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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】板ガラスの製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/033 20060101AFI20231204BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20231204BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20231204BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C03B33/033
B26F3/00 A
B28D5/00 Z
B28D7/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019185422
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059477
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】上片平 護
(72)【発明者】
【氏名】塩路 拓也
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-132328(JP,A)
【文献】特開平4-280828(JP,A)
【文献】特表2014-528892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B33/02-33/04
B28D1/00-7/04
B26F1/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスの第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断する割断工程を含む板ガラスの製造方法において、
前記割断工程では、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断し、
前記吸着パッドおよび前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面を支持し、
前記第2領域の表面に押し込み部材を接触させて第2領域を裏面側に押し込むことで、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記割断工程では、前記板ガラスを、前記スクライブ線が上下方向を向くように吊り下げ支持することを特徴とする請求項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項3】
板ガラスの第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断する割断工程を含む板ガラスの製造方法において、
前記割断工程では、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断し、
前記割断工程では、前記板ガラスを、前記スクライブ線が上下方向を向くように吊り下げ支持することを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が短い位置に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が長い位置に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項6】
板ガラスの第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断する割断工程を含む板ガラスの製造方法において、
前記割断工程では、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断し、
前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が長い位置に配置されることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面における前記スクライブ線に沿う方向の両端を除く領域に接触することを特徴とする請求項1~の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面における前記スクライブ線に沿う方向の両端を含む領域に接触することを特徴とする請求項1~の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記補助支持部材は、前記第2領域との接触部が緩衝材で形成されていることを特徴とする請求項1~の何れかに記載の板ガラスの製造方法。
【請求項10】
板ガラスの第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断する割断工程を含む板ガラスの製造方法において、
