(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】神経障害性疼痛における使用のための新規のハイブリッドペプチド模倣物
(51)【国際特許分類】
C07K 7/50 20060101AFI20231204BHJP
C07K 14/72 20060101ALI20231204BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20231204BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231204BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C07K7/50 ZNA
C07K14/72
A61K38/12
A61P25/04
A61K38/22
(21)【出願番号】P 2019572805
(86)(22)【出願日】2018-07-03
(86)【国際出願番号】 IB2018054925
(87)【国際公開番号】W WO2019008515
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519463824
【氏名又は名称】ウニヴェルスィテット ワルシャウスキ
(73)【特許権者】
【識別番号】519463835
【氏名又は名称】インスティチュート ファーマコロジー アイエム. イヤゼゴ マヤ ポルスキエジ アカデミー ノーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミシカ-ケシク,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィトゥコウスカ,エワ
(72)【発明者】
【氏名】ウィレンスカ,ベアタ
(72)【発明者】
【氏名】プルゼウロッカ,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ミカ,ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ストラノウスカ-ソコル,ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ピオトロウスカ-マージン,アンナ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0361378(US,A1)
【文献】Advances in Experimental Medicine and Biology,2009年,Vol.611,p.195-196,DOI:10.1007/978-0-387-73657-0_90
【文献】Current Pharmaceutical Design,2013年,Vol.19, No.42,p.7435-7450,DOI: 10.2174/138161281942140105165646
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2015年,Vol.25, No.19,p.4148-4152
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2010年,Vol.20, No.14,p.4080-4084
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1995年,Vol.38, No.18,p.3454 -3461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/50
C07K 14/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH-(CH
2
)
5
-CO-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
または
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH-(CH
2
)
5
-CO-NH-(CH
2
)
5
-CO-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物。
【請求項2】
活性成分として請求項
1において定義される化合物を含む、医薬組成物。
【請求項3】
医薬品としての使用のための請求項
1において定義される化合物。
【請求項4】
神経障害性疼痛の治療における使用のための請求項
1において定義される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のハイブリッドペプチド模倣物、それを含む医薬組成物、および神経障害性疼痛の治療におけるその使用に関する。本発明に従うペプチド模倣物は、2つの構成要素[リンカーによって接続される、オピオイド受容体アゴニスト(OP)およびメラノコルチン4型受容体アンタゴニスト(MC4)]を含む。
【背景技術】
【0002】
神経障害性疼痛は、神経組織の損傷からもたらされるタイプの慢性疼痛である。急性疼痛において成功裡に用いられるオピオイド薬は、神経障害性疼痛においては鎮痛効率を失うので、神経障害性疼痛の治療における難点は、好適な強力且つ長時間作用する薬物が欠如しているということである。この影響は、損傷に起因する内因性の痛覚促進系の過剰で病的な活性化の結果として説明される。かかる系の活性はオピオイド薬の鎮痛活性に対立し、したがってオピオイド薬の効率が低減される。Sandkuhler,J.Physiol.Rev.89,707-58,2009による出版物は、神経障害性疼痛(異痛症および痛覚過敏症)の主軸症状が痛覚促進系の永続的な活性化から生じることを指摘する。Nickel,F.T.et al.,Eur.Neuropsychopharmacol.22,81-91,2012による総説において、多くの損傷で活性化される痛覚促進系が記載され、最も興味深いものはメラノコルチン系およびメラノコルチン4型受容体(MC4)である。この受容体を活性化するペプチドは、プロオピオメラノコルチン(β-エンドルフィン等のオピオイドペプチドも生じるプロホルモン)に由来する(Tao,Y.-X.,Endocr.Rev.31,506-43,2010)。この事例において、鎮痛作用を備えたオピオイド系の損傷誘導性活性化は、同じプロホルモンに由来する痛覚促進に作用するペプチドの同時活性化と結び付く。
