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特許7395210ミクロスフェアに基づく注射用セレコキシブ製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ミクロスフェアに基づく注射用セレコキシブ製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/415 20060101AFI20231204BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231204BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231204BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231204BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231204BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A61K31/415
A61K47/34
A61K47/10
A61K9/16
A61P19/02
A61P29/00 101
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022507645
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020045099
(87)【国際公開番号】W WO2021026289
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】62/884,526
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522048742
【氏名又は名称】アヴィデンス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, アン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-153348(JP,A)
【文献】Colloids and Surfaces B: Biointerfaces,2013年,Vol.111,pp.289-296
【文献】Journal of Controlled Release,1997年,Vol.48,pp.259-268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmの直径を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出する、生分解性ミクロスフェア。
【請求項2】
前記ミクロスフェアの乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から80:20である、請求項1に記載の生分解性ミクロスフェア。
【請求項3】
前記ミクロスフェアが75:25の乳酸対グリコール酸のモル比を有する、請求項1または2に記載の生分解性ミクロスフェア。
【請求項4】
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の生分解性ミクロスフェア。
【請求項5】
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間連続的に放出する、請求項1~4のいずれかに記載の生分解性ミクロスフェア。
【請求項6】
複数の生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出する、複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項7】
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項6に記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項8】
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間連続的に放出する、請求項6または7に記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項9】
前記ミクロスフェアが、(60:40から80:20の乳酸対グリコール酸のモル比を有し;(ii)1μg~2,000mgの医薬品セレコキシブを担持する、請求項6~8のいずれかに記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項10】
前記ミクロスフェアが、75:25の乳酸対グリコール酸のモル比を有する、請求項6~9のいずれかに記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項11】
(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出する、注射用製剤。
【請求項12】
前記ミクロスフェアがポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間連続的に放出する、請求項11または12に記載の製剤。
【請求項14】
対象の関節関連障害を処置するための方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、生分解性ミクロスフェアを含み、前記方法は、前記対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含み、前記ミクロスフェアが、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出する、組成物。
【請求項15】
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記対象がヒトである、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象がネコ、イヌ、またはウマである、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項18】
前記障害が関節炎である、請求項14~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記障害が骨関節炎である、請求項14~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記障害が関節リウマチである、請求項14~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記方法が、前記生分解性ミクロスフェアを対象の片方または両方の膝に関節内注射することを含む、請求項14~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記ミクロスフェアが、(60:40から80:20の乳酸対グリコール酸のモル比を有し;(ii)1μg~2,000mgの医薬品セレコキシブを担持する、請求項14~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記ミクロスフェアの乳酸対グリコール酸の平均モル比が75:25である、請求項14~22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記生分解性ミクロスフェアのd90値が20μm~150μmである、請求項14~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも2か月間連続的に放出する、請求項14~24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも3か月間連続的に放出する、請求項14~25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも6か月間連続的に放出する、請求項14~26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
別々の区画に、(a)希釈剤と、(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットであって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出する、キット。
【請求項29】
生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)直径が20μm~200μmであり;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも10であることを特徴とする、生分解性ミクロスフェア。
【請求項30】
複数の生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも10であることを特徴とする、複数の生分解性ミクロスフェア。
【請求項31】
(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも10であることを特徴とする、注射用製剤。
【請求項32】
対象の関節関連障害を処置するための方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、生分解性ミクロスフェアを含、前記方法は、前記対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に前記生分解性ミクロスフェアを導入することを含み、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも10であることを特徴とする、組成物。
【請求項33】
別々の区画に、(a)希釈剤と、(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットであって、前記ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が60:40から90:10であるポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間連続的に放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨のセレコキシブ濃度)/(滑液のセレコキシブ濃度が少なくとも10であることを特徴とする、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月8日付で出願された米国特許仮出願第62/884,526号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願を通して、さまざまな刊行物が引用されている。これらの刊行物の開示内容は、本発明が属する技術の現状をより完全に説明するために、ここで参照により本願に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、セレコキシブを含有する生分解性ミクロスフェアの局所注射を介して関節関連障害を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
NSAIDおよびセレコキシブ
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は炎症および疼痛を処置する。関節疾患の処置では、疼痛を軽減し、身体機能を改善するために経口NSAIDが広く使用されている。しかし、NSAIDの大部分は、COX-1およびCOX-2ターゲットの阻害のために重篤な副作用を引き起こす。実際、そのような副作用の原因となる各薬剤には、FDAの要求に応じて、その製品ラベルにブラックボックス警告が記載されている。これらのラベルは、患者が最短期間で最小有効量を使用する必要があることも示している。ブラックボックス警告に記載されている心臓血管および胃腸の有害作用に加えて、ラベルは肝毒性や腎臓毒性などの他の全身毒性についても警告している。
【0005】
NSAIDには2つの種類がある。イブプロフェンやナプロキセンなどの非選択的COX-1/2阻害剤は、COX-1機構のために関節軟骨の生成を阻害する。これらのNSAIDは、関節痛の処置に使用されるが、実際には骨関節炎の根底にある軟骨変性の進行を促進する可能性がある。セレコキシブ(Celebrex(登録商標)(ファイザー)として販売)などの選択的COX-2阻害剤は、軟骨生成を阻害せず、非選択的COX-1/2阻害剤よりも胃腸への有害作用が少ないが、心血管の副作用は依然として重大である。
【0006】
セレコキシブ製剤
G.Gaudriaultら(国際公開第WO/2017/085561号、「A method for morselizing and/or targeting pharmaceutically active principles to synovial tissue」)は、羊の膝で治療濃度を14日間維持したセレコキシブのヒドロゲル製剤を記載している。このヒドロゲルは、ポリD、L-ラクチドとポリエチレングリコール(PEG)に基づく。
【0007】
M.Homarら(「Influence of polymers on the bioavailability of microencapsulated celecoxib」,J.of Microencapsulation、2007年11月;24(7):621-633)は、PLGA、ポリカプロラクトン、エチルセルロースなどを使用する製剤のリストを記載している。セレコキシブの放出は7日間観察された。PLGAミクロスフェアの平均直径は10~20μmであった。直径が10μm未満の粒子は、マクロファージによって貪食され、除去される。さらに、貪食された粒子は炎症を引き起こす(T.Greenら(「Polyethylene particles of a ’critical size’ are necessary for the induction of cytokines by macrophages in vitro」,Biomaterials,1998年12月;19(24):2297-2302;H.Chikauraら(「Effect of particle size on biological response by human monocyte-derived macrophages」,Biosurface and Biotribology,2016年3月.2(1):18-25);J.Matthewsら(「Comparison of the response of primary human peripheral blood mononuclear phagocytes from different donors to challenge with model polyethylene particles of known size and dose」,Biomaterials.2000年10月.21(20):2033-2044))。平均直径が10μmから20μmの場合、記載されているPLGAミクロスフェアのかなりの部分がマクロファージによる貪食を受け、注射部位から除去されて、炎症を引き起こし、それにより製剤を医薬品デポーとして不適切なものとするであろう。さらに、一部の製剤は、初期段階のバースト放出の後に薬物の放出を停止した。
【0008】
H.Y.Yangら(「Applicability of a newly developed bioassay for determining bioactivity of anti-inflammatory compounds in release studies-celecoxib and triamcinolone acetonide released from novel PLGA-based microspheres」,Pharm.Res.(2015)32:680-690)は、90日間にわたってセレコキシブの連続的な放出を達成するPLGA-ポリチオエステル製剤を記載している。しかし、ポリチオエステルがFDA承認医薬品に使用されたことはない。
【0009】
H.Thakkarら(「Enhanced retention of celecoxib-loaded solid lipid nanoparticles after intra-articular administration」,Drugs R D 2007;8(5):275-285)は、セレコキシブを最大180時間放出した固体脂質ナノ粒子製剤を記載している。
【0010】
A.Petitら(「Release behavior and intra-articular biocompatibility of celecoxib-loaded acetyl-capped PCLA-PEG-PCLA thermogels」,Biomaterials 35(2014)7919-7928);およびA.Petitら(「Sustained intra-articular release of celecoxib from in situ forming gels made of acetyl-capped PCLA-PEG-PCLA triblock copolymers in horses」,Biomaterials 35(2015):426-436)は、治療濃度のセレコキシブ(100ng/ml)をラットの皮下注射後2週間放出するヒドロゲル製剤を記載している。また、治療濃度のセレコキシブをウマの関節内注射後4週間放出したヒドロゲル製剤も記載されている。しかし、PCLA(ポリ-カプロラクトン-コ-ラクチド)がFDA承認医薬品に使用されたことはない。
