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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ダンプ車両のサイドガード締結構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/42 20060101AFI20231204BHJP
   B60P 1/04 20060101ALI20231204BHJP
   B60R 21/34 20110101ALI20231204BHJP
【FI】
B60R19/42
B60P1/04 E
B60R21/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020029252
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133713
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紳
(72)【発明者】
【氏名】近田 拓也
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-030530(JP,U)
【文献】特開2005-119326(JP,A)
【文献】特開平09-142197(JP,A)
【文献】実開昭59-008865(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/42
B60P 1/04
B60R 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向を長手方向とするシャシフレームと、
前記シャシフレーム上に設けられた緩衝材と、
前記シャシフレームおよび前記緩衝材の上方で荷箱を傾動させるダンプ装置と、
ボルトを用いて締結される被締結部を有するサイドガードと、
を備え
前記シャシフレーム上に固定されて前記荷箱を軸支するサブフレームを備えることなく、前記荷箱が直接前記シャシフレームに軸支されたダンプ車両に適用されるダンプ車両のサイドガード締結構造であって、
前記シャシフレームと前記緩衝材との間にスペーサが設けられ、
前記シャシフレーム、前記スペーサおよび前記緩衝材が、互いにボルトを用いて締結され、
前記サイドガードの前記被締結部が、前記スペーサにボルトを用いて締結された、ことを特徴とするダンプ車両のサイドガード締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプ車両のサイドガード締結構造において、
前記サイドガードは、前側に設けられた前側被締結部と、後側に設けられた後側被締結部とを有し、
少なくとも、前記前側被締結部が前記スペーサに締結されており、
前記スペーサの前端部が、前記緩衝材の前端部よりも前方に位置し、
前記前側被締結部が、前記緩衝材の前端部よりも前側で前記スペーサに締結されている、ことを特徴とするダンプ車両のサイドガード締結構造。
【請求項3】
請求項1に記載のダンプ車両のサイドガード締結構造において、
前記サイドガードは、前側に設けられた前側被締結部と、後側に設けられた後側被締結部とを有し、
少なくとも、前記後側被締結部が前記スペーサに締結されており、
前記スペーサの後端部が、前記緩衝材の後端部より後方に位置し、
前記後側被締結部が、前記緩衝材の後端部よりも後側で前記スペーサに締結されている、ことを特徴とするダンプ車両のサイドガード締結構造。
【請求項4】
請求項2に記載のダンプ車両のサイドガード締結構造において、
前記スペーサは、
前記シャシフレームと前記緩衝材との間に設置されたスペーサ本体部材と、
前記スペーサ本体部材の前端部に接続されたスペーサ前部材と、
を有し、
前記スペーサ前部材に、前記前側被締結部が締結されている、ことを特徴とするダンプ車両のサイドガード締結構造。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のダンプ車両のサイドガード締結構造において、
前記前側被締結部は、前記荷箱の底部に設けられた前後方向へ延びた主桁の前端部より前側、又は前記荷箱の前壁より前側に設けられている、ことを特徴とするダンプ車両のサイドガード締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプ車両のシャシフレームにサイドガードを締結するために用いる、ダンプ車両のサイドガード締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車格が一定以上の大きさを有するダンプ車両(例えば、普通車検枠以上のダンプ車両)は、歩行者等が後側の車輪に巻き込まれることを防止する巻き込み防止装置(以下「サイドガード」という。)の設置が義務付けられる。