【0003】
MC4受容体は中枢神経系において発現される唯一のメラノコルチン受容体であり、他の機能以外に、疼痛信号化のプロセシングに関与する。Beltramo,M.et al.,Mol.Brain Res.118,111-118,2003による出版物は、これらの受容体の活性化が疼痛をもたらし、それらの遮断は鎮痛を導くという事実を開示する。MC4受容体およびオピオイド受容体は脊髄において共発現され、これらの系の間の潜在的な相互作用を示す(Tao,2010)。先行する研究(Starowicz,K. et al.Pharmacol.Reports 61,1086-95,2009)において、脊髄中でのMC4受容体の合成の増加が、神経障害性疼痛のラットモデルにおける神経損傷に続いて示された。さらに、Hruby et al.,J.Med.Chem. 38, 3454-61.,1995によって記載される、その受容体のアンタゴニストの投与は、鎮痛およびモルヒネの活性の促進を導いた。さらに、MC4受容体アンタゴニストに関する他の研究において、Starowicz.K.et al.,Pain 117,401-11,2005は、ラットにおけるそれらの同時のクモ膜下投与後にモルヒネ耐性発達の低減を示した。
【0004】
Bednarek et al.,Expert Opin.Ther.Patents,14,327-336,2004による総説は、既知のメラノコルチンMC4受容体アンタゴニストを記載する。WO2001052880は、ヒトメラノコルチンMC4受容体の効果的なアンタゴニストとして環状ペプチドを開示する。開示された化合物の中で、化合物MBP-10:シクロ[CO-CH2-CH2-CO-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2はとりわけ、拒食症および過食症の治療における使用のために存在する。WO2003006620は、HisでのSer(Bzl)およびPheでのPhe(4Cl)との置換を備えたメラノコルチン受容体アンタゴニスト誘導体SHU9119を開示する。出版物WO2003061660は、女性における、肥満、糖尿病および性的機能障害の治療に有効なメラノコルチン受容体アゴニストを開示する。出願WO2013138340は、促進された作用および輸送を備えたメラノコルチンのアナログを記載する。メラノコルチン受容体アンタゴニストがδ-オピオイド受容体機能のレギュレーターとして役立つことができ、メラノコルチン系の間接的な抑制によってオピオイド効果を促進することも指摘される。
【0005】
ハイブリッドペプチドは、潜在的な薬理学的薬剤としての興味を集めている。治療的特質を備えた例示的なハイブリッドペプチドは、Bhat V.K et al.,Biochem Pharmacol.85,1655-62,2013による出版物中で記載された。特許出願US20120264685A1は、GLP-1受容体およびグルカゴン受容体アゴニストとして同時に作用する、新規の短鎖ペプチド模倣物も開示する。
【0006】
神経障害性疼痛の出現は多くの疾患に付随するが、その制御のために有効な手段はこれまで開発されていない。本発明は、神経障害性疼痛におけるオピオイド療法の効率を促進することができる、鎮痛特性を備えた新規のペプチド模倣物の開発を目的とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明の主題
上記の目的は、神経障害性疼痛における使用を意図して、鎮痛特性を備えた新規のペプチド模倣物の開発によって達成された。本発明に従うペプチド模倣物は、2つの構成要素[リンカーによって接続される、オピオイド受容体アゴニスト(OP)およびMC4受容体アンタゴニスト]を含む。かかる構造の化合物は、MC4受容体を同時にブロックしながらオピオイド受容体を活性化することを可能にし、神経障害性疼痛におけるオピオイド療法の効率の促進を導くだろう。
【0008】
本発明は、一般式:
A1-A2-A3-A4-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
[式中、
A1は、Tyr残基、DMT(2,6-ジメチルチロシン)残基、またはN-Me-Tyr(N-メチルチロシン)残基であり、
A2は、D-Ala残基、D-Thr残基、D-Ser残基、D-Leu残基、D-Arg残基、D-Lys残基、またはD-Pro残基であり、
A3は、存在しないか、またはGly残基もしくはPhe残基であり得、
A4は、Phe残基またはTrp残基であり、
Xは、-NH-(CH2)n-CO-もしくは-NH-(CH2)n-CO-NH-(CH2)m-CO-(式中、nおよびmは1~8の整数である)であるか、または-(Pro-Gly)z-(式中、zは1~4の整数である)である]
の化合物;
またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物
を提供する。
【0009】
好ましくは、本発明に従う化合物は、以下の化合物:
1.Tyr-D-Ala-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
2.Tyr-D-Thr-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
3.Tyr-D-Leu-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
4.Tyr-D-Ser-Gly3-Phe4-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
5.DMT-D-Ala-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
6.DMT-D-Thr-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
