(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】飲食物搬送装置
(51)【国際特許分類】
A47G 23/08 20060101AFI20231204BHJP
B65G 47/69 20060101ALI20231204BHJP
B65G 47/68 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A47G23/08 Z
B65G47/69
B65G47/68 B
(21)【出願番号】P 2020016386
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】本岡 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 茂
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140297(JP,A)
【文献】特開2016-152904(JP,A)
【文献】特開2007-145456(JP,A)
【文献】特開2014-210648(JP,A)
【文献】特開2005-089019(JP,A)
【文献】実開昭58-070859(JP,U)
【文献】特開平04-350412(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108497883(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0202385(US,A1)
【文献】特開2013-173616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G23/00-23/16
B65G47/00-47/96
B65G39/00-39/20
B65G13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食店の厨房側から客席へ至る飲食物搬送用のコンベアによって形成される搬送路沿いに配置されており、前記搬送路から分岐して下り勾配の分岐レーンを形成する回転自在な搬送用のローラ群を備え、
前記分岐レーンのうち少なくとも経路のカーブ部分に配置されているローラが形成する下り勾配の経路の傾斜角は、前記分岐レーンのうち前記カーブ部分の先にある直線部分に配置されているローラが形成する下り勾配の経路の傾斜角よりも大きい、
飲食物搬送装置。
【請求項2】
前記分岐レーンは、前記搬送路から分岐した部分の先に前記カーブ部分を有する、
請求項1に記載の飲食物搬送装置。
【請求項3】
前記分岐レーンのうち少なくとも前記カーブ部分に配置されている各ローラは、前記経路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成される、
請求項1又は2に記載の飲食物搬送装置。
【請求項4】
前記分岐レーンは、終端部分に非ローラ部分を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の飲食物搬送装置。
【請求項5】
前記飲食物搬送装置は、前記搬送路上に側方からせり出される部材であり、前記コンベアによって搬送される飲食物の皿を徐々に前記分岐レーン側へ案内する斜めのガイド部が形成された進路変更部材を前記搬送路上に出し入れ可能な進路変更手段を更に備えており、
前記ローラ群は、前記搬送路上にせり出した状態の前記進路変更部材の前記ガイド部が案内する皿の進路に沿うように、前記搬送路から前記搬送路の斜め側方へ分岐する前記分岐レーンを形成する、
請求項1から4の何れか一項に記載の飲食物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店においては、搬送装置を使った飲食物の提供が行なわれている(例えば、特許文献1-3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-289号公報
【文献】特開2008-99885号公報
