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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】グラフト共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 271/02 20060101AFI20231204BHJP
   C08F 257/02 20060101ALI20231204BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20231204BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08F271/02
C08F257/02
C08F2/06
C08F2/44 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019169790
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021046491
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】池元 結衣
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-272634(JP,A)
【文献】特開昭62-164752(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001848(WO,A1)
【文献】特開2003-226707(JP,A)
【文献】特開平05-331216(JP,A)
【文献】特開平07-228642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60;283/01;290/00-299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖とスチレンを含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造方法であって、
該製造方法は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、機溶媒の存在下で、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、スチレンを含む単量体成分をグラフト重合させる工程を含み、
該N-ビニルラクタム系単量体は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
該有機過酸化物は、パーオキシエステル、パーオキシケタール、及び、ジアルキルパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種であり、
該スチレンの含有割合が、該スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分100質量%に対して、30~100質量%であり、
該有機溶媒はアルコール系溶媒を含む
ことを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
【化1】
(式中、R 、R 、R 、R は、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。xは、0~4の整数を表す。yは、1~3の整数を表す。)
【請求項2】
N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖とスチレンを含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造方法であって、
該製造方法は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、機溶媒の存在下で、スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分をグラフト重合させる工程を含み、
該N-ビニルラクタム系単量体は、下記一般式(1)で表される化合物であり、
該有機過酸化物は、パーオキシエステル、パーオキシケタール、及び、ジアルキルパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種であり、
該スチレンの含有割合が、該スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分100質量%に対して、30~100質量%であり、
該有機溶媒は、溶媒100gに対し、該スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが10g以上溶解する溶媒を含む
ことを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
【化2】
(式中、R 、R 、R 、R は、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。xは、0~4の整数を表す。yは、1~3の整数を表す。)
【請求項3】
前記有機過酸化物は、10時間半減期温度が40~120℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト共重合体の製造方法に関する。より詳しくは、モノマー反応率が高く、グラフト率も高い、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を有するグラフト共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフト共重合体は、幹ポリマーと枝ポリマーとからなり、それらのポリマーを構成するモノマーやポリマーを種々組み合わせることにより、様々な特性を付与することができる。例えば、繊維やプラスチックに、他の重合鎖をグラフトさせることにより、新たな機能を付与することができる。このように、グラフト共重合体は、その構造を色々と設計することにより、他の機能を付与することができるため、光学材料、電子材料、繊維材料等、幅広い用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スチレン系樹脂と、N-ビニルアミド系ポリマー鎖を有するグラフト共重合体を含むことにより、帯電防止性に優れた樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-189784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなグラフト共重合体は、一般に、幹ポリマーに、枝ポリマーの原料となる単量体成分を重合させることにより製造される。例えば、特許文献1では、ポリビニルピロリドンに、過硫酸アンモニウムとイオン交換水の存在下でスチレンモノマーを重合させることによりグラフト共重合体を製造している。
【0006】
