であれば、制御装置20は、ステップS107において、通常運転モードを維持し、処理を終了する。
【0053】
鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1以上である場合、制御装置20は、ステップS102において、水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1以上であるかどうかを判定する。水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1未満であれば、制御装置20は、ステップS107において、通常運転モードを維持し、処理を終了する。
【0054】
水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1以上である場合、制御装置20は、ステップS103において、かご15を最寄階に移動させ停止させる。そして、かご15内の乗客を乗場に移動させ、かご15を空にする。
【0055】
この後、制御装置20は、ステップS104において、鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2未満であるかどうかを判定する。鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2未満である場合、制御装置20は、ステップS105において、管制運転を実施する。
【0056】
制御装置20は、管制運転において、例えば、かご15を非共振階に移動させ戸閉状態のまま停止させる。非共振階は、建物50の揺れに推定対象物が共振しない階である。
【0057】
この後、制御装置20は、ステップS106において、水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になったかどうかを判定する。水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になっていなければ、制御装置20は、ステップS104の処理に戻る。
【0058】
水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になると、制御装置20は、ステップS107において、運転モードを通常運転モードに戻し、処理を終了する。
【0059】
ステップS104において、鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2未満でなかった場合、即ち鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2以上である場合、制御装置20は、ステップS108において、かご15の運転を休止させる。
【0060】
この後、制御装置20は、ステップS109において、保守員による復旧作業が完了したかどうかを判定する。復旧作業が完了するまで、制御装置20は、かご15の運転休止を継続する。復旧作業が完了すると、制御装置20は、ステップS107において、運転モードを通常運転モードに戻し、処理を終了する。
【0061】
このようなエレベーターシステムでは、揺れ推定部22が、鉛直加速度ACv1と水平加速度ACh1とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定するとともに、推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する。このため、かご15の位置を変数として用いずに、簡単な演算により、推定対象物の揺れ量を容易に推定することができる。
【0062】
また、推定対象物の揺れを、かご15の鉛直加速度ACv1から容易に推定することができる。また、かご15の水平加速度ACh1から建物50の揺れの有無を確認することにより、推定対象物の揺れの発生を精度良く検出することができる。これにより、不要な管制運転によるサービスの低下を抑制することができる。
【0063】
また、揺れ推定部22は、かご加速度検出器19によって検出された水平加速度ACh0から第1周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理を施す。また、揺れ推定部22は、かご加速度検出器19によって検出された鉛直加速度ACv0から第2周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理を施す。そして、揺れ推定部22は、フィルター処理後の鉛直加速度ACv1と、フィルター処理後の水平加速度ACh1とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定する。
【0064】
このため、建物50の揺れ以外の要因、例えば、かご15への乗客の乗り込みによる振動の影響を除去することができ、建物50の揺れによる推定対象物の揺れ量を、より精度良く推定することができる。
【0065】
また、揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv1が第1鉛直方向閾値LCv1以上であり、かつ水平加速度ACh1が第1水平方向閾値LCh1以上である場合、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。
【0066】
このため、建物50の揺れによる推定対象物の異常な揺れの有無を、精度良く判定することができる。これにより、不要な管制運転によるサービスの低下を抑制することができる。
【0067】
また、揺れ推定部22により推定対象物に異常な揺れが生じていると判定されると、運転制御部21は、運転モードを管制運転モードとする。このため、推定対象物の揺れを効率良く減衰させることができる。
【0068】
また、揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2以上である場合、推定対象物に過大な揺れが生じていると判定する。そして、運転制御部21は、揺れ推定部22により推定対象物に過大な揺れが生じていると判定されると、運転モードを管制運転モードにせず、かご15を最寄階に停止させ、かご15の運転を休止させる。
【0069】
これにより、推定対象物に過大な揺れが生じている状態のまま管制運転を行うことによる二次被害の発生を抑制することができる。
【0070】
また、運転制御部21は、運転モードが管制運転モードであるとき、揺れ推定部22により水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満になったと判定されると、運転モードを通常運転モードに戻す。これにより、建物50の揺れが収まった後に、運転モードを通常運転モードにスムーズに移行させることができる。
【0071】
なお、上記の例では、鉛直加速度ACv1が第2鉛直方向閾値LCv2以上である場合に、推定対象物に過大な揺れが生じていると判定される。しかし、水平加速度ACh1が第3水平方向閾値LCh3以上である場合に、推定対象物に過大な揺れが生じていると判定されてもよい。この場合、揺れ推定部22には、第1水平方向閾値LCh1よりも大きい第3水平方向閾値ACh3が設定される。
【0072】
また、上記の例では、水平加速度ACh1が第2水平方向閾値LCh2未満となった場合に、建物50の揺れが収まったと判定される。しかし、鉛直加速度ACv1が第3鉛直方向閾値LCv3未満となった場合に、建物50の揺れが収まったと判定されてもよい。この場合、揺れ推定部22には、第1鉛直方向閾値LCv1よりも小さい第3鉛直方向閾値LCv3が設定される。
【0073】
実施の形態2.
