(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ひずみゲージ用抵抗体、ひずみゲージ及び金属膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
G01B7/16 R
(21)【出願番号】P 2020182680
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500356038
【氏名又は名称】FCM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正
(72)【発明者】
【氏名】村田 優喜
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0037454(US,A1)
【文献】特開2000-311804(JP,A)
【文献】特開2010-176863(JP,A)
【文献】特開平01-224602(JP,A)
【文献】特開2016-011937(JP,A)
【文献】特開昭63-309389(JP,A)
【文献】特開2010-243192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01L 1/00-1/26
5/00-5/28
7/00-23/32
27/00-27/02
25/00
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
C22C 5/00-25/00
27/00-28/00
30/00-30/06
35/00-45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行形状を有する線状の金属膜を有
し、
前記金属膜は、ニッケル-リン合金を含有し、
前記ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下である、ひずみゲージ用抵抗体。
【請求項2】
ニッケル-リン合金を含有し、
前記ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下であり、
前記ニッケル-リン合金は、アモルファス構造を有する、ひずみゲージ用抵抗体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のひずみゲージ用抵抗体を用いたひずみゲージであって、
可撓性を有する絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に直接又は間接的に積層される前記ひずみゲージ用抵抗体とを備える、ひずみゲージ。
【請求項4】
前記絶縁性基板及び前記ひずみゲージ用抵抗体の間に配設される粘着剤層を更に備える、請求項3に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
蛇行形状を有する線状の金属膜の製造方法であって、
導電性基板上に、前記蛇行形状の反転形状を有するレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記導電性基板及び前記レジストパターンを備える積層体の前記レジストパターン間に、
電解メッキ法により
、前記レジストパターンよりも厚い前記金属膜を形成する金属膜形成工程と、
粘着シートを用いて前記金属膜を前記積層体から剥離する剥離工程とを備え、
前記金属膜は、ひずみゲージ用抵抗体である、金属膜の製造方法。
【請求項6】
特定形状を有する金属膜の製造方法であって、
導電性基板上に、前記特定形状の反転形状を有するレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記導電性基板及び前記レジストパターンを備える積層体の前記レジストパターン間に、メッキ法により前記金属膜を形成する金属膜形成工程と、
粘着シートを用いて前記金属膜を前記積層体から剥離する剥離工程とを備え、
前記金属膜は、ニッケル-リン合金を含有するひずみゲージ用抵抗体であり、
前記ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下であり、
前記粘着シートは、可撓性を有する絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に積層される粘着剤層とを備える、金属膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージ用抵抗体、ひずみゲージ及び金属膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体のひずみを検知するための測定器具として、ひずみゲージが用いられている。ひずみゲージを取り付けた測定対象が変形すると、ひずみゲージが備えるひずみゲージ用抵抗体が変形し、ひずみゲージ用抵抗体の電気抵抗(体積抵抗値)が増減する。このひずみゲージ用抵抗体の電気抵抗の増減を測定することにより、測定対象のひずみを検知することができる。
【0003】
ひずみゲージ用抵抗体のような微細な特定形状を有する金属膜は、一般的には、金属箔をエッチングにより加工する製造方法により得られる。上述の製造方法は、エッチングを行うため、比較的高い加工コストが必要となる。また、ひずみゲージ用抵抗体を上述の製造方法で製造する場合、高抵抗の合金(例えば、コンスタンタン等のCu-Ni系合金、及びニクロム等のNi-Cr系合金)を含有する金属箔が必要となる。このような金属箔は、比較的高価である。このように、ひずみゲージ用抵抗体は、比較的製造コストが高い。そのため、ひずみゲージ用抵抗体のような微細な特定形状を有する金属膜を低コストで製造できる方法が求められている。
