(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】インターロイキン1βに関連する病態の治療のためのピリジン-スルホンアミド化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20231204BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20231204BHJP
C07D 213/74 20060101ALI20231204BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20231204BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20231204BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231204BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231204BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231204BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231204BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231204BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20231204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231204BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
C07D401/14
C07D213/74
C07D405/14
A61K31/4545
A61K31/496
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/00
A61P19/02
A61P19/06
A61P35/00
A61P37/02
(21)【出願番号】P 2021525717
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2019081410
(87)【国際公開番号】W WO2020099603
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516375012
【氏名又は名称】アリンキー バイオファーマ
【氏名又は名称原語表記】ALLINKY BIOPHARMA
【住所又は居所原語表記】c/Faraday 7,3a plt.,Edificio CLAID(PCM),Campus de Cantoblanca,28049 Madrid(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベガ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】カラスコ エステル
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】カンポス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-レイノ フアン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス フアン ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】メセグエル アンヘル
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/091863(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/024284(WO,A2)
【文献】特表2007-500719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00 -401/14
C07D 213/00 -213/90
C07D 405/00 -405/14
A61K 31/4545
A61K 31/496
A61P 1/16
A61P 11/00
A61P 37/02
A61P 9/00
A61P 19/02
A61P 35/00
A61P 19/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
R
1はC
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルケンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルキンジイル-Y
1-、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロ
ゲンで置換されたC
1~4アルキル、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択される1つ又は2つの置換基で任意に置換された芳香環又は複素芳香環であり、 Y
1はO、S、NH、C(O)、C(O)O、C(O)NH、O(CO)及びNHC(O)からなる群より選択され、
X
1はNH、O又はCH
2であり、
n1は0又は1であり、
X
3は存在しないか、又はNR
yであり、
R
x及びR
yは、独立してC
1~4アルキル、C
2~4アルケニル、C
2~4アルキニル又はHであり、
LはO、S、S(O)、S(O)
2、NH、C(O)又はCH
2であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、独立してN及びCHから選択され、
R
3はH、ハロ
ゲン、C(O)NR
2aR
2b、C(O)OR
2a、OR
2a、NR
2aR
2b、OC(O)R
2a、NR
2aC(O)R
2b、1つ以上のハロ
ゲンで任意に置換されたC
1~4アルキル、1つ以上のハロ
ゲンで任意に置換されたC
2~4アルケニル、及び1つ以上のハロ
ゲンで任意に置換されたC
2~4アルキニルからなる群より選択され、ここで、R
2a及びR
2bは、独立してH、C
1~4アルキル、C
2~4アルケニル及びC
2~4アルキニルからなる群より選択される)の化合物
又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
式Ia:
【化2】
(式中、
R
1がC
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルケンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルキンジイル-Y
1-、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロ
ゲンで置換されたC
1~4アルキル、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択され、
R
2が水素であるか、又は、
R
1がR
2と共に、C
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロ
ゲンで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-及びハロゲンからなる群より選択される1つ若しくは2つの置換基で任意に置換された5員若しくは6員の芳香環、複素芳香環、環若しくは複素環を形成し、
X
1、n1、Y
1、X
3、R
x、R
y、L、Z
1、Z
2、Z
3、R
3は、請求項1に定義されるとおりである)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Y
1がO、S、NH、C(O)及びC(O)NHからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
X
1がNH又はOであり、n1が1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
X
3がNR
yである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
x及びR
yが独立してC
1~4アルキルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
x及びR
yがメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
LがOである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Z
1及びZ
3がCHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
3がH、ハロ
ゲン及びC(O)NH
2からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R
3がCl及びC(O)NH
2からなる群より選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
【化3】
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
医薬品として使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、自己炎症性疾患、心血管疾患、変形性関節症、肺癌又は痛風の治療に使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物又は請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規クラスのピリジン-スルホンアミド化合物及びそれを含む組成物に関する。本発明の化合物及び組成物(医薬組成物等)を、インターロイキン1ベータ(IL-1β)に関連する疾患、例えば炎症性疾患及び線維性疾患の治療における医薬品として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
