(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】基板及び集積回路デバイスの電気化学処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
H01L21/306 B
(21)【出願番号】P 2020551305
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019057305
(87)【国際公開番号】W WO2019180237
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】508246076
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ カトリック ド ルヴァン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CATHOLIQUE DE LOUVAIN
【住所又は居所原語表記】Place de l’Universite 1,B-1348 Louvain-la-Neuve,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】シェーン, ジル
(72)【発明者】
【氏名】ラスキン,ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラッソン,ジョナサン
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-335305(JP,A)
【文献】特開2006-323353(JP,A)
【文献】特開2005-135941(JP,A)
【文献】特開2000-124465(JP,A)
【文献】特開平01-151272(JP,A)
【文献】特開平06-104244(JP,A)
【文献】特開昭57-030333(JP,A)
【文献】米国特許第04306951(US,A)
【文献】米国特許第05149404(US,A)
【文献】国際公開第01/091170(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を備える前側と、前記電気回路に面する露出区域を備える後側とを有する基板の処理方法であって、
前記基板の前側と後側とに平行な方向が横方向であり、当該方法は、
前記露出区域を化学反応物質に接触させながら、
前記基板の後側の前記露出区域に
前記横方向に電位をかける
ことによって、前記基板を電気化学的に処理することであって、
化学反応性物質を通過する前に露出区域
全体を横方向に流れる電流を前記電位が生じさせ、前記電
流と前記化学反応物質とが、
後側の前記露出区域
全体から開始して内部を前記前側に向かって、前記基板を部分的に変化させる電気化学
的に処理
することを含む基板処理方法。
【請求項2】
前記電位は、横方向に少なくとも前記基板の後側の前記露出区域に、以下の、
前記基板の後側に配置された電極配列と、
前記基板の後側において前記露出区域と面する前記化学反応物質中の電極配列と、によって、かけられる請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記電気化学
的に処理
する間、前記電位が、横方向に前記露出区域に、非均一に、以下の次元、空間及び時間の少なくとも1つにおいて、以下の特性、前記基板が部分的に変化させられる前記基板中の体積と、当該体積中の部分的変化の種々の程度と、前記体積中において部分的に変化する種々の形態との少なくとも1つを確定するように、かけられる、請求項1及び2のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記化学反応物質中の電極配列は、前記電位が非均一に前記露出区域にかけられるようにする形状を有する請求項2及び3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記化学反応物質中の電極配列は、前記電気化学
的に処
理する間に少なくとも1回変化する形状を有する請求項2及び3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記化学反応物質中の電極配列は、電極のアレイを備え、これにより、前記電気化学
的に処理
する間、前記電極のアレイ内においてそれぞれの電極にかけられるそれぞれの電圧の少なくとも一部分が、前記電気化学
的に処理
する間に少なくとも1回変化する、請求項2及び3に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板は、少なくとも前記露出区域内に、
電流が
材料を流れる間に
前記化学反応物質と接触すると、加えられた放射に応じて部分的に変化する材料を含むとともに、前記電気化学
的に処理
する間、放射は、非均一に前記露出区域にかけられる、請求項1~6のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板の後側の露出区域は、少なくとも1つの電気化学処理セルを備え、電気化学処理セルが、電極の周りに配置されて、前記基板の後側において前記電極配列の一部を形成する一組の空洞を備えるとともに、前記電気化学
的に処理
する間、前記化学反応物質が前記一組の空洞に入る、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板は、少なくとも、前記前側の電気回路と、前記後側の露出区域との間に配置された部分的変化停止層を備え、当該部分的変化停止層は、前記化学反応物質に比較的抵抗性がある材料を含む、請求項1~8のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記部分的変化停止層は、半導体材料を含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記基板は、前記前側の電気回路と前記後側との間に配置された
電気絶縁層を備える、請求項1~10のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記電気絶縁層は、前記前側の電気回路と部分的変化停止層との間に配置される
請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記電流の横方向の流れと前記化学反応物質とによって、孔が、前記基板に、少なくとも前記露出区域から内部へ形成される請求項1~12のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項14】
電気回路を備える前側と、一区域が前記電気回路に面する後側とを有する基板を含み、これにより、前記基板が、請求項1~13のいずれかに記載の方法を、少なくとも、前記電気回路と、前記電気回路に面する前記後側の区域との間に含まれる
少なくとも基板の一部分に、適用することにより、部分的に変化させられる、集積回路デバイス。
【請求項15】
部分的に変化した前記