【文献】特開2005-185326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲食物を搬送する場合、例えば、厨房から客席へ至るベルトコンベアに飲食物の皿を載せて搬送することが考えられる。この場合、客席へ搬送された飲食物の皿は、次の飲食物を搬送可能にするために、当該ベルトコンベアから客が取り除くか、或いは、当該ベルトコンベアから客席の分岐経路へ自動的に案内することにより、当該ベルトコンベア上から取り除かれる必要がある。
【0005】
ここで、ベルトコンベアから分岐する分岐経路を客席に設けておき、ベルトコンベアが搬送する飲食物の皿を分岐経路へ案内する構成を採る場合、分岐経路の駆動機構を省略するために、回転自在なローラで当該分岐経路を下り勾配に形成することが考えられる。回転自在なローラで当該分岐経路を下り勾配に形成しておけば、ベルトコンベアから当該分岐経路へ案内された飲食物の皿が、下り勾配の当該分岐経路を自重で下るため、当該分岐経路にモータ等の駆動機構を設ける必要が無くなる。
【0006】
しかし、飲食物の皿が通る搬送経路には、飲食物を構成する米や汁等が付着する場合がある。このような付着物が分岐経路のローラに付着すると、ローラの回転に支障が生じる。よって、分岐経路は、多少の付着物がローラに付着しても飲食物の皿が自重で下るように、ある程度の傾斜角を設ける必要がある。一方、分岐経路の傾斜角を大きくすると、分岐経路を下る飲食物の皿の勢いが増す。このため、分岐経路の傾斜角が過大になると、飲食物の皿が分岐経路の終端部分に勢いよく衝突することになる。
【0007】
そこで、本願は、飲食物が移動する搬送経路から分岐する分岐経路において、回転自在なローラで当該分岐経路を下り勾配に形成した場合における、飲食物の皿が下る速度を適正に調整可能な飲食物搬送装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、分岐経路のカーブ部分の傾斜角を、直線部分の傾斜角より大きくした。
【0009】
詳細には、本発明は、飲食物搬送装置であって、飲食店の厨房側から客席へ至る飲食物搬送用のコンベアによって形成される搬送路沿いに配置されており、搬送路から分岐して下り勾配の分岐レーンを形成する回転自在な搬送用のローラ群を備え、分岐レーンのうち少なくとも経路のカーブ部分に配置されているローラが形成する下り勾配の経路の傾斜角
は、分岐レーンのうちカーブ部分の先にある直線部分に配置されているローラが形成する下り勾配の経路の傾斜角よりも大きい。
【0010】
上記の飲食物搬送装置であれば、カーブ部分の方が直線部分よりも下り勾配の傾斜角が大きいため、カーブ部分における飲食物の移動速度と直線部分における飲食物の皿の移動速度との差分が、分岐レーンの傾斜角が一様なものよりも小さくなる。このため、飲食物の皿が下る速度を適正に調整することができる。
【0011】
なお、分岐レーンは、搬送路から分岐した部分の先にカーブ部分を有するものであってもよい。上記飲食物搬送措置がこのように構成されている場合、分岐レーンに進入した飲食物の皿は、カーブ部分を通過してから直線部分へ入ることになる。
【0012】
また、分岐レーンのうち少なくともカーブ部分に配置されている各ローラは、経路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成されるものであってもよい。上記飲食物搬送措置がこのように構成されている場合、経路がカーブしている部分の各ローラは、各ローラの上を進む飲食物の皿の視点で見ると、皿がローラの上を順に進んでいくに従って回転方向の角度が徐々にカーブの内側へ向かう方向に変化することになる。皿は、基本的に皿に接しているローラの回転方向に沿うように進むため、皿に接しているローラの回転方向の角度が変化すれば、皿の進路もこれに従うことになる。この結果、皿は、カーブの外側へ向かうことなく、分岐レーンの経路の中心線に寄るよう、カーブの内側寄りに軌道修正される。従って、上記飲食物搬送装置であれば、ローラコンベアを用いた分岐レーンにカーブがあっても、飲食物の皿がカーブに沿ってスムーズに動く。
【0013】
また、分岐レーンは、終端部分に非ローラ部分を有するものであってもよい。上記飲食物搬送措置がこのように構成されている場合、飲食物の皿をより静かに停止させることができる。
【0014】
