(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B60T 8/36 20060101AFI20231204BHJP
B62L 3/08 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B60T8/36
B62L3/08
(21)【出願番号】P 2019156225
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】中野 良二
(72)【発明者】
【氏名】ドゥミトル トライアン
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056391(JP,A)
【文献】特開2018-083572(JP,A)
【文献】特開2018-090071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/36
B62L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(200)に搭載されるブレーキシステム(100)の液圧制御ユニット(1)であって、
ブレーキ液の流路(13)が形成されている基体(10)と、
前記流路(13)を開閉する液圧調整バルブ(20)を駆動するコイル(61,63)、及び該コイル(61,63)を保持するコイルハウジング(65)を有し、前記基体(10)に接着されたコイルユニット(60)と、
前記基体(10)と接続され、前記コイルユニット(60)が収納されたハウジング(40)と、
一端が前記ハウジング(40)に保持され、前記コイルユニット(60)における前記基体(10)との接着面と対向する面(66a)に接触している樹脂製のアーム(70)と、
を備えて
おり、
前記基体(10)と前記コイルユニット(60)とを接着する接着剤が固まっていない状態においては、前記アーム(70)が前記コイルユニット(60)を前記基体(10)に向かって押圧している
液圧制御ユニット(1)。
【請求項2】
前記コイル(61,63)と電気的に接続され、前記コイル(61,63)への通電を制御する回路基板(31)を備え、
前記アーム(70)は、前記コイルユニット(60)と前記回路基板(31)との間に配置されており、
前記コイルユニット(60)、前記アーム(70)及び前記回路基板(31)の並び方向と垂直な観察方向において、
前記アーム(70)における前記回路基板(31)と対向する面(72)は、前記回路基板(31)における前記アーム(70)と対向する面(32)に対して傾いている
請求項1
に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項3】
前記コイル(61,63)と電気的に接続され、前記コイル(61,63)への通電を制御する回路基板(31)を備え、
前記アーム(70)は、前記コイルユニット(60)と前記回路基板(31)との間に配置されており、
前記コイルユニット(60)、前記アーム(70)及び前記回路基板(31)の並び方向と垂直な観察方向において、
前記アーム(70)の軸(74)は、前記回路基板(31)における前記コイルユニット(60)と対向する面(32)、及び前記コイルユニット(60)における前記回路基板(31)と対向する面(66a)に対して傾いている
請求項1
に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項4】
前記ハウジング(40)は、樹脂形成品であり、
前記ハウジング(40)と前記アーム(70)とは一体形成品である
請求項1
又は請求項2に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項5】
複数の前記アーム(70)を備えている
請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項6】
前記コイルユニット(60)及び前記アーム(70)の並び方向と平行な観察方向において、
複数の前記アーム(70)のうちの少なくとも2つは、前記コイルユニット(60)の中心(69)に対して点対称な位置で、前記コイルユニット(60)に接触している
請求項
5に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項7】
アンチロックブレーキ制御における減圧時にブレーキ液を蓄えるアキュムレータ(23)を備え、
前記アキュムレータ(23)内のブレーキ液をポンプレスで前記アキュムレータ(23)外へ排出する構成である
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(1)。
【請求項8】
請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(1)を備えている
ブレーキシステム(100)。
【請求項9】
請求項
8に記載のブレーキシステム(100)を備えている
鞍乗型車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に搭載されるブレーキシステムの液圧制御ユニット、該液圧制御ユニットを備えたブレーキシステム、及び、該ブレーキシステムを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両には、ブレーキ液の液圧を制御することによって車輪の制動力を制御するブレーキシステムを備えたものが存在する。このようなブレーキシステムは、液圧制御ユニットを備えている。また、液圧制御ユニットは、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、ブレーキ液の流路を開閉する液圧調整バルブを駆動するコイルを有するコイルユニットと、基体に接続され、コイルユニットが収納されたハウジングと、を備えている。コイルユニットは、例えば、締結部材であるボルトによって基体に固定されている。
【0003】
ここで、車両の一種である鞍乗型車両は、自動四輪車等の車両と比べて、部品レイアウトの自由度が低く、液圧制御ユニットの搭載の自由度が低い。このため、鞍乗型車両に搭載される液圧制御ユニットに対して、小型化の要請が強まっている。しかしながら、液圧制御ユニットを小型化しようとした場合、コイルユニットと基体とを締結するボルトの配置スペースの確保が難しくなる。そこで、従来の液圧制御ユニットには、ボルトを用いずに、すなわちボルトレスでコイルユニットを基体に固定し、小型化を図ったものも提案されている(特許文献1参照)。詳しくは、特許文献1に記載の液圧制御ユニットは、ハウジングとコイルユニットの間に挟み込まれたシリコンボールを備え、該シリコンボールの反発力によってコイルユニットを基体側に押圧し、コイルユニットを基体に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、小型化を図った従来の液圧制御ユニットは、シリコンボールの反発力によってコイルユニットを基体側に押圧し、コイルユニットを基体に固定している。このため、小型化を図った従来の液圧制御ユニットでは、シリコンボールの反発力が一定の力で恒久的にコイルユニットに作用する。また、ハウジングとコイルユニットの間に挟み込まれたシリコンボールの反発力は、ハウジングとコイルユニットとを引き離す方向にも、一定の力で恒久的に作用する。このため、小型化を図った従来の液圧制御ユニットでは、ハウジングと基体との接続箇所において、ハウジングと基体とを引き離す力が一定の力で恒久的に作用することとなる。したがって、小型化を図った従来の液圧制御ユニットは、ハウジングと基体との間の気密性が低下しやすいという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、小型化でき、ハウジングと基体との間の気密性の低下を抑制することもできる液圧制御ユニットを得ることを目的とする。また、本発明は、このような液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムを得ることを目的とする。また、本発明は、このようなブレーキシステムを備えた鞍乗型車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液圧制御ユニットは、鞍乗型車両に搭載されるブレーキシステムの液圧制御ユニットであって、ブレーキ液の流路が形成されている基体と、前記流路を開閉する液圧調整バルブを駆動するコイル、及び該コイルを保持するコイルハウジングを有し、前記基体に接着されたコイルユニットと、前記基体と接続され、前記コイルユニットが収納されたハウジングと、一端が前記ハウジングに保持され、前記コイルユニットにおける前記基体との接着面と対向する面に接触している樹脂製のアームと、を備えている。
【0008】
また、本発明に係るブレーキシステムは、本発明に係る液圧制御ユニットを備えている。
【0009】
