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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-30
(45)【発行日】2023-12-08
(54)【発明の名称】固体絶縁母線
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/00 20060101AFI20231201BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20231201BHJP
   H02G 5/06 20060101ALI20231201BHJP
【FI】
H02B13/00 A
H02B13/035 311C
H02G5/06 331
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023533599
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2023000531
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2022077478
(32)【優先日】2022-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西園寺 嶺
(72)【発明者】
【氏名】安部 淳一
(72)【発明者】
【氏名】黒明 慎太郎
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092883(JP,A)
【文献】特開2013-258297(JP,A)
【文献】特開2001-238335(JP,A)
【文献】特開2001-160342(JP,A)
【文献】特開2010-057246(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010240(WO,A1)
【文献】特開平05-056541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/00 - 13/08
H02G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線導体及び前記母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、前記母線を支持する絶縁アダプタと、前記絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた前記絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、前記絶縁アダプタと外部とを接続するために前記絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備えた固体絶縁母線において、
前記絶縁栓は、上埋金と導電性の蓋部を備え、前記蓋部は前記絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触しており、
前記上埋金と前記蓋部とを分離できる構造として、前記蓋部と前記上埋金とを締結する固定ボルトを設けた固体絶縁母線。
【請求項2】
母線導体及び前記母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、前記母線を支持する絶縁アダプタと、前記絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた前記絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、前記絶縁アダプタと外部とを接続するために前記絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備えた固体絶縁母線において、
前記絶縁栓は、上埋金、下埋金と導電性の蓋部を備え、前記蓋部は前記絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触しており、
前記上埋金と前記蓋部は一体構造であり、
前記蓋部の上部に、前記絶縁栓を前記絶縁アダプタに締め付けるボルト部を設け、前記ブッシングの中心導体にねじ込まれたスタッドボルトに、めねじ加工された前記下埋金をねじ締結することで、前記絶縁栓が一定の面圧を確保した状態で固定され、前記ボルト部を締付けることで前記絶縁栓を前記絶縁アダプタに締め付ける力を管理できる構造とした固体絶縁母線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、固体絶縁母線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置はSFガスの優れた絶縁性能によって機器をコンパクト化でき、電気室のスペース縮小に貢献している。ガス絶縁開閉装置は高電圧が印加される主回路部を密閉容器内に収納し、密閉容器内には絶縁性能に優れたSFガスを封入することで、主回路機器の配置をコンパクト化している。また近年はSFガスに代わり、例えばドライエア等の環境面にも優れたガスを代替ガスとして封入している場合もある。
【0003】
このようなガス絶縁開閉装置は、1つまたは複数の機器を収納した1区切りの状態(一面と数える)を複数並べて、それらを母線で接続して構成される。