また、飲食物搬送装置は、搬送路上に側方からせり出される部材であり、コンベアによって搬送される飲食物の皿を徐々に分岐レーン側へ案内する斜めのガイド部が形成された進路変更部材を搬送路上に出し入れ可能な進路変更手段を更に備えており、ローラ群は、搬送路上にせり出した状態の進路変更部材のガイド部が案内する皿の進路に沿うように、搬送路から搬送路の斜め側方へ分岐する分岐レーンを形成するものであってもよい。上記飲食物搬送装置がこのように構成されていれば、コンベアによって搬送される飲食物の皿がコンベアの搬送路の進行方向の斜め側方へ向かう形で分岐レーンに進入するので、比較的速い搬送速度でコンベアを作動させても皿をスムーズに分岐レーンへ進入させることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記飲食物搬送装置であれば、飲食物が移動する搬送経路から分岐する分岐経路において、回転自在なローラで当該分岐経路を下り勾配に形成した場合における、飲食物の皿が下る速度を適正に調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は、注文飲食物搬送装置の客席付近を拡大した図である。
【
図4】
図4は、搬送開始操作が行われた場合に実行される制御フロー図を示している。
【
図5】
図5は、搬送時の皿や進路変更部材の動きを示した図である。
【
図6】
図6は、分岐レーンに進入した皿の動きを示した第1の図である。
【
図7】
図7は、分岐レーンが形成する下り勾配の傾斜角を解説した図である。
【
図8】
図8は、分岐レーンが形成する下り勾配の傾斜角の変形例を示した図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る注文飲食物搬送装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0018】
図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置10の全体構成図である。注文飲食物搬送装置10は、客の注文を受けて用意された飲食物の皿1を飲食店の厨房2から客席3へ搬送する装置であり、
図1に示すように、客が飲食する各客席3の脇を通る搬送路を形成する。注文飲食物搬送装置10は、飲食店の厨房2側から客席3へ至る搬送路を形成する主ベルトコンベア20と、主ベルトコンベア20の厨房2側に延設され、搬送路を延伸する副ベルトコンベア30とを備えている。なお、本実施形態では、主ベルトコンベア20が直線状に形成されているが、主ベルトコンベア20を複数組み合わせることにより、主ベルトコンベア20がカーブ部分を有する搬送路を形成するようにしてもよい。
【0019】
図2は、注文飲食物搬送装置10の客席3付近を拡大した図である。主ベルトコンベア20が形成する搬送路の脇には、搬送路から分岐して下り勾配の経路を形成する分岐レーン40が設けられている。注文飲食物搬送装置10は、客席3に設置される注文端末等を介して注文が受け付けられ、厨房2で用意された飲食物を搬送する。
【0020】
分岐レーン40は、進路変更装置50によって主ベルトコンベア20の搬送路から分岐された飲食物の皿1が乗り移るレーンであり、主ベルトコンベア20によって形成される搬送路沿いに配置されている。分岐レーン40は、回転自在な搬送用のローラ群41によって形成されている。分岐レーン40は、主ベルトコンベア20の搬送路から側方へ分岐し、更に主ベルトコンベア20の搬送路沿いに下り勾配の経路を形成しているため、皿1が乗るとローラが転がり、皿1が分岐レーン40の終端側に寄る。
【0021】
なお、注文飲食物搬送装置10の上側には、湯呑みや調味料、お品書き等を乗せる棚板が支柱によって支持されているが、このような支柱や棚板は省略されていてもよいし、支柱や棚板に代わるものが設置されていてもよい。また、
図2において、分岐レーン40は、長方形の天面を有するボックス席用のテーブルに設けられているが、このようなボックス席用のテーブルに設けられる形態に限定されるものではない。分岐レーン40は、例えば、カウンター席用のテーブルに設けられていてもよい。
【0022】