また、本発明に係る鞍乗型車両は、本発明に係るブレーキシステムを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、コイルユニットに押されてアームが弾性変形するように該液圧制御ユニットを組み立てることにより、基体とコイルユニットとの間の接着剤が固まるまでは、アームの反力によってコイルユニットを基体側へ押圧することができる。このため、本発明に係る液圧制御ユニットは、接着によってコイルユニットを基体に固定することができる。また、本発明に係る液圧制御ユニットは、樹脂製のアームを採用している。このため、クリープ現象により、アームによるコイルユニットの押圧力は、時間の経過と共に減少していく。このため、本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、コイルユニットが基体に接着された後、ハウジングと基体とを引き離す力が、時間の経過と共に減少していく。したがって、本発明に係る液圧制御ユニットは、小型化でき、ハウジングと基体との間の気密性の低下を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される自転車の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を上方から観察した図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける、コイルユニット及びハウジングの本体部が基体に接続される前の状態を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける、乗せ台にコイルユニットを支持させる過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下では、本発明が自転車(例えば、二輪車、三輪車等)に採用される場合を説明するが、本発明は自転車以外の他の鞍乗型車両に採用されてもよい。自転車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動二輪車、自動三輪車、及びバギー等である。また、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。
【0014】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。例えば、以下では、本発明に係る液圧制御ユニットが、ポンプレス式である場合を説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットが、ブレーキ液の流動を補助するポンプを備えていてもよい。また、以下では、本発明に係るブレーキシステムが、前輪に生じる制動力のみに対してアンチロックブレーキ制御を実行するものである場合を説明しているが、本発明に係るブレーキシステムが、後輪に生じる制動力のみに対してアンチロックブレーキ制御を実行するものであってもよく、また、前輪に生じる制動力及び後輪に生じる制動力の両方に対してアンチロックブレーキ制御を実行するものであってもよい。
【0015】
また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に、同一の符号を付している、又は、符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。また、重複する説明については、適宜簡略化又は省略している。
【0016】
<ブレーキシステムの自転車への搭載>
実施の形態に係るブレーキシステムの自転車への搭載について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される自転車の概略構成を示す図である。なお、
図1では、自転車200が二輪車である場合を示しているが、自転車200は三輪車等の他の自転車であってもよい。
【0017】
鞍乗型車両の一例である自転車200は、フレーム210と、旋回部230と、サドル218と、ペダル219と、後輪220と、後輪制動部260と、を備えている。
【0018】
フレーム210は、例えば、旋回部230のステアリングコラム231を軸支するヘッドチューブ211と、ヘッドチューブ211に連結されているトップチューブ212及びダウンチューブ213と、トップチューブ212及びダウンチューブ213に連結され、サドル218を保持するシートチューブ214と、シートチューブ214の上下端に連結され、後輪220及び後輪制動部260を保持しているステー215と、を含む。
【0019】
旋回部230には、ステアリングコラム231と、ステアリングコラム231に保持されているハンドルステム232と、ハンドルステム232に保持されているハンドルバー233と、ハンドルバー233に取り付けられている制動操作部240と、ステアリングコラム231に連結されているフロントフォーク216と、フロントフォーク216に回転自在に保持されている前輪217と、前輪制動部250と、が含まれる。フロントフォーク216は、前輪217の両側に設けられている。フロントフォーク216は、一端がステアリングコラム231に連結され、他端が前輪217の回転中心に接続されている。
【0020】
制動操作部240は、前輪制動部250の操作部として用いられる機構と、後輪制動部260の操作部として用いられる機構と、を含む。例えば、前輪制動部250の操作部として用いられる機構は、ハンドルバー233の右端側に配設され、後輪制動部260の操作部として用いられる機構は、ハンドルバー233の左端側に配設される。
【0021】
旋回部230のフロントフォーク216に、液圧制御ユニット1が連結されている。液圧制御ユニット1は、前輪制動部250のブレーキ液の液圧の制御を担うユニットである。なお、後輪制動部260は、ブレーキ液の液圧を増加させることによって制動力を生じさせるタイプの制動部であってもよく、また、機械式に制動力を生じさせるタイプの制動部(例えば、ワイヤに張力を生じさせることによって制動力を生じさせるタイプの制動部等)であってもよい。
【0022】
例えば、フレーム210のダウンチューブ213には、液圧制御ユニット1の電源となる電源ユニット270が取り付けられている。電源ユニット270は、バッテリであってもよく、また、発電機であってもよい。発電機には、例えば、自転車200の走行によって発電するもの(例えば、前輪217又は後輪220の回転によって発電するハブダイナモ、前輪217又は後輪220の駆動源の電動機であって回生電力を発電するもの等)、太陽光によって発電するもの等が含まれる。
【0023】
つまり、自転車200には、少なくとも、制動操作部240と、前輪制動部250と、液圧制御ユニット1と、電源ユニット270と、を含む、ブレーキシステム100が搭載されている。ブレーキシステム100は、前輪制動部250のブレーキ液の液圧を液圧制御ユニット1によって制御することで、アンチロックブレーキ制御を実行可能である。
【0024】
<ブレーキシステムの構成>
【0025】
実施の形態に係るブレーキシステムの構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す図である。
液圧制御ユニット1は、基体10を備えている。基体10には、マスタシリンダポート11と、ホイールシリンダポート12と、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とを連通させる流路13と、が形成されている。
【0026】
流路13はブレーキ液の流路である。流路13には、第1流路14と、第2流路15と、第3流路16と、第4流路17と、が含まれる。マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とは、第1流路14及び第2流路15を介して連通している。また、第2流路15の途中部には、第3流路16の入口側の端部が接続されている。
【0027】
マスタシリンダポート11には、液管101を介して制動操作部240が接続される。制動操作部240は、ブレーキレバー241と、マスタシリンダ242と、リザーバ243と、を含む。マスタシリンダ242は、ブレーキレバー241の使用者の操作に連動して移動するピストン部(図示省略)を備えており、液管101及びマスタシリンダポート11を介して、第1流路14の入口側に接続されている。ピストン部の移動によって、第1流路14のブレーキ液の液圧が上昇又は減少する。また、リザーバ243には、マスタシリンダ242のブレーキ液が蓄えられる。
【0028】
ホイールシリンダポート12には、液管102を介して前輪制動部250が接続される。前輪制動部250は、ホイールシリンダ251と、ロータ252と、を含む。ホイールシリンダ251は、フロントフォーク216の下端部に取り付けられている。ホイールシリンダ251は、液管102の液圧に連動して移動するピストン部(図示省略)を備えており、液管102及びホイールシリンダポート12を介して、第2流路15の出口側に接続されている。ロータ252は、前輪217に保持され、前輪217と共に回転する。ピストン部の移動によって、ロータ252にブレーキパッド(図示省略)が押し付けられることで、前輪217が制動される。
【0029】
