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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20231204BHJP
【FI】
H02K1/276
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020100206
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021197749
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-11-03
(73)【特許権者】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100175330
【弁理士】
【氏名又は名称】樹下 浩次
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康浩
(72)【発明者】
【氏名】草瀬 新
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-021776(JP,A)
【文献】特開2013-198254(JP,A)
【文献】特開2014-039424(JP,A)
【文献】特開2014-072971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 21/14
H02K 1/22
H02K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットに多相の巻線を巻装させた固定鉄心を有する電機子と、内側にハブ、外側に磁極部を有する回転鉄心を含み、前記電機子と所定寸法の空隙長を持って前記磁極部と第1永久磁石の外周が離間し、且つ前記ハブが回転軸に固定された環状の界磁回転子と、を有する回転電機において、前記界磁回転子は、周方向にN極及びS極を有し、前記磁極部の間に、周方向に前記N極及びS極を交互に配された前記第1永久磁石と、前記界磁回転子の周方向の極弧部の両端の長さを底辺とする略二等辺三角形である前記磁極部と、前記界磁回転子の前記磁極部の略二等辺三角形の頂部から前記ハブに連接されるスポークと、隣接する前記スポークの間の前記スポークの端部を4つの頂点とする略四角形である開孔部と、を備え、前記磁極部は、斜辺の長さに対する前記底辺の長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)が0.56以下、及び前記第1永久磁石において、径方向の内側の周方向の長さが、径方向外側の周方向の長さより大きい、ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
複数のスロットに多相の巻線を巻装させた固定鉄心を有する電機子と、内側にハブ、外側に磁極部を有する回転鉄心を含み、前記電機子と所定寸法の空隙長を持って前記磁極部と第1永久磁石の外周が離間し、且つ前記ハブが回転軸に固定された環状の界磁回転子と、を有する回転電機において、前記界磁回転子は、周方向にN極及びS極を有し、前記磁極部の間に、周方向に前記N極及びS極を交互に配された前記第1永久磁石と、前記界磁回転子の周方向の極弧部の両端の長さを底辺とする略二等辺三角形である前記磁極部と、前記界磁回転子の前記磁極部の略二等辺三角形の頂部から前記ハブに連接されるスポークと、隣接する前記スポークの間の前記スポークの端部を4つの頂点とする略四角形である開孔部と、を備え、前記界磁回転子の回転軸方向から見た前記磁極部の前記極弧部の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ=A/Bが、2.2~4.3、及び前記第1永久磁石において、径方向の内側の周方向の長さが、径方向外側の周方向の長さより大きい、ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2の回転電機において、前記界磁回転子の回転軸方向から見た前記磁極部の前記極弧部の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ=A/Bが、2.5~3.3であることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
前記界磁回転子の前記スポークの間の前記開孔部に、隣接する前記第1永久磁石と結合された第2永久磁石が配され、前記第2永久磁石のN極及びS極は、前記第1永久磁石と同じであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つの回転電機。
【請求項5】
請求項の、前記界磁回転子の前記スポーク、前記ハブ、前記第2永久磁石、及び前記第1永久磁石が、一つに結合された第3永久磁石であることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項4の前記第1永久磁石又は前記第2永久磁石の内、すくなくとも1つは並行着磁されていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1つの回転電機において、前記界磁回転子の前記磁極部は、すくなくともアモルファスを母相とする金属であることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか1つの回転電機において、前記界磁回転子の前記磁極部の外周に磁極外部縁と、前記界磁回転子の前記第1永久磁石の外周にブリッジとを有し、隣接する前記磁極部外縁と前記ブリッジの端部が全て結合していることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項の回転電機において、前記電機子と対向する前記ブリッジの面にへこみを有することを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項または請求項の回転電機において、前記ブリッジは、非磁性部材であることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久磁石を用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機等永久磁石を用いた回転電機の小型高出力化は、分野や時代に関わらず普遍のニーズである。