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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】多次元止血製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/32 20060101AFI20231204BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20231204BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20231204BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20231204BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALN20231204BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALN20231204BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALN20231204BHJP
【FI】
A61L15/32 300
A61L15/28 100
A61L15/44 100
A61L15/20 100
B33Y80/00
B33Y70/00
B33Y10/00
【請求項の数】 48
(21)【出願番号】P 2020566319
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019053896
(87)【国際公開番号】W WO2019158734
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】18305154.9
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523379122
【氏名又は名称】ディロン、テクノロジーズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DILON TECHNOLOGIES INC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】バレリー、センティス
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、モンショ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518250(JP,A)
【文献】特開2014-036882(JP,A)
【文献】特表2014-512403(JP,A)
【文献】特表2014-508615(JP,A)
【文献】特表2015-525647(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213170(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/011050(WO,A2)
【文献】特表2014-514942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも三次元を有し、第1の外層から第2の外層まで互いに堆積された層のスタックから構成される印刷された止血製品であって、
前記層のスタックは、複数の隣接する層を含んでなり、
前記層のスタックの前記複数の隣接する層は、ともに連結され、
前記層のスタックの総ての層は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;ならびに
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する止血性フロアブル剤から構成される、前記止血製品。
【請求項2】
前記層のスタックの前記複数の隣接する層のうち少なくとも1つの層が、異なる組成を有する止血性フロアブル剤から構成されるいくつかの部分を有する、請求項1に記載の印刷された止血製品。
【請求項3】
前記層のスタックの前記複数の隣接する層のうち少なくとも1つの層が、同じ止血性フロアブル剤から完全に構成される、請求項1に記載の印刷された止血製品。
【請求項4】
前記層のスタックの総ての層が、同じ組成を有する、請求項3に記載の印刷された止血製品。
【請求項5】
前記第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層が、同じ止血性フロアブル剤から完全に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項6】
前記層のスタックの前記第1および第2の外層が、同じ組成を有する、請求項に記載の印刷された止血製品。
【請求項7】
前記層のスタックの各層が、前記第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層のフロアブル剤混合物と同一のフロアブル剤混合物から構成される周辺部分を有する、請求項に記載の印刷された止血製品。
【請求項8】
前記層のスタックの少なくとも1つの層が、前記層のスタックのその他の層の膨潤特性と異なる膨潤特性を有する止血性フロアブル剤から構成される部分を含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項9】
前記止血性フロアブル剤の組成物が、前記組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、好ましくは、75~96重量%の範囲、さらにより好ましくは、80~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項10】
前記止血性フロアブル剤の組成物が、前記組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、好ましくは、2~8重量%の範囲、より好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、4~6重量%の範囲の単糖含量を含んでなる、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項11】
前記止血性フロアブル剤の組成物が、少なくとも1種のグリコサミノグリカンを含んでなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項12】
前記グリコサミノグリカンが、前記組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の含量である、請求項11に記載の印刷された止血製品。
【請求項13】
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物の中から選択される、請求項11または12に記載の印刷された止血製品。
【請求項14】
前記止血性フロアブル剤の組成物が、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項15】
前記凝固因子が、前記組成物の0.01IU/mg~20IU/mgの範囲、好ましくは、前記組成物の0.05IU/mg~10IU/mgの範囲、より好ましくは、前記組成物の0.1IU/mg~5IU/mgの範囲、さらにより好ましくは、前記組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量である、請求項14に記載の印刷された止血製品。
【請求項16】
前記止血性フロアブル剤が、止血粉体から構成され、
前記止血粉体が、
前記コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、前記止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、コラーゲン;ならびに
前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の印刷された止血製品。
【請求項17】
前記止血粉体が、前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる、請求項16に記載の印刷された止血製品。
【請求項18】
前記止血粉体が、前記止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる、請求項16または17に記載の印刷された止血製品。
【請求項19】
三次元プリンターのための印刷用インクとしての止血性フロアブル剤の使用であって、
前記止血性フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、
前記止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;ならびに
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する、前記使用。
【請求項20】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、前記組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、好ましくは、75~96重量%の範囲、さらにより好ましくは、80~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなる、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、前記組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、好ましくは、2~8重量%の範囲、より好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、4~6重量%の範囲の単糖含量を含んでなる、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、少なくとも1種のグリコサミノグリカンを含んでなる、請求項1921のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記グリコサミノグリカンが、前記組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の含量である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物の中から選択される、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる、請求項1924のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記凝固因子が、前記組成物の0.01IU/mg~20IU/mgの範囲、好ましくは、前記組成物の0.05IU/mg~10IU/mgの範囲、より好ましくは、組成物の0.1IU/mg~5IU/mgの範囲、さらにより好ましくは、前記組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記生理食塩水が、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる、請求項1924のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記凝固因子が、前記生理食塩水の10IU/mL~5000IU/mLの範囲、好ましくは、前記生理食塩水の25IU/mL~2500IU/mLの範囲、より好ましくは、前記生理食塩水の50IU/mL~1000IU/mLの範囲、さらにより好ましくは、前記生理食塩水の100IU/mL~500IU/mLの範囲の量である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、
前記コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、前記止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、前記コラーゲン;ならびに
前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる、請求項19に記載の使用。
【請求項30】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体が、前記止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる、請求項29または30に記載の使用。
【請求項32】
前記止血性フロアブル剤を形成するために使用される前記生理食塩水の質量が、前記止血粉体の質量の2~10倍、好ましくは、前記止血粉体の質量の4~5倍である、請求項1931のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体が、大きさが20μm~300μmである少なくとも80重量%の粒子を含んでなる、請求項1932のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体が、大きさが350μm未満の少なくとも90重量%の粒子を含んでなる、請求項1933のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
三次元アディティブプリンターを用いて、少なくとも三次元を有する止血製品を製造する方法であって、
前記方法が、以下の工程:
a)三次元モデルを前記三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、
前記三次元モデルは、製造される前記止血製品の構造に対応し、
前記三次元モデルを処理して、前記三次元モデルに対応する層のスタックを形成するために互いにスタックされるように設計された複数の層の印刷パターンを定義する工程;
b)印刷用インクとしての使用のために少なくとも1種の止血性フロアブル剤を前記三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、
前記フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、
前記止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;ならびに
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する工程;
c)印刷用インクを堆積させて、層を互いに順次印刷することにより、前記三次元アディティブプリンターを用いて前記止血製品を印刷する工程であって、
前記三次元アディティブプリンターを用いて前記止血性フロアブル剤を堆積させて、前記層のスタックの総ての層を形成させることを含んでなる工程、ここで、前記層のスタックの総ての層は、前記止血性フロアブル剤から構成される、
を含んでなる、前記方法。
【請求項36】
前記層のスタックの総ての層が、前記止血性フロアブル剤の堆積で完全に構成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程b)において、複数の止血性フロアブル剤が、印刷用インクとしての使用のために前記三次元アディティブプリンターに提供され、前記止血性フロアブル剤は、異なる組成を有する、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、
前記コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、前記コラーゲン;ならびに
