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特許7395294半導体集積回路、AD変換器、デルタシグマ型AD変換器、インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器及びスイッチトキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】半導体集積回路、AD変換器、デルタシグマ型AD変換器、インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器及びスイッチトキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20231204BHJP
   H03M 3/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H03M1/12 A
H03M3/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019166244
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021044732
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇 直也
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-040955(JP,A)
【文献】特開2012-147153(JP,A)
【文献】特表2018-509829(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136676(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/05
H03M1/00-H03M1/88
H03M3/00-H03M9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1耐圧のデバイスと前記第1耐圧よりも高い第2耐圧のデバイスとを有するサンプルホールド回路と、
前記第1耐圧のデバイスに供給される第1クロック信号と前記第2耐圧のデバイスに供給される第2クロック信号とをマスク前クロック信号に基づいて生成するクロック生成回路と、を有し、
前記クロック生成回路は、
前記第2クロック信号の生成において、前記マスク前クロック信号を遅延させて前記第2クロック信号の位相を前記第1クロック信号の位相に近づける調整を行う遅延調整回路と、
前記第2クロック信号と遅延させる前の前記マスク前クロック信号とに基づいて前記第1クロック信号を生成するマスク信号生成回路と、を有する、半導体集積回路。
【請求項2】
前記クロック生成回路は、前記マスク前クロック信号の電圧レベルを前記第2耐圧に関する電圧レベルにシフトするレベルアップ回路をさらに有し、
前記遅延調整回路は、前記レベルアップ回路の前段と前記レベルアップ回路の後段とのうち少なくとも一つに接続される、
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記クロック生成回路は、
前記第2クロック信号の電圧レベルを前記第1耐圧に関するレベルにシフトするレベルダウン回路と、
前記レベルダウン回路から出力された前記第2クロック信号のレベルダウン信号と前記マスク前クロック信号との位相差に対応する位相誤差信号を生成する位相差検出器と、をさらに有し、
前記遅延調整回路は、前記位相誤差信号に応じた遅延量で前記マスク前クロック信号を遅延させて、前記第2クロック信号を生成する、
請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記遅延調整回路は、前記第2クロック信号の位相を前記第1クロック信号の位相に近づけるように調整されたデジタルコードに応じた遅延量で前記マスク前クロック信号を遅延させて、前記第2クロック信号を生成する、
請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
テスト信号に対して、前記第1クロック信号に対する遅延量を変化させて得られた複数のデジタルコード各々を、前記複数のデジタルコード各々を取得するために用いられた遅延量に対応付けて格納する記憶回路をさらに有し、
前記遅延調整回路は、前記複数のデジタルコードのうち、前記テスト信号に対する正解のデジタルコードに最も近い遅延量を用いて、前記第2クロック信号を生成する、
請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記サンプルホールド回路は、
一端が前記第1耐圧のデバイスと電気的に接続され、他端が前記第2耐圧のデバイスと電気的に接続されたキャパシタをさらに有し、
前記第1耐圧のデバイスは、
前記キャパシタに一端が電気的に接続され、他端がコモンモード電圧に接続された第1スイッチ素子と、
前記キャパシタと前記第1スイッチ素子との間に設けられたノードに一端が電気的に接続され、他端が出力端子に電気的に接続された第2スイッチ素子と、を有し、
前記第2耐圧のデバイスは、
前記キャパシタに一端が電気的に接続され、入力端子に他端が電気的に接続された第3スイッチ素子と、
前記キャパシタと前記第3スイッチ素子との間に設けられたノードに一端が電気的に接続され、他端がコモンモード電圧に接続された第4スイッチ素子と、を有する、
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記第1クロック信号は、第1スイッチ信号と第2スイッチ信号とを有し、
前記第2クロック信号は、第3スイッチ信号と第4スイッチ信号とを有し、
前記第1スイッチ素子は、前記第1スイッチ信号により動作し、
前記第2スイッチ素子は、前記第2スイッチ信号により動作し、
前記第3スイッチ素子は、前記第3スイッチ信号により動作し、
前記第4スイッチ素子は、前記第4スイッチ信号により動作する、
請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記クロック生成回路は、
前記第1スイッチ素子の導通状態と前記第2スイッチ素子の導通状態とが重複しないように、前記マスク前クロック信号を生成する第1ノンオーバーラップ信号生成回路と、
前記第3スイッチ素子の導通状態と前記第4スイッチ素子の導通状態とが重複しないように、前記第3スイッチ信号と前記第4スイッチ信号とを生成する第2ノンオーバーラップ信号生成回路と、をさらに有し、
前記マスク信号生成回路は、前記マスク前クロック信号に対してマスク処理を実行して前記第1クロック信号を生成する、
請求項7に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記マスク信号生成回路は、前記第1スイッチ素子の導通状態と前記第4スイッチ素子の導通状態との重複が現れないように、前記第1スイッチ信号を生成し、前記第2スイッチ素子の導通状態と前記第3スイッチ素子の導通状態との重複が現れないように、前記第2スイッチ信号を生成する、
請求項7または8に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の半導体集積回路を有するAD変換器。
【請求項11】
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の半導体集積回路を有するデルタシグマ型AD変換器。
【請求項12】
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の半導体集積回路を有するインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器。
【請求項13】
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の半導体集積回路を有するスイッチトキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体集積回路、AD変換器、デルタシグマ型AD変換器、インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器及びスイッチトキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AD変換器では、サンプルホールド回路により入力信号をサンプリングし、一定期間ホールドして、入力信号を離散信号に変換する。このサンプルホールド回路は、電気的な耐圧を満たすために、入力信号の入力レンジと同等の電気的な耐圧を有するデバイスで一般に構成される。
【0003】