7.DMT-D-Leu-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
8.DMT-D-Ser-Gly-Phe-X-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
(式中、Xは、-NH-(CH2)n-CO-;または-NH-(CH2)n-CO-NH-(CH2)m-CO-である)
を含む群から選択される。
【0010】
好ましい実施形態において、本発明に従う化合物は、
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH-(CH2)5-CO-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2または
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH-(CH2)5-CO-NH-(CH2)5-CO-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2である。
【0011】
本発明は、本発明に従う化合物を活性成分として含む、医薬組成物も提供する。
【0012】
本発明は、本発明に従う化合物の医用使用(特に神経障害性疼痛の治療における使用のための)にも関する。
【0013】
本発明は、図面の添付図を参照して、実動実施例においても詳細に示された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図2】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図3】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図4】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図5】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図6】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図7】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なマウス(対照マウス)における急性疼痛閾値(A)ならびにCCIマウスにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および温度刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、親化合物(UW1(
図1)、SHU9119(
図2))、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図4)およびUW5(
図6))、および対照化合物(UW2(
図3)、UW4(
図5)、UW6(
図7))の髄腔内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図8】注射用水を投与される対照群に比較した、CCIマウスにおける機械刺激(A)(von Frey試験)および温度刺激(B)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図8)、UW5(
図9))の静脈内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図9】注射用水を投与される対照群に比較した、CCIマウスにおける機械刺激(A)(von Frey試験)および温度刺激(B)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図8)、UW5(
図9))の静脈内投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図10】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なラットにおける急性疼痛閾値(A)ならびにCCIラットにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および機械刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、用量0.1μg/5μl/ラットでの、親化合物(UW1/エンケファリン(
図10)、SHU9119(
図11))、および本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図12)、UW5(
図13))の投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図11】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なラットにおける急性疼痛閾値(A)ならびにCCIラットにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および機械刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、用量0.1μg/5μl/ラットでの、親化合物(UW1/エンケファリン(
図10)、SHU9119(
図11))、および本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図12)、UW5(
図13))の投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図12】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なラットにおける急性疼痛閾値(A)ならびにCCIラットにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および機械刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、用量0.1μg/5μl/ラットでの、親化合物(UW1/エンケファリン(
