(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】処理装置、処理プログラム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20231204BHJP
【FI】
G06Q40/04
(21)【出願番号】P 2022079049
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2023-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520502477
【氏名又は名称】CXRエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏幸
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-018796(JP,A)
【文献】特開2022-027957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置であって、
前記少なくとも一つのプロセッサは、
相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための
情報であって過去に発注された前記金融商品に対する買い又は売り注文に関連して記憶された時間からの経過時間を示す情報を含む注文評価情報を取得し、
前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて
前記所定の時点が前記経過時間を超えていると前記注文を評価
する場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能に
し、前記所定の時点が前記経過時間を超えていないと前記注文を評価する場合には、前記発注を制限する、
ための処理を実行するように構成された処理装置。
【請求項2】
前記注文評価情報は、前記金融商品の買い又は売り注文の発注に対するリスクを評価するための情報
を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記注文評価情報は、前記発注が前記金融商品の買い注文である場合は前記買い注文の発注価格と前記金融商品に対して付けられた売り注文の発注価格の差、又は前記発注が前記金融商品の売り注文である場合は前記金融商品に対して付けられた買い注文の発注価格の差に関連する情報
を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記金融商品の買い又は売り注文の発注は、現在の時間があらかじめ決められた所定の時間内である場合は行われない、請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記注文評価情報は、前記金融商品に対して
過去に発注された発注数量に関連する情報
を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記注文設定情報は、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にするための前記相場価格の上限値及び下限値の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記注文設定情報は、前記上限値及び前記下限値の少なくともいずれかによって設定される範囲において、前記買い又は売り注文の発注をする相場価格の間隔を示す情報を含む、請求項
6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記注文は成行注文
を含む、請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記注文設定情報は、前記発注価格で買い注文がなされた場合には前記買い注文に対する約定価格から前記買い注文した金融商品に対する売り注文における発注価格を決定し、前記発注価格で売り注文がなされた場合には前記売り注文に対する約定価格から前記売り注文した金融商品に対する買い注文における発注価格を決定するための利益幅を示す情報を含む、請求項
7に記載の処理装置。
【請求項10】
コンピュータを、
相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための
情報であって過去に発注された前記金融商品に対する買い又は売り注文に関連して記憶された時間からの経過時間を示す情報を含む注文評価情報を取得し、
前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて
前記所定の時点が前記経過時間を超えていると前記注文を評価
する場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能に
し、前記所定の時点が前記経過時間を超えていないと前記注文を評価する場合には、前記発注を制限する、
ためのプロセッサとして機能させる処理プログラム。
【請求項11】
少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置において、前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される処理方法であって、
相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするため
情報であって過去に発注された前記金融商品に対する買い又は売り注文に関連して記憶された時間からの経過時間を示す情報を含むの注文評価情報を取得する段階と、
前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて
前記所定の時点が前記経過時間を超えていると前記注文を評価
する場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能に
し、前記所定の時点が前記経過時間を超えていないと前記注文を評価する場合には、前記発注を制限する段階と、
を含む処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文をするように構成された処理装置、処理プログラム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金融商品は、一般的には、時々刻々とその取引価格が変動し、将来の価格の予測をするのが困難でありその売買には煩雑な工程を有すると言われている。このような金融商品において、より簡便にその売買をするためのシステムが知られている。例えば、特許文献1には、複数の金融商品を発注する際に当該各金融商品について共通的に用いられる発注条件である共通発注条件を入力するための操作部と、入力された共通発注条件を記憶するメモリと、一の金融商品の発注を実行する際に記憶されている共通発注条件をメモリから読み出して提示すると共に、提示された共通発注条件を用いて一の金融商品の発注を行うCPUと、を備えるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、様々な実施形態により、より効率的に金融商品の発注を可能にする処理装置、処理プログラム及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置であって、前記少なくとも一つのプロセッサは、相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための注文評価情報を取得し、前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて前記注文を評価した結果があらかじめ決められた条件を満たす場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にする、ための処理を実行するように構成された処理装置」が提供される。
