(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】安全機能付きアシストスーツ
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20231204BHJP
A41D 13/002 20060101ALN20231204BHJP
【FI】
A62B35/00 A
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2018137488
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502369573
【氏名又は名称】ユーピーアール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300006607
【氏名又は名称】株式会社ヴァーゴウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大垣 博
(72)【発明者】
【氏名】村松 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】酒田 健治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 昭典
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081597(JP,A)
【文献】特開2018-011693(JP,A)
【文献】特開2017-040017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126195(US,A1)
【文献】特開2017-153979(JP,A)
【文献】特開2014-050452(JP,A)
【文献】特開2008-148803(JP,A)
【文献】特開2018-071032(JP,A)
【文献】特開2016-043209(JP,A)
【文献】特開2011-224257(JP,A)
【文献】特開2009-131372(JP,A)
【文献】特開2010-075511(JP,A)
【文献】特開2013-022033(JP,A)
【文献】ペツル ロープアクセス カタログ 2018,日本,株式会社アルテリア,2018年03月07日,11頁,https://www.alteria.co.jp/download/dealer/pro/PETZL_Rope_Access_2018.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
A41D 13/00
A41D 13/002
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の身体に装着可能とされた装着部材と、
該装着部材に設けられた安全機能部材と、と備え、
前記装着部材は、
前記作業者の背中における
肩胛骨の下半部辺りより下側の逆V字状に形成された背中装着部と、
該背中装着部の上端部から前記作業者の左右の肩に沿って前方に延出された左右一対の肩装着部と、
前記作業者の腰を囲繞するように配置されるとともに、前記背中装着部の下端
部が連結された腰装着部と、有し、
前記肩装着部には、該肩装着部の上面に沿って設けられた肩ベルトと、前記肩装着部の幅方向
における側縁部に設けられた面ファスナーと、が設けられ、
前記肩ベルトを前記肩装着部と前記面ファスナーとの間に挟み込んだ状態で、前記面ファスナーが止着可能に構成され、
前記背中装着部は、前記作業者が前屈姿勢をした際に、姿勢を起こす方向にアシストする弾性部材を有し、
前記肩ベルトの胸側の下端部は、前記腰装着部に連結され、
前記腰装着部は、該腰装着部を前記作業者の腰に締め付ける腰ベルト部を有し、
前記安全機能部材は、
一端部側が前記装着部材に連結されたランヤード部と、
該ランヤード部の他端部側に設けられたフック部と、を有することを特徴とする安全機能付きアシストスーツ。
【請求項2】
前記腰装着部は、前記作業者の腰に沿って伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の安全機能付きアシストスーツ。
【請求項3】
前記装着部材には、前記作業者の身体に向かって送風する送風部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の安全機能付きアシストスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全機能付きアシストスーツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、体の姿勢を矯正したり、荷物の運搬や上げ下ろしの際の前屈動作をアシストしたりするアシストスーツが提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
ところで、工事現場の作業者が高所で作業を行う際には、墜落制止のため、安全帯を装着している。