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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】基礎貫通スリーブ
(51)【国際特許分類】
   E04G 15/06 20060101AFI20231204BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20231204BHJP
   E04G 11/06 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
E04G15/06 A
E02D27/01 A
E04G11/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023005772
(22)【出願日】2023-01-18
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一利
(72)【発明者】
【氏名】川上 剛史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-052282(JP,A)
【文献】特開2012-214995(JP,A)
【文献】特開2008-285955(JP,A)
【文献】実開昭60-068138(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 15/06
E02D 27/01
E04G 11/06
E04B 1/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の基礎に配管を通す貫通孔を形成するための基礎貫通スリーブにおいて、
前記基礎の厚み方向に延びるとともに、前記貫通孔を有する筒状部材と、
前記筒状部材における一端開口部の周縁部に設けられて一方の型枠の内面に当接する第1環状パッキンと、
前記筒状部材における他端開口部の周縁部に設けられて他方の型枠の内面に当接する第2環状パッキンとを備えており、
前記第1環状パッキンにおける前記コンクリートに埋設される部分は、前記筒状部材の外周面に沿って周方向に延びる第1環状部を有し、
前記第1環状部の軸方向の中間部には、前記コンクリートが流入する流入孔が設けられ
前記流入孔は、円形、楕円形及び多角形のうちのいずれかの形状であることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【請求項2】
請求項1に記載の基礎貫通スリーブにおいて、
前記第1環状パッキンには、複数の前記流入孔が前記第1環状パッキンの周方向に互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【請求項3】
請求項に記載の基礎貫通スリーブにおいて、
前記流入孔は、前記第1環状部を径方向に貫通していることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【請求項4】
請求項に記載の基礎貫通スリーブにおいて、
前記筒状部材は、前記一端開口部が基礎の屋外側に配置され、
前記第1環状部は、前記筒状部材の外周面における前記一端開口部側に沿って周方向に延びており、
前記第2環状パッキンは、前記筒状部材の外周面における前記他端開口部側に沿って周方向に延びる第2環状部を有し、
前記第1環状部の厚みは前記第2環状部の厚みよりも厚く設定されていることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【請求項5】
請求項に記載の基礎貫通スリーブにおいて、
前記第1環状パッキンは、前記第1環状部の一端部から径方向内側へ向けて延出する環状の第1覆い部を有し、前記第1覆い部によって形成された孔が前記貫通孔と連通しており、
前記第2環状パッキンは、前記第2環状部の他端部から径方向内側へ向けて延出する環状の第2覆い部を有し、前記第2覆い部によって形成された孔が前記貫通孔と連通しており、
前記第1覆い部の厚みは前記第2覆い部の厚みよりも厚く設定されていることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【請求項6】
請求項1に記載の基礎貫通スリーブにおいて、
前記第1環状パッキンにおける前記コンクリートに埋設される部分には、径方向外方へ向けて延出するフランジ部が設けられており、