【0011】
M.Janssenら(「Celecoxib-loaded PEA microspheres as an auto regulatory drug-delivery system after intra-articular injection」,J.Control Release,2016 Dec.28:244(Pt.A):30-40)は、セレコキシブを80日間以上放出したポリエステルアミド(PEA)製剤を記載している。しかし、ポリエステルアミドがFDA承認医薬品に使用されたことはない。
【0012】
H.Thakkarら(「Celecoxib incorporated chitosan microspheres:in vitro and in vivo evaluation」,J.of Drug Targeting,2004年10月-12月,Vol.12(9-10),pp.549-557)は、セレコキシブを100時間放出したキトサン製剤を記載している。キトサンがFDA承認医薬品に使用されたことはない。
【0013】
PLGAミクロスフェア
ポリ乳酸コ-グリコール酸共重合体(PLGA)で作られた生分解性ミクロスフェアが公知である。PLGAは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、および通常は両方で構成されている。PLGAは、FDAに承認された生分解性ポリマーである。これは、その優れた生分解性と生体適合性により、多くの医療および製薬分野で広く研究されている。PLGAを含有するミクロスフェアは、分解および拡散機構に起因して持続放出特性を示す。PLGAミクロスフェア調製物の薬物放出プロファイルは、薬物の特異的性質、PGAに対するPLAの比率、ポリマーのエンドキャップのタイプ(すなわち、エステルまたは酸)、ポリマーの分子量/固有粘度、ポリマーに対する薬物の負荷率、およびミクロスフェアのサイズなどの特定の要因に依存する。
【0014】
2017年、膝注射用のPLGA-トリアムシノロン-アセトニドミクロスフェア製剤であるZilretta(登録商標)がFDAに承認された。Zilretta(登録商標)は、膝骨関節炎の患者の疼痛の軽減を12週間にわたって示した。一方、Flexionに譲渡されZilretta(登録商標)に関連する米国特許第9,555,048号には、PLGA、薬物および他の共重合体のさまざまな組合せの試験と、トリアムシノロンアセトニドの放出へのそれらの効果が記載されている。この特許に記載される製剤の最長薬物放出期間は、40~50日である。
【0015】
満たされていない必要性
全身送達で観察される薬剤の副作用を最小限に抑えながら、セレコキシブを使用して関節障害を処置する優れた方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2017/085561号
【文献】米国特許第9,555,048号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】M.Homarら(「Influence of polymers on the bioavailability of microencapsulated celecoxib」,J.of Microencapsulation、2007年11月;24(7):621-633
【文献】T.Greenら、(「Polyethylene particles of a ’critical size’ are necessary for the induction of cytokines by macrophages in vitro」,Biomaterials,1998年12月;19(24):2297-2302
【文献】H.Chikauraら(「Effect of particle size on biological response by human monocyte-derived macrophages」,Biosurface and Biotribology,2016年3月.2(1):18-25)
【文献】J.Matthewsら(「Comparison of the response of primary human peripheral blood mononuclear phagocytes from different donors to challenge with model polyethylene particles of known size and dose」,Biomaterials.2000年10月.21(20):2033-2044)
【文献】H.Y.Yangら(「Applicability of a newly developed bioassay for determining bioactivity of anti-inflammatory compounds in release studies-celecoxib and triamcinolone acetonide released from novel PLGA-based microspheres」,Pharm.Res.(2015)32:680-690)
【文献】H.Thakkarら(「Enhanced retention of celecoxib-loaded solid lipid nanoparticles after intra-articular administration」,Drugs R D 2007;8(5):275-285)
【文献】A.Petitら(「Release behavior and intra-articular biocompatibility of celecoxib-loaded acetyl-capped PCLA-PEG-PCLA thermogels」,Biomaterials 35(2014)7919-7928)
【文献】A.Petitら(「Sustained intra-articular release of celecoxib from in situ forming gels made of acetyl-capped PCLA-PEG-PCLA triblock copolymers in horses」,Biomaterials 35(2015):426-436)
【文献】M.Janssenら(「Celecoxib-loaded PEA microspheres as an auto regulatory drug-delivery system after intra-articular injection」,J.Control Release,2016 Dec.28:244(Pt.A):30-40)
【文献】H.Thakkarら(「Celecoxib incorporated chitosan microspheres:in vitro and in vivo evaluation」,J.of Drug Targeting,2004年10月-12月,Vol.12(9-10),pp.549-557)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、生分解性ミクロスフェアであって、本ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmの直径を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、生分解性ミクロスフェアを提供する。
【0019】
本発明はまた、複数の生分解性ミクロスフェアであって、本ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、複数の生分解性ミクロスフェアを提供する。
【0020】
本発明はさらに、(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、本ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、注射用製剤を提供する。
【0021】
本発明はなおさらに、対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含む、対象の関節関連障害を処置するための方法であって、ミクロスフェアが、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、方法を提供する。
【0022】
最後に、本発明は、別々の区画に、(a)希釈剤と、(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットであって、ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この図は、さまざまなPLGAおよびPDLAのミクロスフェアにおけるジクロフェナク酸の放出を示す。
【0024】
図2】この図は、酸末端PLGA50:50、0.2dl/gのミクロスフェアにおけるジクロフェナク酸の放出を示す。
【0025】
図3】この図は、さまざまなPLGAおよびPDLA製剤からのジクロフェナク酸の放出を示す。
【0026】
図4】この図は、エステル末端PLGA85:15、0.6dl/gを含む両方の製剤が、10日以内に完全なジクロフェナク酸の放出をもたらしたことを示す。
【0027】
図5】この図は、さまざまなPLGA製剤の10日間での完全なジクロフェナク酸の放出を示す。
【0028】
図6】この図は、ロルノキシカム-PLGAミクロスフェア(酸末端PLGA50:50、0.2dl/g)のミクロスフェア形成を示す。
【0029】
図7】この図は、さまざまなPLGA製剤の累積セレコキシブ放出を示す。
【0030】
図8】この図は、1mg~2.5mgの量のセレコキシブを負荷し、2.5mgのPLGAと混合すると、薬物放出が有意に変化しなかったことを示す。
【0031】
図9】この図は、セレコキシブの負荷を3~3.5mgに増やして、2.5mgのエステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合すると、連続的なセレコキシブ放出が得られたことを示す。これは、セレコキシブの負荷が低い(1mg)製剤で9日目~15日目に見られたわずかな薬物放出とは異なっている。
【0032】
図10】この図において、2.5mgの50%の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gプラス50%のエステル末端PDLA、0.4dl/gは、1mgのセレコキシブを負荷すると、45日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0033】
図11】この図において、エステル末端PLGA50:50、0.4dl/gおよびエステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合した全ての比率の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gの2.5mgPLGAが、1mgのセレコキシブ負荷で、連続的な薬物放出をもたらした。
【0034】
図12】この図において、2.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgのPLGAが試験された。75%酸末端PLGA50:50、0.5dl/gを合わせた25%エステル末端PDLA、0.4dl/gは、25日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0035】
図13】この図において、3.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgのPLGAが試験された。エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合した50~75%の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gは、25日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0036】
図14】この図は、PEG1450とPLGAをブレンドすると、セレコキシブの放出がわずかに増加したことを示す。PEG1450が0mgの場合、11日目から15日目までのセレコキシブの放出は最小であったが、PEG1450を混合した3つの製剤はすべて、30日目までセレコキシブの連続的な放出を示した。
【0037】
図15】この図は、1~2.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを100μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、30日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0038】
図16】この図は、1~3.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタン(DCM)に溶解し、1,000rpmで撹拌すると、30日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0039】
図17】この図は、3.5mgおよび5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0040】
図18】この図は、5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0041】
図19】この図は、3.5mgおよび5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0042】
図20】この図は、4mg、5mg、および6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/gおよびエステル末端PLGA50:50、0.6dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、30日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0043】
図21】この図は、6mgおよび7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、20日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0044】
図22】この図は、4mg、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、70日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。予想外に、負荷率を上げても放出速度は高くならなかった。
【0045】
図23】この図は、4mg、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、111日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。より高いセレコキシブの負荷は、より速い薬物放出に関連していた。
【0046】
図24】この図は、5mg、6mg、および7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、92日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。より高いセレコキシブの負荷は、より速い薬物放出に関連していた。
【0047】
図25】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、300μlまたは400μlに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、90日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0048】
図26】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、90日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0049】
図27】この図は、5mg、6mg、および7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlまたは400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、80日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0050】
図28】この図は、5mg、6mg、および7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlまたは400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、80日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0051】
図29】この図は、5mgおよび7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、それぞれ100日間および50日間にわたりセレコキシブの連続的放出をもたらしたことを示す。
【0052】