このような小型高出力の回転電機として、特許文献1には、ロータである界磁回転子に、ハルバッハ配列と言われる磁束密度の集中効果を発揮する特殊な永久磁石の配列を採用するものが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される環状の界磁回転子は、鉄心と永久磁石を有する。鉄心は、内側に回転軸に固定されるハブと、外側に略三角形の磁極部を複数有する。永久磁石は、周方向にN極及びS極を有し、周方向にN極及びS極を交互に配されている。磁極部は、永久磁石の間に配される。
【0004】
永久磁石を流れる磁束は、高い残留磁束密度で高保磁力ほどよく流れ磁束密度は大きくなり、低い残留磁束密度で高保磁力では流れにくくなり磁束密度は小さくなる。しかし、永久磁石を流れる磁束は、粗密なく均等にとなり集中することはない。
一方、磁極部は、高磁性の材料(例えば鉄系)を用い、磁束を集中させ大きな磁束密度とする効果を狙うことができる。
なお、ここで、ステータである電機子のコイルが励磁して発生する磁束は、ロータである界磁回転子の永久磁石のS極側の磁極部に流れ、永久磁石の内部を流れ、N極側の磁極部から電機子に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-33245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、磁極部での磁束の集中は、磁極部が略三角形であることによる幾何学的な効果もある。即ち、永久磁石のN極からでる磁束は、隣接する磁極部へ永久磁石のN極に隣接する斜辺から入り、磁極部の最外周部の極弧部から出る。特許文献1に記載される磁極部は正三角形に近い略三角形であるので一辺の長さをLとすると、磁束は、永久磁石のN極に隣接する斜辺の長さLから極弧部である底辺の半分の長さL/2に集中して流れる。よって、磁極部は、磁束密度を2倍程度に大きくすることができる。尚、底辺の半分の長さに集中するのは、磁極部は2つの永久磁石の間に配され、磁極部の2つの斜辺には、それぞれ隣接する永久磁石のN極から磁束が流れ込み、それぞれ底辺の1/2の長さから流れ出るからである。
磁極部の材料として一般に使われる鉄の飽和磁束密度は、2テスラ(以下、[T]と記す)程度である。一方、プラスチック磁石の磁束密度は0.5[T]程度である。よって、従来の磁極部は、永久磁石としてプラスチック磁石を用いたとき、0.5×2=1[T]となり、理想とすべき鉄並みの磁束密度を得ることができない。よって、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクが200Nm程度であり、目標とする12.5%向上するトルク225Nmを達成することができない。
【0007】
そこで、本開示は上記の問題点を解決するためになされたものであり、磁極部の磁束の集中効果を高め、大きな磁束密度とし、高いトルクを発生する回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、複数のスロットに多相の巻線を巻装させた固定鉄心を有する電機子と、内側にハブ、外側に磁極部を有する回転鉄心と、周方向にN極及びS極を有し、前記磁極部の間に、周方向に前記N極及びS極を交互に配された第1永久磁石と、前記界磁回転子の周方向の極弧部の両端の長さを底辺とする略二等辺三角形である前記磁極部と、を備え、前記電機子と所定寸法の空隙長を持って前記磁極部と永久磁石の外周が離間し、且つ前記ハブが回転軸に固定された環状の界磁回転子と、を有する回転電機において、前記磁極部は、斜辺の長さに対する前記底辺の長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)が、0.56以下であること、を特徴とする。
【0009】
この態様によれば、磁極部は、斜辺の長さに対する前記底辺の長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)が、0.56以下の略二等辺三角形である。
略二等辺三角形の斜辺の長さをLとすると、磁極部において磁束は、長さ(L)の斜辺から流入し、半分以下の長さ(0.56×L/2)の底辺から流出する。よって、磁極部は、磁束密度を、(斜辺の長さ)/(底辺の半分の長さ)以上、即ち、3.6(2/0.56)倍以上に大きくすることができる。
磁極部の材料として使われる鉄の飽和磁束密度は一般に2[T]程度であるが、実質的には90%程度で磁気飽和が始まり実質的飽和磁束密度は1.8[T]程度である。一方、低価格ではあるが磁力の弱い磁石として知られているプラスチック磁石の磁束密度は0.5[T]程度である。よって、本態様の磁極部は、永久磁石として前記のような磁力の弱いプラスチック磁石を用いたときであっても、0.5×3.6=1.8[T]の、鉄並みの理想とすべき強い磁束密度を得ることができる。よって、解析により、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを12.5%以上大きくすることができ、目標とするトルク225Nmを達成することができる。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、複数のスロットに多相の巻線を巻装させた固定鉄心を有する電機子と、内側にハブ、外側に磁極部を有する回転鉄心と、周方向にN極及びS極を有し、前記磁極部の間に、周方向に前記N極及びS極を交互に配された第1永久磁石と、前記界磁回転子の周方向の極弧部の両端の長さを底辺とする略二等辺三角形である前記磁極部と、を備え、前記電機子と所定寸法の空隙長を持って前記磁極部と永久磁石の外周が離間し、且つ前記ハブが回転軸に固定された環状の界磁回転子と、を有する回転電機において、前記界磁回転子の回転軸方向から見た前記磁極部の前記極弧部の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ=A/Bが、2.2~4.3であること、を特徴とする。