前記フランジ部に前記流入孔が設けられていることを特徴とする基礎貫通スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の基礎の貫通するように設置される基礎貫通スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外から屋内、または屋内から屋外へ配管を通すための貫通孔を建物の基礎に形成する場合がある。この貫通孔を形成する際には、紙製の筒状部材からなるボイド管や、特許文献1に開示されている樹脂製、金属製またはセラミックス製の筒状部材が使用される。
【0003】
上記筒状部材を使用して基礎貫通孔を形成する場合には、まず、基礎を構成するコンクリートを打設する前に、上記筒状部材を鉄筋に固定しておく。その後、筒状部材の屋内側開口部及び屋外側開口部を閉塞するように、型枠を設置する。設置した型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化した後に、型枠を撤去する。そして、ボイド管を使用している場合には、ボイド管を撤去するが、特許文献1の基礎貫通スリーブを使用している場合には当該筒状部材を残しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-52282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の筒状部材は樹脂製であることから、ボイド管のように撤去する必要がなく、施工時の作業性がよい。さらに、特許文献1の筒状部材の両端部には、それぞれ、環状パッキンが設けられているので、型枠内に打設されたコンクリートが筒状部材の内部に流入しないようにすることができる。
【0006】
特許文献1の筒状部材を用いた施工を行う場合、打設したコンクリートが完全に固化した後に、配管を屋内側から屋外側へ通す場合を想定すると、配管を屋内側の環状パッキン内に差し込んだ後、屋外側の環状パッキンに差し込むことになる。環状パッキンの内径は、止水性を十分に確保する必要があることから、配管の外径よりも小径に設定されており、このため、配管をパッキン内に差し込む際には、環状パッキンの内面と配管の外面との間に作用する摩擦力に抗するように、配管を差込方向に強く押すことになる。このとき、環状パッキンはゴムやエラストマー等の摩擦係数の高い部材で構成されているので、配管の外面との間に作用する摩擦力が大きくなり、その結果、環状パッキンが屋外側へ向けて強く押されることになる。強く押された環状パッキンは弾性変形して筒状部材とコンクリートとの間の部分が薄肉化し、筒状部材とコンクリートとの間から抜け出てしまうおそれがある。環状パッキンが筒状部材とコンクリートとの間から一旦抜け出てしまうと、再度取り付けることは困難である。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、施工後の基礎貫通スリーブに配管を通す際にスリーブの端部に設けられているパッキンが脱落しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、コンクリート製の基礎に配管を通す貫通孔を形成するための基礎貫通スリーブを前提とすることができる。基礎貫通スリーブは、前記基礎の厚み方向に延びるとともに、前記貫通孔を有する筒状部材と、前記筒状部材における一端開口部の周縁部に設けられて一方の型枠の内面に当接する第1環状パッキンと、前記筒状部材における他端開口部の周縁部に設けられて他方の型枠の内面に当接する第2環状パッキンとを備えており、前記第1環状パッキンにおける前記コンクリートに埋設される部分は、前記筒状部材の外周面に沿って周方向に延びる第1環状部を有し、前記第1環状部の軸方向の中間部には、前記コンクリートが流入する流入孔が設けられ、前記流入孔は、円形、楕円形及び多角形のうちのいずれかの形状である。
【0009】
この構成によれば、基礎貫通スリーブによって基礎に貫通孔を形成する際には、筒状部材を鉄筋等に固定した状態で、筒状部材の一端開口部側及び他端開口部側にそれぞれ型枠を設置する。一端開口部の周縁部には第1環状パッキンが配設されているので、この第1環状パッキンが一方の型枠の内面に当接して、筒状部材の一端開口部の周縁部がシールされる。また、他端開口部の周縁部には第2環状パッキンが配設されているので、この第2環状パッキンが他方の型枠の内面に当接して、筒状部材の他端開口部の周縁部がシールされる。これにより、打設時のコンクリートが筒状部材の内部に入り込み難くなるので、基礎貫通孔の形成が阻害されることはない。
【0010】