【0004】
また、ひずみゲージ用抵抗体は、電気抵抗が高いことが好ましい。ひずみゲージ用抵抗体の電気抵抗が高いほど、ひずみゲージの感度が向上するためである。ひずみゲージ用抵抗体の電気抵抗は、ひずみゲージ用抵抗体を構成する材料の体積抵抗率と、ひずみゲージ用抵抗体のサイズ(特に、断面積)とで決定される。以上から、ひずみゲージ用抵抗体には、体積抵抗率が高く、かつ小型化が容易であることが求められている。なお、ひずみゲージ用抵抗体を小型化できると、ひずみゲージを小型化できるという別のメリットも存在する。
【0005】
このような要求に対して、例えば、鉄及びホウ素を含有するひずみゲージ用アモルファス合金が提案されている(特許文献1)。上述のひずみゲージ用アモルファス合金は、ひずみ感度に優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のひずみゲージ用アモルファス合金を用いても、低コストで製造でき、小型化が容易であり、体積抵抗率が高いひずみゲージ用抵抗体を提供することは困難である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで製造でき、小型化が容易であり、体積抵抗率が高いひずみゲージ用抵抗体と、このひずみ用ゲージ用抵抗体を用いるひずみゲージとを提供することである。本発明の別の目的は、微細な特定形状を有する金属膜を低コストで製造できる金属膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のひずみゲージ用抵抗体は、ニッケル-リン合金を含有する。前記ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下である。
【0010】
本発明のひずみゲージは、上述のひずみゲージ用抵抗体を用いたひずみゲージであって、可撓性を有する絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に直接又は間接的に積層される前記ひずみゲージ用抵抗体とを備える。
【0011】
本発明の金属膜の製造方法は、特定形状を有する金属膜の製造方法であって、導電性基板上に、前記特定形状の反転形状を有するレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、前記導電性基板及び前記レジストパターンを備える積層体の前記レジストパターン間に、メッキ法により前記金属膜を形成する金属膜形成工程と、粘着シートを用いて前記金属膜を前記積層体から剥離する剥離工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のひずみゲージ用抵抗体は、低コストで製造でき、小型化が容易であり、体積抵抗率が高い。本発明のひずみゲージは、上述のひずみゲージ用抵抗体を備える。本発明の金属膜の製造方法は、微細な特定形状を有する金属膜を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るひずみゲージ用抵抗体の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るひずみゲージの一例を示す平面図である。
【
図4】
図2のひずみゲージの製造方法の一例の一工程を示す図である。
【
図10】実施例において形成したメッキ膜の断面を示す写真である。
【
図11】実施例のひずみゲージの平面形状を示す写真である。
【
図12】実施例のひずみゲージの断面構造を示す写真である。
【
図13】参考例のひずみゲージの平面形状を示す写真である。
【
図14】参考例のひずみゲージの断面構造を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、説明する。但し、本発明は、実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。本発明の実施形態において説明する各材料は、特に断りのない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
<第1実施形態:ひずみゲージ用抵抗体>
まず、本発明の第1実施形態に係るひずみゲージ用抵抗体を説明する。本発明のひずみゲージ用抵抗体は、ニッケル-リン合金を含有する。ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下である。本発明のひずみゲージ用抵抗体は、低コストで製造でき、小型化が容易であり、体積抵抗率が高い。
【0016】
ひずみゲージ用抵抗体は、例えば、第2実施形態に係るひずみゲージの製造に用いる部材として用いることができる。また、ひずみゲージ用抵抗体は、例えば、測定対象に接着剤又は粘着剤で直接貼付することにより、単独でひずみゲージとして用いることもできる。
【0017】
本発明者は、低コストでひずみゲージ用抵抗体を製造する方法について鋭意検討した。その結果、本発明者は、メッキレジスト法を応用した製造方法であれば、低コストでひずみゲージ用抵抗体を製造できることに想到した。詳しくは、上述の製造方法は、メッキレジスト法により、ニッケル-リン合金を含有するひずみゲージ用抵抗体を基板上に形成する工程と、ひずみゲージ用抵抗体を基板から剥離する工程とを備える。上述の製造方法は、高抵抗の合金を含有する金属箔を用意する必要がなく、ひずみゲージ用抵抗体を製造するために毎回エッチングを行う必要もない。そのため、上述の製造方法は、材料コスト及び加工コストの両方が比較的少ない。また、上述の製造方法は、微細な特定形状を有する金属膜を歩留まりよく製造できる。そのため、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、容易に小型化できる。なお、上述の製造方法の更に具体的な説明は、第3実施形態に係る金属膜の製造方法で説明する。
