(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】杭配置システム、杭配置方法及び杭配置プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20231204BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20231204BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20231204BHJP
【FI】
G06F30/13
E02D27/12 Z
G06F111:04
(21)【出願番号】P 2023091918
(22)【出願日】2023-06-02
【審査請求日】2023-06-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312002967
【氏名又は名称】金城重機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100224719
【氏名又は名称】長谷川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】浦澤 将
(72)【発明者】
【氏名】細川 英之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 高夫
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235693(JP,A)
【文献】特開2020-148013(JP,A)
【文献】特開平08-166983(JP,A)
【文献】特開2006-127186(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116090054(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116070323(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E02D 27/12
G06F 111/04
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の杭を配置する杭配置方法であって、
コンピュータが、
建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出ステップと、
前記柱軸力に基づいて、配置される前記杭の必要最低本数を決定する決定ステップと、
前記必要最低本数に基づいて、前記杭の配置場所を決定する配置ステップと、を
実行し、
前記配置ステップは、前記配置された杭と前記杭が配置された梁に沿って並ぶ杭又は該梁に連結する柱との間隔、前記杭が配置された梁に連結する柱にかかる前記柱軸力、及び該間隔毎における前記柱軸力の上限を示す柱軸力制限に基づいて、前記杭を配置するか否かを判定する判定ステップを含む杭配置方法。
【請求項2】
前記杭配置方法は、杭特定ステップを更に含み、
前記杭特定ステップでは、所定間隔に3本以上の杭が配置された場合に、端点となる前記杭を特定し、
前記配置ステップでは、前記所定間隔において該特定された杭のみを配置する、請求項1に記載の杭配置方法。
【請求項3】
前記判定ステップでは、前記建築物の建物角に前記杭が配置されていない場合であって、前記建物角からの所定区間に前記杭が配置されている場合に、前記建物角の柱及び該杭の間隔と、該間隔における前記柱軸力制限と、前記建物角の柱にかかる前記柱軸力とに基づいて、前記建物角に前記杭を配置するか否かを判定する、請求項
1又は請求項2に記載の杭配置方法。
【請求項4】
前記判定ステップでは、前記建物角の柱及び該杭の間隔における前記柱軸力制限に基づいて、前記柱軸力が該柱軸力制限よりも大きい場合に、前記建物角に前記杭を配置するものと判定する、請求項
3に記載の杭配置方法。
【請求項5】
前記杭配置方法は、柱特定ステップを更に含み、
前記柱特定ステップでは、前記所定区間に配置された杭のうち、前記柱軸力が最小の柱を特定し、
前記配置ステップでは、該特定された柱軸力が最小の柱下に配置した前記杭に代えて、前記建物角に前記杭を配置する、請求項
4に記載の杭配置方法。
【請求項6】
前記配置ステップでは、前記建築物の建物角に前記杭が配置されていない場合であって、前記建物角からの所定区間に前記杭が配置されていない場合に、前記建物角に前記杭を配置する、請求項
1又は請求項2に記載の杭配置方法。
【請求項7】
前記判定ステップでは
、2つの杭の間隔における前記柱軸力制限、及び前記杭が配置された梁に連結する柱であって、
前記2つ
の杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力に基づいて、前記2つの杭の間に前記杭を配置するか否かを判定する、請求項
1又は請求項2に記載の杭配置方法。
【請求項8】
前記杭配置方法は、柱特定ステップを更に含み、
前記柱特定ステップでは、前記2つの杭の間に配置されるものと判定された杭上に柱がない場合には、該杭が配置されるものと判定された梁に連結する柱のうち柱軸力が最大の柱を特定する、請求項
7に記載の杭配置方法。
【請求項9】
前記配置ステップでは、所定の間隔を有す
る2つの杭の間に所定本数以上の杭が配置されている場合に、前記2つの杭の間の柱にかかる柱軸力、及び該間隔における前記柱軸力制限に基づいて、前記2つの杭の間に配置された杭の配置を変更する、請求項1又は請求項2に記載の杭配置方法。
【請求項10】
前記判定ステップでは、所定間隔内に前記杭が配置されていない柱がある場合に、該柱にかかる前記柱軸力に基づいて、該柱下に前記杭を配置するか否かを判定し、
前記所定間隔内に前記杭が配置されていない柱がなくなるまで、柱下に前記杭を配置するか否かを判定し、
前記配置場所が決定された杭の本数が前記必要最低本数よりも多い場合に、所定間隔内に所定本数以上の杭が配置されている箇所について、該箇所の柱にかかる前記柱軸力に基づいて、前記杭の配置を変更するか否かを判定し、