また、打設時のコンクリートは、第1環状パッキンの流入孔に流入して固化するので、流入孔内で固化したコンクリートがアンカーのような効果を発揮し、第1環状パッキンがコンクリートに固定される。これにより、配管を第1環状パッキン内に通す際に配管の外面と第1環状パッキンの内面との間に作用する摩擦力が大きくても、第1環状パッキンが所定位置で保持されるので、脱落しなくなる。
【0011】
前記第1環状パッキンには、複数の前記流入孔が前記第1環状パッキンの周方向に互いに間隔をあけて設けられていてもよい。この構成によれば、第1環状パッキンの周方向に互いに離れた各部がコンクリートに固定されることになるので、第1環状パッキンの脱落防止効果がより一層高まる。
【0012】
前記第1環状パッキンは、前記筒状部材の外周面に沿って周方向に延びる第1環状部を有していてもよい。この場合、前記流入孔は、前記第1環状部に設けることができる。第1環状部が筒状部材の外周面に沿っていることから、この第1環状部に流入孔が設けられていることで、筒状部材に向けて流動したコンクリートが流入孔に流入し易くなる。
【0013】
前記流入孔は、前記第1環状部を径方向に貫通していてもよい。これにより、流入孔に流入して固化したコンクリートは、配管を通す際に押される方向に対して交差する形になるので、第1環状パッキンの脱落防止効果がより一層高まる。
【0014】
前記筒状部材は、前記一端開口部が基礎の屋外側に配置されていてもよい。この場合、前記第1環状部は、前記筒状部材の外周面における前記一端開口部側に沿って周方向に延びるように形成することができる。さらに、前記第2環状パッキンは、前記筒状部材の外周面における前記他端開口部側に沿って周方向に延びる第2環状部を有しており、前記第1環状部の厚みは前記第2環状部の厚みよりも厚く設定することができる。
【0015】
また、前記第1環状パッキンは、前記第1環状部の一端部から径方向内側へ向けて延出する環状の第1覆い部を有し、前記第1覆い部によって形成された孔が前記貫通孔と連通していてもよい。また、前記第2環状パッキンは、前記第2環状部の他端部から径方向内側へ向けて延出する環状の第2覆い部を有し、前記第2覆い部によって形成された孔が前記貫通孔と連通していてもよい。前記第1覆い部の厚みは前記第2覆い部の厚みよりも厚く設定することができる。すなわち、屋外側に配置される第1環状パッキンの各部の厚みが屋内側に配置される第2環状パッキンの各部の厚みよりも厚いので、屋外からの水の浸入を抑制することができる。この場合、第1環状パッキンの第1覆い部の厚みが相対的に厚くなっていることから、配管を通す際に配管によって強く押されることになるが、第1環状パッキンにコンクリートの流入孔が設けられていることで、配管によって強く押されたとしても、第1環状パッキンが脱落することはない。
【0016】
また、前記第1環状パッキンにおける前記コンクリートに埋設される部分には、径方向外方へ向けて延出するフランジ部が設けられていてもよい。この場合、前記フランジ部に前記流入孔を設けることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、第1環状パッキンにおけるコンクリートに埋設される部分に、コンクリートの流入孔が形成されているので、第1環状パッキン内に配管を通す際に当該第1環状パッキンの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る基礎貫通スリーブを使用して基礎貫通孔を形成した基礎の一例を示す断面図である。
図2】基礎貫通スリーブの側面図である。
図3】基礎貫通スリーブの縦断面図である。
図4】屋外側環状パッキンを屋外側から見た図である。
図5】屋外側環状パッキンを屋内側から見た図である。
図6】基礎貫通スリーブを鉄筋に固定し、型枠を設置した状態を示す図である。
図7】打設後のコンクリートが固化してできた基礎の縦断面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る図1相当図である。
図9】屋外側環状パッキンの縦断面図である。
図10】屋外側環状パッキンを屋外側から見た斜視図である。
図11】屋外側環状パッキンを屋内側から見た図である。
図12】本発明の実施形態3に係る図1相当図である。
図13】屋外側環状パッキンの縦断面図である。
図14】屋外側環状パッキンを屋外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る基礎貫通スリーブ1を使用して基礎貫通孔10を形成した基礎100の一例を示す断面図である。図1中、符号300は例えばコンクリート製の底盤を示している。符号300で示す部分は地面であってもよい。基礎100は、例えば住宅や事務所、倉庫等の建築物用の基礎である。基礎100は屋外に臨む屋外側(図1の左側)と屋内に臨む屋内側(図1の右側)とを有している。基礎100の厚みは、建築物等に合わせて任意の厚みに設定することができ、また、基礎100の高さも建築物等に合わせて任意の高さに設定することができる。
