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  • 特許-内視鏡手術用照明装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】内視鏡手術用照明装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20231204BHJP
   A61B 1/12 20060101ALI20231204BHJP
   A61B 90/30 20160101ALI20231204BHJP
【FI】
A61B1/06 510
A61B1/12 542
A61B90/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020138310
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034575
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506205479
【氏名又は名称】光電気LEDシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊次
(72)【発明者】
【氏名】高井 昭洋
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰次
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3185394(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0144305(US,A1)
【文献】特開2011-249267(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 90/30 - 90/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視C形リング状で薄板状の基板(2)の投光面に多数の発光素子(3)を近接させて装着し、該発光素子(3)を通電発光可能に回路接続したものの表面を透光性を備えたプラスチック製の被覆部材(8)で密閉して覆った内視鏡手術用照明装置であって、上記基板(2)の背面側にリングに沿わせて冷却材を流通させ、通電による基板(2)側の発熱に対して放熱又は冷却を行う冷却配管(6)を施し、該冷却配管(6)を基板(2)および前記発光素子(3)とともに軟質の被覆部材(8)を塗布又はモールド被覆して密封形成した内視鏡手術用照明装置。
【請求項2】
発光素子(3)がリングの横断方向に近接して複数個配置されるとともに、当該複数個がリング方向に多数列配置され、C形リングに沿った通電回路(5)に対し、各横断方向の列毎に並列接続してなる請求項1に記載の内視鏡手術用照明装置。
【請求項3】
冷却配管(6)の供給端(7a)および排出端(7b)を通電用の回路端子とともにC形リングの一方の開放端側に設け、冷却配管(6)をC形リングに沿った冷却材の循環回路として形成した請求項1又は2に記載の内視鏡手術用照明装置。
【請求項4】
被覆部材(8)をシリコン樹脂製とした請求項1~のいずれかに記載の内視鏡手術用照明装置。
【請求項5】
冷却配管(6)の冷却材の供給端(7a)と排出端(7b)を、冷却材を循環させる供給管(22)と返送管(19)にそれぞれ接続する請求項1~のいずれかに記載の内視鏡手術用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人や動物の内視鏡手術に用いる腹腔鏡手術用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来内視鏡手術において、内視鏡からの二次元のモニター画像に依存して、各種手術機器で三次元の患部手術を行う際に、内視鏡の光軸と観察の視軸の重なりによる患部の陰影不足と、内視鏡に光源が映り込んで生じる「白うき」を防止するために、特許文献1に示す照明装置が提案されている。
【0003】
この装置はC形リング状のチューブ内にLEDからなる横長の光源をリング断面内の逆V字形の取付面に外向きと内向きに取付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3185394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記引用文献1の装置は腹腔内を照射する光源の光軸とこれを撮影するカメラ,即ち観察する視軸が異なることによる映像の陰影表示が可能となった点や、光源がカメラ映像に与える悪影響が低減される点では優れているものの、内部に空洞を有する逆V字形断面に外向きと内向きの配光をする光源配置をするため、透明チューブの厚みの他、装置の外径が大型化し、腹腔内での使用に不都合がある他、光源の照射を外向きと内向きに分散するため、患部に対する光量が不足するという問題があり、構造が複雑化しコスト高になるという欠点がある。
【0006】
