(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】二次監視レーダシステム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20231204BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20231204BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/36
(21)【出願番号】P 2019164700
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 由貴
(72)【発明者】
【氏名】杉田 善紀
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/121709(WO,A1)
【文献】特開平11-183605(JP,A)
【文献】特開2018-120553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/36
G08G 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに覆域の重なり合う第1および第2の二次監視レーダ装置と、
前記第1および第2の二次監視レーダ装置の間に通信リンクを形成する通信媒体とを具備し、
前記第1の二次監視レーダ装置は、
重なり合う前記覆域における航空機に係わる
DAPs(Downlink Aircraft Parameters)情報を生成し、
前記通信媒体を経由して前記DAPs情報を前記第2の二次監視レーダ装置に渡す
DAPs情報生成部を備え、
前記第2の二次監視レーダ装置は、
重なり合う前記覆域における航空機の監視を前記第1の二次監視レーダ装置に委ね、当該第1の二次監視レーダ装置から前記通信媒体を経由して前記
DAPs情報を受信する取得部と、
前記
DAPs情報を受信できない場合に、自らの配下の覆域に向け質問信号を送信して前記
DAPs情報を取得する質問管理部とを具備する、二次監視レーダシステム。
【請求項2】
前記第1の二次監視レーダ装置は、
隣接する二次監視レーダ装置の覆域の境界情報を管理する境界管理部をさらに具備し、
前記
DAPs情報生成部は、
自らの配下の覆域に向け質問信号を送信して取得した
DAPs情報を、前記管理される境界情報に基づいて、前記第2の二次監視レーダ装置に向け送信する、請求項1に記載の二次監視レーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次監視レーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SSR(Secondary Surveillance RADAR)は、航空機の識別情報、高度情報、及び位置情報を取得する装置であり、航空管制システムにおける重要な位置づけにある。近年、DAPs(Downlink Aircraft Parameters)を航空管制に利用することにより、航空交通管制における安全性や効率性を向上させることが期待されている。DAPsとは、SSRのダウンリンク機能を用いて地上で取得した機上の動態情報である。航空機の対気速度、対地速度等の状態情報と、選択高度等の意図情報が、DAPsに含まれる主な情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SSRは、世界中の航空機で同じ周波数(アップリンク:1030MHz/ダウンリンク:1090MHz)を使用する。このためDAPsにより質問数が増大すると輻そうが生じたりして、電波環境の悪化することが懸念される。このため複数のSSRの監視覆域が重なる場合には、いずれかのSSRにDAPs質問を委ねることで、DAPs質問の数を最低限にするのが望ましい。
【0005】
しかし、DAPs質問を委ねられた側のSSRで、障害等によりDAPs質問が失敗すると、DAPs情報を得られなくなってしまう。これは、例えばRA(Resolution Advisory:回避指示)情報のように重要な情報では大きな問題となる。
【0006】
そこで、目的は、情報の欠落を防止し得る二次監視レーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、二次監視レーダシステムは、互いに覆域の重なり合う複数の二次監視レーダ装置と、複数の二次監視レーダ装置の間に通信リンクを形成する通信媒体とを具備する。そして、複数の二次監視レーダ装置は、取得部と、質問管理部とを具備する。取得部は、隣接する二次監視レーダ装置から、監視対象の航空機に係わる動態情報を受信する。質問管理部は、動態情報を受信できない場合に、自らの配下の覆域に向け質問信号を送信して前記動態情報を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係わる二次監視レーダシステムについて概略を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係わる二次監視レーダ装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係わる二次監視レーダ装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、質問管理部40によるDAPs情報の取得の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係わる二次監視レーダシステムについて概略を説明するための図である。
図1において、それぞれ円形の覆域を展開する、3つの二次監視レーダ装置(SSR1、SSR2、SSR3)が運用されていて、覆域が部分的に重なっていることを想定する。
【0010】
SSR1の覆域と、SSR2の覆域は花弁状に重なっている(一点鎖線)。この領域をSSR1、SSR2の双方から個別に監視することは合理的でない。そこで、SSR1だけに監視を委ね、得られたDAPs情報をSSR1からSSR2に通知することで、質問信号の最小化を図る。
