(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】位置演算システム、位置演算方法および無人搬送車
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231204BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20231204BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231204BHJP
B65G 1/00 20060101ALN20231204BHJP
【FI】
G05D1/02 P
B66F9/24
G01B11/00 A
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2019145963
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川内 直人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 徳之
(72)【発明者】
【氏名】二橋 謙介
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215720(JP,A)
【文献】特開2015-014600(JP,A)
【文献】特開2016-081068(JP,A)
【文献】特開2000-056829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/02
B66F 9/24
G01B 11/00
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ計測器が搭載された複数の無人搬送車のうちの対象の前記無人搬送車の位置を演算する位置演算システムであって、
前記複数の無人搬送車の各々の現在位置を管理するよう構成された管理部と、
前記対象の無人搬送車から見て互いに異なる方向に位置する、位置情報が取得可能な2以上の規定個数の反射源の各々からの反射光を、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器により検出した検出結果に基づいて、前記対象の無人搬送車の位置を算出するよう構成された位置算出部と、を備え、
前記位置算出部は、
前記反射光が検出された前記規定個数の前記反射源に、前記対象の無人搬送車以外の他の前記無人搬送車に搭載されている搭載反射源が含まれている場合には、前記管理部で管理されている前記現在位置に基づいて前記搭載反射源の前記位置情報を取得して、前記対象の無人搬送車の位置を算出する
ように構成され、
前記位置算出部は、
前記対象の無人搬送車に搭載されている前記レーザ計測器による前記検出結果を取得するよう構成された検出結果取得部と、
検出された前記反射光の前記反射源が、前記搭載反射源であるか、位置が固定されている静止体に設置された静止反射源であるかを判別するよう構成された判別部と、
前記管理部で管理されている前記他の無人搬送車の前記現在位置に基づいて、前記判別部によって前記搭載反射源であると判別された前記反射源の前記位置情報を取得するよう構成された第1取得部と、
を含む
ことを特徴とする位置演算システム。
【請求項2】
相互に異なる位置に設置された複数の前記静止反射源の各々の前記位置情報を記憶するよう構成された記憶部を、さらに備え、
前記位置算出部は、
前記判別部によって前記静止反射源であると判別された前記反射源の前記位置情報を、前記記憶部から取得するよう構成された第2取得部を、さらに有することを特徴とする請求項
1に記載の位置演算システム。
【請求項3】
前記位置算出部は、前記規定個数の前記静止反射源の各々からの前記反射光が、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出されない場合に、前記搭載反射源からの前記反射光の前記検出結果を用いて、前記対象の無人搬送車の位置を算出することを特徴とする請求項
1又は2に記載の位置演算システム。
【請求項4】
レーザ計測器が搭載された複数の無人搬送車のうちの対象の前記無人搬送車の位置を演算する位置演算システムであって、
前記複数の無人搬送車の各々の現在位置を管理するよう構成された管理部と、
前記対象の無人搬送車から見て互いに異なる方向に位置する、位置情報が取得可能な2以上の規定個数の反射源の各々からの反射光を、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器により検出した検出結果に基づいて、前記対象の無人搬送車の位置を算出するよう構成された位置算出部と、を備え、
前記位置算出部は、
前記反射光が検出された前記規定個数の前記反射源に、前記対象の無人搬送車以外の他の前記無人搬送車に搭載されている搭載反射源が含まれている場合には、前記管理部で管理されている前記現在位置に基づいて前記搭載反射源の前記位置情報を取得して、前記対象の無人搬送車の位置を算出するように構成され、
前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出された前記反射光の前記反射源の数が前記規定個数に達しない場合に、前記他の無人搬送車に対して、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器による前記搭載反射源の計測が可能な位置への移動を指示するよう構成された第1指示部を、さらに備えることを特徴とする位置演算システム。
【請求項5】
前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出された前記反射光の前記反射源の数が前記規定個数に達しない場合に、前記対象の無人搬送車に対して移動の待機または位置算出手法の変更を指示するよう構成された第2指示部を、さらに備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の位置演算システム。
【請求項6】
レーザ計測器が搭載された複数の無人搬送車のうちの対象の前記無人搬送車の位置を演算する位置演算方法であって、
前記複数の無人搬送車の現在位置を管理する管理ステップと、
前記対象の無人搬送車から見て互いに異なる方向に位置する、位置情報が取得可能な2以上の規定個数の反射源の各々からの反射光を、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器により検出した検出結果に基づいて、前記対象の無人搬送車の位置を算出する位置算出ステップと、を備え、
前記位置算出ステップは、
前記反射光が検出された前記規定個数の前記反射源に、前記対象の無人搬送車以外の他の前記無人搬送車に搭載されている搭載反射源が含まれている場合には、前記管理ステップで管理されている前記現在位置に基づいて前記搭載反射源の前記位置情報を取得して、前記対象の無人搬送車の位置を算出する
とともに、
前記位置算出ステップでは、
前記対象の無人搬送車に搭載されている前記レーザ計測器による前記検出結果を取得し、