図30】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、70日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0053】
図31】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、1.2dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、70日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0054】
図32】この図は、7.5mgのセレコキシブを2.5mgのエステル末端PLGA85:15、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、40日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0055】
図33】この図は、6mgのセレコキシブを2.5mgのエステル末端PLGA85:15、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、約30日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0056】
図34】この図は、7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgのエステル末端PLGA85:15、1.5dl/gと混合し、300μlおよび400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、35日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0057】
図35】この図は、7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgのエステル末端PLGA85:15、1.5dl/gと混合し、500μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、50日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0058】
図36】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、40日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0059】
図37】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.6dl/gと混合し、300μlおよび400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、35日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0060】
図38】この図は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.4dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、20日目から30日目および50日目から60日目までセレコキシブの放出がほとんどもたらされず、複数の月数(multiple months)にわたるセレコキシブの連続的放出に適していないことを示す。
【0061】
図39】この図は、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速し、連続的な薬物放出の持続時間が長くなったことを示す。
【0062】
図40】この図は、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速したことを示す。すべての製剤は、少なくとも60日間の連続的な薬物放出をもたらした。
【0063】
図41】この図は、酸末端PLGA75:25、0.4dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速したことを示す。すべての製剤は、少なくとも60日間の連続的な薬物放出をもたらした。
【0064】
図42A-42B】図42A~42D。最初の2つの図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブ(図42A)または6mgセレコキシブ(図42B)を、200μlジクロロメタンに溶解し、PVA(光学濃度230nm(OD230)は0.160)中で1,200rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的な薬物放出をもたらしたことを示す。図42C(上)および42D(下)は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gおよび5mg(図42C)または6mg(図42D)セレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、50ml PVA(OD230=0.160)中で1,200rpmで2分間、続いて500rpmで2時間撹拌し、回収し、水で洗浄し、凍結乾燥することにより形成されたミクロスフェアの顕微鏡画像を示す。
図42C-42D】図42A~42D。最初の2つの図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブ(図42A)または6mgセレコキシブ(図42B)を、200μlジクロロメタンに溶解し、PVA(光学濃度230nm(OD230)は0.160)中で1,200rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的な薬物放出をもたらしたことを示す。図42C(上)および42D(下)は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gおよび5mg(図42C)または6mg(図42D)セレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、50ml PVA(OD230=0.160)中で1,200rpmで2分間、続いて500rpmで2時間撹拌し、回収し、水で洗浄し、凍結乾燥することにより形成されたミクロスフェアの顕微鏡画像を示す。
【0065】
図43】この図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および6mgセレコキシブを、300μlジクロロメタンに溶解し、PVA(OD230=0.160)中で1,000rpmで撹拌すると、175日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0066】
図44】この図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および7.5mgセレコキシブを、200または300μlジクロロメタンに溶解し、PVA(OD230=0.160)中で1,000または1,200rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0067】
図45】この図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、PVA(OD230=0.160)中で1,000rpmまたは1,200rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0068】
図46A-46B】図46Aおよび46B。これらの図は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブ(図46A)または6mgセレコキシブ(図46B)を、200μlジクロロメタンに溶解し、PVA(OD230=0.05)中で1,000rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0069】
図47A-47B】図47Aおよび47B。図47Aは、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gまたは0.9dl/g、および5mgセレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、PVA(OD230=0.160)中で1,200rpmで撹拌すると、少なくとも100日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。図47Bは、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.9dl/gおよび5mgセレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、50ml PVA(OD230=0.160)中で1,200rpmで2分間、続いて500rpmで2時間撹拌し、回収し、水で洗浄し、凍結乾燥することにより形成されたミクロスフェアの顕微鏡画像を示す。
【0070】
図48】この図は、ルイスラット(Lewis rat)の両側の膝に本製剤5mgを注射した後の血漿セレコキシブ濃度を示す。
【0071】
図49A-49C】図49A~49C。これらの図は、ラットのモノヨード酢酸(MIA)骨関節炎疼痛モデルで本製剤を使用した結果を示す。具体的には、示されているデータには、Von Freyフィラメント試験(図49A)、熱痛覚過敏試験(図49B)、および後肢の示差重量負荷試験(test for differential weight bearing)(図49C)の結果が含まれている。
【0072】
図50A-50B】図50A~50D。これらの図は、100mg PLGAに封入したセレコキシブ製剤をビーグル犬の両側の膝に注射した後の関節組織(すなわち、滑液(図50A)、滑膜(図50B)、大腿骨軟骨(図50C)、および脛骨軟骨(図50D))のセレコキシブ濃度を示す。
図50C-50D】図50A~50D。これらの図は、100mg PLGAに封入したセレコキシブ製剤をビーグル犬の両側の膝に注射した後の関節組織(すなわち、滑液(図50A)、滑膜(図50B)、大腿骨軟骨(図50C)、および脛骨軟骨(図50D))のセレコキシブ濃度を示す。
【0073】
図51】この図は、100mg PLGAに封入したセレコキシブ製剤をビーグル犬の両側の膝に注射した後のセレコキシブ血漿濃度を示す。
【0074】
図52】この図は、ビーグル犬にセレコキシブを毎日5mg/kg経口投与した後の、血漿および関節組織のセレコキシブ濃度を比較している。
【0075】
図53A-53B】図53Aおよび53B。図53Aは、ビーグル犬にセレコキシブを毎日5mg/kg経口投与した後の、関節組織内のセレコキシブの濃度比(すなわち、(i)滑膜と滑液、および(ii)大腿骨軟骨と滑液)を示す。図53Bは、ビーグル犬に100mg PLGA-セレコキシブを膝注射した後の、関節組織内のセレコキシブの濃度比(すなわち、(i)滑膜と滑液、(ii)大腿骨軟骨と滑液、および(iii)脛骨軟骨と滑液)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
発明の詳細な説明
本発明は、セレコキシブを含有する生分解性ミクロスフェア、および関節関連障害を処置するためにそれらを使用する方法を提供する。
【0077】
定義
本願では、次のように規定される意味を持つ特定の用語が使用される。
【0078】
本明細書において使用される、「生分解性ミクロスフェア」は、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み、このマトリックスには、ポリ乳酸(PLA)のみ、ポリグリコール酸(PGA)のみ、または乳酸とグリコール酸単位のポリマーの組合せを含めることができる。ある特定の乳酸とグリコール酸の比(例えば、50:50~100:0)の場合、ミクロスフェアの乳酸含有量が高いほど、分解が遅くなり、したがって安定性が高くなる。逆に、そのような比の場合、ミクロスフェアのグリコール酸含有量が高いほど、分解が速くなり、安定性が低くなる。一実施形態では、生分解性ミクロスフェアは、乳酸とグリコール酸単位の組合せを含有し、ここで乳酸とグリコール酸単位のモル比(すなわち、「乳酸対グリコール酸比」または「L:G比」)は、0:100、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5、または100:0である。もう一つの実施形態では、生分解性ミクロスフェアは、乳酸とグリコール酸のモル比が5:95から20:80、20:80から40:60、40:60から50:50、50:50から60:40、60:40から80:20、80:20から100:0、50:50から100:0、60:40から90:10、70:30から80:20、50:50から80:20、50:50から90:10、60:40から70:30、80:20から90:10、または90:10から100:00である、乳酸単位とグリコール酸単位の組合せを含有する。本発明で使用される生分解性ミクロスフェアの集団は、ミクロスフェアの乳酸とグリコール酸のモル比に関して均一であっても不均一であってもよい。一実施形態では、生分解性ミクロスフェアの集団は、ミクロスフェアの乳酸とグリコール酸のモル比に関して均一である(例えば、集団には、乳酸とグリコール酸のモル比が75:25であるミクロスフェアのみが含まれる)。もう一つの実施形態では、生分解性ミクロスフェアの集団は、不均一である(例えば、集団には、(i)乳酸とグリコール酸のモル比が70:30であるミクロスフェアと、(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が80:20であるミクロスフェアの両方が含まれる)。好ましい実施形態では、本発明のミクロスフェアは、固有粘度が0.1~2.4dl/g(例えば、0.16~1.7dl/g)であり、分子量が1,000~600,000(例えば、7,000~240,000)であるPLGAを含有する。
【0079】
対象の生分解性ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmの直径を有し、(ii)治療薬(例えば、セレコキシブ)を非共有結合的に担持することができ、(iii)そのポリマー組成に応じて、例えば、適した関節関連組織に配置した場合、1か月間から6カ月間にわたって続く期間にわたって分解される。ミクロスフェアの直径(およびd90値)には、例えば、以下が含まれる:(i)1μm~20μm、20μm~40μm、40μm~60μm、60μm~80μm、80μm~100μm、100μm~120μm、120μm~140μm、140μm~160μm、160μm~180μm、180μm~200μm、200μm~250μm、250μm~300μm、300μm~350μm、350μm~400μm、400μm~450μmまたは450μm~500μm;(ii)20μm、40μm、60μm、80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μmまたは500μm;および(iii)20μm~100μm、20μm~150μm、50μm~100μmまたは50μm~150μm。対象の生分解性ミクロスフェアは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含むことができる。生分解性PLGAミクロスフェア(乳酸とグリコール酸単位のモル比が定義されているその均一および不均一集団を含む)は、数ある供給源の中でも、Degradex(登録商標)製品の形でMillipore-Sigma(マサチューセッツ州バーリントン)、Resomer(登録商標)製品の形でEvonik Industries(エッセン、ドイツ)から市販されている。
【0080】
本明細書において使用される、医薬品のセレコキシブおよび生分解性ミクロスフェアに関して、「担持する」という用語は、医薬品のセレコキシブが、該ミクロスフェアの生分解の間にミクロスフェアから放出されることが可能になるように、生分解性ミクロスフェアに非共有結合しているか、別の場合には生分解性ミクロスフェアの中またはその上に含まれていることを意味する。
【0081】
本明細書において使用される、「セレコキシブ」という用語は、CAS番号169590-42-5の4-[5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル]ベンゼンスルホンアミドを意味するものとする。セレコキシブは、非ステロイド性抗炎症薬である。これは市販されており、ファイザー社からCelebrex(登録商標)の商品名で販売されている。
【0082】
本明細書において使用される、「希釈剤」という用語には、限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、マンニトール(必要に応じて、懸濁性を向上させるためにミクロスフェアの上および/または中に組み込むことができる)、および水が含まれる。
【0083】
本明細書において使用される、「d90値」という用語は、指定されたサイズ範囲を有する生分解性ミクロスフェアの集団に関して、生分解性ミクロスフェアの90%が指定された範囲内の直径を有することを意味する。
【0084】