次に、
図5は、実施の形態2によるエレベーターシステムを示す概略の構成図である。実施の形態2のエレベーター装置31は、実施の形態1のエレベーター装置31と同様の構成に加え、おもり加速度検出器23を有している。
【0074】
おもり加速度検出器23は、釣合おもり16に設けられている。実施の形態2では、かご15及び釣合おもり16の両方が昇降体である。おもり加速度検出器23は、釣合おもり16の鉛直加速度AMv0と水平加速度AMh0とを検出する。鉛直加速度AMv0は、釣合おもり16に生じる鉛直方向の加速度である。水平加速度AMh0は、釣合おもり16に生じる水平方向の加速度である。
【0075】
おもり加速度検出器23からの信号は、制御装置20に送られる。
【0076】
図6は、
図5のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。おもり加速度検出器23は、鉛直加速度AMv0と水平加速度AMh0とを別々に検出し、それぞれに応じた信号を揺れ推定部22に出力する。
【0077】
揺れ推定部22は、鉛直加速度ACv0及び水平加速度ACh0と、鉛直加速度AMv0及び水平加速度AMh0とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定するとともに、推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する。
【0078】
揺れ推定部22は、おもり加速度検出器23によって検出された水平加速度AMh0から第1周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理、例えばバンドパスフィルター処理を施し、水平加速度AMh1を演算する。
【0079】
また、揺れ推定部22は、おもり加速度検出器23によって検出された鉛直加速度AMv0から重力加速度分を除去する。
【0080】
また、揺れ推定部22は、重力加速度を除去後の鉛直加速度AMv0から第2周波数帯域の成分を抽出するフィルター処理、例えばバンドパスフィルター処理を施し、鉛直加速度AMv1を演算する。
【0081】
そして、揺れ推定部22は、フィルター処理後の鉛直加速度ACv1と、フィルター処理後の水平加速度ACh1と、フィルター処理後の鉛直加速度AMv1と、フィルター処理後の水平加速度AMh1とに基づいて、推定対象物の揺れ量を推定する。
【0082】
揺れ推定部22には、第1かご鉛直方向閾値LCv1と、第1かご水平方向閾値LCh1と、第2かご鉛直方向閾値LCv2と、第2かご水平方向閾値LCh2とが設定されている。
【0083】
第1かご鉛直方向閾値LCv1は、実施の形態1の第1鉛直方向閾値LCv1と同じである。第1かご水平方向閾値LCh1は、実施の形態1の第1水平方向閾値LCh1と同じである。第2かご鉛直方向閾値LCv2は、実施の形態1の第2鉛直方向閾値LCv2と同じである。第2かご水平方向閾値LCh2は、実施の形態1の第2水平方向閾値LCh2と同じである。
【0084】
また、揺れ推定部22には、第1おもり鉛直方向閾値LMv1と、第1おもり水平方向閾値LMh1と、第2おもり鉛直方向閾値LMv2と、第2おもり水平方向閾値LMh2とが設定されている。
【0085】
第1おもり鉛直方向閾値LMv1及び第2おもり鉛直方向閾値LMv2は、それぞれ釣合おもり16の鉛直加速度AMv1の判定基準である。また、第2おもり鉛直方向閾値LMv2は、第1おもり鉛直方向閾値LMv1よりも大きい。即ち、LMv2>LMv1である。
【0086】
第1おもり水平方向閾値LMh1及び第2おもり水平方向閾値LMh2は、それぞれ釣合おもり16の水平加速度AMh1の判定基準である。また、第2おもり水平方向閾値LMh2は、第1おもり水平方向閾値LMh1よりも小さい。即ち、LMh2<LMh1である。
【0087】
ここで、かご15の鉛直加速度ACv1が第1かご鉛直方向閾値LCv1以上である条件と、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第1おもり鉛直方向閾値LMv1以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされている状態を、第1条件満足状態とする。
【0088】
また、かご15の水平加速度ACh1が第1かご水平方向閾値LCh1以上であり、釣合おもり16の水平加速度AMh1が第1おもり水平方向閾値LMh1以上である状態を、第2条件満足状態とする。
【0089】
揺れ推定部22は、第1条件満足状態であり、かつ第2条件満足状態であるとき、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。
【0090】
このとき、揺れ推定部22は、第1条件満足状態と第2条件満足状態とが設定時間以上継続した場合に、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定してもよい。