前記配置ステップでは、前記判定ステップの判定結果に基づいて前記杭の配置場所を決定する、請求項1又は請求項2に記載の杭配置方法。
【請求項11】
建築物の杭配置の設計を支援する杭配置システムであって、
建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出手段と、
前記柱軸力に基づいて、配置される杭の必要最低本数を決定する決定手段と、
前記配置された杭と前記杭が配置された梁に沿って並ぶ杭又は該梁に連結する柱との間隔、前記杭が配置された梁に連結する柱にかかる前記柱軸力、及び該間隔毎における前記柱軸力の上限を示す柱軸力制限、並びに前記必要最低本数に基づいて、前記杭を配置するか否かを判定する判定手段と、
判定結果に基づいて、前記杭の配置場所を決定する配置手段と、を備える杭配置システム。
【請求項12】
建築物の杭配置の設計を支援する杭配置プログラムであって、
前記杭配置プログラムは、コンピュータを、
建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出手段と、
前記柱軸力に基づいて、配置される杭の必要最低本数を決定する決定手段と、
前記配置された杭と前記杭が配置された梁に沿って並ぶ杭又は該梁に連結する柱との間隔、前記杭が配置された梁に連結する柱にかかる前記柱軸力、及び該間隔毎における前記柱軸力の上限を示す柱軸力制限、並びに前記必要最低本数に基づいて、前記杭を配置するか否かを判定する判定手段と、
判定結果に基づいて、前記杭の配置場所を決定する配置手段と、として機能させる杭配置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭配置システム、杭配置方法及び杭配置プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物は、複数の柱が屋根や床等の重さを支え、地震や風等の外力に抵抗する構造となっている。そして、建築物の構造や部材、間取り等によって柱毎にかかる力は大きく異なる。このそれぞれにかかる垂直な力を柱軸力と呼ぶ。柱軸力は建築物の基礎を通して地面に伝わるため、地盤が不安定な柔らかい地盤では、改良工事(杭工事)が必要になる。改良工事においては、軸力の大きな柱下に杭がない場合は基礎の変形が大きく、構造上問題を起こす可能性があり、また軸力の小さな柱下に杭がある場合は構造的にも、コスト的にも無駄になってしまい、杭の配置が非常に重要である。そして、このような杭配置を支援する技術の一例が、例えば特許文献1において提案されている。
【0003】
特許文献1には、建物形状、荷重要素、基礎伏図等を入力する入力手段と、荷重を算出するための係数を記憶する記憶手段と、上記入力されたパラメータと荷重の係数に基づいて1階柱軸力を算出する算出手段と、基礎伏図の出入隅部、T字部、十字部、及び算出された前記1階柱軸力が所定値以上の柱の直下に杭を配置し、且つ、配置した前記杭の前記基礎梁下の杭間が所定間隔以上である場合に、その杭間を等分した位置に杭を配置する杭配置手段と、を備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような技術においては、柱軸力が所定値以上の柱直下に杭を配置し、且つ、配置した杭の基礎梁下の杭間が所定間隔以上である場合に、その杭間を等分した位置に杭を配置するのであって、不要な箇所に杭を配置してしまう可能性があり、コスト的な無駄が生じてしまうという問題があった。
【0006】
上記事情に鑑みて、本発明は、建築物の杭配置の設計を支援する為の新規な技術を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、建築物の杭を配置する杭配置方法であって、建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出ステップと、前記柱軸力に基づいて、配置される前記杭の必要最低本数を決定する決定ステップと、前記必要最低本数に基づいて、前記杭の配置場所を決定する配置ステップと、を含む。
【0008】
また、本発明は、建築物の杭配置の設計を支援する杭配置システムであって、建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出手段と、前記柱軸力に基づいて、配置される杭の必要最低本数を決定する決定手段と、前記必要最低本数に基づいて、前記杭を配置する場所を決定する配置手段と、を備える。
【0009】
また、本発明は、建築物の杭配置の設計を支援する杭配置プログラムであって、前記杭配置プログラムは、コンピュータを建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出手段と、前記柱軸力に基づいて、配置される杭の必要最低本数を決定する決定手段と、前記必要最低本数に基づいて、前記杭を配置する場所を決定する配置手段と、として機能させる。
【0010】
このような構成とすることで、柱軸力を用いて算出した杭の必要最低本数に基づいて、杭の配置場所を決定することができる。これにより、不要に杭が配置されることがなくなり、コストを削減することができる。
【0011】
より好ましい形態では、
前記杭配置方法は、杭特定ステップを更に含み、前記杭特定ステップでは、所定間隔に3本以上の杭が配置された場合に、端点となる前記杭を特定し、前記配置ステップでは、前記所定間隔において該特定された杭のみを配置する。
【0012】
このような構成とすることで、所定間隔に複数の杭が配置された場合に、端点以外に配置された杭を除くことができる。これにより、所定間隔に杭が不要に密集しないように、杭を配置することができる。
【0013】
より好ましい形態では、前記配置ステップは、判定ステップを含み、前記判定ステップでは、前記配置された杭と前記杭が配置された梁に沿って並ぶ杭又は該梁に連結する柱との間隔、前記杭が配置された梁に連結する柱にかかる前記柱軸力、及び該間隔毎における前記柱軸力の上限を示す柱軸力制限に基づいて、前記杭を配置するか否かを判定する。
【0014】