前記割断工程では、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断し、
前記補助支持部材は、前記第2領域との接触部が緩衝材で形成されていることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項11】
第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線が形成された板ガラスを、前記スクライブ線に沿って割断する割断装置を備えた板ガラスの製造装置において、
前記割断装置は、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断するように構成され、
前記吸着パッドおよび前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面を支持し、
前記第2領域の表面に押し込み部材を接触させて第2領域を裏面側に押し込むことで、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させるように構成されていることを特徴とする板ガラスの製造装置。
【請求項12】
第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線が形成された板ガラスを、前記スクライブ線に沿って割断する割断装置を備えた板ガラスの製造装置において、
前記割断装置は、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断するように構成され、
前記板ガラスを、前記スクライブ線が上下方向を向くように吊り下げ支持する把持機構を備えることを特徴とする板ガラスの製造装置。
【請求項13】
第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線が形成された板ガラスを、前記スクライブ線に沿って割断する割断装置を備えた板ガラスの製造装置において、
前記割断装置は、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断するように構成され、
前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が長い位置に配置されることを特徴とする板ガラスの製造装置。
【請求項14】
第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線が形成された板ガラスを、前記スクライブ線に沿って割断する割断装置を備えた板ガラスの製造装置において、
前記割断装置は、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断するように構成され、
前記補助支持部材は、前記第2領域との接触部が緩衝材で形成されていることを特徴とする板ガラスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスをスクライブ線に沿って割断する技術を含む板ガラスの製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、板ガラスは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用のガラス基板や、有機EL照明用のカバーガラスなどに代表されるように、各種分野に利用されている。この種の板ガラスを製造する際には、大型の板ガラスから小型の板ガラスを切り出す工程や、板ガラスの辺に沿う端部をトリミングする工程などが実行される。これらの工程では、通例、板ガラスにスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線に沿って板ガラスを割断することが行われる。
【0003】
この種の板ガラスを割断する方法の具体例としては、特許文献1に開示された方法が挙げられる。同文献に開示の方法では、板ガラスの表面にスクライブ線を形成した後、板ガラスの第1領域(スクライブ線の一方側の領域)の裏面を裏面支持部材で支持しておく。そして、この状態で、板ガラスの第2領域(スクライブ線の他方側の領域)の裏面を吸着パッドで吸着支持しておき、第2領域の表面に沿ってローラ(転動体)を転動させながら第2領域に裏面側に向かう力を作用させる。これにより、スクライブ線の近傍に曲げ応力を作用させ、板ガラスをスクライブ線に沿って割断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-226549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示のように、板ガラスの第2領域の裏面を吸着パッドにより吸着支持させて割断する構成では、板ガラスの特性や吸着パッドの特性などに起因して、以下に示すような問題が生じる。
【0006】