また、液圧制御ユニット1は、流路13の開閉を行う液圧調整バルブ20を備えている。本実施の形態では、液圧制御ユニット1は、液圧調整バルブ20として、インレットバルブ21と、アウトレットバルブ22と、を備えている。インレットバルブ21は、第1流路14の出口側と第2流路15の入口側との間に設けられており、第1流路14と第2流路15との間のブレーキ液の流通を開閉する。アウトレットバルブ22は、第3流路16の出口側と第4流路17の入口側との間に設けられており、第3流路16と第4流路17との間のブレーキ液の流通を開閉する。インレットバルブ21及びアウトレットバルブ22の開閉動作によって、ブレーキ液の液圧が制御される。
【0030】
また、液圧制御ユニット1は、インレットバルブ21を駆動するコイル61と、アウトレットバルブ22を駆動するコイル63と、を備えている。例えば、コイル61が非通電状態である時、インレットバルブ21は、双方向へのブレーキ液の流動を開放する。そして、コイル61に通電されると、インレットバルブ21は、閉止状態となってブレーキ液の流動を遮断する。すなわち、本実施の形態では、インレットバルブ21は、非通電時開の電磁弁となっている。また例えば、コイル63が非通電状態である時、アウトレットバルブ22は、ブレーキ液の流動を遮断する。そして、コイル63に通電されると、アウトレットバルブ22は、開放状態となって双方向へのブレーキ液の流動を開放する。すなわち、本実施の形態では、アウトレットバルブ22は、非通電時閉の電磁弁となっている。
【0031】
また、液圧制御ユニット1は、アキュムレータ23を備えている。アキュムレータ23は、第4流路17の出口側に接続されており、アウトレットバルブ22を通過したブレーキ液が貯留される。
【0032】
また、液圧制御ユニット1は、ホイールシリンダ251のブレーキ液の液圧を検出するための液圧センサ103を備えている。液圧センサ103は、第2流路15又は第3流路16に設けられる。
【0033】
また、液圧制御ユニット1は、制御部30を備えている。制御部30には、液圧センサ103、前輪217の回転速度を検出するための車輪速センサ(図示省略)等の各種センサの信号が入力される。なお、制御部30の各部が、纏められて配設されていてもよく、また、分散して配設されていてもよい。制御部30は、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等を含んで構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なものを含んで構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等を含んで構成されてもよい。
【0034】
制御部30は、コイル61及びコイル63への通電を制御する。詳しくは、制御部30は、コイル61への通電を制御することにより、インレットバルブ21の駆動(開閉動作)を制御する。また、制御部30は、コイル63への通電を制御することにより、アウトレットバルブ22の駆動(開閉動作)を制御する。すなわち、制御部30は、インレットバルブ21及びアウトレットバルブ22の開閉動作を制御することによって、ホイールシリンダ251のブレーキ液の液圧、つまり、前輪217の制動力を制御する。
【0035】
なお、本実施の形態では、制御部30の構成のうち、少なくともコイル61及びコイル63への通電を制御する構成を、後述の回路基板31で構成している。すなわち、回路基板31は、コイル61及びコイル63への通電を制御することにより、インレットバルブ21及びアウトレットバルブ22の駆動を制御する。
【0036】
例えば、制御部30は、使用者によるブレーキレバー241の操作によって前輪217が制動されている際に、車輪速センサ(図示省略)の信号から、前輪217のロック又はロックの可能性があると判断すると、アンチロックブレーキ制御を開始する。
【0037】
アンチロックブレーキ制御が開始されると、制御部30は、コイル61を通電状態にして、インレットバルブ21を閉止させ、マスタシリンダ242からホイールシリンダ251へのブレーキ液の流動を遮断することで、ホイールシリンダ251のブレーキ液の増圧を抑制する。一方、制御部30は、コイル63を通電状態にして、アウトレットバルブ22を開放させ、ホイールシリンダ251からアキュムレータ23へのブレーキ液の流動を可能にすることで、ホイールシリンダ251のブレーキ液の減圧を行う。これにより、前輪217のロックが解除又は回避される。制御部30は、液圧センサ103の信号から、ホイールシリンダ251のブレーキ液が所定の値まで減圧されたと判断すると、コイル63を非通電状態にしてアウトレットバルブ22を閉止させ、短時間の間、コイル61を非通電状態にしてインレットバルブ21を開放させて、ホイールシリンダ251のブレーキ液の増圧を行う。制御部30は、ホイールシリンダ251の増減圧を1回のみ行ってもよく、また、複数回繰り返してもよい。
【0038】
アンチロックブレーキ制御が終了して、ブレーキレバー241が戻されると、マスタシリンダ242内が大気圧状態となり、ホイールシリンダ251内のブレーキ液が戻される。また、アンチロックブレーキ制御が終了して、ブレーキレバー241が戻された際、アウトレットバルブ22を開放状態にする。流路13内のブレーキ液の圧力がアキュムレータ23に蓄えられているブレーキ液の圧力よりも低くなると、アキュムレータ23に蓄えられているブレーキ液が昇圧レス(つまり、ポンプレス)でアキュムレータ23外へ排出されて流路13内に戻り、やがてマスタシリンダ242に戻る。
【0039】
<液圧制御ユニットの構成>
実施の形態に係るブレーキシステムの液圧制御ユニットの構成について説明する。
なお、後述のように、液圧制御ユニット1は、基体10と、該基体10に接続されたハウジング40と、を備えている。以下では、基体10の上方にハウジング40が配置された状態の液圧制御ユニット1を観察しながら、液圧制御ユニット1の構成について説明していく。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。詳しくは、
図3は、
図4の矢印A方向に液圧制御ユニット1を観察した図であり、ハウジング40の矢印A方向において前面側となる部分を削除して、液圧制御ユニット1を観察した図である。すなわち、
図3は、基体10の上方にハウジング40が配置された状態の液圧制御ユニット1の内部を側方から観察した図となっている。なお、
図4には、一対の接続部80が記載されている。
図3では、これらのうちで
図4の紙面右側に記載の接続部80の図示を省略している。また、
図3では、複数の蓋固定部50のうちの1つの一部、及び回路基板31の一部を、断面で示している。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を上方から観察した図である。詳しくは、
図4は、ハウジング40の蓋48及び回路基板31を取り外した状態の液圧制御ユニット1を、上方から観察した図である。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。詳しくは、
図5は、
図4の矢印B方向に液圧制御ユニット1を観察した図であり、ハウジング40の矢印B方向において前面側となる部分を削除して、液圧制御ユニット1を観察した図である。すなわち、
図5は、基体10の上方にハウジング40が配置された状態の液圧制御ユニット1の内部を側方から観察した図となっている。なお、
図5では、
図4の矢印B方向においてコイルユニット60の前方に位置する蓋固定部50及び接続部80の図示を省略している。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの内部を側方から観察した図である。詳しくは、
図6は、
図4の矢印C方向に液圧制御ユニット1の接続部80を観察した図である。すなわち、
図6は、基体10の上方にハウジング40が配置された状態の液圧制御ユニット1の内部を側方から観察した図となっている。
【0044】
以下、
図3~
図6を用いて、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1の構成について説明する。
液圧制御ユニット1は、基体10と、ハウジング40と、コイルユニット60と、回路基板31と、を備えている。
【0045】
基体10は、例えば、アルミニウム合金を素材とする、略直方体の部材である。基体10の上面18には、ハウジング40が接続されている。本実施の形態では、ハウジング40は、接着により、基体10の上面18と接続されている。基体10とハウジング40とを接着で接続することにより、基体10とハウジング40との間の気密性を向上させることができる。なお、基体10各面は、平坦であってもよく、湾曲部を含んでいてもよく、また、段差を含んでいてもよい。
【0046】