【0011】
同様に、SSR2とSSR3との関係では、三角形状の覆域の重なり部分(2点鎖線)におけるDAPs情報をSSR2が取得し、SSR3に通知する。SSR1とSSR3との関係では、両者の覆域の重なり部分におけるDAPs情報をSSR1が取得し、SSR3に通知する。
【0012】
以上が、正常な状態での運用である。この状態から、例えばSSR1に障害が発生したとする。そうすると、SSR2がそのことを検知し、SSR1に委ねていた監視領域を、自らの配下に切り替える(一点鎖線)。そしてSSR2は、拡大した領域に向けて自ら質問信号を送信し、DAPs情報を取得する。
【0013】
さらにSSR2は、自ら取得したDAPs情報をSSR3に通知する。これにより、SSR3は、SSR1から取得していたDAPs情報を、SSR2から取得する格好となる。もちろん、この状態においてSSR3は、SSR1に障害が発生していることを知っている。そこで、SSR2と同様に自らの監視領域を拡大し(図中点線)、DAPs情報の取りこぼしを無くす。
【0014】
図2および
図3は、実施形態に係わる二次監視レーダ装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2は、DAPs情報の配信に係わる機能について示す。
図3は、DAPs情報の受信に係わる機能を示す。ここではSSR1~SSR7の7つの二次監視レーダ装置を想定し、SSR1を例として説明する。
【0015】
図2において、SSR1としての二次監視レーダ装置100は、隣接SSR境界管理処理部10と、DAPs情報生成部20とを備える。
隣接SSR境界管理処理部10は、隣接するSSR(隣接SSR)の境界領域の情報(緯度・経度・高度等)をメモリ(図示せず)等に内部データとして保持する。実施形態では、SSR1に対してSSR2~SSR7が隣接SSRであるとする。
【0016】
また、隣接SSR境界管理処理部10は、監視対象の航空機を追跡して得られる情報(追跡情報)に基づいて、当該航空機の未来の位置(予測位置)を予測する。さらに、隣接SSR境界管理処理部10は、予測位置が、隣接SSRの監視覆域に入るか否かを、境界領域の情報に基づいて判定する。
【0017】
隣接SSR境界管理処理部10は、いずれかの隣接SSRの監視覆域に航空機の予測位置が入ることを判定すると、当該隣接SSRに宛てたDAPs情報を、当該隣接SSRに接続されたDAPs情報生成部20に渡す。
【0018】
DAPs情報生成部20は、隣接SSRに、それぞれ通信媒体を介して接続される。通信媒体は、ターゲットレポートと同じであってもよいし、異なる通信回線であっても良い。例えば公衆回線、衛星回線、IP(Internet Protocol)ネットワーク、無線LAN親局を経由した無線通信チャネルでもよい。
【0019】
DAPs情報生成部20は、隣接SSR境界管理処理部10から渡された情報に基づいて、隣接SSRに伝送するためのDAPs補完情報(航空機識別コード、緯度・経度・高度、ヘディング、対地速度等)を生成する。
【0020】
図3において、SSR1としての二次監視レーダ装置100は、DAPs情報受付部30と、質問管理部40とを備える。DAPs情報受付部30は、それぞれ隣接SSRに至る通信媒体に接続される。DAPs情報受付部30は、それぞれ隣接する二次監視レーダ装置からDAPs補完情報を受信し、質問管理部40に渡す。このDAPs補完情報は、監視対象の航空機がSSR1に移動してくることを示す情報(移動情報)である。なお、DAPs補完情報を受信していない状態においても、受信していないという情報が、質問管理部40に通知される。
【0021】
質問管理部40は、DAPs補完情報を受信していない場合に、自らの配下の空域内の航空機に向けて質問信号(ロールコール)を送信する。
【0022】
図4は、質問管理部40によるDAPs情報の取得の一例を示すタイムチャートである。
図4において、SSR1は予め規定された質問周期で質問信号を送信し、自らの覆域内の航空機からDAPs情報を取得する。取得されたDAPs情報は、覆域の重複するSSR2に向け通信媒体を経由して伝送される。
【0023】
この状態からSSR1に障害が発生し、DAPs情報を取得できない状態になったとする。そうすると、SSR2の質問管理部40が、通知されるはずのDAPs情報が受信されないことを直ちに検出し、SSR1からDAPs情報を取得できないと判断して、自ら質問信号の送信を開始する。これ以降、DAPs情報は、SSR2の主体的な質問信号の送信により、SSR2自身において取得されることになる。
【0024】
以上説明したようにこの実施形態では、隣接する二次監視レーダの間に通信媒体を用いた通信リンクを形成し、覆域の重なり合う二次監視レーダ同士で、一方で取得したDAPs情報を他方に渡すことで、覆域内における質問信号を最小にして電波環境を良好に保てるようにする。また、何れかの二次監視レーダに発生した障害により、本来、受信できるはずのDAPs情報を受信できない場合、質問管理部40により直ちにそのことを検知し、質問信号を自ら送信することで、DAPs情報の取りこぼしを最小限に抑えるようにする。
【0025】
このようにすることで、専用のサーバなどの中央装置を経ることなく、隣接するSSR同士1対1で情報の受け渡しを実現することができる。つまり、複数の二次監視レーダ装置(SSR)同士で協調して動作することで、レーダシステムの中央に全体統括装置を配置することなく、また、障害の発生によらず、DAPs情報に基づいて航空機の位置情報を継続的に監視することができる。
【0026】
これらのことから、情報の欠落を防止し得る二次監視レーダシステムを提供することが可能となる。
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10…隣接SSR境界管理処理部、20…DAPs情報生成部、30…DAPs情報受付部、40…質問管理部、100…二次監視レーダ装置。