しかしながら、上記のように、ポリビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体由来の重合鎖とスチレン等の芳香族系単量体由来の重合鎖とを、それぞれ幹ポリマー又は枝ポリマーとするグラフト共重合体を製造する場合、従来の方法では、モノマーの反応率が低く、残存モノマーの量が多かったり、2-ピロリドン等の副生成物の発生量が多いという問題があった。また、グラフト率も低く、スチレン由来の成分の含有量を50%以上に増やすことも困難であり、共重合体の自由な設計が容易ではなかった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みて、モノマーの反応率が高くて残存モノマーや副生成物の量が少なく、グラフト率が高い、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を有するグラフト共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、N-ビニルアミド系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖とスチレンを含む単量体成分由来の重合鎖を、それぞれ、幹ポリマー又は枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造方法について、種々検討したところ、特定の重合開始剤と有機溶媒の存在下で、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させることにより、モノマー反応率が高く、残存モノマー量や副生成物の量が少なくなり、また、枝ポリマーのグラフト率も高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造方法であって、上記製造方法は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させる工程を含むことを特徴とするグラフト共重合体の製造方法である。
【0010】
上記グラフト共重合体の製造方法において、上記グラフト重合工程は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、スチレンを含む単量体成分をグラフト重合させる工程であることが好ましい。
【0011】
上記有機溶媒は、アルコール系溶媒を含むことが好ましい。
【0012】
上記グラフト共重合体の製造方法において、上記グラフト重合工程は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分をグラフト重合させる工程であることが好ましい。
【0013】
上記有機溶媒は、スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが溶解する溶媒を含むことが好ましい。
【0014】
上記N-ビニルラクタム系単量体は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。xは、0~4の整数を表す。yは、1~3の整数を表す。)
【0017】
上記有機過酸化物は、10時間半減期温度が40~120℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モノマー反応率が高く、グラフト率が高い、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト重合体を、極めて効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0020】
<グラフト共重合体の製造方法>
本発明のグラフト共重合体の製造方法は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト共重合体の製造方法であって、上記製造方法は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させる工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明のグラフト共重合体の製造方法が、モノマー反応率が高く、グラフト率も高く、所望の重合体を効率良く製造することができるのは、重合開始剤として有機過酸化物を使用することにより、グラフト効率を向上させることができ、残存モノマー量も少なくすることができるためと考えられる。また、有機溶媒を使用することにより、副生成物の量を少なくすることができるためと考えられる。
【0022】
本発明の製造方法により製造されるグラフト共重合体は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を有し、一方の重合鎖を幹ポリマーとし、他方の重合鎖を枝ポリマーとする重合体である。本発明の製造方法は、上記のような特定の重合鎖をそれぞれ幹ポリマー、枝ポリマーとするグラフト共重合体を効率良く製造することができる方法である。
【0023】
本発明の製造方法は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させる工程を含む。
本発明においては、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させる際に、有機過酸化物と有機溶媒を使用することを特徴とする。これらを使用することにより、従来のアゾ系の重合開始剤を使用する場合と比較して、一方の重合鎖に、他方の枝ポリマーを効率良く重合させることができる。また、残存モノマーの量が少なくなり、グラフト率が向上して、所望のグラフト共重合体を効率良く製造することができる。
【0024】
上記有機過酸化物としては、一般に、重合開始剤として使用される有機過酸化物であれば、特に限定されず、具体的には、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル;1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ビス[(t-ブチル)ペルオキシ]ペンタン酸ブチル等のパーオキシケタール;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;ジラウリルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート等が挙げられる。なかでも、水素引き抜き能が高い点で、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイドが好ましく、パーオキシエステルがより好ましく、t-ブチルパーオキシピバレートが更に好ましい。これらは1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0025】
上記有機過酸化物は、10時間半減期温度が40~120℃であることが好ましい。上記範囲の10時間半減期温度を有する有機過酸化物を使用すると、残存モノマー量をより少なくすることができる。
上記有機過酸化物は、反応温度で効率良く反応が進む点で、10時間半減期温度が45~110℃であることがより好ましく、50~100℃であることが更に好ましい。
上記10時間半減期温度とは、上記有機過酸化物の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間(半減期)が10時間となる温度のことをいう。
【0026】