例えば、安全帯は、ベルト部と、ベルト部に設けられたランヤード部と、ランヤード部の先端部に設けられフック部、とを備えた構成であり、作業時には、作業者はベルト部を腰等に装着して、フック部を支持物に係止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工事現場の作業者が、作業の負担や疲労の軽減のために、上記の特許文献1に記載のアシストスーツを着用する場合、高所での作業時にはその上に安全帯を装着しなければならず、装着しづらく、2度手間となってしまうため、作業までの準備に時間や手間がかかってしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、手間なく装着することができるとともに、作業者の正しい姿勢の保持及び背中や腰の負担を軽減することができる安全機能付きアシストスーツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る安全機能付きアシストスーツは、作業者の身体に装着可能とされた装着部材と、該装着部材に設けられた安全機能部材と、と備え、前記装着部材は、前記作業者の背中における肩胛骨の下半部辺りより下側の逆V字状に形成された背中装着部と、該背中装着部の上端部から前記作業者の左右の肩に沿って前方に延出された左右一対の肩装着部と、前記作業者の腰を囲繞するように配置されるとともに、前記背中装着部の下端部が連結された腰装着部と、有し、前記肩装着部には、該肩装着部の上面に沿って設けられた肩ベルトと、前記肩装着部の幅方向における側縁部に設けられた面ファスナーと、が設けられ、前記肩ベルトを前記肩装着部と前記面ファスナーとの間に挟み込んだ状態で、前記面ファスナーが止着可能に構成され、前記背中装着部は、前記作業者が前屈姿勢をした際に、姿勢を起こす方向にアシストする弾性部材を有し、前記肩ベルトの胸側の下端部は、前記腰装着部に連結され、前記腰装着部は、該腰装着部を前記作業者の腰に締め付ける腰ベルト部を有し、前記安全機能部材は、一端部側が前記装着部材に連結されたランヤード部と、該ランヤード部の他端部側に設けられたフック部と、を有することを特徴とする。
【0008】
このように構成された安全機能付きアシストスーツでは、背中装着部、左右一対の肩装着部及び腰装着部が作業者の身体に沿って配置されて、装着部材が作業者に装着される。装着部材には安全機能部材が設けられているため、装着部材を装着すれば安全機能部材もともに装着される。よって、装着部材及び安全機能部材を同時に、手間なく装着することができる。
また、作業者が前屈姿勢をした際には、背中装着部の弾性部材により、作業者は姿勢を起こす方向にアシストされるため、作業者の姿勢が正しく保持されるとともに背中や腰の負担が軽減される。
また、高所での作業時には、腰ベルト部で作業者の腰に腰装着部を締め付けて、装着部材に連結されたランヤード部に設けられたフック部を所定の箇所に係止させて作業することができるため、作業者の安全性を確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る安全機能付きアシストスーツでは、前記腰装着部は、前記作業者の腰に沿って伸縮可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
このように構成された安全機能付きアシストスーツでは、腰装着部は作業者の腰に沿って伸縮可能であるため、作業者の腰に腰装着部を締め付けることで、腰への負担が軽減される。
【0011】
また、本発明に係る安全機能付きアシストスーツは、前記装着部材には、前記作業者の身体に向かって送風する送風部が設けられていてもよい。
【0012】
このように構成された安全機能付きアシストスーツでは、装着部材に設けられた送風部が作業者の身体に向かって送風するため、作業者は快適な環境で作業をすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る安全機能付きアシストスーツによれば、手間なく装着することができるとともに、作業者の正しい姿勢の保持及び背中や腰の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツを装着した作業者を後方から見た図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツを装着した作業者を前方から見た図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツの肩装着部及びその近傍の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツについて、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツを装着した作業者を後方から見た図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る安全機能付きアシストスーツを装着した作業者を前方から見た図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る安全機能付きアシストスーツ(以下、単にアシストスーツと称する)100は、装着部材1と、安全機能部材3と、を備えている。
なお、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」の表記は、特に説明の無い限り、アシストスーツ100を装着した作業者Hにとっての「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」を意味するものとする。
【0016】
装着部材1は、作業者Hの身体に装着可能とされている。装着部材1は、背中装着部11と、左右一対の肩装着部12と、腰装着部13と、有している。例えば、装着部材1は、所定の柔軟性及び伸縮性を有する布地等で構成されている。
【0017】
背中装着部11は、作業者Hの背中における肩から腰にかけて配置されている。背中装着部11は、背中の上方から下方に向かうにしたがって次第に左右方向の幅が広くなるように形成されている。
【0018】
背中装着部11は、作業者Hが前屈姿勢をした際に、姿勢を起こす方向にアシストする弾性部材11aを有している。弾性部材11aは、曲げられると元に戻ろうとする弾性力を有する部材で構成されている。
【0019】
弾性部材11aは、上端部が背中装着部11の上部に固定され、下端部が腰装着部13に固定されている。弾性部材11aの下部は、上下方向に長い貫通孔11bが形成されている。これにより、弾性部材11aが、腰回りの回転に対応しやすくなっている。
【0020】