ハウジング40は、例えば略直方体の、箱形形状をしている。本実施の形態では、ハウジング40は、樹脂で形成されている。すなわち、ハウジング40は、樹脂形成品となっている。ハウジング40の内部には、コイルユニット60及び回路基板31が収納されている。また、本実施の形態に係るハウジング40は、本体部41及び蓋48を備えている。本体部41の下面部42は、ハウジング40の上面18に、接着により接続されている。また、本体部41には、回路基板31と対向する領域に、開口部43aが形成されている。本実施の形態では、開口部43aは、本体部41の上面部43に形成されている。蓋48は、本体部41の開口部43aを覆う部材である。本実施の形態では、蓋48は、接着により、本体部41に接続されている。詳しくは、蓋48の下面部が、本体部41の上面部43における開口部43aの周縁に接着されている。蓋48と本体部41とを接着で接続することにより、蓋48と本体部41との間の気密性を向上させることができる。
【0047】
コイルユニット60は、液圧調整バルブ20を駆動するコイルを備えている。すなわち、コイルユニット60は、コイル61及びコイル63を備えている。また、コイルユニット60は、コイル61及びコイル63を保持するコイルハウジング65を備えている。本実施の形態では、コイルハウジング65は、コイル61及びコイル63の上方に配置された上面部66と、コイル61及びコイル63の下方に配置された下面部67と、上面部66と下面部67とを接続する側面部68と、を備えている。なお、本実施の形態では、コイルハウジング65の上面部66の角部のうち、後述の乗せ台90の近傍となる角部には、切り欠き66cが形成されている。そして、コイルハウジング65の側面部68は、上面部66における切り欠き66cが形成されていない箇所と、下面部67と、を接続している。
【0048】
このコイルユニット60は、基体10の上面18に、接続されている。本実施の形態では、コイルユニット60は、接着により、基体10の上面18に接続されている。具体的には、ハウジング40の本体部41の下面部42には、コイルユニット60と対向する位置に、開口部42aが形成されている。また、コイルユニット60は、本体部41の下面部42の開口部42aを通過している。そして、コイルハウジング65の下面部67が、基体10の上面18に、接着により接続されている。
【0049】
回路基板31は、コイルユニット60の上方に配置されている。回路基板31は、コイル61の接続端子62及びコイル63の接続端子64と、電気的に接続されている。これにより、回路基板31は、コイル61及びコイル63への通電を制御できる構成となっている。
【0050】
ここで、
図3~
図5に示すように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、樹脂製のアーム70を少なくとも1つ備えている。本実施の形態では、2つのアーム70を備えた例を示している。これらのアーム70のうちの一方の一端は、ハウジング40の本体部41の側面部のうちの1つである第1側面部44aに保持されている。また、これらのアーム70のうちの他方の一端は、本体部41において第1側面部44aと対向する側面部となる第2側面部44bに保持されている。そして、これらのアーム70は、コイルハウジング65の上面部66の上面66aに接している。換言すると、これらのアーム70は、コイルユニット60における基体10との接着面と対向する面に接触している。なお、本実施の形態に係るアーム70は、ハウジング40に保持されている側とは反対側の端部近傍に、下方へ突出する突起71を備えている。そして、突起71が、コイルハウジング65の上面部66の上面66aに接している。すなわち、本実施の形態においては、突起71が、アーム70のコイルユニット60との接触箇所となる。
【0051】
詳しくは、液圧制御ユニット1が組み立てられた直後においては、すなわち、基体10とコイルユニット60とを接着する接着剤が未だ固まっていない状態においては、アーム70は、コイルハウジング65の上面部66の上面66aによって突起71が上方へ押され、弾性変形する構成となっている。このため、基体10とコイルユニット60とを接着する接着剤が固まっていない状態においては、アーム70の反力によってコイルユニット60を基体10に向かって押圧することができる。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、接着によってコイルユニット60を基体10に固定することができる。したがって、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、締結部材であるボルトを用いずに、すなわちボルトレスで、接着によってコイルユニット60を基体10に固定することができる。本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ボルトレスでコイルユニット60を基体10に固定することができるので、コイルユニット60にボルトの配置スペースを確保する必要がなくなり、コイルユニット60を小型化でき、液圧制御ユニット1を小型化できる。
【0052】
ところで、アーム70の一端は、ハウジング40に保持されている。このため、アーム70の反力は、ハウジング40と基体10との接続箇所において、ハウジング40と基体10とを引き離す力としても作用することとなる。したがって、アーム70を採用した場合、ハウジング40と基体10との間の接着箇所が剥離し、ハウジング40と基体10との間の気密性が低下すると懸念されるかもしれない。しかしながら、本実施の形態に係るアーム70は、樹脂で形成されている。このため、クリープ現象により、アーム70によるコイルユニット60の押圧力は、時間の経過と共に減少していく。また、クリープ現象の進行は周囲温度の影響も受けるため、回路基板31、コイル61及びコイル63の発熱によってハウジング40内の温度が上昇すると、クリープ現象が促進され、アーム70によるコイルユニット60の押圧力が低下しやすくなる。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1においては、ある程度の時間が経過した後、アーム70によるコイルユニット60の押圧力は、ハウジング40と基体10との間の接着箇所に剥離が生じない大きさに低下する。したがって、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ハウジング40と基体10との間の接着箇所が剥離すること抑制でき、ハウジング40と基体10との間の気密性が低下することも抑制できる。
【0053】
なお、ハウジング40におけるアーム70の保持箇所は、本体部41の第1側面部44a及び第2側面部44bに限定されない。例えば、本体部41において第1側面部44aと第2側面部44bとを接続する側面部である第3側面部44c及び第4側面部44dに、アーム70の一端を保持させてもよい。また例えば、本体部41の下面部42に、アーム70の一端を保持させてもよい。
【0054】
また、
図5に示すように、本実施の形態では、アーム70は、コイルユニット60と回路基板31との間に配置されている。そして、アーム70の上面72は、回路基板31の下面32に対して傾いている。換言すると、コイルユニット60、アーム70及び回路基板31の並び方向と垂直な観察方向において、アーム70における回路基板31と対向する面は、回路基板31におけるアーム70と対向する面に対して傾いている。アーム70をこのような形状にすることにより、アーム70の上面72と回路基板31の下面32とが平行な場合と比べ、アーム70と回路基板31との間のスペースが大きくなり、回路基板31に電子部品等を実装する領域を拡大することができる。なお、本実施の形態では、アーム70の上面72は、側面視直線状の傾斜面となっているが、側面視曲線状の傾斜面であってもよく、側面視階段状の傾斜面であってもよい。アーム70の上面72が回路基板31の下面32に対して傾いていれば、回路基板31に電子部品等を実装する領域を拡大することができる。
【0055】
また、
図5に示すように、アーム70の軸74は、回路基板31の下面32に対して傾いている。且つ、アーム70の軸74は、コイルハウジング65の上面部66の上面66aに対して傾いている。換言すると、コイルユニット60、アーム70及び回路基板31の並び方向と垂直な観察方向において、アーム70の軸74は、回路基板31におけるコイルユニット60と対向する面、及びコイルユニット60における回路基板31と対向する面に対して傾いている。なお、アーム70の軸74とは、上面72と下面73とから等しい距離にある点を、アーム70の一端から他端まで繋いだ仮想線である。
【0056】
アーム70の軸74をこのように配置することにより、例えば、
図5で示すように、アーム70の上面72を回路基板31の下面32に対して傾けることができる。アーム70の上面72を回路基板31の下面32に対して傾けることにより、アーム70の上面72と回路基板31の下面32とが平行な場合と比べ、アーム70と回路基板31との間のスペースが大きくなり、回路基板31に電子部品等を実装する領域を拡大することができる。また例えば、アーム70の軸74をこのように配置することにより、アーム70の下面73をコイルハウジング65の上面部66の上面66aに対して傾けることができる。アーム70の下面73をコイルハウジング65の上面部66の上面66aに対して傾けることにより、アーム70の下面73とコイルハウジング65の上面部66の上面66aとが平行な場合と比べ、アーム70とコイルユニット60との間のスペースが大きくなり、ハウジング40内において収納物の収納領域を拡大することができる。
