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  • 特許-繊維強化樹脂中空又は複合成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂中空又は複合成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/06 20060101AFI20231204BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20231204BHJP
   B32B 1/00 20060101ALI20231204BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231204BHJP
   B32B 7/09 20190101ALI20231204BHJP
   B29C 41/22 20060101ALI20231204BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231204BHJP
   B29C 44/06 20060101ALI20231204BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20231204BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20231204BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B32B37/06
B32B37/10
B32B1/00 Z
B32B5/28 A
B32B7/09
B29C41/22
B29C44/00 F
B29C44/06
B29C44/44
B29C70/42
B29C70/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023084508
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154503
【氏名又は名称】株式会社The MOT Company
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲済▼藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】首藤 祥史
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-059949(JP,A)
【文献】特開2017-159652(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099825(WO,A1)
【文献】特開2010-208041(JP,A)
【文献】特開2015-183186(JP,A)
【文献】特開昭58-171945(JP,A)
【文献】特許第5205309(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/258712(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/175489(US,A1)
【文献】国際公開第2015/181870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29B 11/16、15/08-15/14
B29C 44/00-44/60、67/20、
B29C 41/00-41/36、41/46-41/52、
70/00-70/88
C08J 5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層又は複数層の第一繊維強化樹脂と、
1層又は複数層の第二繊維強化樹脂と、
前記第一繊維強化樹脂と、前記第二繊維強化樹脂との間に位置する中空部を含み、
前記第一繊維強化樹脂と、前記第二繊維強化樹脂とは、縫合されている、繊維強化樹脂中空成形体の製造方法であって、
前記1層又は複数層の第一繊維強化樹脂プリプレグである第一プリプレグを準備する工程と、
前記1層又は複数層の第二繊維強化樹脂プリプレグである第二プリプレグを準備する工程と、
前記第一プリプレグと、熱膨張性中空小球体と、前記第二プリプレグとをこの順に積層させることにより成形前積層体を得る工程と、
前記成形前積層体において、前記第一プリプレグ及び前記第二プリプレグを縫合する工程と、
前記成形前積層体を上金型と下金型とで加熱プレスする工程であって、前記熱膨張性中空小球体を前記加熱プレスの熱により膨張させ、中空小球体を形成し、膨張した中空小球体により構成される中空部を形成する工程と、
を含む、繊維強化樹脂中空成形体の製造方法。
【請求項2】
前記中空部を囲うように縫合されている、請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
縫合糸は、ナイロン製の糸である、請求項1に記載の製造方法
【請求項4】
第一及び第二繊維強化樹脂は、いずれも、繊維織物を含む、請求項1に記載の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂複合体を構成部材として含む繊維強化樹脂中空又は複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂複合体は、軽量で高強度な材料として、近年注目されている。繊維強化樹脂複合体を用いた成形体は、プレス成形する場合には繊維強化樹脂のプリプレグと異素材の部材とを積層させた積層体をプレス成形することにより製造することができる。
積層体は、プリプレグ同士、またはプリプレグとプリプレグに積層させた異素材の部材とがプレス時にずれてしまうため、接着シート又は接着剤を用いて接着させることが従来から行われている。
【0003】
繊維強化樹脂複合体としては、例えば特許文献1のように、金属部材と、強化繊維材料とマトリックス樹脂とを複合させたFRP層とを、フェノキシ樹脂の固化物、またはフェノキシ樹脂を含む接着樹脂組成物の硬化物である接着層で接着したものが挙げられる(特許文献1)。