サンプルホールド回路におけるクロックタイミングが不適切であると、サンプルホールド回路の動作の精度が低下することがある。このため、サンプルホールド回路に対して精度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-27281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの実施形態は、精度を向上可能な半導体集積回路、AD変換器、デルタシグマ型AD変換器、インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器及びスイッチトキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、サンプルホールド回路と、クロック生成回路とを有する半導体集積回路が提供される。サンプルホールド回路は、第1耐圧のデバイスと前記第1耐圧よりも高い第2耐圧のデバイスとを有する。クロック生成回路は、第1耐圧のデバイスに供給される第1クロック信号を生成し、第2耐圧のデバイスに供給される第2クロック信号を第1クロック信号に基づいて生成する。クロック生成回路は、第2クロック信号の生成において、第2クロック信号を遅延させて第2クロック信号の位相を第1クロック信号の位相に近づける調整を行う遅延調整回路を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る半導体集積回路の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るクロック生成回路における構成の一例を示す図である。
図3図3は、サンプルホールド回路におけるサンプルホールド機能が不能状態となる不能期間を説明するための図である。
図4図4は、サンプル期間とホールド期間とが減少する一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るサンプルホールド回路の動作の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係り、クロック生成回路から出力された第1および第2クロック信号による第1乃至第4スイッチ素子の動作の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る遅延調整動作における動作手順の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る遅延調整回路の一例を示す回路図である。
図9図9は、第1の実施形態の第1の変形例に係るクロック生成回路の構成の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態の第2の変形例に係るクロック生成回路の構成の一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に係るクロック生成回路における構成の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る遅延調整回路の一例を示す回路図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る遅延コード設定動作に関する半導体集積回路の構成の一例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る遅延コード設定動作における動作手順の一例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態に係り、遅延コード設定動作が実行される期間において取得された複数のADC出力デジタルコードと遅延の段数との一例を示す図である。
図16図16は、第2の実施形態の第1の変形例におけるクロック生成回路の構成の一例を示す図である。
図17図17は、第2の実施形態の第1の変形例に係る遅延コード設定動作に関する半導体集積回路の構成の一例を示す図である。
図18図18は、第2の実施形態の第2の変形例におけるクロック生成回路の構成の一例を示す図である。
図19図19は、第2の実施形態の第2の変形例における遅延コード設定動作に関する半導体集積回路の構成の一例を示す図である。
図20図20は、第3の実施形態に係り、半導体集積回路を有するデルタシグマ型AD変換器の一例を示す図である。
図21図21は、第4の実施形態に係り、半導体集積回路を有するインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体集積回路を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、繰り返しの説明は適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体集積回路1の全体構成を示すブロック図である。半導体集積回路1は、サンプルホールド回路3と、AD(Analog to Digital)変換器5と、クロック生成回路7とを有する。サンプルホールド回路3は、第1耐圧のデバイス31と、キャパシタ32と、第1耐圧よりも高い第2耐圧のデバイス33とを有する。第1耐圧のデバイス31は、低耐圧(LV)のデバイス(以下、低耐圧デバイスと呼ぶ)に相当する。第2耐圧のデバイス33は、高耐圧(HV)のデバイス(以下、高耐圧デバイスと呼ぶ)に相当する。耐圧とは、機器や電子部品に加えることができる電圧の限界値を意味する。具体的には、耐圧は定格等で決められた電圧値等である。第1耐圧は、例えば、1.5ボルトである。また、第2耐圧は、例えば、5.5ボルトである。図1において、1点鎖線Lの右側は第1耐圧に対応する領域(以下、LVドメインと呼ぶ)であり、1点鎖線Lの左側は第2耐圧に対応する領域(以下、HVドメインと呼ぶ)である。
【0010】
図1には、説明の便宜上、サンプルホールド回路3への入力端子2と、サンプルホールド回路3からの出力端子4と、クロック生成回路7への入力端子6とが図示されている。なお、図1は、説明を簡便にするため、シングルエンドの構成で記載されているが、本実施形態は、差動構成に対しても適用可能である。入力端子2は、サンプルホールド回路3へ入力される入力信号Vinに関する端子である。出力端子4は、サンプルホールド回路3から出力される出力信号Voutに関する端子である。入力端子6は、クロック生成回路7へ入力される基準クロック信号fclkに関する端子である。基準クロック信号fclkは、例えば、LVドメインに配置されたPLL(Phase Locked Loop)回路などにより生成される。なお、基準クロック信号fclkを生成するPLL回路等が配置されるドメインは、LVドメインに限定されず、HVドメインに配置されてもよい。
【0011】
サンプルホールド回路3の後段にはAD変換器5が接続される。AD変換器5は、サンプルホールド回路3から出力された出力信号Voutに基づいて、デジタルデータ(以下、ADC出力デジタルコードと呼ぶ)を生成する。なお、サンプルホールド回路3は、デルタシグマ(ΔΣ)型AD変換器やインクリメンタルデルタシグマ(ΔΣ)型AD変換器に適用することが可能である。デルタシグマ型AD変換器およびインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器については、第3の実施形態および第4の実施形態において、それぞれ説明する。なお、第1の実施形態における半導体集積回路1は、サンプルホールド回路3とクロック生成回路7とにより実現されてもよい。このとき、AD変換器には、当該半導体集積回路が搭載される。また、サンプルホールド回路3は、スイッチトキャパシタ(Switched Capacitor)回路とも称される。このとき、スイッチトキャパシタは、サンプルホールド回路3とクロック生成回路7とを有する半導体集積回路により実現されてもよい。
【0012】
低耐圧デバイス31は、第1スイッチ素子Sw1と第2スイッチ素子Sw2とを有する。第1スイッチ素子Sw1および第2スイッチ素子Sw2は、例えば、低耐圧のMOSトランジスタにより構成される。高耐圧デバイス33は、第3スイッチ素子Sw3と第4スイッチ素子Sw4とを有する。第3スイッチ素子Sw3および第4スイッチ素子Sw4は、例えば、高耐圧のMOSトランジスタにより構成される。
【0013】
第1スイッチ素子Sw1の一端はノードn1に接続され、第1スイッチ素子Sw1の他端はコモンモード電圧CMLに接続される。コモンモード電圧CMLは、例えば、0.5ボルトである。第1スイッチ素子Sw1は、第1クロック信号CS1のうち第1スイッチ素子Sw1に関する信号(以下、第1スイッチ信号と呼ぶ)により導通状態または遮断状態となる。より詳細には、第1スイッチ素子Sw1は、第1スイッチ信号がHレベルの時は導通状態となり、Lレベルの時は遮断状態となる。
【0014】
第2スイッチ素子Sw2の一端は出力端子4に接続され、第2スイッチ素子Sw2の他端はノードn1に接続される。第2スイッチ素子Sw2は、第1クロック信号CS1のうち第2スイッチ素子Sw2に関する信号(以下、第2スイッチ信号と呼ぶ)により導通状態または遮断状態となる。より詳細には、第2スイッチ素子Sw2は、第1スイッチ信号がHレベルの時は導通状態となり、Lレベルの時は遮断状態となる。
【0015】
第3スイッチ素子Sw3の一端は入力端子2に接続され、第3スイッチ素子Sw3の他端はノードn2に接続される。第3スイッチ素子Sw3は、第2クロック信号CS2のうち第3スイッチ素子Sw3に関する信号(以下、第3スイッチ信号と呼ぶ)により導通状態または遮断状態となる。より詳細には、第3スイッチ素子Sw3は、第3スイッチ信号がHレベルの時は導通状態となり、Lレベルの時は遮断状態となる。
【0016】