基板の一部分は、請求項1~13のいずれかに記載の方法を適用することにより、形成された孔を含む請求項14に記載の集積回路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明の態様は、電気回路を備える基板を処理する方法に関する。本方法は、例えば、半導体基板を含む集積回路デバイスを製造することに用いることができる。本方法は、特に、少なくとも部分的に、通常の半導体基板が損失のある媒体になってしまう比較的高周波で作動する集積回路デバイスを製造することに用いることができる。本発明の別の態様は、電気回路を備える基板を含む集積回路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,287,936号明細書は、特に、集積トランジスタを組み込むシリコン半導体ウェハ上に製作される誘電回路のQ値(quality factor)を向上させるため、シリコン基板に多孔質シリコン(porous silicon)を形成する方法を説明している。ウェハの後面は、すでにトランジスタを組み込み、その前面には誘電回路を組み込んでおり、フッ化水素酸と少なくとも1つの他の酸を含有する酸電解質と接触して配置される。後面のウェハのシリコンの陽極酸化が、このシリコンを多孔質シリコンへ、電解質と接触している後面から所定の高さにわたって、変えるために実行される。
【0003】
本方法において、ウェハを、ウェハの前面と接触している金属プレートと周縁シールとの間に挟む。金属プレートは、アノードを提供する。このアノードは、下にあるシリコン基板と電気接触させる必要がある。このような金属の接触は、基板接触パッドを用いることにより行うことができ、当該基板接触パッドは、製作された全ての集積回路に存在し、下にあるシリコン基板を集積回路の表面と接続する。全ての基板コンタクトは、銀ペーストの金属層を用いることにより短絡させることができ、この金属層は、一旦陽極酸化が完了すると有機溶剤に溶解させることにより容易に除去可能である。
【発明の概要】
【0004】
電気化学処理により、電気回路を備える基板を部分的に変化させることをさらに幅広く適用し得る解決方法が必要とされている。
【0005】
請求項1に記載の本発明の態様による基板処理方法が、提供される。基板は、電気回路を備える前側と、電気回路に面する露出区域を備える後側とを有する。電気化学処理ステップにおいて、露出区域を化学反応物質と接触させながら、電位を横方向に少なくとも基板の後側の露出区域にかける。電位によって、電流の横方向の流れが、少なくとも基板の露出区域に生じる。電流の横方向の流れと化学反応物質とが、基板を少なくとも露出区域において部分的に変化させる。
【0006】
よって、背景技術とは異なって、上に明確にした方法では、電位が、基板の前側と後側との間を横断方向にかけられるというよりは、横方向に基板の後側にかけられる。その結果、本方法では、基板を通る電流が、背景技術におけるように電流が横断方向に流れるというよりは、横方向に流れることになる。
【0007】
本発明の発明者は、電流が、横断方向というよりは横方向に流れるが、このことによって、基板の部分的変化を目標の体積分達成できないわけではないことを見出した。目標の体積は、基板の後側から内部へ、十分深く、例えば、電気回路近くまで達するように、延び得る。部分的変化は、背景技術におけるように、孔の形成を含み得、これが、電気回路の付近において、少なくとも局所的に、基板により誘発される損失を低減させ得る。
【0008】
さらには、上に明確にした方法では、基板の前側と後側との間の電気接触を、これは電気化学処理により基板を部分的に変化させるために背景技術では必要とされるものだが、提供する必要はない。一般に、背景技術とは異なって、上に明確にした方法では、基板の前側と後側との間の電気接触を提供する等、設計上の制約を必ずしも課さない。
【0009】
原理上は、基板に、上に明確にした方法による電気化学処理によって、少なくとも部分的に、基板を部分的に変化させるために具える必要のある特定の特徴はない。実際、上に明確にした方法は、原理上、電気回路をその前側に備える任意の基板に適用可能である。本発明は、電気回路を含む基板を電気化学処理により部分的に変化させることを、さらに幅広く適用可能とする。
【0010】
本発明の更なるの態様によれば、集積回路デバイスが、請求項14に記載のように提供される。集積回路デバイスは、電気回路を備える前側と、一区域が電気回路に面する後側とを具える基板を含む。基板は、上に明確にした方法を、少なくとも、電気回路と、電気回路に面する後側の区域との間に含まれる体積に適用することにより、部分的に変化させている。
【0011】
本発明の別の態様によれば、基板は、少なくとも、基板の前側に含まれる電気回路と後側の露出区域との間に配置された部分的変化停止層を備える。部分的変化停止層は、基板を部分的に変化させるために使用される化学反応物質に比較的抵抗性のある材料を含む。例えば、多結晶シリコンが、特に適合する。
【0012】
図示目的で、本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。この説明では、上に述べた特徴に追加の特徴と、このような追加の特徴が提供可能な利点とを提示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、処理対象の基板の概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1の例示的な基板処理方法の第1の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図3】
図3は、第1の例示的な基板処理方法の中間の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図4】
図4は、第2の例示的な基板処理方法の中間の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図5】
図5は、第2の例示的な基板処理方法の最終の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図6】
図6は、第3の例示的な基板処理方法の最終の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図7】
図7は、第4の例示的な基板処理方法の第1の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図8】
図8は、第4の例示的な基板処理方法の、第2の、最終の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図9】
図9は、第5の例示的な基板処理方法の第1の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図10】
図10は、第5の例示的な基板処理方法の、第2の、次の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図11】
図11は、第5の例示的な基板処理方法の第3の、最終の段階において電気化学処理装置に結合された基板の概略断面図である。
【
図12】
図12は、第6の例示的な基板処理方法を実行するための光電気化学処理システムの概略図である。
【
図13】
図13は、電気化学処理が施されるように適合させた改良型基板の概略断面図である。
【
図14】
図14は、改良型基板の一部分におけるキャリア濃度を改良型基板中の深さの関数としてプロットしたグラフである。
【
図15】
図15は、改良型基板の当該部分の抵抗を改良型基板中の深さの関数としてプロットしたグラフである。
【
図16】
図16は、電気化学処理が施された改良型基板の断面の写真である。
【
図17】
図17は、改良型基板を備える基板アセンブリの概略断面図である。
【
図18】
図18は、電気化学処理が施されるように適合させた、代替の改良型基板の概略断面図である。