【0011】
この態様によれば、界磁回転子の回転軸方向から見た磁極部の極弧部の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ=A/Bが、2.2~4.3である。
分母Bは、回転電機1の作用配分から、ある磁極部から次の磁極部までの半周期(電気角180°)を6等分した(電気角30°)単位である。磁極部の極弧部の幅の電気角(A°)は、界磁回転子の回転軸方向から見た電気角である。磁極部の略二等辺三角形の形状は、極弧ピッチλが大きくなると、斜辺の長さは変わらないが、頂角は大きくなり底辺の長さは大きくなる。よって、極弧ピッチλが大きいほど、斜辺長さに対する底辺長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)は大きくなる。
発生トルクに寄与するのは、第1永久磁石が接する磁極部の回転前方の磁極部外縁と電機子との間にある境界付近の磁束が行き来する空隙領域の磁束密度の大きさである。極弧ピッチλが大きいほど磁路の断面積が広がり、電機子と磁極部の間の境界の磁気抵抗が低下し、磁束が増加することによりトルクが増加する。しかし、極弧ピッチλを大きくし過ぎると周方向に隣り合う磁極部同士の間隔は狭くなるから、その間に配される第1永久磁石の厚さは薄くなる。よって第1永久磁石の起磁力が低下し、磁束が減少してトルクが低下する。一方、極弧ピッチλが小さい、即ち極弧幅が狭い場合は、第1永久磁石の厚さが厚くでき起磁力が増加し、磁束が増加してトルクが増加する。しかし、極弧ピッチλを小さくし過ぎると磁極部の幅が狭くなり、磁極部で磁気飽和が発生して磁気抵抗が増加し、磁束が減少してトルクが低下する。従って、発生するトルクは、極弧ピッチλに対して凸部を有する傾向がある。
極弧ピッチλ=2.2~4.3の範囲では、下限λ=2.2及び上限λ=4.3にて、トルクは最小値の225Nmとなり、トルクの最大値は235Nmを持つ凸傾向にある。 よって、解析により、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを12.5%程度大きくすることができ、目標とするトルク225Nmを達成することができる。
【0012】
上記の態様においては、前記界磁回転子の回転軸方向から見た前記磁極部の前記極弧部の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ=A/Bが、2.5~3.3であること、を特徴とする。
【0013】
この態様によれば、極弧ピッチλ=2.5~3.3の範囲では、下限λ=2.5及び上限λ=3.3にて、トルクは最小値の229Nmとなり、トルクの最大値は235Nmを持つ凸傾向にある。
よって、解析により、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを15%程度大きくすることができ、目標より大きいトルク230Nmを達成することができる。
【0014】
上記のいずれか一方の態様においては、前記界磁回転子の前記磁極部の略二等辺三角形の頂部から前記ハブに連接されるスポークと、隣接する前記スポークの間の開孔部と、を有すること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、界磁回転子の磁極部の略二等辺三角形の頂部からハブに連接されるスポークと、隣接するスポークの間の開孔部とを有する。
よって、回転電機の回転によりスポークの間の開口部に空気が流れる。この空気により、磁極部及び第1永久磁石に発生する熱を、効率良く放熱することができる。よって、第1永久磁石の温度上昇を抑制して性能を高く維持できる効果がある。永久磁石は温度上昇により不可逆的に減磁するので、温度上昇の抑制は重要である。また、スポークにより遠心力などが働く磁極部及び第1永久磁石をハブに堅固に支持できる。
【0016】
上記の態様においては、前記界磁回転子の前記スポークの間の開孔部に、隣接する前記第1永久磁石と結合された第2永久磁石が配され、前記第2永久磁石のN極及びS極は、前記第1永久磁石と同じあること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、界磁回転子のスポークの間の開孔部に隣接する第1永久磁石と結合された第2永久磁石が配され、第2永久磁石のN極及びS極は、第1永久磁石と同じある。
第2永久磁石から流れ出る磁束は、介在するスポークを流れる。次に、磁極部の頂部を介して磁極部の中央部を流れる。磁極部の中央部は、対向する第1永久磁石からの磁束が少ない領域である。よって、磁極部から電機子への磁束密度を高める効果がある。
本開示の磁極部は、高い磁束密度を実現し高いトルクを発生する。磁極部や第1永久磁石、などには大きな磁気的な力が作用するため、周方向の変位や振動が大きくなる。よって、第1永久磁石と第2永久磁石が結合され、また回転鉄心とも接着剤や嵌合などにより結合され機械的に一体化して結合させて強固にされている。
【0018】
上記の態様においては、前記界磁回転子の前記スポーク、前記ハブ、前記第2永久磁石、及び前記第1永久磁石が、一つに結合された第3永久磁石であること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、界磁回転子のスポーク、ハブ、第2永久磁石、及び第1永久磁石が、一つに結合された第3永久磁石である。
よって、永久磁石のパーツ数が一個と少なくできる。特に、プラスチック磁石を用いると射出成形が可能となる。低コスト化と共に、プラスチック磁石は、鉄心や焼結金属磁石に比べて軽いので、一つへの結合により永久磁石の量が増えたとしても回転鉄心の量が減る分は、回転電機全体として軽量化ができる。
【0020】