図3は、分岐レーン40を拡大した図である。分岐レーン40を構成するローラ群41は、主ベルトコンベア20が形成する搬送路上にせり出した状態の進路変更部材51のガイド部52が案内する皿1の進路に沿うように、主ベルトコンベア20が形成する搬送路から斜め側方へ分岐する分岐レーンを形成する。そして、分岐レーン40を構成するローラ群41のうち経路がカーブしているカーブ部分に配置されている各ローラ42は、分岐レーン40が形成する経路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成されている。
【0023】
また、主ベルトコンベア20が形成する搬送路から分岐レーン40へ別れる分岐部分に
は、進路変更装置50が設けられている。進路変更装置50は、進路変更部材51を有している。進路変更部材51は、主ベルトコンベア20が形成する搬送路上に側方からせり出される部材であり、主ベルトコンベア20によって搬送される飲食物の皿1を徐々に分岐レーン40側へ案内する斜めのガイド部52が形成されている。進路変更装置50は、進路変更部材51を主ベルトコンベア20の搬送路上に出し入れ可能な装置である。進路変更装置50は、内蔵される図示しないロータリーソレノイドで進路変更部材51を動かす。なお、進路変更装置50は、ロータリーソレノイドを駆動源とするものに限定されるものでなく、例えば、電動のモータやその他各種の駆動源を適用可能である。
【0024】
主ベルトコンベア20および副ベルトコンベア30を駆動する駆動モータや、進路変更装置50のロータリーソレノイドは、図示しない制御装置によって制御され、操作パネルに入力された操作内容や各センサからの信号に基づいて制御される。以下、制御装置によって実現される注文飲食物搬送装置10の動作を説明する。
【0025】
<搬送時の動作>
注文飲食物搬送装置10の制御装置は、副ベルトコンベア30付近に配置された操作パネルにおいて搬送開始操作が行われると、副ベルトコンベア30と主ベルトコンベア20を作動させ、副ベルトコンベア30に乗った飲食物の皿1を客席3へ搬送する。
【0026】
図4は、搬送開始操作が行われた場合に実行される制御フロー図を示している。注文飲食物搬送装置10の制御装置は、副ベルトコンベア30付近に設置された操作パネルにおいてテーブルの選択操作が行われたか否かを判定する(S101)。そして、制御装置は、ステップS101の処理においてテーブルの選択操作が行われたことを検知すると、次に搬送開始の操作が行われたか否かを判定する(S102)。そして、制御装置は、ステップS102の処理において搬送開始の操作が行われたことを検知すると、選択されたテーブルに設置された分岐レーン40への分岐点に設けられている進路変更装置50を作動させ、進路変更部材51を主ベルトコンベア20上に出す(S103)。そして、制御装置は、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30を作動させる(S104)。なお、制御装置は、主ベルトコンベア20を副ベルトコンベア30よりも速い搬送速度で作動させる。
【0027】
制御装置は、ステップS104の処理を実行した後、副ベルトコンベア30に乗っていた全ての皿1が主ベルトコンベア20に乗ったか否かを判定する(S105)。制御装置は、副ベルトコンベア30に乗っていた全ての皿1が主ベルトコンベア20に乗ったか否かの判定を、例えば、副ベルトコンベア30と主ベルトコンベア20との境界付近に設置したセンサの検知結果に基づいて判定してもよいし、副ベルトコンベア30を起動してからの経過時間に基づいて判定してもよい。制御装置は、ステップS105の処理において肯定判定を下した場合、副ベルトコンベア30を停止する(S106)。
【0028】
制御装置は、ステップS106の処理を実行した後、選択されたテーブルにある分岐レーン40への分岐点に皿1が接近しているか否かを判定する(S107)。制御装置は、分岐点に皿1が接近しているか否かの判定を、例えば、分岐点の付近に設置したセンサの検知結果に基づいて判定してもよいし、分岐点の位置毎に予め設定された搬送開始からの経過時間に基づいて判定してもよい。制御装置は、ステップS107の処理において肯定判定を下した場合、主ベルトコンベア20を減速させる(S108)。
【0029】
制御装置は、ステップS108の処理を実行した後、主ベルトコンベア20に乗っている全ての皿1が分岐レーン40に移動したか否かを判定する(S109)。制御装置は、主ベルトコンベア20に乗っている全ての皿1が分岐レーン40に移動したか否かの判定を、例えば、分岐点の付近に設置したセンサの検知結果に基づいて判定してもよいし、分