このような構成とすることで、杭と杭又は梁の間隔、柱軸力、及び該間隔毎における柱軸力の上限を示す柱軸力制限に基づいて、杭を配置することができる。これにより、該間隔毎に応じた柱軸力制限を考慮して、杭を配置するか否かを決定することできる。
【0015】
より好ましい形態では、前記判定ステップでは、前記建築物の建物角に前記杭が配置されていない場合であって、前記建物角からの所定区間に前記杭が配置されている場合に、前記建物角の柱及び該杭の間隔と、該間隔における前記柱軸力制限と、前記建物角の柱にかかる前記柱軸力とに基づいて、前記建物角に前記杭を配置するか否かを判定する。
【0016】
このような構成とすることで、建物角から所定の範囲に杭が配置されているか否かに応じて、建物角に杭を配置するかどうかを決定することできる。これにより、不要に建物角に杭を配置することを防止することができる。
【0017】
より好ましい形態では、前記判定ステップでは、前記建物角の柱及び該杭の間隔における前記柱軸力制限に基づいて、前記柱軸力が該柱軸力制限よりも大きい場合に、前記建物角に前記杭を配置するものと判定する。
【0018】
このような構成とすることで、建物角の柱にかかる柱軸力が柱軸力制限よりも大きい場合に、杭を配置することができる。
【0019】
より好ましい形態では、前記杭配置方法は、柱特定ステップを更に含み、前記柱特定ステップでは、前記所定区間に配置した杭のうち、前記柱軸力が最小の柱を特定し、前記配置ステップでは、該特定された柱軸力が最小の柱下に配置した前記杭に代えて、前記建物角に前記杭を配置する。
【0020】
このような構成とすることで、所定区間に配置された杭のうち、柱軸力が最小の柱下に配置された杭を建物角の下に移動させることができる。これにより、柱軸力が最小であり最も不要と考えられる杭を、必要と考えられる建物角の柱下の杭として利用することができる。
【0021】
より好ましい形態では、前記配置ステップでは、前記建築物の建物角に前記杭が配置されていない場合であって、前記建物角を成す梁に沿った所定区間に前記杭が配置されていない場合に、前記建物角に前記杭を配置する。
【0022】
このような構成とすることで、建物角にも、建物角から所定範囲にも杭が配置されていない場合には、建物角に杭を配置することができる。
【0023】
より好ましい形態では、前記判定ステップでは、前記2つの杭の間隔における前記柱軸力制限、及び前記杭が配置された梁に連結する柱であって、2つの前記杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力に基づいて、前記2つの杭の間に前記杭を配置するか否かを判定する。
【0024】
このような構成とすることで、2つの杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力と柱軸力制限を考慮して、2つの杭の間に杭を配置するか否かを決定することができる。
【0025】
より好ましい形態では、前記杭配置方法は、柱特定ステップを更に含み、前記柱特定ステップでは、前記2つの杭の間に配置されるものと判定された杭上に柱がない場合には、該杭が配置されるものと判定された梁に連結する柱のうち柱軸力が最大の柱を特定する。
【0026】
このような構成とすることで、柱軸力の総和と柱軸力制限に基づいて2つの杭の間に配置された杭を、柱軸力の大きい柱の下に配置することができる。これにより、より安定した状態で建築物を支持することができる。
【0027】
より好ましい形態では、前記配置ステップでは、所定の間隔を有する前記2つの杭の間に所定本数以上の杭が配置されている場合に、前記2つの杭の間の柱にかかる柱軸力、及び該間隔における前記柱軸力制限に基づいて、前記2つの杭の間に配置された杭の配置を変更する。
【0028】
このような構成とすることで、所定の間隔を有する2つの杭の間に不必要に杭が配置されている場合に、2つの杭の間隔、柱軸力、及び柱軸力制限に応じて、2つの間に配置された杭の配置を変更することができる。
【0029】
より好ましい形態では、前記配置ステップは、判定ステップを含み、前記判定ステップでは、所定間隔内に前記杭が配置されていない柱がある場合に、該柱にかかる前記柱軸力に基づいて、該柱下に前記杭を配置するか否かを判定し、前記所定間隔内に前記杭が配置されていない柱がなくなるまで、柱下に前記杭を配置するか否かを判定し、前記配置場所が決定された杭の本数が前記必要最低本数よりも多い場合に、所定間隔内に所定本数以上杭が配置されている箇所について、該箇所の柱にかかる前記柱軸力に基づいて、前記杭の配置を変更するか否かを判定し、前記配置ステップでは、前記判定ステップの判定結果に基づいて前記杭の配置場所を決定する。
【0030】
このような構成とすることで、所定間隔内に杭が配置されていない場所には、杭を配置するか否かを判定し、所定間隔内に杭が配置されていない柱がなくなるまで杭を配置し、必要最低本数よりも配置した杭の数が多い場合には、不要と考えられる杭の配置を検討し、杭の配置場所を決定することができる。これにより、杭が必要な箇所、不要な箇所について杭の配置を検討することができ、最適な位置で杭を配置することできる。30
【発明の効果】
【0031】
本発明は、建築物の杭配置の設計を支援する為の新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施の形態のシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】一実施の形態のシステムのハードウェア構成図。
【
図4】一実施の形態のシステムにおける処理手順の一例を示す図。
【
図5】一実施の形態のシステムにおける軸力図の一例。
【
図6】一実施の形態のシステムにおける軸力図に杭を配置した杭伏図の一例。
【
図7】一実施の形態のシステムにおける具体的な処理手順の一例を示す図。
【
図8】一実施の形態のシステムにおける具体的な処理手順の一例を示す図。
【
図9】一実施の形態のシステムにおける杭を配置した杭伏せ図の一例。
【
図10】一実施の形態のシステムにおける建物角における杭配置検討の説明図の一例。
【
図11】一実施の形態のシステムにおける具体的な処理手順の一例を示す図。