すなわち、割断前の板ガラスには、反りが発生している場合がある。この反りを有する板ガラスを割断する際に、板ガラスの第2領域の裏面を吸着パッドにより吸着支持していたのでは、吸着支持箇所が疎らになる。しかも、吸着パッドは、ゴムや樹脂等の弾性部材で形成されるため、伸縮性に富む等の特性を有している。これらにより、板ガラスの第2領域の裏面を支持する要素が不足して、割断時に板ガラスの反りを十分に矯正することが困難になる。そのため、板ガラスのスクライブ線の近傍に曲げ応力を均等に作用させることができず、スクライブ線に沿った適正な割断が阻害される。その結果、板ガラスの割断部にチッピング(割断端面の不当なクラック)が発生して多量のガラス粉が飛散する等の不具合を招く。
【0007】
以上の観点から、本発明は、割断時における板ガラスの第2領域の裏面に対する支持を良好に行えるようにして、板ガラスをスクライブ線に沿って適正に割断することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明の第1の側面は、板ガラスの第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線を形成し、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断する割断工程を含む板ガラスの製造方法において、前記割断工程では、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断することに特徴づけられる。ここで、上記の板ガラスは、板厚が500μm以下、好ましくは300μm以下である。また、この板ガラスは、可撓性を有していることが好ましい。
【0009】
この方法によれば、割断工程で、板ガラスの第2領域が、吸着パッドと、スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とによって支持されるため、支持箇所としては、吸着パッドによる吸着支持箇所に、スクライブ線に沿う方向に延びる好ましい形態の支持箇所が追加される。したがって、板ガラスに反りが発生していても、上記の好ましい形態の支持箇所の追加によって、その反りを十分に矯正することができる。しかも、吸着パッドは、第2領域を引き込むため、補助支持部材が第2領域に接触している際には、その接触部に吸着パッドによる引き込み力が作用して、第2領域が補助支持部材に強く押し当てられる。これにより、反りの矯正がより一層十分なものになる。以上の事情によって、板ガラスを割断する際には、スクライブ線の近傍に曲げ応力が均等に作用して、適正な割断が行われるため、板ガラスの割断部にチッピングが発生して多量のガラス粉が飛散する等の不具合が適切に回避される。なお、板ガラスの反りは、板ガラスの表面におけるスクライブ線及びこれと平行な任意の仮想直線が湾曲するような反りであれば特に有効である。
【0010】
この方法において、前記吸着パッドおよび前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面を支持し、前記第2領域の表面に押し込み部材を接触させて第2領域を裏面側に押し込むことで、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、吸着パッドおよび補助支持部材で、板ガラスの反りを十分に矯正した状態で、表面側に配置された押し込み部材で第2領域に裏面側に向かう力を適切に付与できる。このため、板ガラスを安定して割断することが可能となる。
【0012】
以上の方法において、前記割断工程では、前記板ガラスを、前記スクライブ線が上下方向を向くように吊り下げ支持するようにしてもよい。
【0013】
このようにすれば、板ガラスに反りが発生している場合の既述の作用効果を顕著に得ることができる。詳述すると、板ガラスを定盤等の上に平置き姿勢で載置して割断する場合には、板ガラスの反りが小さくなるが、ここでの構成のように板ガラスを吊り下げ支持した場合には、反りが大きくなる。このように板ガラスの反りが大きい場合でも、既述のように適正に対処可能であるため、その作用効果が格別なものになる。
【0014】
以上の方法において、前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が短い位置に配置されるようにしてもよい。
【0015】
このようにすれば、第2領域のスクライブ線からスクライブ線と対向する端縁部までの寸法が短い場合に好都合になる。詳述すると、吸着パッドは従来より使用されているため、第2領域の裏面に対する吸着パッドの吸着支持位置として好適な位置が存在している。そのため、補助支持部材を、第2領域における好適な吸着支持位置よりも上記の端縁部側に配置しようとすれば、スペース的に無理な場合がある。しかし、ここでの構成によれば、補助支持部材が、従来の吸着支持位置よりも上記の端縁部側と反対側に配置されるため、そのような不具合をなくすことができる。これにより、従来の構成に大幅な改良を加えなくても。補助支持部材を追加して配置することが可能となる。
【0016】