上記の態様においては、前記第1永久磁石、前記第2永久磁石、又は前記第3永久磁石は、並行着磁されていること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、第1永久磁石、第2永久磁石、又は第3永久磁石は、並行着磁されている。
特にプラスチック磁石への並行着磁は、全体的に均質に着磁できる。よって、プラスチック磁石の量に対して、プラスチック磁石の磁界エネルギーが大きく確保でき発生トルクが大きくなる。また、プラスチック磁石単体での着磁を、界磁回転子の組み立て前にできるので、プラスチック磁石の個々の出来栄え(品質など)が良い、又検査が容易であり、総合して低コストになる。
【0022】
上記の態様においては、前記界磁回転子の前記磁極部は、すくなくともアモルファスを母相とする金属であること、が好ましい。
【0023】
この態様によれば、界磁回転子の磁極部は、すくなくともアモルファスを母相とする金属である。
一般に、磁極部はその回転中にその向かい合う電機子鉄心の歯ティースの部分とスロット入口空間のところとが交互に通過するので磁極部での磁束やりとりは変動する。本開示の磁極部は、非常に磁束密度が高まる構成としており、磁極部での鉄損が大きくなる傾向がある。よって、アモルファスを母相とする金属は超低鉄損なので鉄損を小さくすることができる。
尚、磁極部での鉄損は、対向する電機子の鉄心のティースとスロット入口空間による凸凹が交互に通過することに起因する磁極部での磁束やりとりの変動が大きいことにより、大きくなる傾向がある。
【0024】
上記の態様においては、前記界磁回転子の前記磁極部の外周に磁極部外縁と、前記界磁回転子の前記第1永久磁石の外周にブリッジとを有し、隣接する前記磁極部外縁と前記ブリッジの端部が全て結合していること、が好ましい。
【0025】
この態様によれば、界磁回転子の磁極部の外周に磁極部外縁と、界磁回転子の第1永久磁石の外周にブリッジとを有し、隣接する磁極部外縁とブリッジの端部が全て結合している。
よって、第1永久磁石の外周にブリッジと隣接する磁極部外縁との端部が全て結合してリング形状となっている。このリングが磁極部と第1永久磁石などの永久磁石をハブに機械的に一体化して結合させて強固にしている。本開示の磁極部は、高い磁束密度を実現し高いトルクを発生する。磁極部や第1永久磁石などには大きな磁気的な力が作用するため、周方向の変位や振動が大きくなる。よって、一体化したリングの効果は大きい。
【0026】
上記の態様においては、前記電機子と対向する前記ブリッジの面にへこみを有すること、が好ましい。
【0027】
この態様によれば、電機子と対向するブリッジの面にへこみを有する。
電機子と対向するブリッジの面にへこみを有すると空隙長は広くなる。よって、磁極部外縁との空隙長が相対的に狭くなる。磁極部外縁は、磁極部の極弧部に接しているので、磁極部での磁束の集中を高めることができる。
【0028】
上記の態様においては、前記ブリッジは、非磁性部材であること、が好ましい。
【0029】
この態様によれば、ブリッジは、非磁性部材である。隣接する磁極部の極性はN極、S極と異極が交互に並ぶ。ここで、隣接する磁極部を結ぶブリッジが磁性材の場合、ブリッジを介して隣あう異極間に磁束の漏れ、即ちショートカットが生じる。ショートカットが生じると、電機子の固定鉄心への供給される磁束量が減る。ブリッジが非磁性材にすると、ョートカットが抑制される。
【発明の効果】
【0030】
本開示により、磁極部の磁束の集中効果を高め、大きな磁束密度とし、高いトルクを発生する回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態の回転電機の構成の概略図である。
図2】(a)第1実施形態の回転電機の回転鉄心の概略図である。(b)第1実施形態の回転電機の第1永久磁石及び第2永久磁石の概略図である。
図3】略二等辺三角形の磁極部の概略図である。
図4】電機子と界磁回転子の間の磁束の流れの解析を示す概略図である。
図5】第1実施形態の回転電機の電機子と界磁回転子の磁束密度の解析を示す概略図である。(a)解析対象部、(b)磁束密度の解析結果。
図6】第1実施形態の回転電機の発生トルクの解析を示す概略図である。
図7】極弧ピッチλによる発生するトルクを示す図である。
図8図7における点Iの磁束密度の解析結果である。
図9図7における点IVの磁束密度の解析結果である。
図10図7における点Vの磁束密度の解析結果である。
図11図7における点VIIの磁束密度の解析結果である。
図12図7における点VIIIの磁束密度の解析結果である。
図13】第2実施形態の回転電機の構成の概略図である。
図14】第2実施形態の回転電機のブリッジの構成の概略図である。
図15】第4実施形態の回転電機の構成の概略図である。
図16】(a)第4実施形態の回転電機の回転鉄心の概略図である。(b)第4実施形態の回転電機の第3永久磁石の概略図である。
図17】(a)第4実施形態の第3永久磁石の平行着磁を示す概略図である。(b)極異方性着磁を示す。
図18】従来回転機械(磁極部が永久磁石のハルバッハ配列)の磁束密度の解析を示す概略図である。
図19】従来回転機械(磁極部が永久磁石のハルバッハ配列)の発生トルクの解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施形態である回転電機1について図を用いて示す。なお、実施形態は単なる開示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0033】
<回転電機の用途と構成>
本開示の回転電機1は、特殊な形状の磁極部30により磁束60を集中させ磁束密度を高めることにより、高出力とし、小型化も可能である。よって、軽量高出力の強く望まれる自動車、ドローン、及び電動航空機等に適用価値が高い。