【
図12】一実施の形態のシステムにおける杭が配置されていない場合の杭配置検討についての説明図の一例。
【
図13】一実施の形態のシステムにおける具体的な処理手順の一例を示す図。
【
図14】一実施の形態のシステムにおける所定間隔に所定本数以上の杭が配置された箇所がある場合の杭配置検討についての説明図の一例。
【
図15】一実施の形態のシステムにおける具体的な処理手順の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0034】
例えば、本実施形態では杭配置システムの構成、動作等について説明するが、実行される方法、装置、コンピュータプログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。また、杭配置方法の1又は全部のステップを人が実行することによっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態では、クライアント端末でその機能を実現する為に外部のコンピュータにおいて当該プログラムを起動させる、いわゆるサーバ・クライアント型の杭配置システムについて説明する。ここでプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができ、これにより情報処理装置、杭配置システムを構成することができる。
【0035】
<1.システム構成>
図1は、一実施の形態のシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、杭配置システム0は、情報処理装置1(サーバ)及び利用者端末装置3(クライアント)を備え、これらがネットワークNWを介して通信可能に構成される。
【0036】
情報処理装置1として、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。利用者端末装置3として、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス等を利用することができる。
【0037】
ネットワークNWは、本実施形態では、IP(Internet Protocol)ネットワークであるが、通信プロトコルの種類に制限はなく、更に、ネットワークの種類、規模にも制限はない。
【0038】
<1.1.ハードウェア構成>
図2は、ハードウェア構成図である。
図2(a)に示すように、情報処理装置1は、処理部101、記憶部102及び、通信部103を備える。
【0039】
処理部101は、命令セットを実行可能なCPUなどのプロセッサを有し、本発明に係る杭配置プログラム、OSやその他のアプリケーションを実行することで、情報処理装置1の動作処理全体を制御する。
記憶部102は、命令セットを記憶可能なRAMなどの揮発性メモリ、OS及び杭配置プログラムなどを記録可能なHDDやSSDなどの不揮発性の記録媒体を有する。
通信部103は、ネットワークに接続する為の通信インタフェース装置を有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
【0040】
図2(b)に示すように端末装置90(利用者端末装置3)は、処理部901、記憶部902、通信部903、入力部904及び、表示部905を有する。
【0041】
処理部901は、命令セットを実行可能なCPUなどのプロセッサを有し、OSやその他のアプリケーションを実行することで、端末装置90の動作処理全体を制御する。
記憶部902は、命令セットを記憶可能なRAMなどの揮発性メモリ、OS等を記録可能なHDDやSSDなどの不揮発性の記録媒体を有する。
通信部903は、ネットワークに接続する為の通信インタフェース装置を有し、ネットワークNWとの通信制御を実行して、情報の入出力を行う。
入力部904は、キーボードやタッチパネルなどの入力処理が可能な入力デバイスを有する。
表示部905は、ディスプレイなどの表示処理が可能な表示デバイスを有する。
【0042】
<1.2.情報処理装置の機能構成>
図3は、杭配置システム0の機能ブロック図である。
図3に示すように、情報処理装置1は、配信手段11、算出手段12、強度算出手段13、決定手段14、配置手段15、判定手段16、杭特定手段17、柱特定手段18、図面作成手段19、及びデータベース2を備える。また、利用者端末装置3は、表示処理手段31、及びデータ格納手段32を備える。これは、ソフトウェア(記憶部102に記憶されている)による情報処理がハードウェア(処理部101)によって具体的に実現されたものである。
【0043】
なお、利用者端末装置3は、情報処理装置1が備える各機能構成(手段)の一部又は全部を備えてもよい。例えば、利用者端末装置3が、算出手段12、強度算出手段13、決定手段14、配置手段15、判定手段16、杭特定手段17、柱特定手段18、図面作成手段19等を備え、情報処理装置1は、柱軸力を算出する為の種々のデータ(以下、軸力算出データと呼ぶ)等を記録管理するクラウドストレージであってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、杭配置システム0は、情報処理装置利用プログラムを実行した利用者端末装置3を介して利用されるが、利用者端末装置3に対して杭配置プログラムをインストールすることで、情報処理装置1を構成してもよい。また、情報処理装置1は、ネットワークNW又は別のネットワークにより情報の送受信が可能になされた複数のコンピュータにより構成されてもよい。
【0045】
<2.処理フローチャート>
次いで、
図4~
図15を参照して、本発明における杭配置方法について説明する。
図4は、杭配置方法についての処理フローチャートである。また、杭配置方法は、大きく分けて、SAとして杭配置に用いる情報を取得する事前段階、SBとして杭を配置する配置段階、SCとして軸力図に杭を配置した杭伏図を出力する出力段階を含む。
【0046】
<2.1.事前段階SA>
事前段階SAには、ステップS1(以下、「ステップSXX」を「SXX」と呼ぶ)からS4が含まれ、杭を配置する予定の建築物に関する情報を受け付けることで、杭配置に利用される数値の算出や、図の作成が実行される。
