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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】微細気泡発生ノズル本体
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20231204BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A47K3/00 F
B05B1/02 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020018290
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122524
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 拓也
(72)【発明者】
【氏名】秦 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西内 悠祐
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000402(JP,A)
【文献】特開2010-075838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0168879(US,A1)
【文献】韓国公開実用新案第2009-0010385(KR,U)
【文献】特開2008-290051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
B01F 23/231
B05B 1/02
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側端部から下流側端部に向けて、気体が水に溶解している気体溶解加圧水を通過させる減圧管と、
前記上流側端部に開口され、外部から前記減圧管内に前記気体溶解加圧水を導入する導入口と、
前記減圧管のうち前記導入口よりも下流側に設けられ、前記減圧管内に導入された前記気体溶解加圧水を通過させる入口側開口部と、
前記入口側開口部よりも下流側である前記下流側端部に開口された出口側開口部と、
を備えており、
前記入口側開口部の開口面積は前記導入口の開口面積よりも小さく、
前記出口側開口部の開口面積は前記入口側開口部の開口面積よりも大きく、
前記減圧管のうち、前記導入口と前記入口側開口部の間の第1の部分の内周壁に、前記減圧管内を通過する前記気体溶解加圧水の流速を減速させる減速部が形成されており、
前記減速部は、前記入口側開口部の内周壁付近を流れる気体溶解加圧水と、前記入口側開口部の中心付近を流れる気体溶解加圧水と、の間の流速差を大きくするように構成されており、
前記減速部は、前記第1の部分の内周壁の周方向に沿って形成されるとともに、前記導入口から前記入口側開口部に向かうにつれて内径が減少する複数段の段差構造である、
微細気泡発生ノズル本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、微細気泡発生ノズル本体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微細気泡発生ノズルが開示されている。この微細気泡発生ノズルは、微細な噴出孔を有する筒状部材であるノズル本体と、ノズル本体の先端に取り付けられるノズルカバーとを備える。ノズルカバーは、噴出孔に対向する壁と、噴出孔よりも微細な流出孔とを有する。
【0003】
特許文献1の微細気泡発生ノズルでは、気体(例えば空気、炭酸ガス、水素等)が水に溶解している気体溶解加圧水がノズル本体に供給されると、気体溶解加圧水は、ノズル本体を通って噴出孔から壁に向けて噴出される。噴出孔から噴出された気体溶解加圧水は、壁に衝突してノズルカバー内で迂回した後、流出孔から流出箇所(具体的には浴槽)に流出される。気体溶解加圧水は、微細な噴出孔、及び、さらに微細な流出孔を通過することにより、大気圧まで徐々に減圧される。気体溶解加圧水が減圧される過程において、気体溶解加圧水に溶解されていた気体が析出し、微細気泡が発生する。即ち、特許文献1の微細気泡発生ノズルでは、気体溶解加圧水の流通過程で気体溶解加圧水を減圧することにより、流出箇所(具体的には浴槽)に流出される気体溶解加圧水に微細気泡を含ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-167557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の微細気泡発生ノズルでは、流出箇所に流出される気体溶解加圧水に含まれる微細気泡の量が不十分であるという状況が発生する。
