(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】水中油型クリーム化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20231204BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20231204BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231204BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231204BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20231204BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20231204BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20231204BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/02
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019113973
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔太
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-214469(JP,A)
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2019-014709(JP,A)
【文献】国際公開第2005/044216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/06
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/39
A61K 8/86
A61Q 1/02
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体
0.4~1.0質量%、
(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体
0.05~0.3質量%、
(C)
炭素数14~22の高級アルコール
2~5質量%、及び
(D)非イオン性界面活性剤
1~5質量%
を含み、
(D)成分が、(i)ポリオキシエチレン(10~50モル)べへニルエーテルと(ii)ステアリン酸グリセリルとを含み、かつ、(iii)モノステアリン酸ポリエチレングリコール又はジイソステアリン酸ポリグリセリルをさらに含み、
固形油/液状油の質量比が0.25~0.5の範囲である
水中油型クリーム化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分が、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-25メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマー、および、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/べへネス-25メタクリレートクロスポリマーから選択される、請求項1に記載の水中油型クリーム化粧料。
【請求項3】
25℃における硬度が10~30Nである、請求項1
または2に記載の水中油型クリーム化粧料。
【請求項4】
(E)トラネキサム酸又はその誘導体をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の水中油型クリーム化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型クリーム化粧料に関する。より詳しくは、硬いクリーム状でありながら、皮膚に塗布する際に溶けるように崩れ、なめらかに伸びて、肌にすっと馴染む水中油型クリーム化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア等の皮膚に塗布される化粧料において、その使い心地は重要な要素である。特にクリーム化粧料の場合は、保管時には適度な硬さを維持しつつ、塗布開始時には柔らかく崩れ、塗布終了時までなめらかで、かつ、きしむことなく伸び広がることが望ましい。
【0003】
これらの使用感触に影響を与える要因の1つとして、化粧料の増粘方法が挙げられる。水中油型乳化化粧料の代表的な増粘方法としては、例えば水溶性高分子によるものと界面活性剤によるものが知られている。
水溶性高分子は水相の増粘剤として用いられるが、そのような水溶性高分子としては、従来から一般的に用いられているカルボマーや多糖類に加えて、比較的良好な使用性と電解質添加時の安定性をもたらすためにアルキル基やイオン性基(スルホン酸基)を導入した多糖類等も使用されている(特許文献1)。しかし、いずれの水溶性高分子を用いる場合も、増粘性の付与や化粧料の長期保管下での安定性を維持するのに十分な量を添加すると、塗布の際の濃縮にともなうぬめりやのびの重さ、べたつきなどが避けられない。
【0004】
また、界面活性剤による増粘としては、油相の乳化に必要な界面活性剤を単独もしくは他の成分と組み合わせて用いる方法が挙げられる。例えば特許文献2では、アシルメチルタウリン塩とベヘニルアルコールを組み合わせてαゲルを形成してのびのよい化粧料を調製する方法が報告されている。しかしながら、αゲルにより十分な硬さを実現するには比較的多量の界面活性剤や高級アルコールが必要となり、それによって、皮膚に塗布した時にのびが重くなったり、べたついたりするなど、使用感の悪さを生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-235301号公報
【文献】特開2010-6716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保管時には適度な硬さを有するクリーム状でありながら、化粧料を手指などで皮膚に適用した際には急激に粘度低下して溶けるように崩れ、その後は軽くなめらかに伸び広がって、肌にすっと馴染むという、本発明に特有の従来にない優れた使用感を有する水中油型クリーム化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の増粘剤、界面活性剤、油分を組み合わせて配合することにより、目的とする新規な特性を有する水中油型クリーム化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体、
(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、
(C)高級アルコール、及び
(D)非イオン性界面活性剤
を含み、
(A)成分の配合量が化粧料全量に対して0.3~1.5質量%である、水中油型クリーム化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、上記構成とすることにより、25℃における保管時には硬度が10~30Nという硬いクリーム状でありながら、手指で肌に塗布する際には溶けるように素早く崩れて、その後もべたつくことなく軽く塗り伸ばすことができる。
