(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】着座型運動装置
(51)【国際特許分類】
A63B 23/00 20060101AFI20231204BHJP
A63B 22/16 20060101ALI20231204BHJP
A63B 23/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A63B23/00 F
A63B22/16
A63B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2021015965
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】592009214
【氏名又は名称】大東電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 雄翔
(72)【発明者】
【氏名】清水 新策
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3127376(JP,U)
【文献】特開2009-172137(JP,A)
【文献】特開2020-039797(JP,A)
【文献】特開2005-296625(JP,A)
【文献】国際公開第2006/027822(WO,A1)
【文献】特許第6389427(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座可能な座部と、
前記座部を下方から支持する支持部材と、
前記座部の下方に配備され且つ、前記支持部材を往復揺動運動させる揺動機構と、
前記揺動機構を配備すると共に、床面上に載置可能な基盤体と、を有し、
前記座部と前記支持部材との間には、
コイルバネが設けられて
おり、
前記コイルバネは、前記座部の前側と後側に配備されていて、前記座部の後側に配備された前記コイルバネは、前側に配備された前記コイルバネのばね定数kより高いばね定数k’のものを用いる
ことを特徴とする着座型運動装置。
【請求項2】
前記
コイルバネは、前記支持部材の往復揺動運動に対して位相差をもって前記座部を往復揺動運動させる構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の着座型運動装置。
【請求項3】
前記
コイルバネは、前記支持部材の往復揺動運動に対して揺動幅を大きくして前記座部を往復揺動運動させる構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の着座型運動装置。
【請求項4】
前記座部は、前側が低くなるように、傾斜して配備されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の着座型運動装置。
【請求項5】
前記揺動機構は、軸心が水平で且つ左右方向を向くように配備された回転軸と、前記回転軸を回転駆動させる駆動部と、前記支持部材の基端側を貫通するように設けられていて、前記回転軸の回転を前後左右の往復揺動運動に変換して、前記支持部材を揺動させる揺動変換部と、を有している
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の着座型運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に座った使用者に対し、腰捻り運動や、腿及びふくらはぎなどの脚部に負荷をかけて筋力を向上させる運動を付与する着座型運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ダイエットや筋力トレーニングなどの健康増進に関心が集まってきている。その関心に応えるため、特許文献1に一例が示されているように、使用者が着座した座部を揺動させ、揺動する座部に対して使用者が姿勢を保とうとして腰を捻じったり、腿及びふくらはぎなどの脚部を利用してバランス運動を行うことで、腹部(体幹)や脚部の筋力を向上させる運動を付与する着座型運動装置(バランス運動装置)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されている運動装置は、使用者に対して、バランス運動などを十分に付与することができ、筋力向上などの様々な効果を期待することができるものである。
