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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】サウンドシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/60 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
H04M1/60 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019149955
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021034781
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 純基
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075748(JP,A)
【文献】特開2007-104343(JP,A)
【文献】特開2010-190744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R9/00-11/06
H04M1/00
1/24-1/82
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内空間内に音声を出力可能なサウンドシステムであって、
無線による通話機能を備えた通信手段と、
同乗者および同乗者の座席位置を識別する識別手段と、
複数の人物のそれぞれのハンズフリー通話のための電話番号またはIP電話用のID情報、通話を行う本人との関係を表す属性情報、および人物を識別するための生体情報を含む電話帳を記憶する記憶手段と、
前記通信手段によるハンズフリー通話が行われるとき、前記電話帳の中から一致する電話番号またはID情報を検索し、通話相手を識別し、当該通話相手の属性を識別する第1の属性識別手段と、
前記識別手段により同乗者が識別されたとき、前記電話帳の生体情報に基づき同乗者の属性を識別する第2の属性識別手段と、
車内空間に音声を出力可能な音声出力手段と、
ハンズフリー通話が行われるとき、通話相手の属性と同乗者の属性との関連性に基づき前記音声出力手段による車内空間での音声出力を選択的に切替える切替え手段と、
を有するサウンドシステム。
【請求項2】
前記切替え手段は、通話相手の属性と同乗者の属性とが異なるとき、通話を行う本人の座席空間に音声が出力され、同乗者の座席空間に音声が出力されないように音声出力を切替える、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項3】
前記切替え手段は、通話相手の属性と同乗者の属性とが共通するとき、通話を行う本人と同乗者の座席空間に音声が出力されるように音声出力を切替える、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項4】
前記切替え手段は、通話を行う本人以外に同乗者がいないとき、音声出力の切替えを行わない、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項5】
前記属性は、予め用意された本人との関係を示す複数のカテゴリーによって規定される、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項6】
通話を行う本人は、運転者である、請求項1に記載のサウンドシステム。
【請求項7】
サラウンドシステムはさらに、車内の同乗者を撮像する撮像手段を含み、前記第2の属性識別手段は、前記撮像手段により撮像された画像情報に一致する生体情報を電話帳から検索することにより同乗者の属性を識別する、請求項1に記載のサウンドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内空間に音声を出力可能なサウンドシステムに関し、特にハンズフリー通話時の音声出力の切替えに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンに代表される多機能型携帯端末が普及され、運転者が車内で通話する機会が増えている。車内で通話する場合には、安全性のためにハンズフリー通話が利用される。特許文献1は、通話相手からの音声が助手席の搭乗者に聞こえてしまうのを抑制するため、搭乗者への通話音声をマスクするハンズフリー通話装置を開示している。また、特許文献2は、スピーカらから出力される音信号の位相を調整することで運転者にのみ音を聞こえ易くするハンズフリー通話装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-96664号公報
【文献】特開2004-112528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、ハンズフリー通話が可能な車内空間の一例を示す図である。各座席10、12、14、16のヘッドレスト10A、12A、14A等には、それぞれの座席専用のスピーカが設置され、座席に着座した搭乗者は、スピーカから自身に向けて出力される音声を聴くことができる。また、運転者がハンズフリー通話をするとき、各座席のスピーカから同時に音声を出力させることが可能である。