【0003】
サイドガードは、ダンプ車両の荷箱とシャシフレームとの間に設けられたサブフレームに取り付けられることが多い。しかし、サブフレームを持たないダンプ車両の場合、シャシフレームにサイドガードが取り付けられる。例えば特許文献1および2には、シャシフレームにボルトを用いて締結(以下「ボルト締結」ともいう。)されたサイドガードが開示されている。なお、特許文献1および2では、シャシフレームを「車枠」と称している。また、特許文献1では、サイドガードを「サイドスカート」と称している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-19574号公報
【文献】特公昭62-60301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ダンプ車両のシャシフレームを設計製造する部門・会社(以下「シャシメーカ等」ともいう。)と、シャシフレーム上に搭載される荷箱等の架装物を設計製造する部門・会社(以下「架装メーカ等」ともいう。)は、別々に分かれている。そのため、「架装メーカ等」が、サイドガードをシャシフレームにボルト締結するために、シャシフレームにボルトを挿通する孔(以下、「ボルト孔」ともいう。)を設けることを望む場合、「シャシメーカ等」の了承を得る必要がある。一方、了承を求められた「シャシメーカ等」は、シャシフレームに新たにボルト孔を設けた場合に、シャシフレームに強度不足等の問題が生じないかを検討する必要が生じる。したがって、架装メーカ等がシャシフレームに新たにボルト孔を設けるのではなく、シャシフレームに既に設けられたボルト孔を利用してサイドガードをシャシフレームにボルト締結することが望まれる。
【0006】
しかしながら、シャシフレームに設けられた既存のボルト孔の位置や大きさは、車両の型式、荷箱の形状や車両重量等に応じて異なる。また、サイドガードの形状および大きさも車両の型式、荷箱の形状や車両重量等に応じて異なる。そのため、上記車両の型式等や上記サイドガードの形状等ごとに、サイドフレームの締結に適したボルト孔をシャシフレームの既存のボルト孔から選択する作業が必要となる。また、上記車両の型式等や上記サイドガードの形状等ごとに、既存のボルト孔にサイドガードをボルト締結するための部材を設計および製作することが必要となる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて創案されたものであり、車両の型式等やサイドガードの形状等ごとに、サイドフレームの締結に適したボルト孔をシャシフレームの既存のボルト孔から選択する作業の負担を軽減又は解消するとともに、既存のボルト孔にサイドガードをボルト締結するための部材の設計・製作の工数を低減するダンプ車両のサイドガード締結構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造は、車両の前後方向を長手方向とするシャシフレームと、前記シャシフレーム上に設けられた緩衝材と、前記シャシフレームおよび前記緩衝材の上方で荷箱を傾動させるダンプ装置と、ボルトを用いて締結される被締結部を有するサイドガードと、を備える。前記シャシフレームと前記緩衝材との間には、スペーサが設けられている。前記シャシフレーム、前記スペーサおよび前記緩衝材は、互いにボルトを用いて締結されている。前記サイドガードの前記被締結部は、前記スペーサにボルトを用いて締結されている。
【0009】
本発明の第2態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造は、第1態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造において、前記サイドガードは、前側に設けられた前側被締結部と、後側に設けられた後側被締結部とを有する。そして、少なくとも、前記前側被締結部が前記スペーサに締結されており、前記スペーサの前端部が、前記緩衝材の前端部よりも前方に位置し、前記前側被締結部が、前記緩衝材の前端部よりも前側で前記スペーサに締結されている。
【0010】