【0021】
基礎貫通スリーブ1によって形成される基礎貫通孔10は、例えば配管200を屋内側から屋外側、または屋外側から屋内側へ通すための孔である。配管200は、例えば塩化ビニルからなる塩ビ管等を挙げることができるが、これに限らず、例えばホースのような屈曲可能な管であってもよいし、電気配線や通信線が通る配管であってもよい。基礎貫通孔10の径は、内部を通す配管の径に合わせて設定すればよく、一般的には配管の径よりも十分に大きな径とされている。
【0022】
基礎100は、鉛直方向に延びる複数の主筋400と、水平方向に延びる複数の配力筋401とを有している。複数の主筋400は、基礎100の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられている。また、複数の配力筋401は、主筋400を連結するように水平方向に延びており、上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。主筋400及び配力筋401は、いわゆる鉄筋である。
【0023】
また、基礎100は、底盤300から上方へ突出するコンクリート部403を有している。コンクリート部403の内部に主筋400及び配力筋401が埋め込まれた状態で存在している。基礎100の厚み方向は図1の左右方向である。
【0024】
(基礎貫通スリーブ1の構成)
図2及び図3に示すように、基礎貫通スリーブ1は、基礎100の厚み方向に延びるとともに、貫通孔10を有する筒状部材2と、屋外側環状パッキン(第1環状パッキン)3と、屋内側環状パッキン(第2環状パッキン)4と、防蟻材5とを備えている。筒状部材2は、例えば硬質樹脂材や金属材等で構成された円管状の部材で構成することができる。筒状部材2は、後述するコンクリートの打設時に当該コンクリートの重みや流動圧で変形しない程度の剛性を有していればよく、例えば塩化ビニルからなる塩ビ管を用いることができる。尚、防蟻材5は、省略してもよい。
【0025】
図1に示すように、筒状部材2の長さは、当該筒状部材2が基礎100の屋外側の面近傍から屋内側の面近傍に達するように設定されている。筒状部材2の径は、屋内側から屋外側まで同一径とされている。筒状部材2の厚みは、例えば数mm以上とすることができる。
【0026】
筒状部材2の屋外側に位置する開口部が屋外側開口部(一端側開口部)2aとされている。一方、筒状部材2の屋内側に位置する開口部が屋内側開口部(他端側開口部)2bとされている。屋外側開口部2a及び屋内側開口部2bは円形であり、同一径となっている。
【0027】
筒状部材2の中心線方向中間部が基礎100の配力筋401(図1に示す)に固定される被固定部2cとされている。被固定部2cは、筒状部材2の中心線方向中央部を含んでいてもよいし、中央部から屋内側へ外れた部分であってもよいし、中央部から屋外側へ外れた部分であってもよい。また、被固定部2cは、中心線方向に広がった所定の領域であってもよく、この領域の一部を配力筋401に固定することができる。
【0028】
被固定部2cを配力筋401に固定する際には固定具410を使用することができる。固定具410は、配力筋401に係合する上部係合部410aと、被固定部2cの外周面を囲むように形成された輪状部410bとを備えている。輪状部410bは、被固定部2cの外周面を締め付けるようにして被固定部2cに固定することができる。上部係合部410aの下部に輪状部410bの上部が一体化されている。上部係合部410aは、配力筋401に縛り付けるように構成されていてもよい。固定具410としては、例えば番線のような結束用の針金で構成することもできるし、板金部材で構成されたものであってもよい。
【0029】
図4及び図5は屋外側環状パッキン3を単独で示している。この屋外側環状パッキン3は、図2に示すように筒状部材2における屋外側開口部2aの周縁部に設けられており、図6に示す屋外側の型枠(一方の型枠)450の内面に当接する部材である。屋外側環状パッキン3を構成する材料としては、例えばエチレンプロピレンゴム(EPT)等のゴムや熱可塑性エラストマー等からなる弾性材を挙げることができる。弾性材には、防蟻成分が含有されている。防蟻成分は、蟻が屋外から侵入するのを防止するための成分であり、従来から周知の成分である。また、防蟻成分を弾性材に含有させる方法も従来から周知の方法を用いることができる。