図10)、SHU9119(
図11))、および本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図12)、UW5(
図13))の投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【
図13】注射用水を投与される対照群に比較した、健康なラットにおける急性疼痛閾値(A)ならびにCCIラットにおける機械刺激(B)(von Frey試験)および機械刺激(C)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、用量0.1μg/5μl/ラットでの、親化合物(UW1/エンケファリン(
図10)、SHU9119(
図11))、および本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3(
図12)、UW5(
図13))の投与の影響についての研究の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物は、それらの生物学的活性に関与する2つの構成要素(リンカーによって接続される、オピオイド受容体アゴニストおよびMC4受容体アンタゴニスト)を含むという点で特徴づけられる。本発明に従う特に好ましいペプチド模倣物の式は、オピオイドアゴニストとして式Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH
2(UW1)のエンケファリンアナログ(式Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-OHのオピオイドペプチド)およびMC4受容体アンタゴニストとしてSHU9119(Hruby et al.,1995中で報告される、式Ac-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2のペプチド)を含み、それは以下に示される。
【化1】
(式中、Xは、両方の生物学的に活性のある構成要素の好適な且つ同時の作用を提供するのに適合したリンカーである)。上記のように、特に好ましいリンカーは、NH-(CH
2)
n-CO-(-εAhx-としても本明細書中で称される)、または-NH-(CH
2)
n-CO-NH-(CH
2)
m-CO-(-εAhx-εAhx-としても本明細書中で称される)である。
【0016】
リンカーの選択は、本発明に従う化合物の高い生物学的活性を治療レベルで維持するために重要である。本発明者は、参照ハイブリッドペプチド(UW2、UW4およびUW6として表わされる)を合成し、以下の実施例において示されるように、それらは本発明に従う化合物とはリンカーで異なっており、その鎮痛特性ははるかに悪かった。対照化合物の配列を以下に示す。
UW2:Tyr-D-Ala-Gly-Phe-D-Ala-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2;
UW4:Tyr-D-Ala-Gly-Phe-β-Ala-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2;
UW6:Tyr-D-Ala-Gly-Phe-4AMB-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2。
対照化合物として、UW1と表わされる、以下の構造を備えたエンケファリン誘導体:UW1:Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH2、およびSHU9119(すなわちハイブリッドペプチド模倣物を構成する親化合物)が使用された。
【0017】
オピオイドアゴニスト構成要素(すなわちエンケファリン誘導体)にさらなる修飾を行って、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物のさらに良好な活性を得ることができる。位置1(Tyr1)でチロシン残基をL-2,6-ジメチルチロシン(DMT)残基により置換することが特に好ましい。他の修飾(例えば位置2のD-アラニン残基(D-Ala)をDスレオニン残基(D-Thr)もしくはD-セリン(D-Ser)により、および/または位置3のグリシン(Gly)をフェニルアラニン(Phe)により置換する)も、可能である。
【0018】
遂行された研究の結果において、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物は、鎮痛効果の2つの構成要素に同時に作用しながら、痛覚の経路の同じフラグメント内の両方の系に対する(鎮痛活性化および痛覚抑制に対する)同時効果を提供し、神経系の上行路での疼痛抑制プロセスの増倍をもたらすことが見出された。ハイブリッドの対応する構成要素の単独での投与は、それらの各々の異なる分布に起因してかかる効果を産生せず、それは鎮痛効果消失を導く。適切なリンカーによりオピオイドアゴニストおよびMC4受容体アンタゴニストを1つのハイブリッドペプチド模倣物へと組み合わせることは、標的作用部位(すなわち2つの受容体)に同時に達する、ペプチド模倣物の活性構成要素をもたらす。構成要素の各々を分離して投与する事例において、追加の因子(特定の構成要素の吸収率、それらの代謝、および患者の血中循環からのクリアランス率等)の重要な役割に起因して、この効果を得ることは不可能であり、言及された因子は、構成要素が受容体を同時に到達するのを阻止し、したがってそれらの同時の活性を妨げるだろう。
【0019】
本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物の構造に起因して、神経障害性疼痛(それは5分の1のヨーロッパ人に影響し、社会の高齢化のせいで安全な治療をより頻繁に要求する)の治療法のより強力な正の効果を得ることは可能である。以下の実施例において示されるように、ED50値(すなわち所与の物質の最大効果の半分(50%)に到達する投薬量、または研究される個人の50%が期待される効果を提示する投薬量)の比較によって、非常に低い投薬量で本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物を用いることができた。これに起因して、それらはいかなる副作用もももたらすべきでなく、このことは神経障害性疼痛の慢性度を考慮して、かかる薬物の適用において非常に必須の条件である。