【0006】
本開示の一態様によれば、「コンピュータを、相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための注文評価情報を取得し、前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて前記注文を評価した結果があらかじめ決められた条件を満たす場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にする、ためのプロセッサとして機能させる処理プログラム」が提供される。
【0007】
本開示の一態様によれば、「少なくとも一つのプロセッサを具備する処理装置において、前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される処理方法であって、相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも前記注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び前記注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための注文評価情報を取得する段階と、前記金融商品の所定の時点における相場価格が前記注文設定情報により設定された前記発注価格である場合であって、前記注文評価情報に基づいて前記注文を評価した結果があらかじめ決められた条件を満たす場合には、前記金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にする段階と、を含む処理方法」が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より効率的に金融商品の発注を可能にする処理装置、処理プログラム及び処理方法を提供することができる。
【0009】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る管理装置100の構成を示すブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の一実施形態に係る管理装置100に記憶される注文管理テーブルを概念的に示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態に係る管理装置100に記憶される発注管理テーブルを概念的に示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係る処理システム1において用いられる注文設定情報及び注文評価情報の一例を概念的に示す図である。
【
図9A】
図9Aは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【
図9C】
図9Cは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【
図9D】
図9Dは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【
図9E】
図9Eは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0012】
1.処理システム1の概要
本開示に係る処理システム1は、主に金融商品の買い又は売り注文をより効率的に行うためのシステムであって、一例としては、ユーザによって所持され当該金融商品に対して買い又は売り注文をするために用いられる注文設定情報の入力を受け付けるように構成された端末装置と、当該端末装置でユーザにより入力された注文設定情報を受信して当該注文設定情報に基づいて金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にするように構成された管理装置とを含む。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図1は、上記のような処理システム1において実際に行われる金融商品の買い又は売り注文の仕組みを説明するための図である。
図1には、縦軸に時々刻々と変動する金融商品の価格が、横軸に時間がそれぞれ配置されている。すなわち、この金融商品は、曲線51に示すように時間の変化と共に取引相場における相場価格が変化したことが示されてる。
【0014】
ここで、本開示においては、一般的には、金融商品の取引においては、買ったときの相場価格と売った時の相場価格との差分によってその利益が得られる。しかし、大きな利益を狙ってその価格上昇を待っていたとしても、上記の通り金融商品の相場価格は変動するため、上昇傾向から下落に転じ、期待した利益が得られないということがある。そのため、金融商品を買うタイミング及び売るタイミングを適切に管理することがきわめて重要であり、この管理において様々なノウハウや手法が存在する。そのうちの一つとして、例えば購入した金融商品に対して一定の利益が確定した段階でその金融商品を売ってしまい、一定の利益を確実に積み上げいく手法がある。このような手法では、利益の額はあらかじめ定めた額に限られる。そのため、このような発注を並行して複数行って、発注した注文の数だけ「一定の利益」を積み上げて、トータルとして大きな利益を生むことが可能である。
【0015】
図1では、このような手法を用いて金融商品の買い又は売り注文を行った場合の例が記載されている。
図1によれば、金融商品に対して、買い又は売り注文を発注する相場価格の価格幅を示すための上限値U1及び下限値L1がそれぞれ示されている。すなわち、あらかじめ注文設定情報として当該上限値U1及び下限値L1を取得することで、金融商品の相場価格がこの上限値U1及び下限値L1によって規定される範囲内に入った場合に、買い又は売り注文を可能にする。
【0016】
また、
図1によれば、金融商品に対して、上記の通り決められた範囲内において買い又は売り注文の発注をする相場価格の間隔S1が示されている。すなわち、あらかじめ注文設定情報として当該間隔S1を取得することで、金融商品の相場価格が上限値又は下限値から当該間隔S1で規定される価格に達するごとに買い注文が発注される。
図1の例では、相場価格が上限値U1から間隔S1分だけ下落した段階で買い注文61-1をし、さらにそこから間隔S1分だけ下落した段階で買い注文62-1をし、以下同様に、間隔S1分ごとに買い注文63-1、買い注文64-1及び買い注文65-1を発注している。
【0017】
また、
図1によれば、上記の通りなされた各買い注文(買い注文61-1~買い注文65-1)により購入された金融商品に対して、売り注文をするタイミングを決める利益幅P1が示されている。すなわち、