【0030】
屋外側環状パッキン3は、筒状部材2の外周面における屋外側開口部2a側に沿って周方向に延びる板状の屋外側環状部(第1環状部)3aと、当該屋外側環状部3aの屋外側の端部(一端部)から径方向内側へ向けて延出し、屋外側開口部2aの径方向外側部分を覆う環状の屋外側覆い部(第1覆い部)3bとを備えている。屋外側環状部3aの内側に筒状部材2の屋外側が嵌まるようになっており、屋外側環状部3aの内側に筒状部材2の屋外側を嵌めることにより、屋外側環状パッキン3を筒状部材2に取り付けることができる。この取付状態で、屋外側環状パッキン3の内面と筒状部材2の外周面とは密着しており、水密性が確保されている。屋外側環状パッキン3の中心線と筒状部材2の中心線とは一致している。
【0031】
図1に示すように、屋外側環状部3aはコンクリート部403に埋設される部分である。屋外側環状部3aの径方向外側にコンクリート部403が接する一方、屋外側環状部3aの径方向内側には筒状部材2が接している。したがって、屋外側環状部3aはコンクリート部403と筒状部材2とによって厚み方向に挟まれた状態になる。
【0032】
図4及び図5にも示すように、屋外側覆い部3bは、環状をなしており、中央部に円形の孔3cが形成されている。孔3cは、筒状部材2の内部に形成されている貫通孔10の屋外側と連通している。孔3cの中心と、筒状部材2の中心線とは同一直線上に位置するようになっている。孔3cの径は、配管200の外径よりも小さく設定されており、配管200の外周面が屋外側覆い部3bの内周面、即ち孔3cの内周面に接触するようになっている。これにより、配管200と、筒状部材2との間を屋外側環状パッキン3によってシールすることができ、屋外側からの水の浸入を抑制することができる。
【0033】
屋外側覆い部3bの延出方向先端部は、孔3cの内周面を形成する部分である。図3に示すように、屋外側覆い部3bの延出方向先端部には、径方向内方へ突出して周方向に連続して延びる突条部3dが設けられている。突条部3dは、屋外側環状パッキン3の中心線方向に並ぶように複数設けることができるが、1つだけ設けてもよい。配管200の外周面に接触する部分は、突条部3dの先端部だけであってもよい。突条部3dは、弾性材で構成されているので、配管200の外周面に接触した状態で当該外周面に沿うように弾性変形して配管200の外周面との間の隙間を全周に亘って無くすことができる。
【0034】
屋外側環状部3aには、中心線方向である屋外側へ突出して屋外側の型枠450の内面に当接する屋外側突出部(第1突出部)3eが環状に形成されている。屋外側突出部3eは屋外側環状部3aの周方向に連続しており、屋外側の型枠450の内面に当接することによって弾性変形し、屋外側の型枠450の内面との間の隙間を全周に亘って無くすことができる。
【0035】
屋外側環状パッキン3におけるコンクリート部403に埋設される部分には、打設時のコンクリートが流入する流入孔3fが設けられている。具体的には、屋外側環状パッキン3の屋外側環状部3aに、複数の流入孔3fが屋外側環状パッキン3の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。屋外側環状部3aの外周面に各流入孔3fが開口するように形成されている。また、流入孔3fは、屋外側環状部3aをその径方向に貫通している。尚、流入孔3fは、屋外側環状部3aを貫通していなくてもよく、屋外側環状部3aの外周面に形成された非貫通孔によって流入孔3fが構成されていてもよい。
【0036】
図4及び図5では、4つの流入孔3fが設けられている例を示しており、この場合、屋外側環状部3aの上部、下部、両側部に、合計4つの流入孔3fが90°おきに設けられることになる。複数の流入孔3fは等間隔で設けなくてもよく、不等間隔であってもよい。流入孔3fの数は、1つであってもよいし、任意の複数であってもよい。また、流入孔3fは、屋外側環状部3aの上部、下部、両側部に設けてもよいし、屋外側環状部3aの斜め上部や斜め下部に設けてもよい。
【0037】
図3に示すように、流入孔3fの形状は円形とされている。流入孔3fの内径は、例えば10mm以上、または15mm以上に設定されている。これにより、打設時のコンクリートが流入孔3fに流入し易くなる。流入孔3fの形状は円形に限られるものではなく、楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。全ての流入孔3fが同じ形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。
【0038】