本明細書において使用される、「導入する」とは、生分解性ミクロスフェアに関して、関節液などの身体の指定された部分に送達することを意味する。生分解性ミクロスフェアを関節液に導入する方法は公知であり、それには、例えば、関節内注射が含まれる。例えば、Zilretta(登録商標)のラベルを参照されたい。生分解性ミクロスフェアをディスクに注入するための方法は既知であり、既知の動物研究に基づいて実施することができる。例えば、ポリエステルアミドミクロスフェアは、椎間板変性のイヌモデルの椎間板に注入され、良好な細胞適合性および生体適合性を有することが示された。ラットの椎間板炎モデルでは、椎間板内のバンコマイシン負荷PLGAミクロスフェアが、静脈内のバンコマイシンよりも優れた有効性で、感染性椎間板炎を制御および軽減することが示された。例えば、WilliemsらおよびWangらを参照されたい。
【0085】
本明細書において使用される、「関節関連障害」には、限定されないが、骨関節炎、滑膜炎、血友病性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、痛風性関節炎、化膿性または感染性関節炎、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィー、強皮症、強直性脊椎炎、有痛性骨萎縮症(algodystrophy)、軟骨無形成症、パジェット病、ティーツェ症候群または肋軟骨炎、線維筋痛症、神経原性または神経障害関節炎、関節症、サルコイドーシス、穀粉症、軟骨損傷、関節水症(hydarthrosis)、周期性疾患、リウマチ性脊椎炎、離断性骨軟骨炎、肥厚性(hypertropic)関節炎、エルシニア関節炎、ピロリン酸関節炎、関節炎の風土病型、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、強皮症、強直性脊椎炎、椎間板変性症、慢性腰痛、慢性首痛、股関節形成不全、骨軟骨症、肘関節形成不全、外傷に起因する関節損傷、急性および亜急性滑液包炎、急性および亜急性非特異的腱鞘炎および上顆炎、急性リウマチ性心炎および強直性脊椎炎、腱鞘炎、上顆炎、滑膜炎、坐骨神経痛、ならびに他の形態の神経根痛が含まれる。一実施形態では、関節関連障害には、膝関節全置換術または部分置換術、股関節全置換術または部分置換術、足関節全置換術または部分置換術、関節鏡視下または開放関節手術、マイクロフラクチャー、自家軟骨細胞移植、モザイクプラスティ、デブリードマンおよび洗浄、靭帯修復、腱修復、回旋腱板修復、半月板手術、または滑膜切除術などの外科的関節手術からの回復に関連する不快感、炎症またはその他の兆候が含まれる。
【0086】
本明細書において使用される、「医薬品のセレコキシブ」という用語には、限定されないが、セレコキシブおよびその医薬塩(例えば、セレコキシブナトリウム)およびエステルが含まれる。
【0087】
「薬学的に許容され得る担体」は周知であり、それには、限定されないが、本明細書に記載される希釈剤が含まれる。
【0088】
本明細書において使用される、生分解性ミクロスフェアは、ミクロスフェアに含まれるセレコキシブの一部または全部がミクロスフェアの周囲環境に遊離する場合にセレコキシブを「放出」する。好ましくは、この放出は連続的である。例えば、1日あたりの平均放出量がXmgである複数のセレコキシブ担持生分解性ミクロスフェアでは、1日あたりに放出されるセレコキシブは、例えば、0.1Xmg~10Xmg、0.2Xmg~5Xmg、または0.5Xmg~2Xmgである。別の例では、1週間あたりの平均放出量がXmgである複数のセレコキシブ担持生分解性ミクロスフェアでは、1週間あたりに放出されるセレコキシブは、例えば、0.2Xmg~10Xmg、または0.5Xmg~2Xmgである。関節関連組織へのセレコキシブの放出は、その組織におけるその有効性に先行し得、それとは異なる。例えば、治療有効量の医薬品セレコキシブを関節の滑液に2か月間放出する生分解性ミクロスフェアは、3カ月間の治療効果をもたらす可能性がある。
【0089】
本明細書において使用される、「対象」という用語には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ラットおよびマウスなどの哺乳動物が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。もう一つの好ましい実施形態では、対象は、ネコ、イヌ、またはウマである。
【0090】
本明細書において使用される、「適した関節関連組織」という語句には、本発明のセレコキシブ含有生分解性ミクロスフェアから放出されるセレコキシブが関節で作用することができるように、該ミクロスフェアを保持できる関節、関節の周囲組織、椎間板、または椎間板の周囲組織の任意の部分が含まれる。適した関節関連組織には、限定されないが、(i)関節腔および関節周囲腔;(ii)滑液包、滑膜腔、滑膜表層を備えた関節包、およびその中に含まれる体液;ならびに(iii)結合および収縮組織(例えば、関節軟骨、靱帯、腱および筋肉)が含まれる。
【0091】
本明細書において使用される、生分解性ミクロスフェアに「適したマトリックス」には、限定されないが、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス;ヒドロゲルマトリックス(例えば、ポリD,L-ラクチドおよびポリエチレングリコール(PEG)に基づくもの);ポリ-カプロラクトンマトリックス;エチルセルロースマトリックス;PLGA-ポリチオエステルマトリックス;固体脂質ナノ粒子マトリックス;アセチルキャップPCLA-PEG-PCLAサーモゲルマトリックス;ポリエステルアミド(PEA)マトリックス;およびキトサンマトリックスが含まれる。好ましい実施形態では、適したマトリックスは、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスである。
【0092】
本明細書において使用される、生分解性ミクロスフェアに担持される医薬品セレコキシブに関して、「治療有効量」という用語は、対象の関節の1つの中または周囲に導入される生分解性ミクロスフェアの総用量によって集合的に担持される医薬品セレコキシブの量を指す。一つの実施形態では、有効量は、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,050mg、1,100mg、1,150mg、1,200mg、1,250mg、1,300mg、1,350mg、1,400mg、1,450mg、1,500mg、1,550mg、1,600mg、1,650mg、1,700mg、1,750mg、1,800mg、1,850mg、1,900mg、1,950mgまたは2,000mgである。別の実施形態では、有効量は、1μg~10μg、10μg~50μg、50μg~100μg、100μg~150μg、150μg~200μg、200μg~250μg、250μg~300μg、300μg~350μg、350μg~400μg、400μg~450μg、450μg~500μg、500μg~550μg、550μg~600μg、600μg~650μg、650μg~700μg、700μg~750μg、750μg~800μg、800μg~850μg、850μg~900μg、900μg~950μg、950μg~1mg、1mg~10mg、10mg~50mg、50mg~100mg、100mg~150mg、150mg~200mg、200mg~250mg、250mg~300mg、300mg~350mg、350mg~400mg、400mg~450mg、450mg~500mg、500mg~550mg、550mg~600mg、600mg~650mg、650mg~700mg、700mg~750mg、750mg~800mg、800mg~850mg、850mg~900mg、900mg~950mg、950mg~1,000mg、1,050mg~1,100mg、1,100mg~1,150mg、1,150mg~1,200mg、1,200mg~1,250mg、1,250mg~1,300mg、1,300mg~1,350mg、1,350mg~1,400mg、1,400mg~1,450mg、1,450mg~1,500mg、1,500mg~1,550mg、1,550mg~1,600mg、1,600mg~1,650mg、1,650mg~1,700mg、1,700mg~1,750mg、1,750mg~1,800mg、1,800mg~1,850mg、1,850mg~1,900mg、1,900mg~1,950mgまたは1,950mg~2,000mgである。さらなる実施形態では、有効量は、1μg~250μg、250μg~500μg、500μg~750μg、750μg~1mg、1mg~250mg、250mg~500mg、500mg~750mg、750mg~1,000mg、1,000mg~1,250mg、1,250mg~1,500mg、1,500mg~1,750mgまたは1,750mg~2,000mgである。なおさらなる実施形態では、有効量は、1μg~500μg、500μg~1mg、1mg~500mg、10mg~500mg、500mg~1,000mg、1,000mg~1,500mgまたは1,500mg~2,000mgである。さらなる実施形態では、治療有効量のセレコキシブは、例えば以下の滑液中のセレコキシブ濃度を達成するのに十分な量である:0.1ng/ml、0.2ng/ml、0.3ng/ml、0.4ng/ml、0.5ng/ml、0.6ng/ml、0.7ng/ml、0.8ng/ml、0.9ng/ml、1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、4ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、40ng/ml、60ng/ml、80ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、140ng/ml、160ng/ml、180ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、300ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、500ng/ml、550ng/ml、600ng/ml、650ng/ml、700ng/ml、750ng/ml、800ng/ml、850ng/ml、900ng/ml、950ng/ml、1,000ng/ml、2,000ng/ml、3,000ng/ml、4,000ng/ml、5,000ng/ml、6,000ng/ml、7,000ng/ml、8,000ng/ml、9,000ng/ml、10,000ng/ml、20,000ng/ml、0.1ng/ml~0.5ng/ml、0.5ng/ml~1ng/ml、1ng/ml~5ng/ml、5ng/ml~10ng/ml、10ng/ml~15ng/ml、15ng/ml~20ng/ml、20ng/ml~25ng/ml、25ng/ml~50ng/ml、50ng/ml~75ng/ml、75ng/ml~100ng/ml、100ng/ml~125ng/ml、125ng/ml~150ng/ml、150ng/ml~200ng/ml、200ng/ml~300ng/ml、300ng/ml~400ng/ml、400ng/ml~500ng/ml、500ng/ml~600ng/ml、600ng/ml~700ng/ml、700ng/ml~800ng/ml、800ng/ml~900ng/ml、900ng/ml~1,000ng/ml、1,000ng/ml~2,000ng/ml、2,000ng/ml~3,000ng/ml、3,000ng/ml~4,000ng/ml、4,000ng/ml~5,000ng/ml、5,000ng/ml~6,000ng/ml、6,000ng/ml~7,000ng/ml、7,000ng/ml~8,000ng/ml、8,000ng/ml~9,000ng/ml、9,000ng/ml~10,000ng/mlまたは10,000ng/ml~20,000ng/ml。
【0093】
本明細書において使用される、障害に罹患した対象を「処置すること」には、限定されないが、(i)障害の進行を遅らせる、止めるまたは逆転させること、(ii)障害の症状(例えば、疼痛)の進行を遅らせる、止めるまたは逆転させること、(iii)障害の再発の尤度を低下させること、および/または(iv)障害の症状が再発する尤度を低下させることが含まれる。好ましい実施形態では、障害に罹患した対象を処置することとは、(i)障害の進行を、理想的には障害を排除する程度まで逆転させること、および/または(ii)障害の症状の進行を、理想的には症状を排除する程度まで逆転させることを意味する。
【0094】
本発明の実施形態
本発明は、セレコキシブを使用して関節関連障害を処置するための予想外に優れた方法を提供することによって、当技術分野において満たされていない必要性を解決する。本発明は、セレコキシブを経時的に放出するセレコキシブ担持ミクロスフェアを介してこれを行う。
【0095】
具体的には、本発明は、生分解性ミクロスフェアであって、本ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmの直径を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、生分解性ミクロスフェアを提供する。
【0096】
本発明の生分解性ミクロスフェアの一つの実施形態では、ミクロスフェアの乳酸とグリコール酸のモル比が100:0から50:50である。好ましくは、本発明のミクロスフェアは、(i)20μm~200μmの直径を有し;(ii)75:25の乳酸対グリコール酸のモル比を有する。
【0097】
本発明の生分解性ミクロスフェアのもう一つの実施形態では、それは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。PEGは、生分解性ミクロスフェアの形成に使用するのに適した任意の種類であってよい(例えば、PEG1450(Polysciences,Inc.,Warrington,PA))。さらに、PEGとPLGAの比は、生分解性ミクロスフェアの形成に使用するのに適した任意の比であってよい(例えば、25:100、50:100、75:100または100:100)。
【0098】
本発明の生分解性ミクロスフェアのさらに別の実施形態では、生分解性ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、1か月よりも長い間セレコキシブを放出する。好ましくは、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、セレコキシブを少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも12カ月の間放出する。
【0099】
以下のセレコキシブ含有生分解性ミクロスフェアは、本発明の好ましい実施形態である。ミクロスフェア集団は、エステル末端PLGA75:25(すなわち、L:G比が75:25)、0.5~1.0dl/gと、50%~75%のセレコキシブの負荷(セレコキシブ/(セレコキシブ+PLGA)として計算)を含む。例えば、各2.5mgのPLGA75:25、0.6dl/g、エステル末端に対し、5mgセレコキシブが封入されて7.5mgミクロスフェアを形成する。別の例では、各2.5mgのエステル末端PLGA75:25、0.9dl/gに対し、5mgセレコキシブが封入されて7.5mgミクロスフェアが形成される。各2.5mg PLGAと5mgセレコキシブの場合、ミクロスフェアは、PLGAとセレコキシブを200μlのジクロロメタンに溶解し、50mlの0.5~1.5%ポリ-ビニル-アルコール(PVA、w/v、分子量31~50K、98~99%加水分解)の中心に注入し、50mlビーカー中、磁気撹拌棒(長さ2cm、直径0.7cm)で1,200rpmで2分間、その後約500rpmで2時間撹拌することによって調製される。PVA濃度は、230nmの波長で吸収が0.160であるように調整される。
【0100】
本発明はまた、複数の生分解性ミクロスフェアであって、本ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、複数の生分解性ミクロスフェアを提供する。
【0101】
本発明の複数の生分解性ミクロスフェアのある実施形態では、ミクロスフェアは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。
【0102】
本発明の複数の生分解性ミクロスフェアの別の実施形態では、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、1か月よりも長い間セレコキシブを放出する。好ましくは、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、セレコキシブを少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも12カ月の間放出する。
【0103】
本発明の複数の生分解性ミクロスフェアのさらなる実施形態では、ミクロスフェアは、(i)20μm~200μmのd90値を有し;(ii)100:0~50:50の乳酸対グリコール酸のモル比を有し;(iii)1μg~500mgの医薬品セレコキシブを担持する。
【0104】
本発明は、(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、注射用製剤をさらに提供する。
【0105】
本発明の製剤のある実施形態では、ミクロスフェアは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。
【0106】