本発明の第3態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造は、第1態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造において、前記サイドガードは、前側に設けられた前側被締結部と、後側に設けられた後側被締結部とを有する。そして、少なくとも、前記後側被締結部が前記スペーサに締結されており、前記スペーサの後端部が、前記緩衝材の後端部より後方に位置し、前記後側被締結部が、前記緩衝材の後端部よりも後側で前記スペーサに締結されている。
【0011】
本発明の第4態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造は、第2態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造において、前記スペーサは、前記シャシフレームと前記緩衝材との間に設置されたスペーサ本体部材と、前記スペーサ本体部材の前端部に接続されたスペーサ前部材と、を有し、前記前側被締結部が、前記スペーサ前部材に締結されている。
【0012】
本発明の第5態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造は、第2態様又は第4態様に係るダンプ車両のサイドガード締結構造において、前記前側被締結部が、前記荷箱の底部に設けられた前後方向へ延びた主桁の前端部より前側又は前記荷箱の前壁より前側に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の型式等やサイドガードの形状等ごとに、サイドフレームの締結に適したボルト孔をシャシフレームの既存のボルト孔から選択する作業の負担が軽減される。また、車両の型式等やサイドガードの形状等ごとに、既存のボルト孔にサイドガードをボルト締結するための部材を設計および製作する作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るダンプ車両の左側面図である。
図2】本実施形態に係るダンプ車両の要部を示す平面図である。但し、緩衝材の図示は省略している。
図3図1のA部拡大図である。
図4図3のB部拡大図である。
図5】スペーサ前部材およびその近傍を示す平面図である。
図6】車両の左側に設置されたサイドガードおよびスペーサを車両の前方から視た図である。
図7】左右のサイドガードおよびシャシフレームを車両の後方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るダンプ車両のサイドガード締結構造について、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、特に断りの無い限り、前後、左右および上下の方向は、ダンプ車両の前後、左右および上下の方向と一致するものとする。
【0016】
図1に、本実施形態に係るサイドガード締結構造1を備えたダンプ車両2を示す。ダンプ車両2は、シャシフレーム3、緩衝材4、荷箱5、ダンプ装置6、スペーサ7、サイドガード8等を備えている。
【0017】
シャシフレーム3は、図1および図2に示すように、車両前後方向を長手方向として左右一対に設けられている。本実施形態で例示するシャシフレーム3には、断面コ字状の溝形鋼が用いられている。左右のシャシフレーム3は、溝部を対向させて略平行に配置されている。左右のシャシフレーム3の間には、クロスメンバ11が架設されている。シャシフレーム3の前部には、キャブ12が搭載され、キャブ12の後方に荷箱5が搭載されている。なお、シャシフレーム3には、各種部材を取り付けるために用いられるボルト孔が多数設けられている。
【0018】
緩衝材4は、荷箱5が起立状態から倒伏する際に、荷箱5の底部がシャシフレーム3に当たる際の衝撃を緩衝する。緩衝材4には、例えば樹脂、木材等の材料が用いられる。緩衝材4は、図3に示すように、シャシフレーム3の上に設けられている。本実施形態では、緩衝材4は、前後方向を長手方向とする直方体状に形成されている。緩衝材4は、既存の緩衝材(例えば「シャシメーカ等」から「架装メーカ等」に車両が提供された後に、シャシフレーム3にボルト締結される緩衝材)と比べて、上下方向の厚さが、スペーサ7の厚さ分だけ薄く設定されている。緩衝材4は、図4に示すように、ボルト14を用いてスペーサ7に締結されている。図4に示す例では、緩衝材4の上面からボルト14が突出しないように、ボルト孔の上方に深座ぐり4aが形成されている。また、スペーサ7の内部の上面18bには、ボルト14を螺着するナット15が溶接されている。
【0019】
ダンプ装置6は、シャシフレーム3および緩衝材4の上方に設けられた荷箱5を傾動させる。ダンプ装置6は、例えば、油圧シリンダ16等を用いて構成される。