【
図20】
図20は、電気化学処理が施された基板を備える集積回路デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に処理対象の基板100の概略を示す。
図1は、処理対象の基板100の概略断面図を提供する。基板100は、電気回路102を備える前側101を有する。基板100の後側103は、電気回路102に面する露出区域104を備える。
【0015】
基板100は、電気回路を形成可能な、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、又は他のタイプの材料若しくは組成物等の半導体材料を本質的に含み得る。基板100は、例えば、複数の同様の電気回路を備えるウェハの形態にすることができる。この点において、図面は、簡略化のため非常に概略化されていることを強調する。
【0016】
基板100に含まれる電気回路102は、通常の半導体基板が損失のある媒体となってしまうような比較的高い周波数でも作動するように適合させ得る。例えば、通常の半導体基板100は、100MHzより高い周波数で損失のある媒体となる場合がある。
【0017】
この実施形態では、基板100は、前側101に含まれる電気回路102と、後側103との間に配置された電気絶縁層105を備える。基板100は、よって、この実施形態ではシリコン-オン-絶縁体(SoI)型である。電気絶縁層105は、例えば、酸化ケイ素を含み得る。
【0018】
この実施形態では、基板100は、基板100の後側103上に配置された2つの電極106、107を備える。2つの電極の一方の電極106は、基板100の縁近傍に配置され、他方の電極107は、対向する縁の近傍に配置される。2つの電極106、107は、実際に、基板100の周縁において単一の円形の電極の2つのセグメントを形成し得ることに留意すべきである。2つの電極106、107は、後側103から内部へ電気絶縁層105へと延びる基板100のバルク部分108との電気接触を提供する。基板100のバルク部分108は、Pドープし得る。
【0019】
図2及び
図3は、
図1を参照して上述した第1の例示的な基板100の処理方法を概略図示する。
図2は、第1の例示的な方法の第1の段階において電気化学処理装置200に結合された基板100の概略断面図を提供する。
図3は、第1の例示的な方法の中間の段階において電気化学処理装置200に結合された基板100の概略断面図を提供する。
【0020】
電気化学処理装置200は、化学反応物質202を収容する容器201を備える。化学反応物質202は、例えば、フッ化水素酸を含み得る。容器201の大きさは、基板100の後側103において2つの電極106、107の間に容器201を配置可能な大きさである。容器201は、基板100に、化学反応物質202が基板100の後側103において露出区域104と接触するように結合している。
【0021】
電気化学処理装置200は、さらに、化学反応物質202中に電極配列203を備える。電極配列203は、基板100の後側103において露出区域104に面している。第1の例示的方法において、電極配列203は、実質的に平坦なプレート状電極204を含む。プレート状電極204は、実質的に、基板100の後側103において、露出区域104全体を覆う。プレート状電極204は、実質的に、露出区域104と平行である。プレート状電極204は、例えば、導電性グリッドの形態でもよい。
【0022】
第1の例示的方法において、露出区域104を化学反応物質202と、電気化学処理装置200において接触させながら、電位を、横方向に基板100の後側103の露出区域104にかける。電位は、電圧205を一方で化学反応物質202中のプレート状電極204と、他方で基板100の後側103に配置された2つの電極106、107との間にかけることにより、横方向にかけられる。化学反応物質202中のプレート状電極204は、カソードとなるのに対して、基板100の後側103に配置された2つの電極106、107は、アノードとなる。
【0023】
かけられた電位によって、露出区域104に電流の横方向の流れが生じる。電流の横方向の流れと化学反応物質202とが、少なくとも露出区域104の基板100を部分的に変化させる。この実施形態では、このような部分的変化は、基板100における孔の形成を含む。
【0024】
プレート状電極204によって、電位が、露出区域104に実質的に均一にかけられる。電位は、基板100の露出区域104において実質的に均一である。結果として、電流の横方向の流れの密度は、露出区域104の周縁領域の方が、2つの電極106、107に比較的近いので、2つの電極106、107からさらに離れている中央領域よりも高い。結果として、
図2に示した第1の段階から始まり、孔は、露出区域104の中央領域における速度よりも、さらに速い速度で、周縁領域から内部へ形成されていくことになる。
【0025】
図3において、暗領域は、孔が、第1の例示的処理方法の中間の段階においてある程度まで形成された基板100の体積301を示す。孔が形成された体積301は、有効誘電率及び有効導電性が低く、このことは、孔が形成されていない基板100の残りの体積と比較して、有効電気抵抗が高いことを意味する。実際に、孔によって、基板100は、この孔が形成された体積301において損失が少なくなる。
【0026】
図3は、中間の段階において、孔を有する体積301が、基板100の露出区域104の中央領域よりも周縁領域の方において、深さが増すことを示す。このことが、電流の横方向の流れの密度が、既に上に説明したように、露出区域104の周縁領域の方が中央領域よりも、高くなる理由である。
図3に示した中間の段階において、孔を有する体積301の深さは、露出区域104の周縁領域において、電気絶縁層105にほぼ到達している。ある程度後の段階において、孔を有する体積301は、周縁領域において電気絶縁層105に到達することになる。その段階において、基板100を通る電流の横方向の流れは、実質上停止することになる。電流が、化学反応物質202中の電極配列203と、基板100の後側103における2つの電極106、107との間においてこれ以上流れることはない。結果として、孔の形成は、実質上停止することになる。
【0027】
第1の例示的方法の最終段階において、非多孔質(non-porous)部分は、よって、電気回路102に近い、露出区域104の中央領域に残る場合がある。しかしながら、理想的には、基板100の非多孔質部分を電気回路102の付近に残すべきではない。残りの非多孔質部分は、電気回路102に対して相対的に損失のある媒体となる。
図3において暗領域として表した、孔を伴った体積301は、理想的には、基板100の電気絶縁層105のすぐそばまで延ばすべきである。すなわち、孔の形成は、電気絶縁層105のすぐそばまで続けるべきである。
【0028】
図4及び
図5は、第2の例示的な基板100の処理方法を概略図示する。
図4は、第2の例示的な方法の中間の段階において電気化学処理装置400に結合された基板100の概略断面図を提供する。
図5は、第2の例示的な方法の最終の段階において電気化学処理装置400に結合された基板100の概略断面図を提供する。
【0029】
第2の例示的方法では、電気化学処理装置400は、第1の例示的方法において使用される電極配列とは異なる電極配列401を備える。第2の例示的方法において、電極配列401は、露出区域104の中央領域に面する端部を有するロッド状電極402を含む。電気化学処理装置400は、残りの部分については同様である。容器403は、電極配列401がその中に存在する化学反応物質404を収容する。