前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる、請求項3537のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記止血性フロアブル剤を形成する前記止血粉体の組成物が、前記止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物が、止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記止血性フロアブル剤を形成するために使用される生理食塩水が、少なくとも1種の凝固因子を含んでなり、前記凝固因子は、生理食塩水の10IU/mL~5000IU/mLの範囲、好ましくは、生理食塩水の25IU/mL~2500IU/mLの範囲、より好ましくは、生理食塩水の50IU/mL~1000IU/mLの範囲、さらにより好ましくは、生理食塩水の100IU/mL~500IU/mLの範囲の量である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
前記止血性フロアブル剤を形成するために使用される前記生理食塩水の質量が、前記止血粉体の質量の2~10倍、好ましくは、前記止血粉体の質量の4~5倍である、請求項3541のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
印刷工程c)が周囲雰囲気で行われる、請求項3542のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記止血製品が印刷工程c)において形成された後、コーティング工程d)が行われ、凝固因子、特にトロンビンを含む溶液が、前記止血製品の外表面をコーティングするために使用される、請求項3543のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
コーティング工程d)が、前記凝固因子を含む溶液を前記止血製品の外表面に噴霧することにより行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記止血製品が印刷工程c)において形成された後、浸漬工程e)が行われ、前記止血製品は、凝固因子、特にトロンビンを含む溶液に浸漬される、請求項3545のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記止血製品を製造する最終工程が、前記印刷された止血製品を周囲雰囲気において所定の休止期間維持することを含み、前記所定の休止期間は、好ましくは、10分未満であり、より好ましくは、5分未満であり、さらにより好ましくは、1分未満である、請求項3546のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
全プロセスが、前記止血製品のいずれの刺激もすることなく、特に、光刺激または熱刺激をすることなく、周囲雰囲気で行われる、請求項3547のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、止血組成物の分野、特に、印刷された止血製品、例えば、三次元(3D)止血製品、およびこのような三次元止血製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
創傷は、外的であれ内的であれ、外傷性であれ外科的であれ、出血に至ることが多い。このような出血は、多かれ少なかれ重大であり得る。出血は、「止血」と呼ばれる一連の生理学的現象を介して防止および停止される。止血は、血管の裂け目を修復する助けとなり、一般に、血管および組織の完全性の維持を保証する。
【0003】
血管が損傷すると、血液の流れを止めるために、種々の段階を含んでなる自然機序が誘発される。第1に、出血を遅くする血管収縮が15~60秒間続き、反応の複雑なカスケードを誘発する。フィブリンから構成される繊維状のメッシュが、血小板プラグの周囲に形成し、最終的な血栓が形成され、フィブリンを安定化する第XIII因子により早期の溶解から保護される。最後に、フィブリンメッシュが引き締まり(収縮し)、創傷の縁部が一つになる、すなわち、創傷が収縮する。次に、安定した架橋フィブリンの中で、線維芽細胞が成長し、血栓内で結合マトリックスに組織化することができ、最終的に創傷を閉じることができる。
【0004】
循環血液中には固体のフィブリンは存在せず、もし存在するならば、生命維持に重要な血管を直ちに閉塞するであろう。しかしながら、フィブリンの前駆体であるフィブリノーゲンは存在する。凝固因子により合成が活性化されるトロンビンの作用の下で、フィブリノーゲンは不溶性フィブリンに変換される。
【0005】
最後に、創傷の治癒に成功してから数日または数週間後、フィブリンクラスターは、線維素溶解の際に破壊される。
【0006】
この生化学的現象にもかかわらず、特に、創傷が大きすぎる場合、または広汎性出血の場合、「人工的に」止血を行う必要がある場合が多い。
【0007】
止血を助けるための「機械的」解決策、例えば、圧迫、結紮および電気凝固があり、これらは第一選択処置として使用される。しかしながら、これらの解決策は、特定の数の場合において、例えば、滲出性の毛細血管性出血、脾臓または肝臓などの血管が多い器官の出血、広汎性出血に至る出血、例えば骨の出血、および/または神経手術における出血には、ほとんどまたは全く効果がない。
【0008】
「化学的」解決策、特に、特定の現在の止血製品で実施されている解決策もある。前記化学的解決策の成分は、一般に、「吸収性」または「活性」型のいずれかである。
【0009】
吸収性止血製品、特に多糖類、例えば、再生酸化セルロースまたはアルギン酸塩を含んでなる製品は、主に機械的作用および単純な吸収により機能する。これらの製品は、過剰膨潤の問題を引き起こすことが多い。前記膨潤が、液体、特に血液の急速な吸収に至る場合、「閉じた」環境で、例えば、硬膜と接触して、または泌尿器科において使用される場合、望ましくない圧迫に至ることもある。
【0010】
さらに、特定の製品、特に植物の多糖類、例えばセルロースまたはアルギン酸塩を含んでなる製品は、それらの再吸収の際に炎症反応をさらに引き起こす、および/またはホストにより認識されない分解生成物に至ることがある。その結果、このような生成物を除去して、それらが体内に残存せず、そのためこれらの有害作用をもたらさないようにすることが望ましい。
【0011】
活性止血製品、例えば、トロンビンまたはフィブリンを含有する製品は、血液に由来する製品であることが多い。このような製品は、特に、病原媒介物が、古典的に適用される処理により不活性化されない場合において、アレルギーおよび疾患伝播のリスクを包含する。さらに、前記下流処理は、一般に複雑である、および/またはコストがかかる。最後に、一般に、このような製品は、使用前に調製を必要とすることがあり、これは束縛となることがあり、緊急時という点からすると実際に面倒になり得る。
【0012】
さらに、フィブリンおよびトロンビンの両方を含有する製品は、それらの作用様式が、その製品を構成する2つの血液由来製品間の相互作用に基づいている。反応は、時として血液との相互作用なしで行われることがあり、その場合、製品が浮遊するといわれる。言い換えれば、製品は、流れ続ける血液により押しやられ、場合により、製品が希釈または凝固し、血液の上でゲル形成する場合があり、血液の流れが遮断されない状況となる。したがって、止血は達成されない。
【0013】
止血粉体、その製造方法および使用方法は、2012年11月1日に参照WO2012/146655の下で発表された国際出願において開示されており、その全内容は、引用することにより本出願の一部とされる。
【0014】
このような止血粉体は、十分な吸収能力、良好な止血能力、有害作用がほとんどないこと、創傷の縁部に固定する良好な能力および止血粉体が使用される血流に十分に浸透すること、ならびに/または限られた膨潤性を有する。
【0015】
これらの良好な止血特性に加えて、このような止血粉体は、出血領域に噴霧されることを可能とする非常に良好な流動性を有するという利点を示す。止血粉体は、ほとんどの外科手技、例えば、開腹術、腹腔鏡検査、セリオスコピー、およびロボット手術手技において投与することができる。
【0016】
止血粉体は、外科医による特別な調製を必要とせずに、出血領域に直接適用可能であり、これは別の利点である。
【0017】
非常に特異的な出血領域への止血粉体の適用を容易にするために、特別な粉体ディスペンサーを使用する必要がある場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、使用が簡単で、特に複雑な調製プロセスを必要とせず、さらに、特異的な領域に容易に適用して、目的の全出血領域を覆うことができる止血製品を提案することである。
【0019】
本発明の別の目的は、良好な止血有効性、および既存の止血製品と比較して高い有効性を有する止血製品を提案することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、患者の非常に特異的なニーズに適合することができ、容易に製造することができる止血製品を提案することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、複数の出血がある領域において、および/または出血領域が複雑な形態を有する場合に使用することができる止血製品を提案することである。
【0022】
実施することが容易で、複雑な三次元止血製品を形成することを可能とする三次元止血製品の製造方法を提案することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成するため、多次元止血製品、その製造方法、および添付の特許請求の範囲に定義される止血性フロアブル剤の使用が提案される。
【0024】
より詳細には、第1の外層から第2の外層まで互いに堆積された層のスタックから構成される三次元止血製品であって、隣接する層はともに連結され、層のスタックの第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層は、
フィブリル型のコラーゲンであって、このようなコラーゲンは、好ましくは非架橋であり、コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなる、コラーゲン;
少なくとも1種の単糖;ならびに
少なくとも1種のグリコサミノグリカン
の止血性フロアブル剤混合物から構成されることを特徴とする、止血製品が提案される。
【0025】
このような三次元止血製品の好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、以下の通りである:
層のスタックの第1および第2の外層は、同じ組成を有する
層のスタックの各層は、第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層のフロアブル剤混合物と同一のフロアブル剤混合物から構成される周辺部分を有する。
層のスタックの総ての層は、同じ組成を有する
【0026】
三次元プリンターにおける印刷用インクとしての止血性フロアブル剤の使用であって、止血性フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;
少なくとも1種の単糖;ならびに
少なくとも1種のグリコサミノグリカン
を含んでなる組成を有する、使用も提案される。
【0027】
三次元アディティブプリンター(three-dimensional additive printer)を用いて、三次元止血製品を製造する方法であって、以下の工程:
三次元モデルを三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、前記三次元モデルは、製造される三次元止血製品の形状に対応し、前記三次元モデルを処理して、三次元モデルに対応する層のスタックを形成するために互いにスタックされるように設計された複数の層の印刷パターンを定義する工程;
印刷用インクとしての使用のために止血性フロアブル剤を三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、前記フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;
少なくとも1種の単糖;ならびに
少なくとも1種のグリコサミノグリカン
を含んでなる組成を有する工程;
三次元アディティブプリンターを用いて止血性フロアブル剤を堆積させて、層のスタックの外層のうち少なくとも1つの層を形成する工程
を含んでなる、方法がさらに提案される。
【0028】
三次元止血製品を製造するこのような方法に関して、止血性フロアブル剤は、好ましくは、三次元止血製品(10)を得るために層のスタックの総ての層を形成するために使用される。
【0029】
上記の止血性フロアブル剤の好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、以下の通りである:
・止血粉体の組成物において:
コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して80~90重量%の範囲の量であり;
少なくとも1種の単糖は、止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量であり;かつ
少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、止血粉体の組成物の総重量に対して2~25重量%の範囲の量である。
・止血粉体の組成物において:
コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して80~90重量%の範囲の量であり;
少なくとも1種の単糖は、止血粉体の組成物の総重量に対して2.5~7.5重量%の範囲の量であり;かつ
少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、止血粉体の組成物の総重量に対して5~12.5重量%の範囲の量である。
・止血粉体の組成物において:
コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して84~88重量%の範囲の量であり;
少なくとも1種の単糖は、止血粉体の組成物の総重量に対して4~6重量%の範囲の量であり;かつ
少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、止血粉体の組成物の総重量に対して8~10重量%の範囲の量である。
・止血粉体の組成物において、少なくとも1種の単糖はグルコースであり、少なくとも1種のグリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸である。
・止血粉体の組成物において、少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物の中から選択される。
・止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる。
・凝固因子は、トロンビンである。
・生理食塩水は、蒸留水および塩化ナトリウムを含んでなるか、またはそれらからなり、塩化ナトリウムは、生理食塩水の総重量に対して0.5~1.5重量%の範囲の量、最も好ましくは、生理食塩水の総重量に対して0.9重量%の量である。
・生理食塩水の質量は、止血粉体の質量の2~10倍の間、好ましくは、止血粉体の質量の4~5倍の間である。
・止血性フロアブル剤は、1g~2gの間の止血粉体を、4mL~10mLの間の生理食塩水、好ましくは、5mL~10mLの間の生理食塩水と混合することにより得られる。
・止血性フロアブル剤は、1.65gの止血粉体を、7mLの純生理食塩水と、または任意の他の類似の比で混合することにより得られる。
【0030】
少なくとも三次元を有し、第1の外層から第2の外層まで互いに堆積された層のスタックから構成される印刷された止血製品であって、層のスタックの隣接する層は、ともに連結され、層のスタックの少なくとも1つの層は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;ならびに
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する止血性フロアブル剤から構成される少なくとも1つの部分を有する、止血製品も提案される。
【0031】
このような印刷された止血製品の好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、以下の通りである:
