(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】車両のための非常用エネルギー蓄積機
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231204BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20231204BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60T13/74 D
B60T17/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019097425
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10 2018 209 470.5
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ソランキ,ジテンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ドノテック,ミヒャエル
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169389(JP,A)
【文献】特開2007-097342(JP,A)
【文献】国際公開第2018/036675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60T 13/74
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキマスタシリンダの前に支持可能または支持され、非常用エネルギー蓄積機を備える車両用電気機械式ブレーキ倍力装置において、
前記非常用エネルギー蓄積機は、
直列に結線される少なくとも2つの蓄電池(20aないし20c)であって、該少なくとも2つの蓄電池(20aないし20c)のそれぞれが少なくとも1つの蓄電コンデンサを含んでいる前記少なくとも2つの蓄電池(20aないし20c)と、
少なくとも1つの変圧器(22aないし22c)と、を備
え、
前記非常用エネルギー蓄積機は、前記少なくとも2つの蓄電池(20aないし20c)のそれぞれがそれに割り当てられた変圧器(22aないし22c)と結合されているように、該非常用エネルギー蓄積機の蓄電池(20aないし20c)ごとにそれぞれ1つの変圧器(22aないし22c)をその少なくとも1つの変圧器(22aないし22c)として有して
おり、
前記非常用エネルギー蓄積機の前記変圧器(22aないし22c)のそれぞれが、1つのコイル機構(LaないしLc)と、1つのコンデンサ(CaないしCc)と、2つのスイッチ要素(S1aないしS1cおよびS2aないしS2c)とを有しており、
前記非常用エネルギー蓄積機が、最大で3つの変圧器(22aないし22c)を有し、且つ前記電気機械式ブレーキ倍力装置がB12ゲートドライバーを含み、該B12ゲートドライバーにより、前記非常用エネルギー蓄積機の前記最大で3つの変圧器(22aないし22c)の最大で6つの前記スイッチ要素(S1aないしS1cおよびS2aないしS2c)と、前記電気機械式ブレーキ倍力装置の非常用エネルギー蓄積機・外部電子機構の他の6つのスイッチ要素とを切換え可能である、電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記非常用エネルギー蓄積機の前記変圧器(22aないし22c)が直列に結線されている、請求項1に記載の
電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項3】
前記非常用エネルギー蓄積機の前記変圧器(22aないし22c)のそれぞれが、
2つのMOSFETをその2つのスイッチ要素(S1aないしS1cおよびS2aないしS2c)として有している、請求項1または2に記載の
電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
前記非常用エネルギー蓄積機
が、最大で3つの変圧器(22aないし22c)を有し、且つ該非常用エネルギー蓄積機がB6ゲートドライバーを含み、該B6ゲートドライバーにより、前記最大で3つの変圧器(22aないし22c)の最大で6つの前記スイッチ要素(S1aないしS1cおよびS2aないしS2c)を切換え可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の
電気機械式ブレーキ倍力装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置を備えた、車両用ブレーキシステムおよび/またはステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための非常用エネルギー蓄積機に関するものである。また、本発明は車両用電気機械式ブレーキ倍力装置、車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステム、車両用エネルギー供給システムに関する。さらに、本発明は車両の非常用エネルギー蓄積機のための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、本出願人にとって国内の従来技術として既知の従来のエネルギー蓄積装置の概略図である。