IL-1は、自己炎症性疾患から関節リウマチまで広範なヒト病理に関与することが示されており、IL-1遮断薬(IL-1Ra、アナキンラ;抗IL-1bモノクローナル抗体(mAb)、カナキヌマブ;及び抗IL-1a、MABp1)は、臨床使用が認可されているか、又はこれらの障害の幾つかにおいて評価されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0003】
IL-1は、以前から炎症及び先天免疫と関連付けられていた。このサイトカインが、種々の微生物又は環境チャレンジに応答した先天免疫及び炎症の形成及び指向において差別的役割を果たすことが現在明らかである。さらに、過去10年間で、IL-1ベータ(IL-1β)の役割についての前臨床研究は、免疫病理、線維性疾患、変性疾患、心血管疾患及び癌におけるその役割を理解するために古典的炎症を超えて拡大している。さらに、IL-1βの遮断の効果についての臨床研究(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)から、10000人を超える患者において、IL-1の遮断がアテローム性動脈硬化症による心血管死亡率だけでなく、肺癌、変形性関節症及び痛風を含む様々な疾患を防ぐことが示されている。この知見は、疾患機序の多様性、更には共通性を明らかにし、IL-1が有望な薬物標的であるだけでなく、炎症及び免疫のパラダイムとなることを示唆している(非特許文献9)。
【0004】
IL-1βの産生及びその後の分泌は、主にtoll様受容体4(TLR4)及びインフラマソームの活性化に依存する。第1段階では、炎症性刺激又は感染、TLR4受容体を介したシグナル伝達がpro-IL-1β産生を誘発する。第2段階では、インフラマソーム活性化カスパーゼ-1が、タンパク質分解によりIL-1βを血流中に放出する。このサイトカインは、数ある重要な機能の中でもT細胞の活性化及び抗原認識に関与する。興味深いことに、IL-1βの産生は、TLR4受容体のシグナル伝達経路内のタンパク質群であるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の作用に依存する。p38、JNK及びERK等のMAPKは、IL-1βの産生に関連する遺伝子プロモーターに結合する核因子を活性化する。このため、MAPKの阻害は、炎症性疾患及び病態の状況でIL-1βの産生を回避するのに有効なアプローチである。
【0005】
IL-1βによって引き起こされる炎症性疾患及び病態の中でも、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び特発性肺線維症(IPF)が非常に重要である。これらの疾患の臨床的必要性は満たされておらず、主に対症療法に焦点を合わせたごく僅かな治療的アプローチしかない。
【0006】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
特に、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、アルコールを殆ど又は全く摂取しない個体におけるアルコール性脂肪性肝疾患の組織学的特徴を有する一般的な肝障害である(非特許文献10、非特許文献11)。NAFLDは、肝臓が主に脂質代謝に関与することから、この臓器でより高頻度の事象である細胞内の脂質の異常貯留(一般に脂肪症と定義される)に起因する。NAFLDは、肝細胞の破壊による肝臓の炎症、脂肪症、壊死及び線維症を特徴とする脂肪肝及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む様々な組織学的形態を有する。
【0007】
肝臓イメージングシステムが、肝臓構造及び脂肪症の存在の評価にも有用である。しかしながら、肝生検が依然として肝線維症の評価のための至適基準であるが、この分析方法は、その侵襲性のためにあらゆる研究で行うことはできない。肝臓生化学及び代謝の非侵襲的評価が、肝疾患の定義に、例えばNAFLD及びNASHにおいて用いられることが多い(非特許文献12、非特許文献13)。血漿を用いて、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、アルカリホスファターゼ(AP)及び/又はガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)等の高レベルの酵素、並びに肝臓起源の他のタンパク質(ハプトグロビン、総ビリルビン、アルファ-2-ミクログロブリン、レジスチン、切断型又は無傷サイトケラチン-18を含む)の存在が、血清グルコース及びインスリン耐性パラメーターに加えて一般に測定される。
【0008】
肝線維性疾患、特にNAFLD及びNASHの効果的な治療の手段は、依然として不十分である。NASHを有する患者の治療は確立されておらず、幾つかの治療選択肢が臨床試験において試験されている(非特許文献13、非特許文献14)。これらの研究は、多くの異なるファミリーの化学化合物(フィブラート、チアゾリジンジオン、ビグアニド、スタチン、カンナビノイド)及び治療標的(核内受容体、アンジオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、HMG-CoA還元酵素)の使用を伴う。
【0009】
c-Jun発現が脂肪症からNASHへの疾患進行と相関することが示されている(非特許文献15)。JNK1ノックアウトマウスが食餌性脂肪性肝炎及び肝線維症に抵抗性を示し、JNK1が慢性炎症を誘導することで肝線維症の発症に寄与することも示されている(非特許文献16)。
【0010】
マウス動物モデルがNASHの前臨床in vivoモデルとして開発されている(非特許文献17)。C57BL/6マウスが、高脂肪食に対して感受性があり、ヒトNASHにおいて観察されるものと同じ症状を多く発現することから最もよく用いられている。ストレプトゾトシンの注射がマウスモデルを高脂肪食に対して感作し、NASHを発症させることが更に知られている。
【0011】
特発性肺線維症(IPF)
特発性肺線維症(IPF)は、慢性炎症及びその後の肺の進行性瘢痕化を特徴とする間質性肺疾患である。間質性肺疾患(ILD)は、様々な程度の炎症及び線維症を特徴とする実質性肺疾患の異質群である。これらの幾つかは、薬物、自己免疫性結合組織疾患、吸入有機抗原に対する過敏性、又はサルコイドーシス等の既知の要因(precipitant)によって二次的に起こり得るが、他の特発性間質性肺炎(IIP)は、特定可能な原因を有しない。特発性肺線維症(IPF)は、避けられない肺機能の低下、進行性呼吸不全及び高い死亡率を伴う慢性の進行性線維症を特徴とするIIPの最も侵攻性の形態の1つである(非特許文献18)。
【0012】
ここ数年で、2つの新規の抗線維化療法剤であるピルフェニドン及びニンテダニブが開発され、IPFを有する多くの患者の治療が提供された。残念なことに、疾患修飾因子としてのそれらのプロファイルは不十分であり、新たな治療法が必要とされている。
【0013】
IL-1βレベルの上昇は、特発性肺線維症(IPF)を患う患者の肺における炎症促進及び線維化促進環境に寄与することが知られている(非特許文献19)。前臨床研究では、肺線維症の動物モデルにより、IL-1βの一時的発現が肺線維症につながる急性肺損傷及び慢性修復を誘導することが示された(非特許文献20、非特許文献21)。さらに、IPFのブレオマイシン誘導性肺損傷モデルにより、肺線維症におけるIL-1βの役割が広く実証された(非特許文献22、非特許文献23)。
【0014】
IPFにおけるMAPKの役割も動物及びヒト研究の焦点であり、活性化MAPKがIPFを有する患者の肺ホモジネートにおいて対照と比較して顕著に増加すると結論付けられている(非特許文献24)。さらに、JNK阻害は、IPFの動物モデルにおいて肺リモデリング及び肺線維症全身性マーカーを低減する(非特許文献25)。IPFにおける研究結果により、IPFの発生及び進行の主要な誘導因子の1つとして活性化MAPK及びその後のIL-1βの産生が指摘される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Dinarello, 2009
【文献】Gabay et al., 2010
【文献】Garlanda et al., 2013
【文献】Udalova et al., 2016
【文献】Aaron et al., 2018
【文献】Trankle CR et al., 2018
【文献】Ridker PM., 2018
【文献】Ridker PM., 2017
【文献】Montovani et al, 2019
【文献】Yeh M et al., 2007
【文献】Marchesini G et al., 2003
【文献】Gressner A et al., 2009, World J Gastroenterol; 15: 2433-2440
【文献】Vuppalanchi R and Chalasani N, 2009, Hepatology; 49: 306-317
【文献】Dowman J. K et al., 2009, Q J Med; 103: 71-83
【文献】Schulien et al, 2019, Cell Death & Differentiation; 26; 1688-1699
【文献】Kodama et al., 2009, Gastroenterology; 137(4); 1467-1477
【文献】Hansen H et al., 2017, Drug Discovery Today, 22: 1707-1718
【文献】Shaney et al., 2018
【文献】Barlo et al., 2011
【文献】Kolb M., 2001
【文献】Gasse P et al., 2011
【文献】Hoshino et al., 2009
【文献】Burgy et al., 2016
【文献】Yoshida et al., 2002
【文献】Van del Velden JL et al., 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
肝臓障害及び他の線維性障害、特に肝線維症及び肺線維症を伴う障害の管理のための新規の治療選択肢の必要性が依然として明らかであり、緊急である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、式I及び/又は式Iaを有する新規クラスの化合物を提供する。該化合物には、その薬学的に許容可能な塩が含まれる。本発明の化合物は、IL-1βの阻害に反応性の疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び特発性肺線維症(IPF)の治療を対象とする。