図1の例では、買い注文61-1~買い注文65-1のそれぞれに対して、実際に購入された価格に対してあらかじめ設定された利益幅P1を注文設定情報として取得することによって、売り注文をするときの発注価格が決定される。そして、金融商品の相場価格が変動して推移した結果、利益幅P1によって決定された発注価格に達したときに、買い注文61-1に対する売り注文61-2が、買い注文62-1に対する売り注文62-2が、買い注文63-1に対する売り注文63-2が、買い注文64-1に対する売り注文64-2が、買い注文65-1に対する売り注文65-2が、それぞれ発注される。
【0018】
本開示に係る処理システム1は、あらかじめ注文設定情報を取得することによって、このような一又は複数の買い又は売り注文の発注を効率的に管理することが可能となる。
【0019】
なお、金融商品は一般的に買い注文と売り注文によってその売買が成立する。本開示においては、金融商品に対して買い注文をし、その後売り注文をするという1回の売買を例に説明するが、買い注文と売り注文が逆であってもよいし、複数の売買を行う場合であってもよい。
【0020】
また、本開示においては、単に金融商品と記載するが、このような金融商品にはあらゆる商品が含まれる。すなわち、金融商品は、安全性、収益性及び流動性の3つの特性により評価されると一般的に言われるが、このような特性によって評価可能なものであればいずれであっても本開示に係る処理システム1において好適に適用することができる。このような金融商品の一例としては、株式、公社債、短期社債などの有価証券、外国為替、先物取引、仮想通貨などの暗号資産等、変動相場において取引が可能な金融商品が挙げられ、特定の法令によって規制されるもののみには特に限定されない。
【0021】
また、本開示においては、処理装置は、ユーザによって所持され当該金融商品に対して買い又は売り注文をするために用いられる注文設定情報の入力を受け付けるように構成された端末装置と、当該端末装置でユーザにより入力された注文設定情報を受信して当該注文設定情報に基づいて金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にするように構成された管理装置のいずれをも包含する。すなわち、一例として端末装置及び管理装置をそれぞれ記載はしているものの、端末装置で実行される処理が管理装置で実行されることも可能であるし、管理装置で実行される処理が端末装置で実行されることも可能である。また、処理システム1として、端末装置及び管理装置をそれぞれ例示しているが、いずれか一つの装置で全ての処理を実行してもよいし、複数の端末装置又は複数の管理装置にそれぞれ分散して処理を実行してもよい。
【0022】
また、本開示においては処理装置の一例として管理装置を記載しているが、この管理装置は他の装置の区別のために「管理」という文言を記載しているだけである。すなわち、注文設定情報等によって金融商品の注文を可能にするものであればいずれであってもよく、特に管理者によって運営・管理されている必要もなければ、複数の端末装置に接続されて膨大な量の注文を管理している必要もない。
【0023】
また、本開示においては、特に金融商品の注文手法については限定しない。しかし、一般的にこのような金融商品の注文手法として、売買するときの相場価格を自らが希望する価格を指定するこができる指値注文と、売買するときの相場価格を指定せずに発注を行い実際の購入価格はその取引が成立したときの相場価格とする成行注文とがある。本開示では、以下においては成行注文をする場合について主に説明するが、この指値注文と成行注文のいずれであっても好適に適用することが可能である。
【0024】
2.処理システム1の構成
図2は、本開示の一実施形態に係る処理システム1の構成を示すブロック図である。
図2によれば、処理システム1は、管理装置100と端末装置200とを含み、各装置が有線又は無線ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置200は、各ユーザによって所持され金融商品に対して買い又は売り注文をするために用いられる注文設定情報等の入力を受け付け、管理装置100に送信するように構成されている。また、管理装置100は、端末装置200でユーザにより入力された注文設定情報等を受信して当該注文設定情報に基づいて金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にするように構成されている。なお、
図2の例では、管理装置100及び端末装置200をそれぞれ別体として記載しているが、管理装置100及び端末装置200のいずれも処理装置として機能することが可能である。また、管理装置100は、一体のみが記載されているが、例えば複数のサーバ装置を組合わせて管理装置100を構成することも可能である。また、端末装置200は、一体のみが記載されているが、例えば複数のユーザが処理システム1により提供されるサービスを利用するような場合など、複数の端末装置200が存在してもよい。
【0025】
ここで、特に図示はしないが、端末装置200は、プロセッサ、メモリ、管理装置100等の他の装置と通信をするための通信インターフェイス、注文設定情報等のユーザによる指示入力を受け付けるための入力インターフェイス、管理装置100等から受信した各種通知等をディスプレイ等に出力するための出力インターフェイスなどの各種構成要素を有する。プロセッサがこれら各種構成要素を制御することによって、注文設定情報等の入力を受け付け、管理装置100に受け付けられた情報を送信する。このような端末装置200の一例としては、スマートフォン、タブレット、ラップトップPC、デスクトップPC、情報処理端末、携帯電話機など、種々のものが挙げられる。
【0026】
図3は、本開示の一実施形態に係る管理装置100の構成を示すブロック図である。
図3によると、管理装置100は、メモリ111、プロセッサ112及び通信インターフェイス113を含む。これらの各構成要素は、互いに、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。なお、管理装置100は、
図3に示す構成要素のすべてを備える必要はなく、一部を省略して構成することも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、他の管理装置やサーバ装置、データベース装置と接続し一体として管理装置100を構成することも可能である。
【0027】
メモリ111は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ111は、本実施形態に係る処理システム1における様々な制御のための指示命令を処理プログラムとして記憶する。具体的には、メモリ111は、「相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための注文評価情報を取得する処理」、「金融商品の所定の時点における相場価格が注文設定情報により設定された発注価格である場合であって、注文評価情報に基づいて注文を評価した結果があらかじめ決められた条件を満たす場合には、金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にする処理」等のために、プロセッサ112が実行するための処理プログラムを記憶する。また、メモリ111は、当該処理プログラムのほかに、注文管理テーブル(
図4A)及び発注管理テーブル(
図4B)に記憶される各種情報等を記憶する。
【0028】