この方法における構成とは逆に、前記補助支持部材は、前記吸着パッドよりも、前記スクライブ線からの離間距離が長い位置に配置されるようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、板ガラスの大きな反りを矯正する効果が顕著となる。詳述すると、板ガラスの反りは、第2領域のスクライブ線と対向する端縁部及びその近傍で特に大きくなるという傾向がある。このような傾向は、当該端縁部が第2領域のそれ以外の部位よりも厚肉である場合に特に顕著になって現れる。ここで述べた吸着パッドと補助支持部材との相対位置関係によれば、当該端縁部及びその近傍に補助支持部材を接触させることができるため、上記の特に大きな反りを十分に矯正することができる。
【0018】
以上の方法において、前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面における前記スクライブ線に沿う方向の両端を除く領域に接触するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、第2領域の上記の両端の端面が割断面である場合に有利である。すなわち、割断面は微小なクラック等を有するため、補助支持部材が割断面に接触した場合には、微小なクラック等が進展して板ガラスが破損に至るおそれがある。しかし、ここでの構成によれば、補助支持部材が上記の両端に接触しないため、このような不具合が生じない。
【0020】
この方法における構成とは逆に、前記補助支持部材は、前記第2領域の裏面における前記スクライブ線に沿う方向の両端を含む領域に接触するようにしてもよい。
【0021】
このようにすれば、第2領域の上記の両端に亘る全域で、補助支持部材により板ガラスの反りを矯正できるため、板ガラスの割断をより一層適正に行うことができる。
【0022】
以上の方法において、前記補助支持部材は、前記第2領域との接触部が緩衝材で形成されていてもよい。
【0023】
このようにすれば、例えば、補助支持部材が第2領域に接触する際の衝撃を緩衝材によって緩和することができる。そのため、補助支持部材を高速で第2領域に接触させても、板ガラスの破損や損傷が生じ難くなり、作業の迅速化が図られる。
【0024】
上記課題を解決するために創案された本発明の第2の側面は、第1領域と第2領域との境界部の表面側にスクライブ線が形成された板ガラスを、前記スクライブ線に沿って割断する割断装置を備えた板ガラスの製造装置において、前記割断装置は、前記第1領域の裏面を、裏面支持部材により支持させると共に、前記第2領域を、吸着パッドと、前記スクライブ線に沿う方向に延びる補助支持部材とにより支持させた状態で、前記第2領域に裏面側に向かう力を作用させて、前記スクライブ線に沿って前記板ガラスを割断するように構成されていることに特徴づけられる。
【0025】
この製造装置によれば、既述の製造方法の場合と同様にして、板ガラスの割断が適正に行われ、割断時のチッピングの発生や多量のガラス粉の飛散等が回避される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、割断時における板ガラスの第2領域の裏面に対する支持が良好に行われて、板ガラスがスクライブ線に沿って適正に割断される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の要部を示す概略斜視図である。
図3図3(a)は、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置を側方から視た概略側面図であり、図3(b)は、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の要部を下方から視た拡大概略下面図である。
図4図4(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法に含まれる割断工程を示す概略下面図である。
図5】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法に含まれる割断工程の第1の変形例を示す概略下面図である。
図6】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法に含まれる割断工程の第2の変形例を示す概略下面図である。
図7】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法に含まれる割断工程の第3の変形例を示す概略下面図である。
図8】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の第1の変形例を示す概略下面図である。