【0034】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態である回転電機1の構成について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の回転電機1の構成の概略図である。まず、回転電機1の基本構成を説明する。回転電機1は、複数のスロット14に多相の巻線16を巻装させた固定鉄心12を有する電機子10と、所定寸法の空隙長7を持って外周が離間し、且つ内周が回転軸3に固定された環状の界磁回転子20とを有する。界磁回転子20は、回転鉄心22と第1永久磁石40を有する。回転鉄心22は、内側にハブ27、外側に磁極部30を有する。よって、ハブ27の内周が回転軸3に固定される。第1永久磁石40は、周方向R2にN極及びS極を有する。磁極部30の間に、第1永久磁石40が、N極及びS極を交互に配される。
【0035】
次に、第1実施形態の回転電機1を説明する。第1実施形態は、基本構成に加えて、回転鉄心22にハブ27と磁極部30の頂部35をつなぐスポーク26を有する。隣接するスポーク26の間には、第2永久磁石42を有する。第2永久磁石42は、周方向R2にN極及びS極を有する。スポーク26の間に、第2永久磁石42が、N極及びS極を、径方向R1に隣接する第1永久磁石のN極及びS極と同一方向になるように交互に配される。第1永久磁石40と第2永久磁石42とは、一体に結合されても良い。
【0036】
第1実施形態の回転電機1の回転鉄心22の矢視図を、図2(a)に示す。回転鉄心22は、内側にハブ27、その外側に径方向R1に複数のスポーク26を接合している。スポーク26の外側の端部には、略二等辺三角形の頂部35が接続された磁極部30が配される。磁極部30の底辺33に相当する極弧部32がある。隣接する極弧部32の両端部はブリッジ50により連結されている。一体である磁極部30とスポーク26の間には、開孔部24がある。開孔部24には、第1永久磁石40及び第2永久磁石42が挿入される。回転鉄心22と第1永久磁石40及び第2永久磁石42とは、嵌合や接着剤により一体に作られる。
【0037】
図2(b)に、第1永久磁石40及び第2永久磁石42の配列を示す。第1永久磁石40及び第2永久磁石42は、周方向R2にN極及びS極を有し、N極及びS極を交互に配されている(以下、「ハルバッハ配列」という)。
【0038】
<永久磁石>
第1永久磁石40、第2永久磁石42、及び第3永久磁石44(第4実施形態)は、焼結金属磁石又はプラスチック磁石を用いる。
焼結金属磁石としては、例えば、信越化学(株)のN36Zが使われる。これは、焼結ネオジム磁石であり、残留磁束密度1.1[T]、保磁力875[kA/m]である。焼結金属磁石の渦電流を左右する電気抵抗率(抵抗比)は、1.4[μΩ・m]である。プラスチック磁石に比べ高コストである。
プラスチック磁石としては、例えば、NEOMAX-P6 (NEOMAX(株)が使われる。プラマグボンド磁石であり、残留磁束密度0.5[T]、保磁力630[kA/m]である。渦電流を左右する電気抵抗率(抵抗比)は、50[μΩ・m]である。
プラスチック磁石は、プラスチック材料を基材として、磁性体材料(例えば、希土類系磁石材料など)を混合している。プラスチック材料にはラバー材料も含まれる。
上記以外の材料であっても、特徴の類似する材料を用いることができるのはいうまでもない。
【0039】
<積層鉄心>
積層鉄心として、固定鉄心12及び回転鉄心22には、磁性体である鉄を基材とした材料が用いられる。
固定鉄心12には、例えば、49%コバルト鋼板であるVACOFLUX50 (VAC社、独)が使われる。主な仕様は、板厚が0.2 mm、磁気飽和密度が2.35[T]、引張強度が720[MPa]である。
回転鉄心22には、アモルファスを母相とする金属、例えば、アモルファス鋼板である2605HB1M (日立金属(株))が使われる。主な仕様は、鉄損が0.17W/kg (1.3[T]、[50Hz))、引張強度が2100MPa、磁気飽和密度が1.5[T]である。また例えば、回転鉄心22には、アモルファス金属の一種であるが、その母相中に鉄のナノ結晶を高密度に分散したナノ結晶合金のNANOMET(R)((株)東北マグネットインスティテュート)が使われる。鉄損が約0.3W/kg (1.5[T]、[50Hz])、磁気飽和密度が1.8[T]である。また、例えば、回転鉄心22には、普通珪素鋼板である 35H300 (日本製鐵(株))が使われる。主な仕様は、鉄損が3W/kg 引張強度が509MPa、磁気飽和密度が2[T]である。また回転子鉄心22には、高張力珪素鋼板である 35HXT780T (日本製鐵(株))が使われる。主な特長となる仕様は、引張強度が822MPaと強く、前記の磁極群や磁石群を支えるのに好適な耐久性をもたせた設計ができる。
上記以外の材料であっても、特徴の類似する材料が用いることができるのはいうまでもない。
【0040】
<磁極部の構成>
図3(a)に、磁極部30の略二等辺三角形の概略図を示す。図3(b)に示すように、底辺33は、界磁回転子20の周方向R2の極弧部32の両端をつなぐ直線である。頂部35は、底辺33と並行である。斜辺36は、径方向R1を線対称として、底辺33の端部と頂部35の端部をつなぐ直線である。磁極部30の形状は、斜辺36の長さに対する底辺33の長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)が、0.56以下の略二等辺三角形である。ここでの電機子鉄心の径300の実施例では、磁極部30は、底辺33が20.8mm、斜辺34が44.8mm、の略二等辺三角形となっている(底辺33/斜辺34=0.46)である。頂部35の長さは、3.1mmである。よって、ハブ27につながるスポーク26の幅は3.1mmとしている。スポーク26の幅は、底辺33の長さの15%程度である。
【0041】
基本構成の場合、頂部35はハブ27につながる。また、第1実施形態の場合、頂部35はスポーク26につながる。磁極部30の2つの斜辺36に隣接する第1永久磁石40は、同極性(N極又はS極)となる。同様に、スポーク26に隣接する第2永久磁石42は、同極性(N極又はS極)となる。また、磁極部30、スポーク26、及びハブ27は、回転鉄心22と同じ材料からなる。尚、第1永久磁石40と第2永久磁石42の境界は、隣接する磁極部30の頂部35を通る直線又はこの直線に近い円弧ある。