上記重合開始剤は、上記有機過酸化物以外の他の重合開始剤を含んでいてもよい。
上記他の重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;過酸化水素等の過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン;ベンゾピナコール及びその誘導体等のピナコール化合物;ベンゾイン及びその誘導体等のベンゾイン化合物等が挙げられる。
【0027】
上記有機過酸化物の含有量は、重合開始剤総量100質量%中、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0028】
上記有機過酸化物の使用量は、枝ポリマーの原料となる単量体成分量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.3~2質量部であることが更に好ましい。
【0029】
上記有機溶媒としては、通常、重合溶媒として使用される有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシブタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のアルキルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。これらは1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0030】
上記有機溶媒の使用量は、幹ポリマーと枝ポリマーの原料となる単量体成分との総量100質量部に対して、45~900質量部であることが好ましく、65~400質量部であることがより好ましく、80~300質量部であることが更に好ましい。
【0031】
本発明の製造方法で得られるグラフト共重合体は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他方を枝ポリマーとするグラフト共重合体である。すなわち、上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖が幹ポリマーであり、上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖が枝ポリマーであるグラフト共重合体と、上記芳香族単量体を含む単量体成分由来の重合鎖が幹ポリマーであり、上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖が枝ポリマーであるグラフト共重合体である。
【0032】
(N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖)
上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分を重合して得ることができる。
上記N-ビニルラクタム系単量体は、N-ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に限定されないが、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化2】
【0034】
(式中、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。xは、0~4の整数を表す。yは、1~3の整数を表す。)
【0035】
上記R~Rにおけるアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0036】
上記置換基としては、例えば、エチレン性不飽和炭化水素基;カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等の架橋剤と縮合反応可能な反応性官能基;等が挙げられる。
【0037】
上記R、R、Rは、水素原子であることが好ましい。
上記Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0038】
上記一般式(1)において、xは、0~2の整数であることが好ましく、0~1の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
yは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0039】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-5-メチルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドン等が挙げられる。なかでも、N-ビニルピロリドンが好ましい。
【0040】
上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分は、上記N-ビニルラクタム系単量体以外の他の単量体成分を含んでいてもよい。
上記他の単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体及びその塩又は第4級化物;ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等のビニルアミド類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;ビニルスルホン酸及びその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分において、上記N-ビニルラクタム系単量体の含有割合は、得られるグラフト共重合体の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、上記単量体成分100質量%に対して、30~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖は、上記N-ビニルラクタム系単量体由来の重合鎖であることが好ましい。
【0042】
幹ポリマーとして、上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分を重合して重合鎖を得る方法としては、特に限定されず、公知の重合方法で行うことができ、通常、有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸塩、過酸化水素等の公知の重合開始剤を用いて水溶液や有機溶剤中でラジカル重合する方法が挙げられる。上記重合鎖の分子量等は、重合開始剤の量や種類、重合温度、単量体の添加方法等の公知の方法により、適宜調整することができる。
【0043】
上記重合反応としては、単量体組成に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20~150℃で、0.5~10時間行うことが好ましく、40~120℃で1~8時間行うことがより好ましい。
【0044】
(芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖)
上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖は、芳香族系単量体を含む単量体成分を重合して得ることができる。