【0020】
本発明によれば、本発明者によって開発されたハイブリッドペプチド模倣物は、当技術分野において公知のプロセスによって塩および水和物の形態で調製することができた。「塩」という用語は、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物のアミン基またはグアニジン基による薬学的に許容される酸付加塩に関連する。酸付加塩としては、例えば鉱酸(例えば塩酸または硫酸等)の塩、および有機酸(酢酸またはシュウ酸等)の塩の両方が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明は、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物の形態での活性構成要素および薬学的に許容される補助物質を含む、神経障害性疼痛の治療のための医薬組成物を提供する。補助物質の例は担体であり、それらは大きく緩慢に代謝されるマクロ粒子(タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸のコポリマー、および不活性ウイルス分子等)を含む。液体(水、正常食塩水、グリセロールおよびエタノール等)は、代替の担体であり得る。本発明に従う医薬組成物中で、要求される投薬形態への活性成分の製剤を支援する、他の補助物質(湿潤剤および乳化剤またはpH調節剤等)も存在し得る。
【0022】
定義
特別に定義されない限り、本記載中で適用される用語は、当業者にとって一般的に明らかな意味を持つ。
【0023】
アゴニストという用語は、受容体の結合によって、細胞における生物学的応答を惹起する化合物を意味する。アゴニストの例は、オピオイドアゴニストUW1:Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH2である。アンタゴニストという用語は、受容体に結合するが、生物学的応答を惹起しない化合物を意味する。例示的なMC4アンタゴニストは、SHU9119:
Ac-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH2
である。
【0024】
本出願内で、アミノ酸の標準名称が使用され、キラリティーはDアミノ酸の事例のみで表わされる。本明細書において使用される他の名称を、以下に提示する。
4AMB:4-アミノメチル安息香酸;
Ac:アセチル基;
Boc:tert-ブトキシカルボニル基;
Bom:ベンジルオキシメチル基;
DCM:ジクロロメタン;
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;
DMF:ジメチルホルムアミド;
DMT:2,6-ジメチル-L-チロシン;
Fmoc:9-フルオレニルメトキシカルボニル基;
For:ホルミル基;
HBTU:(O-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-N-N-N’-N’-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスファート;
Nal(2’):3-(2’-ナフチル)-L-アラニン;
TBTU:(O-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)-N-N-N’-N’-テトラメチル-ウロニウムテトラフルオロボラート;
tBu:tert-ブチル基;
Tos:トシル(p-トルエンスルホニル)基;
MBHA樹脂:4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂;
β-Ala:3-アミノプロパン酸;
εAhx:6-アミノヘキサン酸;
【実施例】
【0025】
実施例1:ハイブリッドペプチドの合成およびESI MS分析
合成
すべてのハイブリッドペプチド(本発明に従う化合物(UW3およびUW5)および対照化合物(UW2、UW4およびUW6)の両方)を、以下の手順に従って同じ手法で合成した。
【0026】
ペプチドの合成を、0.27mmol/gのローディングによるポリマー性MBHA支持体上で実行した。合成は、アミノ酸誘導体:Boc-L-Lys(Fmoc)-OH、Boc-L-Trp(For)-OH、Boc-L-Arg(Tos)-OH、Boc-D-Nal(2’)-OH、Boc-L-His(Bom)-OH、Boc-L-Asp(OFm)-OH、Boc-L-Nle-OH、Boc-L-Phe-OH、Boc-Gly-OH、Boc-D-Ala-OH、Boc-L-Tyr(tBu)-OHを利用した。好適なアミノ酸の誘導体:Fmoc-εAhx-OH、Boc-D-Ala-OHまたはBoc-β-Ala-OHまたはFmoc-4AMB-OHをリンカーの調製のために使用した。α-アミノ官能基からBoc保護を除去するために、DCM中の50%のトリフルオロ酢酸の溶液を使用した一方で、DMF中の30%のピペリジンの溶液を使用してFmoc保護を除去した。カップリング反応を、MBHA樹脂のローディングの程度に基づいて、試薬の3倍のモル過剰によるN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の存在下において、カップリング試薬として主にN,N’-ジイゾプロピルカルボジイミド(diizopropylcarbodiimide)(DIC)の使用によるカルボジイミドプロセスによって遂行した。反応を2時間実行した。すべてのアミノ酸残基の付加効率を、遊離アミン基の存在についてニンヒドリン(Kaiser)試験によってモニターした。遊離アミノ基がカップリング後に検出されたならば、カップリング反応を、HOBtおよびDIPEAの存在下においてカップリング試薬としてHBTUまたはTBTUの使用により反復した。ラクタム環を形成するために、アスパラギン酸残基(OFm)およびリジン残基(Fmoc)の側鎖中の官能基の保護を、DMF中の30%のピペリジンの溶液の使用によって除去し、続いて、4時間のカルボジイミド法による環化を行った。ニンヒドリン試験の陰性の結果(遊離アミン基の非存在)が得られるまで、環化を反復した。環化の最終的なステップにおいて(第4または第5の反復で)、ウロニウム塩法を適用した。環化反応は通常16~20時間続いた。環化が完了した後に、ペプチド合成を継続した。樹脂からのペプチドの除去およびアミノ酸側鎖中の官能基からの残存する保護の除去を、アニソールの存在下で液体水素フルオリドとの反応において0℃で60分間実行した。