・層のスタックの少なくとも1つの層は、異なる組成を有する止血性フロアブル剤から構成されるいくつかの部分を有する。
・層のスタックの少なくとも1つの層は、同じ止血性フロアブル剤から完全に構成される。
・層のスタックの総ての層は、同じ組成を有する
・印刷された止血製品は、複数の隣接する層を含んでなり、複数の隣接する層の各層は、止血性フロアブル剤から構成される少なくとも1つの部分を有する。
・層のスタックの第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層は、止血性フロアブル剤から構成される部分を有する。
・第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層は、同じ止血性フロアブル剤から完全に構成される。
・層のスタックの第1および第2の外層は、同じ組成を有する
・層のスタックの各層は、第1および第2の外層のうち少なくとも1つの層のフロアブル剤混合物と同一のフロアブル剤混合物から構成される周辺部分を有する。
・層のスタックの少なくとも1つの層は、層のスタックの他の層の膨潤特性と異なる膨潤特性を有する止血性フロアブル剤から構成される部分を含んでなる。
・止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、好ましくは、75~96重量%の範囲、さらにより好ましくは、80~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなる。
・止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、好ましくは、2~8重量%の範囲、より好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、4~6重量%の範囲の単糖含量を含んでなる。
・止血性フロアブル剤の組成物は、少なくとも1種のグリコサミノグリカンを含んでなる。
・グリコサミノグリカンは、組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の含量である。
・グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物の中から選択される。
・止血性フロアブル剤の組成物は、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる。
・凝固因子は、組成物の0.01IU/mg~20IU/mgの範囲、好ましくは、組成物の0.05IU/mg~10IU/mgの範囲、より好ましくは、組成物の0.1IU/mg~5IU/mgの範囲、さらにより好ましくは、組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量である。
・止血性フロアブル剤は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、コラーゲン;
止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する止血粉体から構成される。
・止血粉体は、止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる。
・止血粉体は、止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる。
【0032】
三次元プリンターにおける印刷用インクとしての止血性フロアブル剤の使用であって、止血性フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する、使用がさらに提案される。
【0033】
印刷用インクとしての止血性フロアブル剤のこのような使用の好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、以下の通りである:
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、好ましくは、75~96重量%の範囲、さらにより好ましくは、80~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、好ましくは、2~8重量%の範囲、より好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、4~6重量%の範囲の単糖含量を含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、少なくとも1種のグリコサミノグリカンを含んでなる。
・グリコサミノグリカンは、組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の含量である。
・グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物の中から選択される。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる。
・凝固因子は、組成物の0.01IU/mg~20IU/mgの範囲、好ましくは、組成物の0.05IU/mg~10IU/mgの範囲、より好ましくは、組成物の0.1IU/mg~5IU/mgの範囲、さらにより好ましくは、組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量である。
・生理食塩水は、少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなる。
・凝固因子は、生理食塩水の10IU/mL~5000IU/mLの範囲、好ましくは、生理食塩水の25IU/mL~2500IU/mLの範囲、より好ましくは、生理食塩水の50IU/mL~1000IU/mLの範囲、さらにより好ましくは、生理食塩水の100IU/mL~500IU/mLの範囲の量である。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、コラーゲン;
止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体は、止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成するために使用される生理食塩水の質量は、止血粉体の質量の2~10倍の間、好ましくは、止血粉体の質量の4~5倍の間である。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体は、大きさが20μm~300μmの間である少なくとも80重量%の粒子を含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体は、大きさが350μm未満の少なくとも90重量%の粒子を含んでなる。
【0034】
三次元アディティブプリンターを用いて、少なくとも三次元を有する止血製品を製造する方法であって、以下の工程:
a)三次元モデルを三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、前記三次元モデルは、製造される止血製品の構造に対応し、前記三次元モデルを処理して、三次元モデルに対応する層のスタックを形成するために互いにスタックされるように設計された複数の層の印刷パターンを定義する工程;
b)印刷用インクとしての使用のために少なくとも1種の止血性フロアブル剤を三次元アディティブプリンターに提供する工程であって、前記フロアブル剤は、生理食塩水と混合された止血粉体から構成され、止血粉体は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型の非架橋コラーゲン;ならびに
少なくとも1種の単糖
を含んでなる組成を有する工程;
c)印刷用インクを堆積させて、層を互いに順次印刷することにより、三次元アディティブプリンターを用いて止血製品を印刷する工程であって、三次元アディティブプリンターを用いて止血性フロアブル剤を堆積させて、層のスタックの少なくとも1つの層の少なくとも1つの部分を形成することを含んでなる工程
を含んでなる、方法が最後に提案される。
【0035】
止血製品を製造するこのような方法の好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、以下の通りである:
・層のスタックの少なくとも1つの層は、止血性フロアブル剤の堆積で完全に構成される。
・止血性フロアブル剤は、止血製品(10)を得るために層のスタックのいくつかの層において使用される。
・止血性フロアブル剤は、止血製品(10)を得るために層のスタックの総ての層を形成するために使用される。
・工程b)において、複数の止血性フロアブル剤は、印刷用インクとしての使用のために三次元アディティブプリンターに提供され、前記止血性フロアブル剤は、異なる組成を有する
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%の繊維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるフィブリル型のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、止血粉体の組成物の総重量に対して75~96重量%の範囲、好ましくは、80~90重量%の範囲の量である、コラーゲン;
止血粉体の組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲の量、好ましくは、2.5~7.5重量%の範囲の量、より好ましくは、4~6重量%の範囲の量である少なくとも1種の単糖
を含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲の量、好ましくは、2~25重量%の範囲、好ましくは、4~15重量%の範囲の量、より好ましくは、5~12.5重量%の範囲の量、さらにより好ましくは、8~10重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカンをさらに含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成する止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量、好ましくは、0.1重量%未満の量の少なくとも1種の凝固因子をさらに含んでなる。
・止血性フロアブル剤を形成するために使用される生理食塩水は、少なくとも1種の凝固因子を含んでなり、前記凝固因子は、生理食塩水の10IU/mL~5000IU/mLの範囲、好ましくは、生理食塩水の25IU/mL~2500IU/mLの範囲、より好ましくは、生理食塩水の50IU/mL~1000IU/mLの範囲、さらにより好ましくは、生理食塩水の100IU/mL~500IU/mLの範囲の量である。
・止血性フロアブル剤を形成するために使用される生理食塩水の質量は、止血粉体の質量の2~10倍の間、好ましくは、止血粉体の質量の4~5倍の間である。
・印刷工程c)は、周囲雰囲気、好ましくは、周囲温度で行われる。
・止血製品が印刷工程c)において形成された後、コーティング工程d)が行われ、凝固因子、特にトロンビンを含む溶液は、止血製品の外表面をコーティングするために使用される。
・コーティング工程d)は、凝固因子を含む溶液を止血製品の外表面に噴霧することにより行われる。
・止血製品が印刷工程c)において形成された後、浸漬工程e)が行われ、止血製品は、凝固因子、特にトロンビンを含む溶液に浸漬される。
・止血製品を製造する最終工程は、印刷された止血製品を周囲雰囲気において所定の休止期間維持することを含み、前記所定の休止期間は、好ましくは、10分未満であり、より好ましくは、5分未満であり、さらにより好ましくは、1分未満である。
・全プロセスは、止血製品のいずれの刺激もすることなく、特に、光刺激または熱刺激をすることなく、周囲雰囲気で行われる。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明から明らかであり、以下の説明は、例示目的でのみ与えられ、制限的なものではなく、添付の図面を参照して理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、印刷用インクとして少なくとも止血性フロアブル剤を使用して、3Dアディティブプリンターで製造される三次元(3D)止血製品の概略図である。
図2図2は、実施例10に記載の電気泳動の結果の例である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本発明者らは、止血性フロアブル剤を形成するために生理食塩水と混合された止血粉体組成物は、架橋されていないコラーゲンから構成されるという事実にもかかわらず、三次元プリンターにおける印刷用インクとして止血性フロアブル剤を使用することにより、三次元(3D)止血製品を製造することが可能であったことを意外にも発見した。
【0039】
下記の説明から明らかであるように、止血性フロアブル剤は、3Dプリンターを用いた容易な堆積を可能とし、互いに堆積した際に自然に連結する連続層により形成される製品の良好な凝集を可能とする構造を有する。
【0040】
以下の説明において、反対する記載がない限り、重量%は、1つの製品、例えば、本開示に定義される止血粉体または止血性フロアブル剤または止血製品の組成物の総乾燥重量に対して与えられる。
【0041】
本発明の文脈において、「止血粉体の組成物の総乾燥重量」および「止血粉体の組成物の総乾燥重量」は、溶媒、特に水を含まない止血粉体の組成物の総重量を指し、したがって、無水製品に対する総重量を指す。
【0042】
同様に、本発明の文脈において、「止血性フロアブル剤の組成物の総乾燥重量」および「止血性フロアブル剤の組成物の総乾燥重量」は、溶媒、特に水を含まない止血性フロアブル剤の組成物の総重量を指し、したがって、無水製品に対する総重量を指す。
【0043】
同様に、本発明の文脈において、「止血製品の組成物の総乾燥重量」および「止血製品の組成物の総乾燥重量」は、溶媒、特に水を含まない止血製品の組成物の総重量を指し、したがって、無水製品に対する総重量を指す。
【0044】
さらに、成分の重量およびそれから得られるパーセンテージは、これらの成分の無水重量に相当し得、言い換えれば、成分が含有し得る水を含まない成分の重量に相当し得る。これは、得られたパーセンテージにも適用され得る。
【0045】
止血性フロアブル剤を形成するために使用される止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して70重量%以上、特に75重量%以上、特に77重量%以上、実際に80重量%以上のコラーゲン含量を含んでなり得る。
【0046】
さらに、止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して99重量%以下、特に96重量%以下、特に93重量%以下、実際に90重量%以下のコラーゲン含量を含んでなり得る。
【0047】
したがって、止血粉体の組成物は、止血粉体の組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、特に75~96重量%の範囲、特に77~93重量%の範囲、実際に80~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなり得る。好ましくは、コラーゲンの含量は、止血粉体の組成物の総重量のおよそ86重量%である。
【0048】
コラーゲンは、哺乳動物における主要構造タンパク質である。コラーゲンは、およそ280~300nmの長さおよびおよそ1.5nmの直径を有するトロポコラーゲン(TC)分子からなる。
【0049】
用語「繊維状コラーゲン」は、繊維の形態にあるコラーゲンを指し、フィブリルの集合体に相当する。繊維は、一般に、1μm~10μmの範囲の直径を有する。用語「フィブリル状コラーゲン」は、フィブリルの形態にあるコラーゲンを指す。より正確には、フィブリルは、一般に、10nm~1μmの直径を有する。したがって、フィブリルは、トロポコラーゲン分子がジグザグに配置された列から形成され、これらのフィブリルは、コラーゲン繊維を形成するために配置され得る。繊維および/またはフィブリル状コラーゲンは、一般に可溶性ではないが、一方、非フィブリル状コラーゲンは、高可溶性である。