【0018】
ここで、メッキ法では、一般的に、高抵抗の合金を含有する金属膜を形成することは困難である。そのため、本発明者は、ひずみゲージ用抵抗体の材料として、高抵抗であり、かつメッキ可能な材料であるニッケル-リン合金を採用した。ニッケル-リン合金は、リンの含有割合が一定割合以上(例えば、2.50質量%)であると、高い体積抵抗率を示す。具体的には、リンの含有割合が一定割合以上であるニッケル-リン合金は、ひずみゲージ用抵抗体において最も広く使用されているコンスタンタン(20℃での体積抵抗率:4.9×10-7Ω・m)よりも体積抵抗率が高い。そのため、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、体積抵抗率に優れる。
【0019】
以上の理由から、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、低コストで製造でき、小型化が容易であり、体積抵抗率が高い。
【0020】
ニッケル-リン合金は、通常、アモルファス構造又は結晶構造を有する。アモルファス構造を有するニッケル-リン合金は、結晶構造を有するニッケル-リン合金よりも体積抵抗率が高い傾向がある。そのため、ニッケル-リン合金は、アモルファス構造を有することが好ましい。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明のひずみゲージ用抵抗体の詳細について説明する。
図1は、本発明のひずみゲージ用抵抗体の一例であるひずみゲージ用抵抗体1を示す平面図である。ひずみゲージ用抵抗体1は、線状の金属膜である。ひずみゲージ用抵抗体1は、蛇行形状を有する受感部1aと、両端に存在し、受感部1aよりも線幅の広い一対の端子部1bとを有する。
【0022】
受感部1aは、自身の変形(主に
図1の左右方向の変形)に応じて、電気抵抗が変化する性質を有する。詳しくは、受感部1aが伸長する方向に変形した場合、受感部1aは、長さが増大すると共に断面積が減少し、その結果、電気抵抗が増大する。逆に、受感部1aが左右から圧縮される方向に変形した場合、受感部1aは、長さが減少すると共に断面積が増大し、その結果、電気抵抗が減少する。受感部1aの電気抵抗が増減することにより、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗が増減する。
【0023】
なお、上述の通り、受感部1aは、主に
図1の左右方向の変形に応じて電気抵抗が変化する性質を有する。以下、受感部1aが変形した際に電気抵抗が変化し易い特定方向を「受感軸方向」と記載することがある。受感部1aにおいて、受感軸方向の長さをゲージ長Xと記載することがある。受感部1aにおいて、受感軸方向と直交する方向の長さをゲージ幅Yと記載することがある。ゲージ長Xとしては、例えば、1.0mm以上30.0mm以下である。ゲージ幅Yとしては、例えば、0.5mm以上20.0mm以下である。
【0024】
受感部1aの最小線幅としては、1.0μm以上100.0μm以下が好ましく、20.0μm以上45.0μm以下がより好ましい。受感部1aの最小線幅が小さいほど、ひずみゲージ用抵抗体1を製造する際の歩留まりが低下する。そのため、受感部1aの最小線幅を1.0μm以上とすることで、ひずみゲージ用抵抗体1を製造する際の歩留まりを向上できる。一方、受感部1aの最小線幅が小さいほど、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗が増大する。そのため、受感部1aの最小線幅を100.0μm以下とすることで、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗を増大できる。
【0025】
受感部1aの平均厚さとしては、1.0μm以上100.0μm以下が好ましく、10.0μm以上30.0μm以下がより好ましい。受感部1aの平均厚さが小さいほど、ひずみゲージ用抵抗体1を製造する際の歩留まりが低下する。そのため、受感部1aの平均厚さを1.0μm以上とすることで、ひずみゲージ用抵抗体1を製造する際の歩留まりを向上できる。一方、受感部1aの平均厚さが小さいほど、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗が増大する。そのため、受感部1aの平均厚さを100.0μm以下とすることで、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗を増大できる。
【0026】
端子部1bは、ひずみゲージ用抵抗体1にリード線等を接続するための部位である。端子部1bにリード線等を接続し、ひずみゲージ用抵抗体1を含むブリッジ回路を形成することにより、ひずみゲージ用抵抗体1の電気抵抗の増減を出力できる。
【0027】
上述の通り、ひずみゲージ用抵抗体1は、ニッケル-リン合金を含有する。ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合としては、上述の通り2.50質量%以上15.00質量%以下であり、4.50質量%以上15.00質量%以下が好ましく、8.00質量%以上15.00質量%以下がより好ましく、8.40質量%以上10.00質量%以下が更に好ましい。