【0020】
<スペーサの説明>
スペーサ7は、図2および図3に示すように、左右のシャシフレーム3と緩衝材4との間に設置されている。本実施形態では、図3に示すように、スペーサ7の長さは、緩衝材4の長さよりも長く設定され、スペーサ7の前端部は、緩衝材4の前端部よりも前方に位置している。また、図5に示すように、左右のスペーサ7の前部(本実施形態では前端部)の間には、補強を目的として、スペーサ用クロスメンバ17が架設されている。なお、シャシフレーム3とスペーサ7との間にはシャシ側段差がある(図4参照)。
【0021】
本実施形態では、スペーサ7は、図3に示すように、スペーサ本体部材18と、スペーサ前部材19とを用いて構成されている。スペーサ本体部材18は、シャシフレーム3と緩衝材4との間に設置され、緩衝材4よりも前後方向に若干長く形成されている。スペーサ前部材19は、スペーサ本体部材18の前端部に接続されている。すなわち、スペーサ前部材19は、緩衝材4の前端部よりも前側に設置されている。
【0022】
スペーサ本体部材18は、図4に示すように、ボルト22を用いてシャシフレーム3に締結されている。ボルト22が挿通されるシャシフレーム3のボルト孔23として、既存の緩衝材をボルト締結するために設けられたボルト孔を使用することができる。例えば、「シャシメーカ等」から「架装メーカ等」に提供された車両のシャシフレーム3に緩衝材(既存の緩衝材)がボルト締結されている場合は、当該ボルトを緩めて既存の緩衝材をシャシフレーム3から取り外し、既存の緩衝材が取り付けられていた場所にスペーサ7を載置する。そして、既存の緩衝材がシャシフレーム3に締結されるために利用されていたボルト孔を利用して、スペーサ7をシャシフレーム3にボルト締結する。
【0023】
本実施形態では、図4に示すように、スペーサ本体部材18に、上下方向の貫通孔18aが形成されている。スペーサ本体部材18は、貫通孔18aに挿通されたボルト22とナット24を用いて、シャシフレーム3上に締結されている。なお、ボルト22の締め付け力により、中空状のスペーサ本体部材18は、その上面18bと下面18cとが接近する変形が生じ易いが、その変形を防止するために、スペーサ本体部材18内には、ボルト22の挿通位置の近傍に、補強柱部材26が設けられている。
【0024】
スペーサ前部材19には、図5に示すように、サイドガード用締結部19bと、本体接続部19cとが形成されている。
【0025】
サイドガード用締結部19bは、スペーサ前部材19の前部の側面に形成されており、後述するサイドガード8の被締結部28Fがボルト締結される。また、サイドガード用締結部19bの裏面には、後述するサイドガード8の前側ステー33L,33Rの一端部と同軸線上にスペーサ用クロスメンバ17の端部が固定されている。かかる構造により、サイドガード8に外力が加わった際、前側ステー33L,33Rを介して伝達される力がスペーサ用クロスメンバ17で支持される。なお、図5に例示するスペーサ前部材19は、その車幅方向外側部19aが緩衝材4およびスペーサ本体部材18よりも車幅方向外側に位置している。
【0026】
本体接続部19cは、スペーサ前部材19の後端部に形成されており、スペーサ本体部材18の前端部にボルト締結されている。
【0027】
本実施形態では、スペーサ前部材19は、水平板部19d、垂直板部19eおよび後端板部19fを含んで形成されている。
【0028】
水平板部19dは、シャシフレーム3の上面に沿って設置される。水平板部19dの後端部は、スペーサ本体部材18と略同じ幅寸法に形成されている。水平板部19dの前後方向の中間部には、前方に向かって幅寸法が減少する部分が形成されている。
【0029】
垂直板部19eは、水平板部19dの車幅方向外縁部から鉛直方向に立ち上がって形成されている。垂直板部19eの前部の外側面には、サイドガード用締結部19bが設けられている。本実施形態では、サイドガード用締結部19bは、図3に示すように、サイドガード8の被締結部28Fの形状および大きさに対応して輪郭が円弧状に形成されている。また、垂直板部19eの前部には、スペーサ用クロスメンバ17の端部が固定されている。
【0030】
後端板部19fは、垂直板部19eの後端部と水平板部19dの後端部から連続して形成され、車両の前後方向に対して垂直に形成されている。後端板部19fは、スペーサ本体部材18の前端部を形成する板材18dと向い合せに面接触し、当該板材18dにボルト締結されている。
【0031】