第4スイッチ素子Sw4の一端はノードn2に接続され、第4スイッチ素子Sw4の他端はコモンモード電圧CMHに接続される。コモンモード電圧CMHは、例えば、2.5ボルトである。第4スイッチ素子Sw4は、第2クロック信号CS2のうち第4スイッチ素子Sw4に関する信号(以下、第4スイッチ信号と呼ぶ)により導通状態または遮断状態となる。より詳細には、第4スイッチ素子Sw4は、第4スイッチ信号がHレベルの時は導通状態となり、Lレベルの時は遮断状態となる。
【0017】
キャパシタ32は、入力信号Vinをサンプルしてホールドするためのコンデンサである。キャパシタ32の一端はノードn1に接続され、キャパシタ32の他端はノードn2に接続される。
【0018】
図2は、クロック生成回路7における構成の一例を示す図である。クロック生成回路7は、第1ノンオーバーラップ信号生成回路71と、第1レベルアップ回路73と、第2レベルアップ回路75と、遅延調整回路77と、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79と、レベルダウン回路81と、位相差検出器83と、ループフィルタ85と、マスク信号生成回路87とを有する。クロック生成回路7は、サンプルホールド回路3と同様にHVドメインとLVドメインとを有する。
【0019】
クロック生成回路7において、LVドメインからHVドメインへの信号の変換は、第1レベルアップ回路73および第2レベルアップ回路75で示されるレベルアップ回路により実行される。レベルアップ回路は、第2耐圧(高耐圧)の電圧レベルに整合するように、LVドメインにおける信号の電圧レベルを増大させる。例えば、レベルアップ回路は、LVドメインにおける1ボルトを示す信号の振幅を、5ボルトに対応する振幅に増大する。また、クロック生成回路7において、HVドメインからLVドメインへの信号の変換は、レベルダウン回路81により実行される。レベルダウン回路81は、低耐圧の電圧レベルに整合するように、HVドメインにおける信号の電圧レベルを低減させる。例えば、レベルダウン回路81は、HVドメインにおける5ボルトを示す信号の振幅を、1ボルトに対応する振幅に低減する。レベルアップ回路およびレベルダウン回路81により、LVドメインとHVドメインとにおける信号の伝達が実現される。
【0020】
一般的に、動作可能周波数は、高耐圧なデバイスになるに従いより低くなる。すなわち、第2耐圧側の高耐圧のデバイスは、第1耐圧側の低耐圧デバイス31よりも低速である。また、第1耐圧側の低耐圧なデバイスの基準クロック信号fclk1と第2耐圧側の高耐圧なデバイスの基準クロック信号fclk2とが各々、別のクロックソースから供給された場合、半導体集積回路1でのクロック生成回路において、両基準クロック信号fclk1とfclk2との相対関係を制御するのは困難な可能性が高い。このため、第1の実施形態では、クロック生成回路7における第1耐圧側の低耐圧なデバイスは、基準クロック信号fclkに基づいて、第1耐圧のデバイス31に供給される第1クロック信号CS1を生成する。また、クロック生成回路7における第2耐圧側の高耐圧なデバイスは、第1クロック信号CS1に基づいて、高耐圧デバイス33に供給される第2クロック信号CS2を生成する。なお、クロック生成回路7における第2耐圧側の高耐圧なデバイスは、基準クロック信号fclkの電圧レベルをレベルアップ回路によりシフトし、シフトされた基準クロック信号を用いてもよい。
【0021】
これらのことから、第1耐圧側の低耐圧デバイス31と第2耐圧側の高耐圧デバイス33とにおけるクロック周波数および位相の相対関係が明確となり、制御が容易となる。すなわち、クロック生成回路7は、第1クロック信号CS1及び第2クロック信号CS2を、それぞれ第1耐圧側、及び、第2耐圧側のデバイスで生成する。これにより、第1耐圧側、及び、第2耐圧側それぞれのデバイスの耐圧を満たすようにすることが可能となる。
【0022】
第1ノンオーバーラップ信号生成回路71は、入力端子6から入力された基準クロック信号fclkを用いて、マスク信号生成回路87によりマスク処理が実施される前のクロック信号(以下、マスク前クロック信号と呼ぶ)を生成する。マスク前クロック信号は、
第1スイッチ信号のHレベルと第2スイッチ信号のHレベルとが重複しないクロック信号である。マスク前クロック信号により、第1スイッチ素子Sw1の導通状態と第2スイッチ素子Sw2の導通状態とは、オーバーラップしないように制御される。
【0023】
第1レベルアップ回路73は、マスク前クロック信号の電圧レベルを、HVドメインに整合するように増大させる。具体的には、第1レベルアップ回路73は、第1スイッチ信号の振幅を示す電圧値と第2スイッチ信号の振幅を示す電圧値とを、大きくする。これにより、第1レベルアップ回路73は、第1スイッチ信号および第2スイッチ信号の電圧レベルを第2耐圧に関する電圧レベルにシフトする。
【0024】
第2レベルアップ回路75は、ループフィルタ85から出力された直流電圧の電圧レベルを、HVドメインに整合するように増大させる。ループフィルタ85から出力された直流電圧は、位相差検出器83から出力された位相誤差信号に応じた電圧値となる。具体的には、第2レベルアップ回路75は、直流電圧の値を、大きくする。これにより、第2レベルアップ回路75は、直流電圧の電圧レベルを第2耐圧に関する電圧レベルにシフトする。なお、ループフィルタ85からの出力された直流電圧が、遅延調整回路77で用いられるトランジスタの動作点を超える電圧であれば、当該直流電圧は、レベルアップされずに遅延調整回路77に直接入力されてもよい。このとき、第2レベルアップ回路75は不要となる。
【0025】
遅延調整回路77は、第2クロック信号CS2の生成において、第2クロック信号CS2を遅延させて第2クロック信号CS2の位相を第1クロック信号CS1の位相に近づける調整を行う。すなわち、遅延調整回路77は、位相誤差信号に応じた遅延量で第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成する。具体的には、遅延調整回路77は、ループフィルタ85から出力された直流電圧を用いて、第1レベルアップ回路73によりHVドメインの電圧レベルに変換されたマスク前クロック信号を遅延させる。遅延調整回路77の回路例は、遅延調整の動作に関連させて後程説明する。また、図2において、遅延調整回路77は第2レベルアップ回路75の後段に設けられているが、第2レベルアップ回路75の前段、または第2レベルアップ回路75の前段および後段に設けられていてもよい。これらの場合については、変形例において後述する。
【0026】
第2ノンオーバーラップ信号生成回路79は、遅延されたマスク前クロック信号を用いて、第3スイッチ信号のHレベルと第4スイッチ信号のHレベルとが重複しないように、第3スイッチ信号と第4スイッチ信号とを生成する。これにより、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79は、第3スイッチ信号と第4スイッチ信号とを有する第2クロック信号CS2を生成する。第2クロック信号CS2により、第3スイッチ素子Sw3の導通状態と第4スイッチ素子Sw4の導通状態とは、オーバーラップしないように制御される。
【0027】
レベルダウン回路81は、第2クロック信号CS2の電圧レベルを第1耐圧に関するレベルにシフトする。すなわち、レベルダウン回路81は、低耐圧の電圧レベルに整合するように、第2クロック信号CS2の電圧レベルを低減させる。以下、電圧レベルが低減された第2クロック信号CS2、すなわち第2クロック信号CS2のレベルダウン信号を低耐圧クロック信号と呼ぶ。
【0028】
位相差検出器83は、レベルダウン回路81から出力された低耐圧クロック信号の位相と、第1ノンオーバーラップ信号生成回路71から出力されたマスク前クロック信号の位相とを比較する。当該比較により、位相差検出器83は、低耐圧クロック信号とマスク前クロック信号との位相差を検出する。これにより、位相差検出器83は、レベルダウン回路81から出力された第2クロック信号のレベルダウン信号と第1クロック信号との位相差に対応する位相誤差信号を生成する。位相差検出器83から出力された位相誤差信号は、直流電圧である。位相誤差信号は、周波数リップル成分を有することがある。なお、位相差検出器83は、LVドメインに配置されているが、HVドメインに配置されてもよい。位相差検出器83がいずれの電源ドメインに配置される場合であっても、位相差検出器83に入力される信号は、位相差検出器83が配置された電源ドメインに対して共通化する必要がある。
【0029】
ループフィルタ85は、位相誤差信号における周波数リップル成分を除去し、位相誤差信号を平滑化する。これにより、周波数リップル成分が除去され直流電圧は、第2レベルアップ回路75に入力される。
【0030】
マスク信号生成回路87は、低耐圧クロック信号とマスク前クロック信号とに基づいて、第1クロック信号CS1を生成する。マスク処理を実行するマスク信号生成回路87は、例えば、NANDゲートもしくはANDゲートの組み合わせたロジック回路で実現される。
【0031】