検出された前記反射光の前記反射源が、前記搭載反射源であるか、位置が固定されている静止体に設置された静止反射源であるかを判別し、
前記管理ステップで管理されている前記他の無人搬送車の前記現在位置に基づいて、前記搭載反射源であると判別された前記反射源の前記位置情報を取得する
ことを特徴とする位置演算方法。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の位置演算システムが位置の演算の対象とする無人搬送車に搭載されたレーザ計測器から照射されるレーザを、前記レーザ計測器に向けて反射可能な1以上の搭載反射源を搭載することを特徴とする無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人搬送車の位置の演算手法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば無人のフォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)など荷役運搬作業を自走で行う無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)が、自車両に搭載されているレーザ計測器を用いて、その周囲における相互に異なる位置に設置された複数の反射板を検出し、自車両の現在位置(自己位置)を算出するシステムが知られている(例えば特許文献1~2など)。例えば特許文献1では、無人搬送車には、自車両から離れた位置に設置された反射板(反射源)からの反射光を検出することが可能なレーザ計測器(レーザースキャナ)が搭載されている。そして、このレーザ計測器が回転しながら計測方向を変えることで、相互に異なる方位上で認識(検出)した3枚以上の反射板について、これらの反射板とレーザ計測器との距離の情報から、反射板マップ上で可能な反射板の組合せを特定し、自車両の現在位置を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-56829号公報
【文献】特開平8-110815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば倉庫9内を移動する無人搬送車の位置を、その無人搬送車に搭載されたレーザ計測器を用いて三角測量により測量する場合には、レーザ計測器で検出する反射源は、例えば倉庫9の壁などの静止体に設置されるなどして位置が既知であることが前提となる。ところが、倉庫9内に設置された棚や段積みの荷などの障害物や他の無人搬送車がレーザ計測器と反射源との間に存在することによって、静止体に設置された反射源(静止反射源)がレーザ計測器で検出できない場合がある。そして、このような場合などによって、無人搬送車の位置を演算するのに必要な規定個数の反射源を検出できない場合には、無人搬送車の位置が演算できないため、無人走行が破綻してしまうことになる。このような課題に対して、静止反射源やレーザ計測計を障害物が避けられるように高い位置に設置しての運用や、多数の静止反射源を設置して障害物の影響を受け難くするといった対処も考えられるが、そのための手間やコストが掛かる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、静止体に設置された位置が既知となっている複数の反射源が検出できない場合であっても無人搬送車の位置を算出可能な位置演算システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る位置演算システムは、
レーザ計測器が搭載された複数の無人搬送車のうちの対象の前記無人搬送車の位置を演算する位置演算システムであって、
前記複数の無人搬送車の各々の現在位置を管理するよう構成された管理部と、
前記対象の無人搬送車から見て互いに異なる方向に位置する、位置情報が取得可能な2以上の規定個数の反射源の各々からの反射光を、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器により検出した検出結果に基づいて、前記対象の無人搬送車の位置を算出するよう構成された位置算出部と、を備え、
前記位置算出部は、
前記反射光が検出された前記規定個数の前記反射源に、前記対象の無人搬送車以外の他の前記無人搬送車に搭載されている搭載反射源が含まれている場合には、前記管理部で管理されている前記現在位置に基づいて前記搭載反射源の前記位置情報を取得して、前記対象の無人搬送車の位置を算出する。
【0007】
上記(1)の構成によれば、複数の無人搬送車の各々には反射源(搭載反射源)が搭載されている。そして、位置演算の対象となる無人搬送車に搭載されたレーザ計測器によって、その周囲から検出された規定個数の反射源に、他の無人搬送車の搭載反射源が含まれている場合には、この検出された搭載反射源の位置情報を管理部の管理情報(現在位置)に基づいて取得した上で、既知となった搭載反射源の位置情報を含む規定個数の反射源の位置情報に基づいて、対象の無人搬送車の位置の演算(測量)を行う。つまり、位置演算システムにおいては、対象の無人搬送車の位置の演算を、他の無人搬送車が支援するように構成される。これによって、対象の無人搬送車のレーザ計測器によって規定個数の静止反射源を検出できない場合においても、対象の無人搬送車(レーザ計測器)によって検出された他の無人搬送車の搭載反射源の検出結果を用いることで、対象の無人搬送車の位置を演算することができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記位置算出部は、
前記対象の無人搬送車に搭載されている前記レーザ計測器による前記検出結果を取得するよう構成された検出結果取得部と、
検出された前記反射光の前記反射源が、前記搭載反射源であるか、位置が固定されている静止体に設置された静止反射源であるかを判別するよう構成された判別部と、
前記判別部によって前記搭載反射源であると判別された前記反射源の前記位置情報を、前記管理部から取得するよう構成された第1取得部と、を有する。
【0009】
上記(2)の構成によれば、判別部によって、検出した反射源が搭載反射源であるか、静止反射源であるか、その種別が判別される。これによって、位置算出部は、搭載反射源の位置情報を管理部から適切に取得することができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
相互に異なる位置に設置された複数の前記静止反射源の各々の前記位置情報を記憶するよう構成された記憶部を、さらに備え、
前記位置算出部は、
前記判別部によって前記静止反射源であると判別された前記反射源の前記位置情報を、前記記憶部から取得するよう構成された第2取得部を、さらに有する。
【0011】
上記(3)の構成によれば、複数の静止反射源の位置情報は記憶部に格納されており、位置算出部は、判別部によって、静止反射源と判別された反射源の位置情報を記憶部から取得する。これによって、位置算出部は、検出された静止反射源の位置情報を記憶部から適切に取得することができる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)~(3)の構成において、