図3に示すように、屋内側環状パッキン4は、筒状部材2における屋内側開口部2bの周縁部に設けられており、図6に示す屋内側の型枠(他方の型枠)451の内面に当接する部材である。屋内側環状パッキン4を構成する材料は、屋外側環状パッキン3を構成する材料と同じものを用いることができるが、材料を変えてもよい。また、屋外側環状パッキン3と屋内側環状パッキン4とは同じ部材で構成されていてもよいし、異なる部材で構成されていてもよい。本実施形態では、屋外側環状パッキン3と屋内側環状パッキン4とが異なる部材で構成されている場合について説明する。
【0039】
屋内側環状パッキン4は、筒状部材2の外周面における屋内側開口部2b側に沿って周方向に延びる屋内側環状部(第2環状部)4aと、当該屋内側環状部4aの屋内側の端部(他端部)から径方向内側へ向けて延出し、屋内側開口部2bの径方向外側部分を覆う環状の屋内側覆い部(第2覆い部)4bとを備えている。屋内側環状部4aの内側に筒状部材2の屋内側が嵌まるようになっており、屋内側環状部4aの内側に筒状部材2の屋内側を嵌めることにより、屋内側環状パッキン4を筒状部材2に取り付けることができる。この取付状態で、屋内側環状パッキン4の内面と筒状部材2の外周面とは密着しており、水密性が確保されている。屋内側環状パッキン4の中心線と筒状部材2の中心線とは一致している。
【0040】
屋内側覆い部4bは、環状をなしており、中央部に円形の孔4cが形成されている。孔4cは、筒状部材2の内部に形成されている貫通孔10の屋内側と連通している。孔4cの中心と、筒状部材2の中心線とは同一直線上に位置するようになっている。図1に示すように、孔4cの径は、配管200の外径よりも小さく設定されており、配管200の外周面が屋内側覆い部4bに接触するようになっている。これにより、配管200と、筒状部材2との間を屋内側環状パッキン4によってシールすることができる。屋内側覆い部4bの延出方向先端部は、孔4cの内周面を形成する部分であり、弾性材で構成されているので、配管200の外周面に接触した状態で当該外周面に沿うように弾性変形して隙間を無くすことができる。
【0041】
屋内側環状部4aには、中心線方向である屋外側へ突出して屋内側の型枠451の内面に当接する屋内側突出部(第2突出部)4eが環状に形成されている。屋内側突出部4eは屋内側環状部4aの周方向に連続しており、屋内側の型枠451の内面に当接することによって弾性変形し、屋内側の型枠451の内面との間に隙間を無くすことができる。尚、屋内側環状部4aに、屋外側環状部3aと同様な流入孔(図示せず)を設けてもよい。
【0042】
屋外側環状部3aの厚みは屋内側環状部4aの厚みよりも厚く設定されている。すなわち、屋外側環状パッキン3は外部にさらされる分、要求されるシール性能が屋内側環状パッキン4よりも高い場合がある。この要求されるシール性能差に対応するように屋外側環状部3aの厚みは屋内側環状部4aの厚みよりも厚くしている。言い換えると、屋内側環状部4aの厚みを屋外側環状部3aの厚みよりも薄くすることで屋内側環状パッキン4の低コスト化を図ることができる。
【0043】
屋外側覆い部3bの厚みは、屋内側覆い部4bの厚みよりも厚く設定されている。上述したように、屋外側環状パッキン3は、屋内側環状パッキン4に比べて要求されるシール性能が高い場合があるので、屋外側環状部3aの厚みは屋内側環状部4aの厚みよりも厚くすることで要求されるシール性能差に対応することができる。
【0044】
尚、屋内側環状部4aの厚みと屋外側環状部3aの厚みとは等しくてもよい。また、屋内側覆い部4bの厚みと屋外側覆い部3bの厚みとは等しくてもよい。
【0045】
図2に示すように、防蟻材5は、防蟻成分を含有したブチルゴム製のシート材で構成されており、従来から周知の部材である。防蟻成分を含むブチルゴムの例は、特許第5537061号公報に開示されている。防蟻材5の厚みは、例えば3mm程度に設定することができ、また、防蟻材5の幅は100mm程度に設定することができる。防蟻材5は、筒状部材2の外周面を囲むようにして設けられており、筒状部材2の外周面に対して隙間無く密着するとともに、図1に示すように基礎100に埋め込まれてコンクリートとの間にも隙間が形成されないようになっている。これにより、屋外の蟻が基礎貫通スリーブ1と基礎100との間から屋内へ向けて侵入するのが抑制される。
【0046】
防蟻材5は、筒状部材2の中心線方向中間部に設けられているが、これに限らず、筒状部材2の被固定部2cから中心線方向一方に偏位して設けられていてもよい。防蟻材5が被固定部2cよりも屋内側に偏位していることで、被固定部2cを配力筋401に固定する際に防蟻材5が邪魔にならないようにすることができる。防蟻材5は被固定部2cよりも屋外側に偏位していてもよい。