プロセッサ112は、メモリ111に記憶された処理プログラムに基づいて管理装置100の他の構成要素の制御を行う制御部として機能する。プロセッサ112は、メモリ111に記憶された処理プログラムに基づいて、金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にするための各種処理を行う。具体的には、プロセッサ112は、「相場価格が変動する金融商品に対する買い又は売り注文において、少なくとも注文の発注価格を設定するための注文設定情報、及び注文に対してあらかじめ決められた評価項目において評価をするための注文評価情報を取得する処理」、「金融商品の所定の時点における相場価格が注文設定情報により設定された発注価格である場合であって、注文評価情報に基づいて注文を評価した結果があらかじめ決められた条件を満たす場合には、金融商品の買い又は売り注文の発注を可能にする処理」等を、メモリ111に記憶された処理プログラムに基づいて実行する。プロセッサ112は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUやFPGAなどを組み合わせてもよい。
【0029】
通信インターフェイス113は、端末装置200及び/又は他の装置と情報の送受信を行うための通信部として機能する。通信インターフェイス113の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子など、様々なものが挙げられる。
【0030】
3.管理装置100で管理される情報
図4Aは、本開示の一実施形態に係る管理装置100に記憶される注文管理テーブルを概念的に示す図である。注文管理テーブルに記憶される情報は、管理装置100のプロセッサ112の処理の進行に応じて随時更新して記憶される。
【0031】
図4Aによれば、注文管理テーブルには、注文ID情報に対応付けて、上限情報、下限情報、注文間隔情報、時間間隔情報、許容差情報、最大注文数量情報、利益確定幅情報、損切幅情報等が記憶される。「注文ID情報」は、端末装置200から新規の注文設定情報を受け付けるごとに生成される情報であって、各注文に固有の情報である。各注文を識別するために用いられる。「上限情報」及び「下限情報」は、注文設定情報の一つであって、それぞれ買い又は売り注文を発注する相場価格の価格幅を示すための上限値及び下限値を示す情報である。すなわち、上限情報として記憶された上限値を相場価格が下回った場合に買い又は売り注文の発注が可能になる。また、下限情報として記憶された下限値を相場価格が上回った場合に買い又は売り注文の発注が可能となる。
【0032】
「注文間隔情報」は、注文設定情報の一つであって、上限情報及び下限情報の少なくともいずれかによって決められる範囲において、買い又は売り注文の発注をする相場価格の間隔を示す情報である。「時間間隔情報」は、買い又は売り注文に対するリスクを評価する評価項目の一つであって、過去に発注された金融商品に対する買い又は売り注文に関連する時間からの経過時間を評価するための情報である。例えば、過去に発注された買い又は売り注文から、時間間隔情報として記憶された時間をまだ超えていない場合には、仮に現在の相場価格が注文間隔情報で特定された価格になったとしても買い又は売り注文を実行しない。「許容差情報」は、買い又は売り注文に対するリスクを評価する評価項目の一つであって、各金融商品についてつけられた売り又は買い注文の発注価格と、当該金融商品の買い又は売り注文の発注価格との差に関連する情報である。このような一例としては、各金融商品についてつけられた「売り注文の発注価格」から「買い注文の発注価格」を減じた値を、「買い注文の発注価格」で除することによって算出される割合で示される。当該割合があらかじめ決められた範囲内である場合には、当該取引を成立させ、その範囲外である場合には当該取引の成立を制限させる。なお、上記一例において、「売り注文の発注価格」は当該金融商品の取引所のシステムを運用する装置から当該情報を管理装置が受信することによって取得される。また、「買い注文の発注価格」は、
図4Bに示された発注管理テーブルから取得される。
【0033】
「最大注文数量情報」は、買い又は売り注文に対するリスクを評価する評価項目の一つであって、今回買い又は売り注文が発注されることによって、所定期間における金融商品の累積の発注数量が最大注文数量情報によって規定される数量を超える場合には、今回の発注を制限するための情報である。この所定期間は、注文設定情報を受信してから最初に行われる買い又は売り注文から開始してもよいし、同じユーザが行った過去の他の発注から開始してもよい。また、ここで管理される数量は、同じ金融商品における数量だけでなく、同じ種別の他の金融商品や、他の種別の金融商品における数量であってもよい。また、ここで管理される数量は、金融商品において発注された個数に限らず、取引において利用された金額なども数量として利用することができる。
【0034】
「利益確定幅情報」は、注文設定情報の一つであって、注文間隔情報等によって決められた発注価格でなされた買い注文された金融商品に対して、売り注文を発注する際の発注価格を決めるための情報である。すなわち、買い注文によって購入された金融商品の購入価格に、利益確定幅情報によって規定された利益幅を加算することによって、売り注文を発注するときの発注価格が決められる。なお、本開示における処理システム1においては、好適には成行注文が用いられる。このような成り行き注文の場合には、実際に買い注文するときの注文価格と、買い注文に対して売り注文が付いたときの約定価格は必ずしも一致しない。したがって、成行注文において当該金融商品を売買する場合には、約定価格に利益確定幅情報によって規定された利益幅を加算することによって、より実態に即した利益幅を管理することが可能となる。
【0035】
「損切幅情報」は、注文設定情報の一つであって、注文間隔情報等によって決められた発注価格でなされた買い注文された金融商品について、現在の相場価格が損切幅情報によって規定されている価格よりも下回る場合には、利益確定幅情報に関係なく売り注文をするための情報である。すなわち、買い注文によって購入された金融商品の購入価格から損切幅情報によって規定される価格を減算した値に対して、現在の相場価格が下回った場合には、当該金融商品に対して売り注文の発注がなされる。なお、本開示における処理システム1においては、好適には成行注文が用いられる。したがって、成り行き注文において当該金融商品を売買する場合には、約定価格から損切幅によって規定された価格を減算することによって、上記判断がなされる。
【0036】
なお、
図4Aにおいて特に図示はしていないものの、注文ID情報によって特定される各注文を行ったユーザを特定するためのユーザID情報、金融商品の取引において用いられる口座を特定するための口座情報、各ユーザが保持する証拠金の金額情報、各注文をユーザが行った時間を示す注文時間情報、成行注文か指値注文かを示す情報、取引の対象とする金融商品を特定するための情報、各注文の現在のステータスを示す情報など、必要に応じて種々の情報が注文ID情報に対応付けて記憶される。
【0037】
図4Bは、本開示の一実施形態に係る管理装置100に記憶される発注管理テーブルを概念的に示す図である。注文管理テーブルに記憶される情報は、管理装置100のプロセッサ112の処理の進行に応じて随時更新して記憶される。
【0038】
ここで、発注管理テーブルは、注文管理テーブルで管理される注文ごとに生成されるテーブルであって、各注文に対応付けられた注文設定情報に基づいて生成される各発注を管理するためのテーブルである。したがって、