前記位置算出部は、前記規定個数の前記静止反射源の各々からの前記反射光が、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出されない場合に、前記搭載反射源からの前記反射光の前記検出結果を用いて、前記対象の無人搬送車の位置を算出する。
【0013】
上記(4)の構成によれば、対象の無人搬送車の位置の演算にあたって、搭載反射源からの反射光の検出結果は、静止反射源からの反射光の検出結果が規定個数に満たない場合に用いられる。つまり、対象の無人搬送車の位置は、静止反射源からの反射光の検出結果を優先して用いて算出される。静止反射物の位置情報は、移動する搭載反射源の位置よりも正確である場合には、対象の無人搬送車の位置の演算の精度の向上を図ることができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出された前記反射光の前記反射源の数が前記規定個数に達しない場合に、前記他の無人搬送車に対して、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器による前記搭載反射源の計測が可能な位置への移動を指示するよう構成された第1指示部を、さらに備える。
【0015】
上記(5)の構成によれば、対象の無人搬送車に搭載されたレーザ計測器によって規定個数の反射源からの反射光が検出できない場合には、例えば非作業中などの他の無人搬送車を移動させて、対象の無人搬送車が規定個数の反射源から反射光を検出できるようにする。これによって、対象の無人搬送車が規定個数の反射源を検出する可能性を高めることができ、対象の無人搬送車の位置演算の他の無人搬送車による支援を強化することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の構成において、
前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器によって検出された前記反射光の前記反射源の数が前記規定個数に達しない場合に、前記対象の無人搬送車に対して移動の待機または位置算出手法の変更を指示するよう構成された第2指示部を、さらに備える。
【0017】
上記(6)の構成によれば、対象の無人搬送車に搭載されたレーザ計測器によって規定個数の反射源からの反射光が検出できない場合には、対象の無人搬送車に対して移動の待機または位置算出手法(位置算出ロジック)の変更を指示する。待機指示によって、対象の無人搬送車による検出が可能な位置に他の無人搬送車を移動させられない場合などにおいて、対象の無人搬送車が、位置が認識されないまま移動することを防止することができる。また、位置算出手法の変更により、規定個数がより少なくても済む手法に切り替えるなどすることで、対象の無人搬送車の位置の算出を継続することができる。
【0018】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る位置演算方法は、
レーザ計測器が搭載された複数の無人搬送車のうちの対象の前記無人搬送車の位置を演算する位置演算方法であって、
前記複数の無人搬送車の現在位置を管理する管理ステップと、
前記対象の無人搬送車から見て互いに異なる方向に位置する、位置情報が取得可能な2以上の規定個数の反射源の各々からの反射光を、前記対象の無人搬送車に搭載された前記レーザ計測器により検出した検出結果に基づいて、前記対象の無人搬送車の位置を算出する位置算出ステップと、を備え、
前記位置算出ステップは、
前記反射光が検出された前記規定個数の前記反射源に、前記対象の無人搬送車以外の他の前記無人搬送車に搭載されている搭載反射源が含まれている場合には、前記管理ステップで管理されている前記現在位置に基づいて前記搭載反射源の前記位置情報を取得して、前記対象の無人搬送車の位置を算出する。
上記(7)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0019】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る無人搬送車は、
上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の位置演算システムが位置の演算の対象とする無人搬送車に搭載されたレーザ計測器から照射されるレーザを、前記レーザ計測器に向けて反射可能な1以上の搭載反射源を搭載する。
【0020】
上記(8)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。また、2つ以上の複数の反射源を搭載することで、対象の無人搬送車が規定個数の反射源からの反射光を検出できる可能性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、静止体に設置された位置が既知となっている複数の反射源が検出できない場合であっても無人搬送車の位置を算出可能な位置演算システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無人搬送車の位置演算システムを示す図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る反射源を搭載する無人搬送車を示す図であり、反射源は最上部から立設される。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る反射源を搭載する無人搬送車を示す図であり、反射源は最上部から吊下げられる。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複数の無人搬送車の時刻t0における倉庫内での位置関係を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複数の無人搬送車の時刻t1における倉庫内での位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る非作業中の無人搬送車を用いた位置演算支援のシーケンス図を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る非作業中の無人搬送車による位置演算支援の様子を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に無人搬送車に搭載された複数の反射源からの複数の反射光を用いて位置を演算する場合を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る位置演算方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る無人搬送車7の位置演算システムを示す図である。
図2A~
図2Bは、本発明の一実施形態に係る反射源8を搭載する無人搬送車7を示す図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る複数の無人搬送車7の時刻t0におけるが倉庫9内での位置関係を示す図である。また、