【0003】
図1に図示した従来のエネルギー蓄積装置は、直列に結線されている複数の蓄電池10aないし10cを有している。これら蓄電池10aないし10cのそれぞれは、少なくとも1つの蓄電コンデンサを備えるように形成されている。さらに、この従来のエネルギー蓄積装置は、1つのコイルLと、1つのコンデンサCと、スイッチ要素S1およびS2としての2つのMOSFETとからなる変圧器12を有している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を備えた、車両のための非常用エネルギー蓄積機と、請求項6の構成要件を備えた車両用電気機械式ブレーキ倍力装置と、請求項8の構成要件を備えた、車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステムと、請求項9の構成要件を備えた車両用エネルギー供給システムと、請求項10の構成要件を備えた、車両の非常用エネルギー蓄積機のための製造方法とを提供する。
【0005】
本発明は、それぞれの車両の搭載電源の故障時でも車両の少なくとも1つの車両構成要素に「非常用エネルギー」または備蓄エネルギーを提供する手段を提供する。本発明の格別な利点は、エネルギーを提供するために利用される蓄電池に不具合が生じた場合でも、本発明により、この種の状況でまだ特定の非常用エネルギーを少なくとも1つの車両構成要素に提供可能であることにある。したがって本発明は、このようにめったに発生しない非常事態においても、少なくとも1つの車両構成要素を作動させることにより、車両にとって望ましい走行挙動をなお発生させることができる、または、補助することができることを保証することで、少なくとも1つの車両構成要素を備えた車両の快適基準および安全基準の向上に寄与する。これは、換言すれば、本発明は、搭載電源の故障時における第1のフォールバックソリューションに加えて、搭載電源の故障時、および、同時に発生する、エネルギーの提供のために利用される蓄電池の不具合時に、さらにいわゆる(補強用の)第2のフォールバックソリューションを提供するものであるともいえる。
【0006】
本発明の更なる利点を、以下でその実施態様を詳細に述べることで説明する。
【0007】
非常用エネルギー蓄積機の有利な実施態様では、非常用エネルギー蓄積機の変圧器は直列に結線されている。これにより、比較的高い全電圧を、直列に結線された変圧器を用いて少なくとも1つの車両構成要素に出力することができる。
【0008】
たとえば、非常用エネルギー蓄積機の変圧器のそれぞれは、1つのコイル機構と、1つのコンデンサと、2つのスイッチ要素とを有している。したがって、非常用エネルギー蓄積機の少なくとも2つの変圧器は比較的安価に且つ比較的少ない作業コストで製造可能である。
【0009】
特に、非常用エネルギー蓄積機の変圧器のそれぞれは、2つのMOSFETをその2つのスイッチ要素として有していてよい。したがって、1つの変圧器ごとの2つのスイッチ要素は比較的簡潔に形成され得る。
【0010】
有利な態様では、非常用エネルギー蓄積機は、最大で3つの変圧器を有し、且つ該非常用エネルギー蓄積機はB6ゲートドライバーを含み、該B6ゲートドライバーにより、最大で3つの変圧器の最大で6つのスイッチ要素を切換え可能である。これにより、比較的安価で、比較的頻繁に使用されているドライバーを非常用エネルギー蓄積機に対して使用することができる。これは非常用エネルギー蓄積機の生産を容易にし、その製造コストの付加的な低減に寄与する。
【0011】
上述の利点は、車両のブレーキマスタシリンダの前に支持可能または支持されていて、この種の非常用エネルギー蓄積機を含んでいる車両用電気機械式ブレーキ倍力装置においても保証されている。好ましくは、非常用エネルギー蓄積機は、最大で3つの変圧器を有し、且つ電気機械式ブレーキ倍力装置はB12ゲートドライバーを追加的に含み、該B12ゲートドライバーにより、非常用エネルギー蓄積機の最大で3つの変圧器の最大で6つのスイッチ要素と、電気機械式ブレーキ倍力装置の非常用エネルギー蓄積機・外部電子機構の他の6つのスイッチ要素とを切換え可能である。このケースでも、比較的安価に、比較的頻繁に使用されているドライバーを電気機械式ブレーキ倍力装置に対して使用することができ、これによって電気機械式ブレーキ倍力装置の製造方法が簡潔になり、電気機械式ブレーキ倍力装置の製造コストが低減される。
【0012】
対応する非常用エネルギー蓄積機および/またはこの種の電気機械式ブレーキ倍力装置を備えた車両用ブレーキシステムおよび/またはステアリングシステムも、上述の利点を実現する。
【0013】
また、上述の利点は、車両バッテリーと対応的に形成された非常用エネルギー蓄積機とを備えた車両用エネルギー供給システムによって生じる。
【0014】
