(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】煙突
(51)【国際特許分類】
F23L 17/00 20060101AFI20231204BHJP
F23J 11/12 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
F23L17/00 601J
F23J11/12
(21)【出願番号】P 2019192287
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503304360
【氏名又は名称】コーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】小林 文明
(72)【発明者】
【氏名】板野 稔久
(72)【発明者】
【氏名】岩成 真一
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 京樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 公博
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-142236(JP,U)
【文献】特開2019-120454(JP,A)
【文献】中国実用新案第204602015(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 17/00-17/16
F23J 11/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気発生源から送出された排気の旋回流が導入される排気流路を形成する煙突であって、
排気流路における軸線方向の少なくとも3段にわたる複数箇所に、旋回流を遮蔽する仕切り部材が互いに間隔を隔ててそれぞれ配備され、これらの仕切り部材のそれぞれに、排気流路の横断面中央部に位置して旋回流の全量が通過する円形の通口が開設されていると共に、それぞれの仕切り部材の通口が排気流路の横断面積よりも狭い断面積を有し、
排気流路の下流側に位置している仕切り部材の通口ほど、その下段側の仕切り部材の通口との間隔が狭められていることを特徴とする煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は煙突に係り、建物内に設置される非常用発電機を駆動するガスタービンエンジンやディーゼルエンジンの排ガス、ボイラーの排ガス或いは産業廃棄物焼却炉の排ガスを建物外に導いて放散させるに好適な煙突であり、排気発生源から送出され排気の上流域で強制的に旋回流に変換された排気が導入される排気流路を形成する煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
先行例では、円筒状の煙突に導入された排気の排出効率(排気効率)を高めるために、排気を排気流路としての煙道内で旋回させるように工夫したものが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1によって提案されているものは、煙突の下部に横向きに接続された導入管の出口(煙道の入口)に複数の平らな傾斜姿勢の偏流板を間隔を隔てて配置すると共に、煙道の底部に傾斜面を形成している。そして、この煙突によれば、排気が導入管を経て煙道に導入されるときに偏流板の作用によって旋回流に変換されると共に、煙突自体によって発揮される排気吸い上げ機能と煙道の底部の傾斜面の案内作用によって上昇力が付与されることにより、排気が旋回しながら煙道を上昇して外部に排出される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によって提案されている煙突では、排気流が導入管の出口で複数の偏流板の作用により急激に方向転換されるために、排気の流れを妨げる大きな抵抗が発生して旋回流が減衰してしまい、その結果、煙道内での旋回流の到達距離が短くなって排気効率を十分に高めることができなくなる、という問題があった。
【0005】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたもので、煙突が小規模であるか大規模であるかにかかわらず、排気流路に流れ込んでくる排気の旋回流を効果的に整流させることにより、下流側への旋回流の到達距離をできるだけ長く延長することができるようにして排気効率を高めることのできる煙突を提供することを目的としている。
【0006】
また、本発明は、排気流路を流れる排気の旋回流が減衰しているような場合であっても、そのような排気の旋回流を加勢したり整流したりすることにより、下流側への旋回流の
到達距離をできるだけ長く延長することができるようにして排気効率を高めることのできる煙突を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る煙突は、排気発生源から送出された排気の旋回流が導入される排気流路を形成する煙突であって、排気流路における軸線方向の少なくとも3段にわたる複数箇所に、旋回流を遮蔽する仕切り部材が互いに間隔を隔ててそれぞれ配備され、これらの仕切り部材のそれぞれに、排気流路の横断面中央部に位置して旋回流の全量が通過する円形の通口が開設されていると共に、それぞれの仕切り部材の通口が排気流路の横断面積よりも狭い断面積を有し、排気流路の下流側に位置している仕切り部材の通口ほど、その下段側の仕切り部材の通口との間隔が狭められている、というものである。このように構成された煙突によれば、排気流路に導入された排気の旋回流が円形の通口を通過するのに伴い旋回半径を縮小することから、旋回流の旋回速度を速める(旋回速度増大作用)と共に、排気流路の壁面近くの乱流境界層への遷移を回避し(乱流境界層遷移回避作用)、また、旋回流の旋回中心軸が排気流路の軸線に矯正される(旋回中心軸矯正作用)。このため、旋回流は全量が上記通口を通過することによって整流及び加勢されるようになり、旋回流が上記通口を通過しない場合や旋回流の一部だけが通過する場合に比べて、下流側への到達距離が長くなり、このことが排気効率を向上させることに役立つ。また、通口が円形であることにより、四角形やその他の多角形である場合に比べて、当該通口を通過する旋回流に乱れが生じにくくなり、このことが排気効率の低下を最少限度に抑えることに役立つ。