【0042】
<解析手段>
本開示に用いた解析条件は以下である。過渡磁場解析に用いたFinite Element Analysis解析(以下、FEA解析と記す)は、ムラタソフトウェア(株)製のFemtetである。回転機械1の解析モデルは、電機子10の固定鉄心12の径は、300mm、内側に空隙長さ1mmを持って界磁回転子20を設置している。界磁回転子20の極数は16極である。電機子20は、固定鉄心12のスロット14の巻線14が三相巻線である。スロット数は96スロットであり、三相巻線は1相1極あたり2つのスロットを有する分布巻線である。巻線14は平角導体であり複数本がスロット14に巻装されている。電機子20の固定鉄心12は49%コバルト鋼板VACOFLUX50である。界磁回転子20の回転鉄心はアモルファス鋼板2605HB1Mである。回転数は3000rpmである。
第1実施形態(図4図12図17)の第1永久磁石40及び第2永久磁石42は、プラスチック磁石のプラマグボンド磁石、他の実施例(図18)の永久磁石は、焼結ネオジム磁石を用いた。
【0043】
<磁束の流れ>
図4は、第1実施形態の電機子10と界磁回転子20との磁束60の流れの解析を示す概略図である。界磁回転子20の回転方向は、周方向R2である。界磁回転子のスポークの間の開孔部に隣接する第1永久磁石と結合された第2永久磁石が配され、第2永久磁石のN極及びS極は、第1永久磁石40と同じある。磁極部30は、ハルバッハ配列された第1永久磁石40により、第1永久磁石40のN極に挟まれN極に磁化された磁極部30と、第1永久磁石のS極に挟まれS極に磁化された磁極部30と、が周方向R2に交互に配列されている。
電機子10からの磁束60は、界磁回転子20のS極に磁化された磁極部30に流れ、第1永久磁石40を流れ、N極に磁化された磁極部30を流れ、電機子10に戻る。
図4より、第1永久磁石40を流れる磁束60は、高い残留磁束密度ほどよく流れ磁束密度は大きくなり、低い残留磁束密度では流れにくくなり磁束密度は小さくなる。しかし、第1永久磁石40及び第2永久磁石42を流れる磁束60は、粗密なく均等にとなり集中することはない。一方、磁極部30の極弧部32と電機子10の間では磁束60が集中している。即ち、磁束密度が高くなっている。
【0044】
磁極部30は、斜辺34の長さに対する底辺33の長さの比(底辺33の長さ/斜辺34の長さ)が、0.56以下の略二等辺三角形である。略二等辺三角形の斜辺の長さをLとすると、磁極部において磁束は、長さ(L)の斜辺34から流入し、半分以下の長さ(0.56×L/2)の底辺33から流出する。よって、磁極部30は、磁束密度を、(斜辺の長さ)/(底辺の半分の長さ)以上、即ち、3.6(2/0.56)倍以上に大きくすることができる。
磁極部30の材料として一般に使われる鉄の飽和磁束密度は2[T]で、実際には90%程度の1.8[T]である。一方、低価格ではあるが磁力の弱い磁石として知られているプラスチック磁石の磁束密度は0.5[T]程度である。よって、本態様の磁極部30は、永久磁石として前記のような磁力の弱いプラスチック磁石を用いたときであっても、0.5×3.6=1.8[T]の、鉄並みの理想とすべき強い磁束密度を得ることができる。よって、解析により、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを12.5%以上大きくすることができ、目標とするトルク225Nmを達成することができる。
【0045】
第2永久磁石42も第1永久磁石40と同様のハルバッハ配列である。よって、電機子10からの磁束60は、界磁回転子20のS極に着磁された磁極部30に流れ、更に磁極部30の頂部35からS極に着磁されたスポーク26を流れ、第2永久磁石42の内部を粗密なく均等に流れ、N極に着磁されたスポーク26を流れ、N極に着磁された磁極部30に流れ、電機子10に戻る。特に、この磁束60は、磁極部30の内部では中央部を流れる。磁極部30の中央部は、第1永久磁石40を流れる磁束60が少ない領域である。よって、第2永久磁石42とスポーク26は、更に磁束密度を高める効果がある。ここでの電機子10の固定鉄心12が径300の実施例では、磁極部30は、底辺33が20.8mm、斜辺34が44.8mm、の略二等辺三角形となっている(斜辺34/底辺33=2.15)である。頂部35の長さは、3.1mmである。よって、ハブ27につながるスポーク26の幅は3.1mmとしている。スポーク26の幅は、底辺33の長さの15%程度である。
【0046】
<磁束密度>
図5は、第1実施形態の回転電機1の電機子10と界磁回転子20の磁束密度の解析を示す概略図である。図5(a)は、解析の対象部を示す。図5(b)は、図5(a)のAで示す領域の磁束密度の解析結果を示す。磁束密度は、電機子10のティース11と界磁回転子20の磁極部30の間で高くなっている。発生トルクに寄与するのは、回転方向R2の第1永久磁石40の電機子10の境界の磁束密度の大きさである。この空隙間の最大の磁束密度は、1.9[T]である。
この解析において、第1永久磁石40及び第2永久磁石は、プラスチック磁石を用いている。プラスチック磁石の磁束密度には、一般的な0.5[T]を用いた。磁極部30の磁束60の集中効果により、一般に使われる鉄の飽和磁束密度の2[T]に近い理想とすべき磁束密度を得ることができる。
図6は、第1実施形態の回転電機1の発生したトルクを示す。トルクは、235Nm(平均)である。発生したトルクの内、一般に鉄が磁気により吸着される力により生まれるトルクのことであるリラクタンストルクは、80Nmである。これは、磁極部30が鉄材料だからである。
【0047】
<従来の例>
図18及び図19は、従来の回転機械101の磁束密度及び発生トルクの解析を示す概略図である。これは、一般的なハルバッハ配列である回転軸方向Zを中心とした円環形状の永久磁石を径方向R1で分割したものである。よって、本開示の磁極部30の代わりに永久磁石を使用している。