さらに、車両の非常用エネルギー蓄積機のための対応する製造方法の実施も、上述の利点を提供する。製造方法は非常用エネルギー蓄積機の実施態様にしたがって発展形成可能であることを明確に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、本発明の更なる構成要件および利点を、図を用いて説明する。
【
図2】本発明による非常用エネルギー蓄積機の一実施形態の概略図である。
【
図3】車両の非常用エネルギー蓄積機のための製造方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、本発明による非常用エネルギー蓄積機の一実施形態の概略図である。
【0017】
図2に図示した非常用エネルギー蓄積機は、車両/自動車の表面および/または内部に挿着可能/取り付け可能である。なお、この非常用エネルギー蓄積機の有用性は特定のタイプの車両/自動車に限定されるものではないことをはっきり指摘しておく。
【0018】
非常用エネルギー蓄積機は、直列に結線された少なくとも2つの蓄電池20aないし20cを有している。少なくとも2つの各蓄電池20aないし20cのそれぞれは、それぞれ少なくとも1つの(図示していない)蓄電コンデンサを含んでいる。これら蓄電池20aないし20cのうちの少なくとも1つが複数の蓄電コンデンサを有している場合には、これら蓄電コンデンサは選択的に並列回路としておよび/または直列回路としてそれぞれの蓄電池20aないし20c内で結線されて設けられていてよい(
図2に図示されている、ちょうど3つの蓄電池20aないし20cを備えた非常用エネルギー蓄積機の構成は、説明するための例にすぎない)。
【0019】
少なくとも1つの蓄電池20aないし20cの少なくとも1つの蓄電コンデンサとは、たとえば特にスーパーコンデンサ(Super Capacitor,略してSupercapまたはSC)のような電気化学的コンデンサと理解してよい。たとえば、少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサ(Hybrid Super Capacitor,略してHSC)が少なくとも1つの蓄電コンデンサとして蓄電池20aないし20cのうちの少なくとも1つに使用されていてよい。したがって、蓄電池20aないし20cのうちの少なくとも1つはスーパーコンデンサセルとして形成されていてよい。
【0020】
非常用エネルギー蓄積機は、該非常用エネルギー蓄積機を備えている車両/自動車の搭載電源の故障の際に、該非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cの少なくとも2つに蓄積されているエネルギー自体を、まだ「非常用エネルギー」としてそれぞれの車両/自動車の少なくとも1つの車両構成要素に対し出力できるように形成されている。それ故、少なくとも1つの車両構成要素は、搭載電源の故障にもかかわらず、少なくとも過渡的には「非常用エネルギー」の出力によりまだ作動を続行することができ、したがって搭載電源の故障の影響を少なくとも過渡的に弱めることができる。よって、非常用エネルギー蓄積機は、それぞれの車両/自動車の快適基準および安全基準の向上に寄与する。たとえば、車両/自動車のブレーキシステムおよび/またはステアリングシステム/ステアリングの少なくとも1つの構成要素は、搭載電源の故障にもかかわらず、非常用エネルギー蓄積機により出力された「非常用エネルギー」により、車両/自動車のドライバーまたは自律制御システムがまだ比較的快適に且つ比較的安全に減速および/または操舵できるように作動をなお続行することができる。このようにして、非常用エネルギー蓄積機は、搭載電源の故障にもかかわらず、車両/自動車の操舵時および/または減速時にドライバーまたは自律制御システムを支援するための第1のフォールバックソリューションを提供する。
【0021】
図2の非常用エネルギー蓄積機は、さらに、該非常用エネルギー蓄積機の各蓄電池20aないし20cにつきそれぞれ1つの変圧器22aないし22cを有し、この場合少なくとも2つの蓄電池20aないし20cのそれぞれはその(個別に)割り当てられた変圧器22aないし22cと結合されている。したがって、非常用エネルギー蓄積機は、蓄電池20aないし20cと少なくとも同じ数量の変圧器22aないし22cを有している。好ましくは、非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cの蓄電池総数は、非常用エネルギー蓄積機の変圧器22aないし22cの変圧器総数に等しい。
【0022】
非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cのそれぞれに1つの「固有の」変圧器22aないし22cが有利に割り当てられていることにより、非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cのそれぞれを、該非常用エネルギー蓄積機の他の蓄電池20aないし20cとは独立に放電させることができる。それ故、少なくとも1つのまだ動作能力のある蓄電池20aないし20cを欠陥のある蓄電池20aないし20cとは独立に放電させることで、非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cの1つに欠陥が存在していても、これを補填することもできる。したがって、それぞれの車両/自動車の搭載電源が故障している場合、少なくとも1つの車両構成要素への「非常用エネルギー」の出力は、非常用エネルギー蓄積機の蓄電池20aないし20cの1つに欠陥があるにもかかわらず、まだ可能である。よって、