【0027】
合成の一続きのステップを以下に示す。
I.ポリマー性支持体(Boc-Nle-Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys-MBHA)上でのSHU9119断片の合成;
II.ペプチド鎖の環化(Asp7残基とLys12残基との間のラクタム環の形成);
III.化合物Xの付加;
IV.オピオイドアゴニストとしての、エンケファリン断片のテトラペプチドアナログ(Tyr-D-Ala-Gly-Phe-NH2)またはそのアナログの合成;
V.液体HFによる保護基の同時除去による樹脂からのペプチドの除去;
VI.RP-HPLCによるペプチドの精製;
VII.質量分析によるハイブリッドペプチドの構造の確認。
【0028】
得られた産物を、従来の手段によって薬学的に許容される塩に変換することができる。
【0029】
分析および精製
得られたハイブリッドペプチドの分析および精製を、KNAUER液体クロマトグラフ上のRP HPLCによって遂行した。質量スペクトルを、ESIイオン源(エレクトロスプレー)、イオントラップおよび飛行時間分析器を具備したShimadzu LC-MSの質量分析器で記録した。分析を正イオンモードで実行した。
【0030】
分析データ
得られた化合物の分析データを、以下に提示する。
ペプチド模倣物UW2(対照化合物)
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-D-Ala-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
C
78H
100N
20O
14、分子量1540.8g/mol
ESI MS解析結果
【表1】
ペプチド模倣物UW3(本発明に従う化合物)
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-εAhx-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
C
81H
106N
20O
14、分子量1583.8g/mol
ESI MS解析結果
【表2】
ペプチド模倣物UW4(対照化合物)
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-β-Ala-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
C
78H
100N
20O
14、分子量1540.8g/mol
ESI MS解析結果
【表3】
ペプチド模倣物UW5(本発明に従う化合物)
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-εAhx-εAhx-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
C
87H
117N
21O
15、分子量1697g/mol
ESI MS解析結果
【表4】
ペプチド模倣物UW6(対照化合物)
Tyr-D-Ala-Gly-Phe-4AMB-Nle-シクロ[Asp-His-D-Nal(2’)-Arg-Trp-Lys]-NH
2
C
83H
102N
20O
14、分子量1603.8g/mol
ESI MS解析結果
【表5】
【0031】
実施例2:神経障害性疼痛のマウスおよびラットのモデルでの前臨床研究
本発明に従う化合物の鎮痛効率を、神経障害性疼痛のマウスモデルでの前臨床研究の第1ステージにおいて試験した。このステージを使用して、最も強力な活性を備えたハイブリッドペプチド模倣物を選択し、したがって要求される強力な生物学的効果を提示する研究される化合物のものについての非常に重要な情報を得る。対照化合物(それは鎮痛効果の要求される効力に到達しなかった(UW2、UW4およびUW6))は、薬理学的研究の第2ステージへ合格しなかった。この研究ステージは、マウスおよびラットで遂行される追加調査の第2ステージを決定し、それには、強力な活性を備えた本発明に従う2つのハイブリッドペプチド模倣物UW3およびUW5および比較目的のためにそれらの親化合物:UW1、SHU9119およびエンケファリンを選択した。
【0032】
マウス研究
アルビノSwissマウスに、Bennett and Xie,Pain 33,87-107,1998によって開発されたモデルに従って、右側坐骨神経の緩い片側結紮(慢性絞扼損傷、CCI)を行った。この手順の7日後に、ニューロパシーに起因する痛覚過敏症を実証するために行動試験(触覚刺激への過敏性を測定するvon Frey試験、および温度刺激への過敏性を測定するコールドプレート試験)を遂行した。CCIの手順から7~14日目で、最も強力で永続的な過敏性レベルが得られる時に、選択された用量のハイブリッド化合物の髄腔内投与の30、90および180分後に、行動試験を遂行した。この試験は、神経障害性疼痛のモデルにおいて新規の化合物の鎮痛効率を決定することを可能にした。同じタイムポイントでの対照マウス(神経障害性疼痛を特徴づける過敏性の非存在による)において、テールフリック試験を遂行して、ハイブリッドペプチド模倣物の髄腔内投与後の急性疼痛における疼痛閾値を決定した。
【0033】
マウスについての第1ステージ研究の結果の考察
対照マウスおよび神経障害性疼痛のマウスモデルにおける、ハイブリッドペプチド模倣物の髄腔内投与後の鎮痛活性を、
図1~7中で示す。スタンダード親化合物(オピオイド受容体アゴニスト:UW1およびMC4受容体アンタゴニスト:SHU9119)の活性曲線を、