図4は、本発明の一実施形態に係る複数の無人搬送車7の時刻t1におけるが倉庫9内での位置関係を示す図である。
【0025】
図1に示す位置演算システムは、レーザ計測器7Lが搭載された複数の無人搬送車7(AGV:Automated Guided Vehicle)のうちの、位置演算(測量)の対象となる無人搬送車7(以下、対象無人搬送車7t)の位置を演算するためのシステム(装置)である。この位置演算システムは、対象無人搬送車7tの位置の演算にあたって、位置が既知となっている複数の反射源8がその周囲に存在していることを前提としており、そのような複数の反射源8と対象無人搬送車7tとの相対的な位置関係から、少なくとも1台となる対象無人搬送車7tの位置を演算する。
【0026】
詳述すると、
図2A~
図2Bに示すように、対象無人搬送車7tにはレーザ計測器7Lが搭載される。そして、対象無人搬送車7tは、周期的などの所定のタイミング毎に、自車両に搭載されたレーザ計測器7Lから周囲の複数の方向にレーザを照射すると共に、照射したレーザの反射光Rをレーザ計測器7Lでそれぞれ検出するように動作する。このような無人搬送車7(対象無人搬送車7t)は、例えば無人のフォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)などであっても良く、無人搬送車7による運搬作業を管理する管理システム2sなどから指令されるなどした目的地などに向かって無人で移動(自走)することが可能に構成される。なお、管理システム2sは、管理下にある各無人搬送車7から演算された位置情報Pなどと共に通知される荷役運搬等の作業状態の情報を踏まえて、倉庫管理データに基づき、荷役運搬作業の指令(経路や移動順序など)を非作業の無人搬送車7に指令を行う。
【0027】
他方、このような複数の無人搬送車7が自走(走行)する作業環境には、
図3~
図4(後述する
図6~
図7も同様)に示すように、相互に異なる場所(相互に座標が異なる位置)に固定的に設置された複数(N個)の反射源8(以下、静止反射源82)が存在する。それぞれの座標(X、Y)が定義されているので、反射源8の2点間の距離も算出でき、この2点を用いた三角測量や複数点を利用した位置演算に供することができる。各静止反射源82は、その位置が固定された物体である静止体(
図3~
図4、
図6~
図7では倉庫9の壁など)に設置される。そして、これらの複数の静止反射源82の各々の位置を示す位置情報Pは、対象無人搬送車7tの位置の演算に用いるために、それぞれ記憶部4(
図1参照)を用いて管理(記憶)される。
【0028】
このように静止反射源82の位置情報は位置演算において利用可能になっており、対象無人搬送車7tは、静止反射源82から反射された反射光Rが、複数の静止反射源82のうちのどの静止反射源82からのものであるかを特定することで、特定した静止反射源82の位置情報Pを記憶部4から得ることが可能である。これによって、上記の所定のタイミング毎に、位置の算出に必要となる規定個数C(N≧C≧2)からの反射光Rを検出できた無人搬送車7については、例えば三角測量などにより、その位置を求めることが可能となる。
【0029】
図3~
図4(後述する
図6~
図7も同様)に示す実施形態では、複数の無人搬送車7の作業環境は倉庫9内であり、静止体となる倉庫9の内壁面の複数の位置にそれぞれ静止反射源82が設置されることで、合計で14(N=14)の静止反射源82が設置されている。また、全ての無人搬送車7(
図3~
図4ではFL1~FL5の5台)の各々がレーザ計測器7Lを搭載し、その各々の無人搬送車7の位置を演算するようになっている。つまり、全ての無人搬送車7がそれぞれ対象無人搬送車7tである。位置演算システムは、複数の対象無人搬送車7tの位置を順番に演算しても良いし、後述するように並列的に演算しても良い。
【0030】
また、各レーザ計測器7Lは、所定の速度で回転しながら、例えば、360°周囲を規定数で分割した例えば16方位などの複数の方向の各々に対してレーザの照射とその反射光Rの受光が可能に構成されている。そして、各無人搬送車7の位置は、自車両に搭載されているレーザ計測器7Lから例えば1回転毎に複数の方向にそれぞれ照射したレーザの反射光Rの検出結果に基づいて、三角測量などによりに求めるようになっている。
【0031】
しかしながら、上述したような作業環境において、対象無人搬送車7tと静止反射源82との間に、例えば倉庫9内に設置された棚や段積みの荷などのレーザの直進を妨げるような障害物92や他の無人搬送車7が存在すると、静止反射源82からの反射光Rを検出できなくなる。その結果、規定個数Cの反射源8を検出できない対象無人搬送車7tについては、その位置が演算できない。このため、静止反射源82が規定個数Cだけ検出できない場合であっても、対象無人搬送車7tの位置を演算できるように、他の無人搬送車7が支援する。すなわち、対象無人搬送車7t以外の他の無人搬送車7の少なくとも一部は、
図2A~
図2Bに示すように、反射板などの反射源8となる物(以下、搭載反射源81)を搭載することで、位置演算システムは、静止反射源82のみならず、他の無人搬送車7の搭載反射源81からの反射光Rを検出し、対象無人搬送車7tの位置の演算を行う。
【0032】
なお、
図2A~
図2Bでは、搭載反射源81はレーザ計測器7Lから照射されたレーザを妨害しないように、レーザの通り道を避けるように、無人搬送車7の上部(最上部)から立設、あるいは上部から吊下げられるように設置されている。また、搭載反射源81は、レーザ計測器7Lの死角を作らないように、レーザ計測器7Lと搭載反射源81の距離計測ができる範囲内で異なる高さ位置に設置されている。なお、
図2A~
図2Bに示す搭載反射源81は板状の反射板であるが、その形状は任意である。
【0033】
以下、このような位置演算システムについて、説明する。
図1に示すように、位置演算システムは、管理部2と、位置算出部3と、を備える。この位置演算システムは、例えばコンピュータで構成されていても良く、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリなどの記憶装置mを備えている。そして、主記憶装置にロードされたプログラム(プログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、上記の各機能部を実現する。
これらの位置演算システムが備える構成について、それぞれ説明する。
【0034】
なお、以下の説明では、上記の位置算出部3は全ての対象無人搬送車7tにそれぞれ搭載され、上記の管理部2は対象無人搬送車7t以外の他の装置に搭載されている場合を例に説明する。つまり、位置算出部3が搭載された無人搬送車7をそれぞれ対象無人搬送車7tとして、管理部2と位置算出部3とが通信(無線通信など)により連携することで、位置演算システムは、位置算出部3が搭載されている対象無人搬送車7tの現在位置(以下、自己位置)を演算する。この場合、位置算出部3は、PLC(Programmable Logic Controller)などで実現されても良い。
【0035】