【0006】
本明細書では、流出箇所に流出される気体溶解加圧水に微細気泡を大量に含ませることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される微細気泡発生ノズル本体は、上流側端部から下流側端部に向けて、気体が水に溶解している気体溶解加圧水を通過させる減圧管と、前記上流側端部に開口され、外部から前記減圧管内に前記気体溶解加圧水を導入する導入口と、前記減圧管のうち前記導入口よりも下流側に設けられ、前記減圧管内に導入された前記気体溶解加圧水を通過させる入口側開口部と、前記入口側開口部よりも下流側である前記下流側端部に開口された出口側開口部と、を備えている。前記入口側開口部の開口面積は前記導入口の開口面積よりも小さく、前記出口側開口部の開口面積は前記入口側開口部の開口面積よりも大きく、前記減圧管のうち、前記導入口と前記入口側開口部の間の第1の部分の内周壁に、前記減圧管内を通過する前記気体溶解加圧水の流速を減速させる減速部が形成されている。前記減速部は、入口側開口部の内周壁付近を流れる気体溶解加圧水と、入口側開口部の中心付近を流れる気体溶解加圧水と、の間の流速差を大きくするように構成されている。前記減速部は、前記第1の部分の内周壁の周方向に沿って形成されるとともに、前記導入口から前記入口側開口部に向かうにつれて内径が減少する複数段の段差構造である。
【0008】
上記の構成によると、気体溶解加圧水は、外部から減圧管内に導入される際に入口側開口部を通過することによって流速が上昇し、その結果減圧される(ベンチュリー効果)。気体溶解加圧水が減圧されることにより、気体溶解加圧水に溶解していた気体が析出し、微細気泡の元になる気泡(気泡核とも言う)が発生する。その後、減圧管の出口側開口部から排出された気体溶解加圧水は、流出箇所に流出されるまでの間、所定の流通経路を流通されながら増圧される。減圧によって気泡が析出させられた後の気体溶解加圧水が増圧されると、気体溶解加圧水に含まれる気泡が分裂して微細気泡になる。
【0009】
そして、上記の構成によると、減速部が形成されていることで、減速部付近の気体溶解加圧水の流れる向きが不規則になる。この際に流れの剥離が生じる。その結果、減圧管内のうち、減圧管の内周壁付近の流速が、減圧管の径方向中心付近の流速よりも遅くなる。内周壁付近の流速と中心付近の流速との差が大きくなることで、入口側開口部の通過時に、より多くの気泡核が発生する。その結果、上記の微細気泡発生ノズル本体を用いることで、気泡核を元にする微細気泡を大量に発生させることができる。
【0010】
ここで言う「気体」は、空気、炭酸ガス、水素等、水に溶解可能な任意の気体を含む。また、「減速部」は、付近を通過する気体溶解加圧水の流速を遅くすることで流れの剥離を生じさせることができる任意の構成を含む。例えば、段差構造、返し構造、凹凸構造、トゲ(突起)構造、ディンプル構造等のいずれか、もしくはこれらの組合せであってもよい。
【0012】
第1の部分(即ち、減圧管のうち、導入口と入口側開口部の間の部分)の内周壁は、他の部分の内周壁に比べて加工を施しやすい。従って、この構成によると、減速部を有する微細気泡発生ノズル本体を比較的容易に製造できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例の微細気泡発生ノズル10の斜視図。
図2図1のII-II線に沿った微細気泡発生ノズル10の断面図。
図3】第1実施例のノズル本体20の斜視図。
図4】第1実施例のノズル本体20の入口側開口部24近傍の拡大断面図。
図5】第1実施例のホルダ部40の斜視図。
図6】第2実施例のノズル本体20の入口側開口部24近傍の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(微細気泡発生ノズル10の構成)
図1図5を参照して、第1実施例の微細気泡発生ノズル10について説明する。微細気泡発生ノズル10は、浴槽(図示省略)等の流出箇所に微細気泡を含む水を供給するためのノズルである。図1に示すように、微細気泡発生ノズル10は、ノズル本体20と、ホルダ部40と、を備える。図1図2において、ノズル本体20は、ホルダ部40に支持されている。
【0015】
(ノズル本体20の構成)
図1図4を参照して、ノズル本体20の構成について説明する。なお、以下の説明では、図2中のX軸方向を左右方向、Y軸方向を上下方向、Z軸方向を前後方向と呼ぶ場合がある。図3に示すように、ノズル本体20は、減圧管22と鍔部28とを備える。
【0016】