本発明の製剤の別の実施形態では、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、1か月よりも長い間セレコキシブを放出する。好ましくは、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、セレコキシブを少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも12カ月の間放出する。
【0107】
本発明はなおさらに、対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含む、前記対象の関節関連障害を処置するための方法であって、前記ミクロスフェアが、(i)1μm~500μmのd90値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、方法を提供する。
【0108】
本発明の方法の一実施形態では、ミクロスフェアは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。
【0109】
本発明の方法の好ましい実施形態では、対象はヒトである。本発明の方法のもう一つの好ましい実施形態では、対象はネコ、イヌ、またはウマである。本発明の方法のもう一つの好ましい実施形態では、障害は関節炎(例えば、骨関節炎または関節リウマチ)である。
【0110】
本発明では、生分解性ミクロスフェアは、対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に、問題の組織に適切な任意の既知の方法を使用して導入することができる。例えば、組織が膝関節の滑液である本発明の方法の好ましい実施形態では、方法は、生分解性ミクロスフェアを対象の片方または両方の膝の滑液に関節内注射することを含む。もう一つの実施形態では、本発明の方法は、複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、またはそれより多く)実施される。その実施形態では、その後、この方法は、実施されるたびに、前に実施された時から適した期間が経過した後に実施される。この適した時間は、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、またはそれより長い期間であり得る。ミクロスフェアに基づく医薬品およびそれらを送達する方法は、少なくとも一般的に公知である(例えば、Zilretta(登録商標)(関節内使用のためのトリアムシノロンアセトニド徐放性注射用懸濁剤(Flexion));およびサンドスタチンLAR(登録商標)デポー(注射用懸濁剤のためのオクトレオチド酢酸塩)(ノバルティス))。
【0111】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、ミクロスフェアは、(i)d90値が20μm~200μm(例えば、20μm~150μm)であり;(ii)乳酸とグリコール酸のモル比が100:0~50:50(例えば、75:25)であり;(iii)1μg~500mgの医薬品セレコキシブを担持する。
【0112】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、1か月よりも長い間セレコキシブを放出する。好ましくは、ミクロスフェアは、適した関節関連組織に存在する場合、セレコキシブを少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも12カ月の間放出する。
【0113】
本発明は、別々の区画に、(a)(i)希釈剤および(ii)生分解性ミクロスフェア(以下に記載)を対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に導入するようにユーザーに指示するラベルのうちの一方、理想的には両方、ならびに(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む製造品(キット)をさらに提供し、該ミクロスフェアは、(i)d90値が1μm~500μm(例えば、20μm~200μm、または20μm~150μm)であり;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み(好ましくは乳酸とグリコール酸のモル比が100:0~50:50(例えば、75:25)であり);(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブ(例えば、1μg~500mgの医薬品セレコキシブ)を担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する(必要に応じて、セレコキシブを少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも12カ月間放出する)。本発明のキットの一実施形態では、ミクロスフェアは、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。適用可能な場合、本発明の方法について上記で説明した実施形態は、この製造品についても想定されている。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明のキットは、単回投与キットとして供給され、(i)セレコキシブ担持生分解性ミクロスフェアの単回投与バイアル、および(ii)希釈剤(例えば、0.9%w/w塩化ナトリウム、0.5%~1%w/wカルボキシメチルセルロースナトリウム、および0.1%w/wポリソルベート-80の無菌の透明液体溶液)の単回投与バイアルを含む。
【0115】
本発明は、生分解性ミクロスフェアを提供し、ミクロスフェアは、(i)直径が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックス(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス)を含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する。ここで、そのように放出されたセレコキシブは、(例えば、注射後14日に測定した場合に)(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比(すなわち、滑膜のセレコキシブ濃度と滑液のセレコキシブ濃度の比)が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比(すなわち、関節軟骨(例えば、大腿骨軟骨または脛骨軟骨)のセレコキシブ濃度と滑液のセレコキシブ濃度の比)が少なくとも10であることを特徴とする。上記の生分解性ミクロスフェアの成分、寸法、特色(feature)、およびセレコキシブの放出期間は、この生分解性ミクロスフェアに準用されることが想定されている。好ましい実施形態では、滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比は、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも1,500、少なくとも2,000、少なくとも2,500、少なくとも3,000、少なくとも3,500、少なくとも4,000、または少なくとも5,000である。もう一つの好ましい実施形態では、関節軟骨(すなわち、大腿骨軟骨)と滑液のセレコキシブ濃度比は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100である。さらに好ましい実施形態では、関節軟骨(すなわち、脛骨軟骨)と滑液のセレコキシブ濃度比は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100である。滑膜、滑液、および関節軟骨中のセレコキシブ濃度を測定するための方法は公知であり、多くの参考文献に例示されている。例えば、血漿および滑液中のセレコキシブ濃度を測定するための方法は、Hunterら(2004)に例示されている。滑膜中のセレコキシブ濃度を測定するための方法は、G.Gaudriaultらに例示されている。
【0116】
本発明は、複数の生分解性ミクロスフェアも提供し、該ミクロスフェアは、(i)d90値が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックス(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス)を含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する。ここで、そのように放出されたセレコキシブは、(例えば、注射後14日に測定した場合に)(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする。上記の生分解性ミクロスフェアの成分、寸法、特色、セレコキシブ投与、およびセレコキシブの放出期間は、この複数の生分解性ミクロスフェアに準用されることが想定されている。好ましい実施形態では、滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比および関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比は、上記の通りである。
【0117】
本発明は、(a)薬学的に許容され得る担体および(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤をさらに提供し、該ミクロスフェアは、(i)d90値が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックス(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス)を含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する。ここで、そのように放出されたセレコキシブは、(例えば、注射後14日に測定した場合に)(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする。上記の生分解性ミクロスフェアの成分、寸法、特色、セレコキシブ投与、およびセレコキシブの放出期間は、この注射用製剤に準用されることが想定されている。好ましい実施形態では、滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比および関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比は、上記の通りである。
【0118】
本発明は、対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含む、対象の関節関連障害を処置するための方法をさらに提供し、該ミクロスフェアは、(i)d90値が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックス(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス)を含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する。ここで、そのように放出されたセレコキシブは、(例えば、注射後14日に測定した場合に)(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比(すなわち、滑膜のセレコキシブ濃度と滑液のセレコキシブ濃度の比)が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比(すなわち、関節軟骨(例えば、大腿骨軟骨または脛骨軟骨)のセレコキシブ濃度と滑液のセレコキシブ濃度の比)が少なくとも10であることを特徴とする。上記の(i)生分解性ミクロスフェアの成分、寸法、特色、セレコキシブ投与、およびセレコキシブの放出期間、および(ii)治療適応、対象、および投与様式は、この方法に準用されることが想定されている。好ましい実施形態では、滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比および関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比は、上記の通りである。
【0119】
最後に、本発明は、別々の区画に、(a)希釈剤と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットを提供し、該ミクロスフェアは、(i)d90値が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックス(例えば、ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックス)を含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する。ここで、そのように放出されたセレコキシブは、(例えば、注射後14日に測定した場合に)(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする。上記の希釈剤、生分解性ミクロスフェアの成分、寸法、特色、セレコキシブ投与、およびセレコキシブの放出期間は、このキットに準用されることが想定されている。好ましい実施形態では、滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比および関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比は、上記の通りである。
【0120】
対象の生分解性ミクロスフェア、製剤、方法、およびキットは、本発明において、適した関節関連組織に対するものと同じように、(a)(i)硬膜外腔および神経周囲腔、(ii)患者の疼痛または炎症の部位にまたはその近くにある孔空間(foramenal space)、および(iii)損傷または手術部位への投与、ならびに(b)術後疼痛緩和(例えば、ヘルニア修復、腹壁形成術、またはバニオン切除術に起因する疼痛の緩和)などの非関節関連適応症の処置に準用されることが想定されている。
【0121】
本発明は、後に続く実施例を参照することにより、よりよく理解されることになるが、当業者は、詳述される特定の実施例が、そのあとに続く特許請求の範囲でより完全に説明される本発明の例示に過ぎないことを容易に理解する。
【実施例
【0122】
実施例1.一般的な実験材料および方法
PLGAは、ポリ-乳酸-コ-グリコール酸を指し;PDLAは、ポリ-乳酸(PLA)の一種であるポリ-D-乳酸を指し;DMSOは、ジメチルスルホキシドを指し;PVAは、ポリ-ビニル-アルコール、分子量:31-50K、98~99%加水分解を指し;PBSは、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4を指し;MWは、分子量を指す。以下のすべての実施例で使用した磁気撹拌棒は、長さ2cm、直径0.7cmである。
【0123】
(i)エステル末端PDLA、0.4dl/g:固有粘度=0.35~0.45dl/g.MW:20,000~30,000;(ii)エステル末端PDLA、0.6dl/g:固有粘度=0.55~0.65dl/g;(iii)エステル末端PDLA、2dl/g:固有粘度=1.6~2.4dl/g.MW:300,000~600,000;(iv)酸末端PLGA50:50、0.2dl/g:固有粘度=0.16~0.24dl/g.MW:7,000~17,000;(v)エステル末端PLGA50:50、0.2dl/g:固有粘度=0.16~0.24dl/g.MW:7,000~17,000;(vi)酸末端PLGA50:50、0.4dl/g:固有粘度=0.32~0.44dl/g.MW:24,000~38,000;(vii)エステル末端PLGA50:50、0.4dl/g:固有粘度=0.32~0.44dl/g.MW:24,000~38,000;(viii)酸末端PLGA50:50、0.5dl/g:固有粘度=0.45~0.6dl/g.MW:38,000~54,000;(ix)エステル末端PLGA50:50、0.5dl/g:固有粘度=0.45~0.6dl/g.MW:38,000~54,000;(x)エステル末端PLGA50:50、0.6dl/g:固有粘度=0.50~0.65dl/g;(xi)エステル末端PLGA50:50、0.7dl/g:固有粘度=0.61~0.74dl/g.MW:54,000~69,000;(xii)酸末端PLGA65:35、0.4dl/g:固有粘度=0.32~0.44dl/g.MW:24,000~38,000;(xiii)酸末端PLGA75:25、0.2dl/g:固有粘度=0.15~0.25dl/g.MW:10,000~18,000;(xiv)エステル末端PLGA75:25、0.2dl/g:固有粘度=0.16~0.24dl/g;(xv)酸末端PLGA75:25、0.4dl/g:固有粘度=0.32~0.44dl/g;(xvi)エステル末端PLGA75:25、0.6dl/g:固有粘度=0.5~0.7dl/g;(xvii)エステル末端PLGA75:25、0.65dl/g:固有粘度=0.55~0.75dl/g.MW:約97,000;(xviii)エステル末端PLGA75:25、0.9dl/g:固有粘度=0.71~1.0dl/g.MW:76,000~115,000;(xix)エステル末端PLGA75:25、1.2dl/g:固有粘度=0.9~1.3dl/g;(xx)エステル末端PLGA85:15、0.6dl/g:固有粘度=0.55~0.75dl/g.MW:190,000~240,000;および(xxi)エステル末端PLGA85:15、1.5dl/g:固有粘度=1.3~1.7dl/g.
