(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】地盤改良材用ホースの巻取器及び地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2023184236
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591223404
【氏名又は名称】株式会社トラバース
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特許第2736008(JP,B2)
【文献】特開昭59-114321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0231268(US,A1)
【文献】特開2005-090009(JP,A)
【文献】中国実用新案第218893306(CN,U)
【文献】特開2004-251057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0246261(US,A1)
【文献】特開2013-253462(JP,A)
【文献】特開平11-158906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良材の流路として鉛直に且つ地盤改良機に昇降可能に設けられている管状のロッドの上端に、スイベルジョイントを介して接続されている地盤改良材用ホースを、昇降した前記ロッドの状態に応じて1列に巻き取り、又は繰り出すリールと、
前記リールを回転させる油圧モータと、を備え
、
前記リールは、該リールの回転軸が左右に向くように前記ロッドの後方に設けられ、該リールの前方側が下方に移動する方向に該リールが回転することで前記地盤改良材用ホースを巻き取ることを特徴とする
地盤改良材用ホースの巻取器。
【請求項2】
自走可能なベースマシンと、
前記ベースマシンの前方に鉛直に設けられているリーダと、
地盤改良材の流路として鉛直に且つ前記リーダに昇降可能に設けられている管状のロッドと、
前記ロッドの上端に設けられているスイベルジョイントと、
前記スイベルジョイントを介して前記ロッドに接続されている地盤改良材用ホースと、
昇降した前記ロッドの状態に応じて前記地盤改良材用ホースを1列に巻き取り、又は繰り出すリールと、
前記リールを回転させる油圧モータと、を備え
、
前記リールは、該リールの回転軸が左右方向に向くように前記ロッドの後方に設けられ、該リールの前方側が下方に移動する方向に該リールが回転することで前記地盤改良材用ホースを巻き取ることを特徴とする
地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良材用ホースの巻取器及び地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機(ベースマシン)の前方に設けられているリーダにスクリュウシャフト(ロッド)を昇降可能に設け、スクリュウシャフトの上端にスイベルジョイントを介して地盤改良剤(地盤改良材)の注入ホース(地盤改良材用ホース)を接続した地盤改良機が記載されている。
【0003】
この地盤改良機において、注入ホース(地盤改良材用ホース)は、リーダに対して上昇させた状態のスクリュウシャフト(ロッド)の上端から作業機(ベースマシン)に届く長さを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の地盤改良機において、地盤改良材用ホースは、ロッドの上端に位置するスイベルジョイントから吊り下げられているため、ロッドを下降させた場合に地面に接触し、引き摺られることになる。このため、地盤改良機において、地盤改良材用ホースの取扱いが煩雑であった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、地盤改良材用ホースの取扱いの煩雑さを解消した地盤改良材用ホースの巻取器及び地盤改良機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、地盤改良材の流路として鉛直に且つ地盤改良機(例えば、後述する地盤改良機1)に昇降可能に設けられている管状のロッド(例えば、後述するロッド7)の上端に、スイベルジョイント(例えば、後述するスイベルジョイント10)を介して接続されている地盤改良材用ホース(例えば、後述する地盤改良材用ホース11)を、昇降した前記ロッドの状態に応じて1列に巻き取り、又は繰り出すリール(例えば、後述するリール13)と、前記リールを回転させる油圧モータ(例えば、後述する油圧モータ14)と、を備え、前記リールは、該リールの回転軸が左右方向に向くように前記ロッドの後方に設けられ、該リールの前方側が下方に移動する方向に該リールが回転することで前記地盤改良材用ホースを巻き取ることを特徴とする地盤改良材用ホースの巻取器(例えば、後述するホース巻取器12)である。
【0011】