【0047】
<2.1.1.柱軸力の計算>
まず、S1において、算出手段12は、柱にかかる柱軸力を算出する。算出手段12は、データベース2に格納される軸力算出データ、及びユーザから入力される建築物の図面情報に基づいて、柱軸力を算出する。ここで、本実施形態において図面情報は平面図、立面図、及び矩形図である。また、軸力算出データは、建物概要、建築物自体の重量を示す固定荷重、建築物内部に積載される重量を示す積載荷重を含む。建物概要は、例えば、構造、軒高、階高、屋根の形状、軒の出幅、外壁素材、基礎形状等を含む。固定荷重は、例えば、屋根、内壁、外壁、2階床、1階床、基礎等のそれぞれの重量を含む。積載荷重は、例えば、住宅の居室、事務室等のそれぞれの重量を含む。
【0048】
<2.1.2.軸力図の作成>
そして、S2において図面作成手段19は、軸力図を作成する。図面作成手段19は、建築物の図面情報、及び算出手段12が算出した柱軸力に基づいて、柱毎の柱軸力を示す軸力図を作成する。
【0049】
図5は、作成された軸力図の一例を示す図である。本実施形態において軸力図は、建築物の間取り、柱、及び基礎梁を含む平面図と、算出手段12が算出した柱軸力の数値を柱毎に表示する。また軸力図は、柱を中心とし、柱軸力の大きさに基づく範囲を有する円を柱毎に表示する。ここで、
図5中の「P」は、1P(ピッチ)の長さを示す。ここで、1Pの長さは、建築物の基準となる単位寸法に基づいて決定され、例えば、単位寸法が「尺」の場合は0.91m、単位寸法が「メートル」の場合は1mである。なお、以下本明細書では、1Pは0.91mとする。
【0050】
なお、本実施形態において算出手段12は、2階建ての建築物について、1階の柱にかかる柱軸力を算出し、図面作成手段19が軸力図を作成する。一方、3階建て以上の建築物の場合には、ユーザから軸力図を受け付けて、データベース2に格納される。また、図面作成手段19は、2階の軸力図を作成可能に構成され、これらの軸力図を用いて1階部分の軸力図を作成してもよい。
【0051】
<2.1.3.杭の必要最低本数の決定>
次いでS3において、決定手段14は、建築物を支持する為に必要な杭の最低本数を決定する。決定手段14は、柱軸力に基づいて、配置される杭の必要最低本数を決定する。具体的には、決定手段14は、柱軸力、1階床重量、及び基礎重量の合計値である建物総重量を杭の耐荷重で除算し、その結果得られる商を超える最小の整数を必要最低本数として決定する。
【0052】
<2.1.4.杭の間隔と基礎梁の許容応力度の計算>
次いでS4において、強度算出手段13は、基礎梁の許容応力度を算出する。強度算出手段13は、基礎断面図を含む計算書に基づいて、杭同士の間隔(以下、杭間と呼ぶ)毎又は杭と柱の間隔毎における基礎梁(以下、単に梁と呼ぶ)の許容応力度である柱軸力制限を算出する。具体的に、強度算出手段13は、基礎断面図に基づいて、梁の断面幅、梁高、梁を構成する鉄筋量、鉄筋断面積、及び鉄筋の許容応力度等の梁に関する基礎梁情報を特定し、該基礎梁情報に基づいて杭間毎又は杭と柱の間隔毎における柱軸力制限を算出する。なお、本実施形態において強度算出手段13は、基礎断面図に基づいて基礎梁情報を特定する。一方、基礎梁情報と梁の種類が紐づけられてデータベース2に格納されており、強度算出手段13は、梁の種類の指定を受け付けることで基礎梁情報を特定してもよい。
【0053】
<2.2.配置段階SB>
配置段階SBには、S5~S13が含まれ、S3で決定した必要最低本数、及びS4で算出した柱軸力制限に基づいて、杭の配置が決定される。
【0054】
<2.2.1.杭の均等配置の検討>
まずS5において、判定手段16は、必要最低本数が柱総本数よりも小さいか否かを判定する。本実施形態において判定手段16は、S3において決定された必要最低本数が図面情報から得られる柱総本数よりも小さいと判定した場合(S5でYES)に、次のステップ(S6)に進む。一方、判定手段16が、必要最低本数が柱総本数よりも大きいと判定した場合(S5でNO)には、梁に沿って杭を均等間隔で配置する(S7)。
【0055】
<2.2.2.柱軸力の大きさに基づく杭配置>
図6は、軸力図に杭を配置した杭伏図の一例を示す図である。配置手段15は、必要最低本数に基づいて、杭の配置場所を決定する。本実施形態においては、建物角(建物外周角BOC、建物内部角BIC)、建物内部、建物外周部のいずれか柱下に杭が配置され、配置手段15は、まずこれらの柱下のうち、柱軸力が大きい順に必要最低本数分の杭を配置する。なお図示例の番号(1~21)は、アノテーションを示す番号である。
【0056】
<2.2.3.所定間隔内の杭本数に基づく杭配置の検討>
次いでS8において、配置手段15は、所定間隔内の杭本数に基づいて杭を配置する。
図7は、所定間隔内の杭本数に基づいて杭を配置するか否かの検討を行う具体的な処理フローチャートである。ここで、一般的な地盤改良設計では、杭を均等に配置する場合、一般的に杭は2P毎に配置される。つまり、2P以内に3本以上の杭が配置されることはない。したがって、本実施形態においては、該所定間隔を、2Pとして、2P以内に3本以上の杭があるかないかを判定する。
【0057】
S801において、杭特定手段17は、梁に沿った所定間隔(2P)内に3本以上の杭が配置されている場合(S801でYES)に、所定間隔内の端点となる杭を特定する。そして、配置手段15は、該所定間隔内において該特定された杭のみを配置して(S802)、杭配置を終了する(S803)。即ち、所定間隔内の端点となる杭に挟まれる杭は排除して、端点となる杭のみを配置する。一方、所定間隔内に3本以上の杭が配置されていない場合(S801でNO)には、杭を配置せず杭配置を終了する(S802)。
【0058】
<2.2.4.柱軸力の大きさに基づく杭配置の検討>
S9~S11において、配置手段15は、判定手段16の判定結果に基づいて、杭を配置する。本実施形態において判定手段16は、配置された杭と杭が配置された梁に沿って並ぶ杭又は該梁に連結する柱との間隔、杭が配置された梁に連結する柱にかかる柱軸力、及び該間隔における柱軸力制限に基づいて、杭を配置するか否かを判定する。