【0005】
運転者は、ハンズフリー通話により車室内でいつでも電話することができるが、同乗者がいる場合には、同乗者が誰かによって、いつでも誰でも通話したいわけではない。例えば、本人のみが乗車している場合、夫婦で乗車している場合、友人同士で乗車している場合、子供が乗車している場合など、その状況によっては、通話相手との内容を話したくない、聞かれたくない、聞かせたくないことがある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決し、搭乗者の状況に応じて車内空間での音声出力を選択的に切替えることができるサウンドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るサウンドシステムは、車内空間内に音声を出力可能なものであって、無線による通話機能を備えた通信手段と、同乗者および同乗者の座席位置を識別する識別手段と、通話を行う本人から見た、前記通信手段によるハンズフリー通話の相手の属性を識別する第1の属性識別手段と、通話を行う本人から見た同乗者の属性を識別する第2の属性識別手段と、車内空間に音声を出力可能な音声出力手段と、ハンズフリー通話が行われるとき、通話相手の属性と同乗者の属性との関連性に基づき前記音声出力手段による車内空間での音声出力を選択的に切替える切替え手段とを有する。
【0008】
ある実施態様では、前記切替え手段は、通話相手の属性と同乗者の属性とが異なるとき、通話を行う本人の座席空間に音声が出力され、同乗者の座席空間に音声が出力されないように音声出力を切替える。ある実施態様では、前記切替え手段は、通話相手の属性と同乗者の属性とが共通するとき、通話を行う本人と同乗者の座席空間に音声が出力されるように音声出力を切替える。ある実施態様では、前記切替え手段は、通話を行う本人以外に同乗者がいないとき、音声出力の切替えを行わない。ある実施態様では、前記属性は、予め用意された本人との関係を示す複数のカテゴリーによって規定される。ある実施態様では、通話を行う本人は、運転者である。ある実施態様では、サウンドシステムはさらに、複数の人物の属性情報を登録する登録手段を含み、前記第1の属性識別手段および前記第2の属性識別手段は、前記登録手段の属性情報を参照して通話相手および同乗者の属性を識別する。ある実施態様では、前記通信手段は、複数の人物の属性情報を記憶する記憶手段を含み、前記登録手段は、前記記憶手段から属性情報を取得し、これを登録する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンズフリー通話が行われるとき、通話相手の属性と同乗者の属性との関連性に基づき車内空間での音声出力を選択的に切替えるようにしたので、搭乗者の状況に応じて快適な車内空間を提供し、車内空間での音声出力の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ハンズフリー通話が可能な車内空間の一例を示す図である。
図2】本発明の実施例に係るサウンドシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例に係る電話帳の登録情報の一例を示すテーブルである。
図5】本発明の実施例に係るサウンド制御プログラムの機能的な構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施例に係るハンズフリー通話時の音声出力の切替え動作を説明するフローである。
図7】本発明の実施例に係るノーマルモード時とゾーンモード時の音声出力の切替え例を説明する図である。
図8】本発明の実施例に係るゾーンモード時の他の音声出力の切替え例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明に係るサウンドシステムは、車内空間の選択された領域または座席空間に音声を出力することが可能である。例えば、スマートフォンのような携帯端末を利用してハンズフリー通話を行うとき、同乗者の状況に応じてハンズフリー通話の音声出力が選択的に自動で切替えられ、聞かれたくない通話内容が同乗者に聞こえないようする。同乗者にとっても聞きたくない通話内容を聞かなくて済む。これにより、快適な車内空間を提供する。
【実施例
【0012】
図2は、本発明の実施例に係る車内空間におけるサウンドシステムの概要を示す図である。同図に示すように、本実施例のサウンドシステム100は、車載装置200と、接続手段400を介して車載装置200に接続された通信モジュール300とを備える。通信モジュール300は、例えば、スマートフォンに代表される高機能型携帯端末や複数の通信ユニットを含むテレマティクスコントロールユニット(TCU)である。TCUは、GPS信号を受信したり、3G/4G/5G等の公衆無線電話回線網に接続したり、WiFi等の無線に接続することができる。
【0013】
通信モジュール300は、公衆電話回線網310やネットワーク通信320に無線接続可能であり、運転者は、公衆電話回線網310を利用した音声通話のみならず、ネットワーク通信320を介したインターネット電話(IP電話)を利用することができる。IP電話のアプリケーションとして、例えば、LINE(登録商標)/Skype(登録商標)/KaKaoTalk(登録商標)などが知られている。IP電話を利用する場合には、IP電話のアプリケーションソフトウエアがスマートフォン等にインストールされる