(2)本発明はまた、自走可能なベースマシン(例えば、後述するベースマシン2)と、前記ベースマシンの前方に鉛直に設けられているリーダ(例えば、後述するリーダ4)と、地盤改良材の流路として鉛直に且つ前記リーダに昇降可能に設けられている管状のロッド(例えば、後述するロッド7)と、前記ロッドの上端に設けられているスイベルジョイント(例えば、後述するスイベルジョイント10)と、前記スイベルジョイントを介して前記ロッドに接続されている地盤改良材用ホース(例えば、後述する地盤改良材用ホース11)と、昇降した前記ロッドの状態に応じて前記地盤改良材用ホースを1列に巻き取り、又は繰り出すリール(例えば、後述するリール13)と、前記リールを回転させる油圧モータ(例えば、後述する油圧モータ14)と、を備え、前記リールは、該リールの回転軸が左右方向に向くように前記ロッドの後方に設けられ、該リールの前方側が下方に移動する方向に該リールが回転することで前記地盤改良材用ホースを巻き取ることを特徴とする地盤改良機(例えば、後述する地盤改良機1)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記(1)に記載の地盤改良材用ホースの巻取器、及び上記(2)に記載の地盤改良機によれば、地盤改良材用ホースの取扱いの煩雑さを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る地盤改良機の側面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る地盤改良機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る地盤改良機について詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係る地盤改良機1の構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る地盤改良機1の側面図である。
図2は、ホース巻取器12の正面図である。
【0019】
図1に示す地盤改良機1は、ソイルセメントコラム工法(柱状改良工法)や鋼管ソイルセメント杭工法等に用いる建設機械、そのうちのくい打ち機である。ソイルセメントコラム工法とは、地盤に対して柱状に掘削した穴に、セメント系固化材を水と混ぜてスラリー状にした地盤改良材(セメントミルク等)を注入し、地盤改良材を掘削土と撹拌することで、化学的に固化させたソイルセメントコラムを造成する工法のことである。鋼管ソイルセメント杭工法とは、ソイルセメントコラム工法と鋼管杭を合体させた工法であり、化学的に固化する前のソイルセメントの芯部に鋼管杭を埋設させる工法のことである。
【0020】
具体的に、地盤改良機1は、自走可能なベースマシン2と、ベースマシン2に取り付けられている地盤改良ユニット3と、を備える。
【0021】
地盤改良ユニット3は、土木業界等においてフロントと呼ばれるものであり、ベースマシン2における前方に起伏可能に取り付けられている。具体的に、地盤改良ユニット3は、リーダ4と、レール5と、ロッドチャック6と、ロッド7と、掘削具8と、ロッドガイド9と、スイベルジョイント10と、地盤改良材用ホース11と、ホース巻取器(地盤改良材用ホースの巻取器)12と、連結ホース15と、を備えている。なお、説明を簡略化するために、以下において、地盤改良ユニット3は、起立している姿勢であることを前提に説明する。
【0022】
リーダ4は、所定の長さを有している角材(角形管)から構成されており、ベースマシン2よりも前方で且つロッド7よりも後方に鉛直に設けられている。
【0023】
リーダ4の前面の下端には、ロッド7を回転可能に支持しているロッドガイド9が固定されている。リーダ4の前面におけるロッドガイド9よりも上方の位置には、ロッドチャック6を昇降可能にするレール5が、ロッド7と平行となるように下方から上端にわたって設けられている。リーダ4及びレール5は、一体に形成されていても、別体として構成されていてもよい。
【0024】
ロッドチャック6は、レール5に沿って昇降可能に設けられていて、レール5に沿って所定のストロークで昇降する。このロッドチャック6は、チャック機構(図示省略)及び回転機構(図示省略)を内蔵している。チャック機構は、ロッド7における中間の任意の一部分を保持し又は解除する。回転機構は、モータ(図示省略)等から構成されており、チャック機構が保持したロッド7を回転させる。
【0025】
ロッド7は、地盤改良材の流路となる管状であり、鉛直に且つリーダ4に昇降可能に設けられている。ロッド7の下部には、地盤改良材を注入する穴を掘削する掘削具8が取り付けられている。ロッド7の上端には、地盤改良材を供給する地盤改良材用ホース11の先端が接続されるスイベルジョイント10の下端が、相対回転可能に取り付けられている。ロッド7の上端は、地盤改良材を導入する口(図示省略)を構成している。ロッド7の内部は、地盤改良材用ホース11から供給された地盤改良材の流路を構成している。ロッド7の下端及びその周辺は、地盤改良材を吐出する口(図示省略)を構成している。
【0026】
ロッド7における中間の任意の一部分は、ロッドチャック6が内蔵しているチャック機構(図示省略)によって保持され又は解除される。チャック機構に保持されたロッド7は、ロッドチャック6が内蔵している回転機構(図示省略)によって回転させられると共に、ロッドチャック6と一体となって所定のストロークで昇降する。
【0027】
掘削具8は、ロッド7の下部に取り付けられており、ロッド7と一体となって回転すると共に昇降する。この掘削具8は、地盤改良材を注入する穴を掘削すると共に、掘削した穴の中で地盤改良材を掘削土と撹拌する。
【0028】
ロッドガイド9は、リーダ4の前面の下端に固定されており、ロッドチャック6よりも下方でロッド7を回転可能に支持している。
【0029】
スイベルジョイント10は、ロッド7の上端に設けられている。スイベルジョイント10の下端には、ロッド7の上端が回転可能に取り付けられており、ロッド7と一体に昇降する。スイベルジョイント10の側方には、地盤改良材用ホース11の先端が接続される。すなわち、スイベルジョイント10は、地盤改良材用ホース11の先端を、回転するロッド7における上端の口(図示省略)に接続する回り継手として機能している。
【0030】
図1及び
図2に示す地盤改良材用ホース11は、その先端が、スイベルジョイント10を介してロッド7の上端に接続されている。この地盤改良材用ホース11は、ホース巻取器12及び連結ホース15を経由して、地盤改良材を共有するポンプ(図示省略)に繋がっている。また、地盤改良材用ホース11は、ロッド7の昇降、及びホース巻取器12を構成するリール13の回転によって、弛まない状態が維持されている。すなわち、地盤改良材用ホース11は、ロッド7の昇降、及びホース巻取器12を構成するリール13の回転によって、張力が付与された状態が維持されている。