【0028】
実施例に示すように、ニッケル-リン合金は、リンの含有割合が高いほど体積抵抗率が増大する傾向がある。ニッケル-リン合金の含有割合を2.50質量%以上とすることにより、ひずみゲージ用抵抗体1に十分な体積抵抗率を付与することができる。
【0029】
また、実施例に示すように、リンの含有割合が低いニッケル-リン合金は、結晶構造を形成し易い傾向がある。一方、リンの含有割合が高いニッケル-リン合金(例えば、リンの含有割合が8.00質量%以上であるニッケル-リン合金)は、アモルファス構造を形成し易い傾向がある。そのため、リンの含有割合を8.00質量%以上とすることで、ニッケル-リン合金を容易にアモルファス化することができる。但し、ニッケル-リン合金は、リンの含有割合以外の要因(例えば、ニッケル及びリン以外の元素の存在、並びにニッケル-リン合金を形成する際の温度等の条件)によっては、リンの含有割合が低くてもアモルファス構造を形成する場合がある。そのため、ニッケル-リン合金は、リンの含有割合が8.00質量%未満であっても、アモルファス構造を有する場合がある。
【0030】
更に、上述の通り、ひずみゲージ用抵抗体1は、後述する第3実施形態に係る金属膜の製造方法により製造できる。第3実施形態に係る金属膜の製造方法は、メッキレジスト法を応用した製造方法である。ニッケル-リン合金を含有するメッキ層を形成する場合、リンの含有割合が高くなるほどメッキ処理に必要な時間が増大する。そのため、ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合を15.00質量%以下とすることで、ひずみゲージ用抵抗体1の生産性を向上できる。
【0031】
ひずみゲージ用抵抗体1は、ニッケル-リン合金以外の成分を更に含有してもよいが、ニッケル-リン合金のみを含有することが好ましい。ひずみゲージ用抵抗体1において、ニッケル-リン合金の含有割合としては、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0032】
[ひずみゲージ用抵抗体の製造方法]
上述の通り、ひずみゲージ用抵抗体1は、第3実施形態に係る金属膜の製造方法により製造できる。但し、ひずみゲージ用抵抗体1の製造方法は、第3実施形態に係る金属膜の製造方法に限定されない。例えば、ひずみゲージ用抵抗体1は、ニッケル-リン合金を含有する金属箔をエッチング等により加工することでも製造できる。
【0033】
以上、
図1を参考に、本発明のひずみゲージ用抵抗体を説明した。但し、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、
図1に示すひずみゲージ用抵抗体1に限定されない。例えば、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、端子部を有さず、受感部のみを有していてもよい。また、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、受感部及び端子部が異なる材料により構成されていてもよい。この場合、少なくとも受感部は、ニッケル-リン合金を含有する。更に、本発明のひずみゲージ用抵抗体は、受感部が蛇行形状以外の形状(例えば、直線状)を有していてもよい。
【0034】
<第2実施形態:ひずみゲージ>
次に、本発明の第2実施形態に係るひずみゲージについて説明する。本発明のひずみゲージは、第1実施形態に係るひずみゲージ用抵抗体を用いたひずみゲージである。本発明のひずみゲージは、可撓性を有する絶縁性基板と、絶縁性基板上に直接又は間接的に積層される上述のひずみゲージ用抵抗体とを備える。
【0035】
本発明のひずみゲージは、第1実施形態に係るひずみゲージ用抵抗体を用いているため、低コストで製造でき、小型化が容易であり、感度に優れる。
【0036】
以下、図面を参照して、本発明のひずみゲージの詳細について説明する。
図2は、本発明のひずみゲージの一例であるひずみゲージ10を示す平面図である。
図3は、
図2のIII-III線における断面図である。ひずみゲージ10は、
図1に示すひずみゲージ用抵抗体1を用いたひずみゲージである。ひずみゲージ10は、可撓性を有する絶縁性基板2と、絶縁性基板2上に間接的に積層されるひずみゲージ用抵抗体1と、絶縁性基板2及びひずみゲージ用抵抗体1の間に配設される粘着剤層3とを備える。なお、ひずみゲージ用抵抗体1の詳細については、第1実施形態において説明済みであるため、重複した説明を省略する。
【0037】
ひずみゲージ10は、例えば、測定対象に接着剤又は粘着剤で貼付することにより用いる。
【0038】
[絶縁性基板]
絶縁性基板2は、例えば、紙製基板又は主成分として樹脂を含有する樹脂製基板を用いることができる。樹脂製基板における樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0039】
絶縁性基板2の平均厚さとしては、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上200μm以下がより好ましい。絶縁性基板2の平均厚さを5μm以上とすることで、絶縁性基板2の絶縁性及び強度を確保し易くなる。絶縁性基板2の平均厚さを500μm以下とすることで、測定対象のひずみをひずみゲージ用抵抗体1に効率的に伝えることができる。
【0040】