図1および2中で示す。両方の親化合物は対照マウスにおいて活性を示すが、神経障害性疼痛におけるそれらの活性は、両方または少なくとも1つの過敏性決定試験において弱められた。しかしながら、健康なマウスにおいて限定的な鎮痛効率を備えた本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物UW3、UW5(それぞれ
図4および6)は、ニューロパシー症状の有るマウスにおいてより高い鎮痛効率により特徴づけられ、それはハイブリッドの活性についての仮説の正当性を確かにし、神経障害性疼痛における化合物の高い効率を提供する。
【0034】
マウスについての第2ステージ研究の結果の考察
薬理学的試験の第2ステージにおいて、注射用水を投与される対照群に比較した、機械刺激(A)(von Frey試験)および温度刺激(B)(コールドプレート試験)の閾値への感受性に対する、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3、UW5)の末梢静脈内投与の効果を、ニューロパシーモデルのマウスで試験した(
図8および9)。研究を、マウスでのCCI手順から7~14日目に、選択された用量でのハイブリッドペプチド模倣物UW3およびUW5の静脈内投与の15、30および120分後に、遂行した。これらの研究は、末梢投与後の神経障害性疼痛のモデルにおいても本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3、UW5)の高い鎮痛効率を示し、このことは、提案される臨床研究の事例におけるそれらの末梢投与の可能性のため、提案される薬物としてのそれらの価値を著しく上昇させる。
【0035】
ラットについての第2ステージ研究の結果の考察
Wistarのラットに、Physiol.Behav.17,1031-1036,1976中で記載されるYaksh,T.L.,Rudy,T.A.の方法による髄腔内投与のためにカニューレ挿入を行い、この手順の7日後に、Bennett and Xie(1988)によって開発されたモデルに従って、右側坐骨神経の緩い片側結紮(慢性絞扼損傷、CCI)を行った。CCIの手順から7日後に、行動試験(von Frey試験およびコールドプレート試験)を遂行して、触覚刺激および温度刺激への過敏性をそれぞれ測定した。神経損傷後に発生する2つのタイプの刺激への過敏性は、ニューロパシーの症状である。行動試験を、選択されたハイブリッド化合物およびその構成要素部分[エンケファリン/化合物UW1(オピオイドアゴニスト)およびSHU9119(MC4受容体アンタゴニスト)]の髄腔内投与の15、30、120および240分後に、遂行した。
【0036】
ラットについての研究の結果の考察
対照ラットおよび神経障害性疼痛のラットモデルにおける、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物UW3およびUW5の鎮痛活性を、
図10~13で示す。スタンダード親化合物(オピオイド受容体アゴニスト:UW1、MC4受容体アンタゴニスト:SHU9119およびエンケファリン)の活性グラフは、健康な動物および神経障害性疼痛のラットモデルの両方に関してそれらの弱い活性を示す。本発明に従う新規のハイブリッドペプチド模倣物(UW3およびUW5)も、対照動物において非常に弱い活性を提示するが、神経障害性疼痛のラットモデルにおけるそれらの鎮痛活性の強度は、遂行された試験において最大値に到達する。新規のハイブリッドペプチド模倣物は、損傷後に発生した、両方の刺激への過敏性を強力に打ち消し、それらの活性が、神経損傷後に発生する病理の両方の要素を包含することを意味する。
【0037】
ハイブリッドペプチド模倣物活性の効率
本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物の活性の効率は、ED
50パラメーター[すなわち所与の物質の最大効果の半分(50%)に到達する投薬量、または研究される個人の50%が期待される効果を提示する用量]の提供によって、特徴づけられた。対照動物(疼痛閾値を試験する、テールフリック反射)および神経障害性疼痛のモデル[機械的刺激(von Frey)および温度刺激(コールドプレート2℃)への感受性を試験する]におけるUW1、SHU9119、および本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3およびUW5)の活性として、計算の結果を表1中で示す。結果を、最大効果の半分(50%)が到達するマイクログラムでの用量(ED
50)について提示した。ED
50値の計算は明らかな用量依存的効果を必要とする。健康なマウスにおいておよびSHU9119の投与後ではかかる活性の欠如のため、この値を計算することができなかった。ED
50値は対照化合物(UW2 UW4 UW6)について、それらの非常に弱く、用量依存性のない鎮痛活性のため、計算されなかった。
【表6】
【0038】
表中で提示されるデータに基づき、本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3およびUW5)の鎮痛活性は親化合物の事例においてよりもはるかに低い用量の投与後に達成されることが、明確に観察できた。UW3の投与後の非常に低いED50値は、その高い生物学的活性を示す。UW3の高い生物学的活性は低用量を使用することを可能にし、オピオイドの低用量も間接的に意味する。この事実は、神経障害性疼痛の慣性的な特性、および多くの事例における所望されない効果の出現を導く薬物の連続投与の必要性を考慮して、重要である。本発明に従うハイブリッドペプチド模倣物(UW3およびUW5)の高い生物学的活性は、神経障害性疼痛における高い鎮痛効率を有し、所望されない効果のより低いリスクを保証する。
【0039】
結論
結論として、神経障害性疼痛のマウスおよびラットのモデルで遂行された前臨床研究の上記の結果に基づいて、本発明に従う化合物の鎮痛効率が神経障害性疼痛において示された。したがって、本発明に従う化合物は、神経障害性疼痛(その治療は依然として不十分である)のための新規療法の開発のための有望な出発点を構成する。