【0057】
また、アーム70とハウジング40の本体部41とは、樹脂の一体形成品となっている。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、アーム70を本体部41に組み付ける工程を削除することができ、組立工数を削減することができる。
【0058】
また、アーム70を複数備えることにより、1つのアーム70でコイルユニット60を押圧する場合と比べ、しっかりとコイルユニット60を押圧することができる。このため、アーム70を複数備えることにより、基体10とコイルユニット60との接着の確実性が向上する。
【0059】
また、本実施の形態では、
図4に示すように、2つのアーム70は、コイルユニット60の中心69に対して点対称な位置で、コイルユニット60に接触している。換言すると、本実施の形態では、コイルユニット60及びアーム70の並び方向と平行な観察方向において、複数のアーム70のうちの少なくとも2つは、コイルユニット60の中心69に対して点対称な位置で、コイルユニット60に接触している。このため、アーム70からコイルユニット60にかかる負荷の場所的なバラツキが少なくなり、基体10とコイルユニット60との接着の確実性が向上する。
【0060】
図3及び
図4に示すように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ハウジング40の本体部41に蓋48を固定する蓋固定部50を少なくとも1つ備えている。本実施の形態では、2つの蓋固定部50を備えた例を示している。蓋固定部50は、本体部41及び蓋48で囲まれた空間の内部に設けられている。また、蓋固定部50は、被係合部51と、該被係合部51に係合している係合部55とを備えている。被係合部51は、本体部41及び蓋48のうちの一方に保持されている。係合部55は、本体部41及び蓋48のうちの他方に保持されている。本実施の形態は、被係合部51が本体部41に保持され、係合部55が蓋48に保持されている例を示している。なお、本実施の形態では、本体部41に蓋48を固定する際に互いに係合する2つの構成のうち、剛性の高い方を被係合部51とし、剛性の低い方を係合部55とする。
【0061】
従来の液圧制御ユニットでは、本体部に蓋を固定する構造が、本体部及び蓋の外周部から外側に突出して設けられていたため、小型化することが難しかった。一方、蓋固定部50は、本体部41及び蓋48で囲まれた空間の内部に設けられることとなる。このため、蓋固定部50は、本体部41及び蓋48の外周部から外側に突出しない。したがって、蓋固定部50を用いて本体部41に蓋48を固定することにより、液圧制御ユニット1を、従来の液圧制御ユニットと比べて小型化することができる。また、液圧制御ユニット1の組立完了後においては、蓋固定部50は液圧制御ユニット1の外部からは見えないので、液圧制御ユニット1の意匠性を向上させることができる。また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ボルトレスで本体部41に蓋48を固定することができるので、ボルトで本体部41に蓋48を固定する場合と比べ、組立工数を削減することができる。
【0062】
なお、蓋固定部50の被係合部51及び係合部55の具体的な構造としては従来のスナップフィット構造に採用されている種々の構造を採用できるが、本実施の形態では、被係合部51及び係合部55を以下のような構造としている。
【0063】
被係合部51は、例えば略円筒形状等の筒形形状をしている。係合部55は、例えば略円柱形状等の柱状形状をしている。係合部55は、被係合部51の内側に延出しており、被係合部51に内側から係合している。詳しくは、被係合部51の内周側には、内側へ出っ張る凸部52が設けられている。一方、係合部55の例えば先端部には、該係合部55の外側へ向かって出っ張る凸部56が設けられている。係合部55は、凸部56が被係合部51の凸部52に引っ掛かることにより、被係合部51に内側から係合している。
【0064】
また、本実施の形態では、回路基板31に穴33が形成されており、蓋固定部50は回路基板31の穴33を貫通している。蓋固定部50が回路基板31の穴33を貫通していない場合、蓋固定部50は、回路基板31の外周側に配置されることとなる。このため、蓋固定部50が回路基板31の穴33を貫通することにより、蓋固定部50が回路基板31の外周側に配置された場合と比べ、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0065】
ここで、本実施の形態では、回路基板31の穴33は、回路基板31の位置基準穴となっている。位置基準穴は、回路基板31に電子部品を実装する際の基準位置になる穴であり、回路基板31に必ず形成される穴である。位置基準穴に蓋固定部50を貫通させることにより、回路基板31に蓋固定部50を貫通させる専用の穴を形成する必要がなくなる。このため、位置基準穴に蓋固定部50を貫通させることにより、蓋固定部50を貫通させる専用の穴を回路基板31に形成した場合と比べ、回路基板31を小型化でき、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、蓋固定部50の係合部55が回路基板31の穴33を貫通している。係合部55は、被係合部51と比べ、細く形成することができる。このため、係合部55が回路基板31の穴33を貫通する構成にすることにより、被係合部51が回路基板31の穴33を貫通する構成と比べ、穴33を小さく形成できるので回路基板31を小型化でき、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、被係合部51及び係合部55は、弾性変形する構成となっている。具体的には、被係合部51には、先端から本体部41に保持されている基部側に延びるスリット53が形成されている。これにより、被係合部51は、2つの柱状部分に分かれている。このように被係合部51を構成することにより、被係合部51内に係合部55が挿入された際、被係合部51は、該被係合部51の先端部分が外側に広がるように弾性変形することができる。なお、被係合部51は、3つ以上の柱状部分に分かれていてもよい。また、係合部55には、先端から蓋48に保持されている基部側に延びるスリット57が形成されている。これにより、係合部55は、2つの柱状部分に分かれている。このように係合部55を構成することにより、係合部55を被係合部51内に挿入した際、係合部55は、該係合部55の先端部分が内側に狭まるように弾性変形することができる。なお、係合部55は、3つ以上の柱状部分に分かれていてもよい。
【0068】
液圧制御ユニット1を組み立てていく際、液圧制御ユニット1の各構成部品の組み付け誤差等によって、被係合部51に対する係合部55の位置が規定の位置からずれる場合がある。このような場合でも、被係合部51及び係合部55が弾性変形する構成となっていれば、被係合部51及び係合部55によって組み付け誤差を吸収しつつ、被係合部51に係合部55を係合させることができる。このため、被係合部51及び係合部55を弾性変形する構成とすることにより、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。なお、被係合部51又は係合部55が弾性変形する構成となっていれば、被係合部51及び係合部55によって組み付け誤差を吸収しつつ、被係合部51に係合部55を係合させることができ、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。ただし、被係合部51及び係合部55の双方が弾性変形する構成とした方が、被係合部51又は係合部55が弾性変形する構成の場合と比べ、より大きな組み付け誤差を吸収でき、液圧制御ユニット1の組立がより容易となる。
【0069】
また、本実施の形態では、蓋固定部50の被係合部51とハウジング40の本体部41とが、樹脂の一体形成品となっている。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、被係合部51を本体部41に組み付ける工程を削除することができ、組立工数を削減することができる。なお、被係合部51が蓋48に保持されている構成の場合、被係合部51と蓋48とを樹脂の一体形成品とすることにより、液圧制御ユニット1の組立工数を削減することができる。また、本実施の形態では、蓋固定部50の係合部55とハウジング40の蓋48とが、樹脂の一体形成品となっている。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、係合部55を蓋48に組み付ける工程を削除することができ、組立工数を削減することができる。なお、係合部55が本体部41に保持されている構成の場合、係合部55と本体部41とを樹脂の一体形成品とすることにより、液圧制御ユニット1の組立工数を削減することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、液圧制御ユニット1は、複数の蓋固定部50を備えている。このため、本実施の形態では、蓋48は、本体部41に対して2つ以上の箇所で固定されることとなる。このため、蓋固定部50によって本体部41に蓋48を固定する際、本体部41に対して蓋48の位置を位置決めすることができる。このため、複数の蓋固定部50を備えることにより、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0071】