これにより、硬くリッチな印象を与えながら、肌へのあと残りが少なく肌馴染みも良いという、従来にない優れた使用感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体、(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(C)高級アルコール、及び(D)非イオン性界面活性剤を含み、前記(A)成分を特定の量で含むことを特徴とする。以下、本発明の水中油型クリーム化粧料について詳述する。
【0011】
<(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体>
本発明の水中油型クリーム化粧料に配合される(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、
(a1)アクリル酸またはメタクリル酸、
(a2)アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキル、
(a3)アクリル酸またはメタクリル酸と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとのエステル、
の共重合体である。
【0012】
これらは、例えば、ICID(International Cosmetic Ingredient Dictionary)収載名で、アクリレーツ/セテス-20メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-25メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-50メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ベヘネス-25メタクリレートコポリマー、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ベヘネス-25メタクリレートクロスポリマー等が挙げられ、水分散液(ポリマーエマルジョン)として市販されている。なかでも、アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー(「(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー」と称する場合がある)またはアクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマーが特に好ましい。
【0013】
好ましい市販品としては、例えば、アキュリン22(アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートコポリマー(ローム・アンド・ハース社))、アキュリン28(アクリレーツ/ステアレス-25メタクリレートコポリマー(ローム・アンド・ハース社))、アキュリン88(アクリレーツ/ステアレス-20メタクリレートクロスポリマー(ローム・アンド・ハース社))、および、アリストフレックスHMB(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/べへネス-25メタクリレートクロスポリマー(クラリアントプロダクションUK社))が挙げられる。
【0014】
(A)成分には、その粘性を調節するために中和剤を配合することができる。中和剤は特に限定されず、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、トリエタノールアミンやイソプロパノールアミン、塩基性アミノ酸等の有機塩基を用いることができる。
【0015】
本発明の化粧料における(A)成分の配合量は、化粧料全量に対して0.3~1.5質量%、好ましくは0.35~1.2質量%、より好ましくは0.4~1.0質量%である。配合量が0.3質量%未満では保管時に十分な硬さが得られず、塗布時に溶けるような崩れやすさを実現できない場合がある。一方、1.5質量%を超えて配合すると塗布の際に伸びが重くなり使用性が低下する場合がある。
【0016】
<(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体>
本発明の水中油型クリーム化粧料に配合される(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を主鎖とするポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部がアルキル基によりエステル化されたポリマーである。エステル結合によって結合しているアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、その炭素数は10~30であることが好ましい。(B)成分の典型例としては、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを挙げることができる。
本発明では、(B)成分の代わりに、化粧料に汎用されている別の増粘剤を配合すると保管時の硬度が不十分になるなど、本発明に特有の効果が達成されなくなる傾向がある。
【0017】
好ましい(B)成分の市販品としては、例えば、ルーブリゾール社から販売されている、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポール1342、カーボポールUltrez21、カーボポールETD2020、カーボポール1382等が挙げられる。なかでも、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2が特に好ましい。
【0018】
(B)成分には、前記(A)成分と同様に、その粘性を調節するために中和剤を配合することができる。中和剤は特に限定されず、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、トリエタノールアミンやイソプロパノールアミン、塩基性アミノ酸等の有機塩基を用いることができる。
【0019】
本発明の化粧料における(B)成分の配合量は、化粧料全量に対して0.01~1.0質量%、好ましくは0.03~0.5質量%、より好ましくは0.05~0.3質量%である。配合量が0.01質量%未満では、手指で肌に塗布する際に溶けるように崩れる感触が得られず、1.0質量%を超えると化粧料の外観にざらつきが発生し美観が損なわれたり、塗布時になめらかな感触が得られない場合がある。
【0020】
<(C)高級アルコール>
本発明の水中油型クリーム化粧料に配合される(C)高級アルコール(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、化粧品分野において使用できる炭素数14~22の高級アルコールであれば特に限定されない。(C)成分の好ましい例としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられる。その中でも、直鎖非分岐であるセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0021】