また、例えば特許文献2には、金属とプリプレグの間に、複数の貫通孔を有する金属から構成される接着強化層を配置することにより、製造コストを抑えつつ、接着力の高い、加熱プレス成形できる金属-プリプレグ複合体が記載されている(特許文献2)。
これらの従来技術は、層同士の接着のため樹脂や接着シートから成る接着層を設けているが、接着樹脂や接着シート、接着剤では接合能力が十分ではなく、プレス時にプリプレグ同士がずれてしまう場合がある。特に、プリプレグ層間に異部材を含む場合はそのずれが顕著になるという問題があった。
【0004】
【文献】WO2018/124215号公報
【文献】特許第7051064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術によってプリプレグを積層させプレス成形する場合は、接着シート又は接着剤を使って接着した上で、プレス成形を行っていた。しかし、接着シート又は接着剤を用いても、プレス時にずれてしまい、精度の高い成形品を得ることが難しい場合もあった。
本発明では、積層したプリプレグを縫合することにより、精度の高い成形品を得ることを目的とする。特に、プリプレグの積層間に熱膨張性中空小球体又は内部部材を配置してから縫合し成形することにより、内部に中空部又は内部部材を有しながらも、プリプレグにずれのない成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、第一プリプレグと第二プリプレグとを、その積層間に熱膨張性中空小球体又は内部部材を挿入し、その縁を糸によって縫合することで、プレス成形時に熱膨張性中空小球体または内部部材等を挟んだ第一プリプレグと第二プリプレグとがずれずにプレス出来ることを発見した。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
[1] 1層又は複数層の第一繊維強化樹脂と、
1層又は複数層の第二繊維強化樹脂と、
前記第一繊維強化樹脂と、前記第二繊維強化樹脂との間に位置する中空部又は内部部材とを含み、
前記第一繊維強化樹脂と、前記第二繊維強化樹脂とは、縫合されている、繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
[2] 前記中空部又は内部部材を囲うように縫合されている、[1]に記載の繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
[3] 縫合糸は、ナイロン製の糸である、[1]に記載の繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
[4] 第一及び第二繊維強化樹脂は、いずれも、繊維織物を含む、[1]に記載の繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
[5] [1]乃至[4]のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂中空又は複合成形体の製造方法であって、
1層又は複数層の繊維強化樹脂プリプレグである第一プリプレグを準備する工程と、
1層又は複数層の繊維強化樹脂プリプレグである第二プリプレグを準備する工程と、
前記第一プリプレグと、熱膨張性中空小球体又は内部部材と、前記第二プリプレグとをこの順に積層させることにより成形前積層体を得る工程と、
前記成形前積層体において、前記第一プリプレグ及び前記第二プリプレグを縫合する工程と、
前記成形前積層体を上金型と下金型とで加熱プレスする工程とを含む、繊維強化樹脂中空又は複合成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
繊維強化樹脂中空又は複合成形体は、積層したプリプレグが縫合されていることにより、内部に中空部又は内部部材を有しながらも、成形時にプリプレグ同士がずれることがなく、高い精度を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの斜視図であり、図1(b)は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの平面図である。
図2図2は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの長手方向の断面図である。
図3図3は、繊維強化樹脂複合成形体1Bの長手方向の断面図である。
図4図4は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの製造工程における工程(a)乃至工程(d)の模式図を示す。
図5図5は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの製造工程における工程(e)乃至工程(g)の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[繊維強化樹脂中空又は複合成形体]
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明は下記された内容のみならず、当業者に容易な修正や置換できる範囲まで及ぶものとする。
本明細書では、繊維強化樹脂中空成形体と、繊維強化樹脂複合成形体とを総称して、繊維強化樹脂中空又は複合成形体とする。
【0010】
図1(a)は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの斜視図であり、図1(b)は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの平面図である。繊維強化樹脂中空成形体1Aは、第一繊維強化樹脂4、中空小球体6と、第二繊維強化樹脂5が積層されている状態であり、フランジ部3をナイロン糸11によって縫合してあるもので、成形体本体2中に中空小球体6を含む中空部を有している。
【0011】