図4Bには、この発注管理テーブルの一例として注文管理テーブルで管理される注文ID情報が「O1」の注文の発注管理テーブルが示されている。
図4Bによれば、当該発注管理テーブルには、発注ID情報に対応付けて、買い発注価格情報、買い注文時間情報、買い約定価格情報、発注数量情報、売り発注価格情報、売り約定価格情報等の情報が記憶される。「発注ID情報」は、注文設定情報に基づいて新たに買い注文が行われるごとに生成される情報であって、各発注に固有の情報である。当該情報は、各発注を識別するために用いられる。「買い発注価格情報」は、注文設定情報のうちの少なくとも上限情報、下限情報及び注文間隔情報に基づいて決められる情報であって、買い注文を発注するときの価格を示す情報である。買い発注価格として記憶された価格のいずれかに現在の相場価格が達した場合に、その価格に対応する買い注文が発注される。
【0039】
「買い注文情報」は、買い発注情報によって設定された価格で発注された買い注文に関連する時間を特定するための情報である。このような時間には、買注文が発注された時間や、当該買い注文が約定した時間の情報が用いられる。「買い約定価格情報」は、買い発注価格情報によって設定された価格で買い注文が発注されたのち、当該買い注文に対して売り注文が付くことによって約定したときの約定価格を示す情報である。「発注数量情報」は、各発注がなされた金融商品の数量を示す情報である。ここで管理される数量には、金融商品において実際に発注された個数に限らず、取引において利用された金額(例えば、約定価格に買い注文した金融商品の個数を乗算した額)なども数量として利用することができる。
【0040】
「売り注文価格情報」は、買い注文がされ発注され約定した金融商品に対して売り注文をするときの発注価格を示す情報である。売り注文価格情報は、典型的には、買い約定価格に、注文管理テーブルで管理される利益確定幅を加算することによって算出される。金融商品の現在の相場価格が売り注文価格情報で規定された価格に達した場合に当該金融商品の売り注文がなされるため、当該情報は売り注文の発注のタイミングを規定する情報である。「売り約定価格情報」は、「売り発注価格情報」によって設定された価格で売り注文が発注されたのち、当該売り注文に対して買い注文が付くことによって約定したときの約定価格を示す情報である。
【0041】
なお、
図4Bにおいて特に図示はしていないものの、発注ID情報によって特定される各発注を行った時間を示す発注時間情報や、約定した時間を示す約定時間情報、各発注の現在のステータスを示す情報など、必要に応じて種々の情報が発注ID情報に対応付けて記憶される。
【0042】
4.管理装置100で実行される処理フロー
(A)注文設定情報の受信時の処理
図5は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図5は、管理装置100において注文設定情報を受信して受信した注文設定情報に基づいて金融商品の注文を注文管理テーブル及び発注管理テーブルにそれぞれ登録するときに実行される処理フローを示す。当該処理フローは、主に管理装置100のプロセッサ112がメモリ111に記憶された処理プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0043】
図5によると、プロセッサ112は、通信インターフェイス113を介して端末装置200から金融商品に対する売り又は買い注文をするための注文設定情報を受信したことによる割り込み信号を受信する(S111)。これによって当該処理フローは開始される。
【0044】
ここで、注文設定情報は、あらかじめ端末装置200において処理システム1によって提供される金融商品の取引サービスのウェブサイトやアプリケーションプログラムによって、端末装置200の入力インターフェイスを介してユーザを介して入力される情報である。この注文設定情報は、注文対象となる金融商品を特定する情報、ユーザを特定する情報等に加えて、上限情報、下限情報、注文間隔情報、利益確定幅情報、及び損切幅情報を含む。また、端末装置200において、当該注文設定情報に加えて、注文評価情報も同様に入力される。この注文評価情報は、各注文に対してあらかじめ決められた評価項目に関して評価するときの基準値として用いられる情報である。注文評価情報には、典型的には、時間間隔情報、許容差情報及び最大注文数量情報などの、売り又は買い注文を発注した場合におけるリスクを評価するための情報が含まれる。なお、注文設定情報及び注文評価情報の入力は、特に図示はしないが、各項目に対応して入力ボックスが設けられ、入力インターフェイスを介してユーザによる任意の文字や数字の入力を受け付けたり、あらかじめ設定された選択肢の中から所望の選択肢の選択を受け付けることによって行われる。
【0045】
注文設定情報を新たに受信すると、プロセッサ112は新たに注文ID情報を生成して注文管理テーブルに生成した注文ID情報を記憶する(S112)。そして、プロセッサ112は、注文情報によって設定される発注価格や、発注される金融商品の予定数量などに基づいて予測される取引金額が証拠金の金額情報を下回っているかや、注文設定情報を送信した端末装置200のユーザが適正なユーザであるかなどの注文の適性のチェックを行う(S113)。上記チェックの結果、特に問題がない場合には、プロセッサ112は、注文設定情報と、当該注文設定情報と共に又は当該注文設定情報とは異なるタイミングで受信した注文評価情報に基づいて、注文管理テーブル及び発注管理テーブルに各情報を記憶する(S114)。
【0046】
ここで、
図8は、本開示の一実施形態に係る処理システム1において用いられる注文設定情報及び注文評価情報の一例を概念的に示す図である。
図8によれば、
図5のS114で記憶される各情報のうち、注文評価情報である上限情報及び下限情報は、上限値U1及び下限値L1として示される。すなわち、これらの情報は、相場価格が変動する金融商品において注文等の取引を行う価格の範囲を規定する情報である。また、プロセッサ112は、上限情報及び下限情報に基づいて規定される範囲を、注文間隔情報に基づいて分割し、買い注文するときの買い発注価格を算出するとともに、算出された買い発注ごとに発注ID情報を生成して、それぞれ発注管理テーブルに記憶する。
図8によれば、注文間隔情報により特定される間隔S1ごとに、各買い注文71-1~買い注文75-1が各買い発注価格で設定されたことが示されている。なお、この時点において、各買い注文71-1~買い注文75-1に対する約定価格は得られていないため、発注管理テーブルに記憶される情報のうち、買い注文時間情報、買い約定価格情報、売り発注価格情報及び売り約定価格情報は記憶されていない。
【0047】
再び
図5に戻り、受信した注文設定情報がメモリ111の各テーブルに登録されると、プロセッサ112は、通信インターフェイス113を介して、注文設定情報を送信した端末装置200に注文が正常に登録された旨を示す注文受信結果を送信する(S115)。なお、プロセッサ112は、注文が適正でなかった場合や、不足する情報があって注文の登録ができなかった場合には、ユーザに再度の入力を促したり、注文を中止する旨の通知を送信する。これにより、当該処理フローは終了する。
【0048】
(B)現在の相場価格を取得した場合に行われる処理