【0018】
本発明の化合物は、式I:
【化1】
(式中、
R
1はC
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、フルオロ等のハロで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルケンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルキンジイル-Y
1-、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロで置換されたC
1~4アルキル、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択される1つ又は2つの置換基で任意に置換された芳香環系又は複素芳香環系であり、
Y
1はO、S、NH、C(O)、C(O)O、C(O)NH、O(CO)及びNHC(O)からなる群より選択され、
X
1はNH、O又はCH
2であり、
n1は0又は1であり、
X
3は存在しないか、又はNR
yであり、
R
x及びR
yは、独立してC
1~4アルキル、C
2~4アルケニル、C
2~4アルキニル又はH、例えばCH
3又はHであり、
LはO、S、S(O)、S(O)
2、NH、C(O)又はCH
2であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、独立してN及びCHから選択され、
R
3はH、ハロ、C(O)NR
2aR
2b、C(O)OR
2a、OR
2a、NR
2aR
2b、OC(O)R
2a、NR
2aC(O)R
2b、1つ以上のハロで任意に置換されたC
1~4アルキル、1つ以上のハロで任意に置換されたC
2~4アルケニル、及び1つ以上のハロで任意に置換されたC
2~4アルキニルからなる群より選択され、ここで、R
2a及びR
2bは、独立してH、C
1~4アルキル、C
2~4アルケニル及びC
2~4アルキニルからなる群より選択される)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0019】
更なる態様では、本発明は、本発明による化合物と、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体とを含む医薬組成物に関する。
【0020】
他の態様では、本発明は、医薬品として使用される、本発明による化合物又は本発明による組成物に関する。
【0021】
更に他の態様では、本発明は、IL-1βの阻害に反応性の疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び特発性肺線維症(IPF)の治療に使用される本発明による化合物又は本発明による組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】NAFLD活動性スコア(NAS)に対する化合物5及び化合物7の効果を示す図である。
【
図2】28日間の処理後の血清AST(U/L)レベルを示す図である。
【
図3】肝臓対体重比に対する化合物5及び7の効果を示す図である。
【
図4】ブレオマイシン誘導性IPFの治療における肺ヒドロキシプロリンレベルに対する化合物7の効果を示す図である。
【
図5B】BALF中の各種白血球数(Differential Leukocyte Counts)を示す図である。
【
図6A】H&Eアシュクロフト(Ashcroft)スコアを示す図である。
【
図6B】%コラーゲン比例面積(Collagen Proportion Area)(CPA)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本文脈において、「C1~4アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル等の、炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味することを意図している。
【0024】
同様に、「C2~4アルケニル」という用語は、炭素数2~4であり、二重結合を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を網羅することを意図している。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、及びブテニルである。アルケニルの好ましい例は、ビニル及びアリル、特にアリルである。
【0025】
本文脈において、「C2~4アルキニル」という用語は、炭素数2~4であり、三重結合を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味することを意図している。C2~4アルキニル基の例示的な例としては、アセチレン、プロピニル、ブチニルと並んで、これらの分岐形態が挙げられる。不飽和(三重結合)の位置は、炭素鎖に沿った任意の位置であり得る。当業者に知られているように、「C2~4アルキニル」がジインとなるように、2つ以上の結合が不飽和であってもよい。
【0026】
本明細書では、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード、より詳しくは、フルオロ、クロロ、及びブロモを含む。
【0027】
本文脈において、「芳香環又は芳香環系」という用語は、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラシル、フェナントラシル(phenanthracyl)、ピレニル、ベンゾピレニル、フルオレニル及びキサンテニル等の完全に又は部分的に芳香族の炭素環又は炭素環系を意味することを意図している。
【0028】
「複素芳香環又は複素芳香環系」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子、例えば窒素(=N-又は-NH-)、硫黄及び/又は酸素の原子で置き換えられている完全又は部分的に芳香族の炭素環又は炭素環系を意味することを意図している。かかる複素芳香環又は複素芳香環系の基の例は、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、クマリル、フリル、チエニル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フタラジニル、フタラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、アクリジニル、カルバゾリル、ジベンゾアゼピニル、インドリル、ベンゾピラゾリル、フェノキサゾニル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、及びベンゾジオキソリルである。
【0029】
本文脈において、「複素環又は複素環系」という用語は、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子、例えば窒素(=N-又は-NH-)、硫黄、及び/又は酸素の原子で置き換えられている非芳香族の炭素環又は炭素環系を意味することを意図している。かかる複素環基の例は、イミダゾリジン、ピペラジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジン、ジアゼパン、ジアゾカン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、アジリジン、アジリン、アゼチジン、ピロリン、トロパン、オキサジナン(モルホリン)、アゼピン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、ヘキサヒドロアゼピン、オキサゾラン、オキサゼパン、オキサゾカン、チアゾラン、チアジナン、チアゼパン、チアゾカン、オキサゼタン、ジアゼタン、チアゼタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキセパン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、チエパン、ジチアン、ジチエパン、ジオキサン、ジオキセパン、オキサチアン及びオキサチエパンである。
【0030】
本文脈において、「任意に置換された」という用語は、問題の基が1回以上、好ましくは1回又は2回置換され得ることを意味することを意図している。さらに、「任意に置換された」という用語は、問題の基が非置換であることも意味する場合がある。
【0031】
本発明の化合物は、遊離形態又は薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。本発明の文脈において、「薬学的に許容可能な塩」という用語は塩基又は酸のいずれかと共に形成される塩として理解され、得られる対イオンは本発明の化合物の毒性を大きく増大させない。
【0032】
薬学的に許容可能な塩の例としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩又は臭化水素酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩又はマレイン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、化合物がカルボキシル基等の置換基を有する場合、塩基との塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等、又はカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)が言及され得る。
【0033】
化合物
本発明の化合物は、式I:
【化2】
(式中、
R
1はC
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、フルオロ等のハロで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルケンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルキンジイル-Y
1-、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロで置換されたC
1~4アルキル、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択される1つ又は2つの置換基で任意に置換された芳香環系又は複素芳香環系であり、
Y