図2は、繊維強化樹脂中空成形体1Aの長手方向の断面図である。第一繊維強化樹脂4と第二繊維強化樹脂5とはフランジ部3で縫合されており、中空小球体6が内部に配置されている。
【0012】
図3は、繊維強化樹脂複合成形体1Bの長手方向の断面図である。繊維強化樹脂複合成形体1Bについては第一繊維強化樹脂4と第二繊維強化樹脂5とはフランジ部3で縫合されており、内部に内部部材7が配置されている。
【0013】
繊維強化樹脂とは繊維と樹脂の複合材料を意味する。
第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5を構成する繊維としては、高強度でありシート状である必要があるため、繊維織物であることが好ましいが、プレス成形出来る材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維(化学繊維および天然繊維)、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などが挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維が挙げられる。また、ポリアクリルニトリルを原料とするPAN系炭素繊維とピッチを原料とするピッチ系炭素繊維等を用いることが出来る。
第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5中の炭素繊維としては、PAN系炭素繊維が好ましいが、それに限定されるものではない。また、第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5を構成する繊維強化樹脂には、SMC(Sheet Molding Compound)、FRP(Firber Reinforced Plastics)、GMT(Glass Reinforced Thermoplastics)、Non-crimpfiberを含む樹脂などの複合体も包含されるものとする。これらは1種類の繊維あるいは複数種類の繊維の組み合わせを用いてもよい。
【0014】
第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5中の繊維織物等の繊維基材としては、0.03mm~0.5mmの厚さのガラス繊維織物、炭素繊維織物等のガラス繊維材又は炭素繊維材が好ましいが、それに限定されるものではない。
【0015】
第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5を構成する樹脂は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いてよい。具体的には、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、これらは組み合わせて使用することができる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。
【0016】
第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の厚さは、好ましくは、0.2~8mm、特に0.5~5mmである。第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の厚さが過度に小さいと材料の剛性や強度が低く、破損や切断などを生じやすく実用性に劣る。第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の厚さが過度に大きいと、繊維強化樹脂中空又は複合成形体の重量が大きくなる。
【0017】
ナイロン糸11は、第一繊維強化樹脂4と第二繊維強化樹脂5とをしっかりと縫合出来るものであれば特に限定されるものではないが、強度の観点から樹脂繊維からなる糸が好ましく、ポリプロピレン、ポリエステル等を用いることが出来るが、特にナイロンを好適に用いることが出来る。ナイロン糸11は、中空部や内部部材7を囲うように縫合している。繊維強化樹脂中空成形体1A及び繊維強化樹脂複合成形体1Bにおいては、フランジ部3において縫合されている状態となることが好ましい。
【0018】
中空小球体6とは、膨張性中空小球体6Aを加熱することにより膨張したものであり、空気や各種ガスを内包した外殻を形成したものであれば、特に制限されるものではなく、第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の間に中空部を設けることが出来る材料であれば特に限定されない。中空小球体6の粒径は適宜設定されるものであるが、例えば30μm以上250μm以下とすることができる。
また、粒径については、ランダム選択された複数個(例えば、10個)の膨張性中空小球体6Aまたは中空小球体6の粒径の平均値を用いることができる。
なお、繊維強化樹脂に挟まれたコア材としての中空小球体6は、金属等のコア材に比べて、切削コストがかからず、さらには、軽量にすることができます。
【0019】
内部部材7とは、金属やその他異なる素材の部材を用いることができ、棒(バー)のように内部に中空部がなく塊状のもの、パイプのように内部に中空部があるものいずれでもよい。内部部材7の素材には、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼、銅、銅合金、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
繊維強化樹脂中空成形体は、第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の間に中空部が設けられているため、軽い材料として用いることができる。また、中空部は空隙のため、断熱効果も有する。また、中空小球体6ではなく内部部材7を第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の間に設けた繊維強化樹脂複合成形体の場合は、パイプ形状の内部部材7であれば、内部の空洞によって断熱効果が高く軽く、しかも剛性の高い材料として用いることができる。内部部材7が空洞の無い金属棒や金属片、樹脂棒などであった場合は、第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5の材料に、低価格でさらに高い強度を実現できる。