【0030】
第2の例示的方法において、電圧405は、一方で化学反応物質404中のロッド状電極402と、他方で基板100の後側103に配置された2つの電極106、107との間にかけられる。化学反応物質404中のロッド状電極402は、カソードになる一方で、基板100の後側103に配置された2つの電極106、107は、アノードになる。したがって、電位は、基板100の後側103の露出区域104に横方向にかけられる。これによって、露出区域104に横方向の電流の流れが生じる。
【0031】
しかしながら、ロッド状電極402によって、電位が、露出区域104に非均一にかけられる。電位は、露出区域104の中央領域の方が、ロッド状電極402の端部に近いので、露出区域104の周縁領域よりも高い。結果として、電流の横方向の流れの密度は、基板100の露出区域104の中央領域の方が、周縁領域よりもある程度高くなる。その結果、孔が、露出区域104の周縁領域におけるよりもある程度速い速度で中央領域から内部へ形成されることになる。
【0032】
図4及び
図5において、暗領域は、ここでも、孔が第1の例示的処理方法の結果として形成された基板100の体積406を示す。
図4が示すのは、中間の段階において、孔を有するこの体積406の深さが、基板100の露出区域104の周縁領域よりも中央領域の方が増しているということである。これは、既に上に説明したように、電流の横方向の流れの密度が、基板100の露出区域104の中央領域の方が周縁領域よりもある程度高くなるためである。
【0033】
図5が示すのは、最終の段階において、孔を有する体積406が、この体積406が実質的に基板100の露出区域104全体にわたって電気絶縁層105へ延びるように、成長していることである。電気回路102の付近では、基板100は、本質的に多孔質(porous)である。一旦、基板100が第2の例示的方法に従って処理されると、電気回路102は、
図1に示した元の状態の基板100と比較して、さらに、
図2及び
図3を参照して上述した第1の例示的方法に従って処理された基板100と比較しても、より損失が少ない媒体と隣接する。
【0034】
図6は、第3の例示的な基板100の処理方法を概略図示する。
図6は、第3の例示的方法の最終の段階において電気化学処理装置600に結合された基板100の概略断面図を提供する。
【0035】
第3の例示的方法では、電気化学処理装置600は、第1及び第2の例示的方法において使用された電極配列とは異なる電極配列601を含む。第3の例示的方法において、電極配列601は、湾曲形状の電極602を含む。湾曲形状の電極602は、基板100の後側103において露出区域104に面する中央領域を有する。湾曲形状の電極602の周縁領域は、露出区域104の周縁領域に面している。湾曲形状の電極602は、湾曲形状の電極602の中央領域が、露出区域104の中央領域に相対的に接近するような湾曲を有する。湾曲形状の電極602の周縁領域は、露出区域104の周縁領域と相対的に離れている。残りの部分について、電気化学処理装置600は、第1及び第2の例示的方法において使用されたものと同様であってよい。容器603は、電極配列601がその中に存在する化学反応物質604を収容する。
【0036】
第3の例示的方法において、電圧605が、一方で化学反応物質604中の湾曲形状の電極602と、他方で基板100の後側103に配置された2つの電極106、107との間にかけられる。化学反応物質604中の湾曲形状の電極602は、カソードとなるのに対して、基板100の後側103に配置された2つの電極106、107は、アノードとなる。したがって、電位は、基板100の後側103の露出区域104に横方向にかけられる。これによって、露出区域104に横方向の電流の流れが生じる。
【0037】
湾曲形状の電極602によって、電位が、露出区域104に非均一にかけられる。電位は、露出区域104の中央領域の方が、湾曲形状の電極602に比較的近いので、湾曲形状の電極602とさらに離れている露出区域104の周縁領域よりも高い。結果として、電流の横方向の流れの密度は、基板100の露出区域104の中央領域の方が、周縁領域よりもある程度高くなる。その結果、孔が、露出区域104の周縁領域におけるよりもある程度速い速度で中央領域から内部へ形成されることになる。
【0038】
図6において、暗領域は、ここでも、孔が第1の例示的処理方法の結果として形成された基板100の体積606を示す。
図6が示すのは、最終の段階において、孔を有する体積606が、この体積が、実質的に、基板100の露出区域104全体にわたって、電気絶縁層105へ延びるように成長していることである。電気回路102の付近では、基板100は、本質的に多孔質である。一旦、基板100が第3の例示的方法に従って処理されると、電気回路102は、
図1に示した元の状態の基板100と比較して、さらに、
図2及び
図3を参照して上述した第1の例示的方法に従って処理された基板100と比較しても、より損失が少ない媒体と隣接する。
【0039】
図4及び
図5と
図6とにそれぞれ示した第2及び第3の例示的処理方法は、化学反応物質中の電極配列が、電位が露出区域104に非均一にかけられることになる形状を有する技術の例である。これによって、基板100に部分的変化が、すなわち電極配列の形状により起きる基板100の体積を比較的正確に確定することができる。その上、これによって、さらに、体積全体にわたる部分的変化の様々な程度、若しくは体積全体にわたる部分的変化の様々な形態、又はその両方を確定し得る。提示した実施形態において、露出区域104に横方向に非均一に電位をかけることは、基板100を電気回路102の付近において本質的に多孔質にすることに寄与する。このことは、次に、基板100が電気回路102に対してさらに損失フリーの媒体となることに寄与する。
【0040】
図7及び
図8は、第4の例示的な基板100の処理方法を概略図示する。
図7は、第4の例示的方法の第1の段階において電気化学処理装置700に結合された基板100の概略断面図を提供する。
図8は、第4の例示的な方法の、第2の、最終の段階において電気化学処理装置700に結合された基板100の概略断面図を提供する。
【0041】
第4の例示的方法では、電気化学処理装置700は、上に提示した例示的方法において使用された電極配列とは異なる電極配列701を含む。第4の例示的方法では、電極配列701は、第1の処理期間において、
図4及び
図5を参照して上述した第2の例示的方法において使用された同様のロッド状電極702を含む。次の、第2の処理期間において、電極配列701は、
図2及び
図3を参照して上述した第1の例示的方法において使用されたものと同様のプレート状電極703を含む。電気化学処理装置700は、残りの部分については同様である。容器704は、電極配列701がその中に存在する化学反応物質705を収容する。
【0042】
図7が図示するのは、第4の例示的方法の第1の処理期間において、電圧706が、一方では、化学反応物質705中のロッド状電極702と、他方では、基板100の後側103に配置された2つの電極106、107との間にかけられることである。化学反応物質705中のロッド状電極702は、カソードとなるのに対して、基板100の後側103に配置された2つの電極106、107は、アノードとなる。したがって、電位は、基板100の後側103の露出区域104に横方向にかけられる。これによって、露出区域104に横方向の電流の流れが生じる。
【0043】