図1図4に示すように、減圧管22は、空気が水に溶解している空気溶解加圧水の圧力を減圧することができる管状部材である。図2に示すように、減圧管22の内部には、減圧管22内を2本の管部に区画する区画壁25が設けられている。減圧管22の後方側の上流側端部22a(図中Z軸の負方向側の端部)には、2個の導入口23が開口されている。導入口23には、空気が水に溶解している空気溶解加圧水を供給するための給水手段(図示しない)から、空気溶解加圧水が供給される。導入口23には上記給水手段が接続されていてもよい。ここで、空気溶解加圧水は、流出箇所に供給される微細気泡を含む水の原料となる液体である。
【0017】
減圧管22のうち、上流側端部22aの近傍であって、2個の導入口23よりもやや前方寄り(即ち、下流側寄り。Z軸の正方向寄りとも言う)の位置には、2個の入口側開口部24が開口されている。入口側開口部24の開口面積は、導入口23の開口面積よりも小さい。言い換えると、減圧管22は、入口側開口部24において縮径されている。区画壁25は、減圧管22の後方側の上流側端部22a(図中Z軸の負方向側の端部)から、減圧管22の途中までの区間を2本の管部に区画している。そのため、減圧管22の前方側の下流側端部22b(図中Z軸の正方向側の端部)は、区画壁25によって2本の管部に区画されていない。下流側端部22bには、1個の出口側開口部26のみが開口されている。本実施例では、出口側開口部26の開口面積(即ちXY平面上の面積)は、2個の入口側開口部24の開口面積(即ちXY平面上の面積)の合計面積よりも大きい。言い換えると、減圧管22は、入口側開口部24から出口側開口部26に向かって拡径されている。
【0018】
図2図4に示すように、減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁には、減速部30が形成されている。本実施例の減速部30は、導入口23と入口側開口部24の間の内周壁に段差を形成した段差構造である。後で詳しく説明するが、減速部30が備えられることで、減速部30付近の気体溶解加圧水の流れる向きが不規則になり、その結果、減圧管22内のうち、内周壁付近の流速が径方向中心付近の流速よりも遅くなる。内周壁付近と中心付近の流速差が大きくなることで、微細気泡の元になる気泡(気泡核とも言う)がより多く生じる。
【0019】
図1図3に示すように、鍔部28は、減圧管22の前後方向中間部付近の外面に設けられている円板状部材である。図2に示すように、鍔部28の外径は、減圧管22の外径よりも大きい。
【0020】
(ホルダ部40の構成)
続いて、図1図2図5を参照して、ホルダ部40の構成について説明する。図5に顕著に示されるように、ホルダ部40は、外側円筒部42と、内側円筒部44と、2個の連結部52と、を備える。外側円筒部42と2個の連結部52とは連続して一体に成形されている。内側円筒部44は、外側円筒部42の内側に収容されて形成されている。
【0021】
外側円筒部42は、円筒状の部材である。図2図5に示すように、後方側の開口部には、上述のノズル本体20の鍔部28を収容するための段差43が形成されている。
【0022】
2個の連結部52は、それぞれ、外側円筒部42の外周面から外側に突出して形成されている。連結部52には、ネジ穴Bが設けられている。連結部52のネジ穴Bは、ホルダ部40を浴槽接続具(図示省略)に取付けるためのネジ穴である。なお、浴槽接続具は、微細気泡発生ノズル10を浴槽に取付けるための機具である。ホルダ部40内に、ノズル本体20を挿入した後に、浴槽接続具の取付穴(図示省略)と連結部52のネジ穴Bを位置合わせし、ネジ部材(図示省略)をネジ穴Bに螺合させることで、微細気泡発生ノズル10と浴槽接続具が連結される。
【0023】
内側円筒部44は、外側円筒部42の内側に収容されて形成されている筒状部材である。内側円筒部44は、4個の接続部48を介して外側円筒部42の内面と接続されている。内側円筒部44と外側円筒部42との間の隙間により、4個の流出口50が形成されている。
【0024】
内側円筒部44の前方側端部には、円板部46が形成されている。円板部46は、内側円筒部44の前方側端部を閉塞している。円板部46のXY平面における中心部には、Y軸に沿って突出部49が形成されている。突出部49は、円板部46の後側の面から後方に向けて突出する略壁状の突起部材である。図5に顕著に示されるように、突出部49によって、円板部46の後側の面が左右に分断される。図2に示すように、突出部49の先端付近は、後方から前方に向かう方向(即ち、空気溶解加圧水の流れ方向(図2中矢印参照))に沿って見た場合に、当該方向に対してやや傾斜している。言い換えると、突出部49の先端付近は、後方に向かって丸く尖るように形成されている。
【0025】