1はO、S、NH、C(O)、C(O)O、C(O)NH、O(CO)及びNHC(O)からなる群より選択され、
X
1はNH、O又はCH
2であり、
n1は0又は1であり、
X
3は存在しないか、又はNR
yであり、
R
x及びR
yは、独立してC
1~4アルキル、C
2~4アルケニル、C
2~4アルキニル又はH、例えばCH
3又はHであり、
LはO、S、S(O)、S(O)
2、NH、C(O)又はCH
2であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は、独立してN及びCHから選択され、
R
3はH、ハロ、C(O)NR
2aR
2b、C(O)OR
2a、OR
2a、NR
2aR
2b、OC(O)R
2a、NR
2aC(O)R
2b、1つ以上のハロで任意に置換されたC
1~4アルキル、1つ以上のハロで任意に置換されたC
2~4アルケニル、及び1つ以上のハロで任意に置換されたC
2~4アルキニルからなる群より選択され、ここで、R
2a及びR
2bは、独立してH、C
1~4アルキル、C
2~4アルケニル及びC
2~4アルキニルからなる群より選択される)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0034】
一実施形態では、式Iの化合物は、式Ia:
【化3】
(式中、
R
1がC
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、フルオロ等のハロで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルケンジイル-Y
1-、HO-C
2~4アルキンジイル-Y
1-、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロで置換されたC
1~4アルキル、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択され、
R
2が水素であるか、又は、
R
1がR
2と共に、C
1~4アルキル-Y
1-、C
2~4アルケニル-Y
1-、C
2~4アルキニル-Y
1-、フルオロ等のハロで置換されたC
1~4アルキル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-Y
1-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-Y
1、HO-C
1~4アルカンジイル-、HO-C
2~4アルケンジイル-、HO-C
2~4アルキンジイル-、C
1~4アルキル-C
2~4アルケニル-、C
2~4アルキニル-、ハロで置換されたC
1~4アルキル、ハロで置換されたC
2~4アルケニル-、ハロで置換されたC
2~4アルキニル-、及びハロゲンからなる群より選択される1つ若しくは2つの置換基で任意に置換された5員若しくは6員の芳香環、複素芳香環、環若しくは複素環を形成し、
X
1、n1、Y
1、X
3、R
x、R
y、L、Z
1、Z
2、Z
3、R
3は、式Iの化合物について定義されるとおりである)を有する化合物である。
【0035】
更なる実施形態では、式I及び式Iaの化合物において、X
3がNR
yであり、式II及び式IIa:
【化4】
(X
1、n1、Y
1、R
x、R
y、L、Z
1、Z
2、Z
3、R
1、R
2、R
3は、式I及び式Iaの化合物について定義されるとおりである)の化合物が得られる。
【0036】
更に他の実施形態では、式II及び式IIaの化合物において、R
3がパラ位にあり、式III及び式IIIa:
【化5】
(X
1、n1、Y
1、R
x、R
y、L、Z
1、Z
2、Z
3、R
1、R
2、R
3は、式I及び式Iaの化合物について定義されるとおりである)の化合物が得られる。
【0037】
その他の実施形態では、式III及び式IIIaの化合物において、Z
2がCHであり、式IV及び式IVa:
【化6】
(X
1、n1、Y
1、R
x、R
y、L、Z
1、Z
3、R
1、R
2、R
3は、式I及び式Iaの化合物について定義されるとおりである)の化合物が得られる。
【0038】
本発明による化合物の一実施形態では、Y1はO、S、NH、C(O)及びC(O)NHからなる群より選択される。更なる実施形態では、Y1はO、S及びNHからなる群より選択される。その他の実施形態では、Y1はOである。
【0039】
本発明による化合物の別の実施形態では、X1はNH又はOである。また別の実施形態では、X1はNH又はOであり、n1は1である。
【0040】
本発明による化合物の更なる実施形態では、Rx及びRyは、独立してC1~4アルキルである。その他の実施形態では、Rx及びRyはメチルである。
【0041】
本発明による化合物の一実施形態では、LはO、S及びCH2からなる群より選択される。別の実施形態では、LはO及びCH2からなる群より選択される。更に別の実施形態では、LはOである。
【0042】
本発明による化合物の更なる実施形態では、Z1はCHである。更に他の実施形態では、Z1はCHであり、LはOである。その他の実施形態では、Z1はCHであり、Z2はCHであり、LはOである。
【0043】
本発明による化合物の別の実施形態では、R3はH、ハロ及びC(O)NH2からなる群より選択される。更に別の実施形態では、R3はハロ及びC(O)NH2からなる群より選択される。また別の実施形態では、R3はCl及びC(O)NH2からなる群より選択される。更なる実施形態では、R3はClである。
【0044】
式Ia、式IIa、式IIIa又は式IVaを有する本発明による化合物の一実施形態では、R2はHである。
【0045】
別の実施形態では、式IVaの化合物は、以下の式V:
【化7】
(X
1、Y
1、R
x、R
y、R
1及びR
3は、式I及び式Iaの化合物について定義されるとおりである)を有する。式Vの化合物の更なる実施形態では、X
1はOであり、R
1はC
1~4アルキル-O-であり、R
3はハロ又はC(O)NH
2であり、R
x及びR
yは独立してC
1~4アルキルである。
【0046】
現在好ましい実施形態では、本発明による化合物は、
【化8】
からなる群より選択される。
【0047】
医薬製剤
本発明の化合物は、医薬品としての使用を意図している。本発明の化合物は、原則として、それら自体で適用され得るが、好ましくは薬学的に受容可能な担体と共に製剤化される。薬学的に許容可能な担体は、各投与方法に適した不活性担体であり、従来の薬学的な調製物(錠剤、顆粒、カプセル剤、粉末、溶液、懸濁液、エマルジョン、注射剤、輸液剤等)に製剤化することができる。かかる担体として、例えば、薬学的に許容可能な結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤等が言及され得る。注射液又は輸液として使用する場合、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液を用いて製剤化することができる。
【0048】
本発明の化合物の投与方法は特に限定されず、通常の経口又は非経口(静脈内、筋肉内、皮下、経皮、鼻腔内、経粘膜、経腸等)の投与方法を適用することができる。
【0049】
本発明のテトラヒドロイソキノリン誘導体又はその薬学的に許容可能な塩の投与量は、有効成分として用いられる化合物の効力又は特性に応じて、薬理学的効果を発揮するのに十分な有効量の範囲で任意に設定され得る。投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、又は状態に応じて変動する場合がある。
【0050】
薬学的有用性
本発明の化合物は、IL-1βの阻害に反応性の疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び特発性肺線維症(IPF)の治療を意図している。したがって、一態様では、本発明は、医薬品として使用される本発明による化合物又は組成物に関する。更なる態様では、本発明は、IL-1βの阻害に反応性の疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び特発性肺線維症(IPF)の治療に使用される本発明による化合物又は組成物に関する。一実施形態では、IL-1βの阻害に反応性の疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、特発性肺線維症(IPF)、自己炎症性疾患、心血管疾患、変形性関節症、肺癌及び痛風からなる群より選択される。更なる実施形態では、疾患はNASHである。更に他の実施形態では、疾患はIPFである。
【0051】
X
1がNR
yである化合物の調製
本発明の式II及び式IIaの置換ピリジン-スルホンアミドは概して、スキーム1に概説されているように調製される中間体Cを介して調製される。
【化9】
【0052】
第1の工程では、5,6-ジクロロピリジン-3-スルホンアミドAをアルキル化して中間化合物Bを得て、これを次いでマイクロ波照射下で対応する二環式アミンを用いたバックワルド型(Buchwald-type)反応により化合物Cに変換する。
【化10】
【0053】
Rx、Ry及びR3の同一性に応じて、中間体Cの調製は、スキーム1に記載されているものからの保護/脱保護反応等の追加の合成変換を必要とする場合がある。
【0054】
X1の存在及び/又は同一性に応じて、本発明による化合物はスキーム2b、2c又は2dに従って調製され得る。
【0055】
【化11】
スキーム2b-IIb型化合物の合成
マイクロ波照射下にて150℃での対応するボロン酸を用いた中間化合物CのPd触媒鈴木型反応は、IIb型の化合物をもたらす(化合物1等;Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21(10), 3152-3158と同様の合成手順)。
【0056】
【化12】
スキーム2c-IIc型化合物の合成
強塩基の存在下での40℃での置換アニリンを用いた中間化合物CのPd触媒バックワルド反応により、IIc型の化合物が得られる(化合物2、3、4、6等;Org. Lett. 2011, 13(8), 1984-1987と同様の合成手順)。
【0057】
【化13】
スキーム2d-IId型化合物の合成
IId型の化合物(化合物5、7、8、9、10、12等)は、マイクロ波照射下にて150℃で水素化ナトリウム及び炭酸セシウムの存在下において対応するフェノールを用いた中間体Cのウルマン型反応によって得られる(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135(24), 9213-9219と同様の合成手順)。