岐点の位置毎に予め設定された搬送開始からの経過時間に基づいて判定してもよい。制御装置は、ステップS107の処理において肯定判定を下した場合、主ベルトコンベア20を停止し、進路変更装置50の進路変更部材51を主ベルトコンベア20の上から退避させる(S110)。
【0030】
なお、制御装置は、ステップS101とステップS102の何れかにおいて否定判定を行った場合、ステップS103以降の処理を省略し、ステップS101以降の処理を再び実行する。
【0031】
図5は、搬送時の皿1や進路変更部材51の動きを示した図である。搬送開始要求がなされると、
図5(A)に示されるように、選択されたテーブル付近の進路変更部材51が主ベルトコンベア20上にせり出し、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30が作動する。すると、
図5(B)に示されるように、副ベルトコンベア30に乗っていた皿1が順次主ベルトコンベア20上へ送り出される。主ベルトコンベア20へ送り出された皿1は、
図5(C)に示されるように、やがて進路変更部材51に接触して分岐レーン40側へ案内される。副ベルトコンベア30に乗っていた全ての皿1が主ベルトコンベア20に乗れば、副ベルトコンベア30は停止状態になる。分岐レーン40に入った皿1は、分岐レーン40上を移動し、
図5(D)に示されるように、分岐レーン40の終端に順次到着する。また、進路変更部材51は主ベルトコンベア20の上から退く。
【0032】
注文飲食物搬送装置10の制御装置によって実現される主要な動作内容は、以上に説明した通りである。上記注文飲食物搬送装置10であれば、副ベルトコンベア30に乗っていた全ての皿1が主ベルトコンベア20に乗れば、主ベルトコンベア20が作動中でも副ベルトコンベア30が停止するため、厨房2のスタッフは、副ベルトコンベア30に次の皿1を直ちに載せることができる。従って、飲食物の注文が多い場合であっても、注文された飲食物を効率的に客席へ搬送することができる。上記注文飲食物搬送装置10によるこのような効果は、主ベルトコンベア20によって形成される搬送路の長い飲食店で特に著しい。また、上記実施形態に係る注文飲食物搬送装置10であれば、主ベルトコンベア20が形成する搬送路の進行方向に対し斜めに分岐する分岐レーン40へ皿1が搬送されるため、主ベルトコンベア20の搬送速度を比較的速くすることができ、飲食物が載った皿1を効率よく搬送することができる。また、上記実施形態に係る注文飲食物搬送装置10であれば、皿1が分岐レーン40に近づくと主ベルトコンベア20の搬送速度が低下するため、皿1が進路変更部材51に接触した際の衝撃で皿1の飲食物の姿勢が傾く虞が低い。
【0033】
ところで、分岐レーン40を構成するローラ群41のうち少なくとも経路がカーブしている部分に配置されている各ローラ42は、既述したように、分岐レーン40が形成する経路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成されている。よって、注文飲食物搬送装置10の制御装置が上記のような動作を実現し、主ベルトコンベア20に乗っている皿1が進路変更部材51に接触して分岐レーン40へ案内されると、分岐レーン40では皿1が以下のように動く。
【0034】
図6は、分岐レーン40に進入した皿1の動きを示した第1の図である。主ベルトコンベア20に乗っている皿1は、皿1の糸切り部分が進路変更部材51のガイド部52に接触すると、
図6(A)に示すように、分岐レーン40を構成するローラ群41の各ローラに乗る。ローラ群41の各ローラは互いに独立して自在に回転可能である。よって、下り勾配の分岐レーン40に乗った皿1は、ローラ群41の各ローラを自重で転がしながら分岐レーン40を下り始める。そして、
図6(B)に示すように、分岐レーン40のうち経路がカーブしている部分に進入する。そして、以下のような理由により、
図6(C)に示すように皿1が分岐レーン40の搬送路の中心線上に位置するように軌道修正されながら
徐々に傾斜を下る。
【0035】