(ノズル本体20がホルダ部40に支持される状態)
続いて、ノズル本体20がホルダ部40に支持される状態における各構成要素の位置関係について説明する。図1図2に示すように、ノズル本体20がホルダ部40に支持されることにより、本実施例の微細気泡発生ノズル10が形成される。この状態では、ノズル本体20のうち、減圧管22の下流側端部22b及び鍔部28がホルダ部40内に差し込まれている。具体的には、減圧管22の下流側端部22bは、ホルダ部40の内側円筒部44(後述)内に差し込まれている。また、鍔部28は、外側円筒部42の開口部に形成されている段差43内に収容されている。この際、鍔部28の前面28aは、段差43と当接する。ノズル本体20がホルダ部40に支持されている状態では、減圧管22の上流側端部22aは、ホルダ部40の後方側に突出している。
【0026】
図2に示すように、ノズル本体20がホルダ部40に支持される状態では、突出部49の先端部分は、減圧管22の下流側端部22bに対向して配置される。さらに言うと、突出部49の先端部分は、区画壁25の前端部と対向している。そして、この状態では、減圧管22の下流側端部22bと円板部46とが対向するように配置される。
【0027】
ノズル本体20がホルダ部40に支持されることにより、ノズル本体20とホルダ部40とによって、流路空間62、通路64、流路空間66、及び、通路68が形成される。流路空間62、通路64、流路空間66、通路68は、いずれも、空気溶解加圧水をこの順で流通させるための空間及び通路である。
【0028】
流路空間62は、減圧管22の下流側端部22bと円板部46との間に形成される。流路空間62の流路面積は、どの部分においても、上述の出口側開口部26の流路面積の合計面積よりも大きい。詳しく言うと、減圧管22の下流側端部22bの前方における、下流側端部22bの延長線と突出部49との間の空間のXY平面上の面積、および、下流側端部22bと円板部46との間の空間の面積(より詳しくは、円板部46のXY平面上の中心から垂直に伸びる軸線を中心軸とし、かつ、XY平面上における上記中心軸と下流側端部22bの外側とを結ぶ線を半径とする仮想的な円柱のうち、下流側端部22bと円板部46との間の範囲の外側面部分の面積)のいずれもが、上述の出口側開口部26の流路面積の合計面積よりも大きい。
【0029】
通路64は、流路空間62の下流側に形成される。通路64は、内側円筒部44の内面と、内側円筒部44内に配置された減圧管22の外面との間に形成される。ここで、通路64の流路面積(即ちXY平面上の面積)は、上述の流路空間62のどの部分の流路面積よりも大きい。
【0030】
流路空間66は、通路64の下流側に形成される。流路空間66は、内側円筒部44の後端と鍔部28の前面28aとの間に形成される。流路空間66は、内側円筒部44の後端、外側円筒部42の内面、減圧管22の外面、及び、鍔部28の前面28aによって画定される空間である。流路空間66の流路面積は、どの部分においても、上述の通路64の流路面積よりも大きい。詳しく言うと、内側円筒部44の後端と減圧管22の外面の間の空間のXY平面上の面積、内側円筒部44の後端と鍔部28の前面28aとの間の空間の面積(より詳しくは、円板部46のXY平面上の中心から垂直に伸びる軸線を中心軸とし、かつ、XY平面上における上記中心軸と内側円筒部44の外側とを結ぶ線を半径とする仮想的な円柱のうち、内側円筒部44の後端と前面28aとの間の範囲の外側面部分の面積)、および、内側円筒部44の後端と外側円筒部42の内面との間の空間のXY平面上の面積、のいずれもが、上述の通路64の流路面積よりも大きい。
【0031】
通路68は、流路空間66の下流側に形成される。通路68は、流路空間66と流出口50とを接続する通路である。通路68は、外側円筒部42の内面と内側円筒部44の外面との間の隙間によって形成される。ここで、通路68の流路面積(即ちXY平面上の面積)は、上述の流路空間66のどの部分の流路面積よりも大きい。
【0032】
(空気溶解加圧水の流れ)
図2図4を参照して、微細気泡発生ノズル10内における空気溶解加圧水の流れ、及び、それに伴って微細気泡が形成される過程について説明する。図2図4において、実線矢印が空気溶解加圧水の流路を示している。
【0033】
図2図4に示すように、まず、ノズル本体20の導入口23を介して、外部から空気溶解加圧水が減圧管22内に導入される。この時点における空気溶解加圧水の圧力は、大気圧よりも大きい。
【0034】
導入口23から導入された空気溶解加圧水は、導入口23よりも開口面積が小さい入口側開口部24を通過する。これにより、空気溶解加圧水の流速が上昇し、空気溶解加圧水が大気圧よりも低い圧力まで減圧される(即ちベンチュリー効果による減圧)。空気溶解加圧水が減圧されることにより、空気溶解加圧水に溶解していた空気が析出し、気泡が発生する。