【0058】
X3が存在しない化合物の調製
X3が存在しない、本発明の式I及び式Iaの置換ピリジン-スルホンアミドは概して、スキーム3に概説されているように調製される中間体Eを介して調製される。
【0059】
【化14】
スキーム3-化合物Eの合成手順
中間化合物Cの調製と同様であるが、D型化合物、例えば最終化合物11の合成の場合の2,3-ジクロロ-5-(メチルスルホニル)ピリジンを出発物質として用いた手順。
【実施例】
【0060】
実施例1-Rx及びRyがメチルである中間体B:N,N-ジメチル-5,6-ジクロロピリジン-3-スルホンアミドの合成
無水DMF(1ml/当量)中の市販の5,6-ジクロロピリジン-3-スルホンアミドA(1当量)及びK2CO3(2当量)の懸濁液に、DMF(5ml/mmol)中のヨードメタン(2当量)を添加し、得られた混合物を反応が完了するまで室温で撹拌した(一晩、TLC対照)。次いで、溶媒を蒸発させ、酢酸エチルを添加した。有機混合物を水で2回洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の蒸発後に得られた粗生成物は、精製することなく実施例2に使用するのに十分なほど純粋であった(黄色の固体、収率95%)。
【0061】
実施例2-Rx及びRyがメチルであり、Z1、Z2、Z3がCHであり、LがOであり、R3がパラ位のClである中間体C:N,N-ジメチル-5-クロロ-6-(4-(4-クロロフェノキシ)-N-ピペリジニル)-ピリジン-3-スルホンアミドの合成
EtOH(4.8ml/mmol)中の実施例1で得られた化合物(1当量)、市販の4-(4-クロロフェノキシ)ピペリジン塩酸塩(1.2当量)及びTEA(2.2当量)の混合物を、初めに80℃で5分間、続いて120℃で30分間、マイクロ波照射(200W)下で加熱した(HPLC対照)。次いで、溶媒を蒸発させ、酢酸エチルを添加した。有機混合物を水で2回洗浄し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後に得られた粗生成物は、精製することなくその後の実施例に使用するのに十分なほど純粋であった(透明な褐色の固体、収率91%)。
【0062】
実施例3-Rx及びRyがメチルであり、Z1、Z3がCHであり、Z2がNであり、LがOであり、R3がパラ位のC(O)NH2である中間体C:N,N-ジメチル-5-クロロ-6-[4-(5-[2-カルボキサミド-ピリジン]イルオキシ)-N’-ピペリジニル]-ピリジン-3-スルホンアミドの合成
EtOH(4.8ml/mmol)中の実施例1で得られた化合物(1当量)、市販の4-(ピペリジン-4-イルオキシ)ピリジン-2-カルボキサミド(1.2当量)及びTEA(2.2当量)の混合物を、初めに80℃で5分間、続いて120℃で30分間、マイクロ波照射(200W)下で加熱した(HPLC対照)。次いで、溶媒を蒸発させ、酢酸エチルを添加した。有機混合物を水で2回洗浄し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後に得られた粗生成物は、精製することなく次の工程に使用するのに十分なほど純粋であった(透明な白色の固体、収率93%)。
【0063】
実施例4-化合物1の合成
DME(5ml/mmol)中の実施例2で得られた中間体(1当量)、ベンゾ[b]フラン-5-ボロン酸(1.1当量)、炭酸カリウム(1.4当量)及びPd(PhPh3)4(0.1当量)の溶液を、150℃でマイクロ波照射(200W)下にて1時間(又は150℃で一晩)加熱した。次いで、粗混合物をEtOAcで希釈し、セライトプラグに通して濾過し、EtOAc及びMeOHで洗浄し、溶媒を蒸発させた。得られた粗生成物をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル/水)によって精製して、純粋な生成物を得た。白色の泡状物質、全収率45%、HPLC純度98%。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.51 (d, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.33 (s, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.22 (d, 2H), 6.86-6.81 (m, 3H), 4.64 (t, 2H), 4.42-4.38 (m, 2H), 3.61-3.55 (m, 2H), 3.27 (t, 2H), 3.19-3.18 (m, 2H), 2.76 (s, 6H),1.94-1.89 (m, 2H), 1.76-1.70 (m, 2H). C26H29ClN3O4S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 514.1583 (M+1).
【0064】
実施例5-化合物2の合成
磁気撹拌子を備えるスクリューキャップ付試験管に、BrettPhosプレ触媒(4mol%)、2,3-ジヒドロベンゾ[b]フラン-5-アミン(1当量)及び実施例2で得られた中間化合物(1当量)を投入した。バイアルをテフロンスクリューキャップで密閉し、排気し、窒素を再充填した。この手順を更に2回繰り返した。次いで、LiHMDS(THF中1M、2.5当量)を添加した。反応混合物を反応が完了するまで40℃で撹拌した(2.5時間)。溶液を室温まで冷却し、飽和NH4Cl水溶液(5mL)の添加によってクエンチした後、EtOAcで希釈した。有機相を分離し、水相を再度EtOAcで抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗物質(crude)をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル/水)によって精製して、不純な生成物(115.7mg)を得て、これを同じシステムによって再び精製した。褐色の固体、全収率6%、HPLC純度96%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.34 (s, 1H), 7,96 (bs, 1H), 7.24 (dd, 2H), 7.03 (s,1H), 6.96 (dd, 1H), 6.85-6.79 (m, 3H), 5.88 (s, 1H), 4.63 (t, 2H), 4.48 (m, 1H), 3.76-3.73 (m, 2H), 3.45 (m, 2H), 3.23 (t, 2H), 2.80 (s, 6H),1.99-1.94 (m, 2H), 1.82 (m, 2H). C26H30ClN4O4S,
MS(エレクトロスプレー):m/z= 529.1677 (M+1).
【0065】
実施例6-化合物5の合成
2,3-ジヒドロ-5-ヒドロキシベンゾ[b]フラン(1.1当量)及び炭酸セシウム(1.2当量)を無水DMF(1.2ml/mmol)に取り、無溶媒の(neat)水素化ナトリウム(1.1当量)で処理した。水素発生が停止した後に、実施例2で得られた中間化合物(1当量)を添加し、反応物を、反応が更に生じなくなるまで密閉圧力管内(一晩)又はマイクロ波照射(200W)下(2時間)にて150℃で撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を酢酸エチル(6ml/mmol)及び水(6ml/mmol)で希釈した。水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を2N NaOHで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル-水勾配)によって精製して不純な生成物を得て、これを分取クロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル 4:1)によって精製した。透明な油、全収率12%、HPLC純度100%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.30 (dd, 1H), 7.247-7.22 (m, 3H), 6.86-6.81 (m, 3H), 6.75-6.70 (m, 2H), 4.61 (t, 2H), 4.50-4.47 (m, 1H), 4.00-3.97 (m, 2H), 3.66-3.63 (m, 2H), 3.21 (t, 2H), 2.67 (s, 6H), 2-06-1.99 (m, 2H), 1.90-1.84 (m, 2H). C26H28ClN3O5S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 530.1550 (M+1).
【0066】
実施例7-化合物7の合成
4-エトキシフェノール(1.1当量)及び炭酸セシウム(1.2当量)を無水DMF(1.2ml/mmol)に取り、無溶媒の水素化ナトリウム(1.1当量)で処理した。水素発生が停止した後に、実施例2で得られた中間体(1当量)を添加し、反応物を、反応が更に生じなくなるまで密閉圧力管内(一晩)又はマイクロ波照射(200W)下(2時間)にて150℃で撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を酢酸エチル(6ml/mmol)及び水(6ml/mmol)で希釈した。水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を2N NaOHで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル-水勾配)によって精製して、未反応の出発物質及び純粋な生成物を回収した。透明な褐色の固体、収率41%、HPLC純度100%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.31 (d, 1H), 7.26-7.23 (m, 4H), 6.88-6.84 (m, 5H), 4.51-4.46 (1H, m), 4.05-4.00 (m, 4H), 3.66-3.59 (m, 2H), 2.67 (s, 6H), 2.00-1.86 (m, 2H), 1.86-1.83 (m, 2H), .43 (t, 3H). C26H30ClO5S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 532.1680 (M+1).