【0047】
屋外側環状パッキン3及び屋内側環状パッキン4の形状は上述した形状に限られるものではなく、屋外側環状パッキン3の屋外側覆い部3bの先端部が基端部に比べて薄肉に形成されていてもよい。これにより、配管200の外周面に沿って変形し易くなる。
【0048】
(施工要領)
次に、上記のように構成された基礎貫通スリーブ1を用いた基礎100の施工要領について説明する。まず、図2に示すように、基礎貫通スリーブ1を用意する。基礎貫通スリーブ1を構成している筒状部材2、屋外側環状パッキン3及び屋内側環状パッキン4は別部材で構成されているので、筒状部材2に対して、屋外側環状パッキン3及び屋内側環状パッキン4を組み付けて一体化する。このとき、屋外側環状パッキン3の屋外側環状部3aの内側に筒状部材2の屋外側を嵌めることになるが、屋外側環状部3aには流入孔3fが設けられていて肉抜き部となっているので、屋外側環状部3aを変形させるのに要する力が小さくて済む。これにより、屋外側環状パッキン3を筒状部材2に容易に組み付けることができる。尚、屋内側環状パッキン4は、屋外側環状パッキン3に比べて厚みが薄いので流入孔が無くても組付作業性は良好である。
【0049】
また、図6に示すように主筋400及び配力筋401を設置し、固定具410を用いて基礎貫通スリーブ1を配力筋401に固定する。基礎貫通スリーブ1を固定した後、屋外側の型枠450及び屋内側の型枠451を設置する。屋外側の型枠450の内面は、屋外側環状パッキン3の屋外側突出部3eに当接する。屋外側突出部3eが屋外側の型枠450の内面に沿うように弾性変形することで、屋外側の型枠450の内面と、屋外側環状パッキン3との間に隙間がなくなる。
【0050】
屋内側の型枠451の内面は、屋内側環状パッキン4の屋内側突出部4eに当接する。屋内側突出部4eが屋内側の型枠451の内面に沿うように弾性変形することで、屋内側の型枠451の内面と、屋内側環状パッキン4との間に隙間がなくなる。
【0051】
次いで、屋外側の型枠450と屋内側の型枠451との間にコンクリートを打設して流動させる。このとき、基礎貫通スリーブ1が配力筋401に固定されているので、コンクリートの流動圧による基礎貫通スリーブ1の位置ずれが抑制される。また、筒状部材2の剛性が十分に確保されているので、コンクリートの重みや流動圧によって筒状部材2が変形することもない。また、屋外側の型枠450の内面と屋外側環状パッキン3との間、及び屋内側の型枠451の内面と屋内側環状パッキン4との間に隙間が無いので、コンクリートが筒状部材2の内部に入り込み難くなる。さらに、打設されたコンクリートは、屋外側環状パッキン3の各流入孔3fに流入する。流入孔3fに流入したコンクリートは、流入孔3fが屋外側環状部3aを貫通しているので、筒状部材2の外周面に達する。
【0052】
コンクリートが固化した後、屋外側の型枠450と屋内側の型枠451を取り外すと、図7に示すように基礎貫通スリーブ1が埋設された基礎100が得られる。筒状部材2の内部にコンクリートが入り込み難くなっていることで、貫通孔10の形成が阻害されることはなく、狙い通りの貫通孔10を得ることができる。流入孔3fに流入したコンクリートは、当該流入孔3fの内部で固化する。
【0053】
その後、図1に示すように、配管200を貫通孔10に通す。このとき、図1に白抜きの矢印500で示すように、配管200を屋内側から屋外側へ通す場合、まず、配管200を屋内側環状パッキン4の孔4cに差し込む。このとき、屋内側環状パッキン4の孔4cの内周面と配管200の外周面との間に摩擦力が作用することになるが、屋内側環状パッキン4の屋内側覆い部4bの厚みは薄いので、屋内側環状パッキン4が脱落するほど大きな摩擦力にはならない。
【0054】
配管200を屋内側環状パッキン4の孔4cに差し込んだ後、屋外側環状パッキン3の孔3cに差し込むと、屋外側環状パッキン3の孔3cの内周面と配管200の外周面との間に摩擦力が作用する。このとき、屋外側環状パッキン3の厚みが厚く、かつ、外部からの水の浸入を抑制するために屋外側環状パッキン3の孔3cの内周面を配管200の外周面に強く密着させるようにしているので、屋外側環状パッキン3が屋外側へ強く押されることになる。
【0055】