【0050】
繊維状コラーゲンおよびフィブリル状コラーゲンの定義は、特に、“Nature designs tough collagen: explaining the nanostructure of collagen fibrils,” in PNAS, August 15, 2006, vol. 103, no. 33, pp. 12285-12290においてMarkus Buehlerにより示された定義であり得る。
【0051】
28種類を超える異なるコラーゲンが発見されており、3つの主要カテゴリー:フィブリル型のコラーゲン、非フィブリル型のコラーゲン、およびFACITコラーゲンに分類される。
【0052】
フィブリル型のコラーゲンは、大部分がフィブリル状および/または繊維状コラーゲンを含んでなるコラーゲンであり、非フィブリル状コラーゲン(例えば、I型のコラーゲン)はいずれもほとんど含まれない。同様に、非フィブリル型のコラーゲンは、大部分が非フィブリル状コラーゲンを含んでなるコラーゲンである。いくつかの非フィブリル型のコラーゲンは、非フィブリル状コラーゲン(例えば、IV型またはV型のコラーゲン)のみからなり得る。
【0053】
コラーゲンの工業的抽出および精製は、一般に、最初の組織を脱構造化して、1)総てまたは大部分の汚染物質タンパク質を除去し、2)製品の最終用途に応じて必要とされる構造化レベルを得ることからなる。コラーゲン抽出は一般に、フィブリル状ではない単分子可溶性コラーゲンの可溶化を可能にする酸性または塩基性条件下で行われる。最終的なコラーゲンは、天然的に、フィブリル状/繊維状コラーゲンおよび非フィブリル状コラーゲンの混合物を含有する。フィブリル状/繊維状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンの割合は、抽出および抽出プロセスに選択された組織に依存する。
【0054】
最終製品は、フィブリル状コラーゲンのみおよび非フィブリル状コラーゲンのみの人工混合物により得られたコラーゲンとは異なる。「Extraction of collagen from connective tissue by neutral salt solutions」と題する論文(Proceedings of the NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES Volume 41 Number I January 15, 1955 by Jerome Gross, John H. Highberger and Francis O. Schmitt)は、先に記載したように、これらの2つのコラーゲンの混合物をもたらす特別な抽出プロセスの後に得られるフィブリル状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンとの間の差を示している。
【0055】
止血性フロアブル剤を形成するために使用される止血粉体において、コラーゲンはフィブリル型であり、コラーゲンの総重量に対して少なくとも60重量%、特に少なくとも70重量%、特に少なくとも75重量%、実際に少なくとも80重量%の量の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなる。
【0056】
より詳しくは、コラーゲンは、止血粉体の組成物におけるコラーゲンの総重量に対して少なくとも85%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、実際に少なくとも98重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなる。
【0057】
好ましくは、組成物は、組成物におけるコラーゲンの総重量に対して85~95重量%、最も好ましくは、85~90重量%の範囲の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなる。
【0058】
したがって、このことは、好ましい実施形態において、止血粉体の組成物は、組成物におけるコラーゲンの総重量に対して5~15重量%、最も好ましくは、10~15重量%の範囲の非フィブリル状コラーゲンの含量を含んでなることを意味する。
【0059】
非フィブリル状コラーゲンに対してこのような割合の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを有する組成物を、特に止血粉体の調製物として使用することは、非常に有利である。実際に、繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンは、止血を行うのに十分な量で存在すべきであり、非フィブリル状コラーゲンも、製品の凝集に十分な量であるが、過剰な膨潤を避けるために多すぎない量で存在すべきである。
【0060】
コラーゲンは、I型コラーゲンまたはI型およびIII型コラーゲンの中から選択され得る。コラーゲンは、総ての種、より詳しくは、ブタ、ウシまたはウマの種から、種々の供給源組織、特に皮膚および/または腱から抽出され得る。
【0061】
コラーゲンは、大部分が、皮膚および/または腱から抽出されたブタ起源の繊維状コラーゲンから構成され得る。腱から抽出されたコラーゲンの場合、抽出は、国際出願WO2010/125086に記載のようなものであり得る。
【0062】
上記のコラーゲン、特に繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンは、酸性抽出または塩基性抽出に由来し得る。特定の実施形態によれば、前記コラーゲンは、塩基性抽出に由来する。特定の実施形態によれば、コラーゲンは、特許出願FR2944706に記載のようなものであり得る。
【0063】
好ましくは、コラーゲンは、抽出されたコラーゲンにおける繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンの含量を最大限にすることができる塩基性抽出に由来する。さらに、このような塩基性抽出は、抽出されたコラーゲン中のフィブリル状/繊維状コラーゲンおよび非フィブリル状コラーゲンの割合を制御するために最適化され得る。酸性抽出とは異なり、塩基性抽出は、プロテオグリカンの加水分解を可能にする。この作用は、組織の脱構造化をもたらし、形状を変化させることなく繊維の分離をもたらす。酸性条件において、繊維中の内部コラーゲン分子の膨潤は、プロセス中にそれらの部分的脱構造化をもたらし、より大量の非フィブリル状可溶性コラーゲンが放出される。
【0064】
コラーゲンは、抽出後そのまま、すなわち、さらなる処理を行わずに使用することができ、または、特に架橋の古典的様式、例えば熱脱水、架橋剤、例えばホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドの使用により;酸化された多糖類により、例えば国際出願WO2010/125086に記載の方法に従って;および/または、酸化されたアミロペクチンまたはグリコーゲンにより、架橋することができる。しかしながら、コラーゲンの架橋は、製造プロセスを複雑にし、止血の有効性が必ずしも増加するわけではないため、好ましくない。
【0065】
したがって、好ましくは、組成物において使用されるコラーゲンは、いずれのさらなる処理を受けず、特に、架橋されない。非架橋コラーゲンを使用することは、特に、製造プロセスを単純化するという利点を有する。
【0066】
止血製品を形成するために使用され得る止血性フロアブル剤において非架橋コラーゲンを使用することも、製品の毒性を増加させ得る製品の分解中における化学物質の浸出を制限するため、非常に有利である。最終製品の再吸収はより速くなり、このような再吸収中には毒性の中間製品は生じないであろう。
【0067】
止血性フロアブル剤に使用される止血粉体の組成物は、少なくとも1種の単糖を、単独でまたは他の単糖との混合物で、さらに含んでなる。前記単糖は、リボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物から選択され得る。単独でまたは単糖との混合物で、止血組成物中に存在する単糖は、特にグルコースである。
【0068】
止血粉体の組成物は、組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、特に1.5~10重量%の範囲、特に2~8重量%の範囲、極めて特に2.5~7.5重量%の範囲の単糖含量を含んでなり得る。最も好ましくは、単糖含量は、組成物の総重量に対しておよそ5重量%である。
【0069】
止血粉体の組成物は、5~100、特に7~65、より特に10~50、さらにより特に11~40の範囲のコラーゲン/単糖重量比を含んでなり得る。最も好ましくは、組成物は、およそ19のコラーゲン/単糖重量比を含んでなる。
【0070】
単糖、特にリボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物、および特にグルコースは、所望の特徴、特に大きさおよび密度を有する、主に繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンおよび単糖を含んでなる粒子を特に得ることができる。コラーゲンの混合物中に単糖を配合することにより、組成物中の電荷をさらに下げることができ、これにより、容器、例えばチューブ、ブロワー、噴霧または塗布ディスペンサーの中に入れるように適合された粉体を形成することができる。これはまた、このような止血粉体を生理食塩水と混合することにより、止血性フロアブル剤の形成を容易にし、得られた止血性フロアブル剤は、3Dアディティブプリンターのための印刷用インクとしての使用に特に有利な特性を有する。
【0071】
極めて特に、単糖の存在により、特に、組成物の粉体の止血特性を改善するという点で、所望の密度および/または大きさの粒子を容易におよび/または安価に得ることができる。
【0072】
いずれの添加剤も用いずにコラーゲン繊維を粉砕することにより、繊維の大きさの減少につながり、粉体の密度が下がる。さらに、最終調製物は、最終製品の操作を妨げる重要な量の電荷を含有する。コラーゲンの粉砕前に単糖を加えることにより、調製物が硬化して混合し、急速な粉砕(変性の制限)を可能にし、したがって、低い電荷(粉体を容器、例えばディスペンサーに入れるのに好適な)および組成物を塗布および再構成するのに好適な最終密度を有する粉体を調製することができる。前述のように、これは、このような止血粉体を使用して、加色印刷のために有利に適合された特異的な特性(特に、粒子の寸法および密度の点でだけでなく、止血性フロアブル剤のレオロジーに関しても)を有する止血性フロアブル剤を形成することも可能にする。
【0073】
予想に反して、単糖のこのような添加は、製品の最終的な活性に影響を及ぼさない。特に、このような添加は、最終製品の生物活性を変化させない。単糖には、止血効果はない。
【0074】
さらに、単糖のこのような添加は、WO01/97873における場合のように、発泡剤として挙動させるものではない。WO01/97873においては、希釈溶液の加熱は、ゼラチンの形成をもたらす。高濃度のゼラチンは、非常に濃縮された溶液を得るために作ることができるが、最終製品は、ゼラチンを含有し、コラーゲンを含有しない。ゼラチンは、コラーゲンよりも止血性が少ないことで知られるが、これは、血小板凝集は、コラーゲンフィブリルの存在、およびゼラチンには存在しない天然コラーゲンの構造を必要とするからである。
【0075】
一つの実施形態によれば、組成物は、コラーゲンおよび、特にリボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物から選択される単糖、特にグルコースを含んでなる、好ましくは、それらからなる粒子を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0076】
組成物は、少なくとも1種の凝固因子を含んでなり得る。前記凝固因子は、当業者に周知である。好ましくは、凝固因子の1つは、トロンビンである。さらにより好ましくは、止血粉体の組成物は、凝固因子としてトロンビンのみを含んでなる。
【0077】
前記凝固因子、特にトロンビンは、動物供給源(動物の組織および液体から抽出)または組換え供給源(遺伝子改変細胞の培養により製造)に由来し得る。凝固因子は、例えば、ヒトの組織および液体から抽出されたトロンビンであってよい。
【0078】
凝固因子、特にトロンビンが存在する場合、その含量は、好ましくは、止血粉体の組成物の総重量に対して0.5重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満である。
【0079】
トロンビンの場合、国際単位(IU)が一般に使用される。したがって、組成物は、組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特に0.05IU/mg~10IU/mg、特に0.1IU/mg~5IU/mg、実際に0.2IU/mg~2IU/mgの範囲のトロンビン含量を含んでなり得る。最も好ましくは、存在する場合、トロンビンの含量は、組成物のおよそ0.83IU/mgである。
【0080】
コラーゲンおよび単糖の混合物に加えて、組成物は、少なくとも1種の他の炭水化物化合物を含んでなり得、これはグリコサミノグリカンであり得る。このような炭水化物化合物は、凝固因子、例えばトロンビンを含有する、またはしない組成物の一部であってよい。
【0081】
前記グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物から選択され得、特に、コンドロイチン硫酸であり得る。
【0082】
グリコサミノグリカンは、血液が止血組成物により吸収される速度を改善することができる。より詳しくは、グリコサミノグリカンは、血液と止血製品、特にコラーゲンとトロンビン、との間の接触を促進することができる。
【0083】
組成物は、組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、特に2~25重量%の範囲、特に3~20重量%の範囲、特に4~15重量%の範囲、極めて特に5~12.5重量%の範囲のグリコサミノグリカン含量を含んでなり得る。最も好ましくは、存在する場合、グリコサミノグリカンの含量は、組成物の総重量のおよそ9重量%である。
【0084】
組成物は、2.5~50、特に3.5~35、より特に5~25、さらにより特に6.5~20の範囲のコラーゲン/グリコサミノグリカン重量比を含んでなり得る。
【0085】
一つの実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種、特に1種の単糖、および少なくとも1種、特に1種のグリコサミノグリカン、特に上記で定義されたようなものを、特に上記で定義された量で含んでなる。
【0086】
炭水化物化合物は、極めて特に、単糖およびグリコサミノグリカンである。
【0087】
組成物は、組成物の総重量に対して2~25重量%の範囲、特に5~23重量%の範囲、特に7~21重量%の範囲、極めて特に10~18重量%の範囲の炭水化物含量を含んでなり得る。
【0088】
組成物は、2~40、特に2.5~30、より特に3~20、さらにより特に3.5~15の範囲のコラーゲン/炭水化物化合物重量比を含んでなり得る。
【0089】
表現「炭水化物化合物の総重量」は、上記で定義された単糖の重量および上記の他の炭水化物化合物の重量を指す。
【0090】
一つの実施形態によれば、組成物は、
主に、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなるコラーゲン、ならびに
少なくとも1種の、特に1種の単糖
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0091】
極めて特に、組成物は、
特に、組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、特に75~96重量%の範囲、特に77~93重量%の範囲、実際に80~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、ならびに