【0124】
本明細書に記載される実験では、1種類のPVA(すなわち、1つの分子量および加水分解度のPVA)を1つの濃度(すなわち、1%)で使用して、ミクロスフェアを製造する。しかし、本発明では、他の種類のPVA(例えば、EMRPOVE PVA 4-88、ミリポアシグマ)および他のPVA濃度も同じミクロスフェアを生じることが想定されている。例えば、1%PVA、200μlジクロロメタン、および1,000rpmの撹拌を使用してある特定のミクロスフェア集団を製造する場合、0.5%PVA、300μlジクロロメタン、および1,400rpmの撹拌を使用して、本質的に同じミクロスフェア集団を製造することもできる。本発明では、PVA以外の界面活性剤を使用してミクロスフェアを製造することもできる。これらの他の界面活性剤には、例えば、一般的に公知の界面活性剤であるビタミンE、Tween(登録商標)-20、Tween(登録商標)-80、ポロキサマー、ポロキサミン、プルロニック(登録商標)ポリマー(例えばF68およびF127など)、およびコール酸ナトリウムが含まれる。同様に、本明細書に記載される実験では、ジクロロメタンを使用してミクロスフェアを製造する。しかし、本発明では、他の実験パラメータがそれに応じて調整されると仮定して、他の種類の有機溶媒(例えば、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、プロピレンカーボネート、およびテトラヒドロフラン)をジクロロメタンの代わりに用いて、本質的に同じミクロスフェアを生じてもよい。さらに、本発明では、PLGAミクロスフェアを調製するための複数の物理的な方法(例えば、回転ディスク、噴霧乾燥、およびマイクロフルイディクス)のいずれかを使用して、対象のミクロスフェアを生じてもよい。
【0125】
実施例2.ジクロフェナク酸のミクロスフェア製剤:ポリマー組成がジクロフェナク酸放出に及ぼす影響(I)
ミクロスフェアに組み込まれたNSAID、ジクロフェナク酸(2-[2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル]酢酸)で構成される医薬品デポーを調製した。製剤は、50mgのPLGAまたはPDLAと20mgのジクロフェナク酸を440μlのジクロロメタンと60μlのDMSOに溶解することにより調製した。500μlの溶液を250mlビーカー中の200mlの1%PVA(w/v、pHを2に調整)の中心に注入し、磁気撹拌棒で2,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を2,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、水で3回洗浄した。
【0126】
ミクロスフェアからのジクロフェナク酸の放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。ジクロフェナク酸濃度は、276nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0127】
図1は、さまざまなPLGAおよびPDLAのミクロスフェアにおけるジクロフェナク酸の放出を示す。エステル末端PLGA50:50、0.6dl/g製剤は、30日以内に完全なジクロフェナク酸の放出を示した。エステル末端PLGA75:25、0.65dl/g製剤は、6日目から16日目までジクロフェナク酸の放出をほとんど示さなかった。これは連続的な薬物送達には適していない。エステル末端PLGA85:15、0.6dl/g製剤は、10日目から16日目までジクロフェナク酸の放出をほとんど示さなかった。これは連続的な薬物送達には適していない。エステル末端PDLA、2dl/g製剤は、6日目から16日目までジクロフェナク酸の放出をほとんど示さなかった。これは連続的な薬物送達には適していない。
【0128】
図2は、酸末端PLGA50:50、0.2dl/gのミクロスフェアにおけるジクロフェナク酸の放出を示す。放出は14日目までに完了した。これは、複数の月数にわたる連続的な薬物送達には適していない。一部の実験では、機器の読み取り値のわずかな変動のために、累積薬物放出が100%に達しないことがある。
【0129】
実施例3.ジクロフェナク酸のミクロスフェア製剤:ポリマー組成がジクロフェナク酸放出に及ぼす影響(II)
別の一連の実験では、製剤は、5mgのPLGAまたはPDLAと2mgのジクロフェナク酸を180μlのジクロロメタンと20μlのDMSOに溶解することにより調製した。200μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v、pHを2に調整)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0130】
ミクロスフェアからのジクロフェナク酸の放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。ジクロフェナク酸濃度は、276nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0131】
図3は、さまざまなPLGAおよびPDLA製剤からのジクロフェナク酸の放出を示す。PLGA50:50、0.2dl/g、酸末端製剤は、約10日間で完全な薬物放出をもたらした。他のすべての製剤は、7日目から10日目までほとんど薬物放出をもたらさなかった。これらの製剤はいずれも、複数の月数にわたる連続的な薬物送達には適していない。
【0132】
実施例4.ジクロフェナク酸のミクロスフェア製剤:混合PLGAまたはPDLAがジクロフェナク酸放出に及ぼす影響
PLGA50:50、0.2dl/g、酸末端製剤がジクロフェナク酸を15日以内に非常に早く放出し、他の一部の製剤(エステル末端PLGA75:25、0.65dl/g、エステル末端PLGA85:15、0.6dl/g、エステル末端PDLA、0.4dl/gなど)はジクロフェナク酸の放出が遅すぎるか、または7日目後に薬物放出を停止したため、混合したPLGAまたはPDLA製剤を試験して、30日間にわたる連続的な薬物放出を達成し得る製剤を得た。
【0133】
製剤は、5mgのPLGAまたはPDLAと2mgのジクロフェナク酸を180μlのジクロロメタンと20μlのDMSOに溶解することにより調製した。5mgのPLGAまたはPDLAは、さまざまな比の酸末端PLGA50:50、0.2dl/g、エステル末端PLGA85:15、0.6dl/g、エステル末端PLGA75:25、0.65dl/g、およびPDLA、0.4dl/g、エステル末端で構成された。200μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v、pHを2に調整)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0134】
ミクロスフェアからのジクロフェナク酸の放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。ジクロフェナク酸濃度は、276nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0135】
図4は、エステル末端PLGA85:15、0.6dl/gを含む両方の製剤が、10日以内に完全なジクロフェナク酸の放出をもたらしたことを示す。エステル末端PDLA、0.4dl/gを含む両方の製剤は、4日目から9日目までジクロフェナク酸をほとんど放出しなかった。図5は、10日間での完全なジクロフェナク酸の放出を示す。これらの製剤はいずれも、複数の月数にわたる連続的な薬物放出には適していない。
【0136】
実施例5.ロルノキシカムのミクロスフェア製剤
別のNSAID、ロルノキシカム(6-クロロ-4-ヒドロキシ-2-メチル-1,1-ジオキソ-N-ピリジン-2-イル-チエノ[2,3-e]チアジン-3-カルボキサミド)のミクロスフェア製剤を、酸末端PLGA50:50、0.2dl/g、エステル末端PLGA75:25、0.65dl/g、エステル末端PLGA50:50、0.6dl/g、エステル末端PLGA85:15、0.6dl/g、エステル末端PDLA、0.4dl/g、およびエステル末端PDLA、2dl/gをはじめとするさまざまなPLGAおよびPDLAポリマーを用いて調製した。製剤は、20mgのPLGAまたはPDLAと2mgロルノキシカムを900μlジクロロメタンと100μlメタノールに溶解することにより調製した。1mlの溶液を50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v、pHを2に調整)の中心に注入し、磁気撹拌棒で800rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を800rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。
【0137】
図6は、ロルノキシカム-PLGAミクロスフェア(酸末端PLGA50:50、0.2dl/g)のミクロスフェア形成を示す。結晶ロッドとスパイクは、ジクロロメタンの蒸発とロルノキシカムの沈殿の間に形成された。ロルノキシカム結晶の結晶ロッドとスパイクは、ミクロスフェアの形成を妨げた。これらの製剤はいずれも、複数の月数にわたるロルノキシカムの連続的な薬物送達には適していない。
【0138】
実施例6.セレコキシブのミクロスフェア製剤:ポリマー組成がセレコキシブ放出に及ぼす影響
製剤は、2.5mg PLGAと1mgセレコキシブを100μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。100μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0139】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0140】
図7は、さまざまなPLGA製剤の累積セレコキシブ放出を示す。酸末端PLGA50:50、0.2dl/g、酸末端PLGA50:50、0.4dl/g、酸末端PLGA50:50、0.5dl/g、およびPLGA65:35、0.4dl/g、酸末端は、それぞれ、7日間、20日間、24日間、および25日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。これは、複数の月数にわたる連続的な薬物放出には適していない。
【0141】
エステル末端PLGA50:50、0.4dl/gは、30日間にわたりセレコキシブを連続的に放出し、エステル末端PLGA50:50、0.6dl/gは、37日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。低分子量およびそれに応じて固有粘度の低いPLGAは、高分子量および固有粘度の低い対応物よりも、微粒子に組み込まれた医薬品をより完全かつ迅速に放出することが可能であることが公知である。(Andersonら、’’Biodegradation and biocompatibility of PLA and PLGA microspheres’’ Advanced Drug Delivery 28(1997):5-24;Bouissouら、’’Poly(lactic-co-glycolic-acid)Microspheres’’ Polymer in Drug Delivery(2006):Chapter 7)。予想外に、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/gは、エステル末端PLGA50:50、0.6dl/g製剤よりも遅いセレコキシブの放出をもたらした。また、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/g製剤は、9日目から15日目までセレコキシブの放出をほとんどもたらさなかった。これは複数の月数にわたる(over months)連続的な薬物放出には適していない。
【0142】
酸末端PLGA75:25、0.4dl/gは、35日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。予想外に、エステル末端PLGA50:50、0.6dl/g製剤の放出曲線と比較して、セレコキシブの放出速度のほうが、酸末端PLGA75:25、0.4dl/gの薬物放出の全期間を通してより均一であった。言い換えれば、1日目~23日目の間の放出速度は、酸末端PLGA75:25、0.4dl/gのほうが高く、24日目~35日目の間の放出速度は、酸末端PLGA75:25、0.4dl/gのほうが低かった。生体内での放出期間全体を通して同じ有効な薬物濃度を維持するために、より少ない総投与量の薬物投与が必要となるため、薬物放出がより均一であることが医薬品のデポー製剤には望ましい。
【0143】
実施例7.セレコキシブのミクロスフェア製剤:セレコキシブの負荷が薬物放出に及ぼす影響
製剤は、2.5mg PLGAとさまざまな量のセレコキシブを200μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。200μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0144】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0145】
図8は、2.5mgのPLGAと混合した1mg~2.5mgのセレコキシブの負荷では、薬物放出が有意に変化しなかったことを示す。図9は、2.5mgのエステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合したセレコキシブの負荷を3~3.5mgに増やすと、連続的なセレコキシブの放出が得られたことを示す。これは、セレコキシブの負荷が低い(1mg)製剤で9日目~15日目に見られたわずかな薬物放出とは異なっている。さらに、これら2つのエステル末端PLGA50:50、0.7dl/g製剤は、少なくとも50日目までセレコキシブの連続的な放出を示した。比較すると、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/g製剤はどちらも、30から45日目までセレコキシブをほとんど放出しなかった。これは、複数の月数にわたるセレコキシブの連続的な放出には適していない。
【0146】
実施例8.セレコキシブのミクロスフェア製剤:混合PLGAポリマーがセレコキシブ放出に及ぼす影響
PLGA50:50、0.5dl/g、酸末端製剤が24日間にわたりセレコキシブを連続的に放出したため(図7)、他のPLGAポリマーとの混合により、それぞれのセレコキシブ放出を加速させ得る。製剤は、2.5mg PLGAとさまざまな量(1mg、2.5mg、または3.5mg)のセレコキシブを200μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。2.5mg PLGAは、さまざまな比の酸末端PLGA50:50、0.5dl/g、および他のPLGA/PDLAポリマーで構成された。200μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0147】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0148】
図10では、2.5mgの50%の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gプラス50%のエステル末端PDLA、0.4dl/gが、1mgのセレコキシブの負荷で、45日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0149】
図11では、エステル末端PLGA50:50、0.4dl/gおよびエステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合したすべての比率の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gの2.5mg PLGAが、1mgのセレコキシブ負荷で、連続的な薬物放出をもたらした。
【0150】
図12では、2.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgのPLGAが試験された。75%酸末端PLGA50:50、0.5dl/gを合わせた25%エステル末端PDLA、0.4dl/gは、25日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0151】
図13では、3.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgのPLGAが試験された。エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合した50~75%の酸末端PLGA50:50、0.5dl/gは、25日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0152】
実施例9.セレコキシブのミクロスフェア製剤:ポリエチレングリコール(PEG)がセレコキシブ放出に及ぼす影響
PEG/PLGAブレンドは、PLGA単独よりも、微粒子に組み込まれた医薬品をより完全かつ迅速に放出することができることが知られている。(Cleekら、’’Microparticles of poly(DL-lactic-coglycolic acid)/poly(ethylene glycol)blends for controlled drug delivery.’’J Control Release 48(1997):259-268;Morlockら、’’Erythropoietin loaded microspheres prepared from biodegradable LPLG-PEO-LPLG triblock copolymers:protein stabilization and in vitro release properties.’’J Control Release,56(1-3)(1998):105-15;Yeh,’’The stability of insulin in biodegradable microparticles based on blends of lactide polymers and polyethylene glycol.’’J Microencapsul,17(6)(2000):743-56.)。
【0153】
製剤は、2.5mgエステル末端PLGA50:50、0.5dl/g、2.5mgのセレコキシブ、および0.625mg、1.25mg、または2.5mgのPEG1450を200μlジクロロメタンに溶解することにより調製した。200μlの溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0154】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0155】
図14は、PEG1450とPLGAをブレンドすると、セレコキシブの放出がわずかに増加したことを示す。PEG1450が0mgの場合、11日目から15日目までのセレコキシブの放出は最小であったが、PEG1450を混合した3つの製剤はすべて、30日目までセレコキシブの連続的な放出を示した。
【0156】
実施例10.セレコキシブのミクロスフェア製剤:酸末端PLGA75:25、0.4dl/gに基づくミクロスフェア製剤
製剤は、2.5mgPLGAとさまざまな量(1mg~5mg)のセレコキシブを100μlまたは200μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmまたは1,200rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmまたは1,200rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0157】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0158】