[粘着剤層]
粘着剤層3は、粘着剤を含有し、ひずみゲージ用抵抗体1及び絶縁性基板2を接着する。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤が挙げられる。
【0041】
粘着剤層3が含有する粘着剤は、硬化型粘着剤(例えば、紫外線硬化型粘着剤)であることが好ましい。この場合、粘着剤層3の全領域のうち、ひずみゲージ用抵抗体1及び絶縁性基板2の間の領域(以下、第1領域と記載することがある)においては、粘着剤層3に含まれる硬化型粘着剤が未硬化であるとよい。一方、粘着剤層3の全領域のうち、第1領域以外の領域(以下、第2領域と記載することがある)においては、粘着剤層3に含まれる硬化型粘着剤が硬化しているとよい。このような構成とすることにより、粘着剤層3の第1領域においては、粘着剤層3がひずみゲージ用抵抗体1及び絶縁性基板2を十分に接着することができる。一方、粘着剤層3の第2領域においては、粘着剤層3の表面に他の部材又は異物が接着してしまうことを抑制できる。
【0042】
[ひずみゲージの製造方法]
ひずみゲージ10の製造方法としては、例えば、ひずみゲージ用抵抗体1を準備する準備工程と、絶縁性基板2及び粘着剤層3を備える粘着シートにおける粘着剤層3側の面にひずみゲージ用抵抗体1を積層させる積層工程とを備える方法が挙げられる。
【0043】
粘着剤層3が紫外線硬化型粘着剤を含有する場合、上述の製造方法は、積層工程で得られたひずみゲージ10のひずみゲージ用抵抗体1側の面に対して紫外線露光する紫外線露光工程を更に備えるとよい。紫外線露光工程では、ひずみゲージ10に照射された紫外線のうち、第1領域に照射された紫外線は、ひずみゲージ用抵抗体1によって遮蔽される。即ち、紫外線露光工程では、粘着剤層3の第1領域には紫外線が到達せず、粘着剤層3の第2領域のみに紫外線が到達する。以上から、紫外線露光工程により、粘着剤層3の第1領域に含まれる紫外線硬化型粘着剤を硬化させずに、粘着剤層3の第2領域に含まれる紫外線硬化型粘着剤を硬化させることができる。
【0044】
なお、ひずみゲージ10は、後述する第3実施形態に係る金属膜の製造方法によって効率的に製造できる。この場合、第3実施形態に係る金属膜の製造方法において、後述するレジストパターン形成工程及び金属膜形成工程は、上述の準備工程に相当する。また、後述する剥離工程は、上述の積層工程に相当する。
【0045】
以上、
図2及び
図3を参考に、本発明のひずみゲージを説明した。但し、本発明のひずみゲージは、
図2及び
図3に示すひずみゲージ10に限定されない。例えば、
図2及び
図3に示すひずみゲージ10において、粘着剤層3は、絶縁性基板2の全面に積層されている。しかし、本発明のひずみゲージにおいて、粘着剤層は、少なくともひずみゲージ用抵抗体及び絶縁性基板の間に配設されていればよく、絶縁性基板の全面に積層されている必要はない。また、本発明のひずみゲージにおいて、粘着剤層は任意構成である。即ち、本発明のひずみゲージにおいて、ひずみゲージ用抵抗体は、絶縁性基板に直接積層されていてもよい。更に、本発明のひずみゲージは、ひずみゲージ用抵抗体、絶縁性基板及び粘着剤層以外の他の構成を更に備えてもよい。例えば、本発明のひずみゲージは、保護層を更に備えてもよい。保護層は、ひずみゲージ用抵抗体及び絶縁性基板を被覆し、ひずみゲージ用抵抗体を保護する。更に、
図2及び
図3に示すひずみゲージ10の平面形状は矩形状であるが、本発明のひずみゲージの平面形状はこれに限定されない。本発明のひずみゲージの平面形状は、他の形状(例えば、円状、楕円状又は三角形状)であってもよい。
【0046】
<第3実施形態:金属膜の製造方法>
次に、本発明の第3実施形態に係る金属膜の製造方法について説明する。本発明の金属膜の製造方法は、特定形状を有する金属膜の製造方法である。本発明の金属膜の製造方法は、導電性基板上に、上述の特定形状の反転形状を有するレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、導電性基板及びレジストパターンを備える積層体のレジストパターン間に、メッキ法により金属膜を形成する金属膜形成工程と、粘着シートを用いて金属膜を積層体から剥離する剥離工程とを備える。
【0047】
微細な形状を有する金属膜(例えば、最小線幅1.0μm以上100.0μm以下の微細構造を有する金属膜)を製造する方法としては、一般的に、金属箔をエッチングで加工する方法が採用される。しかし、金属箔をエッチングで加工する方法では、金属箔上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程が必要である。レジストパターン形成工程は、比較的高コストの工程である。また、微細な形状を有する金属膜の製造においては、レジストパターンに不良が発生し、歩留まりが低下し易い。以上から、金属箔をエッチングで加工する方法は、微細な形状を有する金属膜を低コストで製造することが困難である。
【0048】