管理部2は、複数の無人搬送車7の各々の現在位置を管理するよう構成された機能部である。具体的には、複数の無人搬送車7の各々の現在位置が、その各々のレーザ計測器7Lを用いることにより演算される度に管理部2に通信されることで、管理部2は、複数の無人搬送車7の各々について、少なくとも最新の現在位置を管理しても良い。また、各無人搬送車7の現在位置は、無人搬送車7の位置として適切となる任意の位置であれば良く、例えば、無人搬送車7に搭載されたレーザ計測器7Lの設置位置、搭載反射源81の位置などであっても良い。
【0036】
位置算出部3は、対象無人搬送車7tから見て互いに異なる方向に位置する、位置情報Pが取得可能な2以上の規定個数Cの反射源8の各々からの反射光Rを、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lにより検出した検出結果(計測結果)に基づいて、対象無人搬送車7tの位置を算出するよう構成された機能部である。例えば、レーザ計測器7Lは、所定のタイミング毎に複数の方向に対して、レーザの照射およびその反射光Rの受光をそれぞれ試行する。そして、レーザ計測器7Lは、反射光Rが検出された際の方向や反射源8までの距離など、位置演算に必要となる情報が検出結果として記憶する。
【0037】
例えば三角測量では、互いに位置が異なる少なくとも3つの反射源8からの反射光Rを検出することで、検出した反射光Rの方向(照射方向でも良い)と、検出した各反射光Rの反射源8の位置情報Pから得られる反射源8間の距離とから、位置を演算することが可能である。2つの反射光Rのみしか検出できない場合には、検出した反射光Rに基づいて計測される各反射源8までの距離と、検出方向または反射源8間の距離とを用いることで、位置を算出することが可能である。
【0038】
この際、位置算出部3は、レーザ計測器7Lによって反射光Rが検出された規定個数Cの反射源8に、他の無人搬送車7に搭載されている搭載反射源81が含まれている場合には、上述した管理部2で管理されている現在位置に基づいて、反射光Rを反射した搭載反射源81の位置情報Pを取得して、対象無人搬送車7tの位置を算出する。すなわち、管理部2は、各無人搬送車7の現在位置を管理しているため、位置算出部3は、管理部2から該当する搭載反射源81の位置情報Pを取得することが可能である。よって、位置算出部3は、搭載反射源81および静止反射源82を含めて規定個数Cの反射源8の位置情報Pが得られれば、自己位置を適切に演算することが可能となる。
【0039】
この点について、
図3~
図4を用いて説明すると、
図3~
図4において、5台の無人搬送車7(FL1~FL5)が、それぞれ、倉庫9内の静止反射源82に基づいて自己位置を算出している状況にある。この倉庫9内の位置は、倉庫9内に設定された座標系で管理されている。具体的には、紙面の左下隅を原点、そこから紙面の右方向をX座標のプラス方向、上方向をY座標のプラス方向とした座標系である。よって、位置演算システムは、この座標系における対象無人搬送車7tの位置座標(x、y)を演算する。なお、座標系は2次元であっても良いし、3次元であっても良い。
【0040】
この座標系においては、FL1で示す無人搬送車7に着目すると、FL1は、時刻t0において、
図3に示すように座標(x1、y1)に位置していたが、その後に右方向に移動したことで、時刻t1において、
図4に示すように座標(x2、y2)に位置している。また、FL1は、時刻t0(
図3)では規定個数C以上(この場合は4つ)の静止反射源82を検出できていた。しかし、時刻t1(
図4)では、FL1と静止反射源82との間に障害物92や他の無人搬送車7が存在するようになったために、検出できているのは1つの静止反射源82(82i)のみであり、静止反射源82を規定個数Cまでは検出できない状況になっている。
【0041】
このような
図4に示す状況(時刻t1)において、FL1の周囲には、FL1のレーザ計測器7Lによる検出が可能な搭載反射源81を有する3台の他の無人搬送車7(
図4では、FL2、FL4、FL5)が存在しているため、この3台の無人搬送車7の搭載反射源81の各々からの反射光Rの検出が可能である。つまり、FL1は、時刻t1においても、1つの静止反射源82(82i)と、3つの搭載反射源81との合計で4つの反射源8からの反射光Rを検出することが可能である。また、これら3つの搭載反射源81の現在位置(位置情報P)は管理部2から取得することが可能である。よって、FL1は、位置情報Pが既知となる規定個数Cの反射源8の位置情報Pが分かるので、自己位置の演算が可能である。
【0042】
図1に示す実施形態では、位置演算システムは、上述した静止反射源82の各々の位置情報Pを記憶するよう構成された記憶部4を、さらに備えている。この記憶部4は記憶装置mに形成されている。また、位置算出部3は、対象無人搬送車7tに搭載されているレーザ計測器7Lによる検出結果を取得するよう構成された検出結果取得部31と、この自車両に搭載されたレーザ計測器7Lにより検出された反射光Rの反射源8(つまり、対象無人搬送車7tによって検出された反射源8)が、搭載反射源81であるか、静止反射源82であるかを判別するよう構成された判別部32と、この判別部32の判別結果に応じて、管理部2または記憶部4から各反射源8の位置情報Pを取得する反射源位置取得部33と、取得された規定個数Cの位置情報Pに基づいて位置を算出する算出部34と、を有している。
【0043】
より詳細には、
図1に示す実施形態では、上記の反射源位置取得部33は、上記の判別部32によって搭載反射源81であると判別された反射源8の位置情報Pを、上述した管理部2から取得する第1取得部33aと、判別部32によって静止反射源82であると判別された反射源8の位置情報Pを、記憶部4から取得する第2取得部33bを、さらに有している。
【0044】
また、判別部32は、検出した反射源8の種別(搭載反射源81、静止反射源82)を判別するが、例えば、判別部32は、反射光Rの反射源8が、静止反射源82であるか否かを判断し、静止反射源82ではないと判断した反射源8を搭載反射源81と判断しても良い。具体的には、判別部32は、検出した上記の反射光Rが静止反射源82からのものであるのか、搭載反射源81からのものであるかを、反射光Rの受光した方向、あるいは、上記の反射光Rが反射される前の照射光の照射した方向に基づいて判別しても良い。すなわち、静止反射源82は、環境内に固定された既知データとして定義された座標(X、Y)で管理されており、静止反射源82からの反射光Rを受光することがないような方向に照射したレーザの反射光Rを受光した場合に、その反射源8は搭載反射源81であると判別する。逆に、判別部32は、搭載反射源81で有るか否かを判断し、搭載反射源81ではないと判断した反射源8を静止反射源82と判断しても良い。
【0045】
また、