図2の非常用エネルギー蓄積機は、それぞれの車両/自動車の快適性基準および安全性基準を付加的に向上させることに寄与する冗長性が従来技術に比べて向上している。それ故、非常用エネルギー蓄積機は、搭載電源の故障時に第1のフォールバックソリューションを生じさせるだけでなく、その蓄電池20aと20cの少なくとも1つに欠陥がある場合に第2のフォールバックソリューションを実現させ、該第2のフォールバックソリューションにおいて、同様に、車両/自動車の操舵時および/または減速時にドライバーまたは自律制御システムがまだ出力可能な「非常用エネルギー」により支援される。したがって、搭載電源の故障と蓄電池20aないし20cのうちの1つに存在する欠陥とによる「ダブルエラーシチュエーション」は、非常用エネルギー蓄積機の高い冗長性によりその影響をさらに少なくとも弱めることができる。
【0023】
変圧器22aないし22cは、それぞれDC-DC変圧器、DC-DCコンバータ、または、コンバータと呼ぶこともできる。
図2で認められるように、非常用エネルギー蓄積機の変圧器22aないし22cは直列に結線されている。したがって、非常用エネルギー蓄積機の接点24aと24bにおいて、蓄電池20aないし20cにより提供される個々の電圧の合計に相当する出力電圧V
backupをピックアップ可能である。それにもかかわらず、蓄電池20aないし20cの1つに欠陥がある場合、或いは、それぞれの蓄電池20aないし20cの少なくとも1つの蓄電コンデンサに欠陥がある場合および/またはそれぞれの蓄電池20aないし20cに個別に割り当てられている変圧器22aないし22cに欠陥がある場合には、接点24aと24bにおいて、まだ動作機能のある少なくとも1つの蓄電池20aないし20cの少なくとも1つの個別電圧の合計に相当する出力電圧V
backupをピックアップ可能である。したがって、蓄電池20aないし20cの1つに欠陥があっても、非常用エネルギー蓄積機が完全に機能不全になったり、出力電圧V
backupがゼロへ降下しない。
【0024】
さらに、蓄電池20aないし20cのそれぞれはそれに割り当てられた変圧器22aないし22cを用いて個別に切換えることができるので、接点24aと24bにおいてピックアップ可能な出力電圧Vbackupを変化させることができる。また、接点24aと24bにおいてピックアップ可能な出力電圧Vbackupを変化させるために非常用エネルギー蓄積機は付加的な回路をも必要としない。
【0025】
図2の実施例では、非常用エネルギー蓄積機の変圧器22aないし22cのそれぞれは、それぞれ1つのコイル機構/コイルLaないしLcと、それぞれ1つのコンデンサCaないしCcと、それぞれ2つのスイッチ要素S1aないしS1cおよびS2aないしS2cとを有している。それぞれの蓄電池20aないし20cの第1の接点は、割り当てられた変圧器22aないし22cのコイル機構LaないしLcと第2のスイッチ要素S2aないしS2cとを介して、割り当てられた変圧器22aないし22cのコンデンサCaないしCcの第1の電極と結合されていてよく、他方それぞれの蓄電池20aないし20cの第2の接点は、割り当てられた変圧器22aないし22cのコンデンサCaないしCcの第2の電極と結合され、それぞれの変圧器22aないし22cの第1のスイッチ要素S1aないしS1cは、それぞれの変圧器22aないし22cの第2のスイッチ要素S2aないしS2cおよびコンデンサCaないしCcに対し並列に配置されている。コンデンサCaないしCcに対しては、非常用エネルギー蓄積機のコンデンサCaないしCcの全容量が従来のエネルギー蓄積装置の前記コンデンサCの最小容量よりも少ない程度の小容量タイプのコンデンサを必要とするにすぎない。対応的に、コイル機構LaないしLcの全容量は、従来のエネルギー蓄積装置の前記コイル機構Lの最小容量よりも小さくてよい。したがって、
図2により描写された非常用エネルギー蓄積機の設計は、その小型化にも利用することができる。
【0026】
非常用エネルギー蓄積機の変圧器22aないし22cのそれぞれは、たとえばそれぞれ2つのMOSFETをその2つのスイッチ要素S1aないしS1cおよびS2aないしS2cとして有していてよい。使用するMOSFETのそれぞれは比較的小さな作動電圧に対してのみ設計されていればよいので、特に従来のエネルギー蓄積装置の前記スイッチ要素S1およびS2と比較して、比較的安価なMOSFETを非常用エネルギー蓄積機に対して使用することができる。さらに、
図2の非常用エネルギー蓄積機の場合に使用されるMOSFETは、従来のエネルギー蓄積装置のスイッチ要素S1およびS2に対して通常使用される比較的電圧レベルの高いMOSFETよりも電圧損失が少ない。
【0027】