上記緩衝材4の厚さと、上記スペーサ7の厚さの和は、既述したように、シャシフレーム3に取り付けられていた既存の緩衝材の厚さと等しいことが望ましい。そうすることで、走行状態(倒伏状態)にある荷箱5の傾きを変えること無く、既設の緩衝材を本実施形態に係る緩衝材4およびスペーサ7に置き換えることができる。
【0032】
<サイドガードの説明>
サイドガード8は、本実施形態では、図2に示すように、車両の左右両側に設置されている。左右のサイドガード8L,8Rは、それぞれ、サイドガード本体32L,32R、前側ステー33L,33Rおよび後側ステー34L,34Rを備える。なお、サイドガード8L,8Rの構造、形状、大きさ等は、車両の型式、荷箱の形状や重量等に応じて異なる。本実施形態で説明するサイドガード8の具体的な形状、構造等はあくまで一例である。
【0033】
サイドガード本体32L,32Rは、歩行者等が後側の車輪に巻き込まれることを防止するために、前輪35と後輪36の間に配置される。本実施形態では、左側のサイドガード本体32Lは、図3に示すように、ダンプ車両2の左側下部に設置された予備タイヤ37との干渉を避ける形状とされている。また、右側のサイドガード本体32Rは、図2に示すように、排気浄化装置38等との干渉を避けるために、左側のサイドガード本体32と比べて前後方向の寸法が短くなっている。
【0034】
前側ステー33L,33Rは、基端部がスペーサ7に固定され、先端部にサイドガード本体32L,32Rが固定されている。具体的には、図6に示すように、前側ステー33の基端部に設けられた前側被締結部28Fがスペーサ前部材19のサイドガード用締結部19bにボルト31を用いて締結されている。本実施形態では、前側被締結部28Fは、図3に示すように、円形フランジであるが、前側締結部28Fの形状は、これに限定されず、車両の型式、荷箱5の形状、およびサイドガード8の種類に応じて異なる。
【0035】
また、前側ステー33L,33Rの先端部には、サイドガード本体32L,32Rを支持する断面コの字型の固定用ホルダ39が設けられている。この固定用ホルダ39にサイドガード本体32L,32Rが嵌め込まれて固定されている。固定用ホルダ39およびサイドガード本体32L,32Rは、これらを貫通したボルトを用いて相互に締結されている。本実施形態では、前側ステー33L,33Rは、少なくともサイドガード本体32L,32R側が、荷箱5の底部に設けられた前後方向へ延びる主桁5aの前端部よりも前に位置している。前側ステー33L,33Rが、このように位置することで、荷箱5の下方に設置されている物40(例えばタンク等)の取り回しを円滑に行うことができる。もちろん、前側ステー33L,33Rは、荷箱5の前壁5bより前に位置していてもよく、その場合も、荷箱5の下方に設置されている物40の取り回しを円滑に行うことができる。
【0036】
図3および図6に例示する前側ステー33L,33Rは、第1管材33L1および第2管材33L2を用いて構成されている。第1管材33L1は、基端部に上記前側被締結部28Fが設けられて、スペーサ前部材19に対して固定されている。第1管材33L1は、図6に示すように、略水平に設置されている。第2管材33L2は、基端部が、第1管材33L1の先端部に溶接されている。第2管材33L2は、中間部に湾曲部を有し、湾曲部よりも基端側が略水平に配置され、湾曲部よりも先端側が下方に向かって延出している。また、第2管材33L2の下端部には、既述した固定用ホルダ39が設けられている。
【0037】
右側の前側ステー33Rは、左側の前側ステー33Lと左右対称の形状を有するため、詳しい図示および説明は省略する。
【0038】
車両の左側に設置された後側ステー34Lは、図3および図7に示すように、第3管材34L1および第4管材34L2を用いて構成されている。第3管材34L1は、基端部が中間部材41を介してシャシフレーム3に固定され、先端部にサイドガード本体32Lが固定されている。第4管材34L2は、第3管材34L1より短く、先端部が第3管材34L1の中間部に溶接されている。図3および図7に示すように、第3管材34L1および第4管材34L2の基端部に後側被締結部28Rが設けられている。この後側被締結部28Rは、中間部材41を介してシャシフレーム3に固定されている。
【0039】
中間部材41は、シャシフレーム3にボルト締結された荷箱ガイド部材42と、荷箱ガイド部材42の後面に溶接された部材43とで構成される。荷箱ガイド部材42は、荷箱5を降下させる際に荷箱5をシャシフレーム3に対して適切な位置に案内するものである。部材43は、例えば、断面コの字型の溝形鋼であって、溝部をシャシフレーム3側に向け長さ方向を上下に向けて、荷箱ガイド部材42の後面に沿って配置されている。後側被締結部28Rは、部材43にボルト締結されている。