図1に示す実施形態では、位置算出部3は、規定個数Cの静止反射源82の各々からの反射光Rが、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって検出されない場合に、搭載反射源81からの反射光Rの検出結果を用いて、対象無人搬送車7tの位置を算出するよう構成されている。つまり、対象無人搬送車7tの位置は、静止反射源82からの反射光Rの検出結果を優先して用いて算出される。静止反射物の位置情報Pは、移動する搭載反射源81の位置よりも正確である場合には、対象となる対象無人搬送車7tの位置の演算の精度の向上を図ることが可能となる。
【0046】
これによって、位置算出部3は、規定個数Cの各々の反射源8の位置情報Pを適切に取得することができ、規定個数Cの反射源8の位置情報Pに基づいて、対象無人搬送車7tの位置を演算することが可能となる。
【0047】
ただし、上述した実施形態に本発明は限定されない。
図1に示す実施形態では、記憶部4は対象無人搬送車7tに設けられているが、他の幾つかの実施形態では、例えば管理部2が設けられる例えば管理システム2sなどの他の装置など、位置算出部3と通信ネットワークを介して通信可能に接続されている無人搬送車7以外の他の装置に設けられても良い。また、対象無人搬送車7tの位置の演算に、静止反射源82からの反射光Rの検出結果を優先して用いなくても良く、より適切に反射光Rを検出できた反射源8の検出結果を用いることによって、静止反射源82が規定個数Cだけ検出できた場合であっても、同時期に検出された搭載反射源81の検出結果を用いても良い。
【0048】
また、他の幾つかの実施形態では、管理部2および位置算出部3が、対象無人搬送車7tに搭載されていても良い。この場合、管理部2は、例えば1台の無人搬送車7に搭載されて、この無人搬送車7に残りの無人搬送車7が通信を行うことで、自己位置の演算に必要な他の無人搬送車7の位置情報Pを取得するように構成しても良い。あるいは、管理部2および位置算出部3が管理システム2sに位置しても良く、管理システム2sは、各無人搬送車7からレーザ計測器7Lによる反射光Rの検出結果を取得し、演算した対象無人搬送車7tの位置を通知するように構成しても良い。
【0049】
上記の構成によれば、複数の無人搬送車7の各々には反射源8(搭載反射源81)が搭載されている。そして、位置演算の対象となる無人搬送車7に搭載されたレーザ計測器7Lによって、その周囲から検出された規定個数の反射源8に、他の無人搬送車7の搭載反射源81が含まれている場合には、この検出された搭載反射源81の位置情報Pを管理部2の管理情報(現在位置)に基づいて取得した上で、既知となった搭載反射源81の位置情報Pを含む規定個数の反射源8の位置情報Pに基づいて、対象無人搬送車7tの位置の演算を行う。つまり、位置演算システムにおいては、対象無人搬送車7tの位置の演算を、他の無人搬送車7が支援するように構成される。これによって、対象無人搬送車7tのレーザ計測器によって規定個数の静止反射源82を検出できない場合においても、対象無人搬送車7t(レーザ計測器7L)によって検出された他の無人搬送車7の搭載反射源81の検出結果を用いることで、対象無人搬送車7tの位置を演算することができる。
【0050】
次に、上述した実施形態において、対象無人搬送車7tから検出可能な反射源8が、搭載反射源81を含めても規定個数Cに満たない場合について、
図5~
図6を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る非作業中の無人搬送車7を用いた位置演算支援のシーケンス図を示す図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る非作業中の無人搬送車7による位置演算支援の様子を示す図である。
【0051】
上述した実施形態では、他の無人搬送車7の搭載反射源81を利用することで、各対象無人搬送車7tの位置の演算が継続できるように図っているが、各無人搬送車7は、管理システム2sに個別に指示された内容に従って倉庫9内などの作業環境内を移動する。このため、上述した実施形態でも、なお、障害物92等の影響により、対象無人搬送車7tの周囲の適切な位置に静止反射源82が存在しないばかりか、他の無人搬送車7も存在しないため、対象無人搬送車7tが、搭載反射源81および静止反射源82の両方を含めても規定個数Cの反射源8を検出できない場合が想定される。
【0052】
そこで、幾つかの実施形態では、
図1に示すように、上述した構成を備える位置演算システムは、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって検出された反射光Rの反射源8の数が規定個数Cに達しない場合に、他の無人搬送車7に対して、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによる搭載反射源81の計測が可能な位置への移動を指示するよう構成された第1指示部51(移動指示部)を、さらに備えても良い。つまり、位置演算システムは、各対象無人搬送車7tによって検出された反射源8の数が規定個数Cに達しない場合に、その検出が可能な位置に他の無人搬送車7を移動させる。
【0053】
具体的には、
図5に示すように、対象無人搬送車7tは、位置算出部3が規定個数Cの反射源8の位置情報Pが得られないなど対象無人搬送車7tの位置を演算できない場合に、移動を停止するように構成されると共に、その旨を管理システム2sに通知(位置演算不能通知)するように構成されても良い(S51)。なお、無人搬送車7は、移動の停止あるいは位置演算不能通知の少なくとも一方を実行しなくても良い。この場合には、周期的などで行われる位置の演算結果が管理部2に通知されないので、管理システム2sは、位置演算の結果の通知が規定回数(1回以上)ない場合に、位置演算が不能になっているとみなして、下記の処理を行っても良い。
【0054】
管理システム2sは、この位置演算不能通知を受信すると(
図5のS52)、管理システム2sが管理している管理情報に基づいて、非作業中の無人搬送車7を抽出すると共に、位置演算不能通知を送信した対象無人搬送車7tによる他の無人搬送車7の搭載反射源81の検出が可能な移動目的位置を算出するよう構成される(
図5のS53)。具体的には、倉庫管理データに基づいて、その時点において荷役運搬等の作業が割り当てられていないなどの待ち状態にある無人搬送車7を抽出しても良い。また、移動目的位置については、倉庫管理データに含まれる棚や段積みの位置の情報や、停止中の対象無人搬送車7tの最新の位置情報に基づいて、決定しても良い。
【0055】
そして、管理システム2sは、抽出した非作業中の無人搬送車7に対して、上記の第1指示部51から移動目的位置への移動指示を行うよう構成される(
図5のS54)。また、この移動指示を受信した無人搬送車7は、移動指示で指定された移動目的地への移動を開始するよう構成される(
図5のS55)。そして、移動目的地への移動が完了した場合に、管理システム2sに対して移動完了を通知するよう構成される(
図5のS56)。
【0056】
また、管理システム2sは、
図5に示すように、上記の移動指示を行った無人搬送車7が移動目的値へ移動を完了したことを対象無人搬送車7tに通知することで、処理の再開を指示しても良く(
図5のS57)、対象無人搬送車7tは、この移動完了通知を受信すると、位置の算出を再開しても良い(