【0031】
ホース巻取器12は、リーダ4の後方に設けられている。具体的に、ホース巻取器12は、リール13と、油圧モータ14と、を備えている。
【0032】
リール13は、昇降したロッド7の状態に応じて地盤改良材用ホース11を1列に巻き取り、又は繰り出す。このリール13は、当該リール13の回転軸が左右に向くようにロッド7の後方に設けられ、当該リール13の前方側(
図1における左側)が上方に移動する方向(
図1における右回りの方向)に当該リール13が回転することで地盤改良材用ホース11を巻き取り、当該リール13の前方側(
図1における左側)が下方に移動する方向(
図1における左回りの方向)に当該リール13が回転することで地盤改良材用ホース11を繰り出す。具体的に、リール13は、回転軸131と、左右一対のガイド132と、を備えている。
【0033】
回転軸131は、油圧モータ14の回転軸を兼ねている。
【0034】
左右一対のガイド132は、地盤改良材用ホース11をガイドする。これら左右一対のガイド132の間隔Wは、地盤改良材用ホース11の太さDよりも若干大きく設定されている。左右一対のガイド132の間隔W、及び地盤改良材用ホース11の太さDの関係は、D<W<1.5Dであることが好ましく、D<W<1.2Dであることがより好ましい。
【0035】
油圧モータ14は、リール13を回転させる動力源である。この油圧モータ14は、地盤改良材用ホース11が弛まない状態を維持するように、すなわち、地盤改良材用ホース11に張力が付与された状態を維持するように、リール13を回転させる。
【0036】
次に、
図1を用いて、地盤改良機1のホース巻取器12の動作について説明する。
【0037】
ホース巻取器12は、ロッド7が下降する際、地盤改良材用ホース11が弛まない状態を維持するように、すなわち、地盤改良材用ホース11に張力が付与された状態を維持するように、リール13を回転させて地盤改良材用ホース11を1列に巻き取る。
【0038】
また、ホース巻取器12は、ロッド7が上昇する際、地盤改良材用ホース11が弛まない状態を維持するように、すなわち、地盤改良材用ホース11に張力が付与された状態を維持するように、リール13を回転させて地盤改良材用ホース11を繰り出す。
【0039】
[第2実施形態]次に、
図3を用いて、本発明の第2実施形態に係る地盤改良機1の構成について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る地盤改良機1の側面図である。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、リール13による地盤改良材用ホース11の巻取り・繰出し方向が異なるが、他の構成は同一である。なお、ここでは、第1実施形態と同様の構成及び作用等についての説明は省略する。
【0040】
リール13は、当該リール13の前方側(
図3における左側)が下方に移動する方向(
図3における左回りの方向)に当該リール13が回転することで地盤改良材用ホース11を巻き取り、当該リール13の前方側(
図3における左側)が上方に移動する方向(
図3における右回りの方向)に当該リール13が回転することで地盤改良材用ホース11を繰り出す。なお、地盤改良材用ホース11が弛んでしまった場合を仮想して、
図3には、弛んだ地盤改良材用ホース11を破線で示す。
【0041】
このような地盤改良機1及びホース巻取器12によれば、地盤改良材用ホース11の取扱いの煩雑さを解消することができる。また、地盤改良機1及びホース巻取器12によれば、リール13が地盤改良材用ホース11を1列に巻き取るので、乱巻きを防止できる。
【0042】
また、第2実施形態に係る地盤改良機1及びホース巻取器12によれば、仮に地盤改良材用ホース11が弛んでしまった場合であっても、地盤改良材用ホース11は、列を乱すことなくリール13の下方にU字状に垂れ下がるので、当該地盤改良材用ホース11が左右一対のガイド132から逸脱してしまうことがない。なお、第1実施形態に係る地盤改良機1及びホース巻取器12の場合、仮に地盤改良材用ホース11が弛んでしまうと、当該地盤改良材用ホース11が左右一対のガイド132から逸脱してしまう可能性がある。
【0043】
本発明は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置、大きさ、長さ、数量、形状、材質などは適宜変更できる。
【符号の説明】
【0044】
1 地盤改良機
2 ベースマシン
3 地盤改良ユニット
4 リーダ
5 レール
6 ロッドチャック
7 ロッド
8 掘削具
9 ロッドガイド
10 スイベルジョイント
11 地盤改良材用ホース
12 ホース巻取器(地盤改良材用ホースの巻取器)
13 リール
131 回転軸
132 ガイド
14 油圧モータ
15 連結ホース
W 間隔
D 太さ
【要約】
【課題】地盤改良材用ホースの取扱いの煩雑さを解消した地盤改良材用ホースの巻取器及び地盤改良機を提供する。
【解決手段】地盤改良機1は、自走可能なベースマシン2と、ベースマシン2の前方に鉛直に設けられているリーダ4と、地盤改良材の流路として鉛直に且つリーダ4に昇降可能に設けられている管状のロッド7と、ロッド7の上端に設けられているスイベルジョイント10と、スイベルジョイント10を介してロッド7に接続されている地盤改良材用ホース11と、昇降したロッド7の状態に応じて地盤改良材用ホースを1列に巻き取り、又は繰り出すリール13と、リール13を回転させる油圧モータ14と、を備えている。
【選択図】
図1