具体的には、マスク信号生成回路87は、第2スイッチ信号におけるHレベルの期間と、第3スイッチ信号におけるHレベルの期間との重複期間(以下、第1重複期間と呼ぶ)が現れないように、マスク前クロック信号に対してマスク処理を実行する。当該調整により、サンプルホールド回路3におけるサンプルホールド機能がサンプルに関するショートにより不能(NG)状態となることを防ぐことができる。また、マスク信号生成回路87は、第1スイッチ信号におけるHレベルの期間と、第4スイッチ信号におけるHレベルの期間との重複期間(以下、第2重複期間と呼ぶ)が現れないように、マスク前クロック信号を調整する。当該調整により、サンプルホールド回路3におけるサンプルホールド機能がホールドに関するショートにより不能(NG)状態となることを防ぐことができる。以下、サンプルホールド機能が不能状態となる期間を不能期間と呼ぶ。マスク信号生成回路87は、低耐圧クロック信号を用いて、第1重複期間および第2重複期間を含む不能期間をマスク前クロック信号に対してマスク(遮蔽)することで、第1クロック信号CS1を生成する。
【0032】
図3は、サンプルホールド回路3における不能期間を説明するための図である。図3に示す不能期間は、マスク信号生成回路87および遅延調整回路77が搭載されていないクロック生成回路から出力された第1クロック信号と第2クロック信号とによる第1乃至第4スイッチ素子の動作において現れる。図3に示すように、第3スイッチ素子Sw3の動作において、第1レベルアップ回路73や第2ノンオーバーラップ信号生成回路79等により発生した回路遅延DPSが現れる。同様に、図3に示すように、第4スイッチ素子Sw4の動作において、第1レベルアップ回路73や第2ノンオーバーラップ信号生成回路79等により発生した回路遅延DPHが現れる。
【0033】
マスク信号生成回路87および遅延調整回路77がクロック生成回路に未搭載である場合、図3に示すように、第2スイッチ素子Sw2がON状態となるホールド期間LVHPの一部と、第3スイッチ素子Sw3がON状態となるサンプル期間HVSPの一部とは、第1重複期間FNG1において重複する。さらに、マスク信号生成回路87および遅延調整回路77がクロック生成回路に未搭載である場合、図3に示すように、第1スイッチ素子Sw1がON状態となるサンプル期間LVSPの一部と、第4スイッチ素子Sw4がON状態となるホールド期間HVHPの一部とは、第2重複期間FNG2において重複する。マスク信号生成回路87は、第1重複期間FNG1と第2重複期間FNG2とを含むサンプルホールド不能期間においてマスク前クロック信号をマスク(遮蔽)することで、サンプルホールド不能期間を解消する。
【0034】
図4は、サンプル期間とホールド期間が減少する一例を示す図である。サンプル期間とホールド期間との減少は、マスク信号生成回路87が搭載され、遅延調整回路77が搭載されていないクロック生成回路から出力された第1クロック信号と第2クロック信号とによる第1乃至第4スイッチ素子の動作において現れる。サンプルホールド不能期間(FNG1およびFNG2)がマスク信号生成回路87により遮蔽されるため、サンプルホールド回路3における実質的なサンプル期間およびホールド期間は減少する。
【0035】
図4に示すような場合、サンプル期間の減少により、サンプルホールド回路3への入力電圧が目標となる電圧値(以下、目標値と呼ぶ)に整定されるまでの時間、すなわちセトリング時間が不足することがある。セトリング時間の不足は、入力電圧が目標値に到達する前にサンプリングが中断されるため、サンプルホールド回路3から出力される電圧の精度が低下する要因となる。
【0036】
図5は、サンプルホールド回路3の動作の一例を示す図である。サンプルホールド回路3の動作は、第1クロック信号CS1と遅延調整回路77による遅延調整後における第2クロック信号CS2とを用いる。図5に示すように、クロック生成回路7におけるHVドメインにおける回路遅延は、遅延調整回路77による遅延調整により、第1クロック信号CS1の1周期後において解消されている。すなわち、第1クロック信号CS1の1周期後において、第1クロック信号CS1と第2クロック信号CS2とは同位相となる。これにより、図5に示すように、AD変換器5で利用可能なサンプル動作の期間は、図4に比べて増加している。
【0037】
図6は、クロック生成回路7から出力された第1クロック信号CS1と第2クロック信号CS2とによる第1乃至第4スイッチ素子の動作の一例を示す図である。図6に示すように、遅延調整がされた第2クロック信号CS2により、第3スイッチ素子Sw3と第4スイッチ素子Sw4とにおけるONのタイミングは、遅延量ADAだけ遅延している。これにより、図6に示すように、第1スイッチ素子Sw1と第3スイッチ素子Sw3とにおける動作タイミングと、第2スイッチ素子Sw2と第4スイッチ素子Sw4とにおける動作タイミングとは同期する。これらのことから、サンプルホールド回路3におけるサンプル期間とホールド期間とは図4に比べて増加し、AD変換器5の性能は向上する。また、図6に示すように、マスク前クロック信号は、第1クロック信号CS1に相当するものとなる。
【0038】
以上、半導体集積回路1における構成について説明した。以下、位相差の検出と検出された位相差に基づく遅延調整との動作(以下、遅延調整動作と呼ぶ)について説明する。図7は、遅延調整動作における動作手順の一例を示す図である。
【0039】
(遅延調整動作)
(ステップS701)
位相差検出器83は、低耐圧クロック信号とマスク前クロック信号との位相差を検出する。検出された位相差の基準は、マスク前クロック信号の位相である。
【0040】
(ステップS702)
位相差と予め設定された所定の範囲(以下、位相範囲と呼ぶ)とが比較される。位相差が位相範囲内である場合(ステップS702のYES)、ステップS704の処理が実行される。位相差が位相範囲外である場合(ステップS702のNO)、ステップS703の処理が実行される。
【0041】
(ステップS703)
検出された位相差に応じて位相誤差信号が生成される。生成された位相誤差信号に基づいて、遅延量が調整される。調整された遅延量に従って、第2クロック信号CS2が生成される。
【0042】
図8は、遅延調整回路77の一例を示す回路図である。図8に示す回路における複数のトランジスタは、第2耐圧の性能すなわち高耐圧性を有する。第1レベルアップ回路73からの出力線OL1は、入力ノードNI1に電気的に接続される。PMOSトランジスタPT1およびNMOSトランジスタNT1は、インバータ接続され、共通ゲートが入力ノードNI1に電気的に接続され、共通ドレインが中間ノードMN1に電気的に接続される。
【0043】
中間ノードMN1は、次段のインバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとにおける入力ノードに、電気的に接続される。インバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとは、偶数段、例えば2n(nは自然数)に亘って繰り返される。2n段目にインバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとにおける共通ドレインNF1は、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79に電気的に接続される。
【0044】
第2レベルアップ回路75からの出力線OL2は、(2n+1)段に亘って配置された(2n+1)個のNMOSトランジスタ各々のゲートに電気的に接続される。(2n+1)個のNMOSトランジスタ各々のソースは、接地電位に電気的に接続される。(2n+1)個のNMOSトランジスタのうち1段目のNMOSトランジスタNTD1のドレインは、ノードN1に電気的に接続される。(2n+1)個のNMOSトランジスタのうち2段目のNMOSトランジスタNTD2のドレインは、1段目においてインバータ接続されたNMOSトランジスタNT1のソースに電気的に接続される。3乃至(2n+1)個のNMOSトランジスタのドレインは、2乃至(2n)段目においてインバータ接続されたNMOSトランジスタのドレインに、1対1で電気的に接続される。
【0045】
PMOSトランジスタCMPT1と(2n)個のPMOSトランジスタ各々とは、カレントミラー回路を形成する。PMOSトランジスタCMPT1と(2n)個のPMOSトランジスタとにおけるソースは、ともに電源電位に電気的に接続される。PMOSトランジスタCMPT1におけるドレインは、ノードN1に電気的に接続され、ゲートはノードN2に電気的に接続される。ノードN1とノードN2とは電気的に接続される。ノードN2は、(2n)個のPMOSトランジスタ各々のソースと電気的に接続される。(2n)個のPMOSトランジスタのうちPMOSトランジスタCMPT2におけるドレインは、1段目においてインバータ接続されたPMOSトランジスタPT1のソースに電気的に接続される。2乃至(2n)個のPMOSトランジスタのドレインは、2乃至(2n)段目においてインバータ接続されたPMOSトランジスタのドレインに、1対1で電気的に接続される。
【0046】
第2レベルアップ回路75から出力された直流電圧は、出力線OL2に電気的に接続された(2n+1)個のNMOSトランジスタ各々のゲートに印加される。直流電圧の印加により、インバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとに対してON抵抗が発生する。ON抵抗の値は、直流電圧の値に依存する。これにより、ループフィルタ85から出力された直流電圧の値すなわち位相差に応じて、遅延調整回路77における入出力応答の時定数が変化する。このため、遅延調整回路77は、位相差に対応する直流電圧の値による遅延量に応じて第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成する。本ステップにおける処理の後、ステップS701とステップS702との処理が繰り返される。