図6は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図6は、管理装置100において各金融商品における現在の相場価格を取得した場合に実行される処理フローを示す。当該処理フローは、主に管理装置100のプロセッサ112がメモリ111に記憶された処理プログラムを所定周期で読み出して実行することにより行われる。
【0049】
図6によると、プロセッサ112は、通信インターフェイス113を介して他の装置から各金融商品における現在の相場価格を受信すると、各金融商品の過去の相場価格の履歴を管理するための相場価格テーブル(図示しない)に受信した相場価格を記憶する(S211)。次に、プロセッサ112は、注文管理テーブル及び発注管理テーブルをそれぞれ参照する(S212)。そして、プロセッサ112は、発注管理テーブルを参照して、既に買い約定価格が記憶された注文ID情報に対して、買い約定価格情報によって示される価格から、注文管理テーブルに記憶される損切幅情報で規定される価格を減算することで得られた価格よりも現在の相場価格が下回っていた場合には(S213)、当該注文ID情報に対応付けられた買い注文により購入された金融商品に対して売り注文を発注し、発注を確定させる(S219)。
【0050】
次に、プロセッサ112は、発注管理テーブルを参照して、まだいずれの約定価格情報も記憶されていない発注ID情報について、買い発注価格を今回下回った発注があるか否かを判断する(S214)。
【0051】
ここで、
図9Aは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図9Aは、ある金融商品における相場価格の変動の履歴を示す図である。
図9Aによると、縦軸に時々刻々と変動する金融商品の価格が、横軸に時間がそれぞれ配置されている。すなわち、この金融商品は、曲線51に示すように時間の変化と共に取引相場における相場価格が変化したことが示されてる。このような金融商品に対して、
図9Aは、上限情報、下限情報及び注文間隔情報として、それぞれ上限値U1、下限値L1及び間隔S1が設定され、それによって買い注文71-1~75-1に対応する買い発注価格情報がそれぞれ設定されたことを示している。つまり、現在の相場価格が上限値U1から間隔S1分だけ下落した段階で買い注文71-1が発注され、さらにそこから間隔S1分だけ下落した段階で買い注文72-1が発注され、以下同様に、間隔S1分ごとに買い注文73-1、買い注文74-1及び買い注文65-1が発注されている。なお、
図9Aにおいては、説明の便宜のため、特に注文評価情報によりリスクの評価は行わず、全ての買い注文がなされた場合を示している。
【0052】
再び
図6に戻り、プロセッサ112は、現在の相場価格が買い発注価格を下回った場合には、その発注ID情報により特定される発注に対して注文評価情報に基づく評価を実行する。具体的には、プロセッサ112は、発注管理テーブルのうち注文時間情報を参照し、最近の時間が記憶された注文時間情報を特定する。プロセッサ112は、その時間に対して、注文管理テーブルに記憶された時間間隔情報によって特定された時間を加算して得られる時間と、現在の時間を比較する(S215)。そして、プロセッサ112は、加算して得られた時間を現在の時間が超えていないと判断された場合には当該発注を行わず、処理フローを終了する。一方で、超えていると判断された場合には、プロセッサ112は次の処理を実行する。なお、このときプロセッサ112は、同じ注文ID情報が対応付けられた発注管理テーブルのみを参照してもよいし、同じユーザに対応付けられたすべての発注管理テーブルを参照してもよいし、同じユーザであって同じ金融商品に対応付けられた発注管理テーブルを参照してもよいし、同じユーザであって同種の金融商品に対応付けられた発注管理テーブルを参照するしてもよい。
【0053】
ここで、
図9Bは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図9Bは、
図9Aで示された金融商品に関して注文評価情報として設定された時間間隔情報に基づいて発注がなされなかった場合の例を示す図である。
図9Bによると、プロセッサ112は、現在の相場価格を受信した時間を参照する。そして、プロセッサ112は、現在の時間が最近に行われた買い注文11-1に関連して記憶された時間(例えば、買い注文11-1が発注された時間)から時間間隔情報によって特定された時間を経過したか否かを判断する。そして、経過していなかった場合には、プロセッサ112は、仮にいずれかの買い注文に対応する買い発注価格を下回ったとしても、当該発注を行わない。
図9Bの例では、買い注文11-1から時間間隔情報によって特定された時間T1を経過するまでの発注は行われない。そのため、買い注文12-1及び買い注文13-1に対応する買い発注価格情報を相場価格はそれぞれ下回っているものの、これらに対応する買い注文12-1及び買い注文13-1は実行されていない。このように、例えば、過去に行われた発注から短期間で急激な相場価格の変動がなされている間は、その後も継続して急激な変動が予想され、リスクの高い取引となる可能性が高い。そのため、時間間隔情報を用いることによって、このようなリスクの高い取引の実行を防止することが可能となる。
【0054】
再び
図6に戻り、プロセッサ112は、現在の相場価格が買い発注価格を下回った場合には、その発注ID情報により特定される発注に対して、許容差情報に基づく評価を実行する(S216)。具体的には、プロセッサ112は、当該発注に対応付けられた注文ID情報に基づいて注文管理テーブルの許容差情報を参照する。そして、プロセッサ112は、金融商品の取引所の装置から当該金融商品に現在つけられた売り注文の発注価格の情報をあらかじめ取得し、当該情報から、当該発注ID情報に対応付けられた買い発注価格情報により特定される買い発注価格を減算する。プロセッサ112は、減算により得られた値をさらに当該買い発注価格で除算する。すなわち、プロセッサ112は、買い注文の買い発注価格に占める、売り注文の売り発注価格と当該買い発注価格との差額の割合を算出する。プロセッサ112は、除算により得られた値(絶対値)が許容差情報により特定される値を上回る場合には、当該発注を行わず、処理フローを終了する。一方で、下回る場合には、プロセッサ112は次の処理を実行する。
【0055】
ここで、
図9Cは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図9Cは、
図9Aで示された金融商品に関して注文評価情報として設定された許容差情報に基づいて発注がなされなかった場合の例を示す図である。
図9Cによると、プロセッサ112は、相場価格が買い注文14-1に対応する買い注文価格を下回ったとき、別途取引所から取得した当該金融商品に付けられた売り注文価格から、当該買い注文14-1の買い注文価格を減算する。プロセッサ112は、減算により得られた値をさらに買い注文14-1の買い注文価格で除算した値を算出する。
図9Cの例では。除算により得られた値が、あらかじめ設定された許容差情報を上回ったために、買い注文14-1に対する発注は行われていない。成行注文においては、金融商品において売り注文があまり活発ではないなどの事情により発注価格と約定価格との差が想定以上に大きくなってしまうことが理論上は生じ得る。このように、許容差情報を用いることによって、発注価格と約定価格との差が想定以上に大きくなるなどの不利益を防止することが可能となる。
【0056】