組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、特に1.5~10重量%の範囲、特に2~8重量%の範囲、極めて特に2.5~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖、特にグルコース
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0092】
別の実施形態によれば、組成物は、
主に、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなるコラーゲン、
少なくとも1種の、特に1種の単糖、
少なくとも1種の、特に1種の凝固因子
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0093】
極めて特に、組成物は、
特に、組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、特に75~96重量%の範囲、特に77~93重量%の範囲、実際に80~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、前記コラーゲン含量は、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
組成物の総重量に対して1~12.5重量%の範囲、特に1.5~10重量%の範囲、特に2~8重量%の範囲、極めて特に2.5~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖、特にグルコース、ならびに
組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特に0.05IU/mg~10IU/mg、特に0.1IU/mg~5IU/mg、実際に0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量の少なくとも1種の、特に1種の凝固因子、特にトロンビン
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0094】
別の実施形態によれば、組成物は、
主に、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなるコラーゲン、
少なくとも1種の、特に1種の単糖、ならびに
少なくとも1種の、特に1種のグリコサミノグリカン
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0095】
極めて特に、組成物は、
特に、組成物の総重量に対して70~99重量%の範囲、特に75~96重量%の範囲、特に77~93重量%の範囲、実際に80~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、前記コラーゲン含量は、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲、特に1~12.5重量%の範囲、特に1.5~10重量%の範囲、特に2~8重量%の範囲、極めて特に2.5~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖、特にグルコース、ならびに
組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、特に2~25重量%の範囲、特に3~20重量%の範囲、特に4~15重量%の範囲、極めて特に5~12.5重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0096】
さらに別の実施形態によれば、組成物は、
コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなるコラーゲン、
少なくとも1種の、特に1種の単糖、
少なくとも1種の、特に1種の凝固因子、ならびに
少なくとも1種の、特に1種のグリコサミノグリカン
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0097】
極めて特に、組成物は、
特に、組成物の総重量、特に乾燥重量に対して70~99重量%の範囲、特に75~96重量%の範囲、特に77~93重量%の範囲、実際に80~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、前記コラーゲンは、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の繊維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲、特に1~12.5重量%の範囲、特に1.5~10重量%の範囲、特に2~8重量%の範囲、極めて特に2.5~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖、特にグルコース、
組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特に0.05IU/mg~10IU/mg、特に0.1IU/mg~5IU/mg、実際に0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量の少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビン、ならびに
組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、特に2~25重量%の範囲、特に3~20重量%の範囲、特に4~15重量%の範囲、極めて特に5~12.5重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0098】
極めて特定の実施形態によれば、組成物は、
大部分が繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなる、フィブリル型のコラーゲンであって、前記フィブリル型のコラーゲンは、例えば、塩基性媒体中での抽出により得られ、組成物の総重量に対しておよそ85重量%の量である、コラーゲン、
組成物の総重量に対しておよそ4.9重量%の量のグルコース、
組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの量のトロンビン、ならびに
組成物の総重量に対しておよそ10重量%の量のコンドロイチン硫酸
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0099】
別の特定の実施形態によれば、組成物は、
大部分が繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなる、フィブリル型のコラーゲンであって、前記フィブリル型のコラーゲンは、例えば、塩基性媒体中での抽出により得られ、組成物の総重量に対しておよそ85重量%の量である、コラーゲン、
組成物の総重量に対しておよそ5重量%の量のグルコース、
ならびに組成物の総重量に対しておよそ10重量%の量のコンドロイチン硫酸
を含んでなり、好ましくは、それらからなる。
【0100】
本開示の文脈において、表現「およそX%の量」は、プラスまたはマイナス20%の変動を指す、言い換えれば、およそ10%の量は、8%~12%、特にプラスまたはマイナス10%の変動、実際にプラスまたはマイナス5%の変動を意味する。
【0101】
粉体の形態の凝固因子、特にトロンビンを加える場合、凝固因子のこのような粉体は、好ましくは、すでに調製されたコラーゲン/単糖の均一な分子混合物の粉体と混合する。
【0102】
グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸)および凝固因子(例えば、トロンビン)の両方を加える場合、それらを好ましくは、まず一緒に混合し、この混合物を、前のコラーゲン/単糖の混合物(すでに粉体に粉砕された)に加える。
【0103】
トロンビンは、炭水化物によっても、コラーゲンによっても安定化されない。トロンビンは、単糖の溶液と決して接触しない(WO98/57678と反対に)が、これは、タンパク質の変性、および再度適切に乾燥させることを不可能にする粉体の再水和を防止する。
【0104】
粉体形態の組成物は、特に、
フィブリル型のコラーゲンおよび少なくとも1種の単糖、特にグルコースを含んでなるか、またはそれらからなる粒子であって、特に、前記粒子は、本明細書に定義されるような大きさ、粒度分布および/または密度を有する、粒子、ならびに
場合により、少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸、および/または少なくとも1種の凝固因子、特にトロンビンを含んでなるか、またはそれらからなる粒子であって、特に、前記粒子は、本明細書に定義されるような大きさ、粒度分布および/または密度を有する、粒子
を含んでなり得るか、またはそれらからなり得る。
【0105】
上記で説明したように、提案された止血粉体は、止血粉体の使用に適合された粉砕、特に、小さな寸法、特に500μm未満、より好ましくは350μm未満の粒子を得るための粉砕を可能にするという利点を有する。
【0106】
止血粉体の組成物は、有利には、例えば、大きさが200μm~400μmの間の少なくとも50重量%の粒子を含んでなり得る。
【0107】
止血粉体を構成する粒子は、有利には、10μm~500μm、特に50μm~400μmの範囲の平均粒度分布を有する。
【0108】
有利には、前記止血粉体を構成する粒子の少なくとも90重量%、特に100重量%が、メッシュが500μm、特に400μmであるスクリーンを通過することができる。
【0109】
前記止血粉体を構成する粒子の少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%が、メッシュが10μm、特に20μm、実際に30μm、実際に50μmであるスクリーンにより保持され得る。例えば、前記止血粉体を構成する粒子の少なくとも90重量%、好ましくは90重量%が、メッシュが20μmであるスクリーンにより保持され得る20μmを超える大きさを有する。
【0110】
具体例によれば、止血粉体の組成物は、大きさが200μm未満の少なくとも50重量%の粒子、大きさが350μm未満の90重量%の粒子、大きさが400μm未満の98重量%の粒子を含んでなるように形成される。この場合において、止血粉体を構成する粒子は、有利には、20μm~300μm、好ましくは25μm~270μmの範囲の平均粒度分布を有する。例えば、止血粉体を構成する粒子の80重量%は、20μm~300μmの範囲の粒度分布を有する。止血粉体のこのような具体例は、以下により詳細に説明する3Dアディティブプリンターにおいて使用される止血性フロアブル剤を形成するために、特に有利である。
【0111】
粉体の再分配は、好ましくは、粉体が水和されるのを可能にするように選択される。粒子の大きさが小さすぎる場合、粉体は、要求される規格およびアスペクトと一致する水和マトリックスを形成しない。
【0112】
粉体形態の止血組成物は、特に、
コラーゲンおよび単糖を含んでなる粒子、ならびに
場合により、少なくともグリコサミノグリカンおよび/または凝固因子、例えばトロンビン
を含んでなる。
【0113】
止血粉体の組成物は、
コラーゲン、単糖ならびに場合により少なくとも1種のグリコサミノグリカンおよび/または凝固因子を含んでなる粒子、
コラーゲン、単糖および場合により凝固因子を含んでなる粒子ならびに場合によりグリコサミノグリカン粒子、
コラーゲンおよび単糖を含んでなる粒子ならびに少なくとも1種のグリコサミノグリカンおよび/または凝固因子を含んでなる粒子
を含んでなり得る。
【0114】
本発明の文脈において、表現「乾燥粉体」は、組成物が、限られた含量の溶媒、特に水を含んでなることを意味する。前記限られた含量は、組成物の総重量に対して5重量%未満、特に3重量%未満、極めて特に1重量%未満であり得る。
【0115】
前記乾燥形態は、使用される溶媒の単純な蒸発により、有機溶媒による脱水により得ることができる。
【0116】
上記に示したように、説明した止血粉体は、非架橋コラーゲンから形成されるが、その理由は、製造プロセスの点でかなり簡単であるからであり、粉体のコラーゲンは架橋されなかったものの、止血に関して良好な有効性を有することが証明されている。
【0117】
本発明者らは、コラーゲンは架橋されなかったにもかかわらず、上記の特異的な止血粉体を生理食塩水と混合することにより、例えば、3Dアディティブプリンターによる連続層に堆積された原料として止血性フロアブル剤を使用して、複雑な3D止血製品を形成するためにその使用を可能とするレオロジー、特に粘度を有する止血製品を形成することができたことを意外にも発見した。
【0118】
このことは、実際には予想されなかったが、その理由は、反対に、コラーゲンを基剤とする粉体と生理食塩水との混合物からの止血コラーゲンペーストの調製は、機能し、安定にするために架橋コラーゲンの使用を必要としたことが知られていたからであった。これは、特に、参照US4,891,359の下で1990年1月2日発表された米国特許において開示されている。すなわち、架橋は、化学結合を対応する分子構造に付加することにより、分子に安定性を付与することで知られ、これらの付加的な化学結合は通常、分子が水性形態になるのに必要とされる。
【0119】
従来の3Dアディティブプリンター、特に押し出しにより機能する3Dプリンターの印刷プロセスを必ずしも採用する必要なく、このような止血性フロアブル剤を3Dプリンターに直接使用して、3D止血製品を形成できたことも予想されなかった。
【0120】
したがって、好ましい実施形態によれば、3Dプリンターにおける印刷用インクとして使用される止血性フロアブル剤を形成するために、コラーゲンが架橋されていない上記の乾燥止血粉体は、したがって、例えば生理食塩水または水で水和されるべきである。
【0121】
本明細書で使用する場合の用語「フロアブル剤」は、その粘稠性により、いずれの応力もかけることなく組成物が特定の形状を維持できる一方で、応力、例えば圧力が組成物にかけられた場合は変形可能な、組成物に適用される。製品の流動を開始するのに必要な最小剪断応力は、降伏応力に相当する。
【0122】
フロアブル剤は、液体でも、スポンジでも、粉体でもなく、むしろ、特定の粘度を呈する一種のペースト、ゲルまたはマトリックスであり、このような粘度は、フロアブル剤にかけられる応力に依存する。
【0123】
好ましくは、フロアブル剤は、応力がかけられない場合、または低い応力(例えば、10Pa未満)がかけられた場合、20Pa.s~10000Pa.sの間(0.0001(Pa.s)-1~0.05(Pa.s)-1の間の流動性の範囲に相当)に含まれる粘度を有する。しかしながら、フロアブル剤は、例えば、高い応力に対しては1000Pa.s~1000000Pa.sの高い粘度を有し得る。
【0124】
フロアブル剤は、例えば、シリンジおよび/またはカニューレを通過することができる組成物を指す。有利には、フロアブル剤は、以下で説明するように、3Dプリンターのプリンターヘッドのノズルを通過することもできる。
【0125】
本明細書において、本発明者らは、同じ特定の組成物を指定するために、止血性フロアブル剤、流動性止血剤、および止血マトリックスに公平に言及する。
【0126】
したがって、止血粉体および生理食塩水の混合を行い、上記で定義される止血性フロアブル剤を調製するが、その止血性フロアブル剤において、止血粉体は、水または生理食塩水に懸濁されている。
【0127】
止血性フロアブル剤を製造するために使用される止血粉体は、例えば、少なくとも以下の工程:
a)主に繊維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなるフィブリル型のコラーゲン、および単糖、例えばグルコースを含んでなる、好ましくは、それらからなる水性懸濁液を形成する工程、
b)沈殿物、ペーストまたはゲルの形態の生成物を、特に遠心分離またはデカンテーションにより回収する工程、
c)生成物を、例えば蒸発により乾燥させる工程、
d)生成物を所望の粒子径に、特にハンマーミルにより粉砕する工程、ならびに