図5のS58)。あるいは、対象無人搬送車7tが移動を停止後であっても位置の演算だけは継続するように構成されている場合には、移動目的地へ移動してきた無人搬送車7を検出することで、位置演算が可能となるので移動が可能なように処理を再開しても良い。
【0057】
このようにすることで、
図6に示すように、対象無人搬送車7t(
図6ではFL1)は、位置の演算にあたって、自車両に搭載されたレーザ計測器7Lによって移動目的地へ移動してきた他の無人搬送車7(
図6ではFL3)の搭載反射源81を検出することが可能となる。
図6に示す実施形態では、FL1が、搭載反射源81および静止反射源82を含めても規定個数Cの反射源8を検出できない状況になっていたところ、時刻t2においてFL3が移動目的地まで移動したことによって、規定個数C(
図6では、FL2、FL3、FL4、および静止反射源82iの合計で4つ)の反射源8の検出が可能となっている。これによって、対象無人搬送車7tによって規定個数Cの反射源8の検出が可能となるように図ることが可能となる。
【0058】
なお、他の無人搬送車7が移動目的値に移動を完了した後であっても、障害物92の高さが想定以上である場合など、何らかの理由により、位置演算システムによる対象無人搬送車7tの位置の演算が依然としてできない状況もあり得る。このような場合に備えて、対象無人搬送車7tは、移動指示を実行した無人搬送車7が移動目的値へ移動を完了した後において規定個数Cの反射源8を検出できない場合には、管理部2に対して位置演算不能通知を再度行うことで、非作業中の無人搬送車7の移動目的値を調整するようにしても良い。あるいは、対象無人搬送車7tが規定個数Cの反射源8が検出可能となったことで再開完了通知を管理システム2sに通知するようにする場合には、この通知がない場合には、上記の移動目的値の調整を行うようにしても良い。
【0059】
上記の構成によれば、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって規定個数の反射源8からの反射光Rが検出できない場合には、例えば非作業中などの他の無人搬送車7を移動させて、対象無人搬送車7tが規定個数Cの反射源8から反射光Rを検出できるようにする。これによって、対象無人搬送車7tが規定個数Cの反射源8を検出する可能性を高めることができ、対象無人搬送車7tの位置演算の他の無人搬送車7による支援を強化することができる。
【0060】
また、幾つかの実施形態では、位置演算システムは、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって検出された反射光Rの反射源8の数が規定個数Cに達しない場合に、対象無人搬送車7tに対して移動の待機または位置算出手法の変更を指示するよう構成された第2指示部52を、さらに備えても良い。
【0061】
この第2指示部52による待機指示は、上記の通り、対象無人搬送車7tによる位置演算が不能となっていることを管理システム2sが検知した場合に行っても良いし、その後の非作業中の無人搬送車7などの移動目的地への移動が可能な他の無人搬送車7が抽出できない場合に行っても良い。これによって、対象無人搬送車7tが、位置算出部3による対象無人搬送車7tの位置の算出ができない場合に自動で停止するように構成されていない場合であっても、移動を継続するのを防止することが可能となる。また、自動で停止するように構成されている場合であっても、この待機指示を受信した対象無人搬送車7tは、位置の演算も含めて停止するようにすれば、消費電力の低減などを図ることが可能となる。
【0062】
他方、第2指示部52による位置算出手法(位置算出ロジック)の変更指示については、位置演算システム(位置算出部3)が複数の手法による位置演算が可能に構成されているのが前提となる。例えば、通常、三角測量を用いて座標を演算するには、3つまたは4つなど、少なくとも3つの反射源8の位置情報Pが必要となる。しかし、2つの反射源8の位置情報Pしか得られない場合には、自車両に搭載されたレーザ計測器7Lが反射源8までの距離を計測するようにすることによって、対象無人搬送車7tからの2つの反射源8の各々のまでの距離および方向と、2つの反射源8の間の距離とに基づいて位置演算をするようにモードに切り替えても良い。
【0063】
上記の構成によれば、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって規定個数の反射源8からの反射光Rが検出できない場合には、対象無人搬送車7tに対して移動の待機または位置算出手法(位置算出ロジック)の変更を指示する。待機指示によって、対象無人搬送車7tによる検出が可能な位置に他の無人搬送車7を移動させられない場合などにおいて、対象無人搬送車7tが、位置が認識されないまま移動することを防止することができる。また、位置算出手法の変更により、規定個数Cがより少なくても済む手法に切り替えなどすることで、対象無人搬送車7tの位置の算出を継続することができる。
【0064】
次に、搭載反射源81を備える無人搬送車7に関する実施形態について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に無人搬送車7に搭載された複数の反射源8からの複数の反射光Rを用いて位置を演算する場合を示す図である。
【0065】
上述した説明では、無人搬送車7は、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lから照射されるレーザを、そのレーザ計測器7Lに向けて反射可能な反射板などの反射源8を搭載する。この際、
図2A~
図2Bに示すように無人搬送車7が、相互に異なる複数の位置(座標)に搭載反射源81をそれぞれ搭載している場合には、対象無人搬送車7tから照射されたレーザは、その複数の搭載反射源81(
図2A~
図2Bでは2つ)の各々から反射するので、それぞれ別個の反射源8として扱うことが可能である。
【0066】
図2A~
図2Bに示す実施形態では、無人搬送車7の車体には、車幅方向に延びる棒状の支持部材73が設置されており、支持部材73の両端に搭載反射源81がそれぞれ設置されることで、2つの搭載反射源81の位置座標が異なるようになっている。なお、上述した管理部2は、搭載反射源81の位置座標を無人搬送車7の現在位置として管理しても良いし、車体における所定の位置を無人搬送車7の現在位置として管理しても良い。後者の場合には、上記の所定の位置からの搭載反射源81の相対位置が幾何学的に分かるようになっており、搭載反射源81の位置情報Pは、管理部2あるいは位置算出部3のいずれかが、この相対位置および反射光Rの方向などを用いて算出するようになっている。これによって、規定個数Cの反射源8をより得られ易くすることが可能である。
【0067】
さらに、
図2A~
図2Bに示すように、各搭載反射源81を重力方向(高さ方向)に長い形状にすれば、1つの搭載反射源81の上部および下部の反射光Rを検出することにより、1つの搭載反射源81を2つの反射源8として扱うことができる。そして、反射板の上部および下部など、1つの搭載反射源81の異なる位置の反射光Rを検出するようにすれば、1台の無人搬送車7から少なくとも2つの反射光Rを検出が可能となる。この場合、