【0067】
実施例8-化合物8の合成
4-エトキシフェノール(1.1当量)及び炭酸セシウム(1.2当量)を無水DMF(1.2ml/mmol)に取り、無溶媒の水素化ナトリウム(1.1当量)で処理した。水素発生が停止した後に、実施例3で得られた中間体(1当量)を添加し、反応物を、反応が更に生じなくなるまで密閉圧力管内(一晩)又はマイクロ波照射(200W)下(3時間)にて150℃で撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を酢酸エチル(6ml/mmol)及び水(6ml/mmol)で希釈した。水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を2N NaOHで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル-水勾配)によって精製して、未反応の出発物質及び純粋な生成物を回収した。透明な褐色の固体、収率16%、HPLC純度100%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.38 (d, 1H), 8.34 (s, 1H), 6.98-6.97 (m, 1H), 6.89 (s, 1H), 5.59 (bs, 1H), 4.79-4.75 (m, 1H), 4.06-3.63 (m, 4H), 3.69-3.63 (m, 2H), 2.68 (s, 6H), 2-10-2.06 (m, 2H), 1.92-1.88 (m, 2H), 1.44 (t, 3H). C26H31N5O6S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 542.2084 (M+1).
【0068】
実施例9-化合物12の合成
2,3-ジヒドロ-5-ヒドロキシベンゾ[b]フラン(1.1当量)及び炭酸セシウム(1.2当量)を無水DMF(1.2ml/mmol)に取り、無溶媒の水素化ナトリウム(1.1当量)で処理した。水素発生が停止した後に、実施例3で得られた中間体(1当量)を添加し、反応物を、反応が更に生じなくなるまで密閉圧力管内(一晩)又はマイクロ波照射(200W)下(2.5時間)にて150℃で撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、粗生成物を酢酸エチル(6ml/mmol)及び水(6ml/mmol)で希釈した。水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機層を2N NaOHで洗浄し、乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をIsolera Biotageシステム(C18、アセトニトリル-水勾配)によって精製して、未反応の出発物質及び純粋な生成物を回収した。白色の泡状物質、収率13%、HPLC純度98%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.38 (d, 1H), 8.31 (d, 1H), 7.24 (d, 1H), 6.97-6.96 (m, 1H), 6.82 (d, 1H), 6.76-6.69 (m, 2H), 5.63 (bs, 1H), 4.79-4.76 (m, 2H), 4.62 (t, 2H), 4.02-4.00 (m, 2H), 3.68-3.63 (m, 2H), 3.22 (t, 2H), 2.68 (s, 6H), 2.12-2.08 (m, 2H), 1.93-1.89 (m, 2H). C26H29N5O6S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 540.1944 (M+1).
【0069】
実施例10-Rxがメチルであり、Z1、Z2、Z3がCHであり、LがOであり、R3がパラ位のClである中間体E:3-クロロ-2-[4-(4-クロロフェノキシ)-N-ピペリジニル]-5-メチルスルホニル-ピリジンの合成
実施例2による中間化合物の合成と同様であるが、市販の2,3-ジクロロ-5-(メチルスルホニル)ピリジンを出発物質として用いた手順。白色の固体、全収率96%。
【0070】
実施例11-化合物11の合成
実施例6~9における化合物5、7、8及び12の合成と同様であるが、実施例10で得られた中間化合物を出発物質として用いた手順。6時間。透明な油、全収率16%、HPLC純度95%(254nm)。
1HNMR (CDCl3, 400 MHz): δ(ppm) = 8.45 (s, 1H), 7.35 (d, 1H),7.26 (dd, 2H), 6.85 (d, 2H), 4.52-4.48 (m, 1H), 4.04-4.00 (m, 4H), 3.72-3.66 (m, 2H), 3.01 (s, 3H), 2.05-1.99 (m, 2H), 1.90-1.84 (m, 2H), 1.43 (t, 3H). C25H28ClN2O5S
MS(エレクトロスプレー):m/z= 503.1398 (M+1).
【0071】
実施例12-LPSでチャレンジしたヒト初代マクロファージにおけるIL-1βのin vitro阻害
材料
【0072】
【0073】
RPMI 1640成長培地の調製
RPMI 1640基礎培地をデータシート上の製造業者の指示に従って調製した。5mLの培地を用いて、5%CO2を連続供給する37℃のインキュベーターで48時間滅菌確認を行った。滅菌確認後に、基礎培地をFBS及びPen/Strep抗生物質の添加によって完全にした。培地を更に使用するまで4℃で保管した。
【0074】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の調製
1袋のPBSを1LのMilli-Q水に溶解した。PBSを0.22μm濾過膜に通して濾過し、更に使用するまで4℃で保管した。
【0075】
末梢血単核細胞(PBMC)の調製
血清を含まない5mLのRPMI培地(1:1)を、EDTA又はクエン酸ナトリウム中の5mLのヒト全血のサンプルに添加し、逆さにすることによって十分に混合した。3mLのHistopaque-1077を15mL容コニカル遠心分離管に添加し、室温にした。トランスファーピペットを用いて、10mLの血液-RPMI混合物をHistopaque-1077上に慎重に重層し、400×gにて室温で正確に30分間遠心分離した。
【0076】
遠心分離後に、パスツールピペットを用いて単核細胞を含有する不透明な界面から0.5cmまでの上層を吸引した。上層を捨てた。パスツールピペットを用いて、不透明な界面を清浄なコニカル遠心分離管に慎重に移した。5mLのRPMIを管に添加し、逆さにすることによって混合し、続いて250×gで正確に10分間遠心分離した。上清を吸引し、捨てた。
【0077】
白血球ペレットを5mLのRPMIで再懸濁し、パスツールピペットで静かに混合し、続いて250×gで正確に10分間遠心分離した。ペレットをPBSで3回洗浄し、RPMI培地に再懸濁した。
【0078】
1mL当たりの生存PBMCの数を計数した。
【0079】
PBMCの計数
10μLのPBMC懸濁液を90μLのPBS培地で希釈した(10倍希釈)。20μLの細胞懸濁液を20μLのトリパンブルー溶液に添加し(1:1比)、エアロゾル形成を回避するために慎重に混合した。血球計にカバーガラス下の領域が十分に満たされるまで細胞培養混合物をロードした。懸濁液を計数前に血球計内で少なくとも10秒間沈降させた。
【0080】
生存細胞及び死細胞の数を1つのチャンバーの4隅の1mmの正方形において計数した。生存PBMCは透明であり、非生存PBMCは青色である。任意の隅の正方形の上のライン又は垂直外周ラインのいずれかに触れている細胞は含めた。任意の隅の正方形の下のライン又は右の垂直外周ラインのいずれかに触れている細胞は計数しなかった。
【0081】
細胞数の算出
1mL当たりの生存PBMCの数の算出:
PBMC/mL=4つ全ての正方形中のPBMC×10×2×104/4
104=1mLへの体積換算係数;
10=細胞懸濁液の希釈係数;
2=トリパンブルーによる希釈係数
全細胞数=PBMC/mL×PBMC懸濁液の全体積(mL)
%細胞生存性=(計数された生存細胞の数/計数された細胞の総数(生存+死))×100
【0082】