【0047】
(ステップS704)
位相差が位相範囲内である場合(ステップS702のYES)、遅延量がロックされる。すなわち、ループフィルタから出力された直近の直流電圧が、ロックされる。ロックされた遅延量すなわち直近の直流電圧を用いて、第2クロック信号CS2が生成される。サンプルホールド回路3は、第1クロック信号CS1と生成された第2クロック信号CS2とを用いて、入力信号Vinに対してサンプルホールド機能を実行する。
【0048】
第1の実施形態によれば、高耐圧デバイス33の制御に関する第2クロック信号CS2の生成において、第2クロック信号CS2を遅延させて第2クロック信号CS2の位相を低耐圧デバイス31の制御に関する第1クロック信号CS1の位相に近づける調整を行った。その結果、図5および図6に示すように第1クロック信号CS1と第2クロック信号CS2との位相差を無くすように制御することで、第1スイッチ素子Sw1がON状態となるサンプル期間LVSPと第3スイッチ素子Sw3がON状態となるサンプル期間HVSPとが重なる期間を増やすこと、例えば一致させることができる。これにより、図4に示すサンプル期間に比べて第1の実施形態ではセトリング時間の不足を改善することができ、サンプルホールド回路3からの出力の精度を向上させることができる。これらのことから、第1の実施形態によれば、マイクロプロセッサおよびセンサなどにおけるAD変換器5の性能を向上させることができる。これにより、サンプルホールド回路3の入出力間で電気的な耐圧が異なる場合において、高速動作を実現しつつ精度を向上可能な半導体集積回路1を提供することができる。
【0049】
具体的には、第2クロック信号CS2の電圧レベルを第1耐圧に関するレベルにシフトし、第2クロック信号CS2と第1クロック信号CS1との位相差を検出し、検出された位相差に相当する位相誤差信号の電圧レベルと第1クロック信号CS1の電圧レベルとを第2耐圧に関する電圧レベルにシフトし、位相誤差信号に応じた遅延量で第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成した。これにより、高耐性と、高速動作および高精度とを両立が可能となり、サンプルホールド回路3への信号の入出力間で電気的な耐圧が異なる場合において、信頼性の低下を抑制することができる。また、遅延調整回路77をHVドメインに配置することで、第1レベルアップ回路73などによる遅延を効果的に解消することができる。
【0050】
(第1の変形例)
第1の変形例と第1の実施形態との相違は、遅延調整回路76がLVドメインに配置されていることにある。図9は、第1の変形例におけるクロック生成回路7の構成の一例を示す図である。ループフィルタ85から出力された直流電圧と、第1ノンオーバーラップ信号生成回路71から出力された第1クロック信号CS1とは、LVドメインに配置された遅延調整回路76に出力される。遅延調整回路76は、直流電圧の値に応じて第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成する。第1の変形例における遅延調整回路76の構成は、図8に示す遅延調整回路77の構成と同様である。
【0051】
第1の変形例で用いられる遅延調整回路76における複数のトランジスタは、第1耐圧の性能すなわち低耐圧性を有する。遅延調整回路76から出力された第2クロック信号CS2の電圧レベルは、レベルアップ回路74においてシフトされる。電圧レベルがシフトされた第2クロック信号CS2は、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79に出力される。他の構成は、第1の実施形態と同様なため、説明は省略する。第1の変形例では、遅延調整回路76をLVドメインに配置し、レベルアップ回路を一つ削減した。その結果、第1の変形例では、半導体集積回路1の面積を低減することができるという効果を奏する。
【0052】
(第2の変形例)
第2の変形例と第1の実施形態との相違は、第1遅延調整回路76がLVドメインに配置され、かつ第2遅延調整回路78がHVドメインに配置されていることにある。図10は、第2の変形例におけるクロック生成回路7の構成の一例を示す図である。図10に示す半導体集積回路1は、図2図9とを組み合わせた構成となる。なお、ループフィルタ85から出力される直流電圧は、LVドメインにおける遅延とHVドメインにおける遅延とに応じて、適宜調整される。他の構成は、第1の実施形態および第1の変形例と同様なため、説明は省略する。第2の変形例では、LVドメインに第1遅延調整回路76を配置し、HVドメインにおいて第2遅延調整回路77を配置した。その結果、信頼性の低下をさらに抑制可能な半導体集積回路1を提供することができるという効果を奏する。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態との相違は、第2クロック信号CS2の位相を第1クロック信号CS1の位相に近づけるように調整されたデジタルコードに応じた遅延量で第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成することにある。調整されたデジタルコードは、後述の遅延コード設定動作において事前に選択されたADC出力デジタルコードに対応する。
【0054】
図11は、第2の実施形態に係るクロック生成回路7における構成の一例を示す図である。クロック生成回路7は、第1ノンオーバーラップ信号生成回路71と、第1レベルアップ回路73と、第2レベルアップ回路75と、遅延調整回路78と、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79と、マスク信号生成回路87とを有する。クロック生成回路7は、サンプルホールド回路3と同様にHVドメインとLVドメインとを有する。以下、第1の実施形態における構成と異なる構成要素等について説明する。なお、第2の実施形態における半導体集積回路1は、サンプルホールド回路3とクロック生成回路7とにより実現されてもよい。また、スイッチトキャパシタは、サンプルホールド回路3とクロック生成回路7とを有する半導体集積回路により実現されてもよい。
【0055】
第2レベルアップ回路75には、高耐圧デバイス33へ入力信号Vinの入力前のトレーニング期間において選択されたADC出力デジタルコード(以下、選択コードと呼ぶ)に対応する遅延デジタルコード(以下、遅延コードと呼ぶ)SDCが入力端子8から入力される。トレーニング期間は、サンプルホールド回路3への入力信号Vinの入力前であって、遅延コードSDCを設定するための期間である。トレーニング期間における遅延コードSDCの設定については、後程説明する。遅延コードSDCは、トレーニング期間において選択されたADC出力デジタルコードに基づいて、後述の制御回路により設定される。設定された遅延コードSDCは、第1クロック信号CS1に対する第2クロック信号CS2の遅延量に相当する。また、設定された遅延コードSDCは、遅延調整回路78における複数のトランジスタのON/OFFを制御するためのビット列を有する。当該ビット列における一つのビットにおける1は、トランジスタの動作電圧であるHighに対応する。また、当該ビット列における一つのビットにおける0は、トランジスタの不動作電圧であるLowに対応する。以下、説明を簡単にするためにビット列の列数は、64であるものとして説明するが、これに拘泥されない。ビット列の列数は、遅延量の総数に対応する。第2レベルアップ回路75は、設定された遅延コードSDCの電圧レベルを、HVドメインに整合するように増大させる。具体的には、第2レベルアップ回路75は、LVドメインでのHigh/Lowを示す遅延コードSDCを、HVドメインでのHigh/Low信号にレベルアップする。
【0056】
遅延調整回路78は、第2クロック信号CS2の生成において、第2クロック信号CS2を遅延させて第2クロック信号CS2の位相を第1クロック信号CS1の位相に近づける調整を行う。すなわち、遅延調整回路78は、第2クロック信号CS2の位相を第1クロック信号CS1の位相に近づけるように調整されたデジタルコード、すなわち設定された遅延コードSDCに応じた遅延量で第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成する。
【0057】