図9】本発明の実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置の第2の変形例を示す概略下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る板ガラスの製造方法及び製造装置について添付図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る板ガラスの製造装置に含まれる割断装置1を例示する斜視図である。同図に示すように、板ガラスGは、表面側(符号Ga、Gxの側)に形成されたスクライブ線Sを境界として、その幅方向一方側(矢印A方向側)が第1領域G1とされ、その幅方向他方側(矢印B方向側)が第2領域G2とされる。この実施形態では、第1領域G1が製品部分となり、第2領域G2が非製品部分となる。ただし、第1領域G1と第2領域G2の双方が製品部分となってもよい。図例では、スクライブ線Sは、板ガラスGの上端及び下端に到達していないが、その上端及び下端に到達していてもよい。
【0030】
板ガラスGは、スクライブ線Sが上下方向を向くように吊り下げ支持されている。板ガラスGの板厚は、例えば、200~2000μmとすることができる。板ガラスGに反りが発生しやすいので、板ガラスGの板厚は、500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下である。また、板ガラスGは、可撓性を有していることが好ましい。この実施形態では、板ガラスGに反りが発生している。この反りは、板ガラスGの表面におけるスクライブ線S及びこれと平行な任意の仮想直線が湾曲する形状を呈している。
【0031】
割断装置1は、板ガラスGを曲げ応力によってスクライブ線Sに沿って割断するものである。詳述すると、割断装置1は、板ガラスGを吊り下げ支持する把持機構2と、第1領域G1の裏面Gb側を支持する裏面支持部材3と、第2領域G2の裏面Gy側を支持する裏面補助支持機構4と、第2領域G2の表面Gxに接触した状態で矢印C方向に回転しながら第2領域G2に裏面Gy側に向かう力(押し込み力)を作用させる板状部材(押し込み部材)5とを備えている。
【0032】
把持機構2は、第1領域G1の上端部を把持した状態で、板ガラスGを幅方向に移動させるものである。なお、把持機構2は、板ガラスGの上方を幅方向に沿って延びるレール(図示略)にスライド可能に保持されている。板ガラスGを割断する工程が行われる際には、把持機構2及び板ガラスGは停止した状態になる。また、把持機構2は、第1領域G1の上端部における幅方向の複数箇所に配置してもよい。
【0033】
裏面支持部材3は、第1領域G1のスクライブ線S側の端部における裏面Gb側に配置されている。裏面支持部材3は、第1領域G1の裏面Gbを支持する支持面が平面とされ且つ上下方向に長尺な柱状体または板状体(定盤)である。なお、裏面支持部材3の形状は、丸棒状などであってもよい。また、裏面支持部材3は、第1領域G1の上端Gf及び下端Ggから上下に食み出しているが、上端Gf及び下端Ggに到達しない長さであってもよい。
【0034】
裏面補助支持機構4は、上下方向に長尺な保持基材6と、保持基材6に装着された吸着パッド7と、保持基材6に固定された補助支持部材8とを備えている。保持基材6は、ロボットアーム等の駆動手段(図示略)の動作によって移動する構成とされている。
【0035】
図2は、裏面補助支持機構4の詳細な構成を例示している。同図に示すように、保持基材6の表側には、上下方向に等間隔で複数個(図例では5個)の吸着パッド7が配設されている。吸着パッド7は、伸縮可能なゴムや樹脂等の弾性部材で形成され、第2領域G2の裏面Gyを負圧により吸着支持するものである。また、保持基材6の表側には、上下方向に長尺な補助支持部材8が配設されている。補助支持部材8は、保持基材6の表側の面に固定され、第2領域G2の裏面Gyを接触支持するものである。補助支持部材8の第2領域G2と接触する端面8aは平面とされ、これにより補助支持部材8が第2領域G2の裏面Gyに面接触するようになっている。補助支持部材8の第2領域G2との接触部は、パロニアに代表される発泡樹脂等からなる緩衝材8xで形成されている。この緩衝材8xは、板状基体8yの先端に装着され、板状基体8yは、金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金または各種鋼)またはそれと同程度の剛性を有する材料からなる。第2領域G2の裏面Gyにおける補助支持部材8が接触する領域は、第2領域G2の上端Gf及び下端Ggを除く領域とされている。この実施形態では、補助支持部材8は、吸着パッド7よりもスクライブ線Sからの離間距離が短くなるように保持基材6に配設されている。すなわち、板ガラスGの幅方向において、補助支持部材8は、吸着パッド7とスクライブ線Sの間に配設されている。また、補助支持部材8は、スクライブ線Sに沿う方向に連続して延びているが、所定間隔置きにスクライブ線Sに沿う方向に延びていてもよい。換言すれば、補助支持部材8が、スクライブ線Sに沿う方向で複数に分割されていてもよい。なお、ここでのスクライブ線Sは、図2に示すように反りが全く無い板ガラスGに形成されるスクライブ線である。
【0036】