図18(a)は、解析の対象部を示す。図18(b)は、図18(a)のBで示す領域の磁束密度の解析結果を示す。磁束密度は、電機子110のティース111と界磁回転子120の磁極部130の間で高くなっていない。空隙間の最大の磁束密度は、1.6[T]である。
図19は、発生したトルクを示す。トルクは、227Nmである。発生したトルクの内、一般に鉄が磁気により吸着される力により生まれるトルクのことであるリラクタンストルクは、0Nmである。これは、磁極部130が鉄材料でないからである。
【0048】
<極弧ピッチ>
回転電機1のトルク発生の作用をする磁極部30の力の作用を分析する。ある磁極部30から次の磁極部30までの半周期(電気角180°)において、周方向R2での半周期の作用配分は、先端側1/6~3/6に吸着トルクの作用域、続いて3/6~5/6は中立域、後端側5/6~6/6が押返トルク力(又は逆トルク)の作用域となる。回転電機1は、前進回転方向に界磁回転子20が電機子10に順次通電されて引っ張られる動特性であることにより作用域が重なるが、6等分と見なして大過ない。よって、回転電機1の作用配分から電気角180°の範囲を6等分した電気角30°を基準の単位とする。界磁回転子20の回転軸方向Zから見た、磁極部30の極弧部32の幅の電気角(A°)の、電気角30°(B°)に対する比である極弧ピッチλ(=A/B)に対する発生するトルクを検討した。これは、極弧ピッチλにより、磁極部30の磁束60の集中による磁束密度(即ち発生するトルク)が変動するからである。
【0049】
図5において、解析点は8点(I~VIII)ある。点Iは、極弧ピッチλ=1.7でトルクは213Nmである。点IIは、極弧ピッチλ=2.1でトルクは222Nmである。点IIIは、極弧ピッチλ=2.6でトルクは231Nmである。点IVは、極弧ピッチλ=3.0でトルクは235Nmである。点Vは、極弧ピッチλ=3.4でトルクは229Nmである。点VIは、極弧ピッチλ=4.0でトルクは227Nmである。点VIIは、極弧ピッチλ=4.4でトルクは224Nmである。点VIIIは、極弧ピッチλ=5.0でトルクは2216Nmである。
そのうち5つの点(点I、点IV、点V、点VII、及び点VIII)の磁束密度の解析結果を、それぞれ図8に点I、図9に点IV、図10に点V、図11に点VII、及び図12に点VIIIを示す。それぞれ図(a)に解析部位、図(b)に磁束密度(色)及び磁束(線)を示す。
磁極部30の略二等辺三角形の形状は、極弧ピッチλが大きくなると、斜辺の長さはほとんど変わらないが、頂角は大きくなり底辺33の長さは大きくなる。よって、極弧ピッチλが大きいほど、斜辺34の長さに対する底辺33の長さの比(底辺の長さ/斜辺の長さ)は大きくなる。
尚、磁極部30の略二等辺三角形の大きさは、点III(極弧ピッチλ=2.6)において、底辺18.4mm、斜辺43mmである(底辺33/斜辺34=0.42)。点V(極弧ピッチλ=3.4)において、底辺23.2mm、斜辺45mmである(底辺33/斜辺34=0.51)。
発生トルクに寄与するのは、第1永久磁石40が接する磁極部30の回転前方の磁極部外縁38と電機子10との間にある境界付近の磁束60が行き来する空隙領域の磁束密度の大きさである。
極弧ピッチλが大きいほど磁路の断面積が広がり、電機子10と磁極部30の間の境界の磁気抵抗が低下し、磁束60が増加することによりトルクが増加する。しかし、極弧ピッチλを大きくし過ぎると周方向に隣り合う磁極部30同士の間隔は狭くなるから、その間に配される第1永久磁石40の厚さは薄くなる。よって第1永久磁石40の起磁力が低下し、磁束60が減少してトルクが低下する。
一方、極弧ピッチλが小さい、即ち極弧幅が狭い場合は、第1永久磁石40の厚さが厚くでき起磁力が増加し、磁束60が増加してトルクが増加する。しかし、極弧ピッチλを小さくし過ぎると磁極部30の幅が狭くなり、磁極部30で磁気飽和が発生して磁気抵抗が増加し、磁束60が減少してトルクが低下する。
以上より、発生するトルクは、極弧ピッチλにより凸部を有する傾向がある。
【0050】
図5は、極弧ピッチλによる発生するトルクを示す。
点α1(極弧ピッチλ=2.2)及び点β1(極弧ピッチ=4.3)では、発生するトルクは225Nmであり、極弧ピッチλ=2.2~4.3の範囲では225Nm以上となる。よって、発生トルクを12.5%以上大きくすることができる。
開示である極弧ピッチλ=2.2~4.3の範囲では、下限λ=2.2及び上限λ=4.3にて、トルクは最小値の225Nmとなり、トルクの最大値は235Nmを持つ凸傾向にある。
よって、解析により、例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを12.5%程度大きくすることができ、目標とするトルク225Nmを達成することができる。
一方、点α2(極弧ピッチλ=2.5)及び点β2(極弧ピッチ=3.3)では、発生するトルクは229Nmであり、極弧ピッチλ=2.5~3.3の範囲では229Nm以上となる。よって、発生トルクを14.5%以上大きくすることができる。
開示である極弧ピッチλ=2.5~3.3の範囲では、下限λ=2.5及び上限λ=3.3にて、トルクは最小値の229Nmとなり、トルクの最大値は235Nmを持つ凸傾向にある。例えば、自動車等で用いられる外径300mmの小型の回転電機では、発生するトルクを15%程度大きくすることができ、目標より大きいトルク230Nmを達成することができる。
【0051】
以上より、第1実施形態は、電機子10と界磁回転子20の間に流れる磁束60を、第1永久磁石40及び第2永久磁石42の間に設置される磁極部30及びスポーク26により集中させ大きな磁束密度として大きなトルクを発生させる回転電機1を提供することができる。