上記芳香族系単量体としては、芳香族環と重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。
上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
上記重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。
【0045】
上記芳香族系単量体の具体例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の芳香族ビニル系単量体;フェノキシポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル;ナフトキシポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル;フェニルマレイミド;ベンジルマレイミド;ビニルアニリン等が挙げられる。なかでも、グラフト率がより一層向上する点で、芳香族ビニル系単量体であることが好ましく、スチレンであることがより好ましい。
【0046】
上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分は、上記芳香族系単量体以外の他の単量体成分を含んでいてもよい。
上記他の単量体成分としては、例えば、上述したN-ビニルラクタム系単量体以外の他の単量体成分と同様の単量体成分や、マレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分において、上記芳香族系単量体の含有割合は、得られるグラフト共重合体の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、上記単量体成分100質量%に対して、30~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることが更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
すなわち、上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖は、上記芳香族系単量体由来の重合鎖であることが好ましい。
【0048】
幹ポリマーとして、上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の原料となる単量体成分を重合して重合鎖を得る方法としては、特に限定されず、上述したN-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と同様に、公知の重合方法が挙げられる。
【0049】
本発明の製造方法において、幹ポリマーが上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖である場合、枝ポリマーの原料となる単量体成分は、上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分である。また、幹ポリマーが上記芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖である場合、枝ポリマーの原料となる単量体成分は、上記N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の原料となる単量体成分である。
【0050】
本発明の製造方法における上記グラフト重合工程は、上述した重合開始剤と有機溶媒の存在下で、上記幹ポリマーと枝ポリマーの原料となる単量体成分を混合して重合を行うことができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法で行うとよい。
【0051】
また、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分を混合する場合、使用する単量体成分の全量を一度に混合してもよいし、少量ずつ連続的に混合してもよいし、数回に分けて混合してもよい。
【0052】
上記グラフト重合工程における重合温度は、特に限定されないが、30~140℃であることが好ましく、40~120℃であることがより好ましく、50~100℃であることが更に好ましい。
重合時間は、特に限定されないが、1~20時間であることが好ましく、3~10時間であることがより好ましい。
【0053】
上記グラフト重合工程では、重合時に、連鎖移動剤、触媒等、重合時に通常使用される他の成分を使用してもよい。これらの種類や量は公知の方法から適宜設定することができる。
【0054】
本発明の製造方法において、上記グラフト重合工程は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、スチレンを含む単量体成分をグラフト重合させる工程(A-1)であることが好ましい。
【0055】
上記有機過酸化物、重合開始剤、有機溶媒、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖、及び、スチレンを含む単量体成分としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0056】
また、上記グラフト重合工程(A-1)で使用する有機溶媒は、アルコール系溶媒を含むことが好ましい。上記アルコール系溶媒としては、上述したものが挙げられる。なかでも、炭素数2~6のアルコール系溶媒を含むことが好ましく、炭素数2~4の第一級アルコール系溶媒を含むことがより好ましく、エタノール及び/又はプロパノールを含むことが更に好ましい。
【0057】
上記有機溶媒は、上記アルコール系溶媒以外の他の溶媒を含んでもよい。
上記アルコール系溶媒の含有量は、有機溶媒100質量%に対して30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0058】
本発明の製造方法においてはまた、上記グラフト重合工程は、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーに、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分をグラフト重合させる工程(A-2)であることが好ましい。
【0059】
上記グラフト重合工程(A-2)で使用する有機溶媒は、スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが溶解する溶媒を含むことが好ましい。
上記スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが溶解する溶媒とは、溶媒100gに対し、上記幹ポリマーが10g以上溶解する溶媒をいい、好ましくは20g以上、より好ましくは30g以上溶解する溶媒をいう。
【0060】
上記スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが溶解する溶媒としては、上述した溶解度を満たす溶媒であれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、上述した芳香族炭化水素系溶媒、塩素系炭化水素系溶媒等が挙げられる。なかでも、取り扱い易い点で、芳香族炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼンがより好ましく、トルエンが更に好ましい。