【0040】
車両の右側に設置された後側ステー34Rは、後方に屈曲した基端部を有し、基端部に溶接されたブラケット45を介してシャシフレーム3にボルト締結されている。一方、後側ステー34Rの先端部には、サイドガード本体32Rが固定されている。
【0041】
左右の後側ステー34L,34Rの先端部に固定されたサイドガード本体32Rは、前側ステー33L,33Rの先端部と同様に、断面コの字型の固定用ホルダ39を介して取り付けられている。
【0042】
以上に説明した構成を備えるダンプ車両のサイドガード締結構造1によれば、以下の作用効果が奏される。
【0043】
(1) 既存の緩衝材をシャシフレーム3にボルト締結するために設けられていた既存のボルト孔を、スペーサ7をシャシフレーム3にボルト締結するために利用することで、シャシフレーム3に新たなボルト孔を設けることなく、サイドガード8をダンプ車両に取り付けることができる。
(2) 車両の型式等やサイドガードの形状等ごとに、サイドフレームの締結に適したボルト孔をシャシフレームの既存のボルト孔から選択する作業を軽減ないし無くすことができる。
(3) シャシフレーム3に既存の緩衝材をボルト締結するためのボルト孔が、シャシフレーム3の上面に設けられていること、および、既存の緩衝材の前後には、スペーサ7(特にスペーサ前部材19)の設置を妨げる障害物が殆ど存在しないことから、車両の型式、荷箱の形状等に応じてスペーサ7の形状等を大きく設計変更しなければならない可能性は極めて低い。
そのため、例えば、サイドガード8の前側ステー33L,33Rは、慣習上、荷箱5の前壁5bの少し前側に配置させることが多いが、本実施形態に係るダンプ車両のサイドガード締結構造1によれば、スペーサ7(スペーサ前部材19)の長さを変更するだけで、サイドガード8の前側ステー33L,33Rを好適な位置に配設することができる。
したがって、本実施形態に係るサイドガード締結構造1によれば、車両の型式等やサイドガードの形状等ごとに行う必要のある設計工数(設計変更の工数)を低減させることができる。
(4) 前側被締結部28Fが、荷箱5の下部の主桁5aより前側、あるいは、荷箱5の前壁5bより前側に設けられているので、スペーサ7の前端部の高さ方向の空間を比較的大きく確保することができる。その結果、前側被締結部28Fを大きくすることができ、前側被締結部28Fに対するサイドガード8の締結強度を向上させることができる。
(5) 車両の型式等やサイドガード本体の形状等に左右されることなく、サイドガードを車両に取り付ける作業をほぼ画一化することができる。これにより、サイドガードを車両に取り付ける作業効率が向上する。
【0044】
<実施形態の変形例>
既述の実施形態では、サイドガード8の前側被締結部28Fのみが、スペーサ7に締結され、後側被締結部28Rは、スペーサ7に締結されていなかったが、後側被締結部28Rもスペーサ7にボルト締結される構成であってもよい。この場合、スペーサ7の後端部が緩衝材4の後端部より後方に位置するように、スペーサ7の後端部を緩衝材4より後方に延出し、後側被締結部を、緩衝材4の後端部よりも後側でスペーサ7に締結することが望ましい。後側被締結部28Rを、緩衝材4の後端部よりも後側でスペーサ7に締結することにより、後側被締結部28Rを大きくすることができ、後側被締結部28Rに対するサイドガード8の締結強度を向上させることができる。なお、後側被締結部は、前側被締結部28Fのように円形フランジであってもよいし、他の形状であってもよい。
【0045】
既述の実施形態では、スペーサ7は、スペーサ本体部材18とスペーサ前部材19の2部材がボルト締結されたものであったが、スペーサ7は一体物で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、サブフレームを有さないダンプ車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 サイドガード締結構造
2 ダンプ車両
3 シャシフレーム
4 緩衝材
5 荷箱
5a 主桁
5b 前壁
6 ダンプ装置
7 スペーサ
8 サイドガード
14 ボルト
18 スペーサ本体部材
19 スペーサ前部材
22 ボルト
28 被締結部
28F 前側被締結部
28R 後側被締結部
31 ボルト
32L,32R サイドガード本体
33L,33R 前側ステー
34L,34R 後側ステー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7