図12は、遅延調整回路78の一例を示す回路図である。図12に示す回路における複数のトランジスタ、複数の抵抗および複数のキャパシタは、第2耐圧の性能すなわち高耐圧性を有する。第1レベルアップ回路73からの出力線OL3は、入力ノードNI2に電気的に接続される。PMOSトランジスタPT1およびNMOSトランジスタNT1は、インバータ接続され、共通ゲートが入力ノードNI2に電気的に接続され、共通ドレインが中間ノードMN2に電気的に接続される。中間ノードMN2は、ビット列の列数(64)に相当する64個のノードCN1-1乃至CN1-64(不図示)と電気的に直列接続される。不図示のノードCN1-64は、次段のインバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとにおける入力ノードに、電気的に接続される。次段のインバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとにおける共通ドレインNF2は、ビット列の列数(64)に相当する複数のノードCN2-1乃至CN2-64(不図示)と電気的に直列接続される。不図示のノードCN2-64は、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79に電気的に接続される。
【0058】
PMOSトランジスタPT1のソースは、ノードN3-1と電気的に接続される。PMOSトランジスタPT1-1において、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうち1番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、抵抗RP1-1の一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードN3-1と電気的に接続される。抵抗R1-1の他端は、電源電位と電気的に接続される。すなわち、ビット列においてi(iは、1乃至64の自然数)番目のビットに関して、PMOSトランジスタPT1-iにおいて、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうちi番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、抵抗RP1-iの一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードN3-iと電気的に接続される。抵抗R1-iの他端は、電源電位と電気的に接続される。ノードN3-1乃至ノードN3-64(不図示)は、電気的に直列接続される。
【0059】
NMOSトランジスタNT1のソースは、ノードN4-1と電気的に接続される。NMOSトランジスタNT1-1において、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうち1番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、抵抗RPN1-1の一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードN4-1と電気的に接続される。抵抗RN1-1の他端は、接地電位と電気的に接続される。同様に、ビット列がi番目のビットに関して、NMOSトランジスタNT1-iにおいて、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうちi番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、抵抗RN1-iの一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードN4-iと電気的に接続される。抵抗RN1-iの他端は、接地電位と電気的に接続される。ノードN4-1乃至ノードN4-64(不図示)は、電気的に直列接続される。
【0060】
NMOSトランジスタNT2-1において、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうち1番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、キャパシタC1の一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードCN1-1と電気的に接続される。キャパシタC1の他端は、接地電位と電気的に接続される。同様に、ビット列がi番目のビットに関して、NMOSトランジスタNT2-iにおいて、ゲートは、第2レベルアップ回路75から出力されたビット列のうちi番目のビットによる出力線と電気的に接続され、ソースは、キャパシタCiの一端と電気的に接続され、ドレインは、ノードCN1-iと電気的に接続される。キャパシタCiの他端は、接地電位と電気的に接続される。
【0061】
上記抵抗に電気的に接続されたトランジスタ、および上記キャパシタに電気的に接続されたトランジスタなどによる電気的な接続関係は、次段のインバータ接続されたPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとについても同様に繰り返される。図12において、第2レベルアップ回路75からの出力は、CNT_R1乃至CNT_R64(不図示)と、CNT_C1乃至CNT_C64(不図示)として示されている。例えば、図12において、CNT_R1に接続されたPMOSトランジスタPT1-1のゲートおよびNMOSトランジスタNT1-1のゲートには、ビット列における1番目のビットにおけるHighもしくはLowの電圧が印加される。また、CNT_C1に接続されたNMOSトランジスタNT1-1のゲートには、ビット列における1番目のビットにおけるHighもしくはLowの電圧が印加される。
【0062】
遅延調整回路78は、トレーニング期間において後述の制御回路により設定された遅延コードSDCに従って、図12に示すインバータ接続に関するPMOSトランジスタとNMOSトランジスタを除く複数のトランジスタ(以下、遅延調整トランジスタと呼ぶ)のON/OFF実行する。これにより、遅延調整回路78における抵抗および静電容量が変化し、変化した抵抗および静電容量に応じて、遅延調整回路77における入出力応答の時定数が変化する。遅延調整回路78は、時定数の変化に従って、第1クロック信号CS1に対する遅延調整を実行することで、第2クロック信号CS2を生成する。
【0063】
以下、入力信号Vinに対するサンプルホールド機能において用いられる遅延コードSDCを設定する動作(以下、遅延コード設定動作と呼ぶ)について説明する。遅延コード設定動作は、トレーニング期間において実行される。トレーニング期間は、例えば、半導体集積回路1の出荷前や半導体集積回路1の起動時などに設けられる。図13は、遅延コード設定動作に関する半導体集積回路1の構成の一例を示す図である。図13に示すように、半導体集積回路1は、制御回路11、記憶回路13と、選択回路15とをさらに有する。
【0064】
図13に示すように、トレーニング期間において、サンプルホールド回路3には、テスト信号VTinが入力される。半導体集積回路1は、テスト信号VTinに対して、第1クロック信号CS1に対する遅延量を変化させて得られた複数のADC出力デジタルコードを取得する。AD変換器5は、ADC出力デジタルコードを記憶回路13に出力する。
【0065】
制御回路11は、トレーニング期間において、異なる複数の遅延量にそれぞれ対応する複数の遅延コードを設定する。複数の遅延量各々は、第1クロック信号CS1に対する第2クロック信号CS2の遅延時間に相当する。複数の遅延量は、例えば、第1クロック信号CS1の開始時点から、第1クロック信号CS1の1周期を遅延量の総数(例えば64など)で分割した複数の時点までの時間間隔に対応する。遅延量の総数は、予め設定される。上述のように、遅延量の総数は64であるものとして説明する。このとき、制御回路11は、設定された64種類の遅延コードを記憶する。また、遅延コードは、遅延調整回路78において、遅延調整トランジスタのON/OFFを制御するためのビット列に相当する。
【0066】
制御回路11は、トレーニング期間において、入力端子2へテスト信号VTinを入力するとともに、複数の遅延コード各々を入力端子8へ入力する。例えば、制御回路11は、遅延量を生じさせない遅延コード(以下、第1遅延コードと呼ぶ)を設定する。制御回路11は、設定された第1遅延コードを第2レベルアップ回路75へ入力するとともに、テスト信号VTinを高耐圧デバイス33に入力する。制御回路11は、第1遅延コードに対応するADC出力デジタルコードが記憶回路13に記憶されたことに応答して、第1クロック信号CS1の1周期の1/64倍だけ遅延させる遅延量に相当する第2遅延コードを、第2レベルアップ回路75へ入力するとともに、テスト信号VTinを高耐圧デバイス33に入力する。
【0067】
すなわち、制御回路11は、トレーニング期間において、第1クロック信号CS1の1周期のi/64倍だけ遅延させる遅延量に相当する第i遅延コードに対応するADC出力デジタルコードが記憶回路13に記憶されたことに応答して、第1クロック信号CS1の1周期の(i+1)/64倍だけ遅延させる遅延量に相当する第(i+1)遅延コードを、第2レベルアップ回路75へ入力するとともに、テスト信号VTinを高耐圧デバイス33に入力する。制御回路11は、ADC出力デジタルコードの記憶を契機とした遅延コードの入力およびテスト信号VTinの入力を、昇順の遅延量すなわち遅延の段数iが遅延量の総数64に到達するまで繰り返す。
【0068】