しかしながら、近年では、バランス運動などトレーニングに関する要望や関心は、多種多様となっている。例えば、「バランス運動などが行える揺動運動装置において、大きな捻り運動(大きくバランスを崩すような揺動動作)を行うことができるようにして欲しい」といった要望が使用者から挙がってきている。すなわち、近年では、腹部(体幹)や脚部の筋力をより向上させるため、筋肉に対する強度が強くなるものに関心が集まってきている。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、前後左右に揺動する座部の揺動範囲を大きくすることで、座部に座った使用者に対し、腰捻り運動や、腿及びふくらはぎなどの脚部に負荷をかけて筋力を向上させる運動を付与し、使用者に対して効果的なトレーニングを行うことを可能とする着座型運動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる着座型運動装置は、使用者が着座可能な座部と、前記座部を下方から支持する支持部材と、前記座部の下方に配備され且つ、前記支持部材を往復揺動運動させる揺動機構と、前記揺動機構を配備すると共に、床面上に載置可能な基盤体と、を有し、前記座部と前記支持部材との間には、コイルバネが設けられており、前記コイルバネは、前記座部の前側と後側に配備されていて、前記座部の後側に配備された前記コイルバネは、前側に配備された前記コイルバネのばね定数kより高いばね定数k’のものを用いることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記コイルバネは、前記支持部材の往復揺動運動に対して位相差をもって前記座部を往復揺動運動させる構成とされているとよい。
好ましくは、前記コイルバネは、前記支持部材の往復揺動運動に対して揺動幅を大きくして前記座部を往復揺動運動させる構成とされているとよい。
【0008】
好ましくは、前記座部は、前側が低くなるように、傾斜して配備されているとよい。
好ましくは、前記揺動機構は、軸心が水平で且つ左右方向を向くように配備された回転軸と、前記回転軸を回転駆動させる駆動部と、前記支持部材の基端側を貫通するように設けられていて、前記回転軸の回転を前後左右の往復揺動運動に変換して、前記支持部材を揺動させる揺動変換部と、を有しているとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の着座型運動装置によれば、前後左右に揺動する座部の揺動範囲を大きくするこ
とで、座部に座った使用者に対し、腰捻り運動や、腿及びふくらはぎなどの脚部に負荷をかけて筋力を向上させる運動を付与し、使用者に対して効果的なトレーニングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の着座型運動装置の概略を示す前方斜視図である。
【
図2】本発明の着座型運動装置の内部構造を示す前方斜視図である。
【
図3】本発明の着座型運動装置の内部構造を示す正面図である。
【
図4】本発明の着座型運動装置の使用態様を示す側面図である。
【
図5】本発明の着座型運動装置の揺動動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる着座型運動装置1の実施形態を、
図1~
図5などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。また、図面に関して、見やすくするため、一部を省略して描いているものもある。
また、適宜、図面内に説明のための方向を図示しており、座部2に着座して着座型運動装置1を使用する使用者Mから見た前後方向、左右方向、上下方向と一致する。
【0012】
本実施形態においては、腿T(太腿)~ふくらはぎC~足部Fにかけての部位を脚部L(下肢)と呼ぶこととする。また、本明細書においては、人間(使用者M)の脚部Lのうち、膝より上の部分を「腿T」と言うものとし、膝下であって且つくるぶし(足首)より上の部分を「ふくらはぎC」と言うものとし、くるぶしより下であって且つかかとから足先までの部分を「足部F」と言うものとする(
図4を参照)。
【0013】
図1~
図5に示すように、本発明の着座型運動装置1(着座型バランス運動装置)は、例えば、床面Rなどの平らで安定した平面上に設置され、使用者Mの腹部Aに対して捻り動作を付与したり、腿TやふくらはぎCなどの脚部Fに対して負荷をかけたりするものである。