図2A~
図2Bの実施形態では、無人搬送車7はX、Y座標が異なる2つの、重力方向を長手方向とする反射板(搭載反射源81)を備えているので、各反射板の上部および下部からの反射光Rをそれぞれ検出することで、1台の無人搬送車7から合計で4つの反射光Rを検出することが可能となる。これによって、規定個数Cの反射源8をより得られ易くすることが可能である。
【0068】
以下、上述した位置演算システムが実行する処理に対応する位置演算方法について、
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る位置演算方法を示す図である。
【0069】
位置演算方法は、上述したような対象無人搬送車7tの位置を演算するための方法である。
図8に示すように、位置演算方法は、管理ステップ(S1)と、位置算出ステップ(S2)と、を備える。これらのステップについて、
図8のステップ順に説明する。なお、
図8のフローは、上述した周期的などの所定のタイミング毎に行われても良い。
【0070】
図8のステップS1において、管理ステップを実行する。管理ステップ(S1)は、複数の無人搬送車7の各々の現在位置を管理するステップである。この管理ステップ(S1)は、既に説明した管理部2が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0071】
図8のステップS2において、位置算出ステップを実行する。位置算出ステップ(S2)は、対象無人搬送車7tから見て互いに異なる方向に位置する、位置情報Pが取得可能な2以上の規定個数Cの反射源8の各々からの反射光Rを、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lにより検出した検出結果(計測結果)に基づいて、対象無人搬送車7tの位置を算出するステップである。具体的には、位置算出ステップは、反射光Rが検出された規定個数Cの反射源8に、他の無人搬送車7に搭載されている搭載反射源81が含まれている場合には、上述した管理部2で管理されている現在位置に基づいて、反射光Rを反射した搭載反射源81の位置情報Pを取得して、対象無人搬送車7tの位置を算出する。その後、算出した位置情報Pを記憶などして管理する(S1に戻る)。
【0072】
この位置算出ステップ(S2)は、既に説明した位置算出部3が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略するが、幾つかの実施形態では、
図8に示ように、位置算出ステップ(S2)は、対象無人搬送車7tに搭載されているレーザ計測器7Lによる計測結果を取得する検出結果取得ステップ(S21)と、このレーザ計測器7Lにより検出された反射光Rの反射源8が、搭載反射源81であるか、静止反射源82であるかを判別(種別を判別)する判別ステップと、この判別ステップの判別結果に応じて、管理ステップ(S1)で管理されている現在位置に基づく位置情報P、または記憶部4などに予め記憶されている各反射源8の位置情報Pを取得する反射源位置取得ステップ(S22)と、取得された規定個数Cの位置情報Pに基づいて位置を算出する算出ステップ(S24)と、を有しても良い。これらの、検出結果取得ステップ(S21)、判別ステップと、反射源位置取得ステップ(S22)、および算出ステップ(S24)は、それぞれ既に説明した、検出結果取得部31、判別部32、反射源位置取得部33、算出部34が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0073】
図8に示す実施形態では、所定のタイミング毎に、ステップS1に続くステップS21において、対象無人搬送車7tのレーザ計測器7Lによる計測結果を取得し、ステップS22で、計測結果に含まれる反射光Rが検出された反射源8の種別を判別すると共に、その位置情報Pを取得するようになっている。その後、ステップS23において、規定個数Cの位置情報P(反射源8の位置情報P)が取得できている場合には、ステップS24において、対象無人搬送車7tの位置を算出するようになっている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、検出結果取得ステップ(S21)の次に、規定個数Cの反射源8からの反射光Rが検出できているかを確認し、できている場合に、反射源位置取得ステップ(S22)および算出ステップ(S24)を実行しても良い。
【0074】
また、幾つかの実施形態では、
図8に示すように、上述した位置演算方法は、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって検出された反射光Rの反射源8の数が規定個数Cに達しない場合に、他の無人搬送車7に対して、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによる搭載反射源81の計測が可能な位置への移動を指示する第1指示ステップ(S4)を、さらに備えても良い。この第1指示ステップ(S4)は、既に説明した第1指示部51が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0075】
また、幾つかの実施形態では、
図8に示すように、上述した位置演算方法は、対象無人搬送車7tに搭載されたレーザ計測器7Lによって検出された反射光Rの反射源8の数が規定個数Cに達しない場合に、対象無人搬送車7tに対して移動の待機または位置算出手法の変更を指示する第2指示ステップ(S5)を、さらに備えても良い。この第2指示ステップ(S5)は、既に説明した第2指示部52が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0076】
図8に示す実施形態では、ステップS23で、規定個数Cの位置情報Pが得られないなど、対象無人搬送車7tの位置が算出できない場合には、ステップS3において、非作業中の他の無人搬送車7が存在するかを確認し、そのような無人搬送車7が抽出できた場合には、第1指示ステップ(S4)を実行する。すなわち、非作業中の他の無人搬送車7に対して、対象無人搬送車7tが検出可能な位置への移動を指示する。逆に、ステップS3において、非作業中の他の無人搬送車7が存在しない場合には、ステップS5において、対象無人搬送車7tに対して待機、または位置演算手法の変更を指示するようになっている。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0078】
1 位置演算システム
2 管理部
2s 管理システム
3 位置算出部
31 検出結果取得部
32 判別部
33 反射源位置取得部
33a 第1取得部
33b 第2取得部
34 算出部
4 記憶部
51 第1指示部
52 第2指示部
7 無人搬送車
7L レーザ計測器
7t 対象無人搬送車
73 支持部材
8 反射源
81 搭載反射源
82 静止反射源
9 倉庫
92 障害物
C 規定個数
P 位置情報
R 反射光
m 記憶装置