【0091】
第1おもり鉛直方向閾値LMv1は、推定対象物の揺れにより、推定対象物が昇降路51内の機器に衝突しないような大きさに設定されている。
【0092】
第1おもり水平方向閾値LMh1は、推定対象物の揺れが建物50の揺れに起因する揺れであると推定できる大きさに設定されている。
【0093】
揺れ推定部22により推定対象物に異常な揺れが生じていると判定されると、運転制御部21は、運転モードを管制運転モードとする。
【0094】
揺れ推定部22は、かご15の鉛直加速度ACv1が第2かご鉛直方向閾値LCv2以上であるか、又は釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第2おもり鉛直方向閾値LMv2以上である場合、推定対象物に過大な揺れが生じていると判定する。
【0095】
運転制御部21は、揺れ推定部22により推定対象物に過大な揺れが生じていると判定されると、運転モードを管制運転モードにせず、かご15を最寄階に停止させ、かご15の運転を休止させる。
【0096】
また、かご15の水平加速度ACh1が第2かご水平方向閾値LCh2未満であり、かつ釣合おもり16の水平加速度AMh1が第2おもり水平方向閾値LMh2未満である状態を、第3条件満足状態とする。
【0097】
運転制御部21は、運転モードが管制運転モードであるとき、揺れ推定部22により、第3条件満足状態となったと判定されると、運転モードを通常運転モードに戻す。第2かご水平方向閾値LCh2及び第2おもり水平方向閾値LMh2は、建物50の揺れが収まったことを検出するための閾値である。
【0098】
このとき、揺れ推定部22は、第3条件満足状態が設定時間以上継続した場合に、第3条件満足状態となったと判定してもよい。
【0099】
図7は、
図6の制御装置20の動作を示すフローチャートである。制御装置20は、かご15の通常運転中に、
図7の処理を繰り返し実行する。
【0100】
制御装置20は、ステップS201において、上記の第1条件満足状態であるかどうかを判定する。第1条件満足状態でなければ、制御装置20は、ステップS207において、通常運転モードを維持し、処理を終了する。
【0101】
第1条件満足状態である場合、制御装置20は、ステップS202において、上記の第2条件満足状態であるかどうかを判定する。第2条件満足状態でなければ、制御装置20は、ステップS207において、通常運転モードを維持し、処理を終了する。
【0102】
第2条件満足状態である場合、制御装置20は、ステップS203において、かご15を最寄階に移動させ停止させる。そして、かご15内の乗客を乗場に移動させ、かご15を空にする。
【0103】
この後、制御装置20は、ステップS204において、かご15の鉛直加速度ACv1が第2かご鉛直方向閾値LCv2未満であり、かつ、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第2おもり鉛直方向閾値LMv2未満であるかどうかを判定する。かご15の鉛直加速度ACv1が第2かご鉛直方向閾値LCv2未満であり、かつ、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第2おもり鉛直方向閾値LMv2未満である場合、制御装置20は、ステップS205において、管制運転を実施する。
【0104】
制御装置20は、管制運転において、例えば、かご15を非共振階に移動させ戸閉状態のまま停止させる。
【0105】
この後、制御装置20は、ステップS206において、かご15の水平加速度ACh1が第2かご水平方向閾値LCh2未満になり、かつ、釣合おもり16の水平加速度AMh1が第2おもり水平方向閾値LMh2未満になったかどうかを判定する。かご15の水平加速度ACh1が第2かご水平方向閾値LCh2未満になり、かつ、釣合おもり16の水平加速度AMh1が第2おもり水平方向閾値LMh2未満になるという条件が満たされていなければ、制御装置20は、ステップS204の処理に戻る。
【0106】
かご15の水平加速度ACh1が第2かご水平方向閾値LCh2未満になり、かつ、釣合おもり16の水平加速度AMh1が第2おもり水平方向閾値LMh2未満になると、制御装置20は、ステップS207において、運転モードを通常運転モードに戻し、処理を終了する。
【0107】
ステップS204において、かご15の鉛直加速度ACv1が第2かご鉛直方向閾値LCv2以上であった場合、制御装置20は、ステップS208において、かご15の運転を休止させる。また、ステップS204において、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第2おもり鉛直方向閾値LMv2以上であった場合も、制御装置20は、ステップS208において、かご15の運転を休止させる。
【0108】