図15は、1~2.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを100μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、30日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0159】
図16は、1~3.5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、30日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0160】
図17は、3.5mgおよび5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0161】
図18は、5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0162】
図19は、3.5mgおよび5mgのセレコキシブを負荷した2.5mgの酸末端PLGA75:25、0.4dl/gを200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで撹拌すると、60日間にわたる連続的な薬物放出がもたらされたことを示す。
【0163】
実施例11.セレコキシブのミクロスフェア製剤(I)
製剤は、2.5mg PLGAとさまざまな量(4mg~7.5mg)のセレコキシブを200μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0164】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0165】
図20は、4mg、5mg、および6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/gおよびエステル末端PLGA50:50、0.6dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、30日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0166】
図21は、6mgおよび7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.5dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、20日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0167】
図22は、4mg、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/、と混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、70日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。予想外に、負荷率を上げても放出速度は高くならなかった。
【0168】
実施例12.セレコキシブのミクロスフェア製剤(II)
製剤は、2.5mg PLGAとさまざまな量(4mg~7.5mg)のセレコキシブを200μl~400μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0169】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0170】
図23は、4mg、5mg、および6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、111日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。より高いセレコキシブの負荷は、より速い薬物放出に関連していた。
【0171】
図24は、5mg、6mg、および7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、92日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。より高いセレコキシブの負荷は、より速い薬物放出に関連していた。
【0172】
図25は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gと混合し、300μlまたは400μlに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、90日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0173】
実施例13.セレコキシブのミクロスフェア製剤(III)
製剤は、2.5mg PLGAとさまざまな量(5mg~7.5mg)のセレコキシブを300μlまたは400μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0174】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0175】
図26は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、90日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0176】
図27、28、29、および30は、5mg、6mg、および7.5mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、0.9dl/gと混合し、300μlまたは400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、80日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0177】
図31は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、エステル末端PLGA75:25、1.2dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、70日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0178】
実施例14.セレコキシブのミクロスフェア製剤(IV)
製剤は、2.5mg PLGAまたはPDLAとさまざまな量(5mg~7.5mg)のセレコキシブを200μl、300μlまたは400μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmで2分間撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0179】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0180】
図32は、7.5mgのセレコキシブを2.5mgのエステル末端PLGA85:15、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、40日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0181】
図33は、6mgのセレコキシブを2.5mgのエステル末端PLGA85:15、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、約30日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0182】
図34は、7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgのエステル末端PLGA85:15、1.5dl/gと混合し、300μlまたは400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、35日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0183】
図35は、5mgおよび7.5mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgのエステル末端PLGA85:15、1.5dl/gと混合し、500μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、50日間にわたりセレコキシブの連続的放出をもたらしたことを示す。
【0184】
図36は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.6dl/gと混合し、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、40日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0185】
図37は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.6dl/gと混合し、300μlまたは400μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、35日間にわたりセレコキシブの連続的放出がもたらされたことを示す。
【0186】
図38は、5mgおよび6mgのセレコキシブを負荷して、2.5mgエステル末端PDLA、0.4dl/gと混合し、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌することで、20日目から30日目および50日目から60日目までセレコキシブの放出がほとんどもたらされず、複数の月数にわたるセレコキシブの連続的放出に適していないことを示す。
【0187】
実施例15.セレコキシブのミクロスフェア製剤:混合PLGA組成がセレコキシブ放出に及ぼす影響
製剤は、2.5mg PLGA(さまざまな割合の混合ポリマーで構成される)とさまざまな量(3.5mg~5mg)のセレコキシブを200μlまたは300μlのジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlの1%PVA(w/v)の中心に注入し、磁気撹拌棒で1,000rpmまたは1,200rpmで撹拌して乳濁液を形成した。この乳濁液を1,000rpmまたは1,200rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄した。
【0188】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、調製したすべてのミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0189】
図39は、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速し、連続的な薬物放出の持続時間が長くなったことを示す。エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gの割合を増加させるにつれて、連続的な薬物放出の期間は、割合が75%に達するまで長くなり、少なくとも87日間の連続的な薬物放出がもたらされた。
【0190】
図40は、エステル末端PLGA50:50、0.7dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速したことを示す。25%エステル末端PLGA50:50、0.7dl/g+75%エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gは、130日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0191】
図41は、酸末端PLGA75:25、0.4dl/gと、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gを混合すると、セレコキシブの放出が減速したことを示す。25%酸末端PLGA75:25、0.4dl/g+75%エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gは、120日間にわたりセレコキシブを連続的に放出した。
【0192】
実施例16.凍結乾燥を伴うセレコキシブのミクロスフェア製剤(I)
製剤は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mg、6mg、または7.5mgセレコキシブを200μlまたは300μlジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlのPVA(230nmの吸収が0.160になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,000rpmまたは1,200rpmで2分間撹拌し、約 500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末を形成させた。
【0193】
セレコキシブのミクロスフェアへの封入効率を決定するために(ミクロスフェア中に封入されたセレコキシブ/全セレコキシブ投入量)、ミクロスフェア回収後に230nmの波長でのPVAの吸収を測定し、0.160のバックグラウンド吸収に対して正規化した。この差は、PVAへと「漏出した」セレコキシブによるものであった。PVAへと漏出したセレコキシブの量を総セレコキシブから差し引くことによって、封入されたセレコキシブの量を決定した。
【0194】
ミクロスフェアへのセレコキシブの負荷率(セレコキシブ/(セレコキシブ+PLGA))を決定するために、10mgの乾燥ミクロスフェアを40mlエタノールに添加し、一晩振盪してセレコキシブをエタノールに完全に溶解させた。エタノール中のセレコキシブ濃度は、230nmでのUV吸収によって分析された。
【0195】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、8mgの乾燥ミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0196】
図42Aおよび42Bは、200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで撹拌した2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mg(図42A)または6mg(図42B)セレコキシブが、少なくとも180日間にわたってセレコキシブを連続的に放出したことを示す。5mgおよび6mg群の封入効率はそれぞれ94.4%と93.8%であった。これは、セレコキシブがミクロスフェアにほぼ完全に封入されていることを示している。5mgおよび6mg群の負荷率は、それぞれ62.7%と62.8%であった。図42Cおよび42Dは、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gおよび5mg(図42C)または6mg(図42D)セレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで2分間、続いて500rpmで2時間撹拌し、回収し、水で洗浄し、凍結乾燥することにより形成されたミクロスフェアの顕微鏡画像を示す。
【0197】
図43は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および6mgセレコキシブを、300μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌すると、175日間にわたる連続的なセレコキシブ放出がもたらされたことを示す。図44は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および7.5mgセレコキシブを、200μlまたは300μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmまたは1,000rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的なセレコキシブ放出がもたらされたことを示す。図45は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmまたは1,200rpmで撹拌すると、180日間にわたる連続的なセレコキシブ放出がもたらされたことを示す。
【0198】
実施例17.凍結乾燥を伴うセレコキシブのミクロスフェア製剤(II)
製剤は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgまたは6mgセレコキシブを200μlジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlのPVA(230nmの吸収が0.05になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,000rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末を形成させた。
【0199】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、8mgの乾燥ミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。
【0200】
図46Aおよび46Bは、200μlジクロロメタンに溶解し、1,000rpmで撹拌した2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mg(図46A)または6mg(図46B)セレコキシブが、180日間にわたってセレコキシブを連続的に放出したことを示す。
【0201】
実施例18.凍結乾燥を伴うセレコキシブのミクロスフェア製剤(III)
製剤は、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/gまたは0.9dl/g、および5mgセレコキシブを200μlジクロロメタンに溶解することにより調製した。溶液を、50mlビーカー中の50mlのPVA(230nmの吸収が0.160になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,200rpmで2分間撹拌し、約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。4,000gで5分間の遠心分離によりミクロスフェアを回収し、50mlの水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末を形成させた。
【0202】
ミクロスフェアからのセレコキシブの放出を試験するために、8mgの乾燥ミクロスフェアを250mlの10mM PBSに添加し、37℃、80rpmで振盪した。放出研究の各時点で、ミクロスフェアを沈降させ、UV吸収を測定するために650μlのアリコートを採取し、元の溶液に戻した。PBS中に放出されたセレコキシブが完全飽和濃度の約3分の1に達した場合、250mlのPBS(ミクロスフェアを含まない)から200mlを取り出し、新鮮な200mlのPBSと交換した。セレコキシブ濃度は、230nmの波長でのUV吸収によって決定した。製剤ごとに3つのサンプルを分析した。
【0203】
図47Aは、エステル末端PLGA75:25、0.6dl/gおよび0.9dl/gの両方の製剤が、少なくとも100日間にわたり(over least 100 days)セレコキシブを連続的に放出したことを示す。0.9dl/gPLGAの放出速度は、0.6dl/gPLGAよりもわずかに低かった。図47Bは、2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.9dl/gおよび5mgセレコキシブを、200μlジクロロメタンに溶解し、1,200rpmで2分間、続いて500rpmで2時間撹拌し、回収し、水で洗浄し、凍結乾燥することにより形成されたミクロスフェアの顕微鏡画像を示す。