記憶回路13は、例えば、複数のフリップフロップ回路により構成される。記憶回路13は、トレーニング期間において、同一のテスト信号VTinに対して、第1クロック信号CS1に対する遅延量を変化させて得られた複数のADC出力デジタルコードを記憶する。具体的には、記憶回路13は、サンプルホールド機能において用いられた第2クロック信号CS2の遅延に関する遅延コードと関連付けて、複数のADC出力デジタルコードを記憶する。すなわち、テスト信号VTinに対して、第1クロック信号CS1に対する遅延量を変化させて得られた複数のADC出力デジタルコード各々は、複数のADC出力デジタルコード各々を取得するために用いられた遅延量に対応付けられている。記憶回路13は、テスト信号VTinに対する正解のADC出力デジタルコード(以下、正解コードと呼ぶ)を記憶する。
【0069】
選択回路15は、例えば、組み合わせのロジック回路で構成される。選択回路15は、トレーニング期間において、複数のADC出力デジタルコードのうち、正解のデジタルコードに最も近いADC出力デジタルコードを、選択コードとして選択する。選択回路15は、選択コードを制御回路11に出力する。このとき、制御回路11は、選択コードに対応する遅延コードを、設定された遅延コードSDCとして第2レベルアップ回路75に出力する。
【0070】
図14は、遅延コード設定動作での動作手順の一例を示す図である。遅延コード設定動作は、トレーニング期間において実行される。すなわち、遅延コード設定動作は、正解のデジタルコード(正解コード)に最も近い遅延量に対応する遅延コードを選択するために、入力信号VinのAD変換に対するフォアグラウンドとして実行される。以下、説明を簡便にするために、遅延の段数の昇順にADC出力デジタルコードが取得されるものとして説明するが、これに拘泥されない。例えば、遅延の段数の変更手法は、遅延コード設定動作で取得されたADC出力デジタルコードと正解コードとを用いて、例えば、バイナリーサーチや黄金分割法などが用いられてもよい。このとき、図14に示す繰り返し回数を低減することができるため、遅延コードSDCの設定に関する処理時間を短縮することができる。
【0071】
(遅延コード設定動作)
(ステップS1301)
制御回路11は、遅延の段数を示す自然数iを1に設定する。
【0072】
(ステップS1302)
制御回路11は、第i遅延コードを設定する。制御回路11は、第i遅延コードを遅延調整回路78に入力するとともに、サンプルホールド回路3における高耐圧デバイス33にテスト信号VTinを入力する。このとき、遅延調整回路78は、第i遅延コードに従って、第iの遅延量を第1クロック信号CS1に付与することで、第2クロック信号CS2を生成する。サンプルホールド回路3は、第1クロック信号CS1と生成された第2クロック信号CS2とを用いて、テスト信号VTinに対してサンプルホールドを実行する。テスト信号VTinが、例えばショートスイッチを有する差動回路においてショートスイッチをONにして出力された信号の場合、テスト信号VTinの値は、差動ゼロ(入力レンジの中間値)となる。このとき、正解のデジタルコードは、中間値に対応するADC出力デジタルコードとなる。AD変換器5は、サンプルホールドの結果を用いて、第i遅延コードに対応するADC出力デジタルコードを出力する。
【0073】
(ステップS1303)
記憶回路13は、AD変換器5から出力されたADC出力デジタルコードを、第i遅延コードと関連付けて記憶する。
【0074】
(ステップS1304)
制御回路11は、遅延の段数iが遅延量の総数nに等しいか否かを判定する。遅延の段数iが遅延量の総数nに等しくない(i≠n)場合(ステップS1304のNO)、ステップS1305の処理が実行される。遅延の段数iが遅延量の総数nに等しい(i=n)場合(ステップS1304のYES)、ステップS1306の処理が実行される。このとき、記憶回路13には、遅延量の総数に対応する複数のADC出力デジタルコードが記憶されている。なお、記憶回路13は、複数のADC出力デジタルコードに1対1で対応付けられた複数の遅延コードを記憶してもよい。
【0075】
(ステップ1305)
制御回路11は、遅延の段数iをインクリメントする。次いで、インクリメントされたiを用いて、ステップS1302乃至ステップS1304の処理が繰り返される。
【0076】
(ステップS1306)
選択回路15は、n個のADC出力デジタルコード各々と正解コードとを比較する。当該比較により、選択回路15は、n個のADC出力デジタルコードのうち、正解コードを含む所定の範囲(以下、正解範囲と呼ぶ)に含まれる一つのADC出力デジタルコードを、選択コードとして選択する。正解範囲に複数のADC出力デジタルコードが含まれる場合、選択回路15は、例えば、正解コードに合致もしくは正解コードに最も近いADC出力デジタルコードを、選択コードとして選択する。なお、選択コードは、正解コードに合致もしくは正解コードに最も近いADC出力デジタルコードに限定されず、正解範囲に含まれれば、いずれのADC出力デジタルコードが選択されてもよい。
【0077】
図15は、遅延コード設定動作が実行されるトレーニング期間DAPにおいて取得された複数のADC出力デジタルコードと遅延の段数との一例を示す図である。図15に示すように、正解コードを含む正解範囲に含まれる複数のADC出力デジタルコードが、選択回路15による選択される候補となる。図15に示すグラフは、位相差が0度に近づくにつれてADC出力デジタルコードが正解コードに収束する特性(セトリング特性)を示している。例えば、選択回路15は、正解範囲に含まれる複数のADC出力デジタルコードのうち、遅延の段数が真ん中に位置するADC出力デジタルコードを、AD変換器5の特性が向上する選択コードとして選択する。選択コードは、セトリング特性が良好なADC出力デジタルコードに対応する。
【0078】
(ステップS1307)
制御回路11は、選択されたADC出力デジタルコード(選択コード)に対応する遅延コードSDCを、第2レベルアップ回路75を介して遅延調整回路78に出力する。本ステップにより、トレーニング期間は終了する。本ステップの後、図15に示す期間PRにおいて、入力信号Vinに対してサンプルホールドが実行される。
【0079】
第2の実施形態によれば、第2クロック信号CS2の位相を第1クロック信号CS1の位相に近づけるように調整されたデジタルコード(選択コード)に応じた遅延量で第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成した。その結果、図15に示すように、セトリング特性が良好なADC出力デジタルコードを用いて設定された遅延量を第1クロック信号CS1に付与することができるため、入力信号Vinの入出力間で電気的な耐圧が異なる場合において、AD変換器5の性能を向上させることができ、信頼性の低下を抑制可能な半導体集積回路1を提供することができるという効果を奏する。
【0080】
具体的には、遅延コード設定動作において、テスト信号VTinに対して、第1クロック信号CS1に対する遅延量を変化させて得られた複数のデジタルコード各々は、複数のデジタルコード各々を取得するために用いられた遅延量に対応付けられ、複数のデジタルコードのうち、テスト信号VTinに対する正解のデジタルコードに最も近い遅延量を用いて、第2クロック信号を生成した。これにより、高耐性と、高速動作および高精度とを両立が可能となり、サンプルホールド回路3への信号の入出力間で電気的な耐圧が異なる場合において、高速動作を実現しつつ精度を向上可能な半導体集積回路1を提供することができ、例えば、AD変換器5の性能を向上させることができる。加えて、位相差検出器83およびループフィルタ85が不要となるため、半導体集積回路1の面積を低減することができる。
【0081】
(第1の変形例)
第2の実施形態の第1の変形例と第2の実施形態との相違は、遅延調整回路がLVドメインに配置されていることにある。図16は、第1の変形例におけるクロック生成回路7の構成の一例を示す図である。図17は、遅延コード設定動作に関する半導体集積回路1の構成の一例を示す図である。設定された遅延コードSDCと、第1ノンオーバーラップ信号生成回路71から出力された第1クロック信号CS1とは、LVドメインに配置された遅延調整回路80に出力される。遅延調整回路80は、設定された遅延コードSDCに応じて第1クロック信号CS1を遅延させて、第2クロック信号CS2を生成する。第1の変形例における遅延調整回路80の構成は、図12に示す遅延調整回路78の構成と同様である。
【0082】
第2の実施形態の第1の変形例において、図12に示す遅延調整回路78における複数のトランジスタ、複数の抵抗、複数のキャパシタは、第1耐圧の性能すなわち低耐圧性を有する。遅延調整回路80から出力された第2クロック信号CS2の電圧レベルは、レベルアップ回路74においてシフトされる。電圧レベルがシフトされた第2クロック信号CS2は、第2ノンオーバーラップ信号生成回路79に出力される。他の構成は、第2の実施形態と同様なため、説明は省略する。第1の変形例では、遅延調整回路78をLVドメインに配置し、1つのレベルアップ回路を削減した。その結果、第1の変形例では、半導体集積回路1の面積を低減することができるという効果を奏する。
【0083】
(第2の変形例)