【0061】
上記スチレンを含む単量体成分由来の重合鎖である幹ポリマーが溶解する溶媒の含有量は、有機溶媒100質量%に対して30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0062】
上記グラフト重合工程(A-1)及び(A-2)の重合条件は、上述したグラフト重合条件と同様であることが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法は、上述したグラフト重合工程以外に、他の工程を有していてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤等の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0064】
本発明の製造方法により得られるグラフト共重合体の重量平均分子量は、上記グラフト共重合体の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、1000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、50000以上であることが更に好ましく、2000000以下であることが好ましく、1400000以下であることがより好ましく、500000以下であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
【0065】
上記グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、上記グラフト共重合体の目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、400℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度は、日本工業規格JIS K 7121に準拠した方法により求めることができる。
【0066】
上記グラフト共重合体のグラフト率は、25%以上であることが好ましく、28%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましい。
上記グラフト率は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0067】
上記グラフト共重合体のモノマー反応率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
上記モノマー反応率は、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、ゲル浸透クロマトグラフ等の重合体中の残存単量体が測定可能な方法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0068】
上記グラフト共重合体を製造する場合、副生成物量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
例えば、上記N-ビニルラクタム系単量体として、N-ビニルピロリドンを使用する場合、副生成物として、2-ピロリドンが生成しうる。
上記副生成物量は、生成される副生成物に応じて公知の方法から適宜選択すればよいが、例えば、2-ピロリドンの場合、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、ゲル浸透クロマトグラフ等の重合体中の副生成物が測定可能な方法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0069】
本発明の製造方法で得られるグラフト共重合体は、良分散性、耐水性等の特性を有する。そのため、上記グラフト共重合体は、単独で、あるいは他の成分と混合することにより、光学材料、電子材料、繊維材料、インク、化粧品、農園芸等の各種用途に好適に使用することができる。
【0070】
以上のとおり、本発明の製造方法は、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖と芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖の一方を幹ポリマーとし、他を枝ポリマーとするグラフト共重合体を極めて効率良く製造することができる。
【実施例
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0072】
共重合体についての各評価を下記の方法で行った。
<共重合体の固形分の測定>
底面の直径が約5cmの秤量缶(質量W1(g))に、約1gの共重合体を量り取り(質量W2(g))、これを150℃の定温乾燥機中において1時間静置し、乾燥させた。乾燥後の秤量缶と共重合体の合計質量(W3(g))を測定し、下記式より固形分を求めた。
固形分(質量%)=[(W3-W1)/W2]×100
【0073】
<モノマー反応率>
グラフト共重合体中の単量体の含有率は、ガスクロマトグラフ(装置:株式会社島津製作所製 GC-2014、検出器:FID、カラム:化学物質評価研究機構製 G-100)を用いて求めた。添加したモノマー量から共重合体中の単量体量をひいた値を反応したモノマー量とし、添加したモノマー量に対する共重合体中の反応したモノマー量の割合をモノマー反応率(%)とした。
【0074】
<副生成物量>
グラフト共重合体中の副生成物(2-ピロリドン)の含有量は、ガスクロマトグラフ(装置:株式会社島津製作所製 GC-2014、検出器:FID、カラム:化学物質評価研究機構製 G-100)を用いて求めた。
【0075】
<グラフト率>
(1)幹ポリマーとしてN-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を用いた場合のグラフト共重合体のグラフト率は以下の方法で求めた。
すなわち、グラフト共重合体を重合体濃度が0.5%となるようにゲル浸透クロマトグラフ(GPC)の溶離液で希釈し、シェーカー(IKA製ROLLER10デジタル 80rpm)で1時間撹拌した。その後、上澄み液をクロマトディスク(ジーエルサイエンス製 水系/非水系(兼用)Pタイプ 型式:13P 孔径:0.45μm)に通し、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて下記の条件で測定した。
装置:Waters製 Alliance HPLCシステム
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSKgel α-M(2本)、TSKgel α
カラム温度:40℃
流速:0.6ml/min
検量線:Polyethylene Oxide Standards
溶離液:イオン交換水/アセトニトリル 84/16(1.4%硝酸ナトリウム含有)
幹ポリマーで検量線をひき、上澄み液中のグラフトされていない幹ポリマー量(W4質量%)を定量した。下記式より、グラフト率を求めた。
グラフト率(質量%)=(W5-W4×希釈倍率)/W5×100
W5(質量%):(幹ポリマー+添加した単量体)中の幹ポリマーの割合