すなわち、本発明の着座型運動装置1は、揺動機構4により揺れて不安定な座部2上で、姿勢が崩れそうになる使用者Mが身体(腰部など)を捻ったり足部F(脚部L)を踏ん張らせたりして、バランスをとって自らの姿勢を維持することで、腹部A周りの筋肉(腹筋、腹斜筋等)やインナーマッスル(体幹)などを鍛え、筋力トレーニングを行うことができるものである。
【0014】
本実施形態の着座型運動装置1は、使用者Mが着座可能な座部2(搭乗体)と、座部2を下方から支持する支持部材3と、座部2の下方に配備され且つ、支持部材3を前後左右に往復揺動運動させる揺動機構4と、揺動機構4を配備すると共に、床面R上に載置可能な基盤体5と、を有している。さらに、着座型運動装置1は、座部2と支持部材3との間に、弾性部材6を設けている。
【0015】
図1~
図3などに示すように、基盤体5は、平面視で略円形の平板であって、その平板上には揺動機構4と、その揺動機構4を制御する制御部7などが設置されている。その基盤体5上には、揺動機構4が取り付けられる支持部8が設けられている。また、基盤体5の底面(下面)には、床面Rなどの上に安定して載置可能な脚部9が設けられている。なお、この基盤体5の構造は限定されるものではなく、装置稼働中においても床面R上で安定して支持できる構造であればよい。
【0016】
基盤体5には、カバー部材10が取り付けられている。カバー部材10は、筒形状に形成された壁部材である。カバー部材10は、基盤体5の縁から揺動機構4を覆うように立設されている。つまり、揺動機構4は、カバー部材10内に収容されている。
また、座部2の下側とカバー部材10の上側との間には、内張材11が設けられている。なお、スポンジ体を内挿した内張材11としていてもよい。このような内張材11により、使用者Mの手などが装置内部に入り込めなくなり、揺動する座部2による手の挟み込みを防止することができる。
【0017】
揺動機構4は、支持部材3を前後左右に往復揺動運動させることにより、その支持部材3が平面視で略8の字を描くように上下方向を向く軸回りに回転することで、使用者Mの
身体を捻る捻り動作を発生させる。揺動機構4は、基盤体5上に配備され、支持部8により支持されている。
揺動機構4は、軸心が水平で且つ左右方向を向くように配備された回転軸12と、その回転軸12を回転駆動させる駆動部13と、支持部材3の基端側を貫通するように設けられていて、回転軸12の回転を前後左右の往復揺動運動に変換して、支持部材3を揺動させる揺動変換部14と、を有している。
【0018】
回転軸12は、支持部材3の基端側を左右方向に亘って貫通するように設けられている。また、回転軸12は、基盤体5上に設けられた支持部8に、軸心が左右方向に向くように架設されている。詳しくは、回転軸12の右端は、基盤体5上に設けられた支持部8に、ベアリング15を介して回転自在に支持されている。一方、回転軸12の左端は、基盤体5上に設けられた駆動部13のギアケース17内に挿入され且つ、ベアリングを介して回転自在に支持されている。なお、回転軸12(支持部8)の後方には、揺動機構4を制御する制御部7が配備されている。
【0019】
駆動部13は、回転駆動力を出力する駆動モータ16と、所定の速度に減速するギアケース17と、を有している。駆動モータ16は、回転軸12の後側に備えられていて、出力軸は前方を向いて配備されている。駆動モータ16の出力軸は、前側に設けられたギアケース17に挿入されている。
ギアケース17は、所定の速度に減速するため、複数のギアが収容されている。ギアケース17は、駆動モータ16の出力軸より入力された回転駆動力を、複数のギアで減速して回転軸12に出力する。すなわち、駆動モータ16は、ギアケース17を介して回転軸12と繋がっている。
【0020】
揺動変換部14は、回転軸12からの回転駆動力を往復揺動運動に変換して、支持部材3により座部2に伝達して前後左右に往復揺動運動させる。
揺動変換部14は、回転軸12に固定され、その回転軸12と一体回転する回転ボス部18と、支持部材3(揺動伝達部材)の基端に設けられていて、回転ボス部材18の外周縁に嵌り込む環状嵌合部19と、支持部材3が回転軸12との同伴回転することを規制する回動規制部20と、を有している。
【0021】
回転ボス部材18は、円筒状の部材であり、回転軸12に外嵌して取り付けられている。回転ボス部材18は、回転軸12の回転と共に回転する。回転ボス部材18の外周面には、回転軸12に対して傾斜状のカム面21が設けられている。回転ボス部材18の軸心方向は、回転軸12の軸心方向に対して交差する方向を向いているため、回転軸12の回転に対して回転ボス部材18は傾斜回転及び偏心回転する。この傾斜カム面21の外側には、環状嵌合部19が外嵌している。