母線部分に関しては、ガス絶縁開閉装置据付時に隣り合う母線タンク同士を接続し、母線タンク内の母線導体を接続するガス母線方式が一般的である。近年は固体絶縁母線を用いることでガス絶縁開閉装置据付時の現地ガス処理作業を無くすガス絶縁開閉装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
固体絶縁母線は隣接する盤の主回路を接続する母線と、各盤と母線の接続部を覆うように設けられた絶縁アダプタによって構成され、この絶縁アダプタは、その外周全体に導電塗料等で構成された接地遮蔽層を有している。絶縁アダプタには、取付け作業後に円錐形状の絶縁栓の上部に電界の遮蔽、漏れ電流の接地、異物混入防止のために導電ゴムキャップが取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-92883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の固体絶縁母線では、導電ゴムキャップを使用しているため、長年使用すると劣化により亀裂が入り、面圧が低下し、漏れ電流を接地できない可能性がある。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能に対して、長期劣化による影響を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される固体絶縁母線は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、母線を支持する絶縁アダプタと、絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、絶縁アダプタと外部とを接続するために絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備えた固体絶縁母線において、絶縁栓は、上埋金と導電性の蓋部を備え、蓋部は絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触しており、上埋金と蓋部とを分離できる構造として、蓋部と上埋金とを締結する固定ボルトを設けたものである。
本願に開示される固体絶縁母線は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、母線を支持する絶縁アダプタと、絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、絶縁アダプタと外部とを接続するために絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備えた固体絶縁母線において、絶縁栓は、上埋金、下埋金と導電性の蓋部を備え、蓋部は絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触しており、上埋金と蓋部は一体構造であり、蓋部の上部に、絶縁栓を絶縁アダプタに締め付けるボルト部を設け、ブッシングの中心導体にねじ込まれたスタッドボルトに、めねじ加工された下埋金をねじ締結することで、絶縁栓が一定の面圧を確保した状態で固定され、ボルト部を締付けることで絶縁栓を絶縁アダプタに締め付ける力を管理できる構造としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される固体絶縁母線によれば、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1による固体絶縁母線の構造を示す断面図である。
図2】固体絶縁母線の比較例の構造を示す断面図である。
図3】実施の形態1による固体絶縁母線の別の構造を示す断面図である。
図4】実施の形態2による固体絶縁母線の構造を示す断面図である。
図5図5Aは実施の形態3による固体絶縁母線の構造を示す断面図である。図5B図5Aの一部詳細図である。
図6】実施の形態4による固体絶縁母線の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、母線を支持する絶縁アダプタと、絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、絶縁アダプタと外部とを接続するために絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備え、絶縁栓は、絶縁栓に埋め込まれた上埋金と一体構造の蓋部を備え、蓋部は絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触している固体絶縁母線に関するものである。
【0012】
以下、実施の形態1に係る固体絶縁母線について、固体絶縁母線の構造を示す断面図である図1、比較例の構造を示す断面図である図2、および別の構造を示す断面図である図3に基づいて説明する。
なお、各図において、同一部分もしくは相当部分は、同一符号で示し、重複する説明は、省略する。
【0013】
実施の形態1の固体絶縁母線100の全体構成を図1に基づいて説明する。
実施の形態1の固体絶縁母線100は、主要構成要素として絶縁アダプタ1、母線2、ブッシング3、および絶縁栓4を備えている。
【0014】
まず、固体絶縁母線100の全体の機能、および各主要構成要素間の関係を説明する。なお、この全体機能の説明では、わかりやすくするため、主要構成要素以外の構成要素の符番号は省略している。
固体絶縁母線100は隣接する外部の盤の主回路を接続する母線2と、各盤と母線2の接続部を覆うように設けられた着脱可能な絶縁アダプタ1によって構成される。絶縁アダプタ1は、その外周全体に導電塗料等で構成される接地遮蔽層を有している。
【0015】
絶縁アダプタ1の鉛直方向の上方には、盤主回路と母線2の接続を容易にするための円錐部が設けられ、盤主回路と母線2の接続後、円錐穴を塞ぐために絶縁栓4が挿入される。