また手術を円滑に行うための照射光量(LED量)を多くすると、LED単体の発熱は殆どないとしても、集積量が多くなると回路発熱量が多くなり、人や動物の生体内での使用に支障を来すという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の照明装置は、第1に平面視C形リング状で薄板状の基板2の投光面に多数の発光素子3を近接させて装着し、該発光素子3を通電発光可能に回路接続したものの表面を透光性を備えたプラスチック製の被覆部材8で密閉して覆った内視鏡手術用照明装置であって、上記基板2の背面側にリングに沿わせて冷却材を流通させ、通電による基板2側の発熱に対して放熱又は冷却を行う冷却配管6を施し、該冷却配管6を基板2および前記発光素子3とともに軟質の被覆部材8を塗布又はモールド被覆して密封形成したことを特徴としている。
【0008】
第2に、発光素子3がリングの横断方向に近接して複数個配置されるとともに、当該複数個がリング方向に多数列配置され、C形リングに沿った通電回路5に対し、各横断方向の列毎に並列接続してなることを特徴としている。
【0009】
第3に、冷却配管6の供給端7aおよび排出端7bを通電用の回路端子とともにC形リングの一方の開放端側に設け、冷却配管6をC形リングに沿った冷却材の循環回路として形成したことを特徴としている。
【0010】
に、被覆部材8と冷却配管6のパイプを共にシリコン樹脂製としたことを特徴としている。
【0011】
に、冷却配管6の冷却材の供給端7aと排出端7bを、冷却材を循環させる供給管22と返送管19にそれぞれ接続することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明の照明装置によれば、照射範囲の拡大、患部影像の陰影を鮮明にすることを維持しながら、照明不足を補うことによって増大する発熱量も、冷却配管によって生体への悪影響を除去することができ、外側、内側への特別な配光機構をもたず、断面内に空洞を形成しないことによる構造の簡略化と小型化及び断面厚みの低減が実現できるという効果がある。
【0013】
特に発光素子としてLED素子を用いることにより、発光素子自体の発熱は防止できるが、基板に配線した通電回路抵抗によって発熱するので、基板の背面に沿わせて冷却配管を施すことにより、冷却効率が高いという特徴がある。
これらの詳細な内容及びその他の効果については、後述する発明の実施形態の説明において詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の装置の使用状態を示す模式図である。
図2】(A),(B)はそれぞれ照明装置の表裏面におけるLED配列と冷却パイプの配管状態を表す底面図と平面図である。
図3】照明装置の表面側の詳細を示す平面図である。
図4】(A),(B)はそれぞれ照明装置の異なる実施形態を示す図3中のA-A断面図である。
図5】本発明装置の別実施形態を示す表面の平面図である。
図6】本発明の照明装置に使用する冷却装置の側面図である。
図7】同照明装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の装置を用いた内視鏡手術の状態を人体の場合について示す模式図で、人体の腹部31に穿けた手術用器具類の挿入孔32より、後述するC形リング状の照明装置1をその先端側からリング方向に回しながら挿入し、挿入された照明装置1は腹膜33の内面に下面(投光面)を下向きにした状態で取付けられ、下方の臓器34の手術対象部周辺に対しリング状に配置された光源より投光される。
【0016】
この時腹部31内には炭酸ガスが充填され、図示するように腹膜33と臓器34との間には患部とその周辺のカメラ視界及び手術作業スペースのための空間が確保されている。カメラを備えた内視鏡(腹腔鏡)36が挿入孔32より挿入され、カメラ映像は外部のモニター画面に映し出され、この映像に基いて手術作業が行われる。この一連の手順や作業状態は引用文献1に示す従来の照明装置を使用する場合と変わることはない。
【0017】
尚、引用文献1の例では、Cリング状の照明装置を腹膜を通した吊り糸で吊るして腹膜内面に固定しているが、本発明装置の使用では、それ以外に照明装置の背面に磁性材を予め装着し、腹部表面側にマグネットを配置して装置の任意の位置決め及び取付けを行うことや、スキンステープラーを用いて腹膜内面に固定する場合もある。
【0018】
次に図2図4に基いて本発明の詳細な実施形態につき説明すると、図2(A),(B)は本発明の照明装置1の底面(投光面)と上面(冷却面)を平面視で示し、同じく図3図4はその詳細を示す平面図,断面図である。このうち図4(A),(B)は照明装置1の異なる実施形態の断面構造を示している。
【0019】
図示するように照明装置1の断面内には、平面視でC形リング状に形成されたガラスエポキシ樹脂又はフィルム基板,ガラスエポキシ樹脂等からなる平板状の基板2が芯材と背面側への遮光板を兼ねて配置され、この例では基板2は0.5mm厚のシート状の材料で、C形円弧(リング)の直径116mm,板幅13mmのものが用いられ、C形リングの基端部と先端部(挿入端)の開放端は半円形の円弧に形成されている。基板2は厳密に平板である必要はないが、リング内周側、外周側への光の極端な分散や集中は望ましくなく、少なくとも背面側への遮光は必要であり、投光面側は発光時の反射面とすることにより、投光量を十分に確保することが望ましい。
【0020】