再び
図6に戻り、プロセッサ112は、現在の相場価格が買い発注価格を下回った場合には、その発注ID情報により特定される発注に対して、最大注文数量情報に基づく評価を実行する(S217)。具体的には、プロセッサ112は、当該発注に対応付けられた注文ID情報に基づいて注文管理テーブルの最大注文数量情報を参照する。そして、プロセッサ112は、当該発注ID情報に対応付けられた発注数量情報による特定される数量の発注が行われた場合、所定期間における金融商品の累積の発注数量を超えるか否かを判断する。プロセッサ112は、超えると判断される場合には、当該発注を行わず、処理フローを終了する。一方で、下回る場合には、プロセッサ112は次の処理を実行する。なお、累積の発注数量を計上する範囲は、同じ注文ID情報が対応付けられた発注管理テーブルにおいて約定した買い注文の発注数量情報のみを参照してもよいし、同じユーザに対応付けられたすべての発注管理テーブルにおいて約定した買い注文の発注数量情報を参照してもよいし、同じユーザであって同じ金融商品に対応付けられた発注管理テーブルにおいて約定した買い注文の発注数量情報を参照してもよいし、同じユーザであって同種の金融商品に対応付けられた発注管理テーブルにおいて約定した買い注文の発注数量情報を参照するしてもよい。
【0057】
ここで、
図9Dは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図9Dは、
図9Aで示された金融商品に関して注文評価情報として設定された最大発注数量情報に基づいて発注がなされなかった場合の例を示す図である。
図9Dによると、プロセッサ112は、相場価格が買い注文18-1及び買い注文19-1に対応する買い注文価格を下回ったとき、各買い注文に対応付けられた発注数量情報を参照する。そして、プロセッサ112は、過去に行われた買い注文(すなわち、買い注文15-1~買い注文17-1で約定した発注数量の累積値)に、買い注文18-1又は買い注文19-1に対応付けられた発注数量を加算する。プロセッサ112は、その結果、あらかじめ設定された最大発注数量情報により特定される数量を、加算により得られた値が超えていた場合には、買い注文18-1又は買い注文19-1に対する発注は行わない。相場価格は時々刻々と変化するため、状況によっては買い注文価格情報の周辺で乱高下し、過剰に発注がなされてしまうことが理論上あり得る。最大発注数量情報をあらかじめ設定しておくことにより、このような想定以上の過剰は発注を防止することが可能となる。
【0058】
再び
図6に戻り、プロセッサ112は、現在の時間があらかじめ設定された稼働時間内にあたるか否かを確認する(S218)。具体的には、プロセッサ112は、例えば処理システム1の運営者によりあらかじめ設定された稼働時間を参照して、現在の時間が当該稼働時間内か否かを判断する。そして、その判断の結果、稼働時間外であった場合には、プロセッサ112は、発注ID情報により特定される買い注文に対する発注を行わず、処理フローを終了する。一方で、稼働時間内である場合には、プロセッサ112は次の処理を実行する。
【0059】
ここで、
図9Eは、本開示の一実施形態に係る処理システム1においてなされる金融商品の買い又は売り注文の様子を概念的に示す図である。具体的には、
図9Eは、
図9Aで示された金融商品に関して、稼働時間に基づいて発注がなされなかった場合の例を示す図である。
図9Eによると、プロセッサ112は、相場価格が買い注文20-1、買い注文21-2及び買い注文22-1に対応する買い注文価格を下回ったとき、タイマ(図示しない)を参照してその時の時間を特定する。そして、当該時間があらかじめ設定された稼働時間外である場合には、プロセッサ112は、買い注文20-1、買い注文21-2及び買い注文22-1に対する発注は行わない。このように、時々刻々と相場価格が変化する金融商品において、処理システム1に対する管理も極めて慎重に行う必要があるところ、あらかじめ設定された稼働時間外では突発的な事象(例えば、システム上の不具合等)に対する対応能力も限られる場合がある。そのため、当該稼働時間に基づいて発注の成否を管理することで、このような突発的に事象に対するリスクを軽減することが可能となる。
【0060】
再び
図6に戻り、プロセッサ112は、S214で特定された発注ID情報に対応付けられた買い注文がS215~S218における判断を満たす場合には、当該買い注文の発注を確定する(S219)。具体的には、プロセッサ112は、当該発注ID情報に対応付けられた買い発注価格情報により特定される発注価格に基づいて当該金融商品の買い注文の発注情報を生成する。そして、プロセッサ112は、当該金融商品の取引市場において当該金融商品を購入するために、生成され発注情報を通信インターフェイス113を介して送信する。また、プロセッサ112は、タイマを参照して買い発注がなされた時間を、発注ID情報に対応付けて、買い注文時間情報として記憶する。以上により、当該処理フローは終了する。
【0061】
(C)買い注文が約定した場合の処理
図7は、本開示の一実施形態に係る管理装置100において実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図7は、管理装置100において発注された買い注文が約定した場合に実行される処理フローを示す。当該処理フローは、主に管理装置100のプロセッサ112がメモリ111に記憶された処理プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0062】
図7によると、プロセッサ112は、通信インターフェイス113を介して当該取引市場において発注した買い注文に対して売り注文が付いて約定したことにより生成される割り込み信号を受信する(S311)。これによって当該処理フローは開始される。プロセッサ112は、発注した買い注文に対して約定したときの約定価格を取得すると、当該買い注文に対応する発注ID情報に対応付けて当該約定価格を買い約定価格情報として記憶する(S312)。
【0063】
次に、プロセッサ112は、記憶された買い約定価格情報により特定される価格に、注文設定情報として受信し、注文管理テーブルに利益確定幅情報として記憶された価格を加算する(S313)。そして、プロセッサ112は、算出された価格を売り発注価格情報として発注管理テーブルに発注ID情報に対応付けて記憶する。
【0064】
ここで、
図8には、注文間隔情報により特定される間隔S1ごとに、各買い注文71-1~買い注文75-1が各買い発注価格で設定されたことが示されている。このように示される各買い注文71-1~買い注文75-1において、それぞれ約定し買い約定価格情報が記憶された場合、プロセッサ112は、当該買い約定価格情報により特定される価格に利益確定幅情報により特定される価格を加算して、売り発注価格情報を生成する。
図8によれば、買い注文71-1の約定価格情報により特定される価格に、利益確定幅情報により特定される利益幅P1(価格)を加算することで、売り注文71-2の売り発注価格が算出され売り発注価格情報として設定されている。また、同様に、買い注文72-1の約定価格に基づいて売り注文72-2の売り発注価格が、買い注文73-1の約定価格に基づいて売り注文73-2の売り発注価格が、買い注文74-1の約定価格に基づいて売り注文74-2の売り発注価格が、買い注文75-1の約定価格に基づいて売り注文75-2の売り発注価格が、それぞれ売り発注価格情報として設定されている。