これに対して、本発明の金属膜の製造方法では、まず、レジストパターン形成工程により、導電性基板及びレジストパターンを備える積層体を形成する。次に、金属膜形成工程により、上述の積層体を型として金属膜を形成する。次に、剥離工程により、上述の積層体から金属膜を剥離する。これにより、微細な形状を有する金属膜が得られる。ここで、上述の積層体は、金属膜形成工程及び剥離工程を行った後、金属膜を形成するための型として再度使用できる。つまり、本発明の金属膜の製造方法では、金属膜を形成する度にレジストパターン形成工程を毎回行う必要がない。このため、本発明の金属膜の製造方法では、金属箔をエッチングで加工する方法と比較し、高コストの工程であるレジストパターン形成工程の回数を減らすことができる。また、上述の通り、微細な形状を有する金属膜の製造においては、レジストパターンの不良が歩留まりに影響し易い。これに対して、本発明の金属膜の製造方法では、レジストパターンに不良のない積層体を選別してから金属膜形成工程及び剥離工程に使用することにより、レジストパターンの不良が歩留まりに影響することを抑制できる。以上から、本発明の金属膜の製造方法は、微細な形状を有する金属膜を低コストで製造できる。
【0049】
本発明の金属膜の製造方法では、粘着シート及び金属膜を備える積層体が得られる。粘着シート及び金属膜を備える積層体は、粘着シートから金属膜を剥離し、金属膜のみを製品として使用することもできる。このような製品としては、例えば、第1実施形態に係るひずみゲージ用抵抗体が挙げられる。また、上述の粘着シート及び金属膜を備える積層体は、そのまま製品として使用することもできる。このような製品としては、例えば、第2実施形態に係るひずみゲージが挙げられる。
【0050】
本発明の金属膜の製造方法において、製造する金属膜の形状は、特に限定されない。また、本発明の金属膜の製造方法において、製造する金属膜の材質は、メッキ法により形成可能な材質であれば、特に限定されない。金属膜の材質の具体例としては、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、スズ、鉄及びこれらの金属を含む合金が挙げられる。本発明の金属膜の製造方法において、金属膜は、ニッケル-リン合金を含有するひずみゲージ用抵抗体であること好ましい。ニッケル-リン合金におけるリンの含有割合は、2.50質量%以上15.00質量%以下が好ましい。この場合、粘着シートは、可撓性を有する絶縁性基板と、絶縁性基板上に積層される粘着剤層とを備えることが好ましい。このような構成とすることにより、本発明の金属膜の製造方法は、第2実施形態に係るひずみゲージを製造できる。
【0051】
以下、図面を参照して、本発明の金属膜の製造方法の詳細について説明する。
図4~
図9は、
図2~
図3のひずみゲージ10の製造方法の一例の各工程を示す図である。なお、ひずみゲージ用抵抗体1及びひずみゲージ10の詳細については、第1実施形態及び第2実施形態において説明済みであるため、重複した説明を省略する。
【0052】
[レジストパターン形成工程]
図4~
図6は、レジストパターン形成工程を示す。本工程では、導電性基板11上に、ひずみゲージ用抵抗体1の有する特定形状の反転形状を有するレジストパターンを形成する。
図4~
図6に示すレジストパターン形成工程は、レジスト膜形成工程と、露光工程と、現像工程とを備える。
【0053】
(導電性基板)
導電性基板11の材料としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの金属を含む合金(例えば、ステンレス)が挙げられる。導電性基板11の材料としては、ステンレス又はチタンが好ましい。
【0054】
(レジスト膜形成工程)
レジスト膜形成工程では、導電性基板11上にレジスト材料を塗布する。これにより、
図4に示すように、導電性基板11上にレジスト膜12が形成される。レジスト材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂又はノボラック樹脂を含有するレジスト材料が挙げられる。
図4~
図6において、レジスト材料のタイプは、ポジ型である。但し、本発明の金属膜の製造方法において、レジスト材料のタイプは、ネガ型及びポジ型の何れであってもよい。
【0055】
レジスト材料を導電性基板11上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、及びディップ法が挙げられる。形成したレジスト膜12には、必要に応じて、乾燥処理及びプレベーク処理を行ってもよい。
【0056】
(露光工程)
露光工程では、
図4に示すレジスト膜12に対して、選択的に光Lを照射する。レジスト膜12において、光Lによって露光された領域では、現像液に対する溶解性が変化する。その結果、
図5に示すように、レジスト膜12は、光Lによって露光された領域である露光部12aと、光Lによって露光されていない領域である非露光部12bとに分かれる。露光部12aは、後述する現像液に対して可溶である。非露光部12bは、後述する現像液に対して不溶である。
【0057】
詳しくは、露光工程では、レジスト膜12においてひずみゲージ用抵抗体1の平面形状に対応する領域に対して、光Lを照射する。露光部12aの平面形状は、ひずみゲージ用抵抗体1の平面形状と一致する。
【0058】
選択的に光Lを照射する方法としては、例えば、フォトマスクを介して光Lを照射する方法が挙げられる。光Lの光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀灯及びエキシマレーザーが挙げられる。
【0059】
(現像工程)
現像工程では、露光後のレジスト膜12(
図5に示す露光部12a及び非露光部12b)に対して、現像液による現像を行う。これにより、露光部12aは、現像液に溶解して除去される。一方、非露光部12bは、現像液に溶解せずに、導電性基板11上に残存する。その結果、