絶縁栓4は、絶縁アダプタ1に挿入される円錐形状の絶縁物であり、エポキシ樹脂等の絶縁層とその絶縁層に埋め込まれる銅、アルミ等の埋金から構成される。
絶縁アダプタ1に対して絶縁栓4の蓋部は、盤の主回路と母線2との接続作業を行った後、電界の遮蔽、循環電流の接地、および異物混入の防止の役割を果たす。
固体絶縁母線100は、絶縁アダプタ1とそれらを繋ぐ絶縁物で覆われた導体に高電圧が印可されるため、この高電圧導体から各絶縁物表面に電荷が誘起される。このため、絶縁アダプタ1と各絶縁物表面を接地する必要がある。
【0016】
次に、固体絶縁母線100の各主要構成要素の機能、詳細構成、および材質について説明する。
絶縁アダプタ1は、絶縁層1a、接地遮蔽層1b、および導電層1cから構成される。
絶縁層1aは、シリコーンゴムまたはエチレンプロピレンゴム等の比較的柔らかく、かつ、弾性を有する絶縁物で構成され、充電部(母線導体2aおよび中心導体3a)と外部を絶縁する。
接地遮蔽層1bは、充電部から発生する電界を遮蔽し、導電層1cは充電部の電界を緩和する。
また、絶縁アダプタ1は鉛直方向に円錐部、円錐部と交差する水平方向に円筒部が設けられたT字型の形状をしている。
【0017】
母線2は、母線導体2aと絶縁層2bとから構成される。
母線2は、盤の主回路を接続する母線導体2aの周囲をシリコーンゴムまたはエポキシ樹脂等の絶縁層2bで覆われている。
【0018】
絶縁アダプタ1の鉛直方向の下方に設けられたブッシング3は、中心導体3aと絶縁層3bとから構成される。
ブッシング3は、例えばガス絶縁開閉装置の母線接続用ブッシングであり、内部に盤の主回路に接続されている中心導体3aを備え、周囲をエポキシ樹脂等の絶縁層3bで覆われている。絶縁層3bは、先端側が細くなった円錐形状をしている。なお、ブッシング3はガス絶縁開閉装置のタンク(図示なし)にボルトで固定されている。
【0019】
ここで、絶縁アダプタ1、母線2の母線導体2a、およびブッシング3の中心導体3aの接続について説明する。
ブッシング3の中心導体3aには、スタッドボルト5と嵌合するめねじ加工がされており、ブッシング3の中心導体3aにスタッドボルト5をねじ込むことでスタッドボルト5が固定される。絶縁アダプタ1内部の導電層1cに固定用導体6を入れた状態で、絶縁アダプタ1を鉛直方向の上方よりスタッドボルト5、ブッシング3に挿入する。母線2の端部は、絶縁アダプタ1の水平方向の円筒部に挿入され、母線導体2aを固定用導体6ではさみスタッドボルト5とナット7で締付けることで、絶縁アダプタ1及び母線2が固定される。
固定用導体6は、母線2の母線導体2aとブッシング3の中心導体3aとの間の通電性能を担うため、銅またはアルミニウム等の導電性の高い金属が用いられる。また、締付ける際、固定用導体6と母線導体2aとが面を合わせて接触するよう支持導体8が使用される。
【0020】
絶縁栓4は、絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4c、蓋部4dとから構成される。なお、上埋金4bの上部が蓋部4dであり、上埋金4bと蓋部4dは一体構造である。
絶縁栓4は、エポキシ樹脂等の絶縁層4aに銅またはアルミニウム等の上埋金4b、下埋金4cが埋め込まれて成形される。
絶縁層4aは、先端側が細くなった円錐形状をしている。下埋金4cは、めねじ加工がされており、スタッドボルト5とねじ締結することで絶縁栓4が一定の面圧を確保した状態で固定される。
ブッシング3と絶縁栓4は、絶縁アダプタ1の鉛直方向の円錐部にそれぞれグリスを介してねじ込まれ、絶縁アダプタ1と一定の面圧を確保した状態で接続される。
【0021】
実施の形態1の固体絶縁母線100では、絶縁栓4に埋め込まれる上埋金4bの上部の形状を、絶縁層4aを覆い、絶縁アダプタ1の表面の接地遮蔽層1bと十分な通電面積を確保して接触する形状、例えば、円盤形状としている。この円盤形状部を蓋部4dとしている。
すなわち、絶縁アダプタ1の上部開口部を塞ぐ導電性の蓋部4dを上埋金4bと一体構造としている。
実施の形態1の固体絶縁母線100では、蓋部4dと接地遮蔽層1bが通電性能を確保して接触しているため、接地線9A(接地遮蔽層1bに接続している)または接地線9B(蓋部4dに接続している)の内いずれか一方があれば固体絶縁母線100の表面の電荷を接地に流すことができる。
【0022】
次に実施の形態1の固体絶縁母線100の特徴を明確にするために比較例の固体絶縁母線100Aについて、図2に基づいて説明する。なお、固体絶縁母線100と区別するために、固体絶縁母線100A、また絶縁栓4Aとしている。
図2の固体絶縁母線100Aと実施の形態1の固体絶縁母線100との相異点は、絶縁栓4Aの構造である。
絶縁栓4Aは、絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4c、および導電性キャップ10とから構成される。
導電性キャップ10は、盤主回路と母線2の接続作業後に電界の遮蔽、循環電流の接地、異物混入の防止を目的として、絶縁アダプタ1に取付けられる。
導電性キャップ10と絶縁アダプタ1とは、導電性キャップ10の内径を絶縁アダプタ1の外径よりも小さくし、導電性キャップ10を絶縁アダプタ1に被せることで、絶縁アダプタ1と導電性キャップ10との間に面圧を発生させて、接触を確実にする構造としている。
【0023】
導電性キャップ10は、絶縁アダプタ1への取付の容易さから導電ゴム、または、導電性プラスチックが採用されることが多い。