非常用エネルギー蓄積機が最大で3つの変圧器22aないし22cを有している限りにおいては、該非常用エネルギー蓄積機はB6ゲートドライバー(B6 Gate Driver)を含んでいてよく、該B6ゲートドライバーを用いて最大で3つの変圧器22aないし22cの最大で6つのスイッチ要素S1aないしS1cおよびS2aないしS2cを切換え可能である。したがって、非常用エネルギー蓄積機の製造のために、頻繁に使用されるゲートドライバー部品を使用することができる。これは非常用エネルギー蓄積機の製造を容易にして、その製造コストの低減に寄与する。
【0028】
たとえば、上述した非常用エネルギー蓄積機を用いると、たとえばESPのようなそれぞれの車両/自動車の少なくとも1つのブレーキ圧発生装置を、搭載電源が故障してもまだ少なくとも過渡的に作動させることができる。それ故、非常用エネルギー蓄積機は有利にはブレーキシステムの表面および/またはブレーキシステムの内部に統合されていてよい。少なくとも1つのブレーキ圧発生装置はたとえば電気機械式ブレーキ倍力装置であってよく、該電気機械式ブレーキ倍力装置は、出力電圧V
backupによって生じる該電気機械式ブレーキ倍力装置の作動によりブレーキマスタシリンダ内およびこれに結合されている少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ内の圧力を上昇可能であるように/上昇させるように、車両のブレーキマスタシリンダの前に支持可能/支持されている。
図2の実施形態では、非常用エネルギー蓄積機は一例として3つの蓄電池20aないし20cを有している。これら3つの蓄電池20aないし20cは、車両/自動車の搭載電源が故障した場合でも、電気機械式ブレーキ倍力装置の少なくとも一時的な作動を保証するには十分である。したがって、このような状況においても車両/自動車をなお信頼性をもって出力電圧V
backupにより減速させることができ、その際選択的に自律減速またはドライバーアシスト減速が可能である。
【0029】
特に、
図2に概略的に図式した非常用エネルギー蓄積機は、電気機械式ブレーキ倍力装置の表面および/または内部に取り付けられていてよい。従来の電気機械式ブレーキ倍力装置は、通常6つのMOSFETをスイッチ要素として有している。それ故、非常用エネルギー蓄積機が最大で3つの変圧器22aないし22cを有している限りにおいては、電気機械式ブレーキ倍力装置はB12ゲートドライバー(B12 Gate Driver)を有することもでき、該B12ゲートドライバーを用いて、非常用エネルギー蓄積機の最大で6つのスイッチ要素S1aないしS1cおよびS2aないしS2cと、電気機械式ブレーキ倍力装置の非常用エネルギー蓄積機・外部電子機構の他の6つのスイッチ要素とを切換え可能である。
【0030】
さらに、(場合によっては電気機械式ブレーキ倍力装置に加えて)非常用エネルギー蓄積機は、車両/自動車の搭載電源の故障後のまだ少なくとも過渡時間の間に、他のブレーキ圧発生要素をも作動させることができる。たとえば、非常用エネルギー蓄積機は、搭載電源の故障後にステアリング/ステアリングシステムの少なくとも1つのモータ構成要素を出力電圧Vbackupを用いて作動させることができる。(非常用エネルギー蓄積機がステアリングに対しても利用される限りにおいては、その蓄電池20aないし20cの数量を4つの蓄電池へ増大させるのが有利な場合が多い。)それ故、非常用エネルギー蓄積機は、有利には車両用ステアリングまたは車両用ブレーキシステムおよび車両用ステアリングシステムの表面および/または内部に組み込まれていてもよい。同様に、車両バッテリーおよび非常用エネルギー蓄積機を備えた車両のためのエネルギー供給システムも有利である。
【0031】
図3は、車両の非常用エネルギー蓄積機のための製造方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【0032】
以下に説明する製造方法を用いると、たとえば前述した非常用エネルギー蓄積機を製造することができる。しかしながら、この製造方法の実施可能性はこの非常用エネルギー蓄積機に限定されるものではない。
【0033】
方法ステップS1で、少なくとも2つの蓄電池を(互いに)直列に結線し、その際少なくとも2つの蓄電池のそれぞれは少なくとも1つの蓄電コンデンサを含んでいる。さらに、この製造方法はさらに少なくとも方法ステップS2を有しており、該方法ステップS2で、非常用エネルギー蓄積機の少なくとも1つの変圧器が形成される。この場合、該方法ステップS2で、非常用エネルギー蓄積機は、該非常用エネルギー蓄積機の蓄電池ごとにそれぞれ1つの変圧器を(前記少なくとも1つの変圧器として)備えて形成され、その際少なくとも2つの蓄電池のそれぞれをそれに割り当てられた変圧器と結合する。
【0034】
方法ステップS1とS2とは、任意の順番で、同時に、または時間的にオーバーラップして実施してよい。
【符号の説明】
【0035】
20aないし20c 蓄電池
22aないし22c 変圧器
CaないしCc コンデンサ
LaないしLc コイル機構
S1aないしS1c 第1のスイッチ要素
S2aないしS2c 第2のスイッチ要素