【0022】
環状嵌合部19は、後述する支持部材3の基端側に形成されている。環状嵌合部19は、開口を有しており、その開口の内径は回転ボス部材18(傾斜カム面21)の外径とほぼ同じ径とされている。そのため、環状嵌合部19は、回転ボス部材18を相対回転自在な状態でベアリングを介して外嵌する。また、環状嵌合部19には、回転軸12が貫通して配備される。
【0023】
傾斜カム面21を有する回転ボス部材18と、それに外嵌する環状嵌合部19が、回転軸12の回転を傾斜回転及び偏心回転に変換することにより、支持部材3の往復揺動運動(平面視で略8の字を描く往復揺動運動)が実現される。
回動規制部20は、環状嵌合部19が回転ボス材18に対して供回りすることを規制する。この回動規制部20は、回転軸12より下側に設けられている。回動規制部20は、下方を向く規制ピン22と、その規制ピン22が摺動自在に嵌り込む規制溝23と、を有している。
【0024】
規制ピン22は、円柱状の突起とされ、支持部材3の基端側(環状嵌合部19の下側)から、下方向に突設されている。また、規制溝23は、左右方向に長い溝とされていて、基盤体5に設けられている。この規制溝23は、規制ピン22の対面する下方の位置に設けられている。規制溝23は、規制ピン22が左右方向に摺動自在に、差し込むように挿入される。
【0025】
さて、環状嵌合部19は、支持部材3の基端側に設けられている。
支持部材3(ベース部材)は、揺動対象である座部2に対して、揺動変換部14で変換された左右方向の往復揺動運動を伝達する揺動伝達部材である。すなわち、本実施形態においては、支持部材3が揺動伝達部材であり、揺動対象が座部2である。支持部材3は、座部2を下方から支持する。この支持部材3は、座部2に搭乗した使用者Mによる荷重(体重)に耐え得る十分な強度を有している。
【0026】
ベース部材3は、弾性部材6(詳細は後述)を介して座部2が取り付けられる載置部24と、その載置部24から下方に延設された延設部25と、を有している。
載置部24は、水平方向に沿うように配備された平板状(本実施形態では円板状)の部材である。載置部24には、弾性部材6(本実施形態ではコイルバネ6)の下側が嵌り込むことで、弾性部材6を固定する凹部3aが設けられている。
【0027】
延設部25は、正面視で、載置部24の中央であって、下面から下方に向かって延びるように形成された部材である。また、延設部25は、側面視で、下端(基端)から上端(載置部24側)に向かって広がる拡張形状となっている。
つまり、延設部25は、左右方向に厚みがあり、前後方向において下端側の幅より上端側の幅が広い、側面視で略逆三角形状の部材である。すなわち、ベース部材3は、正面視で、T字形状に形成された部材である。なお、ベース部材3については、載置部24と延設部25が一体形成されているとよい。また、載置部24と延設部25からなるベース部材3の高さは、弾性部材6が配備されるため、低いものとなっている。
【0028】
この延設部25には、回転ボス部材18を外嵌する環状嵌合部19が設けられている。また、延設部25の下端には、回動規制部20を構成する規制ピン22が設けられている。つまり、ベース部材3の下端(基端)側には、回転軸12からの回転駆動力を往復揺動運動に変換する揺動変換部14が配備されている。
図1~
図5などに示すように、載置部24と延設部25からなるベース部材3の上方には、弾性部材6を介して、使用者Mが着座することが可能な座部2が配設されている。
【0029】
図1~
図5などに示すように、弾性部材6は、載置部24上に配備され、座部2を下方から支持する。弾性部材6は、上方において、座部2を浮遊させるような状態で支持するものともいえる。
弾性部材6は、ベース部材3の往復揺動運動に対して、位相差をもって座部2を往復揺動運動させる構成とされている。また、弾性部材6は、ベース部材3の往復揺動運動に対して、揺動幅を大きくして座部2を往復揺動運動させる構成とされている。
【0030】
すなわち、弾性部材6は、ベース部材3の往復揺動運動に対して、一定時間遅れて座部2を往復揺動運動させるものである。
図3に示すように、例えば、往復揺動運動時において、ベース部材3が右方向から左方向へ反転しても(図面中の細線矢印)、座部2は弾性部材6により、右方向へより大きく揺動する(図面中の太線矢印)。その後、座部2は遅れて右方向から左方向へ反転することとなる。