また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、複数の蓋固定部50を備え、蓋48が正しくない向きでは本体部41に固定できない構成となっている。液圧制御ユニット1をこのような構成とすることにより、蓋48の誤取付を防止でき、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。具体的には、ハウジング40の本体部41の開口部43aの貫通方向と平行な仮想軸を、仮想軸58とする。このように仮想軸58を定義した場合、仮想軸58を回転中心として蓋48を正規の取付位置から180°回転させた際、複数の蓋固定部50のうちの少なくとも1つの係合部55は、複数の蓋固定部50のうちのいずれの被係合部51とも係合しない構成となっている。このような構成は、例えば、複数の蓋固定部50のうちの少なくとも2つを、仮想軸58を中心として点対称ではない位置に配置することにより、実現できる。また例えば、このような構成は、複数の蓋固定部50のうちの少なくとも2つにおいて、被係合部51及び係合部55の大きさを異ならせることにより、実現できる。
【0072】
図4及び
図6に示すように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、基体10とハウジング40とを接続する接続部80を少なくとも1つ備えている。本実施の形態では、2つの接続部80を備えた例を示している。また、上述のように、本実施の形態に係るハウジング40は、本体部41及び蓋48を備えている。このため、本実施の形態では、接続部80は、基体10とハウジング40の本体部41とを接続している。接続部80は、基体10に形成された凹部81を備えている。本実施の形態に係る液圧制御ユニット1では、ハウジング40の本体部41は、基体10の上面18に接続されている。このため、本実施の形態では、凹部81は、基体10の上面18から下方に凹む形状に形成されている。また、接続部80は、ハウジング40の本体部41に保持され、下端部83が凹部81に圧入されたピン82を備えている。すなわち、ハウジング40の本体部41に保持されたピン82の下端部83が基体10の凹部81に圧入されることによって、基体10とハウジング40の本体部41とが接続される構成となっている。
【0073】
従来の液圧制御ユニットにおける基体とハウジングとの接続構成としては、締結部材であるボルトによる接続が知られている。ここで、ボルトは、雄ネジが形成されている雄ネジ形成部と、工具が接続される頭部と、を備えている。そして、ボルトの軸方向と垂直な方向の幅を横幅とした場合、頭部の横幅は、雄ネジ形成部の横幅よりも大きい。このため、従来の液圧制御ユニットは、ハウジングと基体とを接続するボルトの大きな頭部の配置スペースを確保する必要があるため、小型化することが難しい。一方、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ボルトを用いずに(ボルトレスで)基体10とハウジング40の本体部41とを接続できるため、ボルトの頭部の配置スペースを確保する必要がない。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、従来の液圧制御ユニットと比べて小型化することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1では、上述のように、基体10とハウジング40の本体部41とが接着されている。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1では、基体10からハウジング40の本体部41を引き離す力が作用した場合、当該力を、接続部80に加えて、基体10とハウジング40の本体部41とを接着する接着剤の接着力によっても受けることができる。このため、基体10とハウジング40の本体部41とが接着されている構成の場合、基体10とハウジング40の本体部41とが接着されていない構成と比べ、接続部80のピン82を細くすることができ、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、液圧制御ユニット1は、複数の接続部80を備えている。このため、本実施の形態では、ハウジング40の本体部41は、基体10に対して2つ以上の箇所で固定されることとなる。したがって、接続部80によって基体10にハウジング40の本体部41を接続する際、基体10に対してハウジング40の本体部41の位置を位置決めすることができる。このため、複数の接続部80を備えることにより、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0076】
なお、ピン82の材質は特に限定されるものではなく、ピン82を樹脂で形成してもよいし、ピン82を金属で形成してもよい。樹脂製のピン82の場合、ハウジング40との一体形成品とすることにより、液圧制御ユニット1の組立工数を削減することができる。一方、金属製のピン82はクリープ現象が発生しないため、ピン82が金属製の場合、接続部80におけるハウジング40の本体部41と基体10とを接続する力が時間経過に伴って低下することを抑制できる。
【0077】
また、ハウジング40の本体部41がピン82を保持する構成も、特に限定されない。液圧制御ユニット1の組立完了後にピン82が本体部41から外れなければよく、例えば、ピン82を本体部41の段部に引っ掛けるような構成であってもよい。本体部41の段部と基体10との間にピン82が挟み込まれる構成となれば、液圧制御ユニット1の組立完了後にピン82が本体部41から外れることを抑制できる。なお、本実施の形態では、ピン82は、モールド成形によってハウジング40の本体部41に固定されている。具体的には、ピン82は、樹脂製の本体部41の保持部45において、モールド成形により固定されている。すなわち、保持部45は、ピン82をモールドする部分である。ピン82をモールド成形によってハウジング40の本体部41に固定することにより、本体部41の形成時にピン82を本体部41に保持させることができる。このため、ピン82をモールド成形によってハウジング40の本体部41に固定することにより、液圧制御ユニット1の組立工数を削減することができる。
【0078】
また、本実施の形態においては、ピン82は、該ピン82におけるハウジング40の本体部41にモールドされている部分に、突出部85を少なくとも1つ備えている。突出部85は、ピン82を凹部81に圧入する方向と平行でない方向に突出している。
図6等に示すように、本実施の形態では、ピン82は、下方向に押されて、凹部81に圧入される。このため、本実施の形態では、突出部85は、横方向に突出している。ピン82が突出部85を備えることにより、ピン82が保持部45から抜け出ることを抑制でき、基体10とハウジング40の本体部41との接続の確実性が向上する。
【0079】
また、本実施の形態においては、ピン82における凹部81に圧入されている側の端部とは反対側の端部は、すなわちピン82の上端部84は、ハウジング40の本体部41におけるピン82をモールドする部分である保持部45から突出している。これにより、ピン82を直接押して、ピン82を凹部81に圧入できるので、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0080】
また、本実施の形態においては、ピン82は板状になっている。ピン82を板状にすることにより、ピン82は弾性変形自在となるので、液圧制御ユニット1の各構成部品の組み付け誤差を吸収しつつ、ピン82を凹部81に圧入できる。このため、ピン82を板状にすることにより、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0081】
また、本実施の形態においては、板状のピン82における凹部81に圧入されている側の端部に、すなわち板状のピン82の下端部83に、貫通穴86が形成されている。これにより、ピン82の下端部83を凹部81に圧入する際、ピン82の下端部83が凹部81内において弾性変形できる。したがって、板状のピン82の下端部83に貫通穴86を形成することにより、ピン82の下端部83を凹部81に圧入することが容易となり、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0082】
図3~
図5に示すように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、ハウジング40に保持された乗せ台90を少なくとも1つ備えている。本実施の形態では、2つの乗せ台90を備えた例を示している。また、上述のように、本実施の形態に係るハウジング40は、本体部41及び蓋48を備えている。本実施の形態では、乗せ台90は、ハウジング40の本体部41に保持されている。