【0035】
ただし、本実施例では、上述の通り、減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁には、段差構造の減速部30が形成されている。そのため、図4の波型矢印に示すように、減速部30付近を流れる空気溶解加圧水は、減速部30に当たって流れる向きが不規則になる。この際に流れの剥離が生じる。その結果、減圧管22内のうち、内周壁付近の流速(図4の波型矢印参照)が径方向中心付近の流速(図4の直線矢印参照)よりも遅くなる。その結果、空気溶解加圧水が入口側開口部24を通過する際における内周壁付近と中心付近の流速差が大きくなり、微細気泡の元になる気泡(気泡核とも言う)がより多く生じる。
【0036】
上記の通り、本実施例では、減圧管22は、入口側開口部24から出口側開口部26に向けて流路面積が増加するように形成されている。そのため、入口側開口部24を通過したことで減圧された減圧管22内の空気溶解加圧水が入口側開口部24から出口側開口部26に向かって減圧管22内を流れる間に、空気溶解加圧水の流速が低下する。流速が低下する結果、空気溶解加圧水が増圧される。空気溶解加圧水が増圧されることにより、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部が分裂して微細気泡になる。
【0037】
出口側開口部26に向かって減圧管22内を流れてきた空気溶解加圧水は、出口側開口部26から流路空間62内へと排出される。上記の通り、流路空間62の流路面積は、出口側開口部26の流路面積より大きい。そのため、出口側開口部26を通って流路空間62内へと排出された空気溶解加圧水の流速はさらに低下する。これにより、空気溶解加圧水はさらに増圧される。その結果、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部がさらに分裂して微細気泡になる。
【0038】
また、流路空間62内へと排出された空気溶解加圧水は、円板部46に衝突する。この際、流路空間62内へと排出された空気溶解加圧水の一部は、突出部49に衝突した後で円板部46に衝突する。これにより、空気溶解加圧水が流れる向きが変更されるとともに、空気溶解加圧水の流速がさらに低下する。空気溶解加圧水がさらに増圧され、結果として、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部がさらに分裂して微細気泡になる。
【0039】
円板部46に衝突した後の空気溶解加圧水は、通路64を通過して流路空間66内へと排出される。上記の通り、通路64の流路面積は、流路空間62のどの部分の流路面積よりも大きい。そして、流路空間66の流路面積は、通路64の流路面積よりも大きい。そのため、通路64を通過して流路空間66内へと排出された空気溶解加圧水の流速はさらに低下する。空気溶解加圧水がさらに増圧され、結果として、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部がさらに分裂して微細気泡になる。
【0040】
そして、流路空間66内へと排出された空気溶解加圧水は、鍔部28の前面28aに衝突する。これにより、空気溶解加圧水が流れる向きが変更されるとともに、空気溶解加圧水の流速がさらに低下する。空気溶解加圧水もさらに増圧される。その結果、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部がさらに分裂して微細気泡になる。
【0041】
鍔部28の前面28aに衝突した後の空気溶解加圧水は、通路68を通過し、流出口50から流出箇所(浴槽等)に向けて流出する。上記の通り、通路68の流路面積は、流路空間66のどの部分の流路面積よりも大きい。通路68を通過する空気溶解加圧水の流速はさらに低下する。そして、流出箇所に空気溶解加圧水が流出されることにより、空気溶解加圧水の流速がさらに低下し、空気溶解加圧水はさらに増圧される。その結果、空気溶解加圧水に含まれる気泡の一部がさらに分裂して微細気泡になる。
【0042】
以上、本実施例の微細気泡発生ノズル10の構成及び作用について説明した。上記の通り、本実施例では、ノズル本体20が減速部30を有することで、空気溶解加圧水が入口側開口部24を通過する際における内周壁付近と中心付近の流速差が大きくなり、微細気泡の元になる気泡(気泡核)がより多く生じる(図4参照)。その結果、本実施例の微細気泡発生ノズル10によると、流出箇所に流出される空気溶解加圧水には、微細気泡を大量に含ませることができる。
【0043】