e)場合により、トロンビンおよび/またはコンドロイチン硫酸を、特に固体形態で、特に粉体形態で加える工程
を含んでなる方法に従って調製することができる。
【0128】
工程a)における繊維状/フィブリル状コラーゲンおよび単糖を含んでなる水性懸濁液の形成は、コラーゲン分子の周囲への単糖の均一な再分配をもたらす。さらに、コラーゲンの分子種と単糖との間の緊密な接触により、脱水後、必要な高密度を有する粉体を粉砕により得るのに好適な硬質のケーキが得られる。反対に、コラーゲン粉体およびグルコース粉体を混合しても、特に密度および電荷の理由から、均一かつ噴霧可能な粉体には至らない。
【0129】
工程a)において、コラーゲンは、30g/L~150g/Lの範囲の濃度で存在し得る。
【0130】
単糖は、本明細書で定義されるような量で、より詳しくは、コラーゲンの重量に対しておよそ2~5重量%の量で、懸濁液または均一なコラーゲンペーストに加えることができる。
【0131】
工程a)において、単糖は、0.3g/L~10g/Lの範囲の濃度で存在し得る。
【0132】
工程a)のコラーゲンの水性懸濁液は、酸であり得、特に酸、例えば塩酸を含んでなり得る。前記酸は、0.01M~0.5Mの範囲、特に0.02M~0.1M、実際におよそ0.05Mの濃度で存在し得る。前記懸濁液は、均一なペーストの形態であり得る。
【0133】
工程b)は、懸濁液を型に注ぐことを含んでなり得る。
【0134】
工程c)は、非常に高い密度を有し、ケーキ内に気泡ができる限り少ない(5%未満)、できる限り厚い(最終粒子径より上が望ましい)ケーキを得るために行われる。
【0135】
工程d)の後に、特に所望の粒子径を得るために、粉体のスクリーニングの工程を行うことができる。
【0136】
好ましい実施形態によれば、工程a)は、95重量%のフィブリル型の非架橋コラーゲンおよび5重量%の単糖(例えば、グルコース)を含んでなる混合物を形成することからなる。
【0137】
前述のように、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸)を、フィブリル型の非架橋コラーゲンおよび単糖により形成された混合物に加えることができる。好ましくは、このようなグリコサミノグリカンは、70/30~100/0の範囲の混合物/グリコサミノグリカン重量比、好ましくは、80/20、または85/15、または90/10または95/5の重量比で加えられる。そのような重量比は、フィブリル型の非架橋コラーゲンおよび単糖により形成されたいずれの種類の混合物にも使用することができる。
【0138】
例えば、95/5の重量比において、止血粉体の組成物は、95%のコラーゲンおよび5%のグルコースから構成される95重量%の混合物、ならびに5重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなり得る。したがって、止血粉体は、90.25重量%のコラーゲンおよび4.75重量%のグルコース、および5重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなる。
【0139】
あるいは、85/15の重量比において、止血粉体の組成物は、95%のコラーゲンおよび5%のグルコースから構成される85重量%の混合物、ならびに15重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなり得る。したがって、止血粉体は、80.75重量%のコラーゲンおよび4.25重量%のグルコース、および15重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなる。
【0140】
あるいは、80/20の重量比において、止血粉体の組成物は、95%のコラーゲンおよび5%のグルコースから構成される80重量%の混合物、ならびに20重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなり得る。したがって、止血粉体は、76重量%のコラーゲンおよび4重量%のグルコース、および20重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなる。
【0141】
あるいは、90/10の重量比において、止血粉体の組成物は、95%のコラーゲンおよび5%のグルコースから構成される90重量%の混合物、ならびに10重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなり得る。したがって、止血粉体は、85.5重量%のコラーゲンおよび4.5重量%のグルコース、および10重量%のコンドロイチン硫酸を含んでなる。
【0142】
具体例によれば、止血性フロアブル剤を製造するために使用される止血粉体の組成物は、最終組成物が、
コラーゲン:組成物の総重量に対して86.36重量%;
グルコース:組成物の総重量に対して4.54重量%;
コンドロイチン硫酸:組成物の総重量に対して9.09重量%
を含んでなるように、混合物の総重量の10重量%の含量でコンドロイチン硫酸を含んでなる。
【0143】
トロンビンも加える場合、トロンビンは、組成物の総重量に対して0.01重量%未満の最終含量を示す。上記の混合物において、トロンビンは、組成物の0.083IU/mgの量であってよい。
【0144】
上記の総ての粉体製品に関して、多かれ少なかれ徹底的な粉砕を行い、粉砕の種類およびその期間によって、様々な粒子径の粉体を得ることが可能である。
【0145】
説明したように、次に、止血粉体を生理食塩水に懸濁させる。生理食塩水は、好ましくは、手術室で使用される標準的な滅菌生理食塩水である。
【0146】
生理食塩水の組成物は、0~300mMの範囲の濃度、好ましくは、100~200mMの範囲の濃度、特に、約150mMの濃度の一価または二価の塩化物陽イオン、例えば、塩化カルシウムまたは塩化ナトリウムを含んでなり得る。
【0147】
生理食塩水の組成物は、好ましくは、0.5%~1.5%の間、好ましくは、およそ0.9%の塩化ナトリウムの量を有する蒸留水から構成される。
【0148】
生理食塩水は、好ましくは純粋である、すなわち、生理食塩水は、他のいずれの成分も加えずに、蒸留水中の塩化ナトリウムの混合物からなることを意味する。
【0149】
あるいは、生理食塩水は、凝固因子、例えばトロンビンを含んでなり得る。この場合、生理食塩水と混合される止血粉体は、好ましくは、いずれの凝固因子も含まない。
【0150】
例えば、凝固因子は、生理食塩水の10IU/mL~5000IU/mLの範囲、好ましくは、生理食塩水の25IU/mL~2500IU/mLの範囲、より好ましくは、生理食塩水の50IU/mL~1000IU/mLの範囲、さらにより好ましくは、生理食塩水の100IU/mL~500IU/mLの範囲の量である。
【0151】
生理食塩水は、異なる形態で、例えば、大きな容器中のバルク、または所定容量の特定の容器で保存することができる。
【0152】
好ましくは、生理食塩水は、止血性フロアブル剤を製造するためのキットの一部であり、このようなキットはまた、容器中の特定量の止血粉体を含んでなる。
【0153】
止血粉体から構成される止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して60~99重量%の範囲、特に75~90重量%の範囲、極めて特に83~88重量%の範囲の乾燥非架橋フィブリル状コラーゲン含量を含んでなり得る。
【0154】
止血粉体から構成される止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲、特に3~7重量%の範囲、極めて特に4~5重量%の範囲の単糖含量、特にグルコースを含んでなり得る。
【0155】
止血粉体から構成される止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、特に5~12重量%の範囲、極めて特に8~10重量%の範囲のグリコサミノグリカン含量(凍結乾燥、乾燥粒子)、特にコンドロイチン硫酸を含んでなり得る。
【0156】
止血粉体から構成される止血性フロアブル剤の組成物は、組成物の総重量に対して1重量%未満の含量の凝固因子、好ましくはトロンビンを含んでなり得る。好ましくは、凝固因子が存在する場合、その含量は、組成物の総重量に対して好ましくは0.5重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満である。
【0157】
場合により、止血粉体から構成される止血性フロアブル剤の組成物は、架橋開始剤、特に酸化グリコーゲンもしくはレチノール、または光開始剤を含んでなり得る。それらの開始剤は、止血製品の製造に必ずしも必要ではないが、むしろ、止血製品を後で機能させるのに役立つであろう。このような架橋開始剤または光開始剤は、特異的な刺激のみに対する止血製品における反応を可能にするように選択される。特に、架橋開始剤に関しては、架橋は自然には生じず、架橋開始剤が活性化されなければならない。
【0158】
特定の量の生理食塩水と混合された止血粉体から構成される止血性フロアブル剤は、止血剤として使用することができる。
【0159】
この止血性フロアブル剤は、医薬組成物、特に止血薬として使用することもできる。
【0160】
前述のように、止血性フロアブル剤は、3D止血製品を作製するのに好適であり、3Dプリンターに有利に直接使用することができる。
【0161】
好ましくは、止血性フロアブル剤は、あらゆる種類の3Dプリンター、特に、いわゆるバイオプリンター、例えば、原料の押し出しにより機能する3Dプリンターにおける印刷用インクを形成する原料として使用可能である。
【0162】
3Dプリンターがいくつかの印刷ヘッドを含んでなる場合、異なる組成物のいくつかの印刷用インクが通常使用され、それらの少なくとも1つは、提案された止血性フロアブル剤である。特定の場合において、異なる組成物のいくつかの止血性フロアブル剤は、3Dプリンターにおける印刷用インクとして使用される。
【0163】
バイオプリンターに関しては、2015年にBiomaterialsにおいて発表された「Current advances and future perspectives in extrusion-based bioprinting」と題するIbrahim T. OzbolatおよびMonika Hospodiukの論文に言及することができ(Biomaterials 76 (2016) 321-343参照)、その全内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0164】
止血性フロアブル剤を3Dプリンターに使用するために調製する前に、総ての有効成分を、特定の容器内に、粉体形態でひとまとめに入れることができる。これは、いくつかの側面にとって非常に有利である。第1に、製品の保存が容易になるが、その理由は、止血粉体を有する容器に特に注意を払わなければならないが、一般に入手可能な製品である生理食塩水には実際には注意を払う必要はないからである。
【0165】
これは、製造の点でも非常に有利であるが、その理由は、止血粉体のみを保存前に滅菌しなければならないが、これは例えば、いくつかの成分が最初に生理食塩水(例えば、トロンビン)と混合されて、次いで止血粉体に混合される場合は、当てはまらないと思われるからである。
【0166】
凝固因子、例えばトロンビンが、止血粉体または生理食塩水に使用されない場合、止血製品の製造の最後に、この凝固因子を加えることを検討可能であることに留意すべきである。
【0167】
この観点において、止血製品は、例えば、凝固因子を含んでなる溶液に浸漬することができる。
【0168】
凝固因子を含んでなる溶液は、止血製品の外表面をコーティングするために使用することもできる。このようなコーティングは、例えば、止血製品の外表面に前記溶液を噴霧することにより、行うことができる。
【0169】
場合により、説明されるように、3D印刷により作製される止血製品は、製造プロセスの最後に滅菌することもでき、したがって、止血粉体は、滅菌する必要がないであろう。
【0170】
容器は、3Dプリンターに直接使用可能なカートリッジの形態を有することができる。
【0171】
好ましくは、3Dアディティブプリンターを用いて3D止血製品を製造するために使用される止血性フロアブル剤を調製するために、止血組成物を水和させるために使用される生理食塩水の質量は、止血粉体の質量の2~10倍の間、好ましくは、止血粉体の質量の4~5倍の間である。
【0172】
提案された止血性フロアブル剤には、バイオプリンターによる印刷適性を保証するレオロジーを有するという利点がある。
【0173】
特に、止血性フロアブル剤は、プリンターの印刷ヘッドを通過するのに、およびプリンターノズルの閉塞を避けるのに十分低い寸法(一般に400μm未満)の粒子を有する。
【0174】
好ましくは、止血性フロアブル剤の降伏応力は、500Pa~20000Paの間、好ましくは、15000Pa未満、さらにより好ましくは、1000Pa~3000Paの間に含まれる。
【0175】
印刷用インクカートリッジのための止血粉体の量は、1g~2gの間であり得る。
【0176】
したがって、このような印刷用インクカートリッジにおける生理食塩水の量は、4mL~10mLの間、より好ましくは、5mL~10mLの間である。
【0177】
好ましい例によれば、印刷用インクカートリッジの印刷用インクは、7mLの純生理食塩水と混合された1.65gの止血粉体から構成される止血性フロアブル剤である。
【0178】
より大きな容量の印刷用インクカートリッジを提供することを検討することができるが(特に、印刷される3D止血製品が大容量を有する場合)、止血性フロアブル剤を形成するための止血粉体と生理食塩水の量の比は、好ましくは、上記と同じままとする。例えば、印刷用インクカートリッジは、70mLの純生理食塩水と混合された16.5gの止血粉体から構成される止血性フロアブル剤を含む。
【0179】
止血粉体を含有する容器に生理食塩水を移す場合、止血粉体への生理食塩水の取り込みを容易にするために、前記容器を、好ましくは、例えば、それ自体の軸を中心に回転させる。生理食塩水が使用者によって手動で取り込まれる場合、容器の回転は、手動で行うこともできる。しかしながら、プロセスは必要に応じて自動化することができる。
【0180】
生理食塩水を移しながら、容器をタップするおよび/またはわずかに振り混ぜることも、止血粉体への生理食塩水の取り込みを促進するために有利であり得る。
【0181】
一度生理食塩水を容器に移したら、容器を密閉し、撹拌して、止血粉体を生理食塩水と混合する。撹拌は、スパチュラを用いて、または振り混ぜることにより、成分を混合することによって行うことができる。
【0182】
撹拌は、好ましくは、5秒~60秒の間の時間、さらにより好ましくは、少なくとも30秒間、例えば20秒間行う。しかしながら、10秒~30秒の間、例えば20秒の振り混ぜ時間が、止血粉体の水和という点で、すでに効率的である。
【0183】
振り混ぜは、好ましくは手動で行うが、自動化することもできる。
【0184】
手動で行う場合、混合または振り混ぜは、容器を上下に特定の回数動かすことからなり得る。例えば、ディスペンサーを、上下に少なくとも10~30回、好ましくは20回動かすことができる。混合の効率を上げるために、ディスペンサーを反転した後、上下に特定の回数動かすこともできる。手動による混合のこの第2段階において、ディスペンサー1を、上下に少なくとも10~30回、好ましくは20回動かすこともできる。
【0185】
振り混ぜた後、形成されている止血性フロアブル剤を封入している容器を、好ましくは、少なくとも30秒間、好ましくは、少なくとも60秒間、さらにより好ましくは、少なくとも90秒間放置する。
【0186】
放置時間は、おそらく、30秒~120秒の間、好ましくはおよそ90秒である。
【0187】
この休止期間により、止血粉体の水和、および水和した止血性フロアブル剤を形成するための最初の膨潤が可能となる。
【0188】
止血性フロアブル剤は、室温で調製することができ、1分~数時間放置することができる。最大膨潤は、5分未満で達成され得る。
【0189】
止血性フロアブル剤の上記の調製は、バイオプリンターに使用されるカートリッジ内で、または止血性フロアブル剤が印刷用カートリッジに移される前の中間容器内で、直接行うことができる。