第2の例示的方法と同様に、ロッド状電極702によって、電位が、露出区域104に非均一にかけられることになる。電位は、露出区域104の中央領域の方が、ロッド状電極702の端部に近いので、露出区域104の周縁領域よりも高い。結果として、電流の横方向の流れの密度は、基板100の露出区域104の中央領域の方が、周縁領域よりもある程度高くなる。その結果、孔が、露出区域104の周縁領域におけるよりもある程度速い速度で中央領域から内部へ形成されることになる。
【0044】
図7において、暗領域は、ここでも、孔が、第4の例示的方法の第1の処理期間の終わりに近い、第1の段階においてこれまでに形成された基板100の体積707を示す。
図7が示すのは、第1の段階において、孔を有するこの体積707の深さが、基板100の露出区域104の周縁領域よりも、中央領域の方が深いことである。これは、既に上に説明したように、電流の横方向の流れの密度が、基板100の露出区域104の中央領域の方が周縁領域よりもある程度高くなるためである。
【0045】
図8が示すのは、第2の、次の、第4の例示的方法の第2の処理期間の終わりに近い段階において、孔を有する体積707が、この体積707が実質的に基板100の露出区域104全体にわたって電気絶縁層105へ延びるように、成長していることである。電気回路102の付近では、基板100は、本質的に多孔質である。一旦、基板100が第4の例示的方法に従って処理されると、電気回路102は、
図1に示した元の状態の基板100と比較して、さらに、
図2及び
図3を参照して上述した第1の例示的方法に従って処理された基板100と比較しても、より損失が少ない媒体と隣接する。
【0046】
図7及び
図8に示した第4の例示的処理方法は、化学反応物質中の電極配列が、電気化学的処理中に少なくとも1回変化する形状を有する技術の一例である。これは、さらに、基板100が電気化学的処置により部分的に変化する体積を正確に確定することに寄与し得る。本実施形態において、孔が基板100に形成される場合、このことは、よって、さらに、基板100が電気回路102に対してさらに損失フリーの媒体になることに、寄与し得る。
【0047】
図9、
図10及び
図11は、第5の例示的な基板100の処理方法を概略図示する。
図9は、第5の例示的方法の第1の段階において電気化学処理装置900に結合された基板100を表す。
図10は、第5の例示的方法の第2の、次の段階において電気化学処理装置900に結合された基板100を表す。
図11は、第5の例示的方法の第3の、最終の段階において電気化学処理装置900に結合された基板100を表す。
【0048】
第5の例示的方法において、電気化学処理装置900は、既に提示した例示的方法において使用された電極配列とは異なる電極配列901を含む。この実施形態では、電極配列901は、それぞれの電圧をかけ得るそれぞれの電極のアレイ902を含む。残りの部分については、電気化学処理装置900は、前に提示した電気化学処理装置と同様である。容器903は、電極配列901がその中に存在する化学反応物質904を収容する。
【0049】
この実施形態では、アレイ902の電極は、それぞれ、ロッド状の形状を有する。それぞれの電極は、基板100の露出区域104に対してそれぞれの位置を有する。この実施形態では、アレイは、中央電極905と、周縁電極906、907の一群と、中間電極908、909の一群とを含む。周縁電極906、907の群と、中間電極908、909の群とは、中央電極905の周りに円形に同心円式に配置することができる。
【0050】
中央電極905は、露出区域104の中央領域に面している。対の周縁電極906、907は、露出区域104の周縁領域に面している。一方の周縁電極906は、周縁領域の1つのセグメントに面し、他方の周縁電極907は、周縁領域の別の対向するセグメントに面している。対の中間電極908、909は、中央領域と周縁領域との間に位置する露出区域104の中間領域に面している。一方の中間電極908は、中間領域の1つのセグメントに面し、他方の中間電極909は、中間領域の別の対向するセグメントに面している。
【0051】
図9は、第5の例示的方法の第1の段階において、電圧910が中央電極905のみにかけられることを示している。結果として、電位が、露出区域104に非均一に、
図3及び
図4に示した第2の例示的方法に関して上述のものとある程度同様に、かけられる。電位によって、電流の横方向の流れの密度は、基板100の露出区域104の中央領域の方が、周縁領域よりもある程度高くなる。その結果、孔が、露出区域104の周縁領域におけるよりもある程度速い速度で中央領域から内部へ形成されることになる。
図9において、暗領域は、孔がこれまでに形成された基板100の体積911を示す。
【0052】
図10は、第5の例示的方法の第2の、次の段階において、電圧910が、中央電極905と、中間電極908、909の群とにかけられることを示している。それゆえ、露出区域104にかけられる電位は、第5の例示的方法の第1の段階よりもある程度非均一性が少なくなる。第2の、次の段階において、露出区域104における電流の横方向の流れの密度分布は、第1の段階とは異なる密度分布となる。これは、基板100における孔形成に影響を及ぼす。
図10においても、暗領域は、孔がこれまでに形成された基板100の体積911を示す。体積911は、さらに、第1の段階とは異なる幾何学的成長速度分布に従って、さらに成長する。
【0053】
図11が示すのは、第5の例示的方法の第3の、最終の段階において、電圧910が、周縁電極906、907の群を含むアレイの全ての電極にかけられることである。それゆえ、露出区域104にかけられる電位は、さらに、第5の例示的方法の第2の段階よりもある程度非均一性が少なくなる。第3の、最終の段階において、露出区域104における電流の横方向の流れの密度分布は、第1及び第2の段階とは異なる密度分布となる。説明したように、これは、基板100における孔形成に影響を及ぼす。
図11においても、暗領域は、孔が形成された基板100における体積911を示す。
【0054】
図9、
図10及び
図11に示した第5の例示的処理方法は、電極のアレイのそれぞれの電極にかけられるそれぞれの電圧の少なくとも一部分が、基板100の電気化学的処理中に少なくとも1回変化する技術の一例である。これは、さらに、基板100が電気化学的処置により部分的に変化する体積を正確に確定することに寄与し得る。その上、これは、さらに、体積全体にわたる部分的変化の様々な程度、若しくは体積全体にわたる部分的変化の様々な形態、又はその両方を確定することに寄与し得る。本実施形態において、孔が基板100に形成される場合、これは、よって、基板100が電気回路102に対してさらに損失フリーな媒体になることに寄与し得る。
【0055】
図12は、第6の例示的な基板処理方法を実行するための光電気化学処理システム1200を示す。
図12は、光電気化学処理システム1200の概略図を提供する。
【0056】
光電気化学処理システム1200は、放射源1201と、マスク1202と、レンズと、投影システム1203と、電気化学処理アセンブリ1204とを備える。放射源1201は、例えば、光源であり得る。マスク1202は、二次元の透光性形状を具え得る。電気化学処理アセンブリ1204は、例えば、上に説明した電気化学処理装置の任意のものと同様の電気化学処理装置を含み得る。電気化学処理アセンブリ1204に、基板1205が配置されている。
図1に示した基板100と同様に、第6の例示的方法が施される基板1205は、電気回路を含む前側を具え得る。後側は、電気回路に面し化学反応物質と接触する露出区域を具え得る。