【0083】
乗せ台90は、少なくとも一部がコイルユニット60のコイルハウジング65の一部分の下方に配置されている。なお、本実施の形態では、乗せ台90の全部分がコイルハウジング65の上面部43の下方に配置されている例を示している。ここで、乗せ台90は、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続される前の状態において、コイルユニット60のコイルハウジングの一部分を支持するものである。このため、乗せ台90がコイルユニット60を支持できれば、乗せ台90の少なくとも一部は、コイルハウジング65のうちの上面部43以外の箇所の下方に配置されていてもよい。例えば、コイルハウジング65の側面部68に段部を設け、乗せ台90の少なくとも一部がコイルハウジング65の側面部68の段部の下方に配置されていてもよい。この場合、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続される前の状態においては、乗せ台90がコイルハウジング65の側面部68の段部を支持することができ、乗せ台90がコイルユニット60を支持できる。また、乗せ台90の一部がコイルユニット60のコイルハウジング65の一部分の下方に配置されていれば、乗せ台90の残りの一部がコイルハウジング65の上部に配置されていてもよい。例えば、乗せ台90がコイルハウジング65よりも高い位置でハウジング40の本体部41に保持されていてもよい。乗せ台90の一部がコイルユニット60のコイルハウジング65の一部分の下方に配置されていれば、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続される前の状態において、乗せ台90がコイルユニット60を支持できる。
【0084】
図7は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける、コイルユニット及びハウジングの本体部が基体に接続される前の状態を説明するための図である。
図7に示すように、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続される前の状態においては、乗せ台90は、コイルハウジング65の上面部43の下方に配置されている部分の少なくとも一部を構成する支持部91で、コイルハウジング65の上面部43の下面66bを下方から支持している。なお、上述のように、本実施の形態では、乗せ台90の全部分がコイルハウジング65の上面部43の下方に配置されている。このため、乗せ台90は、下端部92がハウジング40の本体部41に保持され、上端部93が支持部91となっている。
【0085】
従来の液圧制御ユニットは、基体にコイルユニットを取り付けた後、基体にハウジングを取り付ける構成となっている。ここで、液圧制御ユニットを小型化しようとすると、コイルユニットとハウジングとの間の隙間を小さくしなければならない。しかしながら、従来の液圧制御ユニットは、コイルユニットとハウジングとの間の隙間が小さくなると、コイルユニットが規定の位置からずれて基体に取り付けられた場合に、コイルユニットの上部とハウジングの下部とが干渉してしまい、組立が難しくなる。また、コイルユニットの上部とハウジングの下部とが干渉することにより、コイルの接続端子が曲がってしまうことも懸念される。
【0086】
一方、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、乗せ台90でコイルユニット60を支持させることにより、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41の双方を一緒に、基体10に対して位置決めすることができる。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、コイルユニット60とハウジング40の本体部41との間の隙間が小さくなった場合でも、コイルユニット60の上部とハウジング40の本体部41の下部とが干渉することを抑制できる。したがって、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、従来の液圧制御ユニットと比べて小型化することができる。また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、コイルユニット60の上部とハウジング40の本体部41の下部とが干渉することを抑制できるので、コイル61の接続端子62及びコイル63の接続端子64が曲がってしまうことも抑制できる。
【0087】
ここで、
図3に示すように、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続された状態において、長さLa及び長さLbを次のように定義する。長さLaは、ハウジング40の本体部41と基体10の上面18との接続箇所から、コイルハウジング65における乗せ台90の支持部91で支持される一部分までの、上下方向の長さである。上述のように、本実施の形態では、コイルハウジング65の上面部66の下面66bが、乗せ台90の支持部91で支持される。このため、本実施の形態では、長さLaは、ハウジング40の本体部41と基体10の上面18との接続箇所から、コイルハウジング65の上面部66の下面66bまでの、上下方向の長さとなっている。また、長さLbは、ハウジング40の本体部41と基体10の上面18との接続箇所から、乗せ台90の支持部91までの、上下方向の長さである。このように長さLa及び長さLbを定義した場合、長さLaは、長さLbよりも長くなっている。
【0088】
長さLaを長さLbよりも長くすることにより、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続された状態において、コイルハウジング65における乗せ台90の支持部91で支持される一部分と、乗せ台90の支持部91との間に、隙間が形成されることとなる。これにより、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続された状態において、乗せ台90によってコイルユニット60が上方へ押圧されることがなくなり、コイルユニット60と基体10との接着の確実性が向上する。
【0089】
また、上述のように、本実施の形態では、乗せ台90は、コイルハウジング65の上面部66の下方に配置されており、下端部92がハウジング40の本体部41に保持され、上端部93が支持部91となっている。乗せ台90の一部がコイルハウジング65の上面部66の上方に設けられる場合、乗せ台90の一部は、コイルハウジング65の上面部66とハウジング40の本体部41との間に横方向に形成される隙間に配置されることとなる。一方、乗せ台90の全部分をコイルハウジング65の上面部66の下方に配置することのより、コイルハウジング65の上面部66とハウジング40の本体部41との間に横方向に形成される隙間に、乗せ台90の一部を配置する必要がない。このため、乗せ台90の全部分をコイルハウジング65の上面部66の下方に配置することのより、ハウジング40の本体部41との間に横方向に形成される隙間を小さくでき、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0090】
また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、複数の乗せ台90を備えている。1つの乗せ台90でコイルユニット60を支持する場合、平面視においてコイルユニット60の重心となる位置近傍を、乗せ台90で支持することとなる。しかしながら、液圧制御ユニット1を小型化しようとした場合、平面視においてコイルユニット60の重心となる位置近傍に、乗せ台90で支持されるスペースを確保することが難しい場合もある。一方、複数の乗せ台90でコイルユニット60を支持する場合、平面視においてコイルユニット60の重心となる位置近傍を支持しなくとも、空いているスペースに複数の乗せ台90を当接させることにより、コイルユニット60を支持することができる。このため、複数の乗せ台90を備えることにより、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0091】
また、本実施の形態では、ハウジング40の本体部41と乗せ台90とは、樹脂の一体形成品となっている。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、乗せ台90を本体部41に組み付ける工程を削除することができ、組立工数を削減することができる。
【0092】
また、本実施の形態では、上述のように、アーム70を備えている。このため、
図7に示すように、コイルユニット60及びハウジング40の本体部41が基体10に接続される前の状態においては、コイルハウジング65がアーム70と乗せ台90とによって挟持される。したがって、アーム70を備えることにより、ハウジング40の本体部41内においてコイルユニット60を安定的に保持することができ、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。なお、この効果は、アーム70を金属で形成した場合でも得られる。また、アーム70が樹脂製の場合、ハウジング40の本体部41、乗せ台90及びアーム70を樹脂の一体形成品にするのが好ましい。ハウジング40の本体部41に乗せ台90及びアーム70を組み付ける工程を削除することができ、組立工数を削減することができる。