しかし、このようにゴムまたはプラスチック材料を使用すると、環境の温湿度の変動による劣化、長期間面圧を掛け続けることによるクリープ変形が発生し面圧が低下する問題がある。面圧が低下すると導電性キャップ10と絶縁アダプタ1との接触が不安定になり、絶縁栓4の導電性キャップ10が電気的に浮遊状態になり、導電性キャップ10の表面の電荷を接地に流せなくなる可能性がある。
【0024】
実施の形態1の固体絶縁母線100では、絶縁栓4の蓋部4dを銅またはアルミニウム等の金属製導電性材料とし、絶縁アダプタ1の表面の接地遮蔽層1bに密着させている。蓋部4dに金属製導電性材料を使用することで、縁物表面の電荷の接地機能、異物混入防止機能を保持できる。このため、電界の遮蔽機能、絶縁物表面の電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。
【0025】
次に、母線2が絶縁アダプタ1に対して、左右両側から接続される場合の固体絶縁母線の構造について、図3に基づいて説明する。なお、固体絶縁母線100と区別するために、固体絶縁母線101としている。
図3に示す様に、母線2が絶縁アダプタ1の左右両側から接続される場合には、母線2挿入箇所が左右の両側に配置され、全体的に十字型の形状となる。
【0026】
ブッシング3の中心導体3aには、スタッドボルト5と嵌合するめねじ加工がされており、ブッシング3の中心導体3aにスタッドボルト5をねじ込むことでスタッドボルト5が固定される。絶縁アダプタ1内部の導電層1cに固定用導体6を入れた状態で、絶縁アダプタ1を鉛直方向の上方よりスタッドボルト5、ブッシング3に挿入する。母線2の端部は、それぞれ絶縁アダプタ1の左右両側の水平方向の円筒部に挿入され、それぞれの母線導体2aを固定用導体6ではさみ、スタッドボルト5とナット7で締付けることで、絶縁アダプタ1及び母線2が固定される。
固定用導体6は、2つの母線2の母線導体2aとブッシング3の中心導体3aとの間の通電性能を担うため、銅またはアルミニウム等の導電性の高い金属が用いられる。
【0027】
実施の形態1の固体絶縁母線100では、絶縁栓4の上埋金4bと蓋部4dを一体構造として、銅またはアルミニウム等の金属製導電性材料を使用することを想定している。しかし、上埋金4bと蓋部4dとを分離して、蓋部4dに金属製ではない導電性材料を使用しても同様の効果を奏することができる。
すなわち、絶縁栓4は、絶縁栓4に埋め込まれた上埋金4bと導電性の蓋部4dを備え、蓋部4dは絶縁アダプタ1の表面の接地遮蔽層1bと接触していてもよい。
【0028】
上記説明のように、実施の形態1の固体絶縁母線は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁層を有する母線と、母線を支持する絶縁アダプタと、絶縁アダプタの鉛直方向の上方に設けられた絶縁アダプタと接続される絶縁栓と、絶縁アダプタと外部とを接続するために絶縁アダプタの鉛直方向の下方に設けられたブッシングを備え、絶縁栓は、絶縁栓に埋め込まれた上埋金と一体構造の蓋部を備え、蓋部は絶縁アダプタの表面の接地遮蔽層と接触しているものである。
したがって、実施の形態1の固体絶縁母線は、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態2の固体絶縁母線は、組立性改善のため、絶縁栓の上部にボルト部を追加して、絶縁アダプタに締付ける力を管理できる構造としたものである。
【0030】
実施の形態2の固体絶縁母線について、固体絶縁母線の構造を示す断面図である図4に基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態2の構成図において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。なお、実施の形態1の固体絶縁母線100と区別するために、固体絶縁母線200、また絶縁栓4Bとしている。
【0031】
絶縁栓4Bは、絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4c、蓋部4d、ボルト部4eとから構成される。ボルト部4eは、絶縁栓4の上部、すなわち蓋部4dの上部に追加したものであり、例えば六角ボルトを想定している。
絶縁栓4Bは、エポキシ樹脂等の絶縁層4aに銅またはアルミニウム等の上埋金4b、下埋金4cが埋め込まれて成形される。
絶縁層4aは、先端側が細くなった円錐形状をしている。下埋金4cは、めねじ加工がされており、スタッドボルト5とねじ締結することで絶縁栓4Bが一定の面圧を確保した状態で固定される。
ブッシング3と絶縁栓4Bは、絶縁アダプタ1の鉛直方向の円錐部にそれぞれグリスを介してねじ込まれ、絶縁アダプタ1と一定の面圧を確保した状態で接続される。
【0032】
実施の形態2の固体絶縁母線200では、実施の形態1の固体絶縁母線100に対して、絶縁栓4Bの上部にボルト部4eを追加した。このボルト部4eをトルクレンチで締付けることで、絶縁栓4Bを絶縁アダプタ1に締付ける力を管理できる。このため、実施の形態2の固体絶縁母線200では、実施の形態1の固体絶縁母線100に対して組立性を改善できる。
その他の構成は、実施の形態1の固体絶縁母線100と同様であるため説明は省略する。
【0033】
以上説明したように、実施の形態2の固体絶縁母線は、組立性改善のため、絶縁栓の上部にボルト部を追加して、絶縁アダプタに締付ける力を管理できる構造としたものである。
したがって、実施の形態2の固体絶縁母線は、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。さらに、絶縁アダプタに締付ける力を管理することができ、組立性の改善を図ることができる。
【0034】
実施の形態3.