本実施形態では、屋外側環状パッキン3の流入孔3fに流入したコンクリートが当該流入孔3fの内部で固化しているので、流入孔3f内で固化したコンクリートがアンカーのような効果を発揮し、屋外側環状パッキン3がコンクリート部403に固定されている。これにより、屋外側環状パッキン3が所定位置で保持されるので、配管200によって屋外側環状パッキン3が屋外側へ強く押されても、屋外側環状パッキン3が脱落しなくなる。尚、配管200の差込方向は反対であってもよく、屋外側から差し込んでもよい。
【0056】
また、屋外側環状パッキン3及び屋内側環状パッキン4が防蟻効果を持っているので、蟻の侵入抑制効果を高めることができる。
【0057】
(実施形態2)
図8図11は、本発明の実施形態2に係るものである。実施形態2では、配管200が傾斜しており、これに対応するように、基礎貫通スリーブ1も傾斜配置されている点で実施形態1とは異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0058】
筒状部材2が配管200の傾斜角度と同じ角度で傾斜した状態でコンクリート部403に埋め込まれている。図9図11に示すように、屋外側環状部3aは筒状部材2の傾斜角度と同じように傾斜する一方、屋外側覆い部3bは鉛直方向に延びている。屋内側環状パッキン4も同様に構成されている。傾斜角度は図示した角度に限られるものではなく、配管200の角度に合わせて任意に設定することができる。
【0059】
実施形態2の場合も実施形態1と同様に流入孔3fが設けられているので、屋外側環状パッキン3が所定位置で保持される。これにより、配管200によって屋外側環状パッキン3が屋外側へ強く押されても、屋外側環状パッキン3が脱落しなくなる。
【0060】
(実施形態3)
図12図14は、本発明の実施形態3に係るものである。実施形態3では、屋外側環状パッキン3にフランジ部31が設けられている点で実施形態1のものとは相違している。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0061】
フランジ部31は、屋外側環状パッキン3の屋外側環状部3aの屋内側の端部(他端部)から径方向外側へ向けて延出するとともに周方向に連続して延びており、屋外側環状部3aに一体成形されている。フランジ部31もコンクリート部403に埋設される部分である。フランジ部31には、複数の流入孔31aが屋外側環状パッキン3の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。各流入孔31aは、フランジ部31を厚み方向に貫通している。
【0062】
打設されたコンクリートは、各流入孔31aに流入する。流入孔31aに流入したコンクリートは流入孔31a内で固化する。流入孔31a内で固化したコンクリートは、フランジ部31よりも屋外側のコンクリートと一体化するとともに、フランジ部31よりも屋内側のコンクリートとも一体化するので、フランジ部31がコンクリートにしっかりと保持される。
【0063】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本開示に係る基礎貫通スリーブは、例えば各種建築物の基礎に貫通孔を形成する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 基礎貫通スリーブ
2 筒状部材
2a 屋外側開口部(一端側開口部)
2b 屋内側開口部(他端側開口部)
3 屋外側環状パッキン(第1環状パッキン)
3a 屋外側環状部(第1環状部)
3b 屋外側覆い部(第1覆い部)
3c 孔
3e 屋外側突出部(第1突出部)
3f、31a 流入孔
4 屋内側環状パッキン(第2環状パッキン)
4a 屋内側環状部(第2環状部)
4b 屋内側覆い部(第2覆い部)
4c 孔
5 防蟻材
10 基礎貫通孔
100 基礎
200 配管
450 屋外側の型枠(一方の型枠)
451 屋内側の型枠(他方の型枠)
【要約】
【課題】施工後の基礎貫通スリーブに配管を通す際にスリーブの端部に設けられているパッキンが脱落しないようにする。
【解決手段】基礎貫通スリーブ1は、筒状部材2における一端開口部の周縁部に設けられて一方の型枠の内面に当接する第1環状パッキン3と、筒状部材2における他端開口部の周縁部に設けられて他方の型枠の内面に当接する第2環状パッキン4とを備えている。第1環状パッキン3におけるコンクリートに埋設される部分には、コンクリートが流入する流入孔3fが設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10
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図12
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図14