【0059】
<2.2.4.1.建物角における杭配置の検討>
S9において、配置手段15は、判定手段16の判定結果に基づいて、建物外周角に杭を配置する。
図8は、建物角について杭を配置するか否かの検討を行う具体的な処理フローチャートである。ここで
図8(a)は、建物外周角における杭配置の検討、
図8(b)は、建物内部角における杭配置の検討、についての処理フローチャートである。
【0060】
<2.2.4.2.建物外周角における杭配置の検討>
S901において判定手段16は、建物外周角に杭が配置されているか否かを判定し、全ての建物外周角に杭が配置されている場合(S901でYES)は、杭配置を終了する(S907)。一方、判定手段16は、建物外周角に杭が配置されていない場合(S901でNO)には、該建物外周角からの所定区間に杭が配置されているか否かを判定する(S902)。ここで、本実施形態においては、建物外周角から離れすぎない位置に配置された杭を建物外周角に配置する為、所定区間として、建物角から梁に沿った1又は全ての方向に1Pの長さを有する区間を用いる。なお、以下では、簡単のため1又は全ての方向をX及びY軸として説明する。
【0061】
全ての該所定区間に杭が配置されていない場合(S902でNO)は、配置手段15は、該建物外周角に杭を配置する(S903)。一方、判定手段16は、建物外周角からX及びY軸それぞれに1P以内に杭が配置されている場合(S902でYES)には、建物外周角から1P以内に配置されている杭上の柱にかかる柱軸力、及び該建物外周角の柱と該杭の間隔の柱軸力制限に基づいて、杭を配置するか否かを判定する。具体的には、判定手段16は、建物外周角から1P以内に配置された杭上の柱にかかる柱軸力が、該建物外周角の柱と該杭の間隔の柱軸力制限よりも小さいか否かを判定する(S904)。そして、該柱軸力が該建物外周角の柱と該杭の間隔毎の柱軸力制限よりも小さい場合(S904でYES)には、建物外周角に杭を配置する必要がない為、S907に進む。一方、該柱軸力が該建物外周角の柱と該杭の間隔毎の柱軸力制限よりも大きい場合(S904でNO)には、判定手段16は、該建物外周角に杭を配置するものと判定し、柱特定手段18は、該所定区間に配置された杭のうち、柱軸力が最小の柱を特定する。そして、配置手段15は、該特定された柱軸力が最小の柱下に配置された杭に代えて、該建物外周角に杭を配置する(S905)。
【0062】
S906において配置手段15は、建物外周角から梁に沿ったX及びY軸何れか1つの方向の1P以内に杭がない場合には、該建物外周角に杭を配置して、建物外周角における杭配置を終了する(S907)。ここで、
図9は、建物外周角における杭配置の検討後に配置された杭BOCPを表示する杭伏図の一例を示す図である。
【0063】
図10(a)は、建物外周角から該建物外周角を成す梁に沿った所定区間に杭が配置されている場合における杭配置検討の説明図の一例である。また、
図10(b)は、建物外周角から所定区間に配置された杭を該建物外周角に配置する場合における杭配置検討の説明図の一例である。また、算出手段12によって、基礎断面図に基づいて作成される以下の表1は、杭配置の検討を行う杭の位置(外周部又は内部)毎、杭と柱の間隔毎の柱軸力制限を表す表である。図示例における建物外周角(A)では、該建物外周角の柱軸力が「3.641kN」、建物外周角(A)の柱と杭の間隔は1P(0.91m)である。また、表1から、建物外周角柱と杭の間隔(表1では、長期柱軸力の限度)が0.91mの場合の柱軸力制限は「3.5kN」である。
【0064】
【0065】
したがって、柱軸力が柱軸力制限よりも大きい為、判定手段16は、建物外周角(A)に杭を配置するものと判定する。そして、柱特定手段18は、建物外周角(A)から1P以内の間隔に杭が配置された柱(柱16、柱21)上の柱にかかる柱軸力を比較し、柱16にかかる柱軸力が「5.816kN」、柱21にかかる柱軸力が「7.423kN」であることから、柱軸力が最小な柱として柱16を特定する。そして、配置手段15は、柱16の下に配置された杭に代えて、建物外周角(A)に杭BOCPを配置する。
【0066】
<2.2.4.3.建物内部角における杭配置の検討>
次いで、S10において配置手段15は、判定手段16の判定結果に基づいて、建物内部角に杭を配置する。S1001において判定手段16は、建物内部角があるか否かを判定し、建物内部角がない場合(S1001でNO)は、杭配置を終了する(S1007)。一方、判定手段16は、建物内部角がある場合(S1001でYES)には、S1002~S1006において、S902~S906(建物外周角における杭配置の検討)と同様の判定を行い、建物内部角における杭配置の検討を行う。なお、図示例では、既に建物内部角において杭が配置されている為、杭配置の検討を行わない。
【0067】
<2.2.4.4.建物内部又は建物外部における杭配置の検討>
次いで、S11において配置手段15は、判定手段16の判定結果に基づいて、杭がない箇所に杭を配置する。
図11は、杭を配置するか否かの検討を繰り返し行う具体的な処理フローチャートである。
【0068】
<2.2.4.4.1.杭間が3P以上の箇所における杭配置の検討>
S1101において判定手段16は、杭間が所定間隔以上の箇所の有無を判定し、該箇所がない場合(S1101でNO)は、該所定間隔以上の箇所の杭配置を終了する(S1107)。ここで、一般的な地盤改良設計では、杭を均等に配置する場合、杭は2P毎に配置される。しかし、2P毎に配置した場合に、柱軸力が柱軸力制限を超えることがないことが経験上わかっている。したがって、本実施形態においては、まず杭の配置を検討する場合には、該所定間隔として、2P以上である例えば3Pを用いる。
【0069】