【0057】
第6の例示的方法が施される基板1205は、第1~第5の例示的方法の任意の方法を適用し得る、
図1に示した基板100と異なっていてもよい。第6の例示的方法が施される基板1205は、少なくとも露出区域に、化学反応物質と接触すると電流がその中を流れる間に加えられた放射に応じて部分的に変化する材料を含み得る。例えば、第6の例示的方法が施される基板1205は、
図1に示した基板100におけるのと同様に、Pドープの代わりにNドープされるバルク部分を含み得る。孔を、Nドープされた半導体材料に形成するために、光が、化学物質と電流に加えて、必要である。Nドープされた半導体材料の領域に、このような条件の下、投射される光の強度が高くなるほど、孔がこの領域に形成される速度が増す。
【0058】
第6の例示的方法において、露出区域を化学反応物質と接触させながら、電位を、横方向に少なくとも基板1205の後側の露出区域にかける。その上、基板1205の露出区域は、光を受け取り、この光の露出区域上における強度分布は、非均一となり得る。例えば、露出区域の中央領域は、露出区域の周縁領域よりも高い強度の光を受け取り得る。マスク1202は、実質上、非均一な強度分布を確定する。マスク1202は、よって、少なくとも部分的に、基板の露出区域における孔の形成速度分布を確定し得る。その結果、マスク1202は、少なくとも大きさ及び形状の点で、孔が形成される体積を確定する。よって、これは、基板1205が、電気回路に対してさらに損失フリーな媒体になるためのさらに別の技術である。
【0059】
図2~
図12に示した第1~第6の例示的処理方法は、電位が基板の露出区域に横方向にかけられる一般的な技術の例である。第2~第5の例示的方法において、電位は、以下の次元(dimensions)、空間及び時間の少なくとも1つにおいて、非均一に横方向にかけられ、これは、以下の特性、部分的に変化する基板の体積、体積全体における部分的変化の様々な程度及び体積全体の部分的変化の様々な形態の少なくとも1つを確定するように行われる。第6の例示的方法において、光を用いて同じことを達成し得る。
【0060】
提示した実施形態において、孔は、基板を、電気回路に対して損失が少ない媒体にするように、基板に形成される。例示的方法の少なくともいくつかにおいて、孔の形成は、孔の大きさと孔の密度によって制御し得る。このことは、さらに、基板の損失を減少させることに寄与し得る。すなわち、孔が占める体積の部分と、基板材料がなお占める残りの部分との間の比が大きくなるほど、孔が形成された体積の損失が減少することになる。この比が、電気回路付近において比較的高くなるように、孔の形成を制御することが、特に、有利である。
【0061】
図13は、電気化学処理が施されるのに適するように改良した基板1300を示し、当該処理は、前に提示した例示的方法に従ったものとしてよい。
図13は、改良型基板1300の概略断面図を提供する。改良型基板1300は、
図1に示した基板100の変更バージョンである。
【0062】
以下の点で、改良型基板1300は、
図1に示した基板100と同様である。改良型基板1300は、電気回路1302を備える前側1301も有する。改良型基板1300の後側1303は、電気回路1302に面する露出区域1304を備える。2つの電極1306、1307は、
図1に示した基板100上の2つの電極106、107と同様に、改良型基板1300の後側1303に配置されている。改良型基板1300は、前側1301に含まれる電気回路1302と、後側1303との間に配置された電気絶縁層1305も備え得る。
【0063】
図1に示した基板100とは異なって、改良型基板1300は、部分的変化停止層1308を備える。部分的変化停止層1308は、電気絶縁層1305と、後側1303上の露出区域1304との間に配置されている。改良型基板1300のバルク部分1309は、部分的変化停止層1308と後側1303との間を延びる。この実施形態では、部分的変化停止層1308は、電気絶縁層1305に隣接している。部分的変化停止層1308は、上に提示した例示的方法の少なくとも1つにおいて使用される化学反応物質に比較的抵抗性がある材料を含む。「比較的抵抗性がある」という表現は、基板よりも、又は少なくともバルク部分の材料よりも、化学的に抵抗性が高いという意味として解釈し得る。この実施形態では、部分的変化停止層1308はまた、電気絶縁層1305よりも、化学反応物質に化学的に抵抗性が高いものとし得る。
【0064】
部分的変化停止層1308は、よって、化学反応物質が、改良型基板1300の後側1303から前側1301に向かって通り続けることを妨げる障壁を効果的に形成する。この実施形態では、部分的変化停止層1308はまた、電気絶縁層1305を化学反応物質から、実際に、保護する。例えば、化学反応物質中のフッ化水素酸は、電気絶縁層1305中の酸化ケイ素に腐食を起こし得る。
【0065】
以下の望ましい結果を、電気化学処理において
図13に示した改良型基板1300を使用することにより、
図1に示した基板100を使用するよりも、さらに容易に得ることができる。1つの望ましい結果は、一旦電気化学処理が実行されると、本質的に、非多孔質の基板材料が電気回路1302の付近に残らないような大きさと形状の孔を有する体積を得ることである。別の望ましい結果は、実質的に完全な電気絶縁層1305を残すことである。部分的変化停止層1308によって、この後者の望ましい結果を得ることが、比較的容易になる。したがって、電気化学処理は、焦点を、最も損失フリーの基板を得ることに合わせることができる。
【0066】
部分的変化停止層1308は、半導体材料を含み得る。例えば、部分的変化停止層1308は、多結晶シリコン、特に、実質的に、どんなドーピング材料の影響も受けない多結晶シリコンを含み得る。改良型基板1300のこのような実施形態は、従来の半導体製造技術を用いて中程度のコストで製造可能である。すなわち、改良型基板1300は、多結晶シリコンが本質的に部分的変化停止層1308を形成する場合に、従来の半導体製造技術と適合させ得る。
【0067】
さらには、多結晶シリコンは、比較的損失フリーの媒体である。
図13を参照すると、これは、部分的変化停止層1308が比較的電気回路1302に近い場合、有利な特徴である。電気回路1302は、よって、部分的変化停止層1308が本質的に多結晶シリコンを含む場合、また、電気回路1302付近の基板材料が多孔質となった場合、比較的損失フリーの媒体の付近にあることになる。
【0068】
部分的変化停止層1308が、本質的に、例えば窒化ケイ素又はポリマー等の電気絶縁材料から形成されるというよりは、本質的に、半導体材料から、特に多結晶シリコンから形成されることに、利点がある。この利点を説明するために、
図13に示した改良型基板1300における部分的変化停止層1308が、電気的に絶縁していると仮定する。さらに、改良型基板1300が電気化学処理を施されている、と仮定し、この処理は、孔が部分的変化停止層1308に比較的近い体積中に形成された段階におけるものである。すると、の基板材料の比較的薄い層のみが、この体積と、電気的に絶縁している部分的変化停止層1308との間に残ることになる。実質上、電流は、残っている非多孔質の基板材料のこの薄い層を通過しなくなる。その結果、本質的に、孔はこの残りの層に形成されなくなる。すなわち、非多孔質の基板材料の比較的損失のある層が、一旦、電気化学処理が実行されると、電気回路1302の付近に残り得る。
【0069】
ここで、