【0008】
また、通口が、上記排気流路の軸線方向複数箇所に位置すると共に、排気流路の下流側に位置している仕切り部材の通口ほど、その下段側の仕切り部材の通口との間隔が狭められていることで、上記した旋回速度増大作用、乱流境界層遷移回避作用、旋回中心軸矯正作用旋回流に繰り返し働いて旋回流の到達距離が大幅に延長されるため、排気効率の著しい向上が期待されるだけでなく、旋回流が排気流路の下流側へ向けて流れていくときの旋回流の減衰を効果的に抑制しやすくなる。さらに、通口が、上記排気流路に配備されて上記旋回流を遮蔽する仕切り部材に開設されていることから、既存の煙突に仕切り部材を追加するだけで、既存の煙突の排気効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、排気流路に流れ込んでくる排気の旋回流が減衰しているような場合であっても、そのような排気の旋回流が加勢されたり整流されたりして旋回流の到達距離が長く延長されるために煙突による排気効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る煙突の要部を一部破断して示した縦断側面図である。
【
図2】
図1の煙突の要部を断面図で示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、図示した実施形態を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る煙突100の要部を一部破断して示した縦断側面図、
図2は
図1の煙突100の要部を断面図で示した概略斜視図、
図3は図1の煙突100の横断平面図である。
【0012】
この煙突100は、建物駆体の各階のスラブ(床)に設けられた開口を有する煙突構築用スペースとしての吹き抜けに設置される。この種の煙突100では、下端部に、建物に設置されたガスタービンやディーゼルエンジン、ボイラー、廃棄物焼却炉といった排気発生源の排気通路が横向きに接続され、上端部は建物の屋上などに突出される。また、煙突100は長さが6m程度の複数のユニットに分かれている。そして、
図3のように、個々のユニットの筒壁110が、一般的には、断熱層111の内外両側に鋼板製の外筒112と内筒113とを備えている。なお、
図1及び
図2では、筒壁110を簡略化して1層構造のものとして示している。この煙突100において、排気は、筒壁110の内部空間によって形成された排気流路Fを経て外部に放出される。
【0013】
この煙突100の排気流路Fには、
図1に矢印で示したように排気発生源から送出され、排気の上流域で旋回流変換手段により旋回流Cとなった排気が導入されて、その旋回流が排気流路Fを上昇する。そして、排気流路Fの途中箇所に設けられた通口10を上記旋回流が通過するようになっている。
図2のように、通口10は、排気流路Fに配備されて上記旋回流Cを遮蔽する仕切り部材20に開設されている。したがって、排気の旋回流Cはその全量が通口10を通過する。
【0014】
図1や
図2から明らかなように、上記通口10は、排気流路の横断面中央部の1箇所に位置していて、その形状は円形であって、排気流路Fの横断面積よりも狭い断面積を有している。
【0015】
この煙突100によれば、排気流路Fに導入された排気の旋回流Cが円形の通口10を通過するのに伴って、旋回半径を縮小するために旋回流Cが旋回速度を速める(旋回速度増大作用)と共に、排気流路の壁面近くの乱流境界層への遷移を回避し(乱流境界層遷移回避作用)、また、旋回流Cの旋回中心軸が排気流路の軸線Pに矯正される(旋回中心軸矯正作用)。このため、旋回流は全量が上記通口10を通過することによって整流及び加勢されるようになり、このことが排気効率を向上させることに役立つ。また、通口10が円形であることにより、四角形やその他の多角形である場合に比べて、通口10を通過する旋回流Cに乱れが生じにくいので、通口10を通過する直前で旋回流Cが激しく乱れて排気効率が低下するという現象が最少限度に抑えられることになり、全体として排気効率を向上させることに役立つ。
【0016】
図1のように、この実施形態では、排気流路Fに仕切り部材20を所定の間隔D1,D2を隔てて多段に配備することによって、通口10を、排気流路Fの軸線方向複数箇所に位置させている。こうしておくと、上記した旋回速度増大作用、乱流境界層遷移回避作用、旋回中心軸矯正作用が旋回流Cに繰り返し働いて旋回流の到達距離が大幅に延長されるため、排気効率の向上が期待される。
【0017】
通口10を、排気流路Fの軸線方向複数箇所に位置させる場合に、下段側の通口10とそれに隣接する上段側の通口10との間隔D1,D2は、通口10を通過する直前の旋回流Cの流速や流れ状態を勘案して定めることが望ましい。たとえば、旋回流Cの流速が排気流路Fの下流側にいくほど減衰したり、旋回流Cの流れ状態が排気流路Fの下流側にいくほど乱れることが明らかなときには、排気流路Fの下流側に位置している通口10ほど、その下段側の通口10との間隔を狭めておくことが望ましいと考えられる。言い換えると、N段目の通口10とN+1段目の通口との間隔D1よりも、N+1段目の通口10とN+2段目の通口との間隔D2を狭めておくことが望ましいと考えられる。こうしておくと、旋回流Cが排気流路Fの下流側へ向けて流れていくときの旋回流Cの減衰を効果的に抑制しやすくなる。なお、排煙排ガス用の大規模な煙突では、相隣接段の通口10の間隔D1,D2の長さを数mから数十m程度に定めることもある。
図1~
図3を参照して説明した実施形態では、板状の仕切り部材20に通口10を開設してあるけれども、通口10をどのような態様で具備させるかについては様々な態様が考えられる。
【0018】
この実施形態では、建物駆体の煙突構築用スペースとしての吹き抜けに設置される大形の煙突としての煙突100に本発明を適用した事例を説明したけれども、この点は、空調用などに用いられる排煙用の比較的小規模の煙突についても同様に適用することができる。また、実施形態では、断面四角形の煙突100を説明したけれども、煙突の形状は断面円形であってもよい。
【0019】
なお、
図1~
図3においては、説明を簡略化することを意図して同一又は相応する要素に同一符号を付している。
【符号の説明】
【0020】
C 旋回流
F 排気流路
10 通口
20 仕切り部材
100 煙突