細胞の播種、分化及び処理
全体積200μL/ウェルの2×105個のPBMCを96ウェルプレートにプレーティングし、CO2インキュベーター内にて37℃で4時間インキュベートして、単球を沈降させ、リンパ球を懸濁したままにした。インキュベーション後に100μLを各ウェルから吸引して、リンパ球集団を確実に除去した。
【0083】
単球を200ng/mLの組換えヒトGM-CSF(4mg/mLストック)の添加によってマクロファージに分化させ、37℃/5%CO2で6日間インキュベートした。ウェル内の培地の体積の半分を除去し、新鮮RPMI完全培地及び組換えヒトGM-CSFを再補充することによって培地を2日に1回交換した。
【0084】
分化後に、細胞を全体積50μLで、0.5%の最終DMSOパーセンタイルを維持しながら本発明による化合物により二連で処理した。プレートを、37℃/5%CO2に維持したインキュベーターに2時間移した。細胞を全体積50μLで100ng/mLのLPS(4回)(1mg/mLストック)によって刺激した。
【0085】
プレートを、37℃/5%CO2に維持したインキュベーターに16時間移した。
【0086】
ELISAによるサイトカイン推定
1. プレコートELISAプレートの各ウェルを吸引し、各ウェルを洗浄バッファー(300μL)で満たすことによって洗浄バッファー(PBS中の0.05%Tween 20;pH7.2~7.4)で洗浄した。プロセスを2回繰り返し、計3回洗浄した。各工程で液体を完全に除去した。最後の洗浄の後に、残りの洗浄バッファーを全て除去した。
2. 300μLのブロッキングバッファー(PBS中の1%BSA)を各ウェルに添加することによってプレートをブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。
3. 工程1と同様の吸引/洗浄を繰り返した。
4. 試薬希釈液(PBS(pH7.2~7.4)中の0.1%BSA、0.05%Tween 20)中で調製した100μLのサンプル又は標準を添加した。ウェルを接着ストリップで覆い、室温で2時間インキュベートした。
5. 工程1と同様の吸引/洗浄を繰り返した。
6. 試薬希釈液で希釈した100μLの検出抗体を各ウェルに添加した。ウェルを新たな接着ストリップで覆い、室温で2時間インキュベートした。
7. 工程1と同様の吸引/洗浄を繰り返した。
8. 100μLの希釈標準溶液(working dilution)(ストックの200倍)及びストレプトアビジン-HRPを各ウェルに添加した。プレートを覆い、室温で20分間インキュベートした。
9. 100μLの基質溶液(H2O2及びテトラメチルベンジジンの1:1混合物)を各ウェルに添加し、室温で20分間インキュベートした。
10. 50μLの停止液(2N H2SO4)を各ウェルに添加した。プレートを静かにタッピングし、完全な混合を確実にした。
11. 各ウェルの光学密度を、450nmに設定したマイクロプレートリーダー(Spectramax Plus)を用いて即座に決定した。
【0087】
サイトカイン生存性評定
100μl/ウェル容量のCellTiter-Glo(商標)発光試薬をアッセイプレートに添加し、プレートシェーカー上にて室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロプレートリーダー(Perkin ElmerのENVISION 2104)を用いて各ウェルの発光シグナルを決定した。
【0088】
データ分析
試験化合物の%阻害を、以下の式を用いて決定した:
%阻害=100-(100×(平均試験化合物カウント-平均陰性対照カウント)/(平均陽性対照カウント-平均陰性対照カウント))
【0089】
この式で述べられる「カウント」は全て、マイクロプレートリーダーを用いて上記のように決定された「光学密度値」から得られる(工程11)。
【0090】
試験化合物の細胞毒性を、以下の式を用いて決定した:
%細胞毒性=100-(100×(平均試験化合物カウント-平均陰性対照カウント)/(平均陽性対照カウント-平均陰性対照カウント))
【0091】
この式で述べられる「カウント」は全て、サイトカイン生存性評定について記載のように決定された「発光シグナル」から得られる。
【0092】
結果
【0093】
【0094】
実施例13-JNK1(MAPK8)のin vitro結合
水に溶解した様々な濃度の組換えヒトMAPK8を、湿度40%でベア(bare)金コーティングした(厚さ47nm)PlexArrayナノキャプチャセンサーチップ(米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)上に手作業で印刷した。各濃度を繰り返し印刷したところ、各スポットには0.2μLのタンパク質溶液が含まれていた。チップを湿度80%で4℃にて一晩インキュベートし、10×PBSTで10分間、1×PBSTで10分間、及び脱イオン水で2回、10分間の濯ぎを行った。次いで、チップを水中の5%(重量/体積)脱脂乳で一晩ブロッキングし、10×PBSTで10分間、1×PBSTで10分間、及び脱イオン水で2回、10分間の洗浄を行った後、窒素流のもとで使用前に乾燥させた。
【0095】
表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)測定を、PlexAray HT(米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)を用いて行った。コリメート光(660nm)は結合プリズムを通過し、SPR活性金表面に反射して、CCDカメラで受信される。バッファー及びサンプルを、非拍動ピストンポンプによって結合プリズムに取り付けられた30μLフローセルに注入した。各測定サイクルには4つの工程、すなわち、PBST泳動バッファーを用いて2μL/秒の一定速度で洗浄して安定したベースラインを得る工程、結合のためサンプルを5μL/秒で注入する工程、PBSTを用いる2μL/秒で300秒間の表面洗浄工程、及び0.5%(体積/体積)H3PO4を用いる2μL/秒で300秒間の再生工程を含んだ。全ての測定を4℃で行った。
【0096】
結合及び洗浄後のシグナル変化(AU単位)をアッセイ値として記録した。SPR画像で選択したタンパク質グラフト領域を分析し、選択した領域の平均反射率変動を時間の関数としてプロットした。リアルタイムの結合シグナルを記録し、データ分析モジュール(DAM、米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)によって分析した。動態分析を、BIAevaluation 4.1ソフトウェア(Biacore, Inc.)を用いて行った。
【0097】
化合物7について決定された平衡解離定数(KD値)は、3.41×10-8Mであった(Ka=2.29×104M-1・s-1、Kd=7.82×10-4s-1)。
【0098】
実施例14-p38MAPKのin vitro結合
水に溶解した様々な濃度のp38MAPKを、湿度40%でベア(bare)金コーティングした(厚さ47nm)PlexArrayナノキャプチャセンサーチップ(米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)に手作業で印刷した。各濃度を繰り返し印刷したところ、各スポットには0.2μLのタンパク質溶液が含まれていた。チップを湿度80%で4℃にて一晩インキュベートし、10×PBSTで10分間、1×PBSTで10分間、及び脱イオン水で2回、10分間の濯ぎを行った。次いで、チップを水中の5%(重量/体積)脱脂乳で一晩ブロッキングし、10×PBSTで10分間、1×PBSTで10分間、及び脱イオン水で2回、10分間の洗浄を行った後、窒素流のもとで使用前に乾燥させた。
【0099】
表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)測定を、PlexAray HT(米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)で行った。コリメート光(660nm)は結合プリズムを通過し、SPR活性金表面に反射して、CCDカメラで受信される。バッファー及びサンプルを、非拍動ピストンポンプによって結合プリズムに取り付けられた30μLフローセルに注入した。各測定サイクルには4つの工程、すなわち、PBST泳動バッファーを用いて2μL/秒の一定速度で洗浄して安定したベースラインを得る工程、結合のためサンプルを5μL/秒で注入する工程、PBSTを用いる2μL/秒で300秒間の表面洗浄工程、及び0.5%(体積/体積)H3PO4を用いる2μL/秒で300秒間の再生工程を含んだ。全ての測定を4℃で行った。