すなわち、分岐レーン40のうち経路がカーブしている部分の各ローラ42は、分岐レーン40が形成する経路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成されている。そして、各ローラ42の回転軸は、分岐レーン40が形成する経路の中心線に対し直角である。よって、皿1の視点で見ると、皿1が各ローラ42の上を順に進んでいくに従い、皿1に接しているローラ42の回転方向の角度が徐々にカーブの内側へ向かう方向に変化することになる。皿1は、基本的に皿1に接しているローラ42の回転方向に沿うように進むため、皿1に接しているローラ42の回転方向の角度が変化すれば、皿1の進路もこれに従うことになる。この結果、皿1は、カーブの外側へ向かうことなく、分岐レーン40の経路の中心線に寄るよう、カーブの内側寄りに軌道修正される。
【0036】
また、皿1が分岐レーン40の経路の中心線よりもカーブの内側に寄っていた場合、皿1は、分岐レーン40の経路の中心線に寄るよう、カーブの外側寄りに軌道修正される。その理由としては、各ローラ42が、外周面がテーパ状になっておらず、外径が一定な円柱状のローラであることが挙げられる。すなわち、各ローラ42が、外周面がテーパ状になっておらず、外径が一定な円柱状のローラであるため、ローラ42そのものを回転させるのに必要な力はカーブの内側のローラも外側のローラも同じである。そして、カーブ部分の軌道は、外側寄りの軌道より内側寄りの軌道の方が急カーブを描く。よって、皿1の視点から見ると、外側寄りの軌道より内側寄りの軌道の方が、皿1に接するローラ42の角度の変化が急である。従って、皿1が進もうとする方向に対するローラ42の回転方向の角度が外側のローラ42よりも大きい内側のローラ42が、皿1との接触部分で皿1に摩擦力を発生させ、皿1のスムーズな進行を妨げる。この結果、皿1は、進みやすい外側のローラ42の方へ寄り、結果的に分岐レーン40の経路の中心線に寄るよう、カーブの外側寄りに軌道修正される。
【0037】
このように、分岐レーン40は、少なくともカーブ部分を含む各ローラが分岐レーン40の進路の中心線を挟んで左右に分割され且つ左右のローラが互いに独立して回転自在に構成されているため、分岐レーン40の軌道の中心線に寄るように皿1の軌道が自律的に修正される。この結果、分岐レーン40の経路の両側を囲む部材等に皿1が接触して不快な音を発生させることもなく、分岐レーン40の傾斜を皿1がスムーズに下ってゆく。
【0038】
また、分岐レーン40は、以下のような下り勾配となっている。
図7は、分岐レーン40が形成する下り勾配の傾斜角を解説した図である。分岐レーン40は、
図7に示されるように、主ベルトコンベア20が形成する搬送路から分岐した部分の先にあるカーブ部分の経路の傾斜角をθAとし、当該カーブ部分の先にある直線部分の経路の傾斜角をθBとした場合に、θAがθBよりも大きくなるようにローラ群41が設けられている。
【0039】
カーブ部分では、上述したように、皿1とローラ42との間の接触部分で摩擦力が発生する。このため、分岐レーン40の傾斜角が一様な場合、カーブ部分では摩擦力の発生により、自重による皿1の進行が直線部分より遅くなる。よって、分岐レーン40の傾斜角が一様な場合、主ベルトコンベア20が形成する搬送路から分岐した部分の先にあるカーブ部分では皿1の移動速度が遅くなるのに対し、カーブ部分を通過した後の直線部分では皿1の移動速度が速くなる。このため、分岐レーン40の傾斜角が一様な場合、ローラ42の汚れ等によりカーブ部分で皿1が殆ど移動しなくなったり、或いは、分岐レーン40の終端部分に皿1が勢いよく衝突したりする可能性がある。
【0040】
一方、本実施形態のように、カーブ部分の方が直線部分よりも下り勾配の傾斜角が大きい分岐レーン40であれば、カーブ部分における皿1の移動速度と直線部分における皿1
の移動速度との差分が、分岐レーン40の傾斜角が一様なものよりも小さくなる。このため、ローラ42の汚れ等によりカーブ部分で皿1が殆ど移動しなくなったり、或いは、分岐レーン40の終端部分に皿1が勢いよく衝突したりする可能性を可及的に抑制することが可能となる。すなわち、本実施形態のように、カーブ部分の方が直線部分よりも下り勾配の傾斜角が大きい分岐レーン40であれば、皿1が下る速度を適正に調整することができる。
【0041】