【0076】
(2)幹ポリマーとして芳香族系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を用いた場合のグラフト共重合体のグラフト率は以下の方法で求めた。
すなわち、グラフト共重合体を重合体濃度が0.5%となるようにゲル浸透クロマトグラフ(GPC)の溶離液で希釈し、シェーカー(IKA製ROLLER10デジタル 80rpm)で1時間撹拌した。その後、上澄み液をクロマトディスク(ジーエルサイエンス製 水系/非水系(兼用)Pタイプ 型式:13P 孔径:0.45μm)に通し、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて、幹ポリマーとしてN-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖を用いる場合と同じ条件で測定した。
N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分由来の重合鎖で検量線をひき、上澄み液中のグラフト重合していないN-ビニルラクタム系単量体成分由来の重合鎖量(W6質量%)を定量した。下記式より、グラフト率を求めた。
グラフト率(質量%)=100-(W6×希釈倍率)/W7×100
W7(質量%):(幹ポリマー+添加した単量体)中の添加した単量体の割合
【0077】
(実施例1)
十字型撹拌子の入ったガラス製試験管に、ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒製、以下、「PVP」とも称する)8.0g、エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)18.7g仕込み、専用のケミステーション(東京理化器械株式会社製)にセットした。800rpmで撹拌しながら、PVPを完全に溶解させた。次いで、反応器の内温が80℃になるように加熱した。次いで、80℃を維持しながら、スチレンモノマー(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「St」とも称する)8.0gを添加し、5分間維持した。次いで、重合開始剤としてパーブチルPV(t-ブチルパーオキシピバレート、10時間半減期温度54.6℃、日油株式会社製)0.04gを添加した。
ブースターとして、パーブチルPVの添加から1時間おきに、計4回、合計量0.064gのパーブチルPVを添加し、300分後、PVP/Stグラフト共重合体溶液を得た。(PVP+St)に対するStの量は50質量%、単量体(St)に対するパーブチルPVの総量は1.3%であった。
得られたPVP/Stグラフト共重合体溶液を90℃真空乾燥2時間後、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、PVP/Stグラフト共重合体(粉体)を得た。
【0078】
(比較例1)
実施例1において、重合開始剤としてパーブチルPVの代わりに、5%V-60(AIBN)(2,2’-アゾビス(イソブチルニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製)のメタノール溶液を0.8g使用し、ブースターとして、V-60の添加から2.5時間後に、5%V-60のメタノール溶液0.8gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりPVP/Stグラフト共重合体を得た。
【0079】
(比較例2)
実施例1において、重合開始剤としてパーブチルPVの代わりに、10%V-65(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製)のイソプロピルアルコール(IPA)溶液を0.4g使用し、ブースターとして、V-65の添加から1時間おきに、計4回、合計量0.64gの10%V-65のイソプロピルアルコール溶液を添加した以外は、実施例1と同様の方法によりPVP/Stグラフト共重合体を得た。
【0080】
(比較例3)
十字型撹拌子の入ったガラス製試験管に、PVP15.0g、脱イオン水15.0g仕込み、専用のケミステーション(東京理化器械株式会社製)にセットした。800rpmで撹拌しながら、PVPを完全に溶解させた。次いで、反応器の内温が80℃になるように加熱した。次いで、80℃を維持しながら、Stを5.0g添加し、5分間維持した。次いで、重合開始剤としてパーブチルPVを0.05g添加した。
ブースターとして、パーブチルPVの添加から1時間おきに、計4回、合計量0.064gのパーブチルPVを添加し、300分後、PVP/Stグラフト共重合体溶液を得た。(PVP+St)に対するStの量は25質量%、単量体(St)に対するパーブチルPVの総量は2.3%であった。
得られたPVP/Stグラフト共重合体溶液を100℃真空乾燥2時間後、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、PVP/Stグラフト共重合体(粉体)を得た。
【0081】
(実施例2)
マックスブレンド型攪拌翼(SUS304製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた1L反応器(SUS304製)に、スチレンポリマー(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「PSt」とも称する)150.0g、トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社製)350.0g仕込んだ。200rpmで撹拌しながら、PStを完全に溶解させた。次いで、N-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製、以下、「VP」とも称する)150.0g添加し、反応器の内温が90℃になるように加熱した。次いで、90℃を維持しながら、重合開始剤としてパーブチルPV1.5gを添加した。
ブースターとして、パーブチルPVの添加から1時間おきに、計4回、合計量1.2gのパーブチルPVを添加し、300分後、PSt/VPグラフト共重合体溶液を得た。PStに対するVPの量は100質量%、単量体(VP)に対するパーブチルPVの総量は1.8%であった。
得られたPSt/VPグラフト共重合体溶液をIPAに滴下して生じた白色固体を、90℃真空乾燥3時間行った。次いで、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、再度、90℃真空乾燥3時間行って、PSt/VPグラフト共重合体(粉体)を得た。
【0082】
実施例及び比較例で得られたグラフト共重合体について、上記の方法で、モノマー反応率(%)、副生成物量、及び、グラフト率(%)を測定した。得られた結果を表1及び2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1及び2より、有機過酸化物を含む重合開始剤、及び、有機溶媒の存在下で、幹ポリマーに枝ポリマーの原料となる単量体成分をグラフト重合させることで、モノマーの反応率が高くて残存モノマーや副生成物の量が少なく、グラフト率が高いグラフト共重合体が得られることが確認された。