図1に示すように、板状部材5は、第2領域G2の表面Gx側に配置されている。この実施形態では、板状部材5は、第2領域G2の表面Gxに接触する側が平面とされ且つ上下方向に長尺な平板である。また、板状部材5は、第2領域G2の上端Gf及び下端Ggから上下に食み出しているが、上端Gf及び下端Ggに到達しない長さであってもよい。板状部材5の表側には、板状部材5を着脱可能に保持するローラ付き部材9が配設されている。このローラ付き部材9は、スクライブ線Sに沿う方向に延びるローラ軸10と、ローラ軸10の軸方向に等間隔で配列された複数個(図例では5個)のローラ11と、ローラ軸10を支持する支持体12とを備えている。なお、ここでいうスクライブ線Sも、既述の場合と同様に、板ガラスGに反りが全く無いとした場合のスクライブ線Sである。この実施形態では、板状部材5は、結束バンド13を用いてローラ軸10に連結されている。結束バンド13は、板状部材5とローラ軸10とに跨って巻き付け及び巻き外しが可能とされ、これにより板状部材5はローラ付き部材9に着脱可能とされている。支持体12は、ロボットアーム等の駆動手段(図示略)の動作によって移動する構成とされ、これによりローラ付き部材9と板状部材5とが同期して移動するようになっている。ここで、ローラ軸10及びローラ11は、D方向に直進移動するように構成されている。このD方向は、第2領域G2の表面Gxと直交する方向である。ここでいう第2領域G2の表面Gxとは、反りが全く無いとした場合の第2領域G2の割断工程前の表面Gxである。
【0037】
次に、以上のように構成された製造装置を用いた板ガラスの製造方法を説明する。
【0038】
まず、図1に示す位置の上流側の工程において、板ガラスGを把持機構2により吊り下げ支持した状態で、ホイールカッターによる押圧やレーザーの照射等により、板ガラスGの表面Gxにスクライブ線Sを形成する。次に、スクライブ線Sが形成された板ガラスGを把持機構2で吊り下げ支持した状態のまま、板ガラスGを幅方向に搬送して停止させる。板ガラスGが停止した時点で、図1に示すように、裏面支持部材3が表側に向かって移動して板ガラスGの第1領域G1の裏面Gyに接触する。また、ローラ付き部材9が裏側に向かって移動することで、板状部材5が第2領域G2の表面Gxに接触する。さらに、裏面補助支持機構4の保持基材6が表側に向かって移動することで、吸着パッド7と補助支持部材8とが第2領域G2の裏面Gyに接触する。
【0039】
この後、吸着パッド7が第2領域G2を吸引することで、補助支持部材8が第2領域G2の裏面Gyに強固に面接触する。これと併行して、板状部材5が第2領域G2を裏側に押圧することで、板状部材5が第2領域G2の表面Gxに面接触する。このような状態を維持して、板状部材5が第2領域G2を裏面Gy側に押し込んでいく。この段階では、吸着パッド7及び補助支持部材8による第2領域G2の支持部Gw周辺は、図3(a)に示す側面視及び図3(b)に示す下面視において、反りが殆ど無い平坦な形状になる。この場合、仮に特許文献1に開示のように吸着パッドのみで第2領域G2の裏面Gyを吸着支持した場合には、支持の要素(既述の要素)が不足して、第2領域G2の反りを十分に矯正することができない。そのため、板ガラスGの割断時には、スクライブ線Sの近傍に均等な曲げ応力を生じさせることが困難になる。これに対して、第2領域G2の裏面Gyを吸着パッド7と補助支持部材8とで支持させれば、支持箇所が増加して、第2領域G2の反りを低減することができる。さらに、補助支持部材8は、スクライブ線Sに沿う方向に延びているため、裏面補助支持機構4の支持箇所としては、吸着パッド7による吸着支持箇所に、スクライブ線Sに沿う方向に延びる好ましい形態の支持箇所が追加される。したがって、第2領域G2の反りは、上記の好ましい形態の支持箇所の追加によって十分に矯正される。しかも、吸着パッド7は、第2領域G2を引き込むため、補助支持部材8が第2領域G2に接触している際には、その接触部に吸着パッド7による引き込み力が作用して、第2領域G2が補助支持部材8(緩衝材8x)に強く押し当てられる。これにより、反りの矯正がより一層十分なものになる。以上の事情によって、板ガラスGの割断時には、スクライブ線Sの近傍に曲げ応力が均等に作用して、適正な割断が行われるため、板ガラスGの割断部にチッピングが発生して多量のガラス粉が飛散する等の不具合が効果的に回避される。この実施形態では、板状部材5が第2領域G2の表面Gxに面接触することによっても、第2領域G2の反りが矯正されるため、板ガラスGの割断がより一層適正に行われる。
【0040】
図4(a)~(c)は、吸着パッド7、補助支持部材8、及び板状部材5の動作によって第2領域G2を裏面Gy側に押し込み、板ガラスGを割断していく工程を時系列で例示している。まず、図4(a)に示すように、ローラ付き部材9及び裏面補助支持機構4を移動させて、第2領域G2の表面Gxに板状部材5を面接触させ、第2領域G2の裏面Gyを吸着パッド7で吸着支持し且つ補助支持部材8で接触支持する。このとき、ローラ11は板状部材5に接触した状態にあり、板状部材5及び保持基材6は双方共に傾斜しない状態(第1領域G1の表面Gxと平行な状態)にある。以下、この状態を初期状態とよぶ。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、ローラ11がD方向に直進移動することで、板状部材5は、第2領域G2の表面Gxに面接触した状態を維持してローラ軸10(軸線9a)の廻りに回転する。