【0021】
[繊維強化樹脂中空又は複合成形体の製造方法]
本発明において、繊維強化樹脂中空又は複合成形体の製造は、まず図4(a)に図示するように、繊維織物に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグを1層又は複数層積層させた第一プリプレグ8、第二プリプレグ9を準備する。半硬化状態の繊維強化樹脂とは、繊維強化樹脂の製造において、樹脂中の硬化剤が働く温度未満で、繊維と樹脂を一体化させた状態を指す。第一プリプレグ8と第二プリプレグ9を構成する半硬化状態の繊維強化樹脂は、全て同じ半硬化状態の繊維強化樹脂を用いてもよいし異なっていてもよい。これらのプリプレグは、上記の繊維強化樹脂の完全硬化前の材料である。
【0022】
図4(b)に図示するように、第一プリプレグ8、膨張性中空小球体6A又は内部部材7、第二プリプレグ9をこの順番で積層することにより、図4(c)に図示するように成形前積層体10Aを得る。
その後、図4(d)に図示するように、第一プリプレグ8及び第二プリプレグ9をナイロン糸11によって縫合する。なお、本明細書において、成形前積層体10Aとは、第一プリプレグ8、第二プリプレグ9との間に、膨張性中空小球体6A又は、内部部材7が配置されている積層体のことを意味する。
【0023】
第一プリプレグ8、第二プリプレグ9はそれぞれ1層だけでもよいし、複数層積層されてよく、加熱プレス後の第一繊維強化樹脂4、第二繊維強化樹脂5もそれぞれ1層又は複数層積層されてよい。
第一プリプレグ8と第二プリプレグ9との縫合方法は、第一プリプレグ8及び第二プリプレグ9とをしっかりと縫合出来るものであれば特に限定されるものではないが、ランニングステッチ、アウトラインステッチ、バックステッチ、サテンステッチ、クロスステッチ、チェーンステッチ、ブランケットステッチなどが挙げられ、その他にも、チェーン編み、或いはトリコット編み、かがり縫い、まつり縫いが適している。縫合の位置は、中空部又は内部部材7が設けられれば特に限定されないが、下金型12と上金型13の凹部分を囲うように縫合することが好ましい。
加熱プレスにより第一プリプレグ8は硬化し第一繊維強化樹脂4になり、第二プリプレグ9は硬化し第二繊維強化樹脂5となる。
【0024】
膨張性中空小球体6Aとは、中空小球体6の膨張の前のものを意味する。
膨張性中空小球体6Aは特に限定されるものではなく、市販されている膨張性中空小球体6Aとしては、具体的には、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフィアー、クレハ社製のクレハマイクロスフィアー、日本フェライト社製のExpancelマイクロスフィア、積水化学工業社製のADVANCELL EM等を挙げることができる。
【0025】
次に、図5(e)に図示するように、成形前積層体10Aを、下金型12と上金型13を備える加熱プレス機に配置し、上下より加熱プレスを行う。
図5(f)に図示するように、加熱プレスにより第一プリプレグ8は硬化し第一繊維強化樹脂4に、第二プリプレグ9は硬化し第二繊維強化樹脂5となる。
膨張性中空小球体6Aは加熱により膨脹し、中空小球体6となり、第一繊維強化樹脂4と第二繊維強化樹脂5の間が空隙状態となる。次に、図5(g)に図示するように、下金型12と上金型13を取り外し、繊維強化樹脂中空成形体1A又は、内部部材7を用いた場合は繊維強化樹脂複合成形体1B、すなわち繊維強化樹脂中空又は複合成形体を得る。
なお、図面では、下金型12、上金型13のいずれも凹部を有するものを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、下金型12は凸部を有し、上金型13は、凹部を有するものであってもよい。
【0026】
本発明の繊維強化樹脂中空又は複合成形体の製造において、プレス加工温度は通常100~350℃であるが、膨張性中空小球体6Aを用いる場合は、少なくとも膨張性中空小球体6Aが膨張する温度である必要がある。あくまでも例示であるが、プリプレグの樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、120~160℃にすることができ、プリプレグの樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、230~350℃にすることができる。
【0027】
繊維強化樹脂中空又は複合成形体製造の際のプレス加工の圧力についても、特に限定されるものではなく、通常0.1~15MPaである。
【0028】
繊維強化樹脂中空又は複合成形体は、電気自動車を含む車両等の自動車産業や、空飛ぶ車や飛行機などの航空産業、その他の産業に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1A・・・ 繊維強化樹脂中空成形体
1B・・・ 繊維強化樹脂複合成形体
2・・・成形体本体
3・・・フランジ部
4・・・第一繊維強化樹脂
5・・・第二繊維強化樹脂
6・・・中空小球体
6A・・・膨張性中空小球体(未膨張)
7・・・内部部材
8・・・第一プリプレグ
9・・・第二プリプレグ
10A・・・成形前積層体
11・・・ナイロン糸(縫合部)
12・・・下金型
13・・・上金型
【要約】
【課題】
内部に中空部又は内部部材を有しながらもプレス成形の際層がずれず、精度の高い成形品が得られる繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
【解決手段】
第一プリプレグ、膨張性中空小球体又は内部部材、第二プリプレグを積層し、第一プリプレグと第二プリプレグを糸で縫合し、加熱プレスをすることにより、内部に中空部又は内部部材を有しながらずれの無い繊維強化樹脂中空又は複合成形体。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5