図6に示すように、非露光部12bにより構成されるレジストパターンが形成される。そして、導電性基板11及びレジストパターン(非露光部12b)を備える積層体13が得られる。レジストパターンは、ひずみゲージ用抵抗体1の有する形状を反転させた形状を有する。即ち、導電性基板11において、レジストパターンが存在しない領域の平面形状は、ひずみゲージ用抵抗体1の平面形状と一致する。
【0060】
現像液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ現像液及び有機溶媒現像液が挙げられる。本工程では、形成されたレジストパターンに対して、ポストベークを行ってもよい。
【0061】
[金属膜形成工程]
金属膜形成工程では、
図6に示す導電性基板11及びレジストパターン(非露光部12b)を備える積層体13のレジストパターン間(露光部12aが存在していた領域)に、メッキ法により、ニッケル-リン合金を含有する金属膜を形成する。これにより、
図7に示すように、積層体13のレジストパターン間に、特定形状を有する金属膜であるひずみゲージ用抵抗体1が形成される。メッキ法としては、電解メッキ法が好ましい。本工程で形成する金属膜の厚さは、レジストパターンの厚さよりも厚いことが好ましい。
【0062】
[剥離工程]
図8及び
図9は、剥離工程を示す。剥離工程では、粘着シート14を用いて金属膜(ひずみゲージ用抵抗体1)を積層体13から剥離する。粘着シート14は、可撓性を有する絶縁性基板2と、絶縁性基板2上に積層される粘着剤層3とを備える。本工程では、まず、粘着シート14における粘着剤層3側の面と、ひずみゲージ用抵抗体1が形成された積層体13におけるひずみゲージ用抵抗体1側の面とを貼り合わせる(
図8)。その後、粘着シート14を、上述の積層体13から剥離する。ひずみゲージ用抵抗体1は、積層体13から剥離し、粘着シート14に接着した状態で回収される(
図9)。これにより、可撓性を有する絶縁性基板2と、絶縁性基板2上に間接的に積層されるひずみゲージ用抵抗体1と、絶縁性基板2及びひずみゲージ用抵抗体1の間に配設される粘着剤層3とを備えるひずみゲージ10が得られる。
【0063】
剥離工程後、積層体13は、ひずみゲージ用抵抗体1が剥離された状態で回収される。積層体13は、金属膜形成工程及び剥離工程に再度使用することができる。
【0064】
以上、
図4~
図9を参考に、本発明の金属膜の製造方法を説明した。但し、本発明の金属膜の製造方法は、
図4~
図9に示すひずみゲージ10の製造方法に限定されない。例えば、本発明の金属膜の製造方法に用いる粘着シートは、
図8及び
図9に示す粘着シート14に限定されない。また、本発明の金属膜の製造方法により製造された金属膜は、粘着シートから剥離して用いてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示して本発明を更に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0066】
<検討1:ニッケル-リン合金におけるリン含有割合>
まず、ニッケル-リン合金において、リンの含有割合と、体積抵抗率との関係について検討した。
【0067】
(メッキ液の調製)
リンを含有する添加剤(アトテックジャパン株式会社製「ノボプレートHS」)と、硫酸ニッケル五水和物と、スルファミン酸ニッケルと、塩化ニッケル五水和物と、ホウ酸とを、必要に応じて水に添加した。これにより、下記表1に示す組成のメッキ液A~Bを調製した。メッキ液Aは、リンを含有しないメッキ液であった。メッキ液Bは、リンを含有するメッキ液であった。
【0068】
【0069】
リン青銅基板(厚さ:0.4mm)又はSUS基板(日本金属株式会社製「SUS304-H-TA」、厚さ0.05mm)に対して、上述のメッキ液A~Bの何れかを用いて電解メッキを行った。メッキ条件は、温度60℃、pH1~3、下記表2に示す電流密度とした。これにより、メッキ層a~dを形成した。メッキ層a~dの形成においては、メッキ液の種類と、電流密度とを下記表2の通りとすることにより、リンの含有割合を調整した。
【0070】
リン青銅基板上に形成されたメッキ層a~dの断面構造を、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製「SU5000」)を用いて撮影した。得られた断面構造(倍率:40000倍)を
図10に示す。
図10(a)は、メッキ層aを示す。
図10(b)は、メッキ層bを示す。
図10(c)は、メッキ層cを示す。
図10(d)は、メッキ層dを示す。
図10において、Pは、メッキ層を示す。PBは、リン青銅基板を示す。Iは、メッキ層及びリン青銅基板の界面を示す。
図10に示すように、メッキ層a~bは、結晶構造を有していた。一方、メッキ層c~dは、アモルファス構造を有していた。
【0071】
SUS基板上に形成されたメッキ層a~dを、SUS基板から剥離し、リンの含有割合を測定した。測定装置としては、エネルギー分散型X線分析装置(旧株式会社堀場製作所製「X-MaxN50」)を取り付けた走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製「SU5000」)を用いた。測定条件としては、倍率500倍、加速電圧15kVとした。上述の測定装置を用いて、メッキ層a~dに対するリンの定量分析を行った。測定結果を下記表2に示す。
【0072】
上述のSUS基板から剥離したメッキ層a~dについて、抵抗率計(日東精工アナリテック)を用いて体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の測定は、温度20℃において行った。測定結果を下記表2に示す。
【0073】
【0074】