なお、分岐レーン40が形成する分岐経路の傾斜角は、上述したような2段階(θAとθB)のものに限定されるものでなく、3段階以上、或いは、無段階に調整されるものであってもよい。また、分岐レーン40が形成する分岐経路は、分岐部分から終端部分まで全て傾斜している必要はなく、例えば、一部に水平な部分を有するものであってもよい。
【0042】
図8は、分岐レーン40が形成する下り勾配の傾斜角の変形例を示した図である。分岐レーン40は、主ベルトコンベア20が形成する搬送路から分岐する部分のローラ42が、例えば
図8において符号Aで示されるように、主ベルトコンベア20が形成する搬送面と同じ高さに設けられていてもよい。主ベルトコンベア20が形成する搬送路から分岐する部分のローラ42が、このように主ベルトコンベア20が形成する搬送面と同じ高さに設けられていれば、進路変更部材51のガイド部52によって分岐レーン40へ案内される皿1が、主ベルトコンベア20から分岐レーン40のローラ42へ乗り移りやすい。このため、皿1を主ベルトコンベア20から分岐レーン40へスムーズに案内することができる。
【0043】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置10では、主ベルトコンベア20が形成する搬送路沿いに分岐レーン40の直線部分が配置される形態となっていたが、分岐レーン40の直線部分は、主ベルトコンベア20が形成する搬送路沿いに配置されていなくてもよい。
図9は、本変形例に係る注文飲食物搬送装置の全体構成図である。注文飲食物搬送装置10は、例えば、
図9に示されるように、分岐レーン40の直線部分が主ベルトコンベア20の搬送路の長手方向に対し90度傾いた方向に延在するものであってもよい。
【0044】
また、分岐レーン40は、各ローラの間に隙間があるため、分岐レーン40の下に飲食物の小片等が落下して溜まりやすい。飲食店においては、衛生面に配慮する必要があるため、分岐レーン40の下側を清掃しやすいよう、各ローラが容易に着脱できることが好ましい。例えば、分岐レーン40を構成する各ローラを、分岐レーン40の筐体に着脱可能な一又は複数の枠体に取り付けておけば、枠体を筐体から取り外すだけで分岐レーン40の下側を容易に清掃することができる。
【0045】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置10に備わっていた分岐レーン40は、ベルトコンベアによって形成される搬送路から分岐する箇所への適用に限定されるものではない。分岐レーン40は、例えば、クレセントチェーンによって形成される飲食物循環搬送装置の循環経路から分岐する箇所へ適用してもよい。
【0046】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置10では、副ベルトコンベア30が主ベルトコンベア20に対して1つ設けられていたが、副ベルトコンベア30は、主ベルトコンベア20に対し複数設けられていてもよい。この場合、複数の副ベルトコンベア30が直列に配列され、主ベルトコンベア20と共に直線状の搬送路を形成するようにしてもよいし、副ベルトコンベア30が主ベルトコンベア20の厨房側の端部から放射状に分岐するように延設されてもよい。
【0047】
図10は、分岐レーンの変形例を示した図である。分岐レーン40の搬送路は、分岐部分から終端部分まで全てローラ群41で構成されている必要は無い。分岐レーン40は、
例えば、
図10に示されるように、分岐レーン40の終端部分がローラの代わりに平らな板材の天面からなる非ローラ部分43となっていてもよい。分岐レーン40の終端部分がこのような非ローラ部分43となっていれば、下り勾配の分岐レーン40を下る皿1が、ローラ群41から非ローラ部分43へ乗り移り、皿1の底部を構成する糸切り部分と非ローラ部分43との摩擦力で停止する。よって、皿1が分岐レーン40の終端部分に衝突して停止する場合に比べて、皿1を静かに停止させることができる。したがって、上述した傾斜角θAから傾斜角θBへの傾斜角の変化による皿1の移動速度の調整機能がより効果的に機能する。
【符号の説明】
【0048】
1・・皿
2・・厨房
3・・客席
10・・注文飲食物搬送装置
20・・主ベルトコンベア
30・・副ベルトコンベア
40・・分岐レーン
41・・ローラ群
42・・ローラ
43・・非ローラ部分
50・・進路変更装置
51・・進路変更部材
52・・ガイド部