このように板状部材5が回転する間は、第2領域G2の角度変化に追随して、板状部材5の角度が変化する。これと併行して、保持基材6が所定の湾曲軌道に沿って移動することで、第2領域G2の角度変化に追随して、保持基材6の角度が変化する。ここでいう所定の湾曲軌道とは、例えば、裏面支持部材3の近傍やスクライブ線Sの近傍を中心とする円軌道またはこれに類似する軌道などの湾曲軌道である。これにより、板ガラスGは裏面支持部材3を起点として撓む。この過程では、第2領域G2の板状部材5との面接触部Gwからスクライブ線Sに至るまでの部位が平坦に近い形状になるため、第2領域G2のスクライブ線Sの近傍は屈曲に近い形状つまり大きい曲率で湾曲した形状になる。ここで、同図に鎖線で示す湾曲線Wは、特許文献1に開示のようにローラ11と吸着パッド7のみで第2領域G2の表面Gxが撓んだときの形状を描いたものである。この湾曲線Wは、第2領域G2のスクライブ線Sの近傍が小さい曲率で湾曲している。スクライブ線Sの近傍が小さい曲率で湾曲している場合よりも、大きい曲率で湾曲している場合の方が、スクライブ線Sの近傍に作用する曲げ応力が大きくなる。
【0042】
この後、ローラ11がさらにD方向に直進移動して、第2領域G2が裏面Gy側にさらに押し込まれ、スクライブ線Sの近傍に作用する曲げ応力が十分に大きくなった時点で、図4(c)に示すように、板ガラスGがスクライブ線Sに沿って割断される。この場合、図4(b)に基づいて既に説明したように、第2領域G2が撓んだ時には、第2領域G2の面接触部Gwからスクライブ線Sに至るまでの部位が平坦に近い形状になる。そのため、ローラ11をD方向に直進移動させる距離が短くても、板ガラスGを割断することができる。これにより、板ガラスGの割断に要する時間が短縮され、作業効率が向上すると共に、ローラ付き部材9を移動させる機構や裏面補助支持機構4を移動させる機構のコンパクト化も図られる。なお、板ガラスGが割断されることで第2領域G2が第1領域G1から分離した後は、第2領域G2は落下することなく、吸着パッド7によって吸着保持された状態を維持する。そして、この第2領域G2は、第1領域G1に影響が生じない退避位置まで搬送された後、吸着パッド7による吸着が解除されて落下回収される。
【0043】
上記実施形態に係る板ガラスの製造装置及び製造方法は、上記例示の構成に代えて、図5に示すように、板状部材5が、第2領域G2のスクライブ線Sと対向する端縁部Gzを含む部位の表面Gxに接触するようにしてもよい。詳述すると、第2領域G2の端縁部Gz(耳部と呼称される部位)は、第2領域G2のその他の部位よりも厚肉である。しかも、図示の状態では、第2領域G2の幅方向の長さ(端縁部Gzからスクライブ線Sまでの離間距離)が短くなっている。このような条件でも、図示のように、第2領域G2の裏面Gyを吸着パッド7と補助支持部材8とで支持し、板ガラスGの割断を適正に行うことができる。
【0044】
また、上記実施形態に係る板ガラスの製造装置及び製造方法は、以下に示すように構成を変更することができる。すなわち、まず、ローラ付き部材9の結束バンド13を巻き外して、板状部材5を取り外す。その後、図6に示すように、第2領域G2の表面Gxにローラ11を転動可能に接触させると共に、第2領域G2の裏面Gyを吸着パッド7と補助支持部材8とで支持させる。この状態を初期状態として、既述の図4(b)に示す状態のように第2領域G2を撓ませ、スクライブ線Sに作用する曲げ応力が十分な大きさになった時点で、既述の図4(c)に示す状態のように板ガラスGを割断する。
【0045】
さらに、上記実施形態に係る板ガラスの製造装置及び製造方法は、板ガラスGを一箇所で割断するだけでなく、以下に示すように板ガラスGを二箇所で割断する場合にも適用可能である。すなわち、図7に示すように、板ガラスGの幅方向の中央側領域を第1領域G1として、その両側にスクライブ線Sを形成し、各スクライブ線Sの幅方向の外側領域をそれぞれ第2領域G2とする。そして、各第2領域G2の表面Gx側に、ローラ付き部材9をそれぞれ配置し、各第2領域G2の裏面Gy側に、裏面補助支持機構4をそれぞれ配置する。また、第1領域G1の幅方向の両端部における裏面Gb側に、裏面支持部材3をそれぞれ配置する。この場合には、各ローラ付き部材9を基準にすれば、幅方向の中央側が図1の矢印A方向側になり且つ幅方向の両外側が図1の矢印B方向側になる。これらを前提条件にすれば、板ガラスGの幅方向の両側でそれぞれ、既に説明した作用と実質的に同一の作用が行われ、且つ、既に説明した効果と実質的に同一の効果が得られる。
【0046】
上記実施形態によれば、既に説明した作用効果に加えて、以下に述べるような作用効果をも得ることができる。すなわち、上記実施形態では、板ガラスGを、スクライブ線Sが上下方向を向くように吊り下げ支持しているため(図1参照)、板ガラスGに大きな反りが発生している場合の効果を顕著に得ることができる。詳述すると、板ガラスGを平置き姿勢で載置して割断する場合には板ガラスGの反りが小さくなるが、板ガラスGを吊り下げ支持した場合には、反りが大きくなる。このように板ガラスGの反りが大きい場合でも、既述のように適正に対処可能であるため、その作用効果が格別なものになる。