杭間が所定間隔(3P)以上の箇所がある場合(S1101でYES)には、判定手段16は、杭が配置された梁に連結する柱であって、2つの杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力と、該2つの杭の杭間における柱軸力制限とに基づいて、2つの杭の間に前記杭を配置するか否かを判定する。具体的には、算出手段12は、杭が配置された梁に連結する柱であって、2つの杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力の総和を算出し、判定手段16は、該柱軸力の総和が、該柱軸力制限よりも大きい場合(S1102でNO)は、2つの杭の間に杭を配置するものと判定する。そして、配置手段15は、該2つの杭の間に杭を配置する(S1103)。一方、該柱軸力の総和が該柱軸力制限よりも小さい場合(S1102でYES)には、該所定間隔以上の箇所の杭の配置を終了する(S1107)。ここで、より好ましい形態では、S1103において判定手段16は、2つの杭の中間に杭を配置するものと判定する。
【0070】
次いで、S1104において判定手段16は、S1103において配置するものと判定した杭上に柱があるか否かを判定する。そして、該杭上に柱がある場合(S1104でYES)は、該所定間隔以上の箇所の杭配置を終了する(S1107)。一方、該杭上に柱がない場合(S1104でNO)には、柱特定手段18は、該杭が配置されるものと判定された梁に連結する柱のうち、柱軸力が最大の柱を特定する。そして、配置手段15は、該特定された柱の下に、S1103において2つの杭の中間に配置されるものと判定された杭を配置する(S1105)。
【0071】
そして、杭間が所定間隔(3P)以上の箇所がある場合(S1106でYES)には、S1103~S1106の処理を繰り返し、杭間が所定間隔(3P)以上の箇所がない場合(S1106でNO)には、所定間隔(3P)以上の杭配置を終了する(S1107)。
【0072】
図12は、杭が配置されていない場合の杭配置検討についての説明図の一例である。また、算出手段12によって、基礎断面図に基づいて作成される以下の表2は、杭配置の検討を行う杭の位置(外周部又は内部)毎、柱軸力の総和を取る柱数毎、杭間毎の柱軸力制限を示す表である。なお、柱軸力の総和を取る柱数が2以上の場合は、「2スパン、多スパン」の表を用いる。
【0073】
【0074】
図12における、所定間隔が4Pである建物外周部(B)では、該所定間隔の端点となる杭の間にある複数の柱にかかる柱軸力の総和が「14.955(=5.591+4.291+5.073)kN」、所定間隔は4P(3.64m)である。そして、表2より、杭の位置が外部、柱軸力の総和を取る柱数が3、杭間が3.64mである場合の柱軸力制限は6.6kNである。したがって、柱軸力の総和が柱軸力制限よりも大きい為、判定手段16は、該端点となる杭の中間に杭BOPを配置するものと判定する。
【0075】
<2.2.4.4.2.杭間が2Pの箇所における杭配置の検討>
次いでS1108において判定手段16は、杭間が所定間隔の箇所の有無を判定し、該箇所がない場所(S1108でNO)には、該所定間隔の箇所の杭配置を終了する(S1111)。ここで、一般的な地盤改良設計では、杭を均等に配置する場合、一般的に杭は2P毎に配置される。したがって、本実施形態においては、一般的な地盤改良設計と比べて、杭を配置するかどうかを決定する為、該所定間隔を2Pとして、2P以内に必要本数以上の杭が配置されている箇所の有無を判定する。
【0076】
一方、判定手段16は、杭間が所定間隔(2P)の箇所がある場合(S1108でYES)には、S1109~S1113において、S1102~S1106(杭間隔(3P)以上の箇所がある場合における杭配置の検討)と同様の判定を行い、配置手段15は、判定結果に基づいて杭間隔(2P)における杭の配置を行う(S1114)。
【0077】
例えば、
図12における所定間隔が2Pである建物内部(C)では、該所定間隔の端点となる杭の間にある1の柱にかかる柱軸力が「4.410kN」、所定間隔は2P(1.82m)である。そして、表2より、杭の位置が内部、柱軸力の総和を取る柱数が1、杭間が1.82mである場合の柱軸力制限は、16.1kNである。したがって、柱軸力の総和が柱軸力制限よりも小さい為、判定手段16は、該端点となる杭の中間に杭を配置しないものと判定する。
【0078】
<2.2.5.杭が過剰な箇所における杭配置の検討>
次いでS12において、配置手段15は、所定の間隔を有する2つの杭の間に所定本数以上の杭が配置されている場合に、2つの杭の間の柱にかかる柱軸力、及び該間隔における柱軸力制限に基づいて、2つの杭の間に配置された杭の配置を変更する。
図13は、杭を配置するか否かの検討の具体的な処理フローチャートである。
【0079】
<2.2.5.1.杭間が4P以内に4本以上杭が配置されている場合の杭配置の検討>
まず、判定手段16は、S11までに配置するものと判定された杭本数が必要最低本数よりも大きいか否かを判定する。そして、杭本数が必要最低本数と等しい場合(S1201でNO)は、杭の配置の変更処理を終了する(S1208)。一方、該杭本数が必要最低本数よりも大きい場合(S1201でYES)には、判定手段16は、所定間隔内に4本以上の杭が配置されているか否かを判定する(S1202)。ここで、一般的な地盤改良設計では、杭を均等に配置する場合、杭は2P毎に配置される。つまり、4P毎に4本の杭が配置される。しかし一般的な地盤改良設計では、柱軸力が柱軸力制限を超えることがないことが経験上わかっている。したがって、本実施形態においては、該所定間隔を、4Pとして、4P以内に4本以上の杭が配置されているか否かを判定する。
【0080】
そして、所定間隔(4P)内に4本以上の杭が配置されていない場合(S1202でNO)は、杭の配置の変更処理を終了する(S1208)。一方、杭間が所定間隔(4P)以上の箇所がある場合(S1202でYES)には、判定手段16は、杭が配置された梁に連結する柱であって、2つの杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力と、該2つの杭の杭間における柱軸力制限とに基づいて、2つの杭の間に前記杭を配置するか否かを判定する(S1203)。具体的には、算出手段12は、杭が配置された梁に連結する柱であって、2つの杭の間にある1又は複数の柱にかかる柱軸力の総和を算出し、判定手段16は、該柱軸力の総和が、該柱軸力制限よりも大きい場合に、2つの杭の間に杭を配置するものと判定する。そして、配置手段15は、該2つの杭の間にある杭のうち、該配置するものと判定された杭のみを配置する(S1204)。即ち、該所定間隔内に配置するものと判定された複数の杭に代えて、該配置するものと判定された杭を端点となる杭の中間に配置する。ここで、より好ましい形態では、S1204において配置手段15は、2つの杭の中間に杭を配置する。