この後、制御装置20は、ステップS209において、保守員による復旧作業が完了したかどうかを判定する。復旧作業が完了するまで、制御装置20は、かご15の運転休止を継続する。復旧作業が完了すると、制御装置20は、ステップS207において、運転モードを通常運転モードに戻し、処理を終了する。
【0109】
図5及び
図6に示す構成、及び
図7に示す動作を除いて、エレベーターシステムの構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0110】
このようなエレベーターシステムによっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。また、かご15の鉛直加速度ACv1及び水平加速度ACh1に加えて、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1及び水平加速度AMh1が用いられるため、推定対象物の揺れ量の推定精度を向上させることができる。
【0111】
また、揺れ推定部22は、第1条件満足状態であり、かつ第2条件満足状態であるとき、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。このため、推定対象物の異常な揺れの判定精度を向上させることができる。これにより、不要な管制運転によるサービスの低下を抑制することができる。
【0112】
実施の形態3.
次に、実施の形態3のエレベーターシステムについて説明する。実施の形態3のエレベーターシステム本体は、2つ以上のエレベーター装置を有している。各エレベーター装置における揺れ推定部は、対応する推定対象物の揺れ量を推定する際に、他のエレベーター装置における加速度検出器からの信号も参照する。
【0113】
各エレベーター装置における昇降体は、かご及び釣合おもりの両方である。
【0114】
各エレベーター装置における揺れ推定部は、第1条件満足状態であり、かつ第2条件満足状態であるとき、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。このとき、揺れ推定部22は、第1条件満足状態と第2条件満足状態とが設定時間以上継続した場合に、推定対象物に異常な揺れが生じていると判定してもよい。
【0115】
第1条件満足状態は、対応するかごの鉛直加速度が第1かご鉛直方向閾値以上である条件と、対応する釣合おもりの鉛直加速度が第1おもり鉛直方向閾値以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされている状態である。
【0116】
第2条件満足状態は、全てのエレベーター装置における昇降体のうちの2つ以上の昇降体の水平加速度が、第1かご水平方向閾値及び第1おもり水平方向閾値のうちの対応する閾値以上である状態である。
【0117】
図8は、実施の形態3によるエレベーターシステムの一例を示す概略の構成図である。
図9は、
図8のエレベーターシステムの制御系を示すブロック図である。
【0118】
図8では、2つのエレベーター装置31,31aが建物50に設けられている。即ち、
図8のエレベーターシステム本体30は、2つのエレベーター装置31,31aを有している。各エレベーター装置31,31aの構成は、実施の形態2のエレベーター装置31と同様である。
【0119】
図8及び
図9において、エレベーター装置31に関する構成には、実施の形態2と同様の符号が付されている。
図8及び
図9において、エレベーター装置31aに関する構成には、実施の形態2と同様の符号に「a」を付けた符号が付されている。
【0120】
揺れ推定部22は、エレベーター装置31に含まれている推定対象物の揺れ量を推定する際に、かご加速度検出器19a及びおもり加速度検出器23aからの信号も参照する。揺れ推定部22aは、エレベーター装置31aに含まれている推定対象物の揺れ量を推定する際に、かご加速度検出器19及びおもり加速度検出器23からの信号も参照する。
【0121】
エレベーター装置31の揺れ推定部22における第1条件満足状態は、以下の通りである。即ち、第1条件満足状態は、かご15の鉛直加速度ACv1が第1かご鉛直方向閾値LCv1以上である条件と、釣合おもり16の鉛直加速度AMv1が第1おもり鉛直方向閾値LMv1以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされている状態である。
【0122】
エレベーター装置31aの揺れ推定部22aにおける第1条件満足状態は、以下の通りである。即ち、第1条件満足状態は、かご15aの鉛直加速度ACv1が第1かご鉛直方向閾値LCv1以上である条件と、釣合おもり16aの鉛直加速度AMv1が第1おもり鉛直方向閾値LMv1以上である条件との少なくともいずれか一方が満たされている状態である。
【0123】