更に、第3実施形態は、電機子10と界磁回転子20の間に流れる磁束60を、第1永久磁石40の間に設置される磁極部30により集中させ大きな磁束密度として大きなトルクを発生させる回転電機1を提供することができる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態の回転電機1を、図13及び図14を用いて説明する。図13に示すように第2実施形態の回転電機1は、第1実施形態の回転電機1に対して、第2永久磁石42を削除し開孔部24としている。よって、回転電機1の回転によりスポーク26の間の開口部24に流れる空気により、磁極部30及び第1永久磁石4に発生する熱を、効率良く放熱することができる。よって、第1永久磁石4の温度上昇を抑制して性能を高く維持できる効果がある。永久磁石は温度上昇により不可逆的に減磁するので、温度上昇の抑制は重要である。
【0053】
本開示の回転電機1の磁極部30は、高い磁束密度を実現し高いトルクを発生する。磁極部30や第1永久磁石4などには大きな磁気的な力が作用するため、周方向R2の変位や振動が大きくなるまた、径方向R1には遠心力が作用する。スポーク26により磁極部30及び第1永久磁石40をハブ27に堅固に支持できる。
【0054】
図14は、ブリッジ50、磁極部外縁38の構成の概略図である。この態様によれば、界磁回転子20の磁極部30の外周に磁極部外縁38と、界磁回転子20の第1永久磁石40の外周にブリッジと50を有し、隣接する磁極部外縁38とブリッジ50の端部が全て結合している。よって、第1永久磁石40と磁極部30との外周に、磁極部外縁38とブリッジ50と結合したリングを有する。このリングが磁極部30と第1永久磁石40などの永久磁石をハブに機械的に一体化して結合させて強固にしている。本開示の界磁回転子20の磁極部30は、高い磁束密度を実現し高いトルクを発生する。よって、磁極部30や第1永久磁石40などには大きな磁気的な力が作用するため、周方向R2の変位や振動が大きくなり、径方向R1の遠心力も作用する。よって、一体化したリングの効果は大きい。
【0055】
電機子と対向するブリッジ50の面つけた、へこみ52を図14に示す。界磁回転子20と電機子10との空隙長に狭いところと広いところがあると磁束60は狭いところに集中する。電機子と対向するブリッジ50の面に、へこみ52を有すると空隙長は広くなる。よって、磁極部外縁38との空隙長が相対的に狭くなる。磁極部外縁38は、磁極部30の極弧部32に接しているので、磁極部30での磁束60の集中を高めることができる。
【0056】
ブリッジ50は、非磁性部材が良い。隣接する磁極部30の極性はN極、S極と異極が交互に並ぶ。ここで、隣接する磁極部30を結ぶブリッジ50が磁性材の場合、ブリッジ50を介して隣あう異極間に磁束60の漏れ、即ちショートカットが生じる。ショートカットが生じると、電機子10の固定鉄心12への供給される磁束60の量が減る。ブリッジ50を非磁性材にすると、ショートカットが抑制される。
【0057】
以上より、第2実施形態は、隣接するスポーク26の間を開孔部24として、第1永久磁石40で発生する熱を効率的に冷却することができる回転電機1を提供することができる。
更に、第2実施形態は、電機子10と界磁回転子20の間に流れる磁束60を、第1永久磁石40の間に設置される磁極部30により集中させ大きな磁束密度として大きなトルクを発生させる回転電機1を提供することができる。
【0058】
(第3実施形態)
第3実施形態の回転電機1は、第2実施形態のスポーク26、開孔部24をハブ27と一体化した構成である。一体化されたハブ27は、径方向R1を一体化前の長さに小さくすることが可能である。よって、回転電機1を小型化できる。
更に、第3実施形態は、電機子10と界磁回転子20の間に流れる磁束60を、第1永久磁石40の間に設置される磁極部30により集中させ大きな磁束密度として大きなトルクを発生させる回転電機1を提供することができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態の回転電機1の概略図を図15から図17に示す。図15に示す第4実施形態の回転電機1は、図16(b)に示すように界磁回転子20のスポーク26、ハブ27、第2永久磁石42、及び第1永久磁石40が一つに結合された第3永久磁石44を有する。第3永久磁石44を用いると永久磁石のパーツ数が一個と少なくでき組付け工数の低減ができる。特に、射出成形が可能となるプラスチック磁石を用いると低コスト化できる。また、プラスチック磁石は、焼結金属磁石に比べて軽いので 回転鉄心22との量が減り、回転電機1全体として軽量化ができる。
【0060】
第1永久磁石40、第2永久磁石4、又は第3永久磁石44は着磁されている。着磁の形態としては、並行着磁と極異方性着磁がある。図17(a)に第3永久磁石44での並行着磁を示す。図17(b)に第3永久磁石44での極異方性着磁を示す。異方性着磁は製造方法が困難である。よって、第1実施形態の解析では平行着磁で行った。
【0061】
また、プラスチック磁石への並行着磁は、全体的に均質に着磁できる。よって、プラスチック磁石の量に対して、プラスチック磁石の磁界エネルギーが大きく確保でき発生トルクが大きくなる。また、プラスチック磁石単体での着磁を、界磁回転子20の組み立て前にできるので、プラスチック磁石の個々の出来栄え(品質など)が良い、又検査が容易であり、総合して低コストになる。
【0062】
以上、第4実施形態の回転電機1は、界磁回転子20のスポーク26、ハブ27、第2永久磁石42、及び第1永久磁石40が一つに結合された第3永久磁石44を有する。よって、組付け工数が低減できる。また、プラスチック磁石を用いることで低コスト化、軽量化ができる。
【符号の説明】
【0063】
符号
1 回転電機 3 回転軸
5 ハブ(回転軸側) 7 空隙(電機子と界磁回転子の間)
10 電機子 11 ティース
12 固定鉄心 14 スロット
16 巻線
20 界磁回転子 22 回転鉄心
24 開孔部 26 スポーク
27 ハブ (回転鉄心)
30 磁極部 32 極弧部
33 底辺 34 斜辺
35 頂部 38 磁極部外縁
40 第1永久磁石 42 第2永久磁石
44 第3永久磁石
50 ブリッジ 52 へこみ
60 磁束
Z 回転軸方向
R1 径方向 R2 周方向(回転方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19