【0190】
このように形成された止血性フロアブル剤は、均一であるという利点を有する。特に、止血性フロアブル剤は、容器内で実質的に均一な流動性を有する。これは特に有利であるが、その理由は、止血性フロアブル剤の堆積は、それが容器からの材料の最初のものであるか、または材料の残りであるかどうかを問わず、同一となるからである。
【0191】
生理食塩水による止血粉体の水和を通じて、止血性フロアブル剤が一度形成されたら、止血性フロアブル剤は、特性または性能を失うことなく、数時間、例えば、少なくとも8時間使用可能である。
【0192】
図1は、3Dアディティブプリンター20(そのうち、堆積ノズル21および印刷用インク容器22のみを示している)を用いた、3D止血製品の製造の概略図である。
【0193】
印刷プロセスは、好ましくは、周囲雰囲気、室温で行われる。
【0194】
このプロセスは、例えば手術室において直接3D止血製品の印刷を可能とする利点を有する。印刷プロセスは、当然のことながら、任意の他の部屋、特に手術室の外で、いずれの外科手術とも独立して行うこともできる。
【0195】
あるいは、3D止血製品は、処置される患者の表面に直接、例えば、手術中の患者の出血領域または出血創傷部に直接印刷することができる。
【0196】
しかしながら、止血製品を、処置される患者の表面に必ずしも直接印刷する必要はない。印刷プロセスは、患者なしで、患者の外側で、特に、患者のいずれかの手術領域の外側で行うことができる。
【0197】
3Dプリンター20のノズル21は、印刷用インク容器22から止血性フロアブル剤23を支持体24に堆積させて、連続層11を互いに形成し、3D止血製品10を製造するために使用される。
【0198】
3Dプリンターは、止血性フロアブル剤を含んでなる、好ましくはそれからなる原料の空間パターンを生み出すため、および3D止血製品10の作製のためにコンピューター支援交互累積膜法を用いてそれを組み立てるために制御される。
【0199】
好ましくは、製造される3D止血製品は、3Dアディティブプリンター20に入力データとして提供される三次元モデルにより定義され得る形状を有する。
【0200】
3Dアディティブプリンター20は通常、3Dモデルを処理して、3Dモデルに対応する層のスタックを形成するために互いにスタックされるように設計された複数の層の印刷パターンを定義するように設定された処理装置を含んでなる。この印刷パターンは、印刷用インクとして使用される原料、および製造される3D止血製品の性質にも依存する。
【0201】
最も単純な3D止血製品は、自然にともに連結された層のスタック(層がまとめられているといわれる)に配置された、単一の材料、すなわち止血性フロアブル剤から実際に構成される。自然にともに連結されたとは、2つの隣接する層をともに連結させるさらなる能動的なプロセスが必要ないこと、特に、架橋は必要ないことを意味する。
【0202】
互いに印刷される層は、自己集合によってともに連結される。架橋現象はみられず、層間には共有結合は形成されない。
【0203】
実際に、止血製品の印刷に使用される提案された止血性フロアブル剤は、自己集合を促進する高濃度のポリマー(コラーゲンの濃度に起因する)を有する。
【0204】
さらに、提案された止血性フロアブル剤は、この自己集合をさらに促進するフィブリル型の非架橋コラーゲンから主に構成される。
【0205】
最後に、提案された止血性フロアブル剤は、印刷を通じた製品の製造にとって特に興味深い自己集合を可能にするチキソトロピー特性を有する。
【0206】
バイオプリンターが、提案された止血性フロアブル剤に対して、降伏応力を上回る拘束を発揮する場合、このような止血性フロアブル剤の粘度は減少し、印刷プロセスが可能となる。このような現象は、剪断減粘という。
【0207】
このような剪断応力がプリンターにより与えられた後、提案された止血性フロアブル剤は、別の層が第1の層に印刷されながら、それらの層を印刷するのに使用される材料の混合を可能にするのに十分長く、かつ印刷された製品が迅速に凝集性および安定となるのに十分短い所定の時間で、その元の拘束されていない、より粘性および安定の状態に戻ることを可能にするチキソトロピー特性を有する。
【0208】
好ましくは、堆積の後、提案された止血性フロアブル剤は、10分未満、より好ましくは、5分未満、さらにより好ましくは、1分未満または30秒未満で、その元の拘束されていない状態に戻る。
【0209】
層のスタックの外層の1つのみ、または両方の外層(上層および底層)が、止血性フロアブル剤の堆積で構成されており、一方、外層間に挟まれた中間層の一部または全部が、これも3Dプリンターで堆積されるように適合された別の材料から構成されている、3D止血製品とすることも検討することができる。
【0210】
例えば、3Dプリンターを用いて人工身体部分(例えば、腱、軟骨、半月板、椎間板などの部分)を形成し、それを止血性フロアブル剤でコーティングして、患者の身体内へのその埋込および対応する治癒プロセスを改善することを検討することができる。
【0211】
3D製品の上層および底層のみが止血特性を有すること(これは、それらの外層のみが止血性フロアブル剤で構成されている場合である)を避けるために、印刷プロセスを、各層がいくつかの印刷用インクから構成されるように制御することができる。したがって、止血性フロアブル剤で構成される周辺部分を有する中間層を形成することが可能となる。加色印刷のこの方法は、止血特性を有するエンベロープ(外壁)を有する3D製品を製造することを可能とするが、3D製品の中心は、異なる材料から構成され得る。
【0212】
異なる組成物の止血性フロアブル剤から構成される異なる印刷用インクを用いて、3D止血製品を形成することも検討することができる。これは例えば、異なる止血特性の層を有する多層製品を提案するために有用であろう。
【0213】
有利には、3Dアディティブプリンター20は、複数のノズルディスペンサーを備えた押し出しプリンターであり得、各ノズルディスペンサーは、異なる印刷用インクと関連している。これは、異なる層から構成される3D止血製品を好都合に印刷することを可能にするという利点を示し、各層は、異なる印刷用カートリッジに含まれる異なる組成物から構成され得る。特に、1つの層は、各々が、異なる印刷用インク、特に、異なる止血性フロアブル剤を用いて印刷されるいくつかの部分を有し得る。
【0214】
さらに、3D止血製品の各層は、異なるパターンから構成され得、重なった層は、様々な方向およびパターンで印刷することができる。
【0215】
3D止血製品10は、二次元(2D)層を重ねることにより、作製することができる。
【0216】
上記に示したように、2D層は、層のいくつかの部分を形成する種々の止血性フロアブル剤組成物で構成され得る。
【0217】
有利には、2D層は、異なる止血粉体を有するいくつかの止血性フロアブル剤を用いて、いくつかの部分を形成することにより、止血勾配を有するように形成することができる。
【0218】
上記に示したように、2D層は、様々なパターン、例えば、曲線、円、多角形、点、波で印刷することができる。
【0219】
重なった層の間または1つの層内で、パターンは、異なる方向を示すことができる、例えば、パターンは、垂直な方向、または様々な角度の対角の方向をとることができる。さらに、1つの層内で、パターン間の距離を変えることもできる。
【0220】
さらに、重なった層は、異なる厚さ、形状および寸法をとることができる。
【0221】
2D層は、完全に充填されるか、あるいは空隙を示すことができる。
【0222】
結果として、複雑な形状を有する止血製品を印刷することができる。それらの印刷された止血製品は、特定の機能を有する領域、および異なる機能を有するいくつかの領域を有することもできる。
【0223】
印刷された止血製品は、経時的に、例えば水和時に変わり得る形状を有するように調製することもできる。より正確には、印刷された止血製品は、3D止血製品、すなわち、経時的な製品の変形に相当する第四次元を有する、三空間次元に従った形状を有する製品である。第四次元を有するこのような3Dの印刷された製品は、4D製品ともいう。
【0224】
2016年にNature Materialsにおいて発表された「Biomimetic 4D printing」と題するA. Sydney Gladmanらの論文に言及することができ(Nature Materials 第15巻, 413-418頁(2016)参照)、その全内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0225】
これは、例えば、各層、または少なくとも2つの異なる層が、例えば水和時に、異なる止血特性および/または膨潤特性を有し得る3D止血製品を製造することを可能とする。
【0226】
最終的な印刷された止血製品の組成物は、組成物の総重量に対して60~99重量%の範囲、特に75~90重量%の範囲、極めて特に83~88重量%の範囲のフィブリル状コラーゲン含量、好ましくは、部分的フィブリル状コラーゲン含量を含んでなり得る。
【0227】
印刷された止血製品の組成物は、組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲、特に3~7重量%の範囲、極めて特に4~5重量%の範囲の単糖含量を含んでなり得る。
【0228】
印刷された止血製品の組成物は、組成物の総重量に対して1~30重量%の範囲、特に5~12重量%の範囲、極めて特に8~10重量%の範囲のグリコサミノグリカン含量を含んでなり得る。
【0229】
印刷された止血製品の組成物は、組成物の総重量に対して1重量%未満の含量の凝固因子、好ましくはトロンビンを含んでなり得る。好ましくは、凝固因子が存在する場合、その含量は、組成物の総重量に対して好ましくは0.5重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満である。
【0230】
3D止血製品を作製するために使用される止血性フロアブル剤におけるコラーゲンの存在は、製品の凝集、特に、製品の異なる層の間の凝集にとって必要である。非架橋フィブリル状コラーゲンの使用は、特に有利である。さらに、フィブリル状コラーゲンを使用することは、止血を促進する助けとなる。
【0231】
前述のように、止血性フロアブル剤は、印刷プロセスを促進し、自己集合製造プロセスによる止血製品の製造を可能にする高濃度のポリマー(コラーゲンの濃度に相当)を有する。特に、それは、さらなる強化工程の必要なく、例えば、自然架橋または強制架橋を介して、例えば光刺激または熱刺激により、凝集性、自立性、および抵抗性である印刷された止血製品の製造を可能にする。
【0232】
先に説明したように、単糖、特にグルコースは、特に、組成物内の電荷を低減するため、止血粉体の調製に好都合に使用される。
【0233】
さらに、単糖は、その親水性のためにも使用することができ、一般に電荷分極され、水素結合することができる。これにより、これらの分子は、水だけでなく、他の極性溶媒に可溶になる。単糖は、潜在的な凝固因子の保存にとっても有用であり得る。
【0234】
グリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸も、非常に親水性である。印刷された止血製品の製造に使用される止血性フロアブル剤の組成物中のグリコサミノグリカンの割合によって、印刷された製品の膨潤特性が変動する。より正確には、その割合は、特定の止血性フロアブル剤で得られるパターンの膨潤特性に影響を及ぼす。
【0235】
コンドロイチン硫酸は、膨潤を介した水和時の製品の変形を促進するため、異なる濃度のコンドロイチン硫酸を有する層の重ね合わせから構成される止血製品を印刷することは、特に有利であり得る。
【0236】
例えば、コンドロイチン硫酸に富む層は、主にコラーゲンから構成され、コンドロイチン硫酸が少ない層よりも膨潤し得る。印刷された止血製品における水和および膨潤の変動は、例えば出血創傷部を覆うために、水和時に止血製品を変形および/または膨張させるために使用され得る。
【0237】
止血性フロアブル剤におけるグリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸の使用も有利であるが、それは印刷プロセスを助けるからである。より正確には、それは、滑沢剤がそうすることができるように、バイオプリンターの印刷ヘッドのノズルを介した止血性フロアブル剤の流動を促進するようである。
【0238】
止血製品の製造プロセスのいずれかの工程で加えることができる凝固因子、例えばトロンビンは、凝固を促進するために使用される。異なる止血性フロアブル剤を使用して3D止血製品の異なる層を印刷する場合、凝固因子を含有する止血性フロアブル剤は、標的とする区域のみ、例えば、凝固が必要な区域において印刷され得る。
【0239】
提案された3D印刷プロセスで作製された3D止血製品は、3Dプリンターを用いて製造されてからすぐに、例えば数分以内に使用することができる。バイオプリンターによる作製プロセスは、好都合であり、自動化されているため、3D止血製品は、予め指定されたテンプレートに従って、例えば、治癒する創傷部位または出血部位に応じて、直ちに使用するために印刷することができる。
【0240】
有利には、止血製品は、乾燥させ、出血部位に乾燥した状態で適用することができる。より後の段階で、例えば、この上記の最適な使用推奨の十分後に、3D止血製品を使用することが望まれる場合、3D止血製品は、例えば周囲雰囲気でおよび/またはオートクレーブ中で部分的に乾燥させることができる。この場合、止血製品は、創傷に適用する前に再水和することができる。3D止血製品を使用しなければならない領域の周囲の血液によって、3D止血製品は再水和され得るため、絶対に必要というわけではないが、3D止血製品を使用前に再水和することが好ましい。
【0241】
印刷された3D止血製品は、コラーゲン三重らせん構造をより良く保つために、室温で乾燥するか、または凍結乾燥することができる。
【0242】
上記に示したように、提案された止血性フロアブル剤は、凝集性のスタックされた層を形成するために、加色印刷プロセスの前またはその間に、いずれの架橋も必要としないという利点を有する。しかしながら、層の連結をより精密に制御し、より複雑な印刷パターンをおそらく実施するために、印刷プロセス中に架橋を行うことを検討することができる。このような架橋は、例えば、集束UV照射または任意の適合した化学的架橋プロセスを使用して、行うことができる。
【0243】
さらに、印刷された3D止血物体は、乾燥させる前または乾燥させた後に架橋することができる。架橋は、強化された局所区域を作り出すため、または印刷された形状を局所的に固定するために、局所的であり得る。これは、操作に対する高い抵抗性および高い出血流強度を有する製品を作製するために特に有利である。しかしながら、このような架橋工程は、凝集性、自立性、および抵抗性である印刷された3D製品をもたらすための印刷プロセスに必ずしも必要ではないことに留意しなければならない。
【0244】
あるいは、架橋は、止血製品を強化するため、特に、その膨潤および変形を妨害または制限するために、止血製品全体に関係し得る。
【0245】
局所的または一般的な架橋は、熱、光、または任意の好適なプロセスによって誘導され得る。
【0246】
上記で説明したように、特異的な架橋が必要な場合、止血製品を印刷するために使用される止血性フロアブル剤上の組成物内に架橋開始剤を入れることが好ましい。
【0247】
止血製品が凝固因子を欠く場合、止血製品は、乾燥の前または後に、凝固因子、例えばトロンビン溶液を用いて、浸漬する、軽く浸す、噴霧することができる。あるいは、凝固因子は、製品に吸収または堆積させることができる。
【0248】
止血性フロアブル剤の成分は、無菌で使用することができるが、必ずしも必要ではない。この場合、印刷された止血製品は、使用前に滅菌することができる。
【0249】
乾燥した無菌の印刷された止血製品は、出血創傷部に適用することができる。
【0250】
あるいは、乾燥した無菌の印刷された止血製品は、出血創傷部に適用する前に、生理食塩水または/および凝固因子溶液に浸漬することができる。
【0251】
印刷された止血製品の特性および対応する用途は、この印刷された止血製品を形成する層の各々の特性に依存する。
【0252】