揺れ推定部22及び揺れ推定部22aのそれぞれにおける第2条件満足状態は、以下の通りである。即ち、第2条件満足状態は、かご15、釣合おもり16、かご15a、及び釣合おもり16aのうちの2つ以上の水平加速度ACh1又はAMh1が、対応する水平方向閾値LCh1又はLMh1以上である状態である。
【0124】
揺れ推定部22は、第1条件満足状態であり、かつ第2条件満足状態であるとき、エレベーター装置31に含まれている推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。揺れ推定部22aは、第1条件満足状態であり、かつ第2条件満足状態であるとき、エレベーター装置31aに含まれている推定対象物に異常な揺れが生じていると判定する。
【0125】
エレベーターシステム本体が2つ以上のエレベーター装置を有している点と、各エレベーター装置における揺れ推定部の機能を除いて、エレベーターシステムの構成及び動作は、実施の形態2と同様である。
【0126】
このようなエレベーターシステムでは、各エレベーター装置における揺れ推定部が、対応する推定対象物の揺れ量を推定する際に、他のエレベーター装置における加速度検出器からの信号も参照する。このため、建物50の揺れの検出精度を向上させ、推定対象物の揺れ量の推定精度を向上させることができる。
【0127】
また、各エレベーター装置における揺れ推定部は、対応する推定対象物に異常な揺れが生じているかどうかを判定する際に、全てのエレベーター装置における昇降体の水平加速度を参照する。このため、建物50の揺れの検出精度をさらに向上させ、推定対象物の揺れ量の推定精度をさらに向上させることができる。
【0128】
なお、実施の形態3において、エレベーターシステム本体30には、3つ以上のエレベーター装置31が含まれてもよい。
【0129】
また、実施の形態1において、エレベーターシステム本体30に2つ以上のエレベーター装置31が含まれてもよい。
【0130】
また、実施の形態1~3において、推定対象物は、図示しない調速機ロープであってもよい。また、複数本の主ロープの代わりに、複数本のベルトが用いられている場合、推定対象物は、複数本のベルトであってもよい。即ち、推定対象物は、ロープ又はベルトである。
【0131】
また、実施の形態1~3において、推定対象物に接している他の機器、例えば釣合車18に機器加速度検出器を設け、推定対象物の揺れ量を推定する際に、機器加速度検出器からの信号も参照してもよい。
【0132】
また、実施の形態1~3において、エレベーター装置31のレイアウトは、
図1のレイアウトに限定されるものではない。例えば、ローピング方式は、2:1ローピング方式であってもよい。
【0133】
また、エレベーター装置31は、機械室レスエレベーター、ダブルデッキエレベーター、ワンシャフトマルチカー方式のエレベーターであってもよい。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【0134】
また、実施の形態1~3の制御装置20の各機能は、処理回路によって実現される。
図10は、実施の形態1~3の制御装置20の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。第1例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0135】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。また、制御装置20の各機能それぞれを個別の処理回路100で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路100で実現してもよい。
【0136】
また、
図11は、実施の形態1~3の制御装置20の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。第2例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0137】
処理回路200では、制御装置20の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0138】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0139】
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0140】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0141】
14,14a 主ロープ(推定対象物)、15,15a かご(昇降体)、16,16a 釣合おもり(昇降体)、17,17a コンペンロープ(推定対象物)、19,19a かご加速度検出器、20,20a 制御装置、21,21a 運転制御部、22,22a 揺れ推定部、23,23a おもり加速度検出器、30 エレベーターシステム本体、31,31a エレベーター装置、50 建物。