【0014】
車載装置200は、概して車両に搭載されたコンピュータ装置または電子装置であり、例えば、オーディオ・ビデオ機能、ナビゲーション機能、ハンズフリー通話機能などを搭載する。ハンズフリー通話が行われるとき、通話音声がマイクロフォン212から入力され、通話音声がスピーカ262から出力される。マイクロフォン212およびスピーカ262は、車内空間において選択的な音声入力または音声出力を可能にするため、各座席空間毎に取り付けることが可能である。
【0015】
接続手段400は、車載装置200と通信モジュール300とを有線または無線により接続し、車載装置200と通信モジュール300との間でデータや制御信号の双方向通信を可能にする。接続手段400は、特に接続方法を限定されるものではないが、例えば、Bluetooth、LAN、WiFi、USBなどによって両者を接続する。また、接続手段400は、後述するように、車載装置200と通信モジュール300との間で、ハンズフリー通話を可能にするBT HFTのプロファイルによる接続を含む。なお、図2に示すサウンドシステム100では、車載装置200と通信モジュール300とが接続手段400により接続される例を示すが、これは一例であり、車載装置200が通信モジュール300を内蔵するものであってもよい。この場合の接続手段400は、両者を電気的または機能的に接続する配線等であってもよい。
【0016】
図3に、本実施例の車載装置の構成例を示す。同図に示すように、車載装置200は、入力部210、AVN(オーディオ・ビデオ・ナビゲーション)部220、接続部230、撮像カメラ240、座席センサ250、音声出力部260、表示部270、記憶部280、および制御部290を含んで構成される。ここに示す構成は一例であり、例えば、車載装置200は、テレビ・ラジオ放送を受信する機能を備えることも可能である。
【0017】
入力部210は、入力キーデバイス、音声入力用のマイクロフォン212、タッチパネルなどを含み、これらのデバイスを介して入力された信号が制御部290へ提供される。マイクロフォン212は、各搭乗者の音声をそれぞれ入力可能にするため、各座席に個別に設けることができる。AVN部220は、オーディオ信号やビデオ信号を再生したり、目的地までの経路案内等を行う。接続部230は、図2に示したように、車載装置200と通信モジュール300との接続手段400を確立する。
【0018】
撮像カメラ240は、車内を撮像し、撮像した画像情報を制御部290へ提供する。この画像情報は、搭乗者を識別するために利用される。座席センサ250は、座席への搭乗者の有無を検出し、この検出結果を制御部290へ提供する。座席センサ250は、例えば、座席に取り付けられた重力センサである。なお、座席センサ250は、必須ではなく、撮像カメラ240によって座席に着座された搭乗者を撮像することができるならば、撮像された画像情報から搭乗者が着座する座席位置を識別するようにしてもよい。
【0019】
音声出力部260は、AVN部220で再生された音声信号や通信モジュール300を介してハンズフリー通話をするときの音声信号を受け取り、これを可聴音に変換して車内空間に出力する。音声出力部260は、制御部290の音声出力の切替え制御によりノーマルモードまたはゾーンモードで動作することができる。ノーマルモードのとき、音声出力部260は、音声出力の切替えを行うことなく車内空間の全体に音声を出力する。ゾーンモードのとき、特定の座席空間に音声が出力されるように音声出力を切替える。
【0020】
ある実施態様では、音声出力部260は、指向性のある複数のスピーカ262を含み、各スピーカ262は、対応する座席空間に向けて音声を出力する。ノーマルモードのとき、音声出力部260は、全てのスピーカから音声を出力させ、ゾーンモードのとき、選択されたスピーカから音声を出力させ、非選択のスピーカから音声を出力させない。また、別の実施態様では、音声出力部260は、各座席のヘッドレストの近傍に取り付けられた複数のスピーカ262を含む。ノーマルモードのとき、音声出力部260は、全てのスピーカから音声を出力させ、ゾーンモードのとき、選択されたスピーカから音声を出力させ、非選択のスピーカから音声を出力させない。
【0021】
表示部270は、AVN部220で再生された映像信号や、通信モジュール300から転送された映像信号を表示する。記憶部280は、AVN部220のデータを記憶したり、IP電話を行うためのアプリケーションソフトウエアを記憶する。さらに記憶部280は、図4に示すような電話帳を登録する。電話帳の情報は、ユーザーが入力部210を介して直接入力してもよいし、あるいはスマートフォン(通信モジュール300)からそのような電話帳を取得し、これを登録するようにしてもよい。
【0022】
車載装置200が運転者を識別する機能を備えている場合、複数のユーザーの電話帳が登録され、運転者が識別されたとき、当該運転者に該当するユーザーの電話帳が選択される。電話帳には、例えば、登録する人物に関する電話番号、名前、ID情報(IP電話のときに必要となるIDやアカウント情報を含む)、属性および生体情報などが含まれる。属性とは、本人との関係を表す情報である。ある実施態様では、属性は、予め用意された本人との関係を示す複数のカテゴリーによって規定される。例えば、複数のカテゴリーは、友人、家族(配偶者)、家族(子供)、親族、仕事関係者などを含み、登録する人物に該当するカテゴリーが選択される。図の例では、人物Aは、友人であり、人物Bは、家族(配偶者)であり、人物Cは、家族(子供)であり、人物Dは、仕事関係者である。