【0047】
上記実施形態では、補助支持部材8が、吸着パッド7よりも、スクライブ線Sからの離間距離が短い位置に配置されているため(図2等参照)、第2領域G2のスクライブ線Sからスクライブ線Sと対向する端縁部Gzまでの寸法が短い場合に好都合になる。詳述すると、吸着パッド7は従来より使用されているため、第2領域G2の裏面Gyに対する吸着パッド7の吸着支持位置として好適な位置が存在している。そのため、補助支持部材8を、第2領域G2における好適な吸着支持位置よりも上記の端縁部Gz側に配置しようとすれば、スペース的に無理な場合がある。しかし、ここでの相対位置関係によれば、補助支持部材8が、従来の吸着支持位置よりも上記の端縁部Gz側と反対側に配置されるため、そのような不具合をなくすことができる。これにより、従来の構成に大幅な改良を加えなくても。補助支持部材8を追加して配置することが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、補助支持部材8が、第2領域G2の裏面Gyにおける上端Gf及び下端Ggを除く領域に接触しているため(図2等参照)、上端Gf及び下端Ggの端面が割断面である場合に有利である。すなわち、割断面はクラック等を有するため、補助支持部材8が割断面に接触した場合には、クラック等が進展して板ガラスGが破損に至るおそれがある。しかし、ここでの構成は、補助支持部材8が上端Gf及び下端Ggに接触しないため、このような不具合が生じない。
【0049】
上記実施形態では、補助支持部材8の第2領域G2との接触部が緩衝材8xで形成されているため、補助支持部材8が第2領域G2に接触する際の衝撃を緩衝材8xによって緩和することができる。そのため、補助支持部材8を高速で第2領域G2に接触させても、板ガラスGの破損や損傷が生じ難くなり、作業の迅速化が図られる。
【0050】
なお、以上の実施形態では、補助支持部材8を、吸着パッド7よりも、スクライブ線Sからの離間距離が短い位置に配置したが、これとは逆に、図8に示すように、補助支持部材8を、吸着パッド7よりも、スクライブ線Sからの離間距離が長い位置に配置してもよい。このようにすれば、板ガラスGの大きな反りを矯正する効果が顕著となる。詳述すると、板ガラスGの反りは、第2領域G2のスクライブ線Sと対向する端縁部Gz及びその近傍で特に大きくなるという傾向がある。このような傾向は、当該端縁部Gzが、図示のように第2領域G2のそれ以外の部位よりも厚肉である場合に特に顕著になって現れる。ここでの吸着パッド7と補助支持部材8との相対位置関係によれば、当該端縁部Gzの近傍に補助支持部材8を接触させることができるため、上記の大きな反りを十分に矯正することができる。
【0051】
また、以上の実施形態では、補助支持部材8が、第2領域G2の裏面Gyにおける上端Gf及び下端Ggを除く領域に接触しているが、これとは逆に、図9に示すように、補助支持部材8が、上端Gf及び下端Ggを含む領域に接触するようにしてもよい。このようにすれば、第2領域G2の上端Gfから下端Ggに至るまでの全域で、補助支持部材8による板ガラスGの反りの矯正を行えるため、板ガラスGの割断をより一層適正に行うことができる。
【0052】
さらに、以上の実施形態では、板ガラスGの反りが、板ガラスGの表面におけるスクライブ線S及びこれと平行な任意の仮想直線が湾曲する形状を呈したものであるが、これとは異なる形状を呈する反りであってもよい。
【0053】
また、以上の実施形態では、板ガラスGを縦姿勢で吊り下げ支持するようにしたが、板ガラスGを横姿勢(好ましくは水平姿勢)で平置きするものであってもよい。
【0054】
さらに、以上の実施形態では、板ガラスGの第2領域G2の表面Gxを、板状部材5やローラ11などの押し込み部材で裏面Gy側に押し込むようにしたが、この押し込み部材の使用を廃止して、裏面補助支持機構4のみで第2領域G2を引き込むようにしてもよい。この場合は、第2領域G2に裏面Gy側に向かう引き込み力が作用する。あるいは、吸着パッド7と補助支持部材8とで板ガラスGの第2領域G2の表面Gxを支持し、吸着パッド7と補助支持部材8を裏面Gy側に押し込んでもよい。
【0055】
また、裏面補助支持機構4は、吸着パッド7と補助支持部材8とを保持基材6に取り付けることで、両者7、8が同期して移動するようにしたが、両者7、8が分離された状態で同期して移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 板ガラスの製造装置(割断装置)
3 裏面支持部材
4 裏面補助支持機構
6 保持基材
7 吸着パッド
8 補助支持部材
8x 緩衝材
G 板ガラス
G1 第1領域
G2 第2領域
Gb 第1領域の裏面
Gy 第2領域の裏面
Gz 第2領域の端縁部
S スクライブ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9