例えば、印刷された止血製品の組成物および構造は、出血創傷部に適合させるために、膨潤および変形するように選択することができる。
【0253】
凝固因子に富む潜在的なパターンは、血液凝固を局所的に促進し得る。
【0254】
潜在的な「接着促進(pro-adhesive)」パターンは、出血創傷部への製品の凝集または接着を局所的に促進し得る。
【0255】
水に富む潜在的な外層は、周囲組織への製品の接着を有利に防止し得る。
【0256】
上記の止血性フロアブル剤で形成された印刷された止血製品を使用することは、創傷との接触面を高めるという利点を有する。特に、出血領域との接触が深くなる。これは、出血領域が軟組織および実質器官に相当する場合、特に興味深い。
【0257】
3Dアディティブプリンターを用いて製造される3D止血製品は、全容量である単純なものから、多数の格子および角度を有する非常に複雑なものまで、あらゆる種類の三次元構造を有し得る。
【0258】
3D止血製品は、例えば、棒、中空円筒、球などの形状を有し得る。3D止血製品はまた、ハニカム構造を備えたパッチ、例えば、少なくとも数ミリメートル(例えば、5mm~50mm)の厚さを有する膜の形状を有するパッチであり得る。
【0259】
有利には、止血製品は、製品の大きさ、厚さまたは潜在的な架橋に応じて、適用されてから例えば数週間~数ヵ月後に、再吸収し得る。
【0260】
上記のように、本発明者らはまた、ヒトを含む動物の身体の出血部に、上記で定義されるような印刷された止血製品を堆積させることを含んでなる止血方法を提案する。特に、印刷された止血製品は、外科手技、特に、開腹術、腹腔鏡検査、セリオスコピーおよびロボット手技において使用することができる。
【0261】
上記の印刷された止血製品は、内的および外的な創傷のための瘢痕形成剤としても使用することができる。表現「瘢痕形成剤」は、それが接触する組織の臨床的に十分な治癒を得ることを可能とする製品を指す。
【実施例
【0262】
実施例1:in vitroでの止血能力を測定するためのプロトコール
クエン酸塩加(およそ0.1M)ヒト血液を、測定全体を通じて、水浴中で37℃に維持する。試験する製品(10mg)を、スナップオンキャップ付きの5mLポリプロピレンチューブに堆積させ、次に、クエン酸塩加新鮮血(2mL)を加える。次に、血中の最終CaCl濃度が15mMとなるようにCaClを加えた後、試験管を閉じる。次に、強く反転させることにより(10回)、内容物をあらかた混合し、次いで、試験管を水浴中に沈め、試験管を10秒毎に垂直位置に戻す。凝血塊が形成されるのに必要な時間を記録し、止血能力とする。
【0263】
実施例2:粒子径を測定するためのプロトコール
既知量の製品、特に粉体を、50μm、100μm、200μm、300μmおよび400μmスクリーンを通して2分間(スクリーン毎)篩にかける。各スクリーンから得た画分を秤量する。各粒子径範囲の割合を決定する。
【0264】
実施例3:組成物の膨潤を測定するためのプロトコール
15mLフラスコを秤量し(mgでm)、次に、乾燥組成物の粉体Xmgを加える(mgでm0+X)。0.15M NaCl水溶液(2mL)を加え、組成物を20分間放置して膨潤させた後、フラスコを1,000rpmで遠心分離する。
【0265】
過剰なNaClをパスツールピペットで除去し、フラスコを濾紙の上で逆さにして液滴を除去し、次に、フラスコを湿った粉体とともに秤量する(mgでm)。
【0266】
膨潤比は、以下のように算出する:((m-m)/(m0+X-m))。
【0267】
実施例4:塩基性抽出によるフィブリル型のコラーゲンの調製
アセトンで脱脂したブタ真皮の小片(30kg)を、0.05M NaOH溶液100kg中で3時間放置して膨潤させる。真皮を切断ミルで細かく切断し、得られたペーストを0.05M NaOH 50リットルで希釈する。次に、混合物を、加圧下で、1mmスクリーンを通して篩にかける。次に、得られたペーストをHClでpH6~7.5にし、得られた沈殿を遠心分離または1mmを通した濾過により回収する。
【0268】
保持液を、当業者に公知の方法に従って、アセトンで脱水する。したがって、この脱水した保持液は、フィブリル型のコラーゲンからなり、非フィブリル状コラーゲンに対して大含量のフィブリル状/繊維状コラーゲンを含む。一般に、このような抽出されたコラーゲンは、コラーゲンの総重量に対して85~95重量%のフィブリル状/繊維状コラーゲン、およびコラーゲンの総重量に対して5~15重量%の非フィブリル状コラーゲンを含んでなる。
【0269】
実施例5:止血粉体#1の調製
実施例4において調製したフィブリル型のコラーゲン30gを、0.02M HCl水溶液1Lに加え、次に、混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均一なペーストに、粉体化したフルクトースを、コラーゲンの重量に対して2重量%(0.6g)の量で加える。
【0270】
混合物を1時間均質化した後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、乾燥製品を、制御された加熱下で、7,000rpmにてFitzpatrickハンマーミルを使用して、25g/分の速度で粉砕する。次に、製品を機械的篩過により篩にかけ、大きさが400μmを超える粒子を除去する。
【0271】
次に、デルマタン硫酸を、粉体の乾燥物に対して2重量%(0.612g)の量で、粉体に加える。
【0272】
次に、混合物を、ボールミルを使用して均質化し、凍結乾燥させたトロンビンを、粉体の15IU/mgの量で混合物に加え、最後に、ボールミルを使用して混合物を均質化する。
【0273】
実施例6:止血粉体#2の調製
実施例4において調製したフィブリル型のコラーゲン7.5kgを、0.05M HCl水溶液50Lに加え、次に、混合物を16時間撹拌する。次に、得られた均一なペーストに、粉体化したフルクトースを、コラーゲンの重量に対して5重量%(375g)の量で加える。
【0274】
混合物を3時間均質化した後、プレートに分配し、脱水する。乾燥後、乾燥製品を、制御された加熱下で、12,000rpmにてハンマーミルを使用して、5g/分の速度での分画により粉砕する。次に、製品を機械的篩過により篩にかけ、大きさが400μmを超え、50μm未満の粒子を除去する。
【0275】
分布が、サンプルの60重量%が200μmを超える粒度分布を有するようになっていることを確認するために、粒度分布を測定する。
【0276】
次に、精製したコンドロイチン硫酸を、粉体の乾燥物に対して20重量%(1.575kg)の量で、粉体に加える。ボールミルを使用して、混合物を均質化する。
【0277】
最後に、凍結乾燥させたトロンビンを、粉体の10IU/mgの量で混合物に加える。前と同様に、ボールミルを使用して、混合物を均質化する。
【0278】
実施例7:止血粉体#3の調製
実施例4において調製したフィブリル型のコラーゲン1000gを、0.02M HCl水溶液60mLに加え、次に、混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均一なペーストに、粉体化したグルコースを、コラーゲンの重量に対して5重量%(50g)の量で加える。
【0279】
混合物を1時間均質化した後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、乾燥製品を、制御された加熱下で、7,000rpmにてFitzpatrickハンマーミルを使用して、25g/分の速度で粉砕する。次に、製品を機械的篩過により篩にかけ、大きさが400μmを超え、50μm未満の粒子を除去する。
【0280】
次に、コンドロイチン硫酸を、粉体の乾燥物に対して10重量%(105g)の量で、粉体に加える。次に、ボールミルを使用して、混合物を均質化する。
【0281】
このような粉体組成物は、およそ0.408g/mLのタップ密度を有する。
【0282】
実施例8:止血粉体#4の調製
実施例4において調製したフィブリル型のコラーゲン500gを、0.02M HCl水溶液30mLに加え、次に、混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均一なペーストに、粉体化したグルコースを、コラーゲンの重量に対して5重量%(25g)の量で加える。
【0283】
混合物を1時間均質化した後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、乾燥製品を、制御された加熱下で、7,000rpmにてFitzpatrickハンマーミルを使用して、25g/分の速度で粉砕する。次に、製品を機械的篩過により篩にかけ、大きさが400μmを超え、50μm未満の粒子を除去する。
【0284】
次に、トロンビン粉体と混合したコンドロイチン硫酸を、粉体の乾燥物に対して10重量%(52.5g)の量で、粉体に加える。トロンビンを、0.85U/mgの最終量で、混合物に加える。次に、ボールミルを使用して、混合物を均質化する。
【0285】
このような粉体組成物は、およそ0.425g/mLのタップ密度を有する。
【0286】
実施例9:止血粉体#5の調製
実施例4において調製したフィブリル型のコラーゲン750gを、高精製水6675mLと混合する。混合物を、第1の撹拌速度20rpmで10分間撹拌し、次に、第2の撹拌速度40rpmで15分間撹拌する。
【0287】
次に、グルコースの溶液(水300mLとグルコース37.5g)を取り込みながら、上記の混合物を、第1の撹拌速度20rpmで再度撹拌する。加えるグルコースの量は、混合物中に使用されるコラーゲンの重量に対して5重量%に相当する。この新たな混合物を、第2の撹拌速度40rpmで10分間撹拌する。次に、この調製物を16時間保存する。
【0288】
次に、87.5mLの量の1M HCl水溶液を、撹拌速度30rpmで撹拌しながら、調製物に加える。次に、この新たな混合物を、第1の撹拌速度35rpmで1分間撹拌し、次に、第2の撹拌速度40rpmで1分間撹拌し、次いで、同じ撹拌速度40rpmで5分間の数回の撹拌セッションを行い、2回のセッション間には撹拌を迅速に休止する。
【0289】
次に、先の段階において得た厚いペーストを、類似の形状および質量を有するいくつかの小片に分離する。次に、ペーストのそれらの小片を、アンモニアで飽和した雰囲気を有する密封容器内に24時間入れる。この中和工程の後、ペーストの小片を20℃で96時間乾燥させ、次に、8,500rpmでForplexの極低温ミルを使用して、1kg/hの速度で乾燥製品を粉砕する。次に、粉体製品を機械的篩過により篩にかけ、大きさが200μmを超え、50μm未満の粒子を除去し、コラーゲン-グルコース粉体を得る。
【0290】
次に、50μm~200μmの間の大きさを有する粒子から構成されるコンドロイチン硫酸(CS)の粉体を、コラーゲン-グルコース粉体の乾燥物に対して10重量%の量で、コラーゲン-グルコース粉体に加える。例えば、コンドロイチン硫酸の粉体30gを、コラーゲン-グルコース粉体300gと混合する。この止血粉体#5に対して、凍結乾燥させたトロンビンも、1000UI/gの量で加える。次に、Vブレンダーを使用して、混合物を均質化する。最終的な止血粉体は、およそ0.4g/mLのタップ密度を有する。
【0291】
実施例10:コラーゲンのキャラクタリゼーション → コラーゲン中の可溶性コラーゲンの存在、フィブリル状/繊維状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンとの比の決定
この実験の目的は、コラーゲン(抽出されたコラーゲンまたは粉体に粉砕されたコラーゲン)中のフィブリル状/繊維状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンの割合を決定することである。このような割合は、コラーゲン中の不溶性コラーゲン(フィブリル状/繊維状コラーゲンに相当)と可溶性コラーゲン(非フィブリル状コラーゲンに相当)の割合を調べることにより、決定することができる。
【0292】
実験は、試験中のコラーゲン約2.5gを、水166mLにpH13で16時間可溶化することからなる。次に、溶液を遠心分離する(10000rpmで10分間)。次に、上清(非フィブリル状コラーゲンに相当)および残渣(繊維状/フィブリル状コラーゲンに相当)を分ける。残渣を、連続的なアセトン浴で、制御された気流下で直接乾燥させる。上清のpHを、6Mの酢酸および塩化水素酸でpH3に調整する。上清から固体コラーゲンを、NaCl 0.6Mを加えることにより、および遠心分離を行うことにより得る。次にそれを、連続的なアセトン浴で、制御された気流下で乾燥させる。
【0293】
残渣(M残渣)および上清(M上清)からのコラーゲン重量を算出し、式M残渣/(M残渣+M上清)×100により、コラーゲンの総量に対する繊維状コラーゲンのパーセンテージを得る。
【0294】
発明において、比M残渣/(M残渣+M上清)は、粉体の調製に使用されるコラーゲンおよび最終的なコラーゲン粉体の両方に対して80%を上回らなければならない。優先的に、比は85%を上回る。
【0295】
例えば、実施例4において調製したコラーゲンの3つのバッチから構成される上記の実験からは、それぞれ92.67%、94.60%および91.51%という非常に類似した比が得られる。これらの3つのバッチのコラーゲンを粉砕した後、比は、それぞれ91.63%、88.02%、および88.69%というように、依然として非常に類似している。
【0296】
繊維状/フィブリル状コラーゲンおよび可溶性コラーゲンの両方の存在を示すための別の方法は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行うことである。
【0297】
図2は、このような電気泳動を例示したものであり、サンプルS1は、第1のバッチ(実施例4において抽出したコラーゲンから構成される)の上清に対応し、サンプルS2は、この第1のバッチの残渣に対応し、サンプルS3は、第2のバッチ(これも実施例4において抽出したコラーゲンから構成される)の上清に対応し、サンプルS4は、この第2のバッチの残渣に対応する。
【0298】
結果は、残渣から得たコラーゲンに関して、大量の繊維は、アクリルアミドゲルを通って移動することができず、ゲルの停止位置で染色されることを示している。サンプルの調製は、コラーゲンからの各鎖の分割を可能としない。したがって、アルファ鎖は、非常に少量で存在する。上清から得たコラーゲンは、ゲル中を完全に移動することができ、最上部で遮断された繊維はなく、コラーゲンに由来する鎖は、電気泳動プロセス中に適切に分割される。
【0299】
書誌データ
- WO 2012/146655
- “Nature designs tough collagen: explaining the nanostructure of collagen fibrils,” by Markus Buehler (PNAS, August 15, 2006, vol.103, no. 33, pp. 12285-12290)
- “Extraction of collagen from connective tissue by neutral salt solutions” by Jerome Gross, John H. Highberger and Francis O. Schmitt (Proceedings of the NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES Volume 41 Number I January 15, 1955)
- WO 2010/125086
- FR2944706
- WO 01/97873
- US 4,891,359
- “Current advances and future perspectives in extrusion-based bioprinting” by Ibrahim T. Ozbolat and Monika Hospodiuk (Biomaterials 76 (2016) 321-343)
- “Biomimetic 4D printing” by A. Sydney Gladman et al. entitled (Nature Materials volume 15, pages 413-418 (2016))
図1
図2