図13に示した改良型基板1300の部分的変化停止層1308が半導電性であると仮定する。さらに、改良型基板1300が、上述のような段階にある電気化学処理を施されており、非多孔質の基板材料の比較的薄い層のみが、部分的変化停止層1308に沿って残っているものと仮定する。部分的変化停止層1308は半導電性なので、電流は、ある程度、残っている非多孔質基板のこの薄い層を通過し続けることになる。その結果、孔の形成は、この残る層において続き得る。したがって、電気回路1302の付近の基板材料は、本質的に、全体が多孔質となり得る。一旦、電気化学処理が実行されると、電気回路1302は、部分的変化停止層1308が電気的に絶縁している場合よりも損失が少ない媒体の付近にあることになり得る。
【0070】
図14は、部分的変化停止層1308を含む改良型基板1300の一部分におけるキャリア濃度であって、これにより、部分的変化停止層1308が本質的に多結晶シリコンから形成される、キャリア濃度を示すグラフである。グラフは、電気絶縁層1305が部分的変化停止層1308とインターフェース連結する面に対する改良型基板1300中の深さを表す横軸を含む。垂直の破線1401は、部分的変化停止層1308が、電気化学処理により部分的に変化させられる、改良型基板1300のバルク部分1309とインターフェース連結する場所の深さを示す。したがって、垂直の破線1401は、グラフを、部分的変化停止層1308を表す左手の部分と、改良型基板1300のバルク部分1309の少なくとも一部分を表す右手の部分とに、分割する。グラフは、キャリア濃度を表す縦軸を含み、このキャリア濃度は、1立法センチメートルあたりのキャリアの数として表示される。
【0071】
グラフは、3つの対の曲線1402、1403、1404を含む。それぞれの対において、実線の曲線は、N型のキャリア、すなわち、電子を表し、その一方、破線の曲線は、P型のキャリア、すなわち正孔を表す。曲線1402の第1の対において、キャリア濃度を深さに対してプロットすると、改良型基板1300のバルク部分1309の抵抗率は、8kΩcmである。曲線1403の第2の対において、キャリア濃度を深さに対してプロットすると、バルク部分1309の抵抗率は、10Ωcmである。曲線1404の第3の対において、キャリア濃度を深さに対してプロットすると、バルク部分1309の抵抗率は、10mΩcmである。それぞれの曲線について、バルク部分1309が曲線のそれぞれの対に対するそれぞれのドーピング濃度でPドープされたケイ素を含むことが、当てはまる。
【0072】
図14のグラフは、多結晶シリコン部分的変化停止層1308が、化学反応物質中のフッ化水素酸への抵抗性を有することを示す。すなわち、フッ化水素酸が多結晶シリコンを著しく腐食するのには、10
12を超えるP型キャリアの濃度を必要とする。
図14のグラフは、P型キャリアの濃度が、多結晶シリコンにおけるこの閾値を十分下回ることを示し、このことは、このグラフの左手部分に表れている。多結晶シリコンが改良型基板1300のバルク部分1309とインターフェース連結されることが、P型キャリアの濃度に、インターフェースにおける多結晶シリコンに無視できる程わずかな深さの範囲だけ、影響を及ぼす。
【0073】
図15は、上述の改良型基板1300の、部分的変化停止層1308の一部分における抵抗率を示すグラフであって、これにより、部分的変化停止層1308は、本質的に多結晶シリコンから形成される。グラフは、
図14のグラフと同様の横軸を含み、電気絶縁層1305が部分的変化停止層1308とインターフェース連結する面に対する改良型基板1300中の深さを表している。同様に、垂直の破線1501は、部分的変化停止層1308が、改良型基板1300のバルク部分1309とインターフェース連結する場所の深さを示す。垂直の破線1501は、グラフを、ここでも、部分的変化停止層1308を表す左手の部分と、
図14に示したバルク部分1309の同じ部分を表す右手の部分とに、分割する。グラフは、抵抗率を表す縦軸を含み、抵抗率は、Ωcmで表示される。
【0074】
グラフは、3つの曲線1502、1503、1504を含む。第1の曲線1502において、抵抗率を深さに対してプロットし、これによれば、改良型基板1300のバルク部分1309の抵抗率は、8kΩcmである。第2の曲線1503において、抵抗率を深さに対してプロットし、これによれば、バルク部分1309の抵抗率は、10Ωcmである。第3の曲線1504において、抵抗率を深さに対してプロットし、これによれば、バルク部分1309の抵抗率は、10mΩcmである。ここでもまた、それぞれの曲線について、バルク部分1309が曲線のそれぞれの対に対するそれぞれのドーピング濃度でPドープされたケイ素を含むことが、当てはまる。
【0075】
図15のグラフは、多結晶シリコン部分的変化停止層1308における抵抗率が比較的高いことを示す。抵抗率は、少なくとも4kΩcmであり、これは、多結晶シリコン部分的変化停止層1308が比較的損失フリーであることを示唆している。繰り返すが、多結晶シリコンが改良型基板1300のバルク部分1309とインターフェース連結されることは、抵抗率に無視して差し支えない程の影響しか及ぼさない。その影響は、インターフェースにおける多結晶シリコンの、無視して差し支えない程のわずかな深さの範囲に限定される。
【0076】
図16は、電気化学処理を施された改良型基板1600を示す。
図16は、この処理にかけられた改良型基板1600の断面の写真を提示する。処理にかけられた改良型基板1600は、改良型基板1600の、酸化ケイ素絶縁層1602の上部の電気回路1601と、多結晶シリコン部分的変化停止層1603と、残りのバルク部分1604とを備える。バルク部分1604は、本質的に、全体が、多結晶シリコン部分的変化停止層1603のすぐそばまで、多孔質である。その結果、処理にかけられた改良型基板1600は、電気回路1601に対して比較的損失フリーの媒体となる。多結晶シリコン部分的変化停止層1603は、実質上、電気化学処理による影響を受けなかった。写真は、改良型基板1600の多結晶シリコン部分的変化停止層1603と多孔質のバルク部分1604との間に整った平坦なインターフェースがあることを示す。
【0077】
図17は、改良型基板1701を含む基板アセンブリ1700を示す。
図17は、基板アセンブリ1700の概略断面図を提供する。基板アセンブリ1700は、基本的に、別の基板1702が固定された改良型基板1701に対応する。基板アセンブリ1700内の改良型基板1701は、
図13を参照して上述した改良型基板1300と同様とすることができる。他方の基板1702は、電気化学処理後に改良型基板1701に対する機械的な支持を提供し得る。電気化学処理は、例えば、孔が内部に形成されたことで、改良型基板1701を劣化させる場合がある。他方の基板1702は、機械的支持を提供するものだが、支持基板1702としてこの後にふれていく。支持基板1702は、電気化学処理において使用される化学反応物質に対して化学的抵抗性があるべきである。
【0078】
例えば、支持基板1702は、フッ化水素酸に対して比較的抵抗性のあるNドープされたシリコンを含み得る。支持基板1702は、改良型基板1701の後側に露出した区域を残して、そこで改良型基板1701が電気化学処理により部分的に変化させられるオリフィス1703を含む。支持基板1702は、よって、電気化学処理により部分的に変化することになる改良型基板1701における少なくとも1つの区域を確定するマスクとなり得る。支持基板1702は、例えば、接着によって改良型基板1701に固定可能である。