【0031】
なお、弾性部材6について、ベース部材3の往復揺動運動に対して、先行して座部2を往復揺動運動させるものであってもよい。
本実施形態では、弾性部材6は、コイルバネを採用している。コイルバネ6は、座部2の下方において、前側と後側に配備されている。
詳しくは、コイルバネ6は、載置部24上において、前側に左右等間隔に2個、後側に左右等間隔に2個配備されている。すなわち、コイルバネ6は、ベース部材3(載置部24)の上面に、前後左右均等で且つ略四隅に配置されるとともに、その四隅中央に一つ配備されている。つまり、コイルバネ6は、等間隔に5個配備されている。
【0032】
複数配備されたコイルバネ6のうち、座部2の後側に配備されたコイルバネ6bは、前側に配備されたコイルバネ6aのばね定数kより高いばね定数k’のものを用いている。つまり、後側のバネ6bのばね定数k’(>k)に上げる。
後側のコイルバネ6bの硬さを、前側のコイルバネ6aの硬さより硬めのもの(k’>k)とすることで、座部2後側が沈みにくくなり、使用者Mが後方へ転倒してしまうこと
を防止する。
【0033】
また、後側のコイルバネ6bを、前側のコイルバネ6aより硬いものにすることで、座部2に着座した使用者Mが前側に押し出されるような状態になり、足部F(脚部L)を踏ん張らせて、バランスをとって自らの姿勢を維持することで、腹部A周りの筋肉(腹筋、腹斜筋等)、インナーマッスル(体幹)、脚部L(腿T、ふくらはぎC等)などに負荷をかけて鍛え、筋力トレーニングを行うことができる。
【0034】
また、座部2の後側に配備されたコイルバネ6bの長さを、前側に配備されたコイルバネ6aより長いものを用いるようにしてもよい。つまり、コイルバネ6bを長いものとすることで、座部2の後側が高くなるように傾斜して配備されることにより、使用者Mの後方への転倒防止に寄与する。
なお、コイルバネ6のばね定数や長さなどについては、使用者Mへの負荷を与える度合いにより決定してもよい。また、コイルバネ6について5個としたが、この個数に限定されない。
【0035】
座部2は、水平方向に沿うように配備された平板状(本実施形態では円板形状)の部材である。座部2は、載置部24より広く且つ、使用者Mが着座できる広さとされている。なお、本実施形態の座部2について円板形状(楕円形状)としたが、この形状に限定されない。例えば、座部2を平面視で略矩形状などとしてもよい。
また、座部2には、コイルバネ6の上側が嵌り込むことで、コイルバネ6を固定する凹部2aが設けられている。
【0036】
図4などに示すように、座部2は、前側が低くなるように、傾斜して配備されている(例えば、角度α°)。この座部2の傾斜配置(角度α°)に関しては、転倒の可能性や筋肉に与える負荷などを考慮して任意に設定することができる。
座部2を前方に傾斜させることで、座部2後側が跳ね上がるような状態となり、使用者Mが後方へ転倒してしまうことを防止する。また、座部2を前方に傾斜させることで、座部2に着座した使用者Mが前側に押し出されるような状態になり、足部F(脚部L)を踏ん張らせて、バランスをとって自らの姿勢を維持することで、腹部A周りの筋肉(腹筋、腹斜筋等)、インナーマッスル(体幹)、脚部L(腿T、ふくらはぎC等)などに負荷をかけて鍛え、筋力トレーニングを行うことができる。
[使用態様]
ここで、本発明の着座型運動装置1の使用態様について述べる。
【0037】
着座型運動装置1を床面Rなど平らで且つ安全な面に設置する。使用者Mは、座部2に着座する(
図4を参照)。着座型運動装置1の下部右側に設けられているスイッチ部26を操作し電源を入れる。
制御部7の指令により、揺動機構4が駆動する。すなわち、駆動部13の駆動モータ16が回転駆動力を出力し、ギアケース17を経て回転軸12に伝達される。回転軸12が回転すると回転ボス材18が回転し、環状嵌合部19内を摺動する。つまり、回転軸12の回転駆動力が、揺動変換部14により左右方向の往復揺動運動に変換される。
【0038】
ベース部材3は、揺動変換部14の変換により、前後左右の往復揺動運動(8の字を描く揺動運動)を行うようになる。
ところが、座部2は、コイルバネ6を介してベース部材3と連結されている。すなわち、座部2は、コイルバネ6により浮遊したような状態で、ベース部材3の上側に配備されている。このような状態で、使用者Mは座部2に着座している。