【0100】
結合及び洗浄後のシグナル変化(AU単位)をアッセイ値として記録した。SPR画像で選択したタンパク質グラフト領域を分析し、選択した領域の平均反射率変動を時間の関数としてプロットした。リアルタイムの結合シグナルを記録し、データ分析モジュール(DAM、米国ワシントン州シアトルのPlexera Bioscience)によって分析した。動態分析を、BIAevaluation 4.1ソフトウェア(Biacore, Inc.)を用いて行った。
【0101】
化合物7について決定された平衡解離定数(KD値)は、1.19×10-8Mであった(Ka=2.08×104M-1・s-1、Kd=2.48×10-4s-1)。
【0102】
実施例15:雄性C57BL/6マウスの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療における化合物5及び7の効果
NASH誘導
時限妊娠マウス(n=30)を研究に選択した。出生仔に、生後2日目(PND-2)に200μgのストレプトゾトシンを皮下注射し、離乳期に達するまで母親の元に置いた。離乳後に雄性仔を選択し、その後2週間にわたって60%kcal脂肪食(Research Diet-D12492)を与えた。全ての動物を臨床兆候について1日2回観察した。
【0103】
研究手順
マウスにビヒクル、試験化合物及び参照化合物(elafibranor)を、0日目から28日目まで朝(9:00AM)及び暗期の開始前の晩(6:00PM)の1日2回投与した。
【0104】
動物の体重測定を実験の全期間にわたって毎日行った。
【0105】
動物に28日間(6週目から10週目)にわたって試験化合物及び参照化合物を投与した。
【0106】
血中グルコースを処理開始前及び終了時の28日目に推定した。血清ALT及びASTレベルを処理開始前及び28日目の血漿から測定した。
【0107】
H&E染色、マッソントリクローム染色及びオイルレッドO(ORO)染色を含む病理組織学的分析を肝組織について行った。
【0108】
サンプル分析
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)スコアリング:H&E染色
全てのH&E染色組織切片を光学顕微鏡法によって検査した。200倍対物レンズでの下記の評点方式(Kleiner et al., 2005)に従い、NAFLDスコアリングを脂肪症、小葉炎症及び肝臓の風船様腫大(ballooning)について行った。
【0109】
コラーゲン比例面積(%CPA)測定:マッソントリクローム染色
全てのマッソントリクローム染色組織切片を100倍対物レンズで光学顕微鏡法によって検査した。各肝臓から無作為に選択した5つの視野(1視野当たりおよそ684.85μm×917.11m)を、Image Pro Premier 9.1ソフトウェアを用いたコラーゲン比例面積測定に供した。コラーゲン比例面積のパーセンテージを、コラーゲン組織面積を全組織面積で除算することによって算出した。
【0110】
%染色面積測定:オイルレッドO染色
全てのオイルレッドO染色組織切片を100倍対物レンズで光学顕微鏡法によって検査した。各肝臓から無作為に選択した5つの視野(1視野当たりおよそ688.33μm×922.45μm)を、Image Pro Premier 9.1ソフトウェアを用いた染色面積の測定に供した。染色面積のパーセンテージを、脂質染色組織面積を全組織面積で除算することによって算出した。
【0111】
NAFLD活動性スコア(NAS)に対する化合物5及び化合物7の効果を
図1に示す。
【0112】
研究により、3mg/kg用量の化合物7が肝臓における脂肪症及び小葉炎症を有意に軽減し、Elafibranorよりも良好なNASスコアを示すことが明らかに実証された。
【0113】
3mg/kg用量の化合物5は、小葉炎症を有意に軽減し、脂肪症及び肝臓の風船様腫大の減少傾向を示し、疾患対照よりも有意なNASスコアの低下が得られた。
【0114】
化合物5及び7は、
図2に示されるように28日間の処理後にASTレベルの有意な低下を示した。
【0115】
図3に示されるように、両方の試験化合物(化合物5及び7)が、参照化合物(Elafibranor)とは異なり、いかなる肝腫大及び肝臓対体重比の増加も示さなかった。
【0116】
結論として、試験した化合物は、NASHの肝臓化学及び組織学的活動性の有意な改善をもたらす。化合物5及び7の治療プロファイルは、それらがヒトNASHを治療する可能性を有することを示唆する。処理した全ての動物が体重増加を示し、毒性又は副作用の臨床兆候を有しなかった。
【0117】
実施例16:ブレオマイシン誘導性IPFの治療における化合物7の効果
IPF誘導
時限妊娠マウス(n=30)を研究に選択した。出生仔に、生後2日目(PND-2)に1.5U/kgのブレオマイシン(気管内)を皮下注射し、離乳期に達するまで母親の元に置いた。離乳後に雄性仔を選択し、その後1週間にわたって60%kcal脂肪食(Research Diet-D12492)を与えた。全ての動物を臨床兆候について1日2回観察した。
【0118】
研究手順
マウスにビヒクル、試験化合物及び参照化合物(ピルフェニドン)を、0日目から14日目まで朝(9:00AM)及び暗期の開始前の晩(6:00PM)の1日2回経口投与した。
【0119】
動物の体重測定を実験の全期間にわたって毎日行った。
【0120】
動物に14日間にわたって試験化合物及び参照化合物を投与した。
【0121】
肺ヒドロキシプロリンレベルを処理開始前及び終了時の14日目に推定した。BALF中の総細胞数及び各種白血球数を処理開始前及び28日目に測定した。
【0122】
H&Eアシュクロフトスコアの形態での病理組織学的分析を肺組織について行った。
【0123】
サンプル分析
IPFスコアリング:H&E染色
全てのH&E染色組織切片を光学顕微鏡法によって検査した。200倍対物レンズでの下記の評点方式(Kleiner et al., 2005)に従い、IPFスコアリングを行った。
【0124】
コラーゲン比例面積(%CPA)測定:マッソントリクローム染色
全てのマッソントリクローム染色組織切片を100倍対物レンズで光学顕微鏡法によって検査した。各肺から無作為に選択した5つの視野(1視野当たりおよそ684.85μm×917.11m)を、Image Pro Premier 9.1ソフトウェアを用いたコラーゲン比例面積測定に供した。コラーゲン比例面積のパーセンテージを、コラーゲン組織面積を全組織面積で除算することによって算出した。
【0125】
肺ヒドロキシプロリンレベルに対する化合物7の効果を
図4に示す。
【0126】
肺ヒドロキシプロリンレベルは、ナイーブ対照と比較してブレオマイシン対照において有意に上昇した。研究により、15mg/kg用量の化合物7が肺ヒドロキシプロリンレベルを有意に低下させ、100mg/kgのピルフェニドンよりも低下が大きいことが明らかに実証された。
【0127】
BALF中の総白血球数及び各種白血球数(マクロファージ及びリンパ球)は、ブレオマイシン対照群において有意に増加した。
図5A及び
図5Bに示されるように、BALFマクロファージ数は、化合物7(p>0.05)及びピルフェニドン(p<0.05)処理によってブレオマイシン対照と比較して減少した。
【0128】
線維症スコア及び%CPAは、ブレオマイシン対照肺においてナイーブ対照と比較して有意に上昇した。
図6A及び
図6Bに示されるように、化合物7(p<0.05)及びピルフェニドン(p<0.05)で処理した肺サンプルは、ブレオマイシン対照と比較して線維症スコア及び%CPAの両方の有意な低下を示した。データは、ヒドロキシプロリンの結果と一致する。
【0129】
結論として、試験した化合物は、IPFの肺化学及び組織学的活動性の有意な改善をもたらす。化合物7の治療プロファイルは、それがヒトIPFを治療する可能性を有することを示唆する。処理した全ての動物がブレオマイシン対照と比較して体重増加を示し、毒性又は副作用の臨床兆候を有しなかった。