【0079】
図18及び
図19は、代替の改良型基板1800を概略図示している。
図18は、代替の改良型基板1800の概略断面図を提供する。
図19は、代替の改良型基板1800の概略後面図を提供する。
【0080】
以下の点で、代替の改良型基板1800は、
図13に示した改良型基板1300と同様である。代替の改良型基板1800は、電気回路1802を備える前側1801も有する。代替の改良型基板1800の後側1803は、電気回路1802に面する露出区域1804を含む。電極1805が、代替の改良型基板1800の後側1803に配置されている。代替の改良型基板1800は、前側1801に含まれる電気回路1802と、後側1803との間に配置された電気絶縁層1806も含み得る。代替の改良型基板1800は、さらに、電気絶縁部と隣接して、電気絶縁層1806と、後側1803上の露出区域1803との間に配置された部分的変化停止層1807も含み得る。
【0081】
代替の改良型基板1800は、基板1800の後側1803上の露出区域1804に電気化学処理セル1808を備える。電気化学処理セル1808は、代替の改良型基板1800の後側1803上の電極1804の周りに配置されたトレンチ形状の空洞1809の組を含む。トレンチ1809は、例えば、シリコン深掘りエッチング(DRIE)と言われる技術により形成可能である。トレンチ1809を形成するための別の技術は、ミクロ機械加工及びレーザー彫刻を必要とする場合がある。
【0082】
この実施形態では、代替の改良型基板1800の後側1803は、犠牲誘電層1810を含む。犠牲誘電層1810は、例えば、窒化ケイ素を含み得る。後側1803から見ると、犠牲誘電層1810は、電極1804が一部をなす金属層1811により覆われている。トレンチ1809を形成するために、開口部を、最初に、金属層1811と、犠牲誘電層1810とに、従来のフォトリソグラフィー技術により、また、例えば、従来の湿式エッチング及びプラズマエッチング等のエッチング技術により作り出すことができる。
【0083】
電気化学処理において、代替の改良型基板1800は、電気化学処理装置に結合することができ、当該装置は、上に提示した電気化学処理装置の任意のものと同様であってよい。電気化学処理装置は、よって、化学反応物質を収容する容器と、化学反応物質中の電極配列とを含み得る。電圧は、次いで、電極配列と、電気化学処理セル1808の電極1805との間にかけることができる。
【0084】
化学反応物質が、トレンチ1809に入り得る。電圧がかかると、トレンチ1809と、電気化学処理セル1808の電極1805との間を電流が横方向に流れることになる。一旦、電気化学処理が行われると、犠牲誘電層1810と金属層1811を除去することができる。
【0085】
代替の改良型基板1800は、
図18及び
図19を参照して上述した電気化学処理セル1808と同様の複数の電気化学処理セルを含み得る。電気化学処理セルは、ハチの巣状の構造を形成するように構成し得る。
【0086】
図20は、電気化学処理を施された基板2001を含む集積回路デバイス2000の概略を図示する。
図20は、集積回路デバイス2000の概略図を提供する。集積回路デバイス2000の基板2001は、例えば、上述の例示的方法が適用された、上述の基板の任意の1つであり得る。基板2001は、基板2001を保護するパッケージ2002内に収容し得る。パッケージ2002は、それぞれの外部電気接点を含み得、外部電気接点は、基板2001のそれぞれのコンタクトパッドに電気的に結合し得る。コンタクトパッドは、内部に含まれる電気回路のように基板2001の前側に配置可能である。
[留意事項]
【0087】
図面を参照して上述した実施形態は、図示目的で提示している。本発明は、多数の異なる方法で実施可能である。これを図示するために、いくつかの代替物を簡単に示す。
【0088】
本発明は、電気化学処理により基板を部分的に変化させる必要のある多数のタイプの製品又は方法に適用し得る。提示した実施形態において、基板は、孔を基板に形成することにより部分的に変化する。他の実施形態において、異なるタイプの部分的変化を、例えば基板材料を局所的に除去する等で、達成し得る。さらに、提示した実施形態において、半導体基板にふれている。他の実施形態において、異なるタイプの基板を、電気化学処理により部分的に変化させることができる。
【0089】
「基板」という用語は、広い意味で理解すべきである。この用語には、電気回路のための支持を形成し得る任意の実在物を含み得る。基板は、モノリシックの実在物であってよいが、例えば、
図17に図示した基板アセンブリ1700等の種々の実在物のアセンブリでもよい。「電気回路」という用語は、広い意味で理解すべきである。この用語は、例えば、微小電気機械システム(MEMS)、伝送線路、電気接続等、電気量を要する機能を有する任意の実在物を含んでいてもよい。その上、本発明の実施形態において、電気回路は、全体が基板の上又は前側に位置するというよりは、少なくとも一部分が基板内に含まれ得る。
【0090】
電位を、基板の後側の露出区域に横方向にかける種々の異なる方法がある。提示した実施形態において、基板の後側は、電極を含む。他の実施形態において、基板の後側の電極は、例えば、化学反応物質中において逆極性の電極が使用されているため、必要ではない場合がある。
【0091】
部分的変化停止層を含む基板は、必ずしも、上述の、電位が横方向にかけられて電流が横方向に生じる、電気化学処理を必要としない。基本的には、部分的変化停止層を含む基板に、電位が横断方向にかけられて電流が横断方向に流れる従来の電気化学処理を施してもよい。重要なことは、部分的変化停止層が、電気回路を含む前側と、化学反応物質と少なくとも部分的に接触している後側との間の基板に配置されることである。例えば、
図13に図示した改良型基板1300は、このような従来の電気化学処理を可能とするように以下のように変更可能である。少なくとも1つの電気接点を、改良型基板1300の前側1301と、バルク部分1309との間に設ける。
【0092】
一般に、本発明を実施する多数の異なる方法があり、これにより、実施が異なると、トポロジーが異なってくる。所定のいかなるトポロジーでも、単一の実在物が、いくつかの機能を実施可能であり、またはいくつかの実在物が、単一の機能をともに実施し得る。この点で、図面は、非常に図式的である。
【0093】
上に述べてきたことは、図面を参照して説明してきた実施形態が、本発明を、限定するというよりは説明していることを明らかにしている。本発明は、添付の特許請求の範囲内の多数の代替方法で実施可能である。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内のすべての変更は、その範囲内に含まれることとなる。ある請求項のいかなる参照符号も、その請求項を限定するものと解釈すべきではない。請求項の中の「備える(comprise)」という動詞は、その請求項に挙げられた以外の他の要素又はステップの存在を除外しない。同じことが、「含む(include)」及び「含有する(contain)」等の同様の動詞に当てはまる。製品に関する請求項の中の単数形の要素への言及は、その製品が複数のこのような要素を含み得ることを除外しない。同様に、方法に関する請求項の中の単数形のステップへの言及は、その方法が複数のこのようなステップを含み得ることを除外しない。それぞれの従属請求項が追加の特徴をそれぞれ定義するという単なる事実は、その請求項に反映される特徴以外の追加の特徴の組み合わせを除外しない。