実施の形態3の固体絶縁母線は、絶縁栓の内の絶縁層、上埋金、および下埋金を絶縁アダプタに挿入後に蓋部を固定ボルトで取り付ける構造としたものである。
【0035】
実施の形態3の固体絶縁母線について、固体絶縁母線の構造を示す断面図である図5Aおよび図5Aの一部断面図である図5Bに基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態3の構成図において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。なお、実施の形態1の固体絶縁母線100と区別するために、固体絶縁母線300、また絶縁栓4Cとしている。
【0036】
絶縁栓4Cは、絶縁層4a、上埋金4f、下埋金4c、蓋部4g、固定ボルト4hとから構成される。
図5Bは、固定ボルト4hを用いて、蓋部4gを上埋金4fに固定する要領を示す。上埋金4fには、固定ボルト4hのねじ部と嵌合するめねじ加工がされている。
蓋部4gと固定ボルト4hとを除いた絶縁栓4Cの絶縁層4a、上埋金4f、下埋金4cを絶縁アダプタ1に挿入後に、蓋部4gを固定ボルト4hで上埋金4fに固定する。この結果、絶縁栓4Cの蓋部4gは、絶縁アダプタ1の接地遮蔽層1bに密着する。
【0037】
絶縁層4aは、先端側が細くなった円錐形状をしている。下埋金4cは、めねじ加工がされており、スタッドボルト5とねじ締結することで絶縁栓4Cが一定の面圧を確保した状態で固定される。
ブッシング3と絶縁栓4Cは、絶縁アダプタ1の鉛直方向の円錐部にそれぞれグリスを介してねじ込まれ、絶縁アダプタ1と一定の面圧を確保した状態で接続される。
【0038】
次に、実施の形態3の固体絶縁母線300の構成の特徴を説明する。
実施の形態1では絶縁栓4が回転しながら絶縁アダプタ1に挿入されるため、絶縁栓4Cの絶縁層4aと絶縁アダプタ1の絶縁層1aおよび接地遮蔽層1bの間にねじりが発生し、絶縁層1aおよび接地遮蔽層1bが摩耗する可能性がある。
実施の形態3では、上埋金4fにめねじ加工をすることで、絶縁栓4Cの絶縁層4a、上埋金4f、下埋金4cを絶縁アダプタ1に挿入後、固定ボルト4hで蓋部4gを上埋金4fに固定することができる。
その他の構成は、実施の形態1と同様であるため説明は省略する。
【0039】
以上説明したように、実施の形態3の固体絶縁母線は、絶縁栓の内の絶縁層、上埋金、および下埋金を絶縁アダプタに挿入後に蓋部を固定ボルトで取り付ける構造としたものである。
したがって、実施の形態3の固体絶縁母線は、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。さらに、絶縁栓と絶縁アダプタの絶縁層とのねじりおよび摩耗を解消することができる。
【0040】
実施の形態4.