【0204】
実施例19.ルイスラットにおける本製剤の薬物動態
2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブを200μlジクロロメタンに溶解し、これを50mlPVA溶液(230nmの吸収が0.160になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,200rpmで2分間撹拌し、続いて約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。ミクロスフェアを4,000gで5分間遠心分離することにより回収し、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアムホテリシンBで2時間処理し、50ml滅菌水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末(「本製剤」)を形成した。複数のバッチからの乾燥粉末を、ラットへの注射のためにプールした。希釈剤は、0.9%NaCl、0.1%ポリソルベート-80、および1%カルボキシメチルセルロースとして作製した。ラットに注射する前に、乾燥粉末を65μlの希釈剤に再懸濁した。セレコキシブ濃度はLC-MS(AB Sciex TRIPLE QUAD 6500+)で分析した。
【0205】
9匹の雄ルイスラット(250~275グラム)の両側の膝に5mgの本製剤を注射した。3匹のラットを7、14、および21日目に採血によって屠殺した。図48は、セレコキシブの血漿レベルを示す。これは、経口セレコキシブ200mgQDのヒト使用で観察された血漿レベルよりもはるかに低い(ピーク血漿濃度で705ng/mlおよび約250ng/mlの平均血漿濃度)。これは、全身性の副作用の発生率が低下していることを示唆している。
【0206】
実施例20.ラットのモノヨード酢酸(MIA)骨関節炎疼痛モデル
2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブを200μlジクロロメタンに溶解し、これを50mlPVA溶液(230nmの吸収が0.160になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,200rpmで2分間撹拌し、続いて約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。ミクロスフェアを4,000gで5分間遠心分離することにより回収し、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアムホテリシンBで2時間処理し、50ml滅菌水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末(「本製剤」)を形成した。複数のバッチからの乾燥粉末を、ラットの左膝への注射用にプールした。0.9%NaCl、0.1%ポリソルベート-80、および0.5%メチルセルロースを含有する希釈剤を作製した。注射の前に、5mgの本製剤を65μlの希釈剤に再懸濁した。
【0207】
30匹の雌のスプラーグドーリーラット(約200グラム)を、3つの群、つまり、陰性対照として希釈剤のみの注射;陽性対照として希釈剤の注射と毎日のセレコキシブの経口投与;および本製剤の注射の群、に均等に分けた。0日目に、すべてのラットの左膝に希釈剤または本製剤を注射した。陽性対照群には、0日目から7日目までQD12.5mg/kgのセレコキシブを経口投与し、8日目から10日目までQD40mg/kgのセレコキシブを経口投与した。2日目に、50μlの60mg/mlモノヨード酢酸をすべてのラットの左膝に注射して関節炎を誘発した。Von Freyフィラメント試験、熱痛覚過敏試験、および後肢の示差重量負荷試験を5つの時点:0日目の投薬前;7日目および10日目経口投与前;ならびに7日目および10日目の経口投与の3時間後に実施した。本製剤の膝注射は、ビヒクル(希釈剤のみ)注射および経口セレコキシブと比較して優れた疼痛緩和をもたらした。結果を図49A~49Cに示す。
【0208】
Von Freyフィラメント試験:左後足の機械的アロディニアは、電子Von Freyフィラメント(Bioseb、フランス)に対する引っ込め閾値を決定することによって測定された。フィラメントを足底面に垂直に当てて力を増加させていった。反射的な足引っ込めを誘発するために必要な力を計算した。
【0209】
示差重量負荷試験:重量バランス変更機器(weight balance changing instrument)(YLS-11A、Jinan Yi Yan Technology Development Co、中国)を使用してラットを試験して、床にはめ込まれたフォースプレートを用いて、後足によって加えられる重量負荷を記録した。MIAを注射した足と反対側の足との間の平均体重負荷(グラム)は10秒で決定された。
【0210】
熱痛覚過敏試験:左後足の熱痛覚過敏は、放射熱に反応した足引っ込め潜時(秒)を測定するプランター熱試験を使用して測定された。
【0211】
実施例21.ビーグル犬におけるPLGA封入セレコキシブミクロスフェアの薬物動態
2.5mgエステル末端PLGA75:25、0.6dl/g、および5mgセレコキシブを200μlジクロロメタンに溶解し、これを50mlPVA溶液(230nmの吸収が0.160になるように濃度を調整)の中心に注入し、1,200rpmで2分間撹拌し、続いて約500rpmで2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させた。ミクロスフェアを4,000gで5分間遠心分離することにより回収し、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および0.25μg/mlアムホテリシンBで2時間処理し、50ml滅菌水で3回洗浄し、一晩凍結乾燥して乾燥粉末(「本製剤」)を形成した。複数のバッチからの乾燥粉末を、ビーグル犬への注射のためにプールした。希釈剤は、0.9%NaCl、0.1%ポリソルベート-80、および1%カルボキシメチルセルロースとして作製した。犬に注射する前に、乾燥粉末を1mlの希釈剤に再懸濁した。
【0212】
9匹の雄のビーグル犬(体重約10kg)の両側の膝関節に100mgの本製剤を注射した。7日目、14日目、および21目に、3匹の犬から採血をした直後に屠殺し、滑液、滑膜、大腿骨軟骨、および脛骨軟骨を両膝から採取した。これらの組織中のセレコキシブ濃度は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって分析された 手短に言えば、血液を橈側皮静脈から抗凝固剤としてEDTA-Kを含むチューブに採取し、5,000rpmで10分間遠心分離して血漿を得た。滑膜および軟骨は、組織の湿重量(g)の5倍に等しい体積(ml)のアセトニトリルに浸漬し、機械力でホモジナイズし、30分間超音波処理してセレコキシブを抽出した。抽出されたセレコキシブは、Acquity UPLCとMS/MS(Analyst 1.6.3 AB Sciexを備えたAPI4000)で定量した。
【0213】
図50A~50Dは、関節組織におけるセレコキシブ濃度を示す(すなわち、滑液(図50A)、滑膜(図50B)、大腿骨軟骨(図50C)、および脛骨軟骨(図50D))。7日目から21日目まで、滑液濃度の幾何平均は100ng/mlを超えていた。滑膜濃度の幾何平均は、100,000ng/mlを超えていた。軟骨濃度の幾何平均は、1,000ng/mlを超えていた。セレコキシブの生化学IC50は40nM(約15ng/ml)であるため、生体内で観察されたセレコキシブ濃度はIC50を大幅に上回り、治療有効性をもたらすのに十分なレベルを示している。
【0214】
図51は、血漿中のセレコキシブ濃度を示す。これは、FDAに承認された200mgQDの経口投与でヒトにおいて観察された血漿中のピーク(705ng/ml)および平均(約250ng/ml)セレコキシブ濃度よりも有意に低い(参考文献:FDA label of celecoxib;SK Paulsonら、’’Pharmacokinetics of celecoxib after oral administration in dogs and humans:effect of food and site of absorption’’ The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics.(2001).297(2):638-45)。経口投与での高い血漿濃度は、特に胃腸管系および心血管系で全身性副作用を引き起こす。本製剤で観察される低い血漿濃度は、全身性副作用を有意に減少させるはずである。
【0215】
別の試験では、3匹の雄のビーグル犬(体重約10kg)に一晩絶食条件下でQD5mg/kgのセレコキシブを経口投与した。8日投与した後、最終投与から3時間後(血漿濃度のピーク時)に、犬を採血し、屠殺し、滑液、滑膜、および大腿骨軟骨を採取した。これらの組織中のセレコキシブ濃度はLC-MSで分析した。手短に言えば、血液を橈側皮静脈から抗凝固剤としてEDTA-Kを含むチューブに採取し、5,000rpmで10分間遠心分離して血漿を得た。滑膜および軟骨は、組織の湿重量(g)の5倍に等しい体積(ml)のアセトニトリルに浸漬し、機械力でホモジナイズし、30分間超音波処理してセレコキシブを抽出した。抽出されたセレコキシブは、Acquity UPLCとMS/MS(Analyst 1.6.3 AB Sciexを備えたAPI4000)で定量した。
【0216】
図52は、血漿および関節組織中のセレコキシブ濃度を示す。滑液濃度は血漿中よりも有意に低く、血漿、滑膜、および大腿骨軟骨中のレベルは類似していた。
【0217】
驚くべきことに、滑膜と滑液の濃度比、および軟骨と滑液の濃度比は、セレコキシブの経口投与よりも本製剤のほうが有意に高かった。投与経路(膝注射と経口)が異なるにもかかわらず、同じ関節内で異なる関節コンパートメント間のセレコキシブの分布の変化は予想外であった。図53Aおよび53Bでは、滑膜と滑液の濃度比の幾何平均は、経口セレコキシブでは5.4(図53A)であるのに対し、膝注射としての本製剤では2,522(図53B)である。大腿骨軟骨と滑液の濃度比の幾何平均は、経口セレコキシブでは4.2であるのに対し、膝注射としての本製剤では49であり、膝注射としての本製剤での脛骨軟骨と滑液の濃度比(54)に一致している。言い換えれば、膝注射としての本製剤は、滑液と比較して滑膜および軟骨におけるセレコキシブの高富化を可能にした、これは予想外である。
【0218】
セレコキシブの治療作用部位は、滑膜と軟骨である。滑液と比較して滑膜と軟骨での富化が予想外に高いことは、PLGA封入セレコキシブをはるかに低い用量で関節注射して治療有効性を達成することができ、それは次にセレコキシブの全身性副作用をさらに軽減することができるため、好ましい特性である。
【0219】
参考文献
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本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmの直径を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、生分解性ミクロスフェア。
(項目2)
前記ミクロスフェアの乳酸とグリコール酸のモル比が100:0から50:50である、項目1に記載の生分解性ミクロスフェア。
(項目3)
前記ミクロスフェアが、(i)20μm~200μmの直径を有し;(ii)75:25の乳酸対グリコール酸のモル比を有する、項目1または2に記載の生分解性ミクロスフェア。
(項目4)
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、項目1~3のいずれかに記載の生分解性ミクロスフェア。
(項目5)
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間放出する、項目1~4のいずれかに記載の生分解性ミクロスフェア。
(項目6)
複数の生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、複数の生分解性ミクロスフェア。
(項目7)
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、項目6に記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
(項目8)
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間放出する、項目6または7に記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
(項目9)
前記ミクロスフェアが、(i)20μm~200μmのd 90 値を有し;(ii)100:0~50:50の乳酸対グリコール酸のモル比を有し;(iii)1μg~500mgの医薬品セレコキシブを担持する、項目6~8のいずれかに記載の複数の生分解性ミクロスフェア。
(項目10)
(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、注射用製剤。
(項目11)
前記ミクロスフェアがポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、項目10に記載の製剤。
(項目12)
前記ミクロスフェアが、適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも2カ月間放出する、項目10または11に記載の製剤。
(項目13)
対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含む、前記対象の関節関連障害を処置するための方法であって、前記ミクロスフェアが、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、方法。
(項目14)
前記ミクロスフェアが、ポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記対象がヒトである、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
前記対象がネコ、イヌ、またはウマである、項目13または14に記載の方法。
(項目17)
前記障害が関節炎である、項目13~16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記関節炎が骨関節炎である、項目13~17のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記関節炎が関節リウマチである、項目13~17のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記方法が、前記生分解性ミクロスフェアを対象の片方または両方の膝に関節内注射することを含む、項目13~19のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記ミクロスフェアが、(i)20μm~200μmのd 90 値を有し;(ii)100:0~50:50の乳酸対グリコール酸のモル比を有し;(iii)1μg~500mgの医薬品セレコキシブを担持する、項目13~20のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記ミクロスフェアの乳酸対グリコール酸の平均モル比が75:25である、項目13~21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記生分解性ミクロスフェアのd 90 値が20μm~150μmである、項目13~22のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも2か月間放出する、項目13~23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも3か月間放出する、項目13~24のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記ミクロスフェアが、セレコキシブを少なくとも6か月間放出する、項目13~25のいずれかに記載の方法。
(項目27)
別々の区画に、(a)希釈剤と、(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットであって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)ポリ乳酸-コ-グリコール酸共重合体(PLGA)マトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出する、キット。
(項目28)
生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)直径が1μm~500μmであり;(ii)適したマトリックスを含み;(iii)医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする、生分解性ミクロスフェア。
(項目29)
複数の生分解性ミクロスフェアであって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)適したマトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする、複数の生分解性ミクロスフェア。
(項目30)
(a)薬学的に許容され得る担体と(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含む注射用製剤であって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)適したマトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする、注射用製剤。
(項目31)
対象の1またはそれを超える関節の中または周囲の適した組織に生分解性ミクロスフェアを導入することを含む、前記対象の関節関連障害を処置するための方法であって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)適したマトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする、方法。
(項目32)
別々の区画に、(a)希釈剤と、(b)複数の生分解性ミクロスフェアを含むキットであって、前記ミクロスフェアは、(i)1μm~500μmのd 90 値を有し;(ii)適したマトリックスを含み;(iii)治療有効量の医薬品セレコキシブを担持し;(iv)適した関節関連組織に存在する場合に、セレコキシブを少なくとも1か月間放出し、そのように放出された前記セレコキシブは、(i)滑膜と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも20であり、かつ/または(ii)関節軟骨と滑液のセレコキシブ濃度比が少なくとも10であることを特徴とする、キット。
図1
図2
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図5
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図7
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図10
図11
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図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42A-42B】
図42C
図42D
図43
図44
図45
図46A-46B】
図47A-47B】
図48
図49A-49C】
図50A-50B】
図50C-50D】
図51
図52
図53A-53B】