【0081】
図14(a)は、所定間隔(4P)の箇所がある場合の杭配置検討についての説明図の一例である。
図14(a)における、所定間隔が4Pである建物外周部(D)では、該所定間隔の端点となる杭の間にある複数の柱にかかる柱軸力の総和が「14.846(=7.423+7.423)kN」、所定間隔は改良体間隔の2倍の間隔(3.64m)である。そして、表2より、杭の位置が外周部、柱軸力の総和を取る柱数が2、杭間が3.64mである場合の柱軸力制限は2.3kNである。したがって、柱軸力の総和が柱軸力制限よりも大きい為、判定手段16は、該端点となる杭の中間に杭を配置するものと判定する。そして、配置手段15は、該所定間隔内の杭のうち、該配置するものと判定された杭BOPのみを配置する。
【0082】
<2.2.5.2.杭間3P以内に3本以上杭が配置されている場合の杭配置の検討>
次いでS1205において判定手段16は、杭間が所定間隔の箇所の有無を判定し、該箇所がない場合(S1205でNO)には、該所定間隔の箇所の杭配置を終了する(S1208)。ここで、本実施形態においては、任意のピッチにおいて杭を配置するか否かを判定するが、該所定間隔としては、3Pを用いる。
【0083】
一方、判定手段16は、杭間が所定間隔(3P)の箇所がある場合(S1205でYES)には、S1206~S1207において、S1203~S1204(杭間隔(4P)の箇所がある場合における杭配置の検討)と同様の判定を行い、配置手段15は、判定結果に基づいて杭間隔(3P)の箇所がある場合における杭の配置を行う(S1207)。
【0084】
図14(b)は、所定間隔が3Pの箇所がある場合の杭配置検討についての説明図の一例である。
図14(b)における、所定間隔が3Pである建物外周部(E)では、該所定間隔の端点となる杭の間にある複数の柱にかかる柱軸力が「7.085kN」、所定間隔は改良体間隔の1.5倍の間隔(2.73m)である。そして、表2より、杭の位置が外周部、柱軸力の総和を取る柱数が1、杭間が2.73mである場合の柱軸力制限は13.1kNである。したがって、柱軸力の総和が柱軸力制限よりも小さい為、判定手段16は、該端点となる杭の間に杭を配置しないものと判定する。
【0085】
<2.2.6.柱軸力のない梁における杭配置の検討>
次いでS13において、配置手段15は、柱軸力のない梁に対して杭を配置する。
図15は、杭を配置するか否かの検討の具体的な処理フローチャートである。
【0086】
まずS1301において、判定手段16は、柱軸力のない所定の長さを有する梁があるか否かを判定し(S1301)、該梁がない場合(S1301でNO)には、梁への杭配置を終了する(S1304)。一方、該梁がある場合(S1301でYES)には、判定手段16は、柱軸力制限が「0.0」である梁があるか否かを判定する。そして、柱軸力制限が「0.0」である梁がない場合(S1302でNO)は、梁への杭配置を終了する(S1304)。一方、柱軸力制限が「0.0」である梁がある場合(S1302でYES)には、配置手段15は、該梁の中間に杭を配置し(S1303)、梁への杭配置を終了する(S1304)。
【0087】
<2.3.出力段階SC>
以上、配置手段15によって杭の配置場所が決定されると、S14において図面作成手段19は、杭伏図を作成し、データベース2に杭伏図を格納する。本実施形態において図面作成手段19は、事前段階SAにおいて作成した軸力図に、配置段階SBにおいて決定された杭の配置場所を重畳した杭伏図を作成する。そして、配信手段11は、格納された杭伏図を利用者端末装置3に対して配信し、データ格納手段32は、配信された杭伏図を記憶部902に格納する。また、表示処理手段31は、配信された杭伏図を表示処理し、表示処理結果を表示部905に送信することで、杭伏図を利用者端末装置3において表示させる。
【0088】
以上、建築物の平面図の入力を受け付けることで柱毎の柱軸力の概算を算出し、基礎断面図の入力を受け付けることで、改良体間隔と基礎梁の許容応力度を算出し、柱軸力及び基礎梁許容応力度に基づいて、杭を配置する必要がある柱軸力が大きい柱の下に優先的に杭を配置することができる。これにより、杭を配置する必要がない柱軸力の小さい柱の下には、杭を配置することがなくなり、杭の配置にかかるコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0089】
0 :杭配置システム
1 :情報処理装置
2 :データベース
3 :利用者端末装置
101 :処理部
102 :記憶部
103 :通信部
90 :端末装置
901 :処理部
902 :記憶部
903 :通信部
904 :入力部
905 :表示部
11 :配信手段
12 :算出手段
13 :強度算出手段
14 :決定手段
15 :配置手段
16 :判定手段
17 :杭特定手段
18 :柱特定手段
19 :図面作成手段
31 :表示処理手段
32 :データ格納手段
NW :ネットワーク
BOC :建物外周角
BIC :建物内部角
BOCP :建物外周角に配置された杭
BOP :建物外周部に配置された杭
【要約】
【課題】
建築物の杭配置の設計を支援する為の新規な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】
建築物の杭配置を配置する杭配置方法であって、建築物の図面情報に基づいて、柱にかかる柱軸力を算出する算出ステップと、前記柱軸力に基づいて、配置される前記杭の必要最低本数を決定する決定ステップと、前記必要最低本数に基づいて、前記杭の配置場所を決定する配置ステップと、を含む。
【選択図】
図1