基板2の底面には図3に示すように光源としての多数のLED素子3(白色)が密接して装着されており、この例では5°間隔毎に一辺3mmの正方形の素子が、法線方向に0.5mm間隔で3個、合計183個装着され、各LED素子3は、円弧の法線方向に直列に接続され、円弧方向に並列接続されて内部の通電回路5が構成され、基端部側に回路端子4a,4bが形成されている。4は回路端子4a,4bに接続されるケーブルである。このようにLED素子3自体を高密度に並べて装着することにより、影像の影が出来にくく、無影灯としての効果が得られ、光量は電圧や電流を変化させることにより調光可能である。
【0021】
基板2の背面側には、先端側の開放端でループ状に折り返されるシリコン樹脂等からなる冷却パイプ(配管)6がC形リングに沿って装着配管され、基端部側に冷却材の供給端7a,排出端7bが形成されている。これらの部材の表裏外周面には、図4(A)又は(B)に示すようにシリコン樹脂等からなる透光性を備えた被覆部材8によってモールド又は塗布等によって被覆形成されている。この被覆材は、シリコン樹脂の他、柔軟性を備えたウレタン樹脂その他の同性質の材料であれば足りる。
【0022】
この例では成形後の断面幅は15mm,開放端間の中心端部は約36mm、リングの全体厚みは約8mm程度に形成されている。そしてリングの内径は92mm,外径が118mm程度に形成され、被覆部材8はLED及びこれらの接続回路を絶縁し、腹腔挿入時の緩衝材及び挿入案内面を形成するとともに、投光面からLEDの光を外部に透光する。照明装置1自体は被覆部材8の弾力性により表面及び全体が弾力変形可能に構成されている。
【0023】
上記被覆部材8の断面形状は図4(A),(B)に示す形状に限られるものではなく、例えば投光面側,冷却面側共に平坦面に形成することも可能である。
【0024】
ちなみに上記照明装置の前述した以外の仕様例は次の通りであるが、下記仕様に限定されるものではなく、電圧,電流,色濃度,演色性等は変更可能であり、例えば光源としてRGB光源を使用することも可能である。
・電圧 DC8V(8~9V)
・電流(全体) 1.7A
・電流(1チップ当り) 30mA
・色濃度 5000K(白色)
・演色性 80
【0025】
図5は本発明の装置の他の実施形態を示すもので、この例では基板2を含め、装置1のC形リングの開放端の基端部側を、仮想線で示す上記実施形態の円弧状部分を外開き方向に且つC形リングの円弧の接線方向に直線状に変形させている。
【0026】
即ち、C形リングの円弧の中心線Oを、一定長さ部分接線方向の直線の中心線Oに(矢印部分だけ)変更することにより、C形リングの基端部と先端部間の開放端間の長さがΔL分だけ広げられ、腹腔部内への挿入や抜き出しがよりスムースにできるという利点があるほか、トロッカーや鉗子等の手術用具の出し入れも行い易くなる。
【0027】
図6図7は本発明の照明装置の冷却に使用する冷却装置11の例を示し、この例ではペルチェ素子12を用いており、該ペルチェ素子12の吸熱側にラジエーター13を、放熱側にヒートシンク14及びファン16を取付けて本体部が構成され、その外周に冷却材循環用のポンプ17が付設されている。この例ではポンプ17の吐出量240L/Hのものが使用されている。
【0028】
ラジエーター13内には熱交換パイプ13aが配管され、ヒートシンク14の下面(ファン16側)には多数のフィン14aが突設され、ヒートシンク14に伝えられた熱をファン16によって外部に放熱する機構となっている。
【0029】
上記ポンプ17のインポート口15a側には前述した照明装置1の冷却パイプ6の排出端7bと接続される返送管19が、アウトポート口15b側にはラジエーター13のインポート側と接続される接続管21がそれぞれ接続されている。ラジエーター13のアウトポート側には、末端が照明装置1の冷却パイプ6の排出端7bに接続される供給管22が接続されており、照明装置1とラジエーター13との間には、照明装置冷却用の冷却材(本例では医療用の生理食塩水が使用される)の循環回路が形成される。
【0030】
上記機構により、人又は動物の内視鏡手術時に、前述のように腹腔内に挿入された照明装置の通電による発熱は、ポンプ17により循環回路を流通する冷却材がラジエーター13に返送され、循環することで冷却抑制できる。
【0031】
この時照明装置1は最大60~70℃程度に発熱するが、ペルチェ素子12の吸熱面は条件により異なるものの、実測値では約18℃程度に冷却されているため、冷却パイプ13a内を流通する冷却材(生理食塩水)が冷却され、照明装置1の背面(冷却面)に流通することによって、装置自体を人の体温レベルに対応できる32~40℃に冷却することができ、腹腔内で腹膜等に接触しても火傷その他の支障をもたらすことはない。
【0032】
また照明装置1の冷却が適正に行われているか否かは、外部から確認できないために、照明装置1の断面の表面近くに、装置の表面温度や温度変化を検出するモニタリングセンサー又はセンサースイッチ等を設け、これと外部の制御部やスイッチ等に接続して、装置の温度が上昇した場合(規格上は43℃以上である)は、照明装置1の輝度低下又は消灯等の温度変化に対応して制御を行う構成にすることができる(いずれも図示せず)。
【符号の説明】
【0033】
1 照明装置
2 基板
3 発光素子(LED)
4 ケーブル
4a,4b 回路端子
5 通電回路
6 冷却配管(冷却パイプ)
7a 供給端
7b 排出端
8 被覆部材
11 冷却装置
17 ポンプ
19 返送管
22 供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7