第2の実施形態の第2の変形例と第2の実施形態との相違は、第1遅延調整回路がLVドメインに配置され、第2遅延調整回路がHVドメインに配置されていることにある。図18は、第2の変形例におけるクロック生成回路7の構成の一例を示す図である。図18に示すクロック生成回路7は、図11図16とを組み合わせた構成となる。図19は、遅延コード設定動作に関する半導体集積回路1の構成の一例を示す図である。設定された遅延コードSDCは、LVドメインにおける遅延とHVドメインにおける遅延とに応じて、適宜調整される。他の構成は、第2の実施形態および第2の実施形態の第1の変形例と同様なため、説明は省略する。第2の変形例では、LVドメインに第1遅延調整回路80を配置し、HVドメインに第2遅延調整回路78を配置した。その結果、第2の変形例では、信頼性の低下をさらに抑制可能な半導体集積回路1を提供することができるという効果を奏する。
【0084】
(第3の実施形態)
第3の実施形態と第1および第2の実施形態との相違は、AD変換器5としてデルタシグマ(ΔΣ)型AD変換器を用いることにある。以下、第1または第2の実施形態に係る半導体集積回路1をデルタシグマ型AD変換器の初段積分回路に適用した例を説明する。図20は、図1におけるAD変換器5を除く半導体集積回路1を有するデルタシグマ型AD変換器20の一例を示す図である。図20に示すように、デルタシグマ型AD変換器20は、初段積分回路50aと、次段積分回路50bとを有する。デルタシグマ型AD変換器20は、図20に示す回路の他に不図示の比較器、DAコンバータ、及び差動アンプなどを有する。
【0085】
初段積分回路50aは、サンプルホールド回路3と、オペアンプ52と、第2キャパシタ54を有する。オペアンプ52の反転入力端子はサンプルホールド回路3の出力端子4と接続され、非反転入力端子は第1耐圧(低耐圧)側のコモンモード電圧116に接続される。第2キャパシタ54は、オペアンプ52の反転入力端子と、オペアンプ52の出力端子53とに接続される。
【0086】
次段積分回路50bは、第3キャパシタ55と、第5スイッチ素子58と、第6スイッチ素子60と、第7スイッチ素子62と、第8スイッチ素子64と、オペアンプ56と、第4キャパシタ59を有する。第3キャパシタ55はサンプル及びホールド用のコンデンサであり、初段積分回路50aから出力された信号をサンプリングし、ホールディングを行う。
【0087】
第5乃至第8スイッチ素子58、60、62、64は、例えばMOSトランジスタにより構成されている。より具体的には、第5スイッチ素子58は、オペアンプ52の出力端子53に一端が接続され、他端が第3キャパシタ55における一端(ノードn10)に接続される。第5スイッチ素子58は、第1耐圧のデバイスから出力された第1スイッチ信号により導通状態又は遮断状態となる。
【0088】
第6スイッチ素子60は、一端が第3キャパシタ55における一端(ノードn10)に接続され、他端が第1耐圧側のデバイスのコモンモード電圧116に接続される。第6スイッチ素子60は第1耐圧のデバイスから出力された第2スイッチ信号により導通状態又は遮断状態となる。
【0089】
第7スイッチ素子62は、一端が第3キャパシタ55の他端(ノードn12)に接続され、他端が第1耐圧側のデバイスのコモンモード電圧116に接続される。第7スイッチ素子62は、基準クロック信号flckを用いて第1耐圧のデバイスから出力された第1スイッチ信号により動作する。
【0090】
第8スイッチ素子64は、一端が第3キャパシタ55の他端(ノードn12)に接続され、他端がオペアンプ56の反転入力端子に接続される。第8スイッチ素子64は、第1耐圧のデバイスから出力された第2スイッチ信号により動作する。
【0091】
オペアンプ56の反転入力端子は第8スイッチ素子64の他端に接続され、非反転入力端子は第1耐圧側のデバイスのコモンモード電圧116に接続される。第4キャパシタ59は、オペアンプ56の反転入力端子と、オペアンプ56の出力端子とに接続される。
【0092】
サンプルホールド回路3のホールド期間では、第5スイッチ素子58及び第7スイッチ素子62は、遮断状態であり、第6スイッチ素子60と第8スイッチ素子64とは導通状態である。これにより、まず、第2スイッチ素子Sw2の導通期間において、キャパシタ32に蓄積された電荷は、第2キャパシタ54に分配され、蓄電される。このとき第3キャパシタ55に蓄積された電荷は、次段の第4キャパシタ59に分配される。
【0093】
続けて、第1クロック信号がHighとなる期間では、第5スイッチ素子58及び第7スイッチ素子62は、導通状態であり、第6スイッチ素子60と第8スイッチ素子64とは遮断状態である。これにより、第2キャパシタ54に蓄積された電荷は、第3キャパシタ55に分配される。
【0094】
以上のように第3の実施形態によれば、半導体集積回路1をデルタシグマ型AD変換器20の初段積分回路50aに適用することとした。これにより、第2耐圧の入力信号Vinのホールド期間を第3キャパシタ55のホ-ルド期間に同期させることが可能となり、第2スイッチ信号の周期でサンプリングを行うデルタシグマ型AD変換器20を実現できる。
【0095】
(第4の実施形態)
第4の実施形態と第1および第2の実施形態との相違は、AD変換器5としてインクリメンタルデルタシグマ(ΔΣ)型AD変換器を用いることにある。以下、第1または第2の実施形態に係る半導体集積回路1をインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器の初段積分回路に適用した例を説明する。図21は、図1におけるAD変換器5を除く半導体集積回路1を有するインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器30の一例を示す図である。図21に示すように、インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器30は、オペアンプ52及びオペアンプ56の負帰還回路にリセットスイッチ54r、59rを更に備えた点で第3の実施形態係るデルタシグマ型AD変換器20と相違する。当該リセットは、一般的にデータレート毎に積分回路をリセット(初期化)することで、履歴の無い(過去に依存しない)AD変換を要求するアプリケーションでよく使用される。以下では、第3の実施形態係るデルタシグマ型AD変換器20と相違する点を説明する。
【0096】
初段積分回路50cは、オペアンプ52の反転入力端子と、オペアンプ52の出力端子53とにリセットスイッチ54rを更に有する。リセットスイッチ54rはリセット信号Resetにより導通状態又は遮断状態になる。すなわち、リセットスイッチ54rは、リセット信号ResetがHレベルの時に導通状態となり、Lレベルの時に遮断状態となる。リセット信号Resetの周期は、データレート周期に相当する。リセットが行われると積分回路が初期化(AD変換器が強制停止)され、リセットが解除されると、また新たな変換が開始する。
【0097】
次段積分回路50dは、オペアンプ56の反転入力端子と、オペアンプ52の出力端子53とにリセットスイッチ59rを更に有する。リセットスイッチ59rはリセットスイッチ54rと同期しており、リセット信号Resetにより導通状態又は遮断状態になる。
【0098】
このように、初段積分回路50cは、データレート周期で第2キャパシタ54をリセットすることで第3の実施形態における初段積分回路50aと相違する。同様に、次段積分回路50dは、データレート周期で第4キャパシタ59をリセットすることで第3の実施形態の、次段積分回路50dと相違する。
【0099】
以上のように第4の実施形態によれば、半導体集積回路1をインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器30の初段積分回路50cに適用することとした。これにより、第2耐圧の入力信号Vinのホールド期間を第3キャパシタ55のホ-ルド期間に同期させるとともに、第4キャパシタ59をリセットすることが可能となり、第2スイッチ信号の周期でサンプリングを行うインクリメンタルデルタシグマ型AD変換器30を実現できる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 半導体集積回路、2 サンプルホールド回路への入力端子、3 サンプルホールド回路、4 出力端子、5 AD変換器、6 クロック生成回路への入力端子、7 クロック生成回路、8 入力端子、11 制御回路、13 記憶回路、15 選択回路、20 デルタシグマ型AD変換器、30 インクリメンタルデルタシグマ型AD変換器、31 低耐圧デバイス、32 キャパシタ、33 高耐圧デバイス、52 オペアンプ、53 オペアンプの出力端子、54 第2キャパシタ、55 第3キャパシタ、56 オペアンプ、58 第5スイッチ素子、59 第4キャパシタ、60 第6スイッチ素子、62 第7スイッチ素子、64 第8スイッチ素子、71 第1ノンオーバーラップ信号生成回路、73 第1レベルアップ回路、74 レベルアップ回路、75 第2レベルアップ回路、76 遅延調整回路、77 遅延調整回路、78 遅延調整回路、79 第2ノンオーバーラップ信号生成回路、80 遅延調整回路、81 レベルダウン回路、83 位相差検出器、85 ループフィルタ、87 マスク信号生成回路、116 コモンモード電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図21