また、本実施例では、減速部30は、減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁に形成されている。この部分(即ち、導入口23と入口側開口部24の間の部分)の内周壁は、他の部分の内周壁に比べて加工を施しやすい。従って、この構成によると、減速部30を有するノズル本体20を比較的容易に製造できるという利点がある。
【0044】
本実施例のノズル本体20が「微細気泡発生ノズル本体」の一例である。減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分が「第1の部分」の一例である。
【0045】
(第2実施例)
図6を参照して、第2実施例の微細気泡発生ノズルについて、第1実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例は、第1実施例の変形例の一つである。図6では、第1実施例と同じ構成を有する要素を、図1図5で用いられる符号と同じ符号を用いて表している。図6に示すように、本実施例では、ノズル本体20の減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁に形成される減速部130の形状が、第1実施例とは異なっている。
【0046】
本実施例の減速部130は、減圧管22の上流側端部22a側(図中Z軸の負方向側)に向けて内壁面が突出するいわゆる「返し構造」を有している。
【0047】
図6の波型矢印に示すように、本実施例でも、減速部130付近を流れる空気溶解加圧水は、減速部130に当たって流れる向きが不規則になる。その結果、減圧管22内のうち、内周壁付近の流速(図6の波型矢印参照)が径方向中心付近の流速(図6の直線矢印参照)よりも遅くなる。その結果、空気溶解加圧水が入口側開口部24を通過する際における内周壁付近と中心付近の流速差が大きくなり、微細気泡の元になる気泡(気泡核とも言う)がより多く生じる。そのため、本実施例のノズル本体20を使用する場合も、第1実施例と同様に、流出箇所に流出される空気溶解加圧水には、微細気泡を大量に含ませることができる。
【0048】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0049】
(変形例1)上記の各実施例では、減速部30、130は、減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁に形成されている(図4図6参照)。これに限られず、減速部は、減圧管22のうち、入口側開口部24よりも下流側であって入口側開口部24近傍の部分の内周壁に形成されてもよい。また、さらに他の例では、減速部は、減圧管22のうち、導入口23と入口側開口部24の間の部分の内周壁と、入口側開口部24よりも下流側であって入口側開口部24近傍の部分の内周壁と、の双方に形成されてもよい。
【0050】
(変形例2)減速部は、第1、第2実施例で開示した段差構造、返し構造に限られず、付近を通過する気体溶解加圧水の流速を遅くすることで流れの剥離を生じさせることができる任意の構成で形成されていてもよい。例えば、段差構造、返し構造、凹凸構造、トゲ(突起)構造、ディンプル構造等のいずれか、もしくはこれらの組合せであってもよい。
【0051】
(変形例3)上記の各実施例では、微細気泡発生ノズルは、空気が水に溶解した空気溶解加圧水の供給を受け、空気溶解加圧水内の空気を析出させて微細気泡に変え、空気の微細気泡を含む水を流出箇所に供給する。これに限られず、微細気泡発生ノズルは、空気以外の他の気体(例えば、炭酸ガスや水素等)が水に溶解した気体溶解加圧水の供給を受け、当該気体溶解加圧水内の気体を析出させて微細気泡に変え、その期待の微細気泡を含む水を流出箇所に供給するようにしてもよい。即ち、「気体」は空気に限られず、炭酸ガスや水素等の任意の気体であってもよい。
【0052】
(変形例4)減圧管22の区画壁25が省略されていてもよい。即ち、減圧管22は、2本の管部に区画されていなくてもよい。
【0053】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
10:微細気泡発生ノズル
20:ノズル本体
22:減圧管
22a:上流側端部
22b:下流側端部
23:導入口
24:入口側開口部
25:区画壁
26:出口側開口部
28:鍔部
28a:前面
30:減速部
40:ホルダ部
42:外側円筒部
43:段差
44:内側円筒部
46:円板部
48:接続部
49:突出部
50:流出口
52:連結部
62:流路空間
64:通路
66:流路空間
68:通路
130:減速部
B:ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6