【0065】
次に、
図9Aには、縦軸に時々刻々と変動する金融商品の価格が、横軸に時間がそれぞれ配置されている。すなわち、この金融商品は、曲線51に示すように時間の変化と共に取引相場における相場価格が変化したことが示されてる。
図9Aによると、上記の通りなされた各買い注文(買い注文71-1~買い注文75-1)により購入された金融商品に対して、上記のとおり売り発注価格がそれぞれ設定され、現在の相場価格が当該価格を上回ったときにそれぞれ売り注文がされたことが示されている。
【0066】
なお、
図6及び
図7の例においては、基本的には、
図8及び
図9A~
図9Eで示された買い注文における処理の場合について説明した。しかし、売り注文を行う場合も同様である。すなわち、プロセッサ112は、現在の相場価格が注文管理テーブルの売り発注価格情報で特定された売り発注価格を上回った場合には、当該発注IDにより特定される売り注文の注文情報を生成する。そして、当該売り注文が約定した場合には、プロセッサ112は、約定価格を売り約定価格情報として記憶し、約定したことをユーザに通知する。
【0067】
以上、本開示においては、より効率的に金融商品の発注を可能にする処理装置、処理プログラム及び処理方法を提供することができる。
【0068】
5.変形例
本開示では、利益確定幅情報として、一例として利益幅P1を用いた場合を示した。当該利益幅P1は、本開示ではたまたま注文間隔情報として設定された間隔S1と同じであるが、当然これらの各数値は同じである必要はない。例えば、利益幅P1は、間隔S1の半分や倍など間隔S1に基づいて算出可能な任意の値を設定することも可能であるし、間隔S1と無関係な任意の値を設定することも可能である。
【0069】
また、本開示では、注文間隔情報として設定された間隔S1で上限値及び下限値により特定有れる範囲を分割することによって、各買い発注価格を設定した。しかし、買い注文価格の間隔S1は、常に等間隔に設定する必要はなく、上限値又は下限値のいずれか一方に向かってその幅が徐々に大きくなるように設定してもよいし、任意の間隔を複数設けてもよい。また、本開示では間隔S1により買い発注価格が5個設定される場合については説明したが、当然買い発注価格は1個でもよいし、その個数は特定の個数のみには限らない。
【0070】
また、本開示では、上限情報及び下限情報として上限値及び下限値のいずれをも用いる場合について説明したが、これらのうちのいずれか一つのみを用いることも可能である。
【0071】
また、本開示では、
図5~
図7の各処理フローにおいて買い注文をし、その後売り注文をするという売買の例を説明しているが、当然その逆、つまり売り注文をし、その後買い注文をするという売買であっても、好適に本開示に係るシステムを利用することができる。例えば、プロセッサ112は、
図5のS111に示す注文設定情報として、現在所有する金融商品のうち、注文対象(つまり、売り対象)となる金融商品を特定する情報、上限情報(つまり、売り発注する相場価格の価格幅の上限値)、下限情報(つまり、売り発注する相場価格の価格幅の下限値)、注文間隔情報(つまり、売り注文の発注をする相場価格の間隔を示す情報)、利益確定幅情報(つまり、注文間隔情報等によって決められた発注価格でなされた売り注文された金融商品に対して、買い注文を発注する際の発注価格を決めるための情報。すなわち、売り注文によって売却された金融商品の販売価格に、利益確定幅情報によって規定された利益幅を減算することによって、買い注文を発注するときの発注価格が決められる。)、及び損切幅情報(つまり、注文間隔情報等によって決められた発注価格でなされた売り注文された金融商品について、現在の相場価格が損切幅情報によって規定されている価格よりも上回る場合には、利益確定幅情報に関係なく買い注文をするための情報である。)を受信する。そして、プロセッサ112は、
図5に示すS112~S115と同様の処理により、注文管理テーブル及び発注管理テーブルに各情報を記憶し、端末装置200に注文が正常になされたことを送信する。
【0072】
次いで、プロセッサ112は、
図6のS214に示すように売り発注価格を上回った発注があるか否かを判断する。そして、プロセッサ112は、S215に示すように直近の取引から十分な時間(注文管理テーブルの時間間隔情報で規定された時間)が経過したか否かを判断し、S216に示すように許容差情報に基づく評価を行い、S217に示すように最大注文数量情報に基づく評価を行い、S218に示すように稼働時間内か否かの評価を行い、その結果に応じて売り注文の発注を確定する。
【0073】
次いで、プロセッサ112は、
図7のS311に示すように発注した売り注文が約定すると、S312~S314に示すように約定価格を記憶し、買い発注価格を算出するとともに、約定を通知する。
【0074】
また、本開示では、管理装置100において買い注文又は売り注文に対する発注に係る処理をする場合について説明したが、当然に端末装置200に一部の処理を分散するか、端末装置200のみでこれらの処理を行ってもよい。すなわち、処理装置は、管理装置100のみを意味する場合もあれば、管理装置100、端末装置200及び他の装置の組み合わせを意味する場合もあれば、端末装置200のみを意味する場合もある。
【0075】
また、特に詳しく説明はしていないが、本開示に係る処理プログラムは、管理装置100又は端末装置200にインストールされたローカルアプリケーションプログラムとして提供されてもよいし、他のサーバ装置等によってウェブアプリケーションプログラムとして管理装置100又は端末装置200に提供されてもよい。後者の場合には、他のサーバ装置等が処理装置として機能することが可能である。
【0076】
本明細書で説明される処理及び手順は、実施形態において明示的に説明されたものによってのみならず、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理及び手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することによって実現される。また、本明細書で説明される処理及び手順は、それらの処理・手順をコンピュータ処理プログラムとして実装し、表示装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0077】
本明細書中で説明される処理及び手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールによって実行される旨が説明されたとしても、そのような処理又は手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、及び/又は、複数のモジュールによって実行されるものとすることができる。また、本明細書中で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリ又は複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェア及びハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、又は、より多い構成要素に分解することによって実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 処理システム
100 管理装置
200 端末装置