実施の形態4の固体絶縁母線は、絶縁栓の内の絶縁層、上埋金、および下埋金を絶縁アダプタに挿入後に蓋部を形成する構造としたものである。
【0041】
実施の形態4の固体絶縁母線について、固体絶縁母線の構造を示す断面図である図6に基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態4の構成図において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。なお、実施の形態1の固体絶縁母線100と区別するために、固体絶縁母線400、また絶縁栓4Dとしている。
【0042】
絶縁栓4Dは、絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4c、蓋部4jとから構成される。
絶縁栓4D(蓋部4jを除く)は、エポキシ樹脂等の絶縁層4aに銅またはアルミニウム等の上埋金4b、下埋金4cが埋め込まれて成形される。
絶縁層4aは、先端側が細くなった円錐形状をしている。下埋金4cは、めねじ加工がされており、スタッドボルト5とねじ締結することで絶縁栓4Dが一定の面圧を確保した状態で固定される。
ブッシング3と絶縁栓4D(蓋部4jを除く)は、絶縁アダプタ1の鉛直方向の円錐部にそれぞれグリスを介してねじ込まれ、絶縁アダプタ1と一定の面圧を確保した状態で接続される。
絶縁栓4D(蓋部4jを除く)の絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4cを絶縁アダプタ1に挿入後に、絶縁栓4Dの蓋部4jをスプレー等で導電性塗料を塗布して形成する。すなわち、絶縁栓4Dの鉛直方向の最上面に、蓋部4jが配置されている。
【0043】
実施の形態4の固体絶縁母線400では、実施の形態1と同様に絶縁アダプタ1は接地遮蔽層1bを備えていることを想定している。すなわち、絶縁栓4Dの蓋部4jを除く絶縁層4a、上埋金4b、下埋金4cを絶縁アダプタ1に挿入後に、絶縁栓4Dの蓋部4jをスプレー等で導電性塗料を塗布して形成した。
したがって、実施の形態4の固体絶縁母線400では、絶縁アダプタ1の接地遮蔽層1bおよび絶縁栓4Dの蓋部4jの全体が導電性塗料で覆われる構造となり、面圧による接続構造ではないため、面圧の低下による接触不良は発生しない。
【0044】
通常、接地遮蔽層1bは絶縁アダプタ1の成型後に、絶縁アダプタ1の表面に導電性塗料を塗布して形成される。しかし、絶縁栓4を絶縁アダプタ1に挿入後に絶縁アダプタ1の絶縁層1aの表面、および絶縁栓4表面にスプレー等で導電性塗料を塗布することで、絶縁アダプタ1、絶縁栓4の表面全体に亘って絶縁アダプタ1の接地遮蔽層1bおよび絶縁栓4Dの蓋部4jを形成することもできる。
その他の構成は、実施の形態1の固体絶縁母線100と同様であるため説明は省略する。
【0045】
以上説明したように、実施の形態4の固体絶縁母線は、絶縁栓の内の絶縁層、上埋金、および下埋金を絶縁アダプタに挿入後に蓋部を形成する構造としたものである。
したがって、実施の形態4の固体絶縁母線は、電界の遮蔽機能、電荷の接地機能、異物混入防止機能の長期劣化を防止することができる。さらに、蓋部の面圧の低下による接触不良は発生しない効果がある。
【0046】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組合せる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 絶縁アダプタ、1a 絶縁層、1b 接地遮蔽層、1c 導電層、2 母線、2a 母線導体、2b 絶縁層、3 ブッシング、3a 中心導体、3b 絶縁層、4,4A,4B,4C,4D 絶縁栓、4a 絶縁層、4b,4f 上埋金、4c 下埋金、4d,4g,4j 蓋部、4e ボルト部、4h 固定ボルト、5 スタッドボルト、6 固定用導体、7 ナット、8 支持導体、9A,9B 接地線、10 導電性キャップ、100,100A,101,200,300,400 固体絶縁母線。
【要約】
母線導体(2a)及び母線導体(2a)の周囲を覆う絶縁層(2b)を有する母線(2)と、母線(2)を支持する絶縁アダプタ(1)と、絶縁アダプタ(1)の鉛直方向の上方に設けられた絶縁アダプタ(1)と接続される絶縁栓(4)と、絶縁アダプタ(1)と外部とを接続するために絶縁アダプタ(1)の鉛直方向の下方に設けられたブッシング((3)を備え、絶縁栓(4)は埋め込まれる上埋金(4b)と導電性の蓋部(4d)を備え、蓋部(4d)は絶縁アダプタ(1)の表面の接地遮蔽層(1b)と接触している固体絶縁母線(100)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6