さらに本発明においては、(C)成分として、上記の2種以上の混合物を用いるのが好ましく、例えば、ステアリルアルコールとベヘニルアルコールとの組み合わせが特に好ましい。
【0022】
本発明の化粧料における(C)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~10質量%、好ましくは1~7質量%、より好ましくは2~5質量%である。(C)高級アルコールの配合量が0.1質量%未満では十分な硬さや乳化安定性が得られず、10質量%を超えるとべたつきを生じ、伸びが悪くなる場合がある。
【0023】
<(D)非イオン性界面活性剤>
本発明の水中油型クリーム化粧料に配合される(D)非イオン性界面活性剤(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、化粧品分野において通常使用されているものを配合できる。なかでも、(D)成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ1種以上含むことが好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等を挙げることができる。ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は、10~50の範囲であり、20~40の範囲がより好ましい。ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数がこの範囲にあると、化粧料に十分な硬さと優れた乳化安定性を付与することができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品の例としては、NIKKOL BB-20、BB-30等(日光ケミカルズ社)を挙げることができる。
【0025】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(自己乳化型)、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、サンソフト8004(太陽化学株式会社)等を挙げることができる。
【0026】
また、乳化粒子の合一を抑制し、安定性を一層向上する観点から、(D)成分として、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルをさらに配合することが好ましい。ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸ポリエチレングリコール等を挙げることができる。ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は25~150の範囲であると好ましい。ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの好適な例として、ステアリン酸PEG(100)等を挙げることができる。
【0027】
具体的な(D)成分の組合せとして、特に、ポリオキシエチレン(10~50)ベヘニルエーテルとステアリン酸グリセリルの組合せが挙げられる。また、さらに好ましい(D)成分の組合せとして、ポリオキシエチレン(10~50)ベヘニルエーテル、ステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG(100)の組合せが挙げられる。
【0028】
本発明の化粧料における(D)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~10質量%、好ましくは0.5~7質量%、より好ましくは1~5質量%である。成分(D)が0.1質量%未満であると、油性成分を安定に乳化させることができず、10質量%を超えるとべたつきを生じるなど使用感が悪化する場合がある。
【0029】
<αゲル>
本発明の水中油型クリーム化粧料では、前記(C)高級アルコール及び前記(D)非イオン性界面活性剤が、水とともにラメラ液晶構造を有する会合体(「αゲル」ともいう)を形成する。
本発明の化粧料においては、αゲル形成による乳化安定性をさらに高めるために、(A)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸POEモノアルキルエーテルエステル共重合体及び(B)(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体と、(C)高級アルコール及び(D)非イオン性界面活性剤との配合比({(A)+(B)}/{(C)+(D)})を、質量%にして0.01~2.0とするのが好ましい。当該比率が0.01未満では乳化安定性が悪くなり、2.0を超えるとのびが悪くなり、べたつきも増える傾向がある。
【0030】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の成分、例えば、水性溶媒、油分、保湿剤、薬剤のほか、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、粉体、香料、色剤、色素等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0031】
水性溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、水道水等)、低級アルコール、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0032】
油分は、特に限定されるものではなく、化粧料に広く用いられている種々の油分を配合できる。しかし、本発明においては、固形油分の割合が多すぎると化粧料が硬くなって、のびが重くなり、液状油分の割合が多すぎると化粧料が柔らかくなって肌上で溶けるような崩れやすさを実現しにくくなる傾向があるため、固形油分と液状油分を、質量比([固形油]/[液状油])が0.1~1.0、好ましくは0.2~0.8、より好ましくは0.25~0.5の範囲となるように含むのが好ましい。
なお、本発明において固形油分と液状油分との質量比([固形油分]/[液状油分])を算出する際には、上記(C)高級アルコールも固形油分に含めるものとする。
【0033】
固形油分とは、一般に化粧料に用いられる室温において固体状又は半固体状の油分である。このような油分として、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊油、硬化牛脂、パーム核油、豚油、牛骨油、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ルナセラ等の炭化水素系ワックス;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の脂肪酸グリセリルエーテル;アセトグリセライド、トリ-2- ヘプチルウンデカン酸グリセライド等の脂肪酸グリセリド;ミリスチン酸ミリスチル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