【0093】
図8は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける、乗せ台にコイルユニットを支持させる過程を説明するための図である。
図8に示すように、本実施の形態においては、乗せ台90は、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際にコイルユニット60の外側となる位置まで、弾性変形自在な構成となっている。なお、
図4に示すように、コイルユニット60のコイルハウジング65の上面部66には、切り欠き66cが形成されている。そして、
図8では、乗せ台90は、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際に切り欠き66cの外側となる位置まで、弾性変形自在な構成となっている。乗せ台90をこのように構成することにより、液圧制御ユニット1の設計の自由度が向上する。
【0094】
具体的には、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際にコイルユニット60の外側となる位置まで乗せ台90が弾性変形しない場合、乗せ台90の上方からコイルユニット60を下降させ、コイルユニット60を乗せ台90に支持させることとなる。このような場合、ハウジング40の本体部41内に配置される部品は、コイルユニット60を乗せ台90に向かって下降させる際に干渉しない位置になるよう、配慮される必要がある。
【0095】
一方、
図8に示すように、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際にコイルユニット60の外側となる位置まで乗せ台90が弾性変形できる場合、乗せ台90の下方からコイルユニット60を上昇させ、コイルユニット60を乗せ台90に支持させることができる。詳しくは、ハウジング40の本体部41の下面部42に形成された開口部42aにコイルユニット60を下方から通過させて、コイルユニット60を上昇させていく。コイルユニット60を上昇させていくと、コイルハウジング65の上面部66の切り欠き66cの縁部に、乗せ台90が接触する。そして、乗せ台90は、コイルユニット60の上昇と共に外側へ弾性変形していく。そして、コイルユニット60がさらに上昇し、コイルハウジング65の上面部66が乗せ台90の支持部91よりも上方へいくと、乗せ台90は元の形に戻り、乗せ台90の支持部91が本体部41の下面部42の下方に位置することとなる。これにより、コイルユニット60を乗せ台90に支持させることができる。このように、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際にコイルユニット60の外側となる位置まで乗せ台90が弾性変形できる場合、乗せ台90の上方及び下方の双方からコイルユニット60を乗せ台90に支持させることができるので、液圧制御ユニット1の設計の自由度が向上する。
【0096】
また、液圧制御ユニット1の内部を上方から観察した際にコイルユニット60の外側となる位置まで弾性変形できる乗せ台90において、コイルハウジング65の上面部66の下方に配置され、下端部92がハウジング40の本体部41に保持され、上端部93が支持部91となっている場合、乗せ台90を
図5に示す形状とすることが好ましい。具体的には、乗せ台90は、下端部92から途中部94までは上方に向かうにしたがって横幅が減少し、途中部94から上方に向かうにしたがって横幅が増加し、上端部93の横幅が途中部94の横幅よりも広くなっているのが好ましい。このように構成された乗せ台90においては、下端部92から途中部94までは上方に向かうにしたがって横幅が減少しているので、弾性変形しやすくなり、乗せ台90の下方からコイルユニット60を乗せ台90に支持させることが容易となる。また、このように構成された乗せ台90においては、途中部94から上方に向かうにしたがって横幅が増加し、上端部93の横幅が途中部94の横幅よりも広くなっているので、乗せ台90によってコイルハウジング65を支持する面積を大きくできる。このため、このように構成された乗せ台90においては、乗せ台90でコイルユニット60を支持した際の安定性が向上する。したがって、このように構成された乗せ台90を用いることにより、液圧制御ユニット1の組立が容易となる。
【0097】
また、上述のように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、アンチロックブレーキ制御における減圧時にブレーキ液を蓄えるアキュムレータ23を備え、アキュムレータ23内のブレーキ液をポンプレスでアキュムレータ23外へ排出する構成となっている。ポンプレス式の液圧制御ユニットは、小型化が望まれる。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1をポンプレス式の液圧制御ユニットとして実施するのが好ましい。
【0098】
<液圧制御ユニットの効果>
実施の形態に係る液圧制御ユニットの効果について説明する。
【0099】
本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、例えば自転車200である鞍乗型車両に搭載されるブレーキシステム100の液圧制御ユニット1である。液圧制御ユニット1は、基体10と、コイルユニット60と、ハウジング40と、樹脂製のアーム70と、を備えている。基体10には、ブレーキ液の流路13が形成されている。コイルユニット60は、流路13を開閉する液圧調整バルブ20を駆動するコイル61,63、及び該コイル61,63を保持するコイルハウジング65を有し、基体10に接着されている。ハウジング40は、基体10と接続され、コイルユニット60が収納されている。樹脂製のアーム70は、一端がハウジング40に保持され、コイルユニット60における基体10との接着面と対向する面である上面66aに接触している。
【0100】
このように構成された液圧制御ユニット1においては、コイルユニット60に押されてアーム70が弾性変形するように該液圧制御ユニット1を組み立てることにより、ボルトレスで接着によってコイルユニット60を基体10に固定することができるので、コイルユニット60にボルトの配置スペースを確保する必要がなくなり、コイルユニット60を小型化でき、液圧制御ユニット1を小型化できる。また、このように構成された液圧制御ユニット1においては、ある程度の時間が経過した後、アーム70によるコイルユニット60の押圧力がハウジング40と基体10との間の接続箇所に剥離が生じない大きさに低下するので、ハウジング40と基体10との間の気密性が低下することも抑制できる。
【0101】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の説明の一部のみが実施されていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 液圧制御ユニット、10 基体、11 マスタシリンダポート、12 ホイールシリンダポート、13 流路、14 第1流路、15 第2流路、16 第3流路、17 第4流路、18 上面、20 液圧調整バルブ、21 インレットバルブ、22 アウトレットバルブ、23 アキュムレータ、30 制御部、31 回路基板、32 下面、33 穴、40 ハウジング、41 本体部、42 下面部、42a 開口部、43 上面部、43a 開口部、44a 第1側面部、44b 第2側面部、44c 第3側面部、44d 第4側面部、45 保持部、48 蓋、50 蓋固定部、51 被係合部、52 凸部、53 スリット、55 係合部、56 凸部、57 スリット、58 仮想軸、60 コイルユニット、61 コイル、62 接続端子、63 コイル、64 接続端子、65 コイルハウジング、66 上面部、66a 上面、66b 下面、66c 切り欠き、67 下面部、68 側面部、69 中心、70 アーム、71 突起、72 上面、73 下面、74 軸、80 接続部、81 凹部、82 ピン、83 下端部、84 上端部、85 突出部、86 貫通穴、90 乗せ台、91 支持部、92 下端部、93 上端部、94 途中部、100 ブレーキシステム、101 液管、102 液管、103 液圧センサ、200 自転車、210 フレーム、211 ヘッドチューブ、212 トップチューブ、213 ダウンチューブ、214 シートチューブ、215 ステー、216 フロントフォーク、217 前輪、218 サドル、219 ペダル、220 後輪、230 旋回部、231 ステアリングコラム、232 ハンドルステム、233 ハンドルバー、240 制動操作部、241 ブレーキレバー、242 マスタシリンダ、243 リザーバ、250 前輪制動部、251 ホイールシリンダ、252 ロータ、260 後輪制動部、270 電源ユニット。