表2及び
図10に示すように、ニッケルを含有するメッキ層において、リンの含有割合が一定割合を超えると、組織構造が結晶構造からアモルファス構造に変化すると共に、体積抵抗率が増大した。
【0075】
<検討2:ひずみゲージの製造>
次に、本発明の金属膜の製造方法により、ひずみゲージ用抵抗体を備えるひずみゲージを製造した。ひずみゲージの製造は、
図4~
図9に沿った製造方法により実施した。
【0076】
[レジストパターン形成]
導電性基板として、SUS基板(日本金属株式会社製「SUS304-H-TA」、厚さ0.05mm)を準備した。導電性基板に、レジスト材料(東レ株式会社製「PW-1500s」)をグラビアコート法で塗布した。これにより、SUS基板上にレジスト膜(膜厚約5μm)を形成した。その後、レジスト膜を形成したSUS基板を120℃で30秒間加熱することにより、プレベークを行った。
【0077】
露光装置(株式会社アドテックエンジニアリング製「DE-6UH/R&R」)を用いて、波長405nmの光で上述のレジスト膜を露光した。露光条件は、露光時間140秒、露光量600mJ/cm2とした。露光においては、レジスト膜において、製造しようとするひずみゲージ用抵抗体の平面形状と一致する領域を露光した。
【0078】
アルカリ現像液(株式会社トクヤマ製「SD-25」)を用いて、露光後のレジスト膜を現像した。現像により、レジスト膜の露光部が除去され、レジスト膜の非露光部がSUS基板上に残存した。これにより、SUS基板及びレジストパターンを備える積層体が得られた。この積層体を140℃で30分加熱することにより、レジストパターンに対するポストベークを行った。
【0079】
[金属膜形成]
リンを含有する添加剤(アトテックジャパン株式会社製「ノボプレートHS」)と、硫酸ニッケル五水和物と、塩化ニッケル五水和物と、ホウ酸とを、水に添加した。各成分の添加量は、添加剤の濃度が100mL/L、硫酸ニッケル五水和物の濃度が500g/L、塩化ニッケル五水和物の濃度が40g/L、ホウ酸の濃度が40g/Lとなる添加量とした。これにより、メッキ液を得た。得られたメッキ液を用いて、上述の積層体に対して電解メッキを行った。メッキ条件は、温度60℃、pH1~3、電流密度3A/dm2~10A/dm2とした。これにより、上述の積層体のレジストパターン間に、アモルファス構造を有するニッケル-リン合金(リンの含有割合:8.5質量%)を含有するひずみゲージ用抵抗体が形成された。
【0080】
[剥離]
ポリイミド製の絶縁性基板の一方の面に、紫外線硬化型粘着剤を塗布した。紫外線硬化型粘着剤の塗布量は、5.95×10-4g/cm2とした。これにより、絶縁性基板と、絶縁性基板上に積層される粘着剤層とを備える粘着シートを得た。
【0081】
粘着シートにおける粘着剤層側の面と、ひずみゲージ用抵抗体が形成された積層体におけるひずみゲージ用抵抗体側の面とを貼り合わせた。その後、粘着シートを、上述の積層体から剥離した。ひずみゲージ用抵抗体は、積層体から剥離し、粘着シートに接着した状態で回収された。これにより、ひずみゲージ用抵抗体、粘着剤層及び絶縁性基板を備えるひずみゲージを得た。なお、ひずみゲージ用抵抗体を剥離した後の積層体は、レジストパターンの破損等が確認されなかった。そのため、積層体は、金属膜形成及び剥離に再利用可能であったと判断した。
【0082】
得られたひずみゲージに対して、ひずみゲージ用抵抗体側の面から紫外線照射装置を用いて紫外線露光を行った。これにより、粘着剤層の全領域のうち、ひずみゲージ用抵抗体及び絶縁性基板の間の領域以外の領域において、紫外線硬化型粘着剤を硬化させた。紫外線露光後のひずみゲージを、実施例のひずみゲージとした。
【0083】
実施例のひずみゲージの平面写真を
図11に示す。電子顕微鏡(日本電子株式会社製「集束イオンビーム加工観察装置JIB-4000」)を用いて撮影された実施例のひずみゲージの断面構造(倍率:3000倍)を
図12に示す。参考例として、コンスタンタン製のひずみゲージ用抵抗体を備える市販品のひずみゲージの平面図を
図13に示す。上述の電子顕微鏡を用いて撮影された参考例のひずみゲージの断面構造(倍率:3000倍)を
図14に示す。実施例のひずみゲージ及び参考例のひずみゲージの各寸法を下記表3に示す。
【0084】
【0085】
図11及び
図12に示すように、本発明の金属膜の製造方法により、ひずみゲージ用抵抗体を備えるひずみゲージを製造できることが確認された。表3に示すように、ひずみゲージが備えるひずみゲージ用抵抗体は、参考例の市販品と同等程度又はそれ以上に微細であった。実施例のひずみゲージが備えるひずみゲージ用抵抗体は、リンの含有割合が2.5質量%以上であり、かつアモルファス構造を有するニッケル-リン合金を含有するため、体積抵抗率に優れると判断される。実施例のひずみゲージが備えるひずみゲージ用抵抗体は、製造する度にレジストパターン形成工程を毎回行う必要がないため、低コストで製造できると判断される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のひずみゲージ用抵抗体及びひずみゲージは、物体のひずみの測定に利用できる。本発明の金属膜の製造方法は、特定形状を有する金属膜の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 ひずみゲージ用抵抗体
1a 受感部
1b 接続部
2 絶縁性基板
3 粘着剤層
10 ひずみゲージ
11 導電性基板
12 レジスト膜
12a 露光部
12b 非露光部
13 積層体
14 粘着シート