液状油分とは、一般に化粧料に用いられる室温において液体の油分である。このような油分として、例えば、アボカド油、月見草油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の液体油脂;オクタン酸セチル、セチル2-エチルヘキサノエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エチルラウレート、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、アセトグリセライド、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル油;流動パラフィン、スクワレン、プリスタン、ポリブテン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
保湿剤としては、ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。なかでも、べたつきを抑制する効果があることから、ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテルが好ましい。
【0036】
薬剤としては、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トラネキサム酸、コウジ酸、エラグ酸、アルブチン、アルコキシサリチル酸、ニコチン酸アミド、グリチルリチン酸、トコフェロール、レチノール及びこれらの塩又は誘導体(例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、2-O-エチル-L-アスコルビン酸、3-O-エチル-L-アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸ナトリウム塩、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸ステアリル、酢酸トコフェノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等)を例示することができる。なかでも、トラネキサム酸又はその誘導体は、塗布後のしっとりさを向上させる効果があるため好ましい。
【0037】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、限定されないが、例えば、(C)成分、(D)成分及び他の油性成分を高温で溶解して溶解油分パーツを調製し、(A)成分、(B)成分及び他の水性成分を含む水相パーツを加温したものに前記溶解油分パーツを加えて常法により乳化して冷却することによって製造することができる。
【0038】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、25℃における硬度が10~30Nの範囲、より好ましくは15~20Nの範囲である。硬度が当該範囲内であれば、本発明に特有の硬いクリーム状でありながら、皮膚に塗布する際に崩れやすく塗りのばしやすい使用感を実現することができる。
なお、本発明における硬度は、レオテック社製レオメーター(感圧軸8φ、針入速度2cm/min、針入度3mm)で測定した値である。
【0039】
本発明の水中油型クリーム化粧料は、乳化粒子径が0.1~10μmの範囲、より好ましくは1~5μmの範囲である。乳化粒子径を当該範囲内とすることにより、化粧料の硬度を上記の好適な範囲に調節することができる。
なお、本発明における乳化粒子径は、システム工業顕微鏡BX51(オリンパス株式会社製)を用いて測定した値である。
【実施例】
【0040】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における配合量は特に断らない限り、化粧料全量に対する質量%を示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0041】
(1)肌上で溶けるような崩れやすさ
専門パネル10名が顔面に試料を塗布し、肌上で溶けるように素早く崩れる感触について評価した。
A:パネル10名中8名以上が肌上で溶けるような感触があると回答した。
B:パネル10名中5名以上8名未満が肌上で溶けるような感触があると回答した。
C:パネル10名中5名未満が肌上で溶けるような感触があると回答した。
【0042】
(2)のびの軽さ
専門パネル10名が顔面に試料を塗布し、塗布時ののびの軽さを評価した。
A:パネル10名中8名以上が肌上でのびが軽いと回答した。
B:パネル10名中5名以上8名未満が肌上でのびが軽いと回答した。
C:パネル10名中5名未満が肌上でのびが軽いと回答した。
【0043】
(3)硬度
調製した水中油型クリーム化粧料の硬度を、25℃において、レオテック社製レオメーター(感圧軸8φ、針入速度2cm/min、針入度3mm)で測定した。
【0044】
(4)乳化粒子径
調製した水中油型クリーム化粧料をシステム工業顕微鏡BX51(オリンパス株式会社製)で観察し、乳化粒子径を目視にて測定した。
【0045】
(5)乳化粒子の安定性
調製した水中油型クリーム化粧料を70℃で1時間攪拌した後に、乳化粒子の合一の有無を目視で確認した。
A:乳化粒子の合一は全く観察されなかった。
B:乳化粒子の合一が僅かに認められたが、使用上問題無いレベルであった。
C:乳化粒子の合一が著しく、使用に耐えないレベルであった。
【0046】
[実施例1~3及び比較例1~2]
以下の表1に掲げた処方で水中油型クリーム化粧料を調製し、上記の項目(1)~(5)について評価した。
【0047】
【0048】
表1に示されるように、(A)(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマーを0.3~1.5質量%の範囲で配合することにより、本発明に特有の使用感を得ることができた。一方、当該成分が0.3質量%未満では保管時に十分な硬さが得られず、1.5質量%を超えて配合すると塗布の際に伸びが重くなり使用性の低下が認められた。
【0049】
[実施例4~5及び比較例3]
以下の表2に掲げた処方で水中油型クリーム化粧料を調製し、上記の項目(1)~(5)について評価した。
【0050】
【0051】
表2に示されるように、高級アルコールとして、炭素数14~22の高級アルコールを用いることで本発明に特有の使用感を得ることができた。一方、高級アルコールを配合しないと、化粧料が緩くなりすぎて硬度を測定することができず、のびや安定性も不十分であった。
【0052】
[実施例6~10]
以下の表3に掲げた処方で水中油型クリーム化粧料を調製し、上記の項目(1)~(5)について評価した。
【0053】
【0054】
表3に示されるように、いずれの非イオン性界面活性剤でも本発明に特有の使用感を得ることができたが、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルとステアリン酸グリセリルの組合せを用いた場合には、特に肌上で溶けるように崩れていく感触が優れていた。また、ステアリン酸PEGをさらに配合すると、乳化粒子の合一がより抑制され、安定性が一層向上した。
【0055】
[実施例11~13及び比較例4~5]
以下の表4に掲げた処方で水中油型クリーム化粧料を調製し、上記の項目(1)~(5)について評価した。
【0056】
【0057】
表4に示されるように、固形油分と液状油分との質量比([固形油分]/[液状油分])を0.1~1.0の範囲で配合することにより、本発明に特有の使用感を得ることができた。一方、当該質量比が0.1未満では保管時の硬度が不十分であり、1.0を超えると硬度が高くなりすぎて、使用感が損なわれた。