【0023】
また、電話帳には登録する人物に関連する生体情報が記憶される。生体情報は、後述するように、搭乗者を識別するために使用される。搭乗者を顔認証によって識別する場合には、搭乗者の顔に関する情報が記憶され、搭乗者を指紋、網膜、静脈等によって行う場合には、これらの生体情報が記憶される。図4の例では、生体情報の格納先アドレスがリンク付けされている。
【0024】
制御部290は、車載装置200の各部の動作を制御する。ある実施態様では、制御部290は、ROM/RAM等を備えたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含み、ROMには、各部を制御するためのプログラムが格納される。制御部290は、ハンズフリー通話時の音声出力を制御するためのサウンド制御プログラムを実行し、ここでは、そのときの制御の詳細を説明する。
【0025】
図5は、本実施例に係るサウンド制御プログラムの機能的な構成を示すブロック図である。サウンド制御プログラム500は、HF接続検出部510、座席位置識別部520、搭乗者識別部530、通話相手識別部540、モード判定部550、および音声出力切替部560とを含む。
【0026】
HF接続検出部510は、車載装置200と通信モジュール300とが接続手段400を介してハンズフリー通話が可能な状態にあることを検出する。例えば、車載装置200と通信モジュール300とのBT HFTプロファイルが接続されたことを検出する。
【0027】
座席位置識別部520は、HF接続が検出されると、座席センサ250の検出結果に基づき搭乗者の座席位置を識別する。この識別結果は、搭乗者識別部520に提供される。搭乗者識別部530は、撮像カメラ240で撮像された画像情報に一致する生体情報を持つ人物を図4の電話帳から検索する。これにより、搭乗者を識別し、その搭乗者の属性を抽出する。
【0028】
搭乗者識別部530は、運転者が固定である場合には、運転者以外の同乗者を識別し、運転者が不特定である場合には、運転者と同乗者の識別を行う。運転者の識別は、運転席に着座している搭乗者を運転者とみなす。運転者の識別を行った場合には、搭乗者識別部530は、複数の電話帳の中から運転者に該当する電話帳を選択し、選択した電話帳を参照して搭乗者を特定し、その人物の属性を抽出する。これらの識別結果は、モード判定部550や音声出力切替部560へ提供される。
【0029】
通話相手識別部540は、ハンズフリー通話が行われるとき通話相手を識別する。例えば、着信があったとき、あるいは発信があったときに行われる。通話相手識別部540は、公衆電話回線網310を利用した音声通話であれば、電話帳の中から一致する電話番号を検索し、該当する人物を識別し、その人物の属性を抽出する。IP電話による通話であれば、電話帳の中から一致するID情報を検索し、該当する人物を識別し、その人物の属性を抽出する。抽出された属性は、モード判定部550や音声出力切替部560へ提供される。
【0030】
モード判定部550は、搭乗者の有無、あるいは搭乗者の属性と通話相手の属性との関連性に基づき音声出力部260をノーマルモードで動作させるか、あるいはゾーンモードで動作させるかを判定する。運転者しか乗車していない場合には、モード判定部550は、ノーマルモードと判定し、音声出力の切替えを行わない。つまり、デフォルト状態で音声を出力させる。一方、運転者以外に同乗者がいる場合には、通話相手の属性と同乗者との属性との関連性に応じてノーマルモードまたはゾーンモードを判定する。1つの例では、通話相手の属性と同乗者の属性とが異なる場合には、ゾーンモードと判定し、通話相手の属性と同乗者の属性とが一致する場合には、ノーマルモードと判定する。例えば、同乗者が家族であり通話相手が仕事関係者であるとき、同乗者が友人であり通話相手が仕事関係者であるとき、同乗者が仕事関係者であり通話相手が家族または友人であるときなどは、通話内容を聞かれたくない、聞かせたくない状況が予想されるので、ソーンモードと判定する。また、同乗者が家族(配偶者)であり通話相手が家族(子供)であるとき、同乗者が仕事関係者であり通話相手が仕事関係者であるときなどは、むしろ通話内容を共有したいことが予想されるので、ノーマルモードと判定する。同乗者の属性と通話相手の属性とがどのような関連性があるときにソーンモードまたはノーマルモードにするかは、予め規定しておくことが望ましい。
【0031】
音声出力切替部560は、モード判定部550の判定結果に基づきハンズフリー通話の音声が出力される座席空間または領域を切替える。音声出力の切替え方法は、特に限定されないが、例えば、音声出力を抑制したい座席空間に指向性を有するスピーカまたはその座席に取り付けられたスピーカへの音声信号を停止したり(ミュートしたり)、あるいはそのようなスピーカに接続されたアンプを非動作にしたり、あるいは位相を反転した音声を出力することで音声を聞き難くしたりする。音声出力切替部560は、ノーマルモードと判定されたとき、音声出力の切替えを行わず、デフォルト状態で車内空間の全体に音声を出力させる。他方、ゾーンモードと判定されたとき、音声出力切替部560は、特定の座席空間に音声が出力されるように音声出力を切替える。具体的には、運転者の座席空間にのみ音声が出力されるようにしたり、あるいは通話相手と属性を共通にする同乗者の座席空間と運転者の座席空間にのみ音声が出力され、属性の異なる同乗者の座席空間に音声が出力されないようにする。