左右の肩装着部12は、背中装着部11の上端部からそれぞれ上方に延び、作業者Hの肩部の上端部で折り返されて、作業者Hの前側に延びている。
【0021】
各肩装着部12には、肩ベルト22がそれぞれ設けられている。肩ベルト22は、肩装着部12の背中側(後側)から胸側(前側)にわたって延びている。肩ベルト22の胸側の下端部は、腰装着部13に連結されている。肩ベルト22にはバックル22aが設けられ、肩ベルト22の長さ調整が可能とされている。肩ベルト22の胸側には、環状をなす環状部材22bが設けられている。
【0022】
図3は、肩装着部12及び肩ベルト22の構成を示す模式図であり、紙面右側は肩装着部12に肩ベルト22が固定される前の状態を示し、紙面左側は肩装着部等12に肩ベルト22が固定された状態を示している。
図3に示すように、肩装着部12の幅方向の両側には、それぞれ面ファスナー29が設けられている。肩ベルト22は、肩装着部12上(作業者Hの背中側と反対側)に配置されている。面ファスナー29は、肩ベルト22上(作業者Hの背中側と反対側)折り返されている。肩ベルト22を肩装着部12と面ファスナー29との間で挟み込んだ状態で、面ファスナー29の先端部どうしが止着されている。弾性部材11a(
図1参照)の上端部は、肩装着部12の下端部に接続された背中装着部11に固定されている。
【0023】
左右の肩ベルト22どうしは、胸ベルト24で連結されている。胸ベルト24は左右方向に延びている。胸ベルト24にはバックル24aが設けられ、胸ベルト24の長さ調整が可能とされている。
【0024】
腰装着部13は、作業者Hの腰を囲繞するように配置されている。背中装着部11の下端部及び肩ベルト22の胸側の下端部は、それぞれ腰装着部13に連結されている。腰装着部13は、作業者Hの腰に沿って伸縮可能に構成されている。
【0025】
腰装着部13の前側には、腰ベルト(腰ベルト部)23が設けられている。腰ベルト23は左右方向に延びている。腰ベルト23にはバックル23aが設けられ、腰ベルト23の長さ調整が可能とされている。
【0026】
腰装着部13の後側には、作業者H側に向かって送風する送風ファン(送風部)13aが設けられている。送風ファン13aは、左右両側に設けられている。
【0027】
腰装着部13には、左右一対の腿ベルト25が設けられている。各腿ベルト25は、管状に形成され、作業者Hの臀部から腿に沿って配置され、腿に巻かれている。腿ベルト25にはバックル25aが設けられ、腿ベルト25の長さ調整が可能とされている。
【0028】
安全機能部材3は、装着部材1に連結されている。安全機能部材3は、左右一対のランヤード部31と、フック部32と、を有している。
【0029】
各ランヤード部31の一端部側は、環状をなす環状部材31aを介して、肩装着部12の背中側(後側)に連結されている。
【0030】
各ランヤード部31の他端部には、フック部32が設けられている。フック部32は、開閉可能とされている。フック部32は、不使用時には胸ベルト24に設けられた環状部材22bに係合され、使用時には、支持物に設けられたロープ等(不図示)に係合可能とされている。
【0031】
このように構成されたアシストスーツ100では、背中装着部11、左右一対の肩装着部12及び腰装着部13が作業者Hの身体に沿って配置されて、装着部材1が作業者Hに装着される。装着部材1には安全機能部材3が設けられているため、装着部材1を装着すれば安全機能部材3もともに装着される。よって、装着部材1及び安全機能部材3を同時に、手間なく装着することができる。
【0032】
また、作業者Hが前屈姿勢をした際には、背中装着部11の弾性部材11aが曲げられ元に戻ろうとする弾性力により、作業者Hは姿勢を起こす方向にアシストされるため、作業者Hの姿勢が正しく保持されるとともに背中や腰の負担が軽減される。
【0033】
また、腰装着部13は作業者Hの腰に沿って伸縮可能であるため、作業者Hの腰に腰装着部13を締め付けることで、腰への負担が軽減される。さらに、腰装着部13の上から腰ベルト23を締め付けることで、腰装着部13の位置ずれ等が抑制される。
【0034】
また、高所での作業時には、腰ベルト23で作業者の腰に腰装着部13を締め付けて、装着部材1に連結されたランヤード部31に設けられたフック部32を所定の箇所に係止させて作業することができるため、作業者Hの安全性を確保することができる。
【0035】
また、万が一、高所での作業中に、作業者Hがランヤード部31に吊り下げられたとしても、腰ベルト23、胸ベルト24及び腿ベルト25が設けられているため、腰ベルト23及び腿ベルト25により腰装着部13が作業者から抜け落ちることが抑制されるとともに、胸ベルト24により肩装着部12が作業者から抜け落ちることが抑制される。
【0036】
また、腰装着部13に設けられた送風ファンが作業者Hの身体に向かって送風するため、作業者Hは快適な環境で作業をすることができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0038】
例えば、上記に示す実施形態では、腰装着部13の後面には送風ファン13aが設けられているが、本発明はこれに限られない。送風部は背中装着部11等に設けられていてもよく、あるいは設けられていなくてもよい。
【0039】
また、上記に示す実施形態では、腰装着部13は、作業者Hの腰に沿って伸縮可能に構成されているが、本発明はこれに限られず、腰装着部13は伸縮可能に構成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…装着部材
3…安全機能部材
11…背中装着部
11a…弾性部材
12…肩装着部
13…腰装着部
13a…送風ファン(送風部)
22…肩ベルト
23…腰ベルト(腰ベルト部)
24…胸ベルト
25…腿ベルト
31…ランヤード部
32…フック部
100…アシストスーツ(安全機能付きアシストスーツ)
H…作業者