【0039】
その着座している使用者Mの重みにより、コイルバネ6を介して座部2が下方に押え付けられるような状況となることで、揺動する座部2に慣性が働き、つまりベース部材3の揺動に対して座部2の揺動に時間的なずれが生じ、ベース部材3の揺動が例えば右方向から左方向へ反転しても、コイルバネ6が座部2に連結されているため、座部2はコイルバネ6により、右方向へより大きく揺動する。その後、座部2は遅れて、右方向から左方向へ反転することとなる。
【0040】
すなわち、座部2とベース部材3との間にコイルバネ6が介されていることで、座部2への揺動の伝達にタイムラグが生じることとなり、座部2はより大きな往復揺動運動にな
る。つまり、座部2の動作は、ベース部材3の8の字を描く揺動運動に対して遅れ、且つ大きな8の字を描く揺動運動となり、よりバランスを崩すような動きとなる。
以上により、使用者Mが座部2に座った状態で使用したとき、脚部Lへの運動効果が向上する。具体的に、座部2とベース部材3との間にコイルバネ6を介することで、座部2がトランポリンのマットのように浮遊した状態となり、座部2上で跳ねるような動きをすることができるようになる。
【0041】
使用者Mが座部2の傾斜(揺動)角度を変えながら、トランポリン運動(座部2を跳ねさせるような動作)を行うことで、脚部L(腿T、ふくらはぎC等)などに負荷をかけて鍛え、筋力トレーニングを行うことができる。
例えば、座部2に座って使用者Mが右側に傾くようにした場合、右側の腿TやふくらはぎCなどの脚部L(下肢)への負荷が上がる。また、座部2の高さ位置(座り方など)を変えるようにしても、脚部Lへの負荷が上がるようになる。
【0042】
また、足部Fを前に出した状態(膝を曲げすぎないよう)にして踏ん張るようにすると、腿TやふくらはぎCなどの脚部Lへのトレーニング効果が向上するようになる。
さらに、使用者Mが座部2に座った状態で使用したとき、腹筋や腹斜筋など腹部Aへの運動効果が向上する。具体的に、ベース部材3は揺動機構4によって揺動されるが、座部2はベース部材3に対しコイルバネ6で連結されているため、ベース部材3の左右移動が反転するときに、座部2はベース部材3に対し反転が遅れる。つまり、座部2は、往復揺動運動するときの慣性で揺動方向(前後左右方向)の振幅が大きくなる。そのため、左右の往復揺動による、腹筋や腹斜筋など腹部Aへの運動効果が高くなる。
【0043】
また、座部2は、ベース部材3より大きい8の字を描く揺動運動であるので、上記と同じ効果が前後方向と上下方向の運動においても言える。また、座部2への座り込みの位置や高さ等を変えるようにしても、脚部Lへの負荷が上がるようになる。
つまり、コイルバネ6を介することで、座部2がよりバランスを崩すような揺動運動となり、使用者Mはバランスをとって自らの姿勢を維持することで、より効果的な筋力トレーニングやダイエットを行うことができる。
【0044】
本発明の着座型運動装置1によれば、前後左右に揺動する座部2の揺動範囲を大きくすることで、座部2に座った使用者Mに対し、腰捻り運動や、腿T及びふくらはぎCなどの脚部L(下肢)に負荷をかけて筋力を向上させる運動を付与し、使用者Mに対して効果的なトレーニングを行うことが可能となる。
また、ベース部材3(載置部24)の上で且つ座部2の下方において、コイルバネ6が等間隔で且つ略四隅に配置されているので、使用者Mは安心してバランス運動を行うことができる。
【0045】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【0046】
以上述べた本実施形態の着座型運動装置1の基本構造(揺動機構4など)については、例えば、特開2016-106998号公報、特開2020-039797号公報などを参照するとよい。
【符号の説明】
【0047】
1 着座型運動装置
2 座部
2a 凹部
3 支持部材(ベース部材)
3a 凹部
4 揺動機構
5 基盤体
6 弾性部材(コイルバネ)
6a コイルバネ(前側)
6b コイルバネ(後側)
7 制御部
8 支持部
9 脚部
10 カバー部材
11 内張材
12 回転軸
13 駆動部
14 揺動変換部
15 ベアリング
16 駆動モータ
17 ギアケース
18 回転ボス部材
19 環状嵌合部
20 回動規制部
21 カム面
22 規制ピン
23 規制溝
24 載置部
25 延設部
26 スイッチ部
M 使用者
L 脚部(下肢)
F 足部
C ふくらはぎ
T 腿
A 腹部
R 床面