【0032】
次に、本実施例に係るハンズフリー通話時のサウンド制御の動作について図6のフローを参照して説明する。ここでは、ハンズフリー通話をする本人は運転者とする。先ず、運転者がスマートフォンを車内に持ち込むと、スマートフォンが車載装置200とペアリングされ、これによりHF接続検出部510は、ハンズフリー通話が可能な接続状態を検出する(S100)。次に、座席位置識別部520により同乗者の座席位置が識別され(S110)、搭乗者識別部530により搭乗者が識別され、識別された搭乗者の属性が抽出される(S120)。モード判定部550は、座席位置と搭乗者との関係から運転者以外の同乗者がいるか否かを判定し(S130)、同乗者がいない場合にはノーマルモードと判定する(S140)。音声出力切替部560は、ハンズフリー通話が行われるとき、モード判定部550の判定結果に基づき車内空間の全体に音声を出力させる(S150)。
【0033】
一方、同乗者が存在する場合には、ハンズフリー通話が行われるとき、通話相手識別部540により通話相手が識別され、通話相手の属性が抽出される(S160)。モード判定部550は、同乗者の属性と通話相手の属性との関連性に基づきノーマルモードかゾーンモードを判定する(S170)。ゾーンモードと判定された場合、音声出力切替部560は、運転席の座席空間、あるいは運転席の座席空間と通話相手の属性と共通の属性の同乗者の座席空間に音声が出力されるように音声出力を切替え(S180)、これにより特定の座席空間からハンズフリー通話の音声が出力される(S190)。
【0034】
図7(A)は、運転者のみが搭乗しているときのハンズフリー通話の音声出力例を示す。運転者以外に搭乗者がいないので、モード判定部550は、ノーマルモードと判定し、音声出力切替部560は、音声出力の切替えを行わない。同図に示すように、各座席ST1、ST2、ST3、ST4のヘッドレストには、それぞれスピーカSP1、SP2、SP3、SP4が取り付けられ、各スピーカSP1~SP4は、それぞれの座席空間に向けて音声を出力する。ノーマルモードであるため、通話相手の属性を問わず、全てのスピーカSP1、SP2、SP3、SP4から音声が出力される。
【0035】
図7(B)は、同乗者がいるときのハンズフリー通話の音声出力例を示す。通話相手の属性が仕事関係者であり、同乗者の属性は家族であるため、モード判定部550は、ゾーンモードと判定し、音声出力切替部560は、運転者の座席空間Z1に音声が出力されるように、スピーカSP1から音声が出力され、それ以外のスピーカSP2~SP4から音声が出力されないようにする。
【0036】
図8(A)は、通話相手と共通の属性をもつ搭乗者が存在する場合のハンズフリー通話の音声出力例を示す。通話相手の属性は、友人グループAであり、同乗者の3名の属性は、それぞれ友人グループA、友人グループB、家族である。モード判定部550は、通話相手の属性と異なる属性の搭乗者が存在するためゾーンモードと判定し、音声出力切替部560は、運転者の座席ST1と友人グループAの属性をもつ搭乗者の座席ST2の座席空間Z2にのみ音声が出力され、座席ST3、ST4に音声が出力されないように、音声出力の切替えを行う。
【0037】
図8(B)は、他のゾーンモードの例を示している。通話相手の属性は家族であり、同乗者の3名の属性は、それぞれ友人グループA、友人グループB、家族である。モード判定部550は、通話相手の属性と異なる属性の搭乗者が存在するためゾーンモードと判定し、音声出力切替部560は、運転者の座席ST1と家族の属性をもつ搭乗者の座席ST3の座席空間Z3にのみ音声が出力され、座席ST2、ST4に音声が出力されないように、音声出力の切替えを行う。
【0038】
このように、本実施例によれば、運転者以外に搭乗者が存在する場合には、その状況に応じてハンズフリー通話の音声出力を選択的に切替えるようにしたので、本人も気兼ねなく通話をすることができ、他の搭乗者にも不快な思いをさせることなく快適な車内空間を提供することができる。
【0039】
上記実施例では、搭乗者の座席位置を検出するために座席センサを用いたり、搭乗者の識別に撮像カメラで撮像された画像情報を用いる例を示したが、これらは一例であり、他の方法により座席位置や搭乗者の識別を行うようにしてもよい。また、搭乗者や通話相手の属性として幾つかのカテゴリーを例示したが、これは一例であり、これに限定されるものではない。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
100:サウンドシステム
200:車載装置
212:マイクロフォン
262:スピーカ
300:通信モジュール
310:公衆電話回線網